説明

車両前部構造

【課題】 フロントピラーを前後に分割しかつインストルメントパネルを前後に分割した際に、バランス良くこれらを配置できる車両前部構造の提供。
【解決手段】 フロントピラー15を前部フロントピラー部16と前部フロントピラー部16よりも断面の大きい後部フロントピラー部17とに分割した車両前部構造であって、左右の前部フロントピラー部16間を接続させる前部インストルメントパネル12と、前部インストルメントパネル12に支持されて左右の後部フロントピラー17間に設けられる後部インストルメントパネル13とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両前部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のフロントピラーに関する技術として、フロントピラーを前部フロントピラー部とこの前部フロントピラー部よりも断面の大きい後部フロントピラー部とに分割することで前方視界を拡げて視認性を高めるものがある(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−276638号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
一方で、インストルメントパネルによって車室内空間を広く見せるような工夫が求められており、インストルメントパネルを前部インストルメントパネルとこれに支持される後部インストルメントパネルとに分割することで、後部インストルメントパネルを浮かせるように見せて車室内空間を広く見せることを考えた。しかしながら、前部インストルメントパネルと後部インストルメントパネルとの配置と、前部フロントピラー部と後部フロントピラー部との配置のバランスが見栄えに影響してしまう。
【0004】
したがって、本発明は、フロントピラーを前後に分割しかつインストルメントパネルを前後に分割した際に、バランス良くこれらを配置できる車両前部構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明は、フロントピラー(例えば実施形態におけるフロントピラー15)を前部フロントピラー部(例えば実施形態における前部フロントピラー部16)と該前部フロントピラー部よりも断面の大きい後部フロントピラー部(例えば実施形態における後部フロントピラー部17)とに分割した車両前部構造であって、左右の前記前部フロントピラー部間を接続させる前部インストルメントパネル(例えば実施形態における前部インストルメントパネル12)と、該前部インストルメントパネルに支持されて左右の前記後部フロントピラー間に設けられる後部インストルメントパネル(例えば実施形態における後部インストルメントパネル13)とを備えることを特徴としている。
【0006】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明において、前記前部インストルメントパネルの剛性を前記後部インストルメントパネルの剛性よりも高くしたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
請求項1に係る発明によれば、左右の前部フロントピラー部間を前部インストルメントパネルで接続させるとともに、前部インストルメントパネルに支持される後部インストルメントパネルを左右の後部フロントピラー部間に設けるため、これらをバランス良く配置できる。したがって、見栄えを向上させることができる。しかも、前部フロントピラー部を前部インストルメントパネルで接続させるため細い前部フロントピラー部の剛性を前部インストルメントパネルの剛性によって補うことができる。
【0008】
請求項2に係る発明によれば、前部インストルメントパネルの剛性が後部インストルメントパネルの剛性よりも高くされているため、細い前部フロントピラー部の剛性を前部インストルメントパネルの剛性によって確実に補うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の一実施形態を図面を参照して以下に説明する。なお、以下の説明における前後は車両における前後である。
【0010】
図1は車両の前部を示すもので、本実施形態においては、インストルメントパネル11が、前後方向に離間して並設された前部インストルメントパネル12と後部インストルメントパネル13とに分割されている。車両情報を表示させる表示部22は前部インストルメントパネル12に設けられると共に、車両の操作部38は後部インストルメントパネル13に設けられる。
【0011】
また、本実施形態においては、車体フレームを構成する左右のフロントピラー15の上部が、互いの上端部が連結されるとともに下端部が前後方向に離間するように並設された前部フロントピラー部16と後部フロントピラー部17とに分割されている。ここで、後部フロントピラー部17は前部フロントピラー部16よりも断面が大きくされており、このように前部フロントピラー部16の断面を小さくすることで前方の視界を拡げて視認性を確保するようになっている。
【0012】
前部インストルメントパネル12は、図2に示すフロントウインドシールド20の下端縁部の近傍において車幅方向に延在するように設けられるもので、図1に示すように左右の前部フロントピラー部16間を接続させることで、断面が小さくされたこれら前部フロントピラー部16の剛性を補うようになっている。
【0013】
前部インストルメントパネル12には、図2および図3に示すように、車幅方向の運転席側に運転者に向けて車速等の車両情報を表示させる表示部22が設けられている。表示部22を前部インストルメントパネル12に、操作部38を後部インストルメントパネル13と分けて設けていることで、運転者から確実に表示部22を離して配置させることができ、運転者はフロントウィンドから視線を大きくずらすことなく、表示部22を確認することができる。これによって、表示部22の視認性が向上する。
【0014】
前部インストルメントパネル12の車幅方向の中央の後部には、図1および図4に示すように、支持部25が略水平に配置された状態で後方に延出しており、この支持部25の後端部に車幅方向に延在する状態で後部インストルメントパネル13が固定されている。このように前部インストルメントパネル12に支持部25を介して支持された後部インストルメントパネル13は、左右の後部フロントピラー部17間にこれら後部フロントピラー部17とは離間して設けられている。この後部インストルメントパネル13に特に高い剛性は不要であり、よって、前部フロントピラー部16の剛性を補うため剛性が必要な前部インストルメントパネル12よりも剛性が低くされている(つまり前部インストルメントパネル12の剛性が後部インストルメントパネル13の剛性よりも高くされている)。
