車両搭載用前照装置
【課題】
空気抵抗を増大させず、人身を傷害する突起物とならず、汚れに起因する照度低下がなく、車両前面の外観デザインの自由度を制約しない、車両搭載用前照装置を提供する。
【解決手段】
車両本体外表面の内側に収容された前照装置であって、発光素子を内蔵した前照体と、前照体の前面より前方に位置する、1個以上の投光孔を有する車体要素部材と、発光素子が発する光を投光孔から車両外に投光する位置に、前照体を可逆的に移動又は回動させる駆動部と、を備え、前記投光孔が前記車体要素部材を貫通する開放穴からなるものである車両搭載用前照装置。
空気抵抗を増大させず、人身を傷害する突起物とならず、汚れに起因する照度低下がなく、車両前面の外観デザインの自由度を制約しない、車両搭載用前照装置を提供する。
【解決手段】
車両本体外表面の内側に収容された前照装置であって、発光素子を内蔵した前照体と、前照体の前面より前方に位置する、1個以上の投光孔を有する車体要素部材と、発光素子が発する光を投光孔から車両外に投光する位置に、前照体を可逆的に移動又は回動させる駆動部と、を備え、前記投光孔が前記車体要素部材を貫通する開放穴からなるものである車両搭載用前照装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転者の視認性を確保するために道路等を照らす車両搭載用前照装置および清掃機構が組み込まれた車両搭載用前照装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両には前照灯が不可欠であるが、車両に搭載された前照灯は、先行車両が跳ね上げる泥や埃を直接被る。このため、汚れ易く、走行中に照度が低下することがある。特に雨上がり直後に泥道を走行した場合には、泥の舞い上がりが大きいため急速に照度が低下する。夜間走行中における急激な照度の低下は、安全運転に重大な支障をきたす。
【0003】
従来、走行中における前照灯の汚れに起因する照度低下を防止技術が種々提案されており、例えば特許文献1〜4の技術がある。
【0004】
特許文献1は、図19に示すように、前照灯近傍にワイパ−駆動装置を配置して、ワイパ−で前照灯の前面レンズやカバ−表面の汚れを掃き落す技術である。
【0005】
特許文献2は、自動車前方に取り付けられた前照灯ガラス面の前方下側にノズルを配置し、ノズルから噴出させた洗浄液をガラス面に吹き付けることにより、ガラス面を洗浄する技術である(特許文献2Fig.2参照)。
【0006】
特許文献3は、図20に示すリトラクタブルヘッドライトに関する技術であり、ボンネット又はフェンダ等のフロント廻りに対し、その上面に起立された第1照射位置と、その内部に格納された第2照射位置とに切換自在に設置されたことを特徴とする。この技術では、夜間はヘッドランプ(ヘッドライト)を起立させて使用し、昼間はフロント廻りに格納した状態でパッシングライトとして使用する。この技術によると、昼間はヘッドランプが車外に突出していないので、車両のデザイン性が高まると共に、走行抵抗を少なくできる、汚れを少なくできる、というという効果が得られる。
【0007】
特許文献4は、上記した特許文献3を改良した技術であり、起立状態と格納状態とに移動可能とされたヘッドライトと、このヘッドライトの後部に設けれら車体後方へ向けて展開可能とされたエアバックと、ヘッドライトの頂部近傍に設けられエアバックへ空気を導入するエア導入口と、を備えることを特徴とする。この技術によると、ヘッドライトが起立状態にある場合にも車両に作用する空気抵抗及び揚力を低減させることができるとされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】実開平3−118152公報
【特許文献2】特開昭64−67450公報
【特許文献3】特開昭57−182538公報
【特許文献4】特開平6−122342号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記した各従来技術には次のような問題点がある。特許文献1,2の技術は、従来型ヘッドライトを清掃するための技術であり、ヘッドライトを清掃するためのワイパ−やノズル自体が空気抵抗を増加させる要因になる。また、ワイパ−等が車両デザインを害すると共に、車両デザインの自由度を制約する要素となる(図19参照)。
【0010】
特許文献3の技術は、ヘッドライトを車両内側に格納した場合において車両外観のデザイン性が高まる。しかし、ヘッドライトの使用時(夜間)にはライトを車両外表面に突出させる必要があるので、人身事故に際して突出したヘッドライトが人体を大きく傷つける恐れがあり、安全性に問題がある。また、夜間走行時に空気抵抗が増大するという問題がある。
【0011】
特許文献4の技術は、車両外表面に突出させたランプの空気抵抗をある程度減少させることができるものの、突出したヘッドランプが人身事故の際に人体を大きく傷つける恐れがあるという問題が残っている。
【0012】
本発明は上記した問題点を解消するものである。本発明の目的は、空気抵抗を増大させず、人身を傷害する突起物とならず、汚れによる照度低下がなく、しかも車両前面の外観デザインの自由度を制約しない、車両搭載用前照装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するための第1の発明は、車両本体外表面の内側に収容された車両搭載用前照装置であって、発光素子を内蔵した前照体と、前記前照体の前面より前方に位置する、1個以上の投光孔を有する車体要素部材と、前記発光素子が発する光を前記投光孔から車両外に投光する位置に、前記前照体を可逆的に移動又は回動させる駆動部と、を備えることを特徴とする。
【0014】
この構成では、車両要素部材に車両外に光を投光する投光孔を設け、その背後に前照装置を配置すると共に、発光素子を点灯時にのみ投光孔に合致する位置に位置させる構成を採用する。この構成によると、主要部分が車両本体外表面の内側に収容され、外表面には投光孔のみが存在する。そして、車両外表面に存在させる投光孔は、従来型ヘッドライトの大きさ(外周枠)に比較し格段に小さな孔で足りる。よって、車両前面のデザイン自由度が格段に高まる。また、投光孔はリトラクタブルヘッドライトのように点灯時にヘッドライトを車体から突出させるものではなく、単に光を通過させるのみである。
【0015】
よって本発明によると、リトラクタブルヘッドライトのように、点灯時に走行抵抗が増加したり、人身事故の際に人体を損傷させる突起物を形成することがないので、安全性を害する恐れはない。また、本発明では投光孔の後方の車両内部に、発光素子を有する前照体が収容されているので、車両外表面に設けられた従来型ヘッドライトのように、道路から舞い上がる泥等の付着に起因する照度低下がおきにくい。
【0016】
更に上記構成によると、夜間などの点灯時にのみ、発光素子の位置を投光孔に合致させればよいので、非点灯時における汚れが照度低下の原因にならない。更にまた、非点灯時に投光孔から見える部分、すなわち投光孔の背後に位置する前照体前面部分に、車両前面(車両構成部材の表面)と同様な色彩を施すことなどにより、投光孔の存在感を少なくすることができ、更には車両のデザイン性を高めることができる。
【0017】
更にまた、上記構成によると、投光孔を複数設け、及び/又は光軸傾斜度を違えた複数の発光素子を設けるなどすることにより、投光角度を多段階に変えることが可能な車両搭載用前照装置を実現することができる。
【0018】
ここで上記構成における「回動」は正逆方向に円運動または楕円運動する動きを意味し、「移動」は回動以外の運動を意味する。また、「前照体」は、光源を内包した前方を照らす機器を意味し、ヘッドライト、ヘッドランプ、ランプ、前照灯などを包含する最も広い意味で使用されている。
【0019】
第2の発明は、上記第1の発明にかかる車両搭載用前照装置において、前記投光孔が、車体要素部材を貫通する開放穴からなることを特徴とする。
【0020】
前照灯は、先行車両が舞い上げた泥や埃を最も受け易い車両前面に設けられており、従来型の前照灯は車両外表面の一部を兼ねる透明性保護部材でその前面が覆われている(図19参照)。よって、先行車両が舞い上げる泥や埃は、この透明性保護部材に付着し、前照灯の前方を照らす能力を低下させる。然るに上記構成によると、投光孔が車体要素部材を貫通する開放穴からなり、車両外表面に透明性保護部材が存在しないので、汚れにより照度が低下するといったことがない。
【0021】
また、貫通穴からなる投光孔は、走行風や雨水が自由に通過するので、走行風や雨水による前照体前面に対する洗浄効果が期待できる。その一方、投光孔が開放穴であると、先行車両の舞い上げた泥等が前照体前面にまで到達することがあり、これが前照体前面を汚すことがあるが、この汚れが必ずしも前照体の照度低下を来さない。なぜなら、本発明車両搭載用前照装置においては、前照体を可逆的に移動又は可動させ、点灯時においてのみ発光素子と投光孔との位置合わせをする方式を採用しているので、非点灯時(昼間)における汚れ部位は、点灯時の位置(発光素子の位置)と異なるからである。
【0022】
更にまた、上記構成においては、車両要素部材と前照体前面との間に適度な隙間を設けることにより、泥等が前照体前面にまで到達する割合を減少させることができ、これにより前照体前面の汚れを少なくすることができる。以上から、上記構成によると、泥汚れなどによる前照機能の低下(照度低下)が少ない車両搭載用前照装置を提供することができる。
【0023】
第3の発明は、上記第2の発明にかかる車両搭載用前照装置において、前記前照体が、光を透過させる射出領域と、光を透過させない非射出領域とを有する保護部材でその前面が覆われていることを特徴とする。
【0024】
この構成によると、光を投光するときには投光孔に射出領域を対応させ、発光素子を点灯し、これ以外の非点灯時には、投光孔に非射出領域を対応させておくことができる。このようにすると、泥汚れなどによる前照機能の低下を確実に抑制することができる。また、非射出領域に着色したり、模様を施したり、車両要素部材と材質感を同一にするなどにより、非点灯時(昼間)に前照体の存在を知覚できないようにすることができる。また、車両外観のデザイン性・統一性を高めることができる。
【0025】
第4の発明は、上記第1ないし第3の何れかの発明にかかる車両搭載用前照装置において、前記駆動部が前記前照体を可逆的に移動又は回動させることにより、前記前照体を前記発光素子の発光した光の光軸が前記投光孔を通過する第1の位置に位置させ、または前記非射出領域が前記投光孔に対向する第2の位置に位置させることを特徴とする。
【0026】
この構成では、駆動部が前照体を「第1の位置」にまで可逆的に移動又は回動させると、発光素子の発光した光の光軸と投光孔とが合致するようになるので、この段階で発光素子を発光させると、車両前方が照らされることになる。他方、昼間など点灯の必要がないときには、駆動部を駆動させて前照体を「第2の位置」に位置させる。「第2の位置」は投光孔と非照射領域が重なる位置であり、投光孔から非照射領域が見えるので、非照射領域に任意のデザイン、色彩を施すことにより車両前面からの美観を高めることができる。
【0027】
ここで、上記「光軸」は、発光素子から射出される光の束の中心線をいい、狭義の光軸を光の進行方向に延長した延長線も含む意味で使用されている。また、上記各構成においては、例えば、車両の運転席に設けた点灯スイッチが駆動部および/または発光素子に連結されており、点灯スイッチがオンされたときに、前照体が「第1の位置」にまで移動又は回動し、発行素子に通電される。他方、点灯スイッチがオフされたときには、「第2の位置」にまで移動又は回動され、次に点灯スイッチがオンされるまでこの位置に留まるようにシステム構成される。
【0028】
第5の発明は、上記第4の発明にかかる車両搭載用前照装置において、前記車体要素部材が、離間する2つの投光孔を有し、前記前照体が、前記2つの投光孔の何れか一方に対応させるハイビ−ム用発光素子と、他の一つの投光孔に対応させる発光素子であって前記ハイビ−ム用発光素子より投光光が下方に向くようにして調整配置されたロ−ビ−ム用発光素子と、を備え、前記前照体に接続固定された駆動部により、前記前照体が移動又は回動して各々の発光素子の先端が各々に対応する投光孔に対向させられることを特徴とする。
【0029】
この構成では、一方がより遠い前方を照らすためのハイビ−ム用投光孔となり、他方がハイビ−ムより近い前方を照らすためのロ−ビ−ム用投光孔となる。これらの2つの投光孔に対応させたハイビ−ム用とロ−ビ−ム用の2つの発光素子は、投光位置(上記第1の位置)においてハイビ−ム用に比較しロ−ビ−ム用の投光光が下方に傾斜するよう配置されている。また、駆動部が前照体を各々の発光素子の先端が各々に対応する投光孔に対向する位置(「第1の位置」)に移動等させる構造になっている。これにより、発光素子が発光する光を投光孔を通して車両外(道路)に投光可能になる。
【0030】
また、この構成の車両搭載用前照装置においては、2つの発光素子とこれに対応する2つの投光孔とが、同一の「第1の位置」で同時に合致するように設定することもでき、又はそれぞれ異なる「第1の位置」で個別に合致するよう、空間的位置関係を設定してもよい。前者の設定の場合には、同一の「第1の位置」において発光素子への通電を何れか一方に選択的にスイッチングすることにより、瞬時にハイビ−ムとロ−ビ−ムとを切り換えることができる。
【0031】
また、この構成においては、ロ−ビ−ム用の投光孔をハイビ−ム用の投光孔よりも下側に配置する必要はない。2つの投光孔は上下方向、左右方向(横方向配列)、斜め方向の何れの配列でもよい。
【0032】
第6の発明は、上記第5の発明にかかる車両搭載用前照装置において、前記各投光孔と前記各発光素子の空間的位置関係が、前記ハイビ−ム用発光素子が発光した光が、車両水平基準面に対して0〜0.2度下方に投光され、前記ロ−ビ−ム用発光素子が発光した光が、前記車両水平基準面に対し0.2〜5度下方に投光されるよう、規制されていることを特徴とする。
【0033】
ここで「車両水平基準面」とは、車両を支える全ての車輪の中心点を包含する平面に平行な平面(以下、車両水平面という)であって投光孔の中心点を含む平面をいう。
