説明

車両後方撮像装置及びこれを用いるバックモニタシステム

【課題】特別なソフトウェアを用いることなく車両後端部の位置に関する基準となりうる像を提供すること。
【解決手段】車両後方撮像装置1であって、車両後部に取り付けられ、車両後方を撮像して後方画像を取得する後方カメラ20と、車両後部に取り付けられ、後方カメラ20の視野内に配置される後端位置指示部材24とを含み、後端位置指示部材24は、車両のリアバンバ30以外の部材であり、後端位置指示部材24は、後方画像内において後端位置指示部材24の像Aが車両後端部の位置に関する基準となる位置に位置するように、後方カメラ20に対して配置されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両後方を撮像する車両後方撮像装置及びこれを用いる車両用バックモニタシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、後方カメラの視野範囲及び取付位置が視野範囲の下側縁部に車両のリアバンバが映り込むように設定されている車両周辺視認装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1には、リアバンバの映り込みによって、表示された撮像画像を見た運転者が、自車と撮像画像中の画像部分との実際の位置関係を把握しやすくなるという意義が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−8197号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、実際の車両においては、視野範囲内にリアバンバが含まれるように後方カメラを搭載した場合でも、後方カメラとリアバンバの間に配置される他の部材の存在に起因して、リアバンバが撮像画像内に映り込まなくなる場合がある。例えば、後方カメラとリアバンバの間に背面タイヤ又はその付属部品が配置される車両の場合、当該背面タイヤ又はその付属部品の存在により、リアバンバが後方カメラの撮像画像内に映り込まなくなる場合がある。このような場合、運転者は、撮像画像内のリアバンバの像を、車両後端部の位置に関する基準として利用することができないため、車両後方の状況(特に車両後方に存在しうる障害物に対する車両の位置関係)を把握し難くなるという問題が生ずる。
【0005】
かかる問題は、後方カメラの撮像画像内にリアバンバに相当する線を直接描画することで解決することは可能であるが、このような解決策では、当該線を描画するためのソフトウェアが必要になり、既存のバックモニタシステムの描画ソフトウェアの変更や描画用のECU設定などが追加的に必要となってしまう。
【0006】
そこで、本発明は、後方カメラとリアバンバの間に配置される他の部材の存在に起因してリアバンバが撮像画像内に映り込まなくなる場合であっても、特別なソフトウェアを用いることなく車両後端部の位置に関する基準となりうる像を提供することができる車両後方撮像装置及びこれを用いるバックモニタシステムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の一局面によれば、車両後方撮像装置であって、
車両後部に取り付けられ、車両後方を撮像して後方画像を取得する後方カメラと、
車両後部に取り付けられ、前記後方カメラの視野内に配置される後端位置指示部材とを含み、
前記後端位置指示部材は、車両のリアバンバ以外の部材であり、
前記後端位置指示部材は、前記後方画像内において前記後端位置指示部材の像が車両後端部の位置に関する基準となる位置に位置するように、前記後方カメラに対して配置されることを特徴とする、車両後方撮像装置が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、後方カメラとリアバンバの間に配置される他の部材の存在に起因してリアバンバが撮像画像内に映り込まなくなる場合であっても、特別なソフトウェアを用いることなく車両後端部の位置に関する基準となりうる像を提供することができる車両後方撮像装置及びこれを用いるバックモニタシステムが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施例による車両後方撮像装置1が搭載される好適な車両の後方斜視図である。
【図2】車両後方撮像装置1の搭載状態の一例を示す斜視図である。
【図3】後方カメラ20の撮像画像の表示状態を模式的に示す図である。
【図4】図4(A)は、後方カメラ20、カメラブラケット22及び後端位置指示部材24の組立体の正面図であり、図4(B)は、同組立体のA−A断面図である。