【0015】
後部インストルメントパネル13は、例えばマグネシウム合金からなるとともに車幅方向に延在する状態で支持部25に固定される中空筒状の主部30と、この主部30の上側から後側を覆うカバー部材31と、主部30の下側のニーボルスター32と等で構成されている。
【0016】
ここで、図5に示すように、支持部25も内部空間25Aを有する中空構造となっており、その内部空間25Aを後部インストルメントパネル13の主部30の内部空間30Aに連通させている。支持部25の内部空間25Aは前部インストルメントパネル12側に設けられた図示略の空調装置からの空調エアの通路となっており、主部30の内部空間30Aへ空調エアを導入する。これにより、後部インストルメントパネル17の主部30はその内部を空調エアが流通可能な中空構造となっている。
【0017】
そして、主部30は車幅方向の両側部が開口して吹出口33とされ、また主部30には前方に向け開口することで前方に空調エアを吹き出す吹出口34が形成されている。
【0018】
後部インストルメントパネル13の運転席側には、図1〜図4に示すように、ステアリング36およびシフトレバー37等を有する操作部38が設けられている。操作部38には、図3に示すように、さらにスタータスイッチ40、エアコンコントロールスイッチ41、ハザードスイッチ42、オーディオスイッチ43、運転者支援システム用スイッチ44およびインフォメーションスイッチ45等が設けられている。
【0019】
図4に示すように、車体フロア48には、前後方向に延在するようにスライドレール部49が埋設されており、このスライドレール部49によって、操作部38を支持する下部の脚部52が前後スライド可能に設けられている。この脚部52には、操作ペダル53が設けられている。
【0020】
操作部38の前側下部には操作部38の前方移動時に後部インストルメントパネル13を受け入れ可能な切欠部51が形成されており、この切欠部51と後部インストルメントパネル13の主部30との間のスライド部50を介して操作部38が後部インストルメントパネル13に対し前後スライド可能に支持されている。
【0021】
さらに、脚部52には、操作ペダル53の操作部38に対する前後方向の位置調整を可能とする図示せぬ調整部が設けられている。
【0022】
よって、必要により脚部52がスライドレール部49に案内されて前後にスライドし、必要により操作部38がスライド部50で案内されて後部インストルメントパネル13に対し前後にスライドし、必要により図示せぬ調整部が操作ペダル53の操作部38に対する前後の位置を調整することで、操作部38および操作ペダル53が車体前後方向の位置を調整する。
【0023】
操作部38への操作入力はすべて図示略の電気ケーブルを介して図示せぬ制御装置に入力されるようになっており、この電気ケーブルも支持部25内を通って前部インストルメントパネル12側に延びている。
【0024】
後部インストルメントパネル13の主部30の中央上部には、カーナビゲーションシステム等の表示用のセンタマルチモニタ60が設けられており、また、このセンタマルチモニタ60の上部と支持部25の上方の前部インストルメントパネル12との間にはバイザー61が架設されている。このバイザー61によって支持部25が覆われている。
【0025】
以上に述べた本実施形態によれば、左右の前部フロントピラー部16間を前部インストルメントパネル12で接続させるとともに、前部インストルメントパネル12に支持される後部インストルメントパネル13を左右の後部フロントピラー17間に設けるため、これらをバランス良く配置できる。したがって、見栄えを向上させることができる。しかも、前部フロントピラー部16を前部インストルメントパネル12で接続させるため細い前部フロントピラー部16の剛性を前部インストルメントパネル12の剛性によって補うことができる。
【0026】
また、前部インストルメントパネル12の剛性が後部インストルメントパネル13の剛性よりも高くされているため、細い前部フロントピラー16の剛性を前部インストルメントパネル12の剛性によって確実に補うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の一実施形態が適用された車両の前部を示す斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態が適用された車両の車室内前部を示す正面図である。
【図3】本発明の一実施形態が適用された車両の車室内前部を示す拡大正面図である。
【図4】本発明の一実施形態が適用された車両の車室内前部を示す側面図である。
【図5】本発明の一実施形態が適用された車両の車室内前部における後部インストルメントパネルを車体前方から見た図である。
【符号の説明】
【0028】
12 前部インストルメントパネル
13 後部インストルメントパネル
15 フロントピラー
16 前部フロントピラー部
17 後部フロントピラー部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロントピラーを前部フロントピラー部と該前部フロントピラー部よりも断面の大きい後部フロントピラー部とに分割した車両前部構造であって、
左右の前記前部フロントピラー部間を接続させる前部インストルメントパネルと、該前部インストルメントパネルに支持されて左右の前記後部フロントピラー間に設けられる後部インストルメントパネルとを備えることを特徴とする車両前部構造。
【請求項2】
前記前部インストルメントパネルの剛性を前記後部インストルメントパネルの剛性よりも高くしたことを特徴とする請求項1記載の車両前部構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2006−56401(P2006−56401A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−240697(P2004−240697)
【出願日】平成16年8月20日(2004.8.20)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】