【0034】
第7の発明は、上記第4の発明にかかる車両搭載用前照装置において、前記車両要素部材が、ハイビ−ム用投光孔と前記ハイビ−ム用投光孔よりも下方に設けられた1つ以上のロ−ビ−ム用投光孔とを有し、前記前照体が、1つの発光素子を有し、前記前照体の後端部が前記駆動部に接続固定されており、当該駆動部により前記後端部を基端として、後端部の可動中心点から前記前面の面積中心点を結ぶ仮想線の先端側が前記可動中心点に対し上下方向に傾くように前記前照体を運動させることにより、前記ハイビ−ム用投光孔またはロ−ビ−ム用投光孔に前記発光素子の先端側を対向させることを特徴とする。
【0035】
この構成では、前照体の後端部を基端とし、前照体が傾斜するように上下に運動させる。前照体前方が下方に傾くと、これに伴って前照体の内部に配置した発光素子も下方に傾く。よって、この運動により発光素子先端延長線が車両要素部材をなぞる軌跡上に複数の投光孔を配置すると、より高い側の投光孔がハイビ−ム用投光孔として機能し、これよりも低い位置に設けられた投光孔がロ−ビ−ム用投光孔として機能する。よって、例えば投光孔を3つ設けると、ハイビ−ム、ミドルロ−ビ−ム、ロ−ビ−ムの3つの投光光を形成させることができる。つまり、この構成によると、簡単な構造で前照光の傾きを多段階に変化させることができる車両搭載用前照装置を実現することができる。
【0036】
第8の発明は、上記第7の発明にかかる車両搭載用前照装置において、前記仮想線の傾き角度が、−0.2〜−5度であることを特徴とする。
【0037】
この構成であると、例えばハイビ−ムの車両水平基準面に対する傾斜角度をゼロに設定し、ロ−ビ−ムの車両水平基準面に対する傾きを−0.2〜−5度の範囲で多段階に設定する。これにより、例えば上り坂を走行する場合、下り坂を走行する場合、市街地を走行する場合などごとに、投光光の角度を適正に選択することが可能になる。
【0038】
第9の発明は、上記第1ないし第3の発明の何れかにかかる車両搭載用前照装置において、前記車両要素部材が、1つ以上の投光孔を有し、前記前照体が、その内部に発光素子自体の傾きを可変する可変機構付き発光素子を有し、前記駆動部により、前記可変機構付き発光素子が前記投光孔に対応する位置にまで回動されるとき又はされたときに、前記可変機構付き発光素子の光軸が特定の投光角度に規制されることを特徴とする。
【0039】
第10の発明は、上記第1ないし第9の発明の何れかにかかる車両搭載用前照装置において、前記発光素子が半導体レ−ザを有してなるものであることを特徴とする。
【0040】
半導体レ−ザは、発光効率に優れ、少ない電力でより大きな光度が得られると共に、光の指向性がよい。よって、半導体レ−ザを有してなる発光素子であると、前照体のコンパクト化、省エネルギ−化が図れ、また投光孔を小さくすることができるなどの点で好都合である。
【0041】
この構成における半導体レ−ザを有してなる発光素子は、光源として半導体レ−ザを有するものであればよく、物理的1個の半導体レ−ザを有したものを意味しない。多数の半導体レ−ザ群を有するものであってもよい。
【0042】
また、この構成における半導体レ−ザを有してなる発光素子は、前照面積を広げるために半導体レ−ザの前方に半導体レ−ザの射出光を拡散する拡散層が設けられたものが好ましい。
【0043】
ここで、半導体レ−ザ群からなる発光素子や光散乱層を設けた発光素子の場合における「光軸」は、射出された光束の進行方向に垂直な断面における面積中心点を繋ぐ線とする。
【0044】
第11の発明は、上記第1ないし第10の発明の何れかにかかる車両搭載用前照装置において、前記前照体の前面近傍で且つ前記投光孔からの投光を邪魔しない位置に、前記前照体の前面を清掃する清掃部材が配置されていることを特徴とする。
【0045】
また、第12の発明は、上記第11の発明にかかる車両搭載用前照装置において、前記清掃部材が、前記前照体が移動又は回動する際の動きを利用して前照体前面の汚れをふき取り及び/又は払い落とす部材であり、前記車両部材の内側面に前照体前面に接触し得る状態で配置されていることを特徴とする。
【0046】
一連の本発明は、前照体を可逆的に移動又は回動させることにより、随時、発光素子と投光孔とを位置合わせして、発光素子が発する光を投光孔から車両外に投光する構成を採用している。よって、前照体の前面近傍で且つ前記投光孔からの投光を邪魔しない位置に、前照体前面を清掃する清掃部材が配置されていると、前照体の移動又は回動の度に前照体前面を自動的に清掃させることが可能になる。
【0047】
第13の発明は、上記第11の発明にかかる車両搭載用前照装置において、前記清掃部材が、前記前照体前面に洗浄液及び/又は圧縮空気を吹き付ける流体噴出口であることを特徴とする。
【0048】
この構成では、流体噴出機を備える装置の一部である流体噴出口を前記前照体の前面近傍に配置する。流体噴出口から洗浄液及び/又は圧縮空気を噴出させ、これを前照体前面に吹き付けると、清掃効果が高まる。
【0049】
ここで、上記構成におけるふき取り及び/又は払い落とし部材としては、例えばブラシ、スポンジ、布、布綿、液体噴霧機の噴出口、空気噴出機の噴出口、ワイパ−、超音波照射機などが上げられ、「前照体前面に洗浄液及び/又は圧縮空気を吹き付ける流体噴出口」は、払い落とし部材の一態様である。これらの部材は組み合わせて用いることができ、例えばブラシと液体噴霧機噴出口など、異なる要素を組み合わせて用いることにより一層清掃効果を高めることができる。
【発明の効果】
【0050】
本発明によると、空気抵抗を増大させず、人身を傷害する突起物とならず、汚れによる照度低下がなく、しかも車両前面の外観デザインの自由度を制約しない車両搭載用前照装置を実現することができる。
【0051】
また、本発明によると、簡単な機構でもって点灯と非点灯の切り換えの度に、前照体前面(射出領域および非射出領域)が自動的に清掃される車両搭載用前照装置を実現することができる。本発明にかかる清掃部材は従来技術にかかるワイパ−のように車両外に配置されるものでないので、車両デザイン性や安全性、走行性を害しない。
【0052】
また、本発明によると、1つの発光素子を有した簡単な構造でもって、前照光の傾きを多段階に変化させることのできる前照装置を実現できる。よって、本発明によると、運転者が道路状況に見合った適当なビ−ムを任意に選択可能な車両搭載用前照装置を安価に提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明車両搭載用前照装置が搭載された車両の前面外観を示す正面図である。
【図2】第1実施形態の前照装置を説明する断面模式図であり、(a)は非点灯時、(b)はハイビ−ム点灯時、(c)はロ−ビ−ム点灯時の状態を示す。
【図3】第1実施形態にかかる前照体の前面形状を示す正面模式図である。
【図4】第1実施形態にかかる前照装置を格納容器で覆った様子を表す断面模式図で ある。
【図5】第1実施形態にかかる前照装置の他の態様を説明するための車両前面外観図 および要部拡大透視図であり、(a)は非点灯時、(b)は点灯時を表わす。
【図6】第2実施形態の清掃機能付き前照装置を説明する断面模式図であり、(a)は非点灯時、(b)はロ−ビ−ム点灯時の状態を示す。
【図7】第2実施形態にかかる清掃機能付き前照装置が搭載された車両の前面外観図 およびその要部拡大透視図であり、(a)は非点灯時、(b)は点灯時の状態を示す 。
【図8】清掃機能付き前照装置の他の態様を示す断面模式図であり、(a)は非点灯 時、(b)はハイビ−ム点灯時を示す。
【図9】発光素子の前面が突出した前照体を表した断面模式図である。
【図10】清掃機能付き前照装置が搭載された車両の前面外観図および要部拡大透視 図である。
【図11】第3実施形態の清掃機能付き前照装置を説明する断面模式図であり、(a )は非点灯時、(b)はロ−ビ−ム点灯時の状態を示す。
【図12】ラックアンドピニオン装置の車体への取り付け状態を示す断面模式図であ る。
【図13】第4実施形態の前照装置を説明する断面模式図であり、(a)はハイビ−ム点灯時、(b)はロ−ビ−ム点灯時の状態を示す。
【図14】第4実施形態にかかる前照装置の非点灯時の状態を説明する図であり、( a)は前照装置の断面模式図、(b)は車両前面から見た場合における要部拡大透視 図である。
【図15】第4実施形態における前照体の回転と発光素子の傾きの関係を説明する説明 図である。
【図16】第5実施形態にかかる前照装置を説明する断面模式図であり、(a)はハ イビ−ム点灯時、(b)はロ−ビ−ム点灯時の状態を示す図であり、(c)は発光素 子の支持固定状態を示す正面図である。
【図17】第5実施形態にかかる前照装置を説明する断面模式図であり、(a)はハ イビ−ム点灯時、(b)はロ−ビ−ム点灯時、(c)は非点灯時の状態を示す。
【図18】第6実施形態にかかる前照装置の概要を説明するための断面模式図である 。
【図19】従来技術にかかるワイパ−付きヘッドライトを備えた自動車を示す。
【図20】従来技術にかかるリトラクタブルヘッドライトを備えた自動車を示す。
【発明を実施するための形態】
【0054】
自動車を例にして本発明を実施するための形態を説明する。ただし、本明細書の「車両」は、自動車に限られない。本明細書の「車両」は、電車、フォ−クリフト、自動二輪車、自転車などを含めた最も広い概念で使用されている。
<第1実施形態>
【0055】
図1〜4を参照しつつ第1実施形態を説明する。図1は本発明に係る車両搭載用前照装置が組み込まれた車両(100)の正面外観図である。図1中、符号1は、ボンネットカバ−であり、この例ではボンネットカバ−が車両要素部材となる。
【0056】
符号2・3は投光孔であり、符号2はハイビ−ム用投光孔、符号3はロ−ビ−ム用投光孔である。これら1対の投光孔は、車両100の前面を覆うボンネットカバ−(車両要素部材1)に穿設された貫通穴からなる。
【0057】
貫通穴からなる1対の投光孔2・3からなる投光部101・102が、車両100の前面左右に2つ設けられている。そして、ボンネット内(投光孔2・3の裏側)には、投光部101・102に光を投光する前照装置の本体部分である前照体と前照体を駆動する駆動部が格納されている。
【0058】
図2は、投光部102の投光孔2・3の中心点を通る平面で前照装置を切断した断面模式図である。図2に基づいて前照装置の各要素を説明する。図2中、符号4は前照体であり、符号5はハイビ−ム用発光素子、符号6はロ−ビ−ム用発光素子である。なお、前照体4は発光素子を内蔵するための容器であるが、発光素子との関係において必要な場合には内面を反射鏡としたり、不活性ガスで満たすなどする。
【0059】
この実施形態における発光素子5・6は、光源として半導体レ−ザ素子とその先端側に配置された拡散層を含み構成されており、発光素子5・6自体は、図示しない支持部材により前照体4内に固定されている。支持部材としては、例えば両端(足部分)が前照体4の壁面に固定され、中央部分で発光素子を固定し支持するブリッジ部材が例示できるが、これに限られない。
【0060】
符号8は、駆動モ−タを備えた駆動部であり、前照体4がその後端部7を介して駆動部8に回動可能に固定されている。
【0061】
図3は、前照体4を前方から見た正面模式図である。前照体4の前面には、保護部材9が配されている。この保護部材9は、発光素子の先端から射出される光を透過させる射出領域10・10(光透過部分)と、その余の部分である非射出領域11を有している。保護部材9は、例えば透明プラスチックからなり、非射出領域11は、例えば車両要素部材1(ボンネットカバ−)の表面と同様な質感を与える色彩が施されている。これにより非投光時における投光孔2・3の存在感を少なくして、車両前面の美観を向上させている。
【0062】
前照体4および駆動部8は、車両100のボンネット内に収容された状態で車両に固定されておればよく、固定方法について特段の制約はない。また、前照体4は必ずしもカバ−を必要としないが、図4に示すように、前照体の全体を覆う格納容器12内に格納するのもよい。
【0063】
図4は、前照装置を格納容器12で覆った様子を示す断面模式図である。図4に示すように、格納容器12には、投光孔から進入してくる走行風や水、埃などを車外に逃すための穴13を設けるのがよい。格納容器12の材質としては、軽量であることから、例えばプラスチックやアルミニウムが好ましい。また、格納容器12の固定方法にも特段の制限がなく、ボンネットの内部に安全に且つ安定的に支持固定できる方法であればよい。
【0064】
次に、前照体4の構成要素であるハイビ−ム用発光素子5およびロ−ビ−ム用発光素子6と投光孔2・3の空間的位置関係について説明する。ここでハイビ−ムとは、より遠い前方を照らす光であり、ロ−ビ−ムとは、ハイビ−ムよりも近い前方を照らす光である。一般道路を走行する車両には、対向車両の運転者の目を眩惑させない下方向きの光が必須であるので、ロ−ビ−ム用発光素子6の傾きを設定するに際してはこの要件を考慮する。
【0065】
第1実施の形態においては、車体要素部材であるボンネットカバ−に、上下方向に離間する2つの投光孔2・3が設けられている。また、これらの投光孔2・3との関係において、前照体4は、その回転中心(回転軸)が投光穴2よりも高くなるようにし、かつ前照体4の前面が常に投光孔2・3に面対偶した状態で回転されるように位置決めされて配置されている。更に、前照体4の内部の発光素子5・6は、前照体前面の回転中心点から外周に延ばした1つの仮想直線上(円形の場合は1つ半径線上)に発光素子5・6の出光先端が並び、且つ両出光先端の間隔が投光孔2・3に対応するように位置決めされ、配置されている。
【0066】
更にまた、発光素子5・6は、投光孔2・3に位置合わせされたとき(この位置が発光素子の光が投光可能となる「第1の位置」である)、ハイビ−ム用発光素子5からの投光光の光軸110が車両水平基準面に対し0〜−0.2度となり、ロ−ビ−ム用発光素子6からの投光光の光軸111が車両水平基準面に対し−0.2〜−5度、好ましくは−0.5〜−1度になるように、各々の発光素子の傾きが調整されて前照体4内部に固定されている。
【0067】
このような構造であると、前照体4を回転軸の周りに回転させると、前照体4の内部に配置されたハイビ−ム用発光素子5とロ−ビ−ム用発光素子6とが、投光孔2・3の各々に同時に位置合わせされる。