【図5】本発明の一実施例による車両用バックモニタシステム50の要部を示すシステム構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための最良の形態の説明を行う。
【0011】
図1は、本発明の一実施例による車両後方撮像装置1が搭載される好適な車両の後方斜視図である。図1に示す車両は、背面タイヤ(スペアタイヤ)10をバックドアに搭載するタイプの車両である。車両後方撮像装置1は、後方カメラ20(図2参照)を備え、好ましくは、背面タイヤ10の内部空間12を利用して配置される。
【0012】
図2は、車両後方撮像装置1の搭載状態の一例を示す斜視図である。なお、図2は、斜め左後方から見た斜視図である図1と異なり、斜め右後方から見た斜視図である。
【0013】
背面タイヤ10は、図2に示すように、タイヤガード(キャリア)14により車両のバックドアに取り付けられる。タイヤガード14は、背面タイヤ10の内部空間12を通って延在する。タイヤカバー11は、意匠性のために背面タイヤ10を覆うように設けられる。タイヤカバー11は、意匠性のために、例えば光沢のある塗装(白やシルバーの塗装)が施される。
【0014】
車両後方撮像装置1は、タイヤガード14にカメラブラケット22を介して取り付けられる後方カメラ20を備える。後方カメラ20は、車両後方の風景を撮像するように設置される。後方カメラ20は、それ自体任意の構成であってよく、例えばCCD(charge-coupled device)やCMOS(complementary metal oxide semiconductor)等の撮像素子と広角撮像が可能なレンズ系を有する。
【0015】
後方カメラ20は、車両後方に張り出すタイヤガード14に取り付けられる関係上、典型的には、車両のリアバンパ30(図1参照)よりも後方に配置される。但し、後方カメラ20は、リアバンパ30が視野内に入るような広角な視野を有する。また、後方カメラ20は、車両全長に影響しないように、背面タイヤ10の内部空間12内に配置される。このため、後方カメラ20の視野内には、背面タイヤ10のタイヤカバー11が入ることになる。
【0016】
ところで、このように後方カメラ20の視野内に背面タイヤ10のタイヤカバー11が入る構成では、当該タイヤカバー11が後方カメラ20のリアバンパ30への視線を遮ることになる。このような場合、後方カメラ20によりリアバンパ30の像が捕捉されず、後方カメラ20の撮像画像にリアバンパ30が映らなくなる。後方カメラ20の撮像画像にリアバンパ30が映らない場合、運転者は、撮像画像内のリアバンバ30の像を、車両後端部の位置に関する基準として利用することができないため、車両後方の状況(特に障害物に対する車両の位置関係)を把握し難くなるという問題が生ずる。なお、タイヤカバー11を備えていない構成であっても、背面タイヤ10が後方カメラ20の視野内に入り、当該背面タイヤ10が後方カメラ20のリアバンパ30への視線を遮ることで、同様の問題が生ずる。
【0017】
そこで、本実施例では、車両後方撮像装置1は、後方カメラ20の撮像画像において車両後端部の位置に関する基準となる像を提供する後端位置指示部材24を備える。後端位置指示部材24は、後方カメラ20の撮像画像において車両後端部の位置に関する基準となる像を提供するため、リアバンパ30が視野内に入る位置に設けられる。また、後端位置指示部材24は、同目的のため、後方カメラ20とタイヤカバー11の間に配置される。従って、後端位置指示部材24は、典型的には、後方カメラ20に近接した位置に設けられる。
【0018】
図2に示す例では、後端位置指示部材24は、後方カメラ20の下部を覆うように設けられるカバーの形態を有する。なお、後端位置指示部材24は、好ましくは、後方カメラ20の撮像画像に、反射等せずに確実に映されるように、光沢のない表面(材質)で構成される。尚、後端位置指示部材24は、典型的には、樹脂で形成される。
【0019】
図3は、後方カメラ20の撮像画像の表示状態を模式的に示す図である。後方カメラ20の撮像画像には、図3に示すように、後端位置指示部材24の像が含まれる。なお、図3では、後端位置指示部材24の像は、最後方の線が符号Aにて示されている。これにより、運転者は、撮像画像内の後端位置指示部材24の像(線)Aを、車両後端部の位置に関する基準として利用することができ、車両後方の状況(特に障害物に対する車両の位置関係)を容易且つ的確に把握することができる。
【0020】
