説明

車両前部構造

【課題】車両前部を構成している部材の結合剛性を向上させて、操縦安定性が向上された車両前部構造を得る。
【解決手段】ダッシュパネル18の下側で車両前後方向に延在するサイドメンバリア42の先端は、ダッシュクロスメンバ20に達しており、フロントサイドメンバ24、サイドメンバリア42及びダッシュクロスメンバ20の3つの車両骨格部材で構成される三又部54が溶接されている。これらの部材の結合剛性が相乗的に向上され、操縦安定性が向上される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両前部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、サスペンションロアアームが回動自在に取り付けられたロアアームセットフレームが、ダッシュクロスメンバとフロントサイドフレームとにまたがって、ボルトにて締結された自動車の前部車体構造が記載されている。特許文献1には、路面からサスペンションアームを介してロアアームセットフレームに加わる外力が、ダッシュクロスメンバとフロントサイドフレームの両方で分散して受けることで、ロアアームセットフレーム付近の車体剛性が高くなる点も記載されている。
【0003】
ところで、実際の車両前部構造においては、車両前部を構成している部材の結合剛性を向上させて、操縦安定性を向上させることが望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭63−227477号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、車両前部を構成している部材の結合剛性を向上させて、操縦安定性が向上された車両前部構造を得ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明では、ダッシュパネルの車両前方側で車幅方向に延在されるダッシュクロスメンバと、前記ダッシュパネルの前記車両前方側で車両前後方向に延在すると共に車幅方向に間隔をあけて一対配置され、後端部が前記ダッシュクロスメンバに結合された前側サイドメンバと、前記前側サイドメンバの後方側で車両前後方向に延在されると共に車幅方向に間隔をあけて一対配置され、前端部が前記ダッシュクロスメンバ及び前記前側サイドメンバに結合された後側サイドメンバと、を有する。
【0007】
この車両前部構造では、前側サイドメンバの後端部がダッシュクロスメンバに結合され、さらに、後側サイドメンバの前端部がダッシュクロスメンバ及び前側サイドメンバに結合されている。すなわち、ダッシュクロスメンバと前側サイドメンバ及び後側サイドメンバの3部材が結合されることになるので、これら3部材の結合剛性が相乗的に向上され、操縦安定性が向上する。
【0008】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の発明において、前記後側サイドメンバの前記前端部が、前記前側サイドメンバの内部に配置されて前記ダッシュクロスメンバ及び前記前側サイドメンバに結合されている。
【0009】
後側サイドメンバの前端部を前側サイドメンバの内部に配置することで、これらが接触している部分を広く確保でき、後側サイドメンバと前側サイドメンバをより強固に結合できるようになる。
【0010】
請求項3に記載の発明では、請求項1又は請求項2に記載の発明において、前記前側サイドメンバの内部に配置されて前記前側サイドメンバ及び前記後側サイドメンバに結合されると共に、車両側面視にて、前側サイドメンバの下板と後側サイドメンバの下板とを2辺とする略三角形状を構成する補強部材、を有する。
【0011】
このように、前側サイドメンバ及び後側サイドメンバに結合された補強部材を有することで、車両前部をより効果的に補強できる。特に、補強部材は、車両側面視にて、前側サイドメンバの下板と後側サイドメンバの下板とを2辺とする略三角形状(残り1辺は補強部材によって構成される)を構成している。したがって、たとえば操舵時の横力が前側サイドメンバに作用したときの前側サイドメンバの回転変形を抑制でき、さらに操縦安定性を向上させることが可能になる。なお、ここでいう「略三角形」には、各辺の全部又は一部が湾曲しているものであっても湾曲部分の曲率が十分に小さいために実質的に三角形とみなせるものや、厳密には4つ以上の辺で構成されているものであっても特定の3辺以外は十分に短いために、実質的に三角形とみなせるもの、等を含む。