【0068】
上記投光孔2・3は、通常、タイヤの接地面から1m程度の高さに設けられ、1対の投光孔の間隔は1〜2cmとする。また、投光孔の形状は、通常、直径2〜4cm程度の円または楕円形状とするが、方形や多角形であってもよい。なお、投光孔の形状を上下方向の楕円とすると、投光光の地面を照らす角度を可変し易くなる。
【0069】
ここで第1実施形態では、投光孔をボンネットカバ−に穿設したが、これに限られるものではない。前照させるのに都合のよい部位であって、車両内部に前照体及び駆動部を収容できる余裕空間がある部分であればよい。また、第1実施形態では上側の穴をハイビ−ム用の投光孔2とし、下側の穴をロ−ビ−ム用の投光孔3としたがこれに限られない。上下逆でもよく、一対の投光孔を左右方向に配置してもよい。ただし、一対の穴とビ−ムの種類との関係を変えるには、前照体に内蔵された発光素子の光軸との関係において各要素の空間的位置関係を調整する必要がある。
【0070】
図5に、一対の投光孔を左右方向に設けた場合における車両外観図と拡大透視図を示す。図5の拡大透視図は、車両外側の投光孔2・3と車両内側の一対の発光素子との位置関係を表しており、図5(a)は非点灯時、図5(b)は点灯時を示している。また、図5においては投光部102を示す破線○は、ボンネット内に収納されている前照体4の前面の輪郭を表している。
【0071】
次に、図2(a)〜(c)を参照しつつ、前照装置の駆動方法を説明する。図2(a)は、1対の投光孔2・3に非射出領域11を対向させた非点灯時の状態を示している(この位置が「第2の位置」に相当する)。第1実施形態では、非射出領域11をボンネットカバ−の外表面の色彩と同じ色彩(又は質感)としてある。これにより、非点灯時における投光孔2・3が、ボンネットカバ−の色彩の中に溶け込む。よって投光孔の存在により車両のデザイン性が害されない。
【0072】
図2(b)は、1対の投光孔2・3に射出領域10・10を面対向させた状態(「第1の位置」における状態)であり、この状態が点灯可能状態である。ここで、駆動部8内の駆動モ−タは電源に接続され(不図示)、発光素子5・6は後端部7を経由するリ−ド線により、車両電源(例えば蓄電池)に接続されている(不図示)。そして、これらへの通電を制御する点灯スイッチが、車両100の運転席に設けられている。点灯スイッチは、例えば点灯OFF、ハイビ−ムON、ロ−ビ−ムONの3通りとなっている。
【0073】
例えば、前照体4が図2(a)の状態にあるときに、運転者がハイビ−ム用点灯スイッチをONにすると、駆動モ−タにより図2(a)状態から図2(b)状態にまで前照体4が回転される。そしてこれと同時又は上記ONと同時に、ハイビ−ム用発光素子5が点灯されてハイビ−ムが車両前方に投光される。
【0074】
前照体4が図2(a)の状態にあるときに、ロ−ビ−ム用スイッチがONされたときにも、同様に動作して、ロ−ビ−ムが車両前方に投光される(図2c)。
【0075】
他方、ハイビ−ム用スイッチ又はロ−ビ−ム用スイッチの何れかがON状態のときに(前照体4が図2(b)又は(c)の状態にあるときに)、ハイビ−ム←→ロ−ビ−ムの切り換えを行うと、直ちにビ−ムのみの切り換えが行われる。更に、ハイビ−ムON又はロ−ビ−ムONの何れかの状態のときに、点灯スイッチを点灯OFFにすると、発光素子5・6への通電が解除されると共に、前照体4が回転して図2(a)の状態に戻ることになる。
【0076】
点灯スイッチのON,OFFにおける回転角度は、例えば180度とし、一方方向に回転させるようにする。ただし、回転角度は、点灯領域10と非点灯領域11の位置交換が完全にできればよく、180度である必要はない。例えば「第1の位置」と「第2の位置」の間の回転角度を90度とし、「第1の位置」と「第2の位置」との間を正逆方向90度の回転で切り換えるようにしてもよい。
【0077】
以上に説明したように第1実施形態では、車両要素部材(ボンネットカバ−)に2つの投光孔を設け、ハイビ−ム用発光素子とロ−ビ−ム用発光素子とを「第1の位置」において同時に合致させる構造とした。よって、夜間走行においては、前照体4を第1の位置に止めたままで適宜ハイビ−ムとロ−ビ−ムの切り換えを行うようにするのが好ましい。他方、昼間走行時においては、原則として投光孔2・3部分に非射出領域11を位置させる「第2の位置」に止めておく。ここで上記したように非射出領域11にはボンネットカバ−と同様な色彩が施されているので、車両外観が明瞭に視認できる昼間時における外観デザイン性が投光孔の存在によって害されることがない。また、非射出領域11は光を投光しない部分であるので、昼間走行時における前照体前面の汚れが前照機能の低下をもたらすといったことがない。
【0078】
なお、投光孔2・3を、光透過性の部材で蓋してもよい。また、点灯スイッチの切り換え態様は適当に定めればよく、例えば点灯OFF、ハイビ−ムON、ロ−ビ−ムON、ハイビ−ム&ロ−ビ−ムON、としてもよく、またこれと共に光強度を多段階に変更できるようにしてもよい。
【0079】
<第2実施形態>
第2実施形態は、前照体4の前面を清掃する清掃部材が、ボンネット内の前照体4の近傍に配置されている点において、前記第1実施形態と相違しており、これ以外の点については第1実施形態と同様である。
【0080】
図6,7に基づいて第2実施形態を説明する。図6は、第1実施形態の場合と同様、投光部102の投光孔2・3の中心を含む平面で車両に搭載された前照装置を切断した場合における断面模式図である。図中、符号14が清掃部材であるブラシである。このブラシ14は前照体の前面9に接触可能にボンネットカバ−(車両要素部材1)の内側面に固定されている。
【0081】
符号15〜19は、流体噴出機を有する清掃機構であり、第2実施形態における清掃機構は、洗浄液を噴出する噴出口15(清掃部材)、洗浄液を輸送する輸送チュ−ブ16、洗浄液を送り出す流体噴出機17(噴射ポンプ)、洗浄液19を溜めておく貯蔵タンク18で構成されている。そして、流体噴出機17は車両100の運転席に設けられた洗浄液噴射ボタン(不図示)と接続されており、洗浄液噴射ボタンがONされると、噴出口15から洗浄液が前照体前面9に向かって噴出されるようになっている。
【0082】
なお、符号19は、貯蔵タンク18に貯蔵された洗浄水を表している。
【0083】
図7は、第2実施形態にかかる車両搭載用前照装置が搭載された車両の前面外観図である。図面左に記載された拡大透視図は、投光孔2・3と前照体前面およびブラシ14との位置関係を表した平面透視図である。上記拡大透視図の破線○が前照体の外郭を示しており、図7(a)が非点灯状態、図7(b)が点灯状態を示している。図7(a)の拡大透視図には、発光素子5・6が描かれていないが、発光素子5・6はブラシ14の奥に存在する。
【0084】
第2実施形態にかかる前照装置の点灯・非点灯の動作は、上記第1実施形態で説明したと同様である。点灯スイッチOFFの時に、図6(a)の状態となり、ロ−ビ−ム点灯スイッチがONされた時に、図6(b)の状態になる。つまり、点灯スイッチのON,OFFの度に前照体4が回転して前照体前面9が動くので、この際に、前照体前面9に接触させて配置されたブラシ14により、前照体前面(発光素子5・6の先端部分である照射領域10と非照射領域11の双方)の汚れが清掃される。
【0085】
また、運転車が洗浄液噴出ボタンをONした場合には、噴出口15から洗浄液が噴出され、洗浄液で前照体前面9が洗浄される。なお、点灯スイッチのON,OFFに同期させて洗浄液を噴出させることもでき、このようにすると、ブラシの清掃効果が一層高まる。
【0086】
また、上記では前照体前面をふき取り及び又は払い落す部材としてブラシを用いたが、ブラシに代えスポンジ、布、綿、紙、又は駆動式ワイパ−などを用いることができる。また上記では洗浄液を噴射して清掃する方式を示したが、洗浄液に代えて圧縮空気を噴出する方式でもよい。
【0087】
また、従来車両にはフロントガラスを洗浄するための洗浄液を供給する洗浄液供給機構(洗浄液噴出機、洗浄液タンクなど)が設けられているので、従来車両が備える洗浄液噴出機および洗浄液タンクを、上記貯蔵タンク18及び洗浄液19と兼用させるのもよい。
【0088】
また、上記ではブラシ14を上側に位置させた図6,7に示す要素配置例を示したが、各要素の配置は、車高、投光孔の取り付け位置、ボンネット内の収納スペ−ス上の都合などを考慮し適当に設定すればよい。例えば、図8(a)、(b)に示すように、前照体4の回転中心軸よりも高い位置に一対の投光孔2・3を設け、清掃部材(ブラシ14、噴出口15)を前照体4の回転中心軸よりも低い位置に配置した構造としてもよい。
【0089】
なお、図8に示す車両搭載用前照装置では、前照体4が回転され、その内部にある一対の発光素子5・6が上方に位置したときが、「第1の位置」)になり、この位置において車両外への投光が可能となる。また内側の発光素子がロ−ビ−ム用発光素子6として機能し、外側の発光素子がハイビ−ム用発光素子5として機能することになる。
【0090】
また、前照体の前面は必ずしも面一である必要はないので、図9に示すように、発光素子の先端が突出した形状であってもよく、また、図10のように、清掃部材(ブラシ14)を一対の投光孔を横側に配置することもできる。
【0091】
<第3実施形態>
第3実施形態は、ラックアンドピニオン装置を用いて前照体を上下方向に直線運動させることにより、点灯状態と非点灯状態を切り換える方式の車両搭載用前照装置に関する。図11,12に基づいて、第3実施形態を説明する。なお、第3実施形態は、前照体を上下方向に直線方向に往復運動させる点以外については、上記第2実施形態と概ね同様である。よって、第1〜2実施形態と同様な部材についは同一符号を付しその説明を省略する。
【0092】
図11は、光軸方向線とラックアンドピニオン装置の取付穴け含む平面で切断した場合における断面模式図であり、(a)は非点灯状態、(b)はロ−ビ−ム非点灯状態を示す。図11中、符号41および42は、1つの発光素子を内蔵したハイビ−ム用前照体およびロ−ビ−ム用の前照体であり、発光素子の光源として半導体レ−ザが用いられている。
【0093】
また、符号20はラックギア、21はラックギアを動かすピニオンギアである。ラックギア20の上端側には前照体41・42を取り付ける取付穴が2つ設けられており、この取付穴にハイビ−ム用前照体とロ−ビ−ム用前照体が取り付けられ、これらの前照体の発光素子は通電可能になっている。
【0094】
図12は、ラックアンドピニオン装置の概要を示す図であり、ラックギアの直線運動方向に直交する方向における断面模式図である。この図中、符号22はピニオンギア21を正逆方向に回転するモ−タ、符号23はモ−タ21を支えるモ−タ支持体、符号25は車両100を構成する車体部材(車体の一部)、符号24はラックギア20を車体部材25に支持固定させるラック車体固定部材である。
【0095】
図11(a)、(b)に示すように、投光孔2.3の上側にブラシ14と洗浄液の噴出口15が配置され、またその周辺に噴出口15より洗浄液を噴出させるための一連の要素(輸送チュ−ブ16、流体噴出機17、洗浄液タンク18)が配置されている。
【0096】
また、ラックギア20の車両要素部材1側の面(非点灯時に投光孔から見える面)には、ボンネットカバ−と同様な色彩が施されている。この色彩が施された面が上記第1実施形態における非照射領域と同様に機能することになる。
【0097】
図11、12から明らかなように、第3実施形態にかかる車両搭載用前照装置では、ピニオンギアの回転により、ラックギア20が下方の「第1の位置」にまで移動したときに、前照体41・42からの射出光の光軸が投光孔2・3に合致する。この位置で前照体41・42内の発光素子(不図示)の何れかに通電し、ハイビ−ム又はロ−ビ−ムを車両外に投光させる。
【0098】
他方、非点灯時には、ピニオンギアを上記と逆方向に回転させラックギア20を上方の「第2の位置」にまで移動させる。このような上下運動の度に前照体前面に接触しているブラシ14により前照体前面が清掃される。また、必要に応じて噴射させた洗浄液で前照体前面が洗浄される。
【0099】
なお、第1、第2の実施形態では、1つの前照体内にハイビ−ム用発光素子とロ−ビ−ム用発光素子を内蔵させたが、第3実施形態では、1つの発光素子を有する小型の前照体を2つ用いる。この理由は、前照体の回転により発光素子の空間的位置を変化させる第1〜第2の実施形態においては、2つの発光素子を内蔵した一つの前照体を回転駆動するのが合理的であるのに対し、上下方向の直線往復運動により発光素子の位置を変化させる方式の場合には、個別の前照体2つを配置しても不都合が生じないからである。
【0100】
ただし、ハイビ−ム用発光素子とロ−ビ−ム用発光素子とを内蔵させた1つの前照体(例えば図6の前照体4)を上限方向に直線運動させることによっても、点灯状態と非点灯状態の位置変えができる。また、本明細書では前照体と発光素子とを区別して使用しているが、第3実施形態の場合には、前照体が発光素子そのものであってもよい。
【0101】
<第4実施形態>
第4実施形態は、発光素子の先端側を傾斜運動させることにより、1つの発光素子でハイビ−ムとロ−ビ−ムとを投光させる方式の車両搭載用前照装置に関する。図13〜15を参照しつつ、第4実施形態にかかる前照装置を説明する。
【0102】
この実施の形態では、前照体43内に発光素子26が1つ設けられ、車体要素部材1には上下方向に離間させたハイビ−ム用投光孔2とロ−ビ−ム用投光孔3が設けられている。この実施の形態では、前照体43が、その回転軸29が車両水平面に対し前方に傾斜するように傾けた状態で駆動モ−タ8に取り付けられており、前照体43を回転させ、1つの発光素子をハイビ−ム用投光孔2とロ−ビ−ム用投光孔3に合致させることにより、ハイビ−ムとロ−ビ−ムを選択的に投光させる。
【0103】
図13〜図15に基づいて第4実施形態にかかる車両搭載用前照装置の詳細を説明する。図13(a)は、前照体43内の発光素子26がハイビ−ム投光孔2に合致する位置に位置した状態を示す。図13(a)の状態において発光素子26の光が投光孔2を通過でき、かつ発光素子26の光軸が0〜0.2度下方に傾くように、投光孔2と発光素子26および発光素子と前照体26との空間的位置が決定され配置されている。
