説明

車両用アンテナ装置

【課題】実環境に合わせた放射指向性を実現して高い感度性能を発揮することができる車両アンテナ装置を提供する。
【解決手段】リア窓ガラス112上に配置された同一形状の不平衡給電型の第1のアンテナ101および第2のアンテナ102を有し、第1のアンテナ101および第2のアンテナ102の素子長は受信部116の動作周波数帯の3/4波長の実効長であり、それぞれのアンテナは素子の途中に折返し部を有し、第1のアンテナ101および第2のアンテナ102の給電部はリア窓ガラス112の対角にそれぞれ配置され、さらに、2つのアンテナはそれぞれリア窓ガラス112の枠辺の2つ以上の辺に沿って配置され、第1のアンテナ101と第2のアンテナ102のいずれかと合成分配器115との間に、第1のアンテナ101と第2のアンテナ102の動作位相を逆位相になるように調整可能な位相器117を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車などの車両の窓ガラスに搭載された車両用アンテナ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の窓ガラスに搭載された車両用アンテナ装置として、自動車の前面ガラスにその上辺に沿って設けられた第1のアンテナ線と、下辺に沿って設けられた第2のアンテナ線と、上記第1または第2のアンテナ線を選択して受信する切換スイッチ手段とを夫々具備するものが知られている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載のものは、特にスペースダイバシティ受信を効果的に行うことができる。
【0004】
また、従来の別の窓ガラスに搭載された車両用アンテナ装置として、フロントガラスの上縁に対して直角に下に向けて第1のエレメントを配設し、前記第1のエレメントとともに逆L字状となるように前記上縁に沿って第2のエレメントを配設し、前記第1のエレメントの長さを送受信周波数帯の1/4波長の実効長に設定し、前記第2のエレメントの長さを前記送受信周波数帯の1/4波長の実効長に設定し、前記第1のエレメントに同軸線路の中心導体を電気的接続し、前記第2のエレメントに前記同軸線路の外部導体を電気的接続して構成されているものが知られている(例えば特許文献2参照)。
【0005】
特許文献2に記載のものは、車両のフロントガラスの上縁部に、アンテナを2つ配設することで、ダイバーシティアンテナとしても作用させることが可能である。
【0006】
また、従来の別の窓ガラスに搭載された車両用アンテナ装置として、窓のガラス板に複数のアンテナを設け、複数のアンテナの受信信号のうち適正な方を利用するようにしたダイバーシティ受信アンテナにおいて、複数のアンテナのうちの少なくとも1つと受信機との間に位相調整回路を接続することを特徴としたものが知られている(例えば特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭58−070643号公報
【特許文献2】特開2010−045740号公報
【特許文献3】特開平8−307132号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来の車両用アンテナ装置においては、複数のアンテナを用いるダイバーシティアンテナにより受信感度を改善できるとは言え、実環境(電波の到来仰角が0〜20度付近に集中)に適応するように垂直面におけるアンテナの放射指向性を適正化することが必ずしもできていないという課題があった。
【0009】
本発明は、従来の問題を解決するためになされたもので、車両の垂直面におけるアンテナの放射指向性を実環境に適正化することができ、高い受信感度を確保した車両用アンテナ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために本発明は、窓ガラス上の不平衡給電型の第1のアンテナと、前記窓ガラス上の前記第1のアンテナと同一形状の不平衡給電型の第2のアンテナと、前記第1のアンテナと前記第2のアンテナの給電部と接続される合成分配器と、前記分配合成器と接続される受信部とを備え、前記第1のアンテナと前記第2のアンテナの素子の長さを前記受信部の動作周波数帯の3/4波長の実効長に設定し、前記第1のアンテナと前記第2のアンテナは素子の途中に折返し部を有し、前記第1のアンテナと前記第2のアンテナの給電部は前記窓ガラスの角において対称に配置され、かつ、前記第1のアンテナと前記第2のアンテナは前記窓ガラスの枠辺の2つ以上の辺に沿って配置されおり、前記第1のアンテナと前記第2のアンテナのうち少なくともひとつのアンテナと前記合成分配器との間に、前記第1のアンテナと前記第2のアンテナの動作位相を逆位相に調整する位相器を備えるという構成を有する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、実環境に合わせた放射指向性を実現することで、高い感度性能を発揮することができる効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態1におけるリア窓ガラス搭載アンテナ装置の構成図
