説明

車両用アンテナ装置

【課題】車両用アンテナ装置において、少ないスペースにアンテナの相互干渉を抑制しつつ多くの周波数帯域に対応するアンテナを配置する。
【解決手段】リアウインドウガラス12に設けられたウインドウアンテナエレメント15と、リアウインドウガラス12の車室内側面に対向するようルーフパネル11に取付けられるケース18と、ケース18の中に設けられ、ケース18を貫通する接続部材21によってウインドウアンテナエレメント15と電気的に接続されるアンプ基板と、ウインドウアンテナエレメント15が対応する周波数帯域と異なる周波数帯域の電波の送受信を行い、一端がアンプ基板に接続され、他端がケース18の外側に沿って延びる独立アンテナエレメント41を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用アンテナ装置の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両にはラジオ、テレビなどの複数の電子機器が搭載され、各電子機器のための各種のアンテナが取付けられている。従来はバンパーや車体のピラー等から車室外に突出させるように取付けられた棒状のアンテナが多く用いられていたが、棒状のアンテナを車外に突出させて配置するのは走行時に風切り音が発生したり、構造物に引っかかったりして使い勝手が悪い上、意匠上も好ましくなかった。
【0003】
そこで、車両のウインドウガラスに印刷などによってアンテナエレメントを配置するガラスアンテナが用いられるようになってきている。特に面積の大きなリアウインドウガラスにアンテナを配置する場合が多く、デフォッガー用のヒータ線と干渉しないようにリアウインドウガラスの上部にAM放送受信用のアンテナとFM放送受信用のアンテナを配置し、リアデフォッガーの下部の余白部分にテレビ放送受信用のVHFアンテナを設けている場合がある。また、AM放送受信用のアンテナとFM放送受信用のアンテナを共にリアデフォッガーの上部の余白部分に設けている場合も多い(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
一方、アンテナエレメントは受信した信号を処理するためにアンプに接続されるが、その接続線とアンテナエレメントとは電気的には区別されない導体であるため、実質的には接続線もアンテナエレメントとして機能してしまう。このため、アンテナエレメントが本来目的としている受信周波数帯域での送受信が良好に行えないという不具合が発生する場合がある。また、車室内に配索された接続線が車室内のノイズを拾ってしまい、アンテナ性能に悪影響を及ぼす場合もあった。
【0005】
このため、車両ウインドウガラスに設けられたアンテナエレメントの接点とアンプとの間を導電性の接続部材により最短距離で接続するとともに、信号処理回路が納められているケースをシールドケースとしてノイズ信号による悪影響を低減するアンテナ構造体が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
【特許文献1】特許第3500695号明細書
【特許文献2】特許第3910490号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、近年、地上デジタル放送やワンセグ放送など、従来にない各種の受信メディアを車両で受信することが求められるようになってきている。しかし、車両のリアウインドウガラスの面には既に各種の周波数帯域に対応するアンテナエレメントが設置されているので、空いているスペースに追加のアンテナエレメントを配置することが難しく、追加のアンテナエレメントを配置できたとしてもアンテナエレメント間の相互干渉により各アンテナ性能が低下してしまうという問題があった。
【0008】
また、リアウインドウと離れた位置に地上デジタル放送あるいはワンセグ放送受信用のアンテナを別途配置することも考えられるが、この様な場合には、別途配置したアンテナのためにアンプを別途配置するためのスペースが必要になったり、アンテナとアンプとの接続配線によってノイズを拾ってしまったりする場合がある。
【0009】