【0104】
図13(b)は、前照体43がロ−ビ−ム投光孔3に合致する位置に位置した状態を示す。図13(b)の状態においては発光素子26の光が投光孔3を通過でき、かつ発光素子26の光軸が0.2〜5度下方に傾くように、投光孔2と発光素子26および発光素子と前照体26との空間的位置が予め調整され配置されている。
【0105】
なお、図13(a)、(b)の何れもが投光可能な位置であるので、「第1の位置」、すなわち発光素子の発光した光の光軸が投光孔を通過する「第1の位置」は、2箇所あることになる。
【0106】
図14(a)は、発光素子26が投光孔2・3の何れの孔にも合致しない位置、すなわち「第2の位置」に位置した状態を示す断面模式図である。この図では発光素子26は断面の奥に存在するので、発光素子26を破線で描いてある。図14(b)は、車両前方(車両要素部材1外面側)から見た場合における投光孔周囲の拡大透視図である。
【0107】
図14(b)に示すように、発光素子26は投光孔2・3からは見えない位置(投光孔2・3の横)に位置しており、第1実施形態に記載したと同様、非射出領域が投光孔2・3に合致する位置に位置している。なお、符号43は前照体43の輪郭を表している。
【0108】
図15は、第4実施形態の原理を説明する図である。図15に基づいて、前照体43の回転と発光素子26の傾きの関係を説明する。図15中、符号27はハイビ−ムの光軸延長線、符号29は前照体回転軸、符号28はロ−ビ−ム光軸延長線、θは前照体回転軸とハイビ−ムの光軸延長線またはロ−ビ−ム光軸延長線との角度である。
【0109】
第4実施形態では、図13〜14に示すように、投光孔2・3が上下方向に離間して配列され、上側に配置した投光孔2がハイビ−ム用投光孔として機能し、下側に配置した投光孔3がロ−ビ−ム用投光孔とし機能するように設定されている。そして、発光素子26が最も上に来たときに発光素子先端とハイビ−ム用投光孔2とが合致し、最下位に来たときにロ−ビ−ム用投光孔3と合致するように構成されている。この構造の第4実施形態にかかる車両搭載用前照装置は例えば次のようにして構成する。
【0110】
前照体43の回転軸が車両水平面30に対しθだけ傾くように、駆動モ−タ8に前照体43の後端部を接続固定する。この条件において、前照体を回転させて発光素子26が最も上方に位置したとき、発光素子26の光軸(27)が車両水平面30に対しα(好ましくは0〜0.2度)となるようにし、かつ光軸延長線27が通過する位置に投光孔2を設ける。
【0111】
次いで、前照体43を回転させて発光素子26が最も下方に位置したときにおける光軸延長線27の上に投光孔3を設ける。なお、光軸の傾き角度は光進行方向に対する下向きの角度を指す。また、発光素子26が最も下方に位置したときにおける光軸傾きは、好ましくは0.2〜5度とする(この傾きをβとする)。
【0112】
上記条件におけるハイビ−ムの投光角度は、〔α〕となる。またロ−ビ−ムの投光角度は〔α+2θ〕となる(図15参照)。よって、例えばθを0.5度とし、αを0度とすると、ハイビ−ムの投光角度は、0度となり、ロ−ビ−ムの投光角度は、1.0度となる。
【0113】
図15の原理から自ずと明らかであるが、回転軸を傾斜させる第4実施形態にかかる方式によると、発光素子26の移動軌跡上に2以上の投光孔を設けることにより、2以上の異なる傾斜の投光光を射出させることが可能になる。例えば、投光孔2・3の中心点を通る円周上に第3、第4の投光孔を設ければ、第1から第4にまで4段階の傾斜光を射出させることのできる前照装置を構成することができる。
【0114】
なお、この方式においても、清掃部材を付加することができることは勿論である。
【0115】
<第5実施形態>
第5実施形態は、発光素子自体を直接上下方向に傾斜させることにより、投光光の角度を変化させる方式に関する。図16,17に基づいて第5実施形態にかかる前照装置について説明する。
【0116】
図16は、発光素子の傾斜方法を説明するための断面模式図である。図16に示すように、前照体44内に発光素子31が配置されている。この発光素子31は、図16(c)に示すように、可動支持軸33により前照体44の内壁に固定されている。
【0117】
また、発光素子31の後端側には上下可動ピン32が取り付けらている。上下可動ピン32は、発光素子31の後端側を上下方向に動かす部材である。可動支持軸33は、発光素子31の両側から前照体44の内壁に延びる支持軸であり、発光素子31は可動支持軸33を回転中心として上下可動ピン32の前進後退運動に応じて先端側が遥動するようになっている。
【0118】
上下可動ピン32は上下方向に伸縮または移動するものであればよく、その機構には特に制限がない。例えば小型モ−タの正逆回転を前進後退の直線運動に変換する機構を用いればよい。
【0119】
上下可動ピン32の上下運動と投光角度の関係について説明する。図16(a)は、ハイビ−ム(27)を投光する状態である。この状態は上下可動ピン32が後退(または短縮)した場合に形成される。図16(b)は、ロ−ビ−ム(28)を投光する状態であり、この状態は上下可動ピン32が前進(または伸長)した場合に形成される。図16(b)のδは、ハイビ−ムとロ−ビ−ム投光角度差である。図16(a)のハイビ−ムにおける、車両水平基準面に対する投光角度は、0〜−0.2度程度に設定され、ロ−ビ−ムの投光角度は、−0.2〜−5度程度に設定されている。
【0120】
図17(a)〜(c)に基づいて、この実施形態にかかる前照装置を車両に搭載した場合における使用状況をさらに説明する。図17(a)〜(c)に示すように、第5実施形態では、上下可動ピン32により発光素子31を直接傾斜運動させ、更に前照体自体(44)も駆動モ−タ(駆動部8)により回転駆動させ、更に前照体前面に配置された清掃部材14・15により清掃できる構造になっている。なお、図17(a)〜(c)に図示されていない点灯スイッチ等の制御系は、上記第2実施形態と同様である。
【0121】
図17(a)〜(c)において、運転者がハイビ−ム点灯スイッチをONすると、前照体44が「第1の位置」にまで回転駆動され、かつ上下可動ピン32が後退(または短縮)する。これにより先端側が外周側に傾斜させられた発光素子31の先端が、ハイ・ロ−兼用投光孔34に対応する位置に位置する。この状態で発光素子から光が放出されると、ハイ・ロ−兼用投光孔34からハイビ−ムが投光されることになる(図17(a))。
【0122】
次に、ハイビ−ム投光状態にあるとき、運転車がロ−ビ−ム点灯スイッチをONすると、上下可動ピン32が前進(または伸長)して発光素子31の先端側が外周側から内側に傾斜する。これにより発光素子31の光軸が下側に傾斜する。この状態で発光素子から光が放出されると、ハイ・ロ−兼用投光孔34からロ−ビ−ムが投光される(図17(b))。
【0123】
次に、ハイビ−ム点灯スイッチとロ−ビ−ム点灯スイッチの何れもがOFFされると、前照体44が「第2の位置」にまで回転駆動され、前照体前面の非射出領域がハイ・ロ−兼用投光孔34に対応する位置に位置する(図17(c))。
【0124】
前照体のこの回転により、前照体前面が清掃部材(ブラシ)14で自動的に清掃される。また、運転者の操作により、清掃部材(噴出口)15から噴出させた洗浄液で前照体前面が清掃される。
【0125】
ここで上記の説明においては、ハイビ−ムとロ−ビ−ムと2段階切り換えの例を示したが、この実施の形態においては、発光素子31の光軸の傾きを上下可動ピン32の前進後退運動により連続的に変化させることができるが、発光素子31の光軸の傾き大きく変化させたい場合(前記δを大きくしたい場合)には、上下方向に長い楕円形状のハイ・ロ−兼用投光孔34とするのがよい。
【0126】
<第6実施形態>
第6実施形態は、第5実施形態に比べ小型の前照体を用い、前照体自体を上下方向に傾ける方式の前照装置に関する。図18にその要点を説明するための断面模式図を示す。
【0127】
図18に示すように、発光素子を内蔵する前照体44の後端部が駆動部35に接続されている。この実施の形態では、駆動部35が前照体の先端側を、その後端側を基端として上下方向に傾斜させることにより、発光素子(不図示)の光軸がハイビ−ム用投光孔2又はロ−ビ−ム用投光孔3の何れかに合致するように運動させる構造になっている。
【産業上の利用可能性】
【0128】
本発明によると、空気抵抗を増大させず、人身を傷害する突起物を形成せず、汚れに起因する照度低下がなく、車両前面の外観デザインの自由度を制約しない、車両搭載用前照装置を提供することができる。よって、本発明は、産業上の利用可能性が高い。
【符号の説明】
【0129】
1 車両要素部材(ボンネットカバ−)
2 ハイビ−ム用投光孔
3 ロ−ビ−ム用投光孔
4、41,42,43,44 前照体
5 ハイビ−ム用発光素子
6 ロ−ビ−ム用発光素子
7 後端部
8 駆動部
9 前照体前面
10 射出領域
11 非射出領域
12 格納容器
13 穴
14 ブラシ(清掃部材)
15 噴出口(清掃部材)
16 輸送チュ−ブ
17 流体噴出機(洗浄液噴射ポンプ)
18 タンク
19 洗浄液
20 ラックギア
21 ピニオンギア
22 モ−タ
23 モ−タ支持体
24 ラック車体固定部材
25 車体部材
26 ハイ・ロウ兼用発光素子
27 ハイビ−ム光軸延長線
28 ロ−ビ−ム光軸延長線
29 前照体回転軸
30 車両水平面(地面)
31 可変機構付き発光素子
32 上下可動ピン
33 可動支点
34 ハイ・ロウ兼用投光孔
35 上下動駆動部
100 車両
101 右投光部
102 左投光部
110 ハイビ−ム
111 ロ−ビ−ム
200 ボンネットカバ−
201 ヘッドライト
202 ヘッドライトワイパ−
203 リトラクタブルヘッドライト
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転者の視認性を確保するために道路等を照らす車両搭載用前照装置および清掃機構が組み込まれた車両搭載用前照装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両には前照灯が不可欠であるが、車両に搭載された前照灯は、先行車両が跳ね上げる泥や埃を直接被る。このため、汚れ易く、走行中に照度が低下することがある。特に雨上がり直後に泥道を走行した場合には、泥の舞い上がりが大きいため急速に照度が低下する。夜間走行中における急激な照度の低下は、安全運転に重大な支障をきたす。
【0003】
従来、走行中における前照灯の汚れに起因する照度低下を防止技術が種々提案されており、例えば特許文献1〜4の技術がある。
【0004】
特許文献1は、図19に示すように、前照灯近傍にワイパ−駆動装置を配置して、ワイパ−で前照灯の前面レンズやカバ−表面の汚れを掃き落す技術である。
【0005】
特許文献2は、自動車前方に取り付けられた前照灯ガラス面の前方下側にノズルを配置し、ノズルから噴出させた洗浄液をガラス面に吹き付けることにより、ガラス面を洗浄する技術である(特許文献2Fig.2参照)。
【0006】
特許文献3は、図20に示すリトラクタブルヘッドライトに関する技術であり、ボンネット又はフェンダ等のフロント廻りに対し、その上面に起立された第1照射位置と、その内部に格納された第2照射位置とに切換自在に設置されたことを特徴とする。この技術では、夜間はヘッドランプ(ヘッドライト)を起立させて使用し、昼間はフロント廻りに格納した状態でパッシングライトとして使用する。この技術によると、昼間はヘッドランプが車外に突出していないので、車両のデザイン性が高まると共に、走行抵抗を少なくできる、汚れを少なくできる、というという効果が得られる。
【0007】
特許文献4は、上記した特許文献3を改良した技術であり、起立状態と格納状態とに移動可能とされたヘッドライトと、このヘッドライトの後部に設けれら車体後方へ向けて展開可能とされたエアバックと、ヘッドライトの頂部近傍に設けられエアバックへ空気を導入するエア導入口と、を備えることを特徴とする。この技術によると、ヘッドライトが起立状態にある場合にも車両に作用する空気抵抗及び揚力を低減させることができるとされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】実開平3−118152公報
【特許文献2】特開昭64−67450公報
【特許文献3】特開昭57−182538公報
【特許文献4】特開平6−122342号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記した各従来技術には次のような問題点がある。特許文献1,2の技術は、従来型ヘッドライトを清掃するための技術であり、ヘッドライトを清掃するためのワイパ−やノズル自体が空気抵抗を増加させる要因になる。また、ワイパ−等が車両デザインを害すると共に、車両デザインの自由度を制約する要素となる(図19参照)。
【0010】
特許文献3の技術は、ヘッドライトを車両内側に格納した場合において車両外観のデザイン性が高まる。しかし、ヘッドライトの使用時(夜間)にはライトを車両外表面に突出させる必要があるので、人身事故に際して突出したヘッドライトが人体を大きく傷つける恐れがあり、安全性に問題がある。また、夜間走行時に空気抵抗が増大するという問題がある。
【0011】
特許文献4の技術は、車両外表面に突出させたランプの空気抵抗をある程度減少させることができるものの、突出したヘッドランプが人身事故の際に人体を大きく傷つける恐れがあるという問題が残っている。
【0012】
本発明は上記した問題点を解消するものである。本発明の目的は、空気抵抗を増大させず、人身を傷害する突起物とならず、汚れによる照度低下がなく、しかも車両前面の外観デザインの自由度を制約しない、車両搭載用前照装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するための第1の発明は、車両本体外表面の内側に収容された車両搭載用前照装置であって、発光素子を内蔵した前照体と、前記前照体の前面より前方に位置する、1個以上の投光孔を有する車体要素部材と、前記発光素子が発する光を前記投光孔から車両外に投光する位置に、前記前照体を可逆的に移動又は回動させる駆動部と、を備えることを特徴とする。