【0012】
請求項4に記載の発明では、請求項3に記載の発明において、前記補強部材が、サスペンション支持部の結合用とされるサスペンション結合部材を有している。
【0013】
補強部材のサスペンションメンバ結合部材にサスペンション支持部(たとえばサスペンションメンバ)を取り付けることで、サスペンション支持部の剛性が向上するので、さらに操縦安定性を向上させることが可能になる。
【発明の効果】
【0014】
本発明は上記構成としたので、車両前部を構成している部材の結合剛性を向上させて、操縦安定性を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1実施形態の車両前部構造を車両前後方向に沿った断面で示す断面図である。
【図2】本発明の第1実施形態の車両前部構造において補強部材が構成する略三角形状を概念的に示す説明図である。
【図3】本発明の第1実施形態の車両前部構造を示す分解斜視図である。
【図4】本発明の第1実施形態の車両前部構造を示す図1の4−4線断面図である。
【図5】本発明の第1実施形態の車両前部構造を示す図1の5−5線断面図である。
【図6】比較例の車両前部構造を模式的に示す斜視図である。
【図7】本発明の第1実施形態の車両前部構造を模式的に示す斜視図である。
【図8】本発明の第2実施形態の車両前部構造を車両前後方向に沿った断面で示す断面図である。
【図9】本発明の第2実施形態の車両前部構造において補強部材が構成する略三角形状を概念的に示す説明図である。
【図10】本発明の第2実施形態の車両前部構造を構成する補強部材を示す斜視図である。
【図11】本発明の第2実施形態の車両前部構造を示す図8の11−11線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1及び図3には、本発明の一実施形態の車両前部構造12が示されている。また、図4及び図5には、車両前部構造12が、図1における3−3線断面、4−4線断面にてそれぞれ示されている。各図面において、車体の前方を矢印FRで、車幅方向右側を矢印RHで、上方を矢印UPでそれぞれ示すこととする。
【0017】
図1に示すように、車両前部構造12は、車両の車室14とエンジンルーム16とを区画するダッシュパネル18を有している。ダッシュパネル18は上下方向及び車幅方向に延在する略板状に形成されているが、下部は車両後方側へと湾曲されて湾曲部18Bが構成されている。
【0018】
ダッシュパネル18の前方側には、上下方向の略中間位置にダッシュクロスメンバ20が配置されている。ダッシュクロスメンバ20は、車幅方向に延在すると共に、車両後方側に開放された略コ字状(ハット状)に形成されており、上辺及び下辺に形成されたフランジ部22を用いて、ダッシュパネル18に溶接されて結合されている。
【0019】
ダッシュクロスメンバ20の前方側には、車両前後方向に延在する一対のフロントサイドメンバ24(本発明に係る前側サイドメンバ)が車幅方向に所定間隔をあけて配置されている。フロントサイドメンバ24は、車幅方向に見たとき、その後部が上下に広がるように高さが漸増されて、高さ増大部24Hが構成されている。フロントサイドメンバ24の車両後方側の上部には、ダッシュクロスメンバ20を収容するダッシュクロスメンバ収容凹部26が形成されている。また、フロントサイドメンバの車両後方側の下部(ダッシュクロスメンバ収容凹部26の下側)は、ダッシュパネル18に達するダッシュパネル結合部28とされている。なお、図1及び図3では車両右側のフロントサイドメンバ24のみを示しているが、車両左側のフロントサイドメンバも左右対称に現れる。
【0020】
フロントサイドメンバ24は、車幅方向外側に配置されるフロントサイドメンバアウター30と、車幅方向内側に配置されるフロントサイドメンバインナー32とで構成されている。フロントサイドメンバアウター30は、略長尺板状に形成されているが、フロントサイドメンバインナー32は、車両前方側から見てフロントサイドメンバアウター30に向かって開放された断面略コ字状(ハット状)に形成されている。フロントサイドメンバインナー32の上部及び下部からは、フロントサイドメンバアウター30への溶接用とされる溶接フランジ34が形成されている。フロントサイドメンバアウター30とフロントサイドメンバインナー32とが溶接されて一体化されると、フロントサイドメンバ24は、車幅方向で略四角形の閉断面を有する形状となる。
