説明

車両撮影方法およびその装置

【課題】 輝度値の異なる運転席の運転者とナンバープレートを同時に撮影するためには、ナンバープレートの輝度値が上がり過ぎないようにして車両全体を明るく照明するか運転席用の専用照明が必要になるといった問題があった。
【解決手段】 撮影した原画像からナンバープレートを抽出した画像を予め記憶し、原画像を所定のγ値でγ補正した画像を取得し、該γ補正画像と前記記憶されているナンバープレートの原画像とを合成することでナンバープレートのナンバーと運転席の運転者の顔を明瞭とした画像を抽出することを特徴とする車両撮影方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般道路や高速道路上に設置され、速度違反車両や高速料金不払いの不正通行車両などを撮影する車両撮影方法およびその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来において前記した不正通行車両を特定する方法として、車両のナンバープレートをカメラで撮影し、該ナンバープレートの写真から不正通行車両を特定していた。このようなナンバープレートを撮影する方法として、例えば、特開2002−300437に開示された発明がある。
【0003】
この発明は、車両のナンバープレートをカメラで撮影し、該撮影した画像を昼間時であればγの値を1.0とし、夜間であればγの値を0.45として画像処理することで、夜間などの照度が低い状態であっても光量の大きい照明装置を使用することなく、画像処理をより適切に行うことができるというものである。
【特許文献1】特開2002−300437
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、道路管理者のニーズとして上記した違反車両を特定するために、ナンバープレートだけでなく違反を犯した運転者の顔写真も入手したいという要望があるが、昼夜にわたり輝度値の低い運転席を明瞭に撮影するためには、前記したナンバープレートを認識するための発明を応用しても、輝度値の異なる運転席の運転者とナンバープレートを同時に撮影するためには、ナンバープレートの輝度値が上がり過ぎないようにして車両全体を明るく照明するか運転席用の専用照明が必要になるといった問題があった。
しかし、前者のように車両全体を明るくする方法にあっては、ナンバープレート自体の輝度値も高くなるため判読ができなくなるといった問題があった。
【0005】
本発明は前記した問題点を解決せんとするもので、その目的とするところは、ナンバープレートのナンバーと運転者の顔写真の両方を明瞭にした撮影画像を入手することができる車両撮影方法およびその装置を提供せんとするにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の車両撮影方法は前記した目的を達成せんとするもので、請求項1の手段は、撮影した原画像からナンバープレートを抽出した画像を予め記憶し、原画像を所定のγ値でγ補正した画像を取得し、該γ補正画像と前記記憶されているナンバープレートの原画像とを合成することでナンバープレートのナンバーと運転席の運転者の顔を明瞭とした撮影画像を入手することを特徴とする。
【0007】
請求項2の手段は、前記した請求項1において、前記γ値は周囲の明るさに応じてγ値を変更し、この変更したγ値でγ補正画像を得るようにしたことを特徴とする。
【0008】
本発明に係る車両撮影装置における請求項3の手段は、車両を撮影する撮影手段と、該撮影手段よりの撮影された画像を記憶する原画像メモリと、該原画像メモリに記憶した原画像からナンバープレートを抽出するナンバープレート抽出手段と、前記原画像からγ補正画像を生成するγ補正画像生成手段と、該γ補正画像生成手段で生成した画像と前記ナンバープレート抽出手段で抽出されたナンバープレート画像とを合成する画像合成手段とから構成したものである。
【0009】
請求項4の手段は、前記した請求項3において、前記γ補正画像生成手段は、周囲の明るさに応じて選択されたγ値を利用してγ補正を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明は前記したように、撮影した原画像からナンバープレートを抽出した画像を予め記憶し、原画像を所定のγ値でγ補正した画像を取得し、該γ補正画像と前記記憶されているナンバープレートの原画像とを合成することで、該合成した画像はナンバープレートのナンバーおよび運転席にいる運転者の顔が明瞭となる。
【0011】