【図2】本発明の実施の形態1〜4におけるリア窓ガラス搭載アンテナ装置を搭載する車両を示す図
【図3】本発明の実施の形態1におけるリア窓ガラス搭載アンテナ装置の動作説明図
【図4】本発明の実施の形態1におけるリア窓ガラス搭載アンテナ装置の効果説明図
【図5】(a)本発明の実施の形態2におけるリア窓ガラス搭載アンテナ装置の構成図(b)発明の実施の形態2におけるリア窓ガラス搭載アンテナ装置の指向性利得を示す図
【図6】本発明の実施の形態3におけるリア窓ガラス搭載アンテナ装置の構成図
【図7】本発明の実施の形態4におけるリア窓ガラス搭載アンテナ装置の構成図
【図8】本発明の実施の形態4におけるリア窓ガラス搭載アンテナ装置の指向利得を示す図であって(a)は、選択ダイバーシティアンテナとして動作させた場合を示す図(b)は、アレーアンテナとして動作させた場合を示す図
【図9】従来のリア窓ガラス搭載アンテナ装置の構成図
【発明を実施するための形態】
【0013】
(実施の形態1)
本発明は、実環境に合わせたアンテナの放射指向性制御により高い受信感度性能を有し、車両の窓ガラスに搭載された車両用アンテナ装置に関するものである。
以下、本発明の実施の形態1における車両用アンテナ装置について図面を参照しながら説明する。
【0014】
図1は本発明の実施の形態1における車両用アンテナ装置をリア窓ガラスに搭載した構成図であり、図2は、リア窓ガラスに車両用アンテナ装置を備えた車両の全体図である。なお、本発明の車両用アンテナ装置として、例えば、周波数76〜108MHz帯のFMラジオの受信用アンテナとして説明する。
【0015】
図1において、リア窓ガラス搭載アンテナ装置120は、図2に示す車両100に搭載され、リア窓ガラス112と、リア窓ガラス112上に配置された第1のアンテナ101および第2のアンテナ102と、それぞれのアンテナに対応する第1の整合回路105および第2の整合回路106と、合成分配器115と、位相器117と、受信部116とを有する。
【0016】
第1のアンテナの給電部103はリア窓ガラス112の上辺の右端側に配置され、アンテナ素子は導電性の材料で形成され、第1のアンテナの給電部103よりリア窓ガラス112の枠の右辺側に沿って下辺側に向けて配置され、さらに下辺側に沿って左辺側に向けて配置され、くわえて素子はコの字形状に折り返され、モノポールアンテナとして動作する。
【0017】
第2のアンテナの給電部104はリア窓ガラス112の下辺の左端側に配置され、アンテナ素子は導電性の材料で形成され、第2のアンテナの給電部104よりリア窓ガラス112の枠の左辺側に沿って上辺側に向けて配置され、上辺側に沿って右辺側に向けて配置され、さらに素子はコの字形状に折り返され、モノポールアンテナとして動作する。
【0018】
以下の説明においては、説明の便宜上、第1のアンテナ101および第2のアンテナ102のそれぞれが3つの構成部分からなるものとして説明する場合もある。
【0019】
すなわち、第1のアンテナ101が、その給電部側(第1の整合回路105に接続される側)から他端側に向かって第1のアンテナ第1構成部101a、第1のアンテナ第2構成部101b、第1のアンテナ第3構成部101cを備える構成とする。
【0020】
さらに、第2のアンテナ102も同様に、その給電部側(第2の整合回路106に接続される側)から他端側に向かって第2のアンテナ第1構成部102a、第2のアンテナ第2構成部102b、第2のアンテナ第3構成部102cを備える構成とする。
【0021】
したがって、第1のアンテナ101は、換言すると、第1のアンテナの給電部の側を始点として リア窓ガラス112の枠の右辺側に沿って下辺側に向けて第1のアンテナ第1構成部101aが配置され、さらに下辺側に沿って左辺側に向けて第1のアンテナ第2構成部101bが配置され、加えて第1のアンテナ第3構成部101cが第1のアンテナ第2構成部101bに対してコの字形状に折り返された状態で配置される。
【0022】
第2のアンテナ102も同様に、換言すると、第2のアンテナの給電部の側を始点としてリア窓ガラス112の枠の左辺側に沿って上辺側に向けて第2のアンテナ第1構成部102aが配置され、さらに上辺側に沿って右辺側に向けて第2のアンテナ第2構成部102bが配置され、加えて第2のアンテナ第3構成部102cが第2のアンテナ第2構成部102bに対してコの字形状に折り返された状態で配置される。
【0023】
なお、上述の第1のアンテナ第2構成部101bと第1のアンテナ第3構成部101cとが接続されるコの字形状の部位および第2のアンテナ第2構成部102bと第2のアンテナ第3構成部102cとが接続されるコの字形状の部位をそれぞれ折返し部と称する。
【0024】
第1の整合回路105は、第1のアンテナ101のインピーダンスを例えば50Ωに調整するものであり、リア窓ガラス112の近傍の車両100に配置され、さらに、合成分配器115に接続される。