【0021】
フロントサイドメンバアウター30及びフロントサイドメンバインナー32には、ダッシュクロスメンバ収容凹部26において、ダッシュクロスメンバ20への溶接用とされる溶接フランジ36が形成されている。さらに、フロントサイドメンバアウター30及びフロントサイドメンバインナー32には、ダッシュパネル結合部28において、ダッシュパネル18への溶接用とされる溶接フランジ38が形成されている。
【0022】
フロントサイドメンバインナー32の下板32Lは、ダッシュパネル18には達しない長さとされており、フロントサイドメンバアウター30とフロントサイドメンバインナー32の間に、後述するようにサイドメンバリア42が下側から延出されて収容されるサイドメンバリア収容間隙40が構成されている。加えて、フロントサイドメンバインナー32の下板32Lには、サイドメンバリア42への溶接用とされる溶接フランジ44が形成されている。
【0023】
ダッシュパネル18の下側には、車両前後方向に延在する一対のサイドメンバリア42(本発明に係る後側サイドメンバ)が、車幅方向に所定間隔をあけて配置されている。サイドメンバリア42は、上方に、向かって開放された断面略コ字状(ハット状)に形成されている。サイドメンバリア42は、その車両前方側が、ダッシュパネル18に沿って斜め上方へと湾曲しており、先端部分は、前述のサイドメンバリア収容間隙40に収容される被収容部46とされている。被収容部46のさらに先端は、ダッシュクロスメンバ20に達している。なお、図1及び図3では車両右側のサイドメンバリア42のみを示しているが、フロントサイドメンバ24と同様に、車両左側のサイドメンバリアも左右対称に現れる。
【0024】
サイドメンバリア42の上部には、ダッシュクロスメンバ20への溶接用とされる溶接フランジ48と、ダッシュパネル18への溶接用とされる溶接フランジ50が形成されている。
【0025】
そして、本実施形態の車両前部構造12では、図1から分かるように、ダッシュパネル18よりも車両前方側(直前の位置)において、フロントサイドメンバ24とダッシュクロスメンバ20とが溶接点52Aにより結合されると共に、フロントサイドメンバ24とサイドメンバリア42とが溶接点52Bで結合されているが、さらに、サイドメンバリア42がフロントサイドメンバ24内を通り、ダッシュパネル18の車両前側で溶接点52Cによりダッシュクロスメンバ20に結合されている。したがって、フロントサイドメンバ24とサイドメンバリア42の結合剛性や、フロントサイドメンバ24とダッシュクロスメンバ20の結合剛性だけでなく、サイドメンバリア42とダッシュクロスメンバ20の結合剛性も向上された構造となっている。換言すれば、フロントサイドメンバ24、サイドメンバリア42及びダッシュクロスメンバ20の3つの車両骨格部材で構成される部分(以下、三又部54という)の剛性が、相乗的に向上されている。
【0026】
図4及び図5にも示すように、フロントサイドメンバアウター30とフロントサイドメンバインナー32の間には、サイドメンバリア収容間隙40の車両前方側の位置に、補強部材56が配置されている。補強部材56は、図3から分かるように、車幅方向に一定の間隔をあけて平行に配置されると共に、側面視にて台形状とされた一対の側板58と、側板58の前方側で側板58と連続する前板60を有している。したがって、補強部材56を平面視すると、図5からも分かるように、車両後方側に向かって開放された略コ字状の断面を有している。
【0027】
前板60には、車両後方側に向かって凸となるように湾曲された一対の凸部62が車幅方向に間隔をあけて形成されており、凸部62の間が、ナット収容部64とされている。ナット収容部64には、図4及び図5にも示すように、略円筒状に形成されると共に、内周面に雌ねじが形成されたパイプナット66が収容されて溶接されている。このパイプナット66はサスペンションメンバ68の取付用とされており、サスペンションメンバ68に挿通された取付ボルト70が螺合されることで、サスペンションメンバ68が取り付けられるようになっている。すなわち、サスペンションメンバ68の取付点が、フロントサイドメンバ24とサイドメンバリア42の溶接点52B(結合点)の直前に位置していることになる。