【0014】
この構成では、車両要素部材に車両外に光を投光する投光孔を設け、その背後に前照装置を配置すると共に、発光素子を点灯時にのみ投光孔に合致する位置に位置させる構成を採用する。この構成によると、主要部分が車両本体外表面の内側に収容され、外表面には投光孔のみが存在する。そして、車両外表面に存在させる投光孔は、従来型ヘッドライトの大きさ(外周枠)に比較し格段に小さな孔で足りる。よって、車両前面のデザイン自由度が格段に高まる。また、投光孔はリトラクタブルヘッドライトのように点灯時にヘッドライトを車体から突出させるものではなく、単に光を通過させるのみである。
【0015】
よって本発明によると、リトラクタブルヘッドライトのように、点灯時に走行抵抗が増加したり、人身事故の際に人体を損傷させる突起物を形成することがないので、安全性を害する恐れはない。また、本発明では投光孔の後方の車両内部に、発光素子を有する前照体が収容されているので、車両外表面に設けられた従来型ヘッドライトのように、道路から舞い上がる泥等の付着に起因する照度低下がおきにくい。
【0016】
更に上記構成によると、夜間などの点灯時にのみ、発光素子の位置を投光孔に合致させればよいので、非点灯時における汚れが照度低下の原因にならない。更にまた、非点灯時に投光孔から見える部分、すなわち投光孔の背後に位置する前照体前面部分に、車両前面(車両構成部材の表面)と同様な色彩を施すことなどにより、投光孔の存在感を少なくすることができ、更には車両のデザイン性を高めることができる。
【0017】
更にまた、上記構成によると、投光孔を複数設け、及び/又は光軸傾斜度を違えた複数の発光素子を設けるなどすることにより、投光角度を多段階に変えることが可能な車両搭載用前照装置を実現することができる。
【0018】
ここで上記構成における「回動」は正逆方向に円運動または楕円運動する動きを意味し、「移動」は回動以外の運動を意味する。また、「前照体」は、光源を内包した前方を照らす機器を意味し、ヘッドライト、ヘッドランプ、ランプ、前照灯などを包含する最も広い意味で使用されている。
【0019】
第2の発明は、上記第1の発明にかかる車両搭載用前照装置において、前記投光孔が、車体要素部材を貫通する開放穴からなることを特徴とする。
【0020】
前照灯は、先行車両が舞い上げた泥や埃を最も受け易い車両前面に設けられており、従来型の前照灯は車両外表面の一部を兼ねる透明性保護部材でその前面が覆われている(図19参照)。よって、先行車両が舞い上げる泥や埃は、この透明性保護部材に付着し、前照灯の前方を照らす能力を低下させる。然るに上記構成によると、投光孔が車体要素部材を貫通する開放穴からなり、車両外表面に透明性保護部材が存在しないので、汚れにより照度が低下するといったことがない。
【0021】
また、貫通穴からなる投光孔は、走行風や雨水が自由に通過するので、走行風や雨水による前照体前面に対する洗浄効果が期待できる。その一方、投光孔が開放穴であると、先行車両の舞い上げた泥等が前照体前面にまで到達することがあり、これが前照体前面を汚すことがあるが、この汚れが必ずしも前照体の照度低下を来さない。なぜなら、本発明車両搭載用前照装置においては、前照体を可逆的に移動又は可動させ、点灯時においてのみ発光素子と投光孔との位置合わせをする方式を採用しているので、非点灯時(昼間)における汚れ部位は、点灯時の位置(発光素子の位置)と異なるからである。
【0022】
更にまた、上記構成においては、車両要素部材と前照体前面との間に適度な隙間を設けることにより、泥等が前照体前面にまで到達する割合を減少させることができ、これにより前照体前面の汚れを少なくすることができる。以上から、上記構成によると、泥汚れなどによる前照機能の低下(照度低下)が少ない車両搭載用前照装置を提供することができる。
【0023】
第3の発明は、上記第2の発明にかかる車両搭載用前照装置において、前記前照体が、光を透過させる射出領域と、光を透過させない非射出領域とを有する保護部材でその前面が覆われていることを特徴とする。
【0024】
この構成によると、光を投光するときには投光孔に射出領域を対応させ、発光素子を点灯し、これ以外の非点灯時には、投光孔に非射出領域を対応させておくことができる。このようにすると、泥汚れなどによる前照機能の低下を確実に抑制することができる。また、非射出領域に着色したり、模様を施したり、車両要素部材と材質感を同一にするなどにより、非点灯時(昼間)に前照体の存在を知覚できないようにすることができる。また、車両外観のデザイン性・統一性を高めることができる。
【0025】
第4の発明は、上記第1ないし第3の何れかの発明にかかる車両搭載用前照装置において、前記駆動部が前記前照体を可逆的に移動又は回動させることにより、前記前照体を前記発光素子の発光した光の光軸が前記投光孔を通過する第1の位置に位置させ、または前記非射出領域が前記投光孔に対向する第2の位置に位置させることを特徴とする。
【0026】
この構成では、駆動部が前照体を「第1の位置」にまで可逆的に移動又は回動させると、発光素子の発光した光の光軸と投光孔とが合致するようになるので、この段階で発光素子を発光させると、車両前方が照らされることになる。他方、昼間など点灯の必要がないときには、駆動部を駆動させて前照体を「第2の位置」に位置させる。「第2の位置」は投光孔と非照射領域が重なる位置であり、投光孔から非照射領域が見えるので、非照射領域に任意のデザイン、色彩を施すことにより車両前面からの美観を高めることができる。
【0027】
ここで、上記「光軸」は、発光素子から射出される光の束の中心線をいい、狭義の光軸を光の進行方向に延長した延長線も含む意味で使用されている。また、上記各構成においては、例えば、車両の運転席に設けた点灯スイッチが駆動部および/または発光素子に連結されており、点灯スイッチがオンされたときに、前照体が「第1の位置」にまで移動又は回動し、発行素子に通電される。他方、点灯スイッチがオフされたときには、「第2の位置」にまで移動又は回動され、次に点灯スイッチがオンされるまでこの位置に留まるようにシステム構成される。
【0028】
第5の発明は、上記第4の発明にかかる車両搭載用前照装置において、前記車体要素部材が、離間する2つの投光孔を有し、前記前照体が、前記2つの投光孔の何れか一方に対応させるハイビ−ム用発光素子と、他の一つの投光孔に対応させる発光素子であって前記ハイビ−ム用発光素子より投光光が下方に向くようにして調整配置されたロ−ビ−ム用発光素子と、を備え、前記前照体に接続固定された駆動部により、前記前照体が移動又は回動して各々の発光素子の先端が各々に対応する投光孔に対向させられることを特徴とする。
【0029】
この構成では、一方がより遠い前方を照らすためのハイビ−ム用投光孔となり、他方がハイビ−ムより近い前方を照らすためのロ−ビ−ム用投光孔となる。これらの2つの投光孔に対応させたハイビ−ム用とロ−ビ−ム用の2つの発光素子は、投光位置(上記第1の位置)においてハイビ−ム用に比較しロ−ビ−ム用の投光光が下方に傾斜するよう配置されている。また、駆動部が前照体を各々の発光素子の先端が各々に対応する投光孔に対向する位置(「第1の位置」)に移動等させる構造になっている。これにより、発光素子が発光する光を投光孔を通して車両外(道路)に投光可能になる。
【0030】
また、この構成の車両搭載用前照装置においては、2つの発光素子とこれに対応する2つの投光孔とが、同一の「第1の位置」で同時に合致するように設定することもでき、又はそれぞれ異なる「第1の位置」で個別に合致するよう、空間的位置関係を設定してもよい。前者の設定の場合には、同一の「第1の位置」において発光素子への通電を何れか一方に選択的にスイッチングすることにより、瞬時にハイビ−ムとロ−ビ−ムとを切り換えることができる。
【0031】
また、この構成においては、ロ−ビ−ム用の投光孔をハイビ−ム用の投光孔よりも下側に配置する必要はない。2つの投光孔は上下方向、左右方向(横方向配列)、斜め方向の何れの配列でもよい。
【0032】
第6の発明は、上記第5の発明にかかる車両搭載用前照装置において、前記各投光孔と前記各発光素子の空間的位置関係が、前記ハイビ−ム用発光素子が発光した光が、車両水平基準面に対して0〜0.2度下方に投光され、前記ロ−ビ−ム用発光素子が発光した光が、前記車両水平基準面に対し0.2〜5度下方に投光されるよう、規制されていることを特徴とする。
【0033】
ここで「車両水平基準面」とは、車両を支える全ての車輪の中心点を包含する平面に平行な平面(以下、車両水平面という)であって投光孔の中心点を含む平面をいう。
【0034】
第7の発明は、上記第4の発明にかかる車両搭載用前照装置において、前記車両要素部材が、ハイビ−ム用投光孔と前記ハイビ−ム用投光孔よりも下方に設けられた1つ以上のロ−ビ−ム用投光孔とを有し、前記前照体が、1つの発光素子を有し、前記前照体の後端部が前記駆動部に接続固定されており、当該駆動部により前記後端部を基端として、後端部の可動中心点から前記前面の面積中心点を結ぶ仮想線の先端側が前記可動中心点に対し上下方向に傾くように前記前照体を運動させることにより、前記ハイビ−ム用投光孔またはロ−ビ−ム用投光孔に前記発光素子の先端側を対向させることを特徴とする。
【0035】
この構成では、前照体の後端部を基端とし、前照体が傾斜するように上下に運動させる。前照体前方が下方に傾くと、これに伴って前照体の内部に配置した発光素子も下方に傾く。よって、この運動により発光素子先端延長線が車両要素部材をなぞる軌跡上に複数の投光孔を配置すると、より高い側の投光孔がハイビ−ム用投光孔として機能し、これよりも低い位置に設けられた投光孔がロ−ビ−ム用投光孔として機能する。よって、例えば投光孔を3つ設けると、ハイビ−ム、ミドルロ−ビ−ム、ロ−ビ−ムの3つの投光光を形成させることができる。つまり、この構成によると、簡単な構造で前照光の傾きを多段階に変化させることができる車両搭載用前照装置を実現することができる。
【0036】
第8の発明は、上記第7の発明にかかる車両搭載用前照装置において、前記仮想線の傾き角度が、−0.2〜−5度であることを特徴とする。
【0037】
この構成であると、例えばハイビ−ムの車両水平基準面に対する傾斜角度をゼロに設定し、ロ−ビ−ムの車両水平基準面に対する傾きを−0.2〜−5度の範囲で多段階に設定する。これにより、例えば上り坂を走行する場合、下り坂を走行する場合、市街地を走行する場合などごとに、投光光の角度を適正に選択することが可能になる。
【0038】
第9の発明は、上記第1ないし第3の発明の何れかにかかる車両搭載用前照装置において、前記車両要素部材が、1つ以上の投光孔を有し、前記前照体が、その内部に発光素子自体の傾きを可変する可変機構付き発光素子を有し、前記駆動部により、前記可変機構付き発光素子が前記投光孔に対応する位置にまで回動されるとき又はされたときに、前記可変機構付き発光素子の光軸が特定の投光角度に規制されることを特徴とする。
【0039】
第10の発明は、上記第1ないし第9の発明の何れかにかかる車両搭載用前照装置において、前記発光素子が半導体レ−ザを有してなるものであることを特徴とする。
【0040】
半導体レ−ザは、発光効率に優れ、少ない電力でより大きな光度が得られると共に、光の指向性がよい。よって、半導体レ−ザを有してなる発光素子であると、前照体のコンパクト化、省エネルギ−化が図れ、また投光孔を小さくすることができるなどの点で好都合である。
【0041】
この構成における半導体レ−ザを有してなる発光素子は、光源として半導体レ−ザを有するものであればよく、物理的1個の半導体レ−ザを有したものを意味しない。多数の半導体レ−ザ群を有するものであってもよい。
【0042】
また、この構成における半導体レ−ザを有してなる発光素子は、前照面積を広げるために半導体レ−ザの前方に半導体レ−ザの射出光を拡散する拡散層が設けられたものが好ましい。
【0043】
ここで、半導体レ−ザ群からなる発光素子や光散乱層を設けた発光素子の場合における「光軸」は、射出された光束の進行方向に垂直な断面における面積中心点を繋ぐ線とする。
【0044】
第11の発明は、上記第1ないし第10の発明の何れかにかかる車両搭載用前照装置において、前記前照体の前面近傍で且つ前記投光孔からの投光を邪魔しない位置に、前記前照体の前面を清掃する清掃部材が配置されていることを特徴とする。
【0045】
また、第12の発明は、上記第11の発明にかかる車両搭載用前照装置において、前記清掃部材が、前記前照体が移動又は回動する際の動きを利用して前照体前面の汚れをふき取り及び/又は払い落とす部材であり、前記車両部材の内側面に前照体前面に接触し得る状態で配置されていることを特徴とする。
【0046】
一連の本発明は、前照体を可逆的に移動又は回動させることにより、随時、発光素子と投光孔とを位置合わせして、発光素子が発する光を投光孔から車両外に投光する構成を採用している。よって、前照体の前面近傍で且つ前記投光孔からの投光を邪魔しない位置に、前照体前面を清掃する清掃部材が配置されていると、前照体の移動又は回動の度に前照体前面を自動的に清掃させることが可能になる。
【0047】
第13の発明は、上記第11の発明にかかる車両搭載用前照装置において、前記清掃部材が、前記前照体前面に洗浄液及び/又は圧縮空気を吹き付ける流体噴出口であることを特徴とする。
【0048】
この構成では、流体噴出機を備える装置の一部である流体噴出口を前記前照体の前面近傍に配置する。流体噴出口から洗浄液及び/又は圧縮空気を噴出させ、これを前照体前面に吹き付けると、清掃効果が高まる。
【0049】
ここで、上記構成におけるふき取り及び/又は払い落とし部材としては、例えばブラシ、スポンジ、布、布綿、液体噴霧機の噴出口、空気噴出機の噴出口、ワイパ−、超音波照射機などが上げられ、「前照体前面に洗浄液及び/又は圧縮空気を吹き付ける流体噴出口」は、払い落とし部材の一態様である。これらの部材は組み合わせて用いることができ、例えばブラシと液体噴霧機噴出口など、異なる要素を組み合わせて用いることにより一層清掃効果を高めることができる。
【発明の効果】
【0050】