【0025】
第2の整合回路106は、第2のアンテナ102のインピーダンスを例えば50Ωに調整するものであり、リア窓ガラス112の近傍の車両100に配置され、さらに、位相器117を介して合成分配器115に接続される。
【0026】
合成分配器115は、第1のアンテナ101より受信された信号と、第2のアンテナ102より受信された信号を合成して受信部116へ出力する。
【0027】
受信部116は、合成分配器115で合成された信号を増幅させ、受信信号をデータ信
号に復調するための機能を備える。
【0028】
第1のアンテナ101の素子長は、例えば、FMラジオの動作周波数の略3/4波長であり、リア窓ガラス112の右辺側に沿って配置される素子長は、略1/4波長であり、リア窓ガラス112の下辺側に沿って配置される素子長は、略1/4波長であり、コの字形状に折り返された素子の素子長は、略1/4波長である。
【0029】
つまりは、図1に示すように、第1のアンテナの給電部103側の始点を点A、第1のアンテナの第1構成部101aと第1のアンテナの第2構成部101bの接続点を点B、第1のアンテナの第2構成部101bと第1のアンテナの第3構成部101cの接続点を点C、第1のアンテナの給電点と反対側の端点を点Dと定義する。
【0030】
このとき第1のアンテナの第1構成部101aの長さをAB、第1のアンテナの第2構成部101bの長さをBC、第1のアンテナの第3構成部101cの長さをCDと表すとき、AB、BC、CDの長さは略1/4波長となる。
また、第1のアンテナ101とリア窓ガラス112の枠との間隔は例えば1/30波長とする。
【0031】
第2のアンテナ102の素子長は、例えば、FMラジオの動作周波数の略3/4波長であり、リア窓ガラス112の左辺側に沿って配置される素子長は、略1/4波長であり、リア窓ガラス112の上辺側に沿って配置された素子長は、略1/4波長であり、コの字形に折り返された素子の素子長は、略1/4波長である。
【0032】
つまりは、図1に示すように、第2のアンテナの給電部104側の始点を点E、第2のアンテナの第1構成部102aと第2のアンテナの第2構成部102bの接続点を点F、第2のアンテナの第2構成部102bと第2のアンテナの第3構成部102cの接続点を点G、第2のアンテナの給電点と反対側の端点を点Hと定義する。
【0033】
このとき第2のアンテナの第1構成部102aの長さをEF、第2のアンテナの第2構成部102bの長さをFG、第2のアンテナの第3構成部102cの長さをGHと表すとき、EF、FG、GHの長さは略1/4波長となる。
【0034】
また、第2のアンテナ102とリア窓ガラス112の枠との間隔は例えば1/30波長とする。
【0035】
したがって、素子長が略3/4波長のモノポールアンテナとして動作し、素子形状が同一な2つのアンテナが、リア窓ガラス112の右上と左下を結ぶ対角線に対し対照に配置されることになる。
【0036】
また、第1のアンテナ101と第2のアンテナ102の間隔は、リア窓ガラス112の左辺右辺方向(車両100のドア方向)で3/10波長とし(図1に示すL1)、リア窓ガラス112の上辺下辺方向で1/4波長とする(図1に示すL2)。
【0037】
以上のように構成されたリア窓ガラス搭載アンテナ装置120について、以下にその動作を説明する。
【0038】
位相器117は、合成分配器115から見た第1のアンテナ101の動作位相と、合成分配器115から見た第2のアンテナ102の動作位相とが逆位相となるように調整される。
【0039】
つまりは、第1のアンテナ101と第2のアンテナ102は、逆位相で動作するアレーアンテナとなる。
【0040】
このときの第1のアンテナ101と第2のアンテナ102に流れるアンテナ電流を図3に示す。なお、図1と同一部分には同一符号を付して重複説明を避ける。
【0041】
第1のアンテナ101は、使用する周波数において3/4波長の線状アンテナとして設計されているため、アンテナの端点から1/4波長ごとに電流の腹(電流値の極大位置)と電流の節(電流値の極小位置)が交互に現れる。
【0042】
今、AB、BC、CDの長さが略1/4波長に等しいため、点Dは電流の節、点Cは電流の腹、点Bは電流の節、点Aは電流の腹となる。
【0043】
第1のアンテナ101上の点Bは電流の節となるため、点Bに接続される第1のアンテナ101の第1構成部101aと第1のアンテナ101の第2構成部101bには常に逆向きの電流が流れる。
【0044】
すなわち第1のアンテナ101の第1構成部101a上を電流が点Aから点Bに向かって電流が流れるとき、第1のアンテナ101の第2構成部101b上を点Cから点Bに向かって電流が流れる。したがって、第1のアンテナ101の第1構成部101aと第1のアンテナ101の第2構成部101bから点Bへ流れ込む電流が互いに相殺しあい、電流値がゼロとなる。
【0045】