【0028】
なお、サスペンションメンバ68は、本発明に係るサスペンション支持部の例であり、サスペンションの種類や構造によっては、サスペンションメンバ68以外のサスペンション支持部を、パイプナット66に結合してもよい。また、パイプナット66は、本発明に係るサスペンション結合部材の例であり、上記したように、サスペンションの種類や構造に応じて、適切な結合構造を有するサスペンション結合部材が適用される。
【0029】
前板60の下部には、フロントサイドメンバインナー32の下板32Lへの溶接用とされる溶接フランジ72が形成されている。図1から分かるように、補強部材56は、溶接フランジ72に設定された溶接点52Dによって、フロントサイドメンバ24と溶接されて結合されている。
【0030】
また、側面視にて、補強部材56の前部はフロントサイドメンバ24と重なっており、この重なり部分に設定された溶接点52Fによって、補強部材56はフロントサイドメンバ24の側面と溶接され、固定されている。
【0031】
側板58の後部は、フロントサイドメンバ24だけでなくサイドメンバリア42とも重なっている(3重に重なっている)。すなわち、補強部材56の側板58の後部は、この3重の重なり部分に設定された溶接点52Eにより、フロントサイドメンバ24及びサイドメンバリア42と溶接されて結合されている。なお、溶接点52Eでは、フロントサイドメンバ24とサイドメンバリア42も重なっているため、溶接点52Bを兼ねる構成、すなわち、溶接点52Eで、フロントサイドメンバ24とサイドメンバリア42とも併せて溶接されるようにしてもよい。
【0032】
図2に示すように、補強部材56は、車両側面視において、前板60がフロントサイドメンバインナー32の下板32Lとサイドメンバリア42の下板42Lとの間に掛け渡されるように位置しており、下板32Lの車両後方側部分、下板42Lの車両前方側部分及び前板60を3辺とする略三角形状の三角形76を構成している。すなわち、三角形76は、下板32L(前側サイドメンバの下板)と、下板42L(後側サイドメンバの下板)とを2辺とする三角形となっている。そして、三又部54がこの補強部材56によって効果的に補強されている。加えて、サスペンションメンバ68の取付部分(パイプナット66の結合部分)の剛性も、補強部材56により向上されている。
【0033】
なお、車両前部構造12を構成するには、たとえば以下の各工程によって、ダッシュパネル18及びダッシュクロスメンバ20に対し、フロントサイドメンバ24及びサイドメンバリア42を組み付けることができる。
【0034】
まず、フロントサイドメンバアウター30とフロントサイドメンバインナー32とを、溶接フランジ34を用いて溶接点52H(図4参照)で溶接し、フロントサイドメンバ24を構成しておく。このフロントサイドメンバ24に対し、補強部材56を溶接点52Eで溶接し一体化する。次いで、サイドメンバリア42を溶接点52Bでフロントサイドメンバ24に溶接して一体化し、このように一体化された部材を、ダッシュクロスメンバ20に対し溶接点52Aで溶接すると共に、ダッシュパネル18に対し溶接点52G(図1参照)で溶接する。
【0035】
このような構成とされた本実施形態の車両前部構造12では、フロントサイドメンバ24とダッシュクロスメンバ20との結合、及び、フロントサイドメンバ24とサイドメンバリア42との結合に加えて、サイドメンバリア42とダッシュクロスメンバ20との結合が成された構造となっている。これにより、フロントサイドメンバ24とサイドメンバリア42の結合剛性や、フロントサイドメンバ24とダッシュクロスメンバ20の結合剛性だけでなく、サイドメンバリア42とダッシュクロスメンバ20の結合剛性も向上された構造、換言すれば、フロントサイドメンバ24、サイドメンバリア42及びダッシュクロスメンバ20の3つの車両骨格部材で構成される部分(以下、三又部54という)の剛性が相乗的に向上された構造となっている。したがって、サイドメンバリア42がダッシュクロスメンバ20に結合されていない構造と比較して剛性が高くなり、操縦安定性の向上にも寄与できる構造となる。