本発明によると、空気抵抗を増大させず、人身を傷害する突起物とならず、汚れによる照度低下がなく、しかも車両前面の外観デザインの自由度を制約しない車両搭載用前照装置を実現することができる。
【0051】
また、本発明によると、簡単な機構でもって点灯と非点灯の切り換えの度に、前照体前面(射出領域および非射出領域)が自動的に清掃される車両搭載用前照装置を実現することができる。本発明にかかる清掃部材は従来技術にかかるワイパ−のように車両外に配置されるものでないので、車両デザイン性や安全性、走行性を害しない。
【0052】
また、本発明によると、1つの発光素子を有した簡単な構造でもって、前照光の傾きを多段階に変化させることのできる前照装置を実現できる。よって、本発明によると、運転者が道路状況に見合った適当なビ−ムを任意に選択可能な車両搭載用前照装置を安価に提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明車両搭載用前照装置が搭載された車両の前面外観を示す正面図である。
【図2】第1実施形態の前照装置を説明する断面模式図であり、(a)は非点灯時、(b)はハイビ−ム点灯時、(c)はロ−ビ−ム点灯時の状態を示す。
【図3】第1実施形態にかかる前照体の前面形状を示す正面模式図である。
【図4】第1実施形態にかかる前照装置を格納容器で覆った様子を表す断面模式図で ある。
【図5】第1実施形態にかかる前照装置の他の態様を説明するための車両前面外観図 および要部拡大透視図であり、(a)は非点灯時、(b)は点灯時を表わす。
【図6】第2実施形態の清掃機能付き前照装置を説明する断面模式図であり、(a)は非点灯時、(b)はロ−ビ−ム点灯時の状態を示す。
【図7】第2実施形態にかかる清掃機能付き前照装置が搭載された車両の前面外観図 およびその要部拡大透視図であり、(a)は非点灯時、(b)は点灯時の状態を示す 。
【図8】清掃機能付き前照装置の他の態様を示す断面模式図であり、(a)は非点灯 時、(b)はハイビ−ム点灯時を示す。
【図9】発光素子の前面が突出した前照体を表した断面模式図である。
【図10】清掃機能付き前照装置が搭載された車両の前面外観図および要部拡大透視 図である。
【図11】第3実施形態の清掃機能付き前照装置を説明する断面模式図であり、(a )は非点灯時、(b)はロ−ビ−ム点灯時の状態を示す。
【図12】ラックアンドピニオン装置の車体への取り付け状態を示す断面模式図であ る。
【図13】第4実施形態の前照装置を説明する断面模式図であり、(a)はハイビ−ム点灯時、(b)はロ−ビ−ム点灯時の状態を示す。
【図14】第4実施形態にかかる前照装置の非点灯時の状態を説明する図であり、( a)は前照装置の断面模式図、(b)は車両前面から見た場合における要部拡大透視 図である。
【図15】第4実施形態における前照体の回転と発光素子の傾きの関係を説明する説明 図である。
【図16】第5実施形態にかかる前照装置を説明する断面模式図であり、(a)はハ イビ−ム点灯時、(b)はロ−ビ−ム点灯時の状態を示す図であり、(c)は発光素 子の支持固定状態を示す正面図である。
【図17】第5実施形態にかかる前照装置を説明する断面模式図であり、(a)はハ イビ−ム点灯時、(b)はロ−ビ−ム点灯時、(c)は非点灯時の状態を示す。
【図18】第6実施形態にかかる前照装置の概要を説明するための断面模式図である 。
【図19】従来技術にかかるワイパ−付きヘッドライトを備えた自動車を示す。
【図20】従来技術にかかるリトラクタブルヘッドライトを備えた自動車を示す。
【発明を実施するための形態】
【0054】
自動車を例にして本発明を実施するための形態を説明する。ただし、本明細書の「車両」は、自動車に限られない。本明細書の「車両」は、電車、フォ−クリフト、自動二輪車、自転車などを含めた最も広い概念で使用されている。
<第1実施形態>
【0055】
図1〜4を参照しつつ第1実施形態を説明する。図1は本発明に係る車両搭載用前照装置が組み込まれた車両(100)の正面外観図である。図1中、符号1は、ボンネットカバ−であり、この例ではボンネットカバ−が車両要素部材となる。
【0056】
符号2・3は投光孔であり、符号2はハイビ−ム用投光孔、符号3はロ−ビ−ム用投光孔である。これら1対の投光孔は、車両100の前面を覆うボンネットカバ−(車両要素部材1)に穿設された貫通穴からなる。
【0057】
貫通穴からなる1対の投光孔2・3からなる投光部101・102が、車両100の前面左右に2つ設けられている。そして、ボンネット内(投光孔2・3の裏側)には、投光部101・102に光を投光する前照装置の本体部分である前照体と前照体を駆動する駆動部が格納されている。
【0058】
図2は、投光部102の投光孔2・3の中心点を通る平面で前照装置を切断した断面模式図である。図2に基づいて前照装置の各要素を説明する。図2中、符号4は前照体であり、符号5はハイビ−ム用発光素子、符号6はロ−ビ−ム用発光素子である。なお、前照体4は発光素子を内蔵するための容器であるが、発光素子との関係において必要な場合には内面を反射鏡としたり、不活性ガスで満たすなどする。
【0059】
この実施形態における発光素子5・6は、光源として半導体レ−ザ素子とその先端側に配置された拡散層を含み構成されており、発光素子5・6自体は、図示しない支持部材により前照体4内に固定されている。支持部材としては、例えば両端(足部分)が前照体4の壁面に固定され、中央部分で発光素子を固定し支持するブリッジ部材が例示できるが、これに限られない。
【0060】
符号8は、駆動モ−タを備えた駆動部であり、前照体4がその後端部7を介して駆動部8に回動可能に固定されている。
【0061】
図3は、前照体4を前方から見た正面模式図である。前照体4の前面には、保護部材9が配されている。この保護部材9は、発光素子の先端から射出される光を透過させる射出領域10・10(光透過部分)と、その余の部分である非射出領域11を有している。保護部材9は、例えば透明プラスチックからなり、非射出領域11は、例えば車両要素部材1(ボンネットカバ−)の表面と同様な質感を与える色彩が施されている。これにより非投光時における投光孔2・3の存在感を少なくして、車両前面の美観を向上させている。
【0062】
前照体4および駆動部8は、車両100のボンネット内に収容された状態で車両に固定されておればよく、固定方法について特段の制約はない。また、前照体4は必ずしもカバ−を必要としないが、図4に示すように、前照体の全体を覆う格納容器12内に格納するのもよい。
【0063】
図4は、前照装置を格納容器12で覆った様子を示す断面模式図である。図4に示すように、格納容器12には、投光孔から進入してくる走行風や水、埃などを車外に逃すための穴13を設けるのがよい。格納容器12の材質としては、軽量であることから、例えばプラスチックやアルミニウムが好ましい。また、格納容器12の固定方法にも特段の制限がなく、ボンネットの内部に安全に且つ安定的に支持固定できる方法であればよい。
【0064】
次に、前照体4の構成要素であるハイビ−ム用発光素子5およびロ−ビ−ム用発光素子6と投光孔2・3の空間的位置関係について説明する。ここでハイビ−ムとは、より遠い前方を照らす光であり、ロ−ビ−ムとは、ハイビ−ムよりも近い前方を照らす光である。一般道路を走行する車両には、対向車両の運転者の目を眩惑させない下方向きの光が必須であるので、ロ−ビ−ム用発光素子6の傾きを設定するに際してはこの要件を考慮する。
【0065】
第1実施の形態においては、車体要素部材であるボンネットカバ−に、上下方向に離間する2つの投光孔2・3が設けられている。また、これらの投光孔2・3との関係において、前照体4は、その回転中心(回転軸)が投光穴2よりも高くなるようにし、かつ前照体4の前面が常に投光孔2・3に面対偶した状態で回転されるように位置決めされて配置されている。更に、前照体4の内部の発光素子5・6は、前照体前面の回転中心点から外周に延ばした1つの仮想直線上(円形の場合は1つ半径線上)に発光素子5・6の出光先端が並び、且つ両出光先端の間隔が投光孔2・3に対応するように位置決めされ、配置されている。
【0066】
更にまた、発光素子5・6は、投光孔2・3に位置合わせされたとき(この位置が発光素子の光が投光可能となる「第1の位置」である)、ハイビ−ム用発光素子5からの投光光の光軸110が車両水平基準面に対し0〜−0.2度となり、ロ−ビ−ム用発光素子6からの投光光の光軸111が車両水平基準面に対し−0.2〜−5度、好ましくは−0.5〜−1度になるように、各々の発光素子の傾きが調整されて前照体4内部に固定されている。
【0067】
このような構造であると、前照体4を回転軸の周りに回転させると、前照体4の内部に配置されたハイビ−ム用発光素子5とロ−ビ−ム用発光素子6とが、投光孔2・3の各々に同時に位置合わせされる。
【0068】
上記投光孔2・3は、通常、タイヤの接地面から1m程度の高さに設けられ、1対の投光孔の間隔は1〜2cmとする。また、投光孔の形状は、通常、直径2〜4cm程度の円または楕円形状とするが、方形や多角形であってもよい。なお、投光孔の形状を上下方向の楕円とすると、投光光の地面を照らす角度を可変し易くなる。
【0069】
ここで第1実施形態では、投光孔をボンネットカバ−に穿設したが、これに限られるものではない。前照させるのに都合のよい部位であって、車両内部に前照体及び駆動部を収容できる余裕空間がある部分であればよい。また、第1実施形態では上側の穴をハイビ−ム用の投光孔2とし、下側の穴をロ−ビ−ム用の投光孔3としたがこれに限られない。上下逆でもよく、一対の投光孔を左右方向に配置してもよい。ただし、一対の穴とビ−ムの種類との関係を変えるには、前照体に内蔵された発光素子の光軸との関係において各要素の空間的位置関係を調整する必要がある。
【0070】
図5に、一対の投光孔を左右方向に設けた場合における車両外観図と拡大透視図を示す。図5の拡大透視図は、車両外側の投光孔2・3と車両内側の一対の発光素子との位置関係を表しており、図5(a)は非点灯時、図5(b)は点灯時を示している。また、図5においては投光部102を示す破線○は、ボンネット内に収納されている前照体4の前面の輪郭を表している。
【0071】
次に、図2(a)〜(c)を参照しつつ、前照装置の駆動方法を説明する。図2(a)は、1対の投光孔2・3に非射出領域11を対向させた非点灯時の状態を示している(この位置が「第2の位置」に相当する)。第1実施形態では、非射出領域11をボンネットカバ−の外表面の色彩と同じ色彩(又は質感)としてある。これにより、非点灯時における投光孔2・3が、ボンネットカバ−の色彩の中に溶け込む。よって投光孔の存在により車両のデザイン性が害されない。
【0072】
図2(b)は、1対の投光孔2・3に射出領域10・10を面対向させた状態(「第1の位置」における状態)であり、この状態が点灯可能状態である。ここで、駆動部8内の駆動モ−タは電源に接続され(不図示)、発光素子5・6は後端部7を経由するリ−ド線により、車両電源(例えば蓄電池)に接続されている(不図示)。そして、これらへの通電を制御する点灯スイッチが、車両100の運転席に設けられている。点灯スイッチは、例えば点灯OFF、ハイビ−ムON、ロ−ビ−ムONの3通りとなっている。
【0073】
例えば、前照体4が図2(a)の状態にあるときに、運転者がハイビ−ム用点灯スイッチをONにすると、駆動モ−タにより図2(a)状態から図2(b)状態にまで前照体4が回転される。そしてこれと同時又は上記ONと同時に、ハイビ−ム用発光素子5が点灯されてハイビ−ムが車両前方に投光される。
【0074】
前照体4が図2(a)の状態にあるときに、ロ−ビ−ム用スイッチがONされたときにも、同様に動作して、ロ−ビ−ムが車両前方に投光される(図2c)。
【0075】
他方、ハイビ−ム用スイッチ又はロ−ビ−ム用スイッチの何れかがON状態のときに(前照体4が図2(b)又は(c)の状態にあるときに)、ハイビ−ム←→ロ−ビ−ムの切り換えを行うと、直ちにビ−ムのみの切り換えが行われる。更に、ハイビ−ムON又はロ−ビ−ムONの何れかの状態のときに、点灯スイッチを点灯OFFにすると、発光素子5・6への通電が解除されると共に、前照体4が回転して図2(a)の状態に戻ることになる。
【0076】
点灯スイッチのON,OFFにおける回転角度は、例えば180度とし、一方方向に回転させるようにする。ただし、回転角度は、点灯領域10と非点灯領域11の位置交換が完全にできればよく、180度である必要はない。例えば「第1の位置」と「第2の位置」の間の回転角度を90度とし、「第1の位置」と「第2の位置」との間を正逆方向90度の回転で切り換えるようにしてもよい。
【0077】
以上に説明したように第1実施形態では、車両要素部材(ボンネットカバ−)に2つの投光孔を設け、ハイビ−ム用発光素子とロ−ビ−ム用発光素子とを「第1の位置」において同時に合致させる構造とした。よって、夜間走行においては、前照体4を第1の位置に止めたままで適宜ハイビ−ムとロ−ビ−ムの切り換えを行うようにするのが好ましい。他方、昼間走行時においては、原則として投光孔2・3部分に非射出領域11を位置させる「第2の位置」に止めておく。ここで上記したように非射出領域11にはボンネットカバ−と同様な色彩が施されているので、車両外観が明瞭に視認できる昼間時における外観デザイン性が投光孔の存在によって害されることがない。また、非射出領域11は光を投光しない部分であるので、昼間走行時における前照体前面の汚れが前照機能の低下をもたらすといったことがない。
【0078】
なお、投光孔2・3を、光透過性の部材で蓋してもよい。また、点灯スイッチの切り換え態様は適当に定めればよく、例えば点灯OFF、ハイビ−ムON、ロ−ビ−ムON、ハイビ−ム&ロ−ビ−ムON、としてもよく、またこれと共に光強度を多段階に変更できるようにしてもよい。
【0079】
<第2実施形態>
第2実施形態は、前照体4の前面を清掃する清掃部材が、ボンネット内の前照体4の近傍に配置されている点において、前記第1実施形態と相違しており、これ以外の点については第1実施形態と同様である。
【0080】
図6,7に基づいて第2実施形態を説明する。図6は、第1実施形態の場合と同様、投光部102の投光孔2・3の中心を含む平面で車両に搭載された前照装置を切断した場合における断面模式図である。図中、符号14が清掃部材であるブラシである。このブラシ14は前照体の前面9に接触可能にボンネットカバ−(車両要素部材1)の内側面に固定されている。
【0081】
符号15〜19は、流体噴出機を有する清掃機構であり、第2実施形態における清掃機構は、洗浄液を噴出する噴出口15(清掃部材)、洗浄液を輸送する輸送チュ−ブ16、洗浄液を送り出す流体噴出機17(噴射ポンプ)、洗浄液19を溜めておく貯蔵タンク18で構成されている。そして、流体噴出機17は車両100の運転席に設けられた洗浄液噴射ボタン(不図示)と接続されており、洗浄液噴射ボタンがONされると、噴出口15から洗浄液が前照体前面9に向かって噴出されるようになっている。
【0082】
なお、符号19は、貯蔵タンク18に貯蔵された洗浄水を表している。
【0083】
図7は、第2実施形態にかかる車両搭載用前照装置が搭載された車両の前面外観図である。図面左に記載された拡大透視図は、投光孔2・3と前照体前面およびブラシ14との位置関係を表した平面透視図である。上記拡大透視図の破線○が前照体の外郭を示しており、図7(a)が非点灯状態、図7(b)が点灯状態を示している。図7(a)の拡大透視図には、発光素子5・6が描かれていないが、発光素子5・6はブラシ14の奥に存在する。
【0084】
第2実施形態にかかる前照装置の点灯・非点灯の動作は、上記第1実施形態で説明したと同様である。点灯スイッチOFFの時に、図6(a)の状態となり、ロ−ビ−ム点灯スイッチがONされた時に、図6(b)の状態になる。つまり、点灯スイッチのON,OFFの度に前照体4が回転して前照体前面9が動くので、この際に、前照体前面9に接触させて配置されたブラシ14により、前照体前面(発光素子5・6の先端部分である照射領域10と非照射領域11の双方)の汚れが清掃される。
【0085】
また、運転車が洗浄液噴出ボタンをONした場合には、噴出口15から洗浄液が噴出され、洗浄液で前照体前面9が洗浄される。なお、点灯スイッチのON,OFFに同期させて洗浄液を噴出させることもでき、このようにすると、ブラシの清掃効果が一層高まる。
【0086】
また、上記では前照体前面をふき取り及び又は払い落す部材としてブラシを用いたが、ブラシに代えスポンジ、布、綿、紙、又は駆動式ワイパ−などを用いることができる。また上記では洗浄液を噴射して清掃する方式を示したが、洗浄液に代えて圧縮空気を噴出する方式でもよい。
【0087】
また、従来車両にはフロントガラスを洗浄するための洗浄液を供給する洗浄液供給機構(洗浄液噴出機、洗浄液タンクなど)が設けられているので、従来車両が備える洗浄液噴出機および洗浄液タンクを、上記貯蔵タンク18及び洗浄液19と兼用させるのもよい。
【0088】
また、上記ではブラシ14を上側に位置させた図6,7に示す要素配置例を示したが、各要素の配置は、車高、投光孔の取り付け位置、ボンネット内の収納スペ−ス上の都合などを考慮し適当に設定すればよい。例えば、図8(a)、(b)に示すように、前照体4の回転中心軸よりも高い位置に一対の投光孔2・3を設け、清掃部材(ブラシ14、噴出口15)を前照体4の回転中心軸よりも低い位置に配置した構造としてもよい。
【0089】
なお、図8に示す車両搭載用前照装置では、前照体4が回転され、その内部にある一対の発光素子5・6が上方に位置したときが、「第1の位置」)になり、この位置において車両外への投光が可能となる。また内側の発光素子がロ−ビ−ム用発光素子6として機能し、外側の発光素子がハイビ−ム用発光素子5として機能することになる。
【0090】
また、前照体の前面は必ずしも面一である必要はないので、図9に示すように、発光素子の先端が突出した形状であってもよく、また、図10のように、清掃部材(ブラシ14)を一対の投光孔を横側に配置することもできる。
【0091】
<第3実施形態>
第3実施形態は、ラックアンドピニオン装置を用いて前照体を上下方向に直線運動させることにより、点灯状態と非点灯状態を切り換える方式の車両搭載用前照装置に関する。図11,12に基づいて、第3実施形態を説明する。なお、第3実施形態は、前照体を上下方向に直線方向に往復運動させる点以外については、上記第2実施形態と概ね同様である。よって、第1〜2実施形態と同様な部材についは同一符号を付しその説明を省略する。
【0092】
図11は、光軸方向線とラックアンドピニオン装置の取付穴け含む平面で切断した場合における断面模式図であり、(a)は非点灯状態、(b)はロ−ビ−ム非点灯状態を示す。図11中、符号41および42は、1つの発光素子を内蔵したハイビ−ム用前照体およびロ−ビ−ム用の前照体であり、発光素子の光源として半導体レ−ザが用いられている。
【0093】
また、符号20はラックギア、21はラックギアを動かすピニオンギアである。ラックギア20の上端側には前照体41・42を取り付ける取付穴が2つ設けられており、この取付穴にハイビ−ム用前照体とロ−ビ−ム用前照体が取り付けられ、これらの前照体の発光素子は通電可能になっている。
【0094】
図12は、ラックアンドピニオン装置の概要を示す図であり、ラックギアの直線運動方向に直交する方向における断面模式図である。この図中、符号22はピニオンギア21を正逆方向に回転するモ−タ、符号23はモ−タ21を支えるモ−タ支持体、符号25は車両100を構成する車体部材(車体の一部)、符号24はラックギア20を車体部材25に支持固定させるラック車体固定部材である。
【0095】
図11(a)、(b)に示すように、投光孔2.3の上側にブラシ14と洗浄液の噴出口15が配置され、またその周辺に噴出口15より洗浄液を噴出させるための一連の要素(輸送チュ−ブ16、流体噴出機17、洗浄液タンク18)が配置されている。
【0096】
また、ラックギア20の車両要素部材1側の面(非点灯時に投光孔から見える面)には、ボンネットカバ−と同様な色彩が施されている。この色彩が施された面が上記第1実施形態における非照射領域と同様に機能することになる。
【0097】
図11、12から明らかなように、第3実施形態にかかる車両搭載用前照装置では、ピニオンギアの回転により、ラックギア20が下方の「第1の位置」にまで移動したときに、前照体41・42からの射出光の光軸が投光孔2・3に合致する。この位置で前照体41・42内の発光素子(不図示)の何れかに通電し、ハイビ−ム又はロ−ビ−ムを車両外に投光させる。
【0098】
他方、非点灯時には、ピニオンギアを上記と逆方向に回転させラックギア20を上方の「第2の位置」にまで移動させる。このような上下運動の度に前照体前面に接触しているブラシ14により前照体前面が清掃される。また、必要に応じて噴射させた洗浄液で前照体前面が洗浄される。
【0099】
なお、第1、第2の実施形態では、1つの前照体内にハイビ−ム用発光素子とロ−ビ−ム用発光素子を内蔵させたが、第3実施形態では、1つの発光素子を有する小型の前照体を2つ用いる。この理由は、前照体の回転により発光素子の空間的位置を変化させる第1〜第2の実施形態においては、2つの発光素子を内蔵した一つの前照体を回転駆動するのが合理的であるのに対し、上下方向の直線往復運動により発光素子の位置を変化させる方式の場合には、個別の前照体2つを配置しても不都合が生じないからである。
【0100】
ただし、ハイビ−ム用発光素子とロ−ビ−ム用発光素子とを内蔵させた1つの前照体(例えば図6の前照体4)を上限方向に直線運動させることによっても、点灯状態と非点灯状態の位置変えができる。また、本明細書では前照体と発光素子とを区別して使用しているが、第3実施形態の場合には、前照体が発光素子そのものであってもよい。
【0101】
<第4実施形態>
第4実施形態は、発光素子の先端側を傾斜運動させることにより、1つの発光素子でハイビ−ムとロ−ビ−ムとを投光させる方式の車両搭載用前照装置に関する。図13〜15を参照しつつ、第4実施形態にかかる前照装置を説明する。
【0102】
この実施の形態では、前照体43内に発光素子26が1つ設けられ、車体要素部材1には上下方向に離間させたハイビ−ム用投光孔2とロ−ビ−ム用投光孔3が設けられている。この実施の形態では、前照体43が、その回転軸29が車両水平面に対し前方に傾斜するように傾けた状態で駆動モ−タ8に取り付けられており、前照体43を回転させ、1つの発光素子をハイビ−ム用投光孔2とロ−ビ−ム用投光孔3に合致させることにより、ハイビ−ムとロ−ビ−ムを選択的に投光させる。
【0103】
図13〜図15に基づいて第4実施形態にかかる車両搭載用前照装置の詳細を説明する。図13(a)は、前照体43内の発光素子26がハイビ−ム投光孔2に合致する位置に位置した状態を示す。図13(a)の状態において発光素子26の光が投光孔2を通過でき、かつ発光素子26の光軸が0〜0.2度下方に傾くように、投光孔2と発光素子26および発光素子と前照体26との空間的位置が決定され配置されている。
【0104】
図13(b)は、前照体43がロ−ビ−ム投光孔3に合致する位置に位置した状態を示す。図13(b)の状態においては発光素子26の光が投光孔3を通過でき、かつ発光素子26の光軸が0.2〜5度下方に傾くように、投光孔2と発光素子26および発光素子と前照体26との空間的位置が予め調整され配置されている。
【0105】
なお、図13(a)、(b)の何れもが投光可能な位置であるので、「第1の位置」、すなわち発光素子の発光した光の光軸が投光孔を通過する「第1の位置」は、2箇所あることになる。
【0106】
図14(a)は、発光素子26が投光孔2・3の何れの孔にも合致しない位置、すなわち「第2の位置」に位置した状態を示す断面模式図である。この図では発光素子26は断面の奥に存在するので、発光素子26を破線で描いてある。図14(b)は、車両前方(車両要素部材1外面側)から見た場合における投光孔周囲の拡大透視図である。
【0107】
図14(b)に示すように、発光素子26は投光孔2・3からは見えない位置(投光孔2・3の横)に位置しており、第1実施形態に記載したと同様、非射出領域が投光孔2・3に合致する位置に位置している。なお、符号43は前照体43の輪郭を表している。
【0108】
図15は、第4実施形態の原理を説明する図である。図15に基づいて、前照体43の回転と発光素子26の傾きの関係を説明する。図15中、符号27はハイビ−ムの光軸延長線、符号29は前照体回転軸、符号28はロ−ビ−ム光軸延長線、θは前照体回転軸とハイビ−ムの光軸延長線またはロ−ビ−ム光軸延長線との角度である。
【0109】
第4実施形態では、図13〜14に示すように、投光孔2・3が上下方向に離間して配列され、上側に配置した投光孔2がハイビ−ム用投光孔として機能し、下側に配置した投光孔3がロ−ビ−ム用投光孔とし機能するように設定されている。そして、発光素子26が最も上に来たときに発光素子先端とハイビ−ム用投光孔2とが合致し、最下位に来たときにロ−ビ−ム用投光孔3と合致するように構成されている。この構造の第4実施形態にかかる車両搭載用前照装置は例えば次のようにして構成する。
【0110】
前照体43の回転軸が車両水平面30に対しθだけ傾くように、駆動モ−タ8に前照体43の後端部を接続固定する。この条件において、前照体を回転させて発光素子26が最も上方に位置したとき、発光素子26の光軸(27)が車両水平面30に対しα(好ましくは0〜0.2度)となるようにし、かつ光軸延長線27が通過する位置に投光孔2を設ける。
【0111】
次いで、前照体43を回転させて発光素子26が最も下方に位置したときにおける光軸延長線27の上に投光孔3を設ける。なお、光軸の傾き角度は光進行方向に対する下向きの角度を指す。また、発光素子26が最も下方に位置したときにおける光軸傾きは、好ましくは0.2〜5度とする(この傾きをβとする)。
【0112】
上記条件におけるハイビ−ムの投光角度は、〔α〕となる。またロ−ビ−ムの投光角度は〔α+2θ〕となる(図15参照)。よって、例えばθを0.5度とし、αを0度とすると、ハイビ−ムの投光角度は、0度となり、ロ−ビ−ムの投光角度は、1.0度となる。
【0113】
図15の原理から自ずと明らかであるが、回転軸を傾斜させる第4実施形態にかかる方式によると、発光素子26の移動軌跡上に2以上の投光孔を設けることにより、2以上の異なる傾斜の投光光を射出させることが可能になる。例えば、投光孔2・3の中心点を通る円周上に第3、第4の投光孔を設ければ、第1から第4にまで4段階の傾斜光を射出させることのできる前照装置を構成することができる。
【0114】
なお、この方式においても、清掃部材を付加することができることは勿論である。
【0115】
<第5実施形態>
第5実施形態は、発光素子自体を直接上下方向に傾斜させることにより、投光光の角度を変化させる方式に関する。図16,17に基づいて第5実施形態にかかる前照装置について説明する。
【0116】
図16は、発光素子の傾斜方法を説明するための断面模式図である。図16に示すように、前照体44内に発光素子31が配置されている。この発光素子31は、図16(c)に示すように、可動支持軸33により前照体44の内壁に固定されている。
【0117】
また、発光素子31の後端側には上下可動ピン32が取り付けらている。上下可動ピン32は、発光素子31の後端側を上下方向に動かす部材である。可動支持軸33は、発光素子31の両側から前照体44の内壁に延びる支持軸であり、発光素子31は可動支持軸33を回転中心として上下可動ピン32の前進後退運動に応じて先端側が遥動するようになっている。
【0118】
上下可動ピン32は上下方向に伸縮または移動するものであればよく、その機構には特に制限がない。例えば小型モ−タの正逆回転を前進後退の直線運動に変換する機構を用いればよい。
【0119】
上下可動ピン32の上下運動と投光角度の関係について説明する。図16(a)は、ハイビ−ム(27)を投光する状態である。この状態は上下可動ピン32が後退(または短縮)した場合に形成される。図16(b)は、ロ−ビ−ム(28)を投光する状態であり、この状態は上下可動ピン32が前進(または伸長)した場合に形成される。図16(b)のδは、ハイビ−ムとロ−ビ−ム投光角度差である。図16(a)のハイビ−ムにおける、車両水平基準面に対する投光角度は、0〜−0.2度程度に設定され、ロ−ビ−ムの投光角度は、−0.2〜−5度程度に設定されている。
【0120】
図17(a)〜(c)に基づいて、この実施形態にかかる前照装置を車両に搭載した場合における使用状況をさらに説明する。図17(a)〜(c)に示すように、第5実施形態では、上下可動ピン32により発光素子31を直接傾斜運動させ、更に前照体自体(44)も駆動モ−タ(駆動部8)により回転駆動させ、更に前照体前面に配置された清掃部材14・15により清掃できる構造になっている。なお、図17(a)〜(c)に図示されていない点灯スイッチ等の制御系は、上記第2実施形態と同様である。
【0121】
図17(a)〜(c)において、運転者がハイビ−ム点灯スイッチをONすると、前照体44が「第1の位置」にまで回転駆動され、かつ上下可動ピン32が後退(または短縮)する。これにより先端側が外周側に傾斜させられた発光素子31の先端が、ハイ・ロ−兼用投光孔34に対応する位置に位置する。この状態で発光素子から光が放出されると、ハイ・ロ−兼用投光孔34からハイビ−ムが投光されることになる(図17(a))。
【0122】
次に、ハイビ−ム投光状態にあるとき、運転車がロ−ビ−ム点灯スイッチをONすると、上下可動ピン32が前進(または伸長)して発光素子31の先端側が外周側から内側に傾斜する。これにより発光素子31の光軸が下側に傾斜する。この状態で発光素子から光が放出されると、ハイ・ロ−兼用投光孔34からロ−ビ−ムが投光される(図17(b))。
【0123】
次に、ハイビ−ム点灯スイッチとロ−ビ−ム点灯スイッチの何れもがOFFされると、前照体44が「第2の位置」にまで回転駆動され、前照体前面の非射出領域がハイ・ロ−兼用投光孔34に対応する位置に位置する(図17(c))。
【0124】
前照体のこの回転により、前照体前面が清掃部材(ブラシ)14で自動的に清掃される。また、運転者の操作により、清掃部材(噴出口)15から噴出させた洗浄液で前照体前面が清掃される。
【0125】
ここで上記の説明においては、ハイビ−ムとロ−ビ−ムと2段階切り換えの例を示したが、この実施の形態においては、発光素子31の光軸の傾きを上下可動ピン32の前進後退運動により連続的に変化させることができるが、発光素子31の光軸の傾き大きく変化させたい場合(前記δを大きくしたい場合)には、上下方向に長い楕円形状のハイ・ロ−兼用投光孔34とするのがよい。
【0126】
<第6実施形態>
第6実施形態は、第5実施形態に比べ小型の前照体を用い、前照体自体を上下方向に傾ける方式の前照装置に関する。図18にその要点を説明するための断面模式図を示す。
【0127】
図18に示すように、発光素子を内蔵する前照体44の後端部が駆動部35に接続されている。この実施の形態では、駆動部35が前照体の先端側を、その後端側を基端として上下方向に傾斜させることにより、発光素子(不図示)の光軸がハイビ−ム用投光孔2又はロ−ビ−ム用投光孔3の何れかに合致するように運動させる構造になっている。
【産業上の利用可能性】
【0128】
本発明によると、空気抵抗を増大させず、人身を傷害する突起物を形成せず、汚れに起因する照度低下がなく、車両前面の外観デザインの自由度を制約しない、車両搭載用前照装置を提供することができる。よって、本発明は、産業上の利用可能性が高い。
【符号の説明】
【0129】
1 車両要素部材(ボンネットカバ−)
2 ハイビ−ム用投光孔
3 ロ−ビ−ム用投光孔
4、41,42,43,44 前照体
5 ハイビ−ム用発光素子
6 ロ−ビ−ム用発光素子
7 後端部
8 駆動部
9 前照体前面
10 射出領域
11 非射出領域
12 格納容器
13 穴
14 ブラシ(清掃部材)
15 噴出口(清掃部材)
16 輸送チュ−ブ
17 流体噴出機(洗浄液噴射ポンプ)
18 タンク
19 洗浄液
20 ラックギア
21 ピニオンギア
22 モ−タ
23 モ−タ支持体
24 ラック車体固定部材
25 車体部材
26 ハイ・ロウ兼用発光素子
27 ハイビ−ム光軸延長線
28 ロ−ビ−ム光軸延長線
29 前照体回転軸
30 車両水平面(地面)
31 可変機構付き発光素子
32 上下可動ピン
33 可動支点
34 ハイ・ロウ兼用投光孔
35 上下動駆動部
100 車両
101 右投光部
102 左投光部
110 ハイビ−ム
111 ロ−ビ−ム
200 ボンネットカバ−
201 ヘッドライト
202 ヘッドライトワイパ−
203 リトラクタブルヘッドライト
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両本体外表面の内側に収容された車両搭載用前照装置であって、
発光素子を内蔵した前照体と、
前記前照体の前面より前方に位置する、1個以上の投光孔を有する車体要素部材と、
前記発光素子が発する光を前記投光孔から車両外に投光する位置に、前記前照体を可逆的に移動又は回動させる駆動部と、
を備えることを特徴とする車両搭載用前照装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両搭載用前照装置において、
前記投光孔は、車体要素部材を貫通する開放穴からなる、
ことを特徴とする車両搭載用前照装置。
【請求項3】
請求項2に記載の車両搭載用前照装置において、
前記前照体は、光を透過させる射出領域と、光を透過させない非射出領域とを有する保護部材でその前面が覆われている、
ことを特徴とする車両搭載用前照装置。
【請求項4】
請求項1ないし3の何れかに記載の車両搭載用前照装置において、
前記駆動部が前記前照体を可逆的に移動又は回動させることにより、前記前照体を前記発光素子の発光した光の光軸が前記投光孔を通過する第1の位置に位置させ、または前記非射出領域が前記投光孔に対向する第2の位置に位置させる、
ことを特徴とする車両搭載用前照装置。
【請求項5】
請求項4に記載の車両搭載用前照装置において、
前記車体要素部材が、離間する2つの投光孔を有し、
前記前照体が、前記2つの投光孔の何れか一方に対応させるハイビ−ム用発光素子と、他の一つの投光孔に対応させる発光素子であって前記ハイビ−ム用発光素子より投光光が下方に向くようにして調整配置されたロ−ビ−ム用発光素子と、を備え、
前記前照体に接続固定された駆動部ににより、前記前照体が移動又は回動して各々の発光素子の先端が各々に対応する投光孔に対向させられる、
ことを特徴とする車両搭載用前照装置。
【請求項6】
請求項5に記載の車両搭載用前照装置において、
前記各投光孔と前記各発光素子の空間的位置関係が、前記ハイビ−ム用発光素子が発光した光が、車両水平基準面に対して0〜0.2度下方に投光され、前記ロ−ビ−ム用発光素子が発光した光が、前記車両水平基準面に対し0.2〜5度下方に投光されるよう、規制されている、
ことを特徴とする車両搭載用前照装置。
【請求項7】
請求項1ないし3の何れかに記載の車両搭載用前照装置において、
前記車両要素部材が、ハイビ−ム用投光孔と前記ハイビ−ム用投光孔よりも下方に設けられた1つ以上のロ−ビ−ム用投光孔とを有し、
前記前照体が、1つの発光素子を有し、
前記前照体の後端部が前記駆動部に接続固定されており、当該駆動部により前記後端部を基端として、後端部の可動中心点から前記前面の面積中心点を結ぶ仮想線の先端側が前記可動中心点に対し上下方向に傾くように前記前照体を運動させることにより、前記ハイビ−ム用投光孔またはロ−ビ−ム用投光孔に前記発光素子の先端側を対向させる、
ことを特徴とする車両搭載用前照装置。
【請求項8】
請求項7に記載の車両搭載用前照装置において、
前記仮想線の傾き角度が、0.2〜5度である、
ことを特徴とする車両搭載用前照装置。
【請求項9】
請求項1ないし3の何れかに記載の車両搭載用前照装置において、
前記車両要素部材は、1つ以上の投光孔を有し、
前記前照体は、その内部に発光素子自体の傾きを可変する可変機構付き発光素子を有し、
前記駆動部により、前記可変機構付き発光素子が前記投光孔に対応する位置にまで回動されるとき又はされたときに、前記可変機構付き発光素子の光軸が特定の投光角度に規制される、
ことを特徴とする車両搭載用前照装置。
【請求項10】
請求項1ないし9の何れかに記載の車両搭載用前照装置において、
前記発光素子が半導体レ−ザを有してなるものである、
ことを特徴とする車両搭載用前照装置。
【請求項11】
請求項1ないし10に記載の車両搭載用前照装置において、
前記前照体の前面近傍で且つ前記投光孔からの投光を邪魔しない位置に、前記前照体の前面を清掃する清掃部材が配置されている、
ことを特徴とする車両搭載用前照装置。
【請求項12】
請求項11に記載の車両搭載用前照装置において、
前記清掃部材は、前記前照体が移動又は回動する際の動きを利用して前照体前面の汚れをふき取り及び/又は払い落とす部材であり、前記車両部材の内側面に前照体前面に接触し得る状態で配置されている、
ことを特徴とする車両搭載用前照装置。
【請求項13】
請求項11に記載の車両搭載用前照装置において、
前記清掃部材は、前記前照体前面に洗浄液及び/又は圧縮空気を吹き付ける流体噴出口である、
ことを特徴とする車両搭載用前照装置。
【請求項1】
車両本体外表面の内側に収容された車両搭載用前照装置であって、
発光素子を内蔵した前照体と、
前記前照体の前面より前方に位置する、1個以上の投光孔を有する車体要素部材と、
前記発光素子が発する光を前記投光孔から車両外に投光する位置に、前記前照体を可逆的に移動又は回動させる駆動部と、
を備えることを特徴とする車両搭載用前照装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両搭載用前照装置において、
前記投光孔は、車体要素部材を貫通する開放穴からなる、
ことを特徴とする車両搭載用前照装置。
【請求項3】
請求項2に記載の車両搭載用前照装置において、
前記前照体は、光を透過させる射出領域と、光を透過させない非射出領域とを有する保護部材でその前面が覆われている、
ことを特徴とする車両搭載用前照装置。
【請求項4】
請求項1ないし3の何れかに記載の車両搭載用前照装置において、
前記駆動部が前記前照体を可逆的に移動又は回動させることにより、前記前照体を前記発光素子の発光した光の光軸が前記投光孔を通過する第1の位置に位置させ、または前記非射出領域が前記投光孔に対向する第2の位置に位置させる、
ことを特徴とする車両搭載用前照装置。
【請求項5】
請求項4に記載の車両搭載用前照装置において、
前記車体要素部材が、離間する2つの投光孔を有し、
前記前照体が、前記2つの投光孔の何れか一方に対応させるハイビ−ム用発光素子と、他の一つの投光孔に対応させる発光素子であって前記ハイビ−ム用発光素子より投光光が下方に向くようにして調整配置されたロ−ビ−ム用発光素子と、を備え、
前記前照体に接続固定された駆動部ににより、前記前照体が移動又は回動して各々の発光素子の先端が各々に対応する投光孔に対向させられる、
ことを特徴とする車両搭載用前照装置。
【請求項6】
請求項5に記載の車両搭載用前照装置において、
前記各投光孔と前記各発光素子の空間的位置関係が、前記ハイビ−ム用発光素子が発光した光が、車両水平基準面に対して0〜0.2度下方に投光され、前記ロ−ビ−ム用発光素子が発光した光が、前記車両水平基準面に対し0.2〜5度下方に投光されるよう、規制されている、
ことを特徴とする車両搭載用前照装置。
【請求項7】
請求項1ないし3の何れかに記載の車両搭載用前照装置において、
前記車両要素部材が、ハイビ−ム用投光孔と前記ハイビ−ム用投光孔よりも下方に設けられた1つ以上のロ−ビ−ム用投光孔とを有し、
前記前照体が、1つの発光素子を有し、
前記前照体の後端部が前記駆動部に接続固定されており、当該駆動部により前記後端部を基端として、後端部の可動中心点から前記前面の面積中心点を結ぶ仮想線の先端側が前記可動中心点に対し上下方向に傾くように前記前照体を運動させることにより、前記ハイビ−ム用投光孔またはロ−ビ−ム用投光孔に前記発光素子の先端側を対向させる、
ことを特徴とする車両搭載用前照装置。
【請求項8】
請求項7に記載の車両搭載用前照装置において、
前記仮想線の傾き角度が、0.2〜5度である、
ことを特徴とする車両搭載用前照装置。
【請求項9】
請求項1ないし3の何れかに記載の車両搭載用前照装置において、
前記車両要素部材は、1つ以上の投光孔を有し、
前記前照体は、その内部に発光素子自体の傾きを可変する可変機構付き発光素子を有し、
前記駆動部により、前記可変機構付き発光素子が前記投光孔に対応する位置にまで回動されるとき又はされたときに、前記可変機構付き発光素子の光軸が特定の投光角度に規制される、
ことを特徴とする車両搭載用前照装置。
【請求項10】
請求項1ないし9の何れかに記載の車両搭載用前照装置において、
前記発光素子が半導体レ−ザを有してなるものである、
ことを特徴とする車両搭載用前照装置。
【請求項11】
請求項1ないし10に記載の車両搭載用前照装置において、
前記前照体の前面近傍で且つ前記投光孔からの投光を邪魔しない位置に、前記前照体の前面を清掃する清掃部材が配置されている、
ことを特徴とする車両搭載用前照装置。
【請求項12】
請求項11に記載の車両搭載用前照装置において、
前記清掃部材は、前記前照体が移動又は回動する際の動きを利用して前照体前面の汚れをふき取り及び/又は払い落とす部材であり、前記車両部材の内側面に前照体前面に接触し得る状態で配置されている、
ことを特徴とする車両搭載用前照装置。
【請求項13】
請求項11に記載の車両搭載用前照装置において、
前記清掃部材は、前記前照体前面に洗浄液及び/又は圧縮空気を吹き付ける流体噴出口である、
ことを特徴とする車両搭載用前照装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2011−165522(P2011−165522A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−28194(P2010−28194)
【出願日】平成22年2月10日(2010.2.10)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月10日(2010.2.10)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
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