説明

車両清掃の集塵装置

【課題】
簡単な設備によって集塵効果や作業効率を向上させた車両清掃時に発生する粉塵の集塵装置を提供する。
【解決手段】
車両に付着した粉塵を圧縮空気により清掃除去する際に発生する粉塵を吸込んで回収する集塵装置であって、粉塵を吸込むための吸込口と、吸込口に取り付けられた車両清掃部分への案内体と、吸込口に吸引力を発生させるための吸込ファンと、吸込ファンを回転させるための駆動モータと、吸込んだ粉塵を含む空気から粉塵を分離するためのサイクロン分離機構と、分離された粉塵を取り出すための取出口とを備えたサイクロン分離装置を使用することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両清掃時に発生する粉塵を集塵する集塵装置に関するもので、特に、鉄道車両の床下部分の清掃時にコンプレッサー(圧縮空気)により粉塵除去作業する際に発生する粉塵を吸引して回収する集塵装置に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両は、定期的に車両を分解して運転に必要不可欠な主要部品(ブレーキ、モータなど)を取り外し、細部まで調べる重要部検査が行われている。この検査を行う前段階として、車両に付着した粉塵を取り除く作業がある。この作業は、従来から車両の床下部分に付着した鉄粉等の粉塵をコンプレッサーによって吹き飛ばして行われるが(特許文献1参照)、作業中、周囲にこの粉塵が舞い上がって埃だらけになる。
【0003】
そのため、この作業は通常、整備工場手前の引込み線上で行われているのであるが、整備工場が市街地にあったり、近隣に民家があると、コンプレッサーによる除去作業で発生する粉塵の苦情が発生する。また、高圧洗浄機を使って粉塵の除去作業を行うことも考えられるが、鉄道車両は電機部品を数多く使用しているため、高圧の水の噴射は好ましくない。
【0004】
粉塵の除去作業は以前に市販の集塵機を採用設置して行われたことがあるが、清掃対象となる軌道車輪部分が車両幅よりへっ込んだ中央部分に位置しているため、集塵機までの距離があって非常に回収率が悪く、又、粉塵の量が多いのでフィルターがすぐ詰まる等して、現在は使用されていないのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−347239号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、かかる従来技術の問題を解消するために創案されたものであり、その目的は、簡単な設備によって集塵効果や作業効率を向上させた車両清掃時に発生する粉塵の集塵装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、吸込口に車両清掃部分への案内体を取り付けたサイクロン分離装置を集塵装置として使用することにより、上記目的を達成できることを見出し、本発明の完成に至った。
【0008】
即ち、本発明は、以下の(1)〜(5)の構成を有するものである。
(1)車両に付着した粉塵を圧縮空気により清掃除去する際に発生する粉塵を吸込んで回収する集塵装置であって、粉塵を吸込むための吸込口と、吸込口に取り付けられた車両清掃部分への案内体と、吸込口に吸引力を発生させるための吸込ファンと、吸込ファンを回転させるための駆動モータと、吸込んだ粉塵を含む空気から粉塵を分離するためのサイクロン分離機構と、分離された粉塵を取り出すための取出口とを備えたサイクロン分離装置を使用することを特徴とする集塵装置。
(2)案内体が、車両の床下部分の外側に上下方向に広がる吸引口を先端に有する略箱状のものであることを特徴とする(1)に記載の集塵装置。
(3)案内体が、吸引口を先端に有するホース状のものであることを特徴とする(1)に記載の集塵装置。
(4)案内体の先端の吸引口の横に圧縮空気を発生するノズルが取り付けられていることを特徴とする(2)または(3)に記載の集塵装置。
(5)サイクロン分離装置が車輪付きの台枠上に設置され、移動可能であることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の集塵装置。
【発明の効果】
【0009】
本発明の集塵装置は、車両の清掃部分への案内体を吸込口に取り付けたサイクロン分離装置を使用しているので、清掃部分と集塵装置の距離を近くして集塵効率を高めることができ、しかもフィルターを使用していないので多量の粉塵の回収作業が容易である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本発明の集塵装置を用いて鉄道車両の床下部分の清掃作業を行う状態を示す全体概略図である。
【図2】図2は、本発明の集塵装置の一実施形態を示す縦断面図である。
【図3】図3は、図2の集塵装置の斜視図である。
【図4】図4は、本発明の集塵装置の他の実施形態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の集塵装置の実施形態を図面に基づいて説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0012】
図1は、鉄道車両の清掃作業を行う状態の本発明の集塵装置の一実施形態を示す全体概略図である。本発明の集塵装置は、車両に付着した粉塵を圧縮空気により清掃除去する際に発生する粉塵を吸込んで回収するためのものであり、車両全般に適用可能であるが、特に図1に示すように鉄道車両の床下部分に付着した粉塵の集塵に最適なものである。
【0013】
図2は、本発明の集塵装置の一実施形態を示す縦断面図であり、図3は、その斜視図である。図中、1は吸込んだ粉塵を含む空気から粉塵を分離するためのサイクロン分離機構であり、二重の外筒1aと内筒1bとから構成される。外筒1aは上下両端が閉塞され、その上部外周部に吸込口1cが、下方外周部には分離された粉塵を取り出すための取出口1dが設けられる。2は取出口ldに設けられた蓋である。内筒1bは上下両端が開放され、その上部が外筒1aより上方に突出し、下部は外筒1aの下方に臨んでいる。
【0014】
3は吸込口に吸引力を発生させるための吸込ファンであり、内筒1aの上端に設けられる。4は吸込ファン3を回転させるための駆動モータである。5は外筒1aの吸込口1cに取り付けられた車両清掃部分への案内体である。図1〜3の案内体5は略箱状に形成されてその先端となる吸引口5aは鉄道車両の床下部分の外側の清掃部分に対応するように上下に広がった形状を有している。
【0015】
図4は、本発明の集塵装置の他の実施形態を示す斜視図であり、図1〜3の実施形態とは案内体の態様が異なる。図中、6は外筒1aの吸込口1cに取り付けられたホース状の案内体であり、この案内体6の先端には吸引口6aが設けられる。この案内体6は車両の床下のへっ込んだ中央部分の粉塵の吸引作業に好適である。この場合、図4に示すように、案内体6に平行させて案内体6の先端の吸引口の横にコンプレッサー(図示せず)からの圧縮空気を発生するノズル7が取り付けられることができる。これにより、ノズル7より噴出された圧縮空気により舞い上がった粉塵をそのまますぐに案内体6の吸引口1cに吸込むことができる。
【0016】
前述のように構成されたサイクロン分離装置は、図1に示すように車輪付きの台枠8に設置され、車両の側面に移動可能にすることができる。
【0017】
次に本発明の集塵装置の動作について説明する。まず車両に付着した粉塵に対して圧縮空気を集塵装置とは別個のノズルよりまたは集塵装置に付属するノズル7より噴出して粉塵を除去する。次に、集塵装置の駆動モータ4の駆動により吸込ファン3が回転されると、案内体5の吸引口5aまたは吸込ホース6の吸引口6aに吸引力が発生し、鉄粉等の粉塵を含む空気が吸込口1cを経て外筒1aに吸込まれる。
【0018】
吸込まれた粉塵は外筒1aの外周内壁に沿って遠心力で重力によって下方に落下し、一方、吸込まれた空気は内筒1bを通ってファン3に導かれ、外方へと放出され、吸入された空気と粉塵はフィルターなしで効率的に分離される。分離された粉塵は取出口1dに蓄積され、蓋2を開放することにより粉塵を廃棄することができる。
【0019】
本発明の集塵装置は、車両の清掃部分へ臨む案内体をサイクロン分離装置の吸込口5aに取り付けているので、集塵効果と作業効率に優れている。また、サイクロン分離機構1を吸込みファン3の手前に設けているので、粉塵によるファンの羽根板やケーシング内壁の摩耗が起こらない。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明の集塵装置は、車両に付着した粉塵の清掃時に圧縮空気により吹き飛ばされて舞い上がった粉塵を確実に集塵することができるとともに、集塵効率が極めて優れているので、鉄道車両の整備工場内での使用だけでなく、市街地、民家等の隣接した場所でも使用することができる。
【符号の説明】
【0021】
1 サイクロン分離機構
1a 外筒
1b 内筒
1c 吸込口
1d 取出口
2 蓋
3 吸込ファン
4 駆動モータ
5 案内体
5a 吸引口
6 案内体
6a 吸引口
7 ノズル
8 台枠