一方、第1のアンテナ101上の点Cは電流の腹となるため、点Cに接続される第1のアンテナ101の第2構成部101bと第1のアンテナ101の第3構成部101cには常に同じ向きの電流が流れる。
【0046】
すなわち第1のアンテナ101の第2構成部101b上を電流が点Cから点Bに向かって電流が流れるとき、第1のアンテナ101の第3構成部101c上を点Dから点Cに向かって電流が流れる。
【0047】
したがって、第1のアンテナ101の第2構成部101bと第1のアンテナ101の第3構成部101cから点Cへ流れ込む(または流れ出す)電流は互いに強めあう向きとなり、電流値が極大となる。
【0048】
第2のアンテナ102も同様に、アンテナ上の点Fは電流の節となるため、点Fに接続される第2のアンテナ102の第1構成部102aと第2のアンテナ102の第2構成部102bには常に逆向きの電流が流れる。
【0049】
すなわち第2のアンテナ102の第1構成部102a上を電流が点Eから点Fに向かって電流が流れるとき、第2のアンテナ102の第2構成部102b上を点Gから点Fに向かって電流が流れる。
【0050】
したがって、第2のアンテナ102の第1構成部102aと第2のアンテナ102の第2構成部101bから点Fへ流れ込む電流が互いに相殺しあい、電流値がゼロとなる。
【0051】
一方、第2のアンテナ102上の点Gは電流の腹となるため、点Gに接続される第2のアンテナ102の第2構成部102bと第2のアンテナ102の第3構成部102cには常に同じ向きの電流が流れる。
【0052】
すなわち第2のアンテナの第2構成部102b上を電流が点Gから点Fに向かって電流が流れるとき、第1のアンテナの第3構成部102c上を点Hから点Gに向かって電流が流れる。
【0053】
したがって、第2のアンテナ102の第2構成部102bと第2のアンテナ102の第3構成部102cから点Gへ流れ込む(または流れ出す)電流は互いに強めあう向きとなり、電流値が極大となる。
【0054】
次に、第1のアンテナ101と第2のアンテナ102に流れるアンテナ電流の向きについて説明する。
【0055】
受信部116へ流れ込むアンテナ電流は、合成分配器115により第1の整合回路105および第1のアンテナ101へ至る配線と、位相器117、第2の整合回路106および第2のアンテナ102へ至る配線に分かれて流れている。
【0056】
位相器117は、合成分配器115から第2のアンテナ102へ至るアンテナ電流の位相を調整するために設けている。
【0057】
したがって、位相器117は、合成分配器115から第1のアンテナ101の給電点へ至る配線による位相の回転と、合成分配器115から第2のアンテナ102の給電点へ至る配線による位相の回転の差を任意に設定することができる。
【0058】
ここで、第1のアンテナ101の第1構成部101aをアンテナ電流131(すなわち点Aから点Bへ)が流れるとき、第2のアンテナ102の第1構成部102aをアンテナ電流134(すなわち点Eから点Fへ)が流れるように、位相器117を調整する。
【0059】
リア窓ガラス112に垂直な面から第1のアンテナ101と第2のアンテナ102を眺めたとき、第1のアンテナ101の第1構成部101aと第2のアンテナ102の第1構成部102aには、互いに逆方向に電流が流れることになる。このような状態を「逆位相」と定義する。
【0060】
第1のアンテナ101と第2のアンテナ102を逆位相で動作させたとき、図3に示すように、第1のアンテナ101には、矢印の向きにアンテナ電流131とアンテナ電流132およびアンテナ電流133が流れ、第2のアンテナ102には、矢印の向きにアンテナ電流134とアンテナ電流135およびアンテナ電流136が流れる。
【0061】
第1のアンテナ101に流れるアンテナ電流131とアンテナ電流132とアンテナ電流133は、それぞれ、第2のアンテナ102に流れるアンテナ電流134とアンテナ電流135とアンテナ電流136と逆向きとなる。
【0062】
すなわち、第1のアンテナ第1構成部101aに流れるアンテナ電流131と第2のアンテナ第1構成部102aに流れるアンテナ電流134とはリア窓ガラス112上において互いに逆向きに流れる。
【0063】
さらに、第1のアンテナ第2構成部101bに流れるアンテナ電流132と第2のアンテナ第2構成部102bに流れるアンテナ電流135とはリア窓ガラス112上において互いに逆向きに流れる。
【0064】
そして、第1のアンテナ第3構成部101cに流れるアンテナ電流133と第2のアンテナ第3構成部102cに流れるアンテナ電流136とはリア窓ガラス112上において
互いに逆向きに流れる。
【0065】
このとき、波長に対して十分遠方の+Z軸方向からリア窓ガラス112に至る電波が第1のアンテナ101へ誘導するアンテナ電流と、第2のアンテナ102へ誘導するアンテナ電流は、合成分配器115において互いの電流は打ち消しあうことになるため、受信機へ流れ込む電流は小さくなる。このように受信機が取り出しうる電流が少ない状態を、「+Z軸方向へのアンテナの指向性利得が小さい」と呼ぶ。