後端位置指示部材24は、好ましくは、リアバンバ30と略同一の位置に表示されるように、後方カメラ20に対して配置される。具体的には、後端位置指示部材24が搭載されない状態で、且つ、背面タイヤ10が搭載されていない状態では、後方カメラ20の撮像画像には、リアバンパ30の像が含まれることになる。後端位置指示部材24は、このようなリアバンパ30の像と略同一の位置に表示されるように、後方カメラ20に対して配置される。これにより、撮像画像内の後端位置指示部材24の像(線)Aが、車両後端部の位置に関する基準として適切に機能することができる。なお、ここで“略”同一としているのは、かかる機能を有意に損なわない範囲で(例えば取り付け公差等を考慮し)完全に同一である必要がないことを意味する。
【0021】
また、後端位置指示部材24は、好ましくは、リアバンバ30と略同一の態様で表示されるように、構成される。具体的には、後端位置指示部材24が搭載されない状態で、且つ、背面タイヤ10が搭載されていない状態では、後方カメラ20の撮像画像には、リアバンパ30の像が含まれることになる。後端位置指示部材24は、このようなリアバンパ30の像と略同一の態様(特に線Aの形状)に表示されるように、構成される。これにより、運転者は、リアバンパ30の像が基準となる場合と同様の感覚で撮像画像内の後端位置指示部材24の像を利用して、車両後方の状況を把握することができる。
【0022】
図4は、車両後方撮像装置1の詳細を示す図であり、図4(A)は、後方カメラ20、カメラブラケット22及び後端位置指示部材24の組立体の正面図であり、図4(B)は、同組立体のA−A断面図である。
【0023】
後端位置指示部材24は、図4(B)に示すように、後方カメラ20の下部を覆いつつ後方カメラ20の前部へと延在する。後端位置指示部材24は、図4(B)に示すように、後方カメラ20の前部の下方を覆いつつ、後方カメラ20のレンズ方向へと屈曲して延在する。この屈曲により形成される後端位置指示部材24の端部24aが、撮像画像内の後端位置指示部材24の像(図3参照)を形成し、後端位置指示部材24の端部24aへと遷移する屈曲部が、撮像画像内の後端位置指示部材24の像の線Aを形成する。従って、図4(B)に示す例では、後端位置指示部材24は、特にこの端部24aによりリアバンバ30を模擬する。
【0024】
図5は、本発明の一実施例による車両用バックモニタシステム50の要部を示すシステム構成図である。
【0025】
車両用バックモニタシステム50は、図5に示すように、ECU52を中心として構成される。ECU52は、ハードウェア構成としては、マイクロコンピューターからなり、図示しないバスを介して互いに接続されたCPU、ROM、及びRAM等からなる。
【0026】
ECU52には、上述の車両後方撮像装置1の後方カメラ20が接続される。後方カメラ20は、例えばNTSC方式で、撮像画像をECU52に出力する。なお、ECU52と車両後方撮像装置1の後方カメラ20とは、有線で接続されてもよく、若しくは、無線で接続されてもよい。
【0027】
ECU52には、また、ディスプレイ装置54が接続される。ディスプレイ装置54は、車室内に設けられ、例えばインストルメントパネルに搭載される。ディスプレイ装置54は、任意のディスプレイ装置であってよく、典型的には、液晶ディスプレイ装置(LCD)である。ディスプレイ装置54は、例えばナビゲーションシステムのディスプレイと共用であってよい。なお、ECU52とディスプレイ装置54とは、有線で接続されてもよく、若しくは、無線で接続されてもよい。ECU52は、車両後方撮像装置1の後方カメラ20から入力された撮像画像に基づいて、表示用後方画像を生成してディスプレイ装置54に出力する。これにより、ディスプレイ装置54上に、後方カメラ20の撮像画像に基づく表示用後方画像が表示される(図3参照)。
【0028】
ECU52は、例えばシフトレバーがリバースに変更されたときに、車両後方撮像装置1の後方カメラ20を起動し、表示用後方画像を生成してディスプレイ装置54に出力する。この出力された表示用後方画像には、上述の如く、後端位置指示部材24の像(線)Aが含まれる。従って、この表示用後方画像をディスプレイ装置54を介して見た運転者は、撮像画像内の後端位置指示部材24の像(線)Aを、車両後端部の位置の基準として利用して、車両後方の状況(特に障害物に対する車両の位置関係)を容易且つ的確に把握することができる。尚、ECU52は、表示用後方画像を生成する際、(典型的には、後方走行による駐車時の)運転者の操舵を支援するためのガイド表示を描画してもよい。
【0029】
以上説明した本実施例の車両後方撮像装置1及び車両用バックモニタシステム50によれば、とりわけ、以下のような優れた効果が奏される。
【0030】
上述の如く、後方カメラ20に関連して後端位置指示部材24を設けたので、タイヤカバー11等によりリアバンバ30の像が後方カメラ20により捕捉されない場合であっても、運転者は、撮像画像内の後端位置指示部材24の像A(図3参照)を、車両後端部の位置の基準として利用して、車両後方の状況(特に車両後方に存在しうる障害物に対する車両の位置関係)を容易且つ的確に把握することができる。
【0031】
また、後方カメラ20に関連して後端位置指示部材24を設けるだけで、車両後端部の位置の基準となる像が得られるので、後方カメラ20の撮像画像に、車両後端部を表す基準線を特別に描画する必要がない。これにより、描画ソフトウェアの変更や描画用のECU設定などが不要となる。
【0032】
以上、本発明の好ましい実施例について詳説したが、本発明は、上述した実施例に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0033】
例えば、上述した実施例では、後端位置指示部材24は、後方カメラ20のカバーとして実現されているが、その他の形態も可能である。また、上述した実施例では、後端位置指示部材24は、後方カメラ20と別部材で形成されているが、例えば後方カメラ20の筐体と一体的に形成されてもよい。また、同様の観点から、後端位置指示部材24は、カメラブラケット22のような後方カメラ20の周辺部材と一体的に形成されてもよい。
【0034】
また、上述した実施例では、後端位置指示部材24は、後方カメラ20及びカメラブラケット22と共に組立体として構成されているが、他の態様も可能である。例えば、後端位置指示部材24は、タイヤガード14に取り付けられてもよいし、タイヤガード14とは別に車両のバックドアに取り付けられてもよい。
【0035】
また、上述した実施例では、車両後方撮像装置1の後方カメラ20は、運転者の視覚的な支援のための表示を出力するために撮像画像が利用されているが、これに加えて、その他の利用態様で撮像画像が利用されてもよい。例えば、後方カメラ20の撮像画像は、路面上の白線の位置や種類、各種障害物(例えば他の駐車車両)等を画像処理により認識するために利用されてもよい。
【符号の説明】
【0036】
1 車両後方撮像装置
10 背面タイヤ
11 タイヤカバー
12 内部空間
14 タイヤガード
20 後方カメラ
22 カメラブラケット
24 後端位置指示部材
24a 端部
30 リアバンバ
50 車両用バックモニタシステム
52 ECU52
54 ディスプレイ装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両後部に取り付けられ、車両後方を撮像して後方画像を取得する後方カメラと、
車両後部に取り付けられ、前記後方カメラの視野内に配置される後端位置指示部材とを含み、
前記後端位置指示部材は、車両のリアバンバ以外の部材であり、
前記後端位置指示部材は、前記後方画像内において前記後端位置指示部材の像が車両後端部の位置に関する基準となる位置に位置するように、前記後方カメラに対して配置されることを特徴とする、車両後方撮像装置。
【請求項2】
前記後端位置指示部材は、リアバンバと略同一の位置に表示されるように、前記後方カメラに対して配置される、請求項1に記載の車両後方撮像装置。
【請求項3】
前記後端位置指示部材は、リアバンバと略同一の態様で表示されるように、構成される、請求項1又は2に記載の車両後方撮像装置。
【請求項4】
前記後方カメラは、車両の後部に搭載される背面タイヤ又はその付属部品が視野内に含むが、該視野内の背面タイヤ又はその付属部品に起因してリアバンバが撮像されなくなる位置に搭載される、請求項1〜3のうちのいずれか1項に記載の車両後方撮像装置。
【請求項5】
前記後方カメラは、車両の後部に搭載される背面タイヤを支持する支持部材に設けられる、請求項1〜4のうちのいずれか1項に記載の車両後方撮像装置。
【請求項6】
前記後端位置指示部材は、前記後方カメラに近接して設けられる、請求項1〜5のうちのいずれか1項に記載の車両後方撮像装置。
【請求項7】
前記後端位置指示部材は、前記後方カメラの下部を覆うように設けられるカバーである、請求項6に記載の車両後方撮像装置。
【請求項8】
請求項1〜7のうちのいずれか1項に記載の車両後方撮像装置と、
前記車両後方撮像装置の後方カメラにより撮像された後方画像を表示出力するディスプレイ装置とを備える、車両用バックモニタシステム。

【図3】
image rotate

【図5】
image rotate

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2011−57031(P2011−57031A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−207228(P2009−207228)
【出願日】平成21年9月8日(2009.9.8)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】