【0036】
ここで、図6及び図7に示す模式図を用いて、車両前部構造及び操縦安定性について説明する、図6に示す車両前部構造112は、本実施形態に対する比較例であり、図7は、本実施形態の車両前部構造12を、比較例と同様に模式的に示すものである。
【0037】
図6に示す比較例の車両前部構造112では、フロントサイドメンバ24とダッシュクロスメンバ20とが溶接点(結合点114)で結合されると共に、フロントサイドメンバ24とサイドメンバリア42とが溶接点(結合点116)で結合されているが、サイドメンバリア42がダッシュクロスメンバ20とは結合されていない。
【0038】
したがって、比較例の車両前部構造112では、たとえば操舵時の横力が作用した場合に、フロントサイドメンバ24に矢印R1方向への回転モーメントが作用するため、フロントサイドメンバ24の矢印R1方向への回転に伴う変形を抑制することが、操縦安定性の向上という観点からは効果的である。
【0039】
図7に示す本実施形態の車両前部構造12では、上記した三又部54の剛性が相乗的に向上されているので、操舵時の横力が作用しても、フロントサイドメンバ24が溶接点52Aあるいはその近傍を中心として矢印R1方向に回転変形することを抑制できる。そしてこれにより、車両の操縦安定性の向上に寄与できる。
【0040】
しかも、本実施形態の車両前部構造12では、三又部54を補強部材56で補強することで、この三又部54の剛性がさらに向上されている。したがって、このような補強部材56を有さない車両前部構造と比較して、さらに車両の操縦安定性を向上させることが可能になる。
【0041】
加えて、補強部材56は、車両側面視にて、三角形76を構成しており、三又部54が三角形状に補強されていることになる。したがって、単に補強部材56を設けて補強した効果に加え、フロントサイドメンバ24の矢印R1方向への回転に対する剛性が、さらに大きく向上している。
【0042】
また、本実施形態では、サスペンションメンバ68が取り付けられるパイプナット66が補強部材56に溶接され、さらに補強部材56がフロントサイドメンバ24及びサイドメンバリア42に溶接されている。このため、サスペンションメンバ68の取付部分の剛性が向上され、操縦安定性をより高めることが可能な構造となる。
【0043】
なお、三又部54の剛性を上記したように相乗的に向上させているので、たとえば車両前部構造12に衝撃が作用した場合でも、耐衝撃性の高い構造となる。
【0044】
しかも、本実施形態では、上記したように車両前部構造12としての剛性を向上させるために、複雑な構造や部品の追加を必要とせず、簡易且つ生産性の高い構造となる。
【0045】
図8には、本発明の第2実施形態の車両前部構造212が示されている。第2実施形態では、補強部材214の構造が第1実施形態と異なっている。以下において、第1実施形態と同一の構成要素、部材等については同一符号を付して、詳細な説明を省略する。
【0046】
図10に詳細に示すように、第2実施形態の補強部材214は、車両前方側に位置する前部補強部材216と、車両後方側に位置する後部補強部材218とを有している。後部補強部材218は、第1実施形態に係る補強部材56と同様に、一対の側板58が前方側の前板60と連続する前板60を有しており、車両後方側に向かって開放された略コ字状の断面を有している。
【0047】
これに対し、前部補強部材216は、一対の側板220が車両後方側の後板222と連続しており、車両前方側に向かって開放された略コ字状の断面を有している。そして前板60と後板222とが溶接されて後部補強部材218と前部補強部材216とが一体化され、第2実施形態の補強部材214が構成されている。
【0048】
図11にも示すように、前部補強部材216の後板222と、後部補強部材218の前板60とは、車幅方向の中央において、互いに離間する方向に湾曲されており、後板222と前板60との間に、下方に向かって開放されたナット収容部224が構成されている。ナット収容部224には、パイプナット66が収容され、溶接孔226を用いて補強部材214に溶接されている。
【0049】