そこで、本発明は、車両用アンテナ装置において、アンテナの相互干渉を抑制しつつ少ないスペースに多くの周波数帯域に対応するアンテナを配置することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の車両用アンテナ装置は、車体パネルに取付けられた車両用ウインドウガラスと、車両用ウインドウガラスに設けられたウインドウアンテナエレメントと、一方の面が車両用ウインドウガラスの車室側面から離間するとともに車両用ウインドウガラスの車室内側面に対向するよう車体パネルに取付けられるケースと、ケースの中に設けられ、ケースを貫通する接続部材によってウインドウアンテナエレメントと電気的に接続され、ウインドウアンテナエレメントからの信号を処理する回路基板と、を備える車両用アンテナ装置であって、車両用ウインドウガラスに設けられたウインドウアンテナエレメントが対応する周波数帯域と異なる周波数帯域の電波の送受信を行い、一端が回路基板に接続され、他端がケースの外面に沿った方向に延びる独立アンテナエレメントを有することを特徴とする。
【0011】
本発明の車両用アンテナ装置において、独立アンテナエレメントはケースの長手方向の一端側から長手方向の他端側と反対方向に向かって延びていること、としても好適であるし、独立アンテナエレメントの他端は、回路基板から離間する方向に延びていること、としても好適である。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、車両用アンテナ装置において、アンテナの相互干渉を抑制しつつ少ないスペースに多くの周波数帯域に対応するアンテナを配置することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の車両用アンテナ装置の好適な実施形態について図面を参照しながら説明する。図1に示すように、本発明の車両用アンテナ装置10は、車体パネルであるルーフパネル11に取付けられた車両用ウインドウガラスであるリアウインドウガラス12と、リアウインドウガラス12に設けられた複数のウインドウアンテナエレメント15と、ルーフパネル11に取付けられたケース18と、ケース18の内部に設けられた回路基板であるアンプ基板の接点と各ウインドウアンテナエレメント15の端部に設けられた接点16とを接続する接続部材21と、一端がケース18内部に設けられたアンプ基板に取付けられ、他端がケース18外面に沿った方向に延びる独立アンテナエレメント41と、を備えている。
【0014】
複数のウインドウアンテナエレメント15は、透明なリアウインドウガラス12の車室内側面に印刷によって形成され、テレビ、ラジオ、ワイヤレスドアロック制御装置用等複数の周波数帯域の電波の送受信を行うもので、それぞれ車体左右一対のウインドウアンテナエレメント15がダイバーシティを構成する様に配置されている。また、独立アンテナエレメント41は複数のウインドウアンテナエレメント15と異なる周波数帯域である地上デジタル放送用電波の周波数帯域に対応するアンテナエレメントである。
【0015】
ケース18は、ルーフパネル11への固定フランジ23aが設けられ、アンプ基板が固定されている金属製のケース本体23と、ケース本体23の車室内側に取付けられ、車室内のノイズが内部に設けられたアンプ基板に届かないようにシールする金属製のカバー24とを備え、ケース本体23は車両の幅方向に細長い長方形となっている。ケース本体23のリアウインドウガラス12の側には、接続部材21の導電性弾性部材をリアウインドウガラス12に対して接離方向にガイドするホルダ28が取付けられている。また、金属製のケース本体23のリアウインドウガラス12に対向する面には絶縁のための絶縁シート22が取付けられている。
【0016】
図2(a)、図2(b)に示すように、車体のルーフパネル11は車室内側のインナパネル11aと車外側のアウターパネル11bとをスポット溶接等によって組み立てたもので、インナパネル11aとアウターパネル11bの各端部は対向するようにクランク型に折り曲げられて重ねあわされ、各パネル11a,11bの中間にリアウインドウガラス12を取付けるためのフランジ11cが構成されている。ケース18は、長方形箱状で内部にアンプ基板20が固定されているケース本体23とケース本体23からルーフパネル11側に延び、仮止め用クリップ25または固定用ボルト27、ナット26によってインナパネル11aに取付けられる固定フランジ23aと、ケース本体23からルーフパネル11のフランジ11cの車室外側にクランク状に延びてケース底板23bとの間にルーフパネル11のフランジ11cを挟み込む爪部23cが設けられている。ケース18は固定フランジ23aによってケース底板23bがルーフパネル11のフランジ11cの車室内側となる位置に取付けられている。長方形箱状のケース本体23の車室内側に設けられているカバー24は、ルーフパネル11から離れるに従ってその深さが浅くなっていくような箱型の蓋で、ノイズを遮断するために金属製となっている。また、ルーフパネル11の内装板50はインナパネル11a及びケース18のカバー24よりも車室内側に設けられており、車室内からインナパネル11aやケース18などが見えないように構成されている。
【0017】
リアウインドウガラス12は、ルーフパネル11のフランジ11cの車室外側にパッキン13を介して接着によって固定されている。リアウインドウガラス12とルーフパネル11のフランジ11cとケース18のケース底板23bはそれぞれ略平行となるように構成されている。このように、ケース18はルーフパネル11のフランジ11cの車室内側に取付けられ、リアウインドウガラス12はフランジ11cの車室外側に取付けられているので、リアウインドウガラス12の車室側面とケース18のケース底板23bとの間にはフランジ11cの厚み及びパッキン13の厚み分の隙間があり、ケース18のケース底板23bとリアウインドウガラス12とは対向して離間している。
【0018】
また、図2(b)に示すように、ケース18のアンプ基板20にはリアウインドウガラス12のウインドウアンテナエレメント15の端部にある接点16との間を電気的に接続する接続部材21が取付けられている。接続部材21は、導電性弾性部材29と、ケース18のケース底板23bの外面に設けられた孔23dに取付けられ、導電性弾性部材29をリアウインドウガラス12の接点16に対して接離方向にガイドするガイド部28aを備えるホルダ28とを備えている。ホルダ28の底部28bには導電性弾性部材29とアンプ基板20との間を電気的に接続する導電性の連結部材30が取付けられている。連結部材30は導電性弾性部材29に接する頭部30aとアンプ基板20に固定される脚部30bとを備えている。
【0019】
図3に示すように、ホルダ28は絶縁性の樹脂等によって構成され、先端にスナップフィットを有する脚部28cを備えている。この脚部28cのスナップフィットは図2(b)に示すケース底板23bに設けられた孔23dに嵌まり込んでホルダ28をケース底板23bに固定する。導電性弾性部材29は導電性ゴム等の導電性材料により伸縮可能な蛇腹状に形成され、蛇腹部分はホルダ28のガイド部28aによってガイドされている。そして、導電性弾性部材29はホルダ28のガイド部28aに接続された底部28bによって支持され、その弾性力によって蛇腹部分の先端に設けられた曲面上の接点29aをリアウインドウガラス12の接点16に押し付け、アンプ基板20とリアウインドウガラス12の各接点16とを電気的に接続する。
【0020】
図4(a)、図2(a)に示すように、独立アンテナエレメント41は一端がケース18の内部19に設けられたアンプ基板20に接続され、アンプ基板20から立ち上がった帯板状の逆Lアンテナで、ケース18のケース底板23bに設けられた孔23eを貫通してケース18とリアウインドウガラス12との間に延び、アンプ基板20あるいはリアウインドウガラス12に沿った方向に折れ曲がり、ケース18の外面でケース底板23bに略平行となるよう再度折れ曲がった後、ケース18の長手方向に沿って、アンプ基板20から離れる方向に向かって延びている。
【0021】
図4に示すように、ケース18の孔23eはケース18の一端側に設けられ、この孔23eを貫通してケース18内からケース18外に延びる独立アンテナエレメント41はケース18の長手方向に向かってケース18と反対側に向かってケース18の外面と略平行に延びている。図1に示したように、この独立アンテナエレメント41は長手方向が車両の幅方向になるように取付けられたケース18の長手方向に沿った方向に延びており、ケース18とウインドウアンテナエレメント15とは電磁気的に干渉を生じない程度に離間距離をとって配置されているので、ケース18の近傍に配置された独立アンテナエレメント41はウインドウアンテナエレメント15との相互干渉を抑制することができる。また、独立アンテナエレメント41はケース18の外面近傍に車体の幅方向に延びて配置されるので、内装板50の範囲に入り、車室内側から見えないように配置することができる。
【0022】