また、前記γ値は周囲の明るさに応じてγ値を変更し、この変更したγ値でγ補正画像を得るようにすることで、周囲の明暗に関係なく明瞭な画像を得ることができる等の効果を有するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明は、昼夜にわたり低輝度値である運転席をγ補正を行って輝度値を高めた画像を得て、予め記憶したナンバープレートの原画像とを合成することで、ナンバープレートのナンバーと運転席の運転者の顔写真とを明瞭な画像として生成する。
【実施例1】
【0013】
以下、本発明に係る車両撮影装置の一実施例を図面と共に説明する。
図1はシステムブロック図で、1は、料金所等に設置され図示しない不正通行車両を撮影する撮影手段で撮影した映像信号をデジタル信号の形式に変換して出力するデジタルカメラなどから構成されている。
なお、撮影手段1は、同じく図示しない車両検知器などからの車両検知信号を入力することにより撮影が行われる。
【0014】
2は撮影した原画像に対して輝度変換を行う制御手段にして、以下に述べる各メモリや手段によって構成されている。
2aは、前記撮影手段1からのデジタル画像を記憶する原画像メモリ、2bは、車両の高さなどによって大型自動車、普通自動車、軽自動車等の車種を判別する公知の車種判別手段、2cは、前記車種判別手段2bによって得られた車種別から規定されるナンバープレートのエリアによってテンプレートマッチングなどの手法を用いてナンバープレートを抽出するナンバープレート抽出手段にして、抽出された画像はメモリに一旦記憶される。
【0015】
2dは、前記撮影手段1が設置された周囲に設置され車両が通過する部分の照度を検出する照度検出手段、2eは、2.5と1.5のγ値が記憶され、前記照度検出手段2dよりの出力が予め設定した照度が高い、例えば、昼間時であるとの出力が送出されると2.5のγ値を出力し、また、照度が低い、例えば、夜間時であるとの出力が送出されると1.5のγ値を出力するγ値テーブル、2fは、前記原画像メモリ2aに記憶されている原画像に対して前記γ値テーブル2eから選択されたγ値でγ補正してγ補正画像を得るγ補正画像生成手段である。
【0016】
また、2gは、前記γ補正画像生成手段2fで生成したγ補正画像のナンバープレート位置に前記ナンバープレート抽出手段2cで抽出されたナンバープレート画像を置き換え合成する画像合成手段、2hは、液晶のモニターなどからなる表示手段3で画像を表示するための出力部、2iは、撮影手段1の制御や表示手段3の画像の切換などを行う図示しない操作スイッチを備えた操作手段4からの操作信号を入力する入力部、2jは、本発明の車両撮影方法を実行する制御プログラムを記憶したプログラムメモリ、2kは、上記制御プログラムに従い上記の各メモリや手段などを制御するCPUである。
【0017】
次に、本発明の処理動作を図2のフローチャートと共に説明する。なお、この実施例では料金所を通過する不正車両のナンバープレートと運転者の顔写真を撮影する場合として説明するが、高速道路や一般道の場合も処理動作としては同じである。
【0018】
先ず、図2(a)のフローチャートについて説明するに、料金所における車両が通過する部分の照度を照度検出手段2dによって検出する(ステップS1)。そして、この時の照度に対応する、例えば、昼間時の照度の場合にはγ値テーブル2eにおいて図3の2点鎖線で示すγ値2.5が補正値として選択され、また、夜間時の照度の場合にはγ値テーブル2eにおいて図3の点線で示すγ値1.5の補正値が選択される(ステップS2)。なお、照度に対するγ値は前記昼間と夜間の2つの値に限定されるものではなく、γ値テーブル2eに1.5〜2.5の間の値を照度に応じてリニアに選択可能とすることも可能である。
【0019】
次に、全体の処理動作について図2(b)のフローチャートと共に説明するに、先ず、料金所を通過する不正通行車両を公知の車両検知器によって検知した車両検知信号の有無を判別し(ステップS11)、車両検知信号有りの判定によって撮影手段1で車両の前面を撮影する(ステップS12)。次に、撮影した車両のデジタル画像を原画像メモリ2aに記憶する(ステップS13)。
【0020】
ここで、原画像メモリ2aに記憶される原画像は昼間時であれば図4の画像となるため、ナンバープレートのナンバーは明瞭に見えるが、運転者の顔は見にくい状態であり、また、夜間であれば図7の画像となるため、この画像も昼間時の画像と同様にナンバープレートのナンバーは明瞭に見えるが、運転者の顔は見にくい状態である。
【0021】
次に、原画像メモリ2aに記憶したデジタル画像に対して前記した車種判別手段2bにより得られた車種別信号によって予め規定されたエリアに対して、車種に応じて記憶したナンバープレートのサイズに相当するテンプレートを用いてマッチングを行いナンバープレートを切り出す(ステップS14)。そして、CPU2jは、ナンバープレート抽出手段2cで抽出されたナンバープレートの画像と位置をCPU2jのメモリに記憶する(ステップS15)。
【0022】
次いで、昼間時であればγ値テーブル2eで設定されたγ値2.5の補正値でγ補正画像生成手段2fにおいてγ補正を行うことにより図5に示すγ補正画像が得られる(ステップS16)。この図5のγ補正画像を見ると、運転者の顔は明瞭であるが、車両と同様にナンバープレートが明るくなり過ぎるためナンバープレートのナンバーが見にくい状態である。
【0023】
一方、夜間時であればγ値テーブル2eで設定されたγ値1.5の補正値でγ補正画像生成手段2fにおいてγ補正を行いγ補正画像を得る(ステップS6)。このγ補正画像は前記した昼間時と同様に運転者の顔が明瞭に見える状態となる。
【0024】
なお、図9の画像はγ値2.5でγ補正画像生成手段2fによってγ補正した場合を示しているが、この画像からすると全体がぼやけた状態であり、運転者の顔もナンバープレートも非常に惚けていて、夜間時にはγ値を低くする必要性があることが判る。
【0025】
次いで、γ補正画像生成手段2fによって得られたγ補正画像のナンバープレート部分に、前記ナンバープレート抽出手段2cで抽出され記憶されているナンバープレートの画像を画像合成手段2gによって画素置き換えによって合成すると(ステップS17)、昼間時の合成画像は図6、夜間時の合成画像は図8に示すように運転者の顔とナンバープレートのナンバーが明瞭な画像となって、違反車両と運転者の特定が明確に行える。
【0026】
前記した実施例において、原画像を撮影するタイミングとして車両検知器が車両を検知した時に撮影手段1を動作させるようにした場合について説明したが、撮影手段で周期的に撮影した画像から車両を直接検知しナンバープレートを切り出すようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明に係る車両撮影装置のシステムブロック図である。
【図2】同上の動作を説明するためのフローチャートである。
【図3】γ補正曲線を示す特性図である。
【図4】昼間時の原画像写真である。
【図5】同上の画像をγ値2.5でγ補正した後の写真である。
【図6】γ補正画像と原画像のナンバープレートとを合成した写真である。
【図7】夜間時の原画像写真である。
【図8】同上の画像をγ値1.5でγ補正した後の写真である。
【図9】図7の原画像をγ値2.5でγ補正した場合の写真である。
【符号の説明】
【0028】
1 撮影手段
2 制御手段
2a 原画像メモリ
2b 車種判別手段
2c ナンバープレート抽出手段
2d 照度検出手段
2e γ値テーブル
2f γ補正画像生成手段
2g 画像合成手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮影した原画像からナンバープレートを抽出した画像を予め記憶し、原画像を所定のγ値でγ補正した画像を取得し、該γ補正画像と前記記憶されているナンバープレートの原画像とを合成することでナンバープレートのナンバーと運転席の運転者の顔を明瞭とした画像を抽出することを特徴とする車両撮影方法。
【請求項2】
前記γ値は周囲の明るさに応じてγ値を変更し、この変更したγ値でγ補正画像を得るようにしたことを特徴とする請求項1記載の車両撮影方法。
【請求項3】
車両を撮影する撮影手段と、該撮影手段よりの撮影された画像を記憶する原画像メモリと、該原画像メモリに記憶した原画像からナンバープレートを抽出するナンバープレート抽出手段と、前記原画像からγ補正画像を生成するγ補正画像生成手段と、該γ補正画像生成手段で生成した画像と前記ナンバープレート抽出手段で抽出されたナンバープレート画像とを合成する画像合成手段とから構成したことを特徴とする車両撮影装置。
【請求項4】
前記γ補正画像生成手段は、周囲の明るさに応じて選択されたγ値を利用してγ補正を行うことを特徴とする請求項3記載の車両撮影装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−119846(P2006−119846A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−306050(P2004−306050)
【出願日】平成16年10月20日(2004.10.20)
【出願人】(000243881)名古屋電機工業株式会社 (107)
【Fターム(参考)】