このような構造とされた補強部材214を有する第2実施形態の車両前部構造212では、図8に示すように、補強部材214が溶接点52Fによってフロントサイドメンバ24の側板に溶接され、さらに、溶接点52Dによってフロントサイドメンバ24の下板32Lに溶接される。したがって、第1実施形態と比較して、より多くの溶接点を確保できるので、さらに剛性の高い車両前部構造212となる。
【0050】
特に、図9から分かるように、第2実施形態における略三角形状の三角形228は、下板32Lの車両後方側部分、下板42Lの車両前方側部分及び、補強部材214の前縁214Fによって構成されており、第1実施形態と比較して、車両側面視における底辺(フロントサイドメンバ24の下板において、三角形228を構成している部分の車両前後方向の長さ)が長くなっている。したがって、フロントサイドメンバ24の矢印R1方向(図7参照)への回転(変形)を抑制する効果が、第1実施形態よりもさらに向上している。
【0051】
しかも、パイプナット66も、後部補強部材218だけでなく、前部補強部材216に溶接されるので、サスペンションメンバ68の取付点の剛性も、第1実施形態の車両前部構造12より、さらに高くなる。
【0052】
なお、上記では、サイドメンバリア42の車両前方側に被収容部46を設定し、この被収容部46が、サイドメンバリア収容間隙40に収容(配置)されてダッシュクロスメンバ20に達する構成としているが、サイドメンバリア42の車両前方側の部分は、必ずしもフロントサイドメンバ24の内部に収容(配置)されている必要はない。たとえば、サイドメンバリア42の車両前方側の部分がフロントサイドメンバ24に対し車幅方向の外側あるいは内側を通ってダッシュクロスメンバ20に達する構成でもよい。ただし、上記実施形態のように、サイドメンバリア42の車両前方側の部分をフロントサイドメンバ24の内部にすると、サイドメンバリア42とフロントサイドメンバ24との接触部分、すなわち溶接に利用できる面積が増大し、これらの結合剛性をより高く確保できるので、車両前部の剛性向上という観点からは、好ましい構造となる。
【符号の説明】
【0053】
12 車両前部構造
18 ダッシュパネル
20 ダッシュクロスメンバ
24 フロントサイドメンバ
30 フロントサイドメンバアウター
32 フロントサイドメンバインナー
42 サイドメンバリア
52A〜52H 溶接点
54 三又部
56 補強部材
66 パイプナット
68 サスペンションメンバ
212 車両前部構造
214 補強部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダッシュパネルの車両前方側で車幅方向に延在されるダッシュクロスメンバと、
前記ダッシュパネルの前記車両前方側で車両前後方向に延在すると共に車幅方向に間隔をあけて一対配置され、後端部が前記ダッシュクロスメンバに結合された前側サイドメンバと、
前記前側サイドメンバの後方側で車両前後方向に延在されると共に車幅方向に間隔をあけて一対配置され、前端部が前記ダッシュクロスメンバ及び前記前側サイドメンバに結合された後側サイドメンバと、
を有する車両前部構造。
【請求項2】
前記後側サイドメンバの前記前端部が、前記前側サイドメンバの内部に配置されて前記ダッシュクロスメンバ及び前記前側サイドメンバに結合されている請求項1に記載の車両前部構造。
【請求項3】
前記前側サイドメンバの内部に配置されて前記前側サイドメンバ及び前記後側サイドメンバに結合されると共に、車両側面視にて、前側サイドメンバの下板と後側サイドメンバの下板とを2辺とする略三角形状を構成する補強部材、
を有する請求項1又は請求項2に記載の車両前部構造。
【請求項4】
前記補強部材が、サスペンション支持部の結合用とされるサスペンション結合部材を有している請求項3に記載の車両前部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−230602(P2011−230602A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−101324(P2010−101324)
【出願日】平成22年4月26日(2010.4.26)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】