【0066】
一方、X軸およびY軸方向では、第1のアンテナ101と第2のアンテナ102の間隔が離れているため、波長に対して十分遠方のX軸およびY軸方向からリア窓ガラス112に至る電波が第1のアンテナ101へ誘導するアンテナ電流と、第2のアンテナ102へ誘導するアンテナ電流は、合成分配器115において打ち消しあうことなく、受信機には有限の電流が流れ込む。
【0067】
すなわち、X軸およびY軸方向へのアンテナの指向性利得は、+Z軸方向のように小さくはならない。
【0068】
図4は、図2の車両100のドア方向と天頂方向からなる垂直面(YZ面)での水平偏波におけるアンテナの指向性利得を示した図である。
【0069】
まず、指向性利得140は、図9に示す従来のリア窓ガラス搭載アンテナ装置121を車両100に搭載した場合のものである。
【0070】
また、指向性利得141は、図1のリア窓ガラス搭載アンテナ装置120を車両100に搭載した場合のものである。
【0071】
ここで、指向性利得141は、リア窓ガラス搭載アンテナ装置120において位相器117を調整し、合成分配器115から見た第1のアンテナ101の動作位相と第2のアンテナ102の動作位相を「逆位相」とした場合のものである。
【0072】
指向性利得140の最大方向は仰角80度であるのに対し、指向性利得141の最大方向は仰角40度である。
【0073】
ここで、実環境におけるFMラジオ電波の到来方向は仰角0〜20度付近に集中していることが知られている。したがって、指向性利得141は最大方向の仰角が低くなったために、仰角20度を中心とした指向性利得が改善し、平均実効利得(MEG:Mean Effective Gain)が指向性利得140に比べ約4dB改善する。
【0074】
よって、従来のリア窓ガラス搭載アンテナ装置に対して、高い感度性能を実現することができる。
【0075】
なお、本実施の形態では、第1のアンテナ101と第2のアンテナ102はリア窓ガラス112の右上側および左下側の対角にそれぞれのアンテナの給電部を配置した構成を例示したが、左上側および右下側の対角それぞれのアンテナの給電部を配置した構成としても同様の効果が得られる。
【0076】
なお、本実施の形態では、合成分配器115からみた第1のアンテナ101の動作位相と第2のアンテナ102の動作位相を逆位相とする手段として位相器を用いたが、合成分配器115と第1の整合回路105とを接続する線路の長さおよび合成分配器115と第2の整合回路106を接続する線路の長さを調整することでも同様の効果が得られる。
【0077】
なお、本実施形態では、第1のアンテナ101と第2のアンテナ102の素子形状が同一な場合について説明したが、発明の効果を得るためには、数センチメートルの誤差は許容される。
【0078】
なお、本実施形態では、FM受信用のアンテナとして説明したが、デジタルテレビのアンテナであっても、同様な効果が得られる。
(実施の形態2)
以下、本発明の実施の形態2における車両用アンテナ装置について図面を参照しながら説明する。なお、本実施形態において、第1の実施形態と同一部分には同一符号を付して重複説明を避ける。
【0079】
図5(a)におけるリア窓ガラス搭載アンテナ装置122と、図1におけるリア窓ガラス搭載アンテナ装置120との違いは、第1のアンテナ151および第2のアンテナ152の配置である。
【0080】
第1のアンテナの給電部153はリア窓ガラス112の上辺の右端側に配置され、アンテナ素子は導電性の材料で形成され、第1のアンテナの給電部153よりリア窓ガラス112の枠の右辺側に沿って下辺側に向けて配置された後、下辺側で折り返されて第1のアンテナの給電部153の方向に向けて配置され、さらに素子は上辺側で左辺側に向けて折り返され、モノポールアンテナとして動作する。
【0081】
第2のアンテナの給電部154はリア窓ガラス112の下辺の左端側に配置され、アンテナ素子は導電性の材料で形成され、第2のアンテナの給電部154よりリア窓ガラス112の枠の左辺側に沿って上辺側に向けて配置された後、上辺側で折り返されて第2のアンテナの給電部154の方向に向けて配置され、ささらに素子は下辺側で右辺側に向けて折り返され、モノポールアンテナとして動作する。
【0082】
本実施の形態においても実施の形態1同様、以下の説明において、説明の便宜上、第1のアンテナ151および第2のアンテナ152のそれぞれが3つの構成部分からなるものとして説明する場合もある。
【0083】
すなわち、第1のアンテナ151が、その給電部側(第1の整合回路107に接続される側)から他端側に向かって第1のアンテナ第1構成部105a、第1のアンテナ第2構成部105b、第1のアンテナ第3構成部105cを備える構成とする。
【0084】
さらに、第2のアンテナ152も同様に、その給電部側(第2の整合回路108に接続される側)から他端側に向かって第2のアンテナ第1構成部152a、第2のアンテナ第2構成部152b、第2のアンテナ第3構成部152cを備える構成であるとする。