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に付着した粉塵を圧縮空気により清掃除去する際に発生する粉塵を吸込んで回収する集塵装置であって、粉塵を吸込むための吸込口と、吸込口に取り付けられた車両清掃部分への案内体と、吸込口に吸引力を発生させるための吸込ファンと、吸込ファンを回転させるための駆動モータと、吸込んだ粉塵を含む空気から粉塵を分離するためのサイクロン分離機構と、分離された粉塵を取り出すための取出口とを備えたサイクロン分離装置を使用することを特徴とする集塵装置。
【請求項2】
案内体が、車両の床下部分の外側に上下方向に広がる吸引口を先端に有する略箱状のものであることを特徴とする請求項1に記載の集塵装置。
【請求項3】
案内体が、吸引口を先端に有するホース状のものであることを特徴とする請求項1に記載の集塵装置。
【請求項4】
案内体の先端の吸引口の横に圧縮空気を発生するノズルが取り付けられていることを特徴とする請求項2または3に記載の集塵装置。
【請求項5】
サイクロン分離装置が車輪付きの台枠上に設置され、移動可能であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の集塵装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−103164(P2013−103164A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−248240(P2011−248240)
【出願日】平成23年11月14日(2011.11.14)
【出願人】(391020090)初田拡撒機株式会社 (8)
【Fターム(参考)】