このように構成された車両用アンテナ装置10は、独立アンテナエレメント41がアンプ基板20あるいはケース18から離れる方向に延びていることにより、アンプ基板20の影響が少なくなることとケース18によって遮蔽されること無く電波の送受信を行うことができること、及び、リアウインドウガラス12に設けられたウインドウアンテナエレメント15と離間してケース18近傍に配置されていることから、複数のウインドウアンテナエレメント15との相互干渉を抑制することができる。このため、本実施形態の車両用アンテナ装置10は、図5に示すように、地上デジタル放送の周波数帯域のように、複数のウインドウアンテナエレメント15と異なる周波数帯域の受信に必要な周波数fとfとの間でリターンロスが−5dB以下と、アンテナとして十分な性能を持っている。
【0023】
更に、本実施形態の車両用アンテナ装置10は、複数のウインドウアンテナエレメント15とアンプ基板20を共通としていることから、アンプ基板20の配置スペースが少なくて済むという効果を奏する。
【0024】
本実施形態では、独立アンテナエレメント41は逆Lアンテナとして説明したが、例えば、棒状のダイポールアンテナや逆Fアンテナ或いはヘリカルアンテナ等によって構成してもよい。また、本発明の車両用アンテナ装置10は独立アンテナエレメント41の長さを変更、調整することによって地上デジタル放送用電波以外の周波数帯域に対応することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施形態における車両用アンテナ装置を示す説明図である。
【図2】図1に示した車両用アンテナ装置の断面を示す説明図である。
【図3】本発明の車両用アンテナ装置における接続部材の斜視図と断面図である。
【図4】本発明の車両用アンテナ装置におけるケースと独立アンテナエレメントとを示すケース底板側及びカバー側から見た斜視図である。
【図5】本発明の車両用アンテナ装置の周波数に対するリターンロスを示すグラフである。
【符号の説明】
【0026】
10 車両用アンテナ装置、11 ルーフパネル、11a インナパネル、11b アウターパネル、11c フランジ、12 リアウインドウガラス、13 パッキン、15 ウインドウアンテナエレメント、16 接点、18 ケース、19 内部、20 アンプ基板、21 接続部材、22 絶縁シート、23 ケース本体、23a 固定フランジ、23b ケース底板、23c 爪部、23d,23e 孔、24 カバー、25 仮止め用クリップ、26 ナット、27 固定用ボルト、28 ホルダ、28a ガイド部、28b 底部、28c 脚部、29 導電性弾性部材、29a 接点、30 連結部材、30a 頭部、30b 脚部、41 独立アンテナエレメント、50 内装板。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体パネルに取付けられた車両用ウインドウガラスと、
車両用ウインドウガラスに設けられたウインドウアンテナエレメントと、
一方の面が車両用ウインドウガラスの車室側面から離間するとともに車両用ウインドウガラスの車室内側面に対向するよう車体パネルに取付けられるケースと、
ケースの中に設けられ、ケースを貫通する接続部材によってウインドウアンテナエレメントと電気的に接続され、ウインドウアンテナエレメントからの信号を処理する回路基板と、を備える車両用アンテナ装置であって、
車両用ウインドウガラスに設けられたウインドウアンテナエレメントが対応する周波数帯域と異なる周波数帯域の電波の送受信を行い、一端が回路基板に接続され、他端がケースの外面に沿った方向に延びる独立アンテナエレメントを有すること、
を特徴とする車両用アンテナ装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用アンテナ装置であって、
独立アンテナエレメントはケースの長手方向の一端側から長手方向の他端側と反対方向に向かって延びていること、
を特徴とする車両用アンテナ装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の車両用アンテナ装置であって、
独立アンテナエレメントの他端は、回路基板から離間する方向に延びていること、
を特徴とする車両用アンテナ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−164731(P2009−164731A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−339762(P2007−339762)
【出願日】平成19年12月28日(2007.12.28)
【出願人】(000185617)小島プレス工業株式会社 (515)
【Fターム(参考)】