【0085】
したがって、第1のアンテナ151は、換言すると、第1のアンテナの給電部153の側を始点として、リア窓ガラス112の枠の右辺側に沿って下辺側に向けて第1のアンテナ第1構成部151aが配置され、さらに第1のアンテナ第2構成部151bが第1のアンテナ第1構成部151aに対してコの字形状に折り返された状態で配置され、加えて、上辺側に沿って左辺側に向けて第1のアンテナ第3構成部151cが設けられた状態で配置される。
【0086】
第2のアンテナ152も同様に、上述の説明を換言すると、第2のアンテナの給電部154の側を始点として、リア窓ガラス112の枠の左辺側に沿って上辺側に向けて第2のアンテナ第1構成部152aが配置され、さらに第2のアンテナ第2構成部152bが第
1のアンテナ第1構成部152aに対してコの字形状に折り返された状態で配置され、加えて、下辺側に沿って右辺側に向けて第2のアンテナ第3構成部152cが設けられた状態で配置される。
【0087】
なお、上述の第1のアンテナ第1構成部151aと第1のアンテナ第2構成部151bとが接続されるコの字形状の部位および第2のアンテナ第1構成部152aと第2のアンテナ第2構成部102bとが接続されるコの字形状の部位をそれぞれ折返し部と称する。
【0088】
第1の整合回路107は、第1のアンテナ151のインピーダンスを例えば50Ωに調整するものであり、リア窓ガラス112の近傍の車両100に配置され、さらに、合成分配器115に接続される。
【0089】
第2の整合回路108は、第2のアンテナ152のインピーダンスを例えば50Ωに調整するものであり、リア窓ガラス112の近傍の車両100に配置され、さらに、位相器117を介して合成分配器115に接続される。
【0090】
第1のアンテナ151の素子長は、例えば、FMラジオの動作周波数の略3/4波長であり、リア窓ガラス112の右辺側に沿って配置される素子長は、略1/4波長であり、リア窓ガラス112の下辺側で折り返され給電部方向に配置される素子長は、略1/4波長であり、リア窓ガラス112の上辺側に配置される素子長は、略1/4波長である。
【0091】
つまりは、図5に示すように、第1のアンテナの給電部153側の始点を点A、第1のアンテナの第1構成部151aと第1のアンテナの第2構成部151bの接続点を点B、第1のアンテナの第2構成部151bと第1のアンテナの第3構成部151cの接続点を点C、第1のアンテナの給電点と反対側の端点を点Dと定義する。このとき第1のアンテナの第1構成部151aの長さをAB、第1のアンテナの第2構成部102bの長さをBC、第1のアンテナの第3構成部101cの長さをCDと表すとき、AB、BC、CDの長さは略1/4波長となる。
【0092】
また、第1のアンテナ151とリア窓ガラス112の枠との間隔は例えば1/30波長とする。
【0093】
第2のアンテナ152の素子長は、例えば、FMラジオの動作周波数の略3/4波長であり、リア窓ガラス112の左辺側に沿って配置される素子長は、略1/4波長であり、リア窓ガラス112の上辺側で折り返され給電部方向に配置される素子長は、略1/4波長であり、リア窓ガラス112の下辺側に配置される素子長は、略1/4波長である。
【0094】
つまりは、図5に示すように、第2のアンテナの給電部154側の始点を点E、第2のアンテナの第1構成部152aと第2のアンテナの第2構成部152bの接続点を点F、第2のアンテナの第2構成部152bと第2のアンテナの第3構成部152cの接続点を点G、第2のアンテナの給電点と反対側の端点を点Hと定義する。このとき第2のアンテナの第1構成部152aの長さをEF、第2のアンテナの第2構成部152bの長さをFG、第2のアンテナの第3構成部152cの長さをGHと表すとき、EF、FG、GHの長さは略1/4波長となる。
【0095】
また、第2のアンテナ152とリア窓ガラス112の枠との間隔は例えば1/30波長とする。
【0096】
したがって、素子長が略3/4波長のモノポールアンテナとして動作し、素子形状が同一な2つのアンテナが、リア窓ガラス112の左上と右下を結ぶ対角線に対し対照に配置
されることになる。
【0097】
また、第1のアンテナ151と第2のアンテナ152の間隔は、リア窓ガラス112の左辺右辺方向(車両100のドア方向)で1/4波長とし(図5に示すL3)、リア窓ガラス112の上辺下辺方向で3/10波長とする(図5に示すL4)。
【0098】
以上のように構成されたリア窓ガラス搭載アンテナ装置122について、その動作は、本発明の実施形態1におけるリア窓ガラス搭載アンテナ装置120と同様である。
【0099】
特に、車両100のドア方向と天頂方向からなる垂直面(YZ面)での水平偏波の指向性利得の改善効果がある。
【0100】
図5(b)は、YZ面における水平偏波方向の指向性利得を示す図であり、指向性利得142は、従来の車両用アンテナ装置(図9のリア窓ガラス搭載アンテナ装置121と同様に、図5(a)において、第1のアンテナ151のみが配置された場合)を車両100に搭載した場合のものである。
【0101】
指向性利得143は、図5(a)記載のリア窓ガラス搭載アンテナ装置122を車両100に搭載し、合成分配器115から見た第1のアンテナ151の動作位相と第2のアンテナ152の動作位相を逆位相となるように位相器117を調整した場合のものである。
【0102】
本発明の実施の形態1とほぼ同様に、指向性利得143は、最大方向の仰角が低くなり、仰角20度を中心とした平均実効利得が指向性利得142に比べ約4dB改善でき、高い感度性能を実現することができる。
(実施の形態3)
以下、本発明の実施の形態3における車両用アンテナ装置について図面を参照しながら説明する。なお、本実施形態において、第1の実施形態と同一部分には同一符号を付して重複説明を避ける。
【0103】
図6におけるリア窓ガラス搭載アンテナ装置123と、図1におけるリア窓ガラス搭載アンテナ装置120との違いは、ヒータ導線を追記している点である。
【0104】
第1のヒータ導線171および第2のヒータ導線172は、導電性の材料で形成され、リア窓ガラス112上に貼付される。
【0105】
第1のヒータ導線171および第2のヒータ導線172は、リア窓ガラス112の上辺および下辺に略平行で略30mmの間隔で配置される複数の導線で構成、同一数の導線を有する。
【0106】
第1のヒータ導線171と第2のヒータ導線172とは紙面に向かって左右に隣り合って設けられ、第1のヒータ導線171と第2のヒータ導線172との間には、リア窓ガラス112の右上と左下を結ぶ対角線に沿って隙間が設けられている。この隙間は、例えば30mm程度の間隔とする。
【0107】
したがって、第1のヒータ導線171は、第1のアンテナ101の形状に沿った形状となるように、第2のヒータ導線172は、第2のアンテナ102の形状に沿った形状となるように、隙間が設けられる。
【0108】
ここで、第1のアンテナ101は第1のヒータ導線171とのみ近接し、第2のアンテナ102は第2のヒータ導線172とのみ近接する。
また、第1のヒータ導線171および第2のヒータ導線172は、図示していないが、電源と車両100のグラウンドとに直流的には接続されているが、高周波的に離れている構造(例えばチョークコイルで接続、もしくはフィルタで接続)にて接続される。
【0109】
以上のように構成されたリア窓ガラス搭載アンテナ装置123について、以下にその動作を説明する。なお、図1と同一符号を付してある構成の動作は、本発明の実施形態1におけるリア窓ガラス搭載アンテナ装置120と同様である。
【0110】
第1のヒータ導線171および第2のヒータ導線172は、リア窓ガラス112の曇り止め機能を有するために、リア窓ガラス112のできるだけ全体に配線させることが望ましい。
【0111】
そのため、第1のアンテナ101および第2のアンテナ102と第1のヒータ導線171および第2のヒータ導線172との間隔は例えば50mm程度であり非常に狭く、かつそれぞれが略平行に配置されているため、電磁的に結合しやすくなる。
【0112】
ここで、一般的なヒータ導線では、本願発明の第1のヒータ導線171と第2のヒータ導線172との間に設けられた隙間がなく繋がった構成を備えている。
【0113】
したがって、この繋がったヒータ導線に第1のアンテナ101および第2のアンテナ102が近接して電磁的に結合されると、第1のアンテナ101と第2のアンテナ102が繋がったヒータ導線を介して、電磁的に強く結合されるため、実施形態1で示した放射指向性の低仰角化による平均実効利得の改善効果が得られない。
【0114】
そこで、本願発明のように、第1のアンテナ101は第1のヒータ導線171とのみ近接し、第2のアンテナ102は第2のヒータ導線172とのみ近接するよう構成することで、第1のアンテナ101は第1のヒータ導線171とのみ電磁結合され,および第2のアンテナ102は第2のヒータ導線172とのみ電磁結合される。
【0115】
このとき、第1のヒータ導線171と第2のヒータ導線172は、それぞれ第1のアンテナ101と第2のアンテナ102のアンテナ電流がその外形部分に流れる。
【0116】
ここで、合成分配器115から見た第1のアンテナ101の動作位相と第2のアンテナ102の動作位相を「逆位相」となるように位相器117を調整した場合、第1のアンテナ101と第2のアンテナ102によって誘起される第1のヒータ導線171と第2のヒータ導線172に流れるアンテナ電流も逆向きとなり、第1のヒータ導線171と第2のヒータ導線172も「逆位相」となる。
【0117】
したがって、実施形態1で示した放射指向性の低仰角化による平均実効利得の改善効果が得られ、高い感度性能を実現することができる。
【0118】
なお、本実施形態では、第1のヒータ導線171と第2のヒータ導線172とを所定の隙間を隔てて配置しているが、これによらず、直流的には接続されているが、高周波的(動作する周波数帯)に離れている構造(例えばチョークコイルで接続、もしくはフィルタで接続)であれば、同様な効果が得られる。
(実施の形態4)
以下、本発明の実施の形態4における車両用アンテナ装置について図面を参照しながら説明する。なお、本実施形態において、第1の実施形態と同一部分には同一符号を付して重複説明を避ける。
【0119】
図7におけるリア窓ガラス搭載アンテナ装置200と、図1におけるリア窓ガラス搭載アンテナ装置120との違いは、第1の切り替えスイッチ211と、第2の切り替えスイッチ212と第3の切り替えスイッチ213と、第4の切り替えスイッチ214を備える点である。
【0120】
第1の切り替えスイッチ211は、端子Aを受信部116と、端子Bを合成分配器115と、端子Cを第4の切り替えスイッチ214の端子Aと接続される。
【0121】
第2の切り替えスイッチ212は、端子Aを第1の整合回路105と、端子Bを合成分配器115と、端子Cを第4の切り替えスイッチ214の端子Bと接続される。
【0122】
第3の切り替えスイッチ213は、端子Aを第2の整合回路106と、端子Bを位相器117と、端子Cを第4の切り替えスイッチ214の端子Cと接続される。
【0123】
第4の切り替えスイッチ214は、端子Aを第1の切り替えスイッチ211の端子Cと、端子Bは、第2の切り替えスイッチの端子Cと、端子Cは、第3の切り替えスイッチ213の端子Cと接続される。
【0124】
第1のアンテナ101は、第1の整合回路105に接続され、第1の整合回路105は、第2の切り替えスイッチ212の端子Aに接続される。第2のアンテナ102は、第2の整合回路106に接続され、第2の整合回路106は、第3の切り替えスイッチ213の端子Aに接続される。
【0125】
位相器117は、第3の切り替えスイッチ213の端子Bおよび合成分配器115に接続される。
【0126】
受信部118は、第1のアンテナ101と第2のアンテナ102で受信される信号を増幅させ、受信信号をデータ信号に復調するための機能を備える。さらに、受信信号のレベルに応じて第1の切り替えスイッチ211〜第4の切り替えスイッチ214を切替える制御信号を出力する。
【0127】
以上のように構成されたリア窓ガラス搭載アンテナ装置200について、以下にその動作を説明する。リア窓ガラス搭載アンテナ装置200は、4つの切り替えスイッチにより、2つのアンテナ構成を有する。
【0128】
1つ目のアンテナ構成は、例えば、初期設定として、制御信号311により第1の切り替えスイッチ211の端子Aが端子Bと接続され、制御信号312により第2の切り替えスイッチ212の端子Aが端子Bと接続され、制御信号313により第3の切り替えスイッチ213の端子Aが端子Bと接続された構成である。このとき、第1のアンテナ101と第2のアンテナ102は、実施形態1と同様に、逆位相で動作するアレーアンテナ構成となる。
【0129】
ここで、上記アレーアンテナ構成での受信信号レベルが受信部118で復調可能レベル以下となった場合、制御信号311により第1の切り替えスイッチ211の端子Aと端子Cが接続され、制御信号312により第2の切り替えスイッチ212の端子Aが端子Cと接続され、制御信号313により第3の切り替えスイッチ213の端子Aが端子Cと接続される。このとき、制御信号314により第4の切り替えスイッチ214にて第1のアンテナ101と第2のアンテナ102を切替える2つ目のアンテナ構成である選択ダイバーシティアンテナ構成となる。
【0130】
図8は、図2の車両100の水平面(XY面)での垂直偏波および水平偏波の指向性利得を示した図である。
【0131】
図8(a)は、第1のアンテナ101と第2のアンテナ102とが選択ダイバーシティアンテナ構成に用いられる場合の指向性利得を示す図である。
【0132】
この場合、垂直偏波の放射が強く、その平均利得は、水平偏波の平均利得に対し約4dB高く、垂直偏波が強い電波環境において有効である。
【0133】
図8(b)は、第1のアンテナ101と第2のアンテナ102とが逆位相で動作するアレーアンテナ構成に用いられる場合の指向性利得を示す図である。水平偏波の放射が強く、その平均利得は、垂直偏波の平均利得に対し約4dB高く、水平偏波が強い電波環境において有効である。
【0134】
よって、本発明の実施の形態5におけるリア窓ガラス搭載アンテナ装置200は、受信部118からの制御信号により、アンテナ構成を切り替えることで、垂直偏波および水平偏波どちらの電波環境においても、高い受信感度を実現することができる。
【0135】
なお、本実施の形態では、アレーアンテナ構成と第1のアンテナ101と第2のアンテナ102の選択ダイバーシティアンテナ構成を切り替え構成について示したが、アレーアンテナ構成と第1のアンテナ101または第2のアンテナ102を切り替える構成でも同様の効果が得られる。
【0136】
つまりは、図7において、第3の切り替えスイッチ213と第4の切り替えスイッチ214を削除し、第2の整合回路106は位相器117に接続され、第1の切り替えスイッチ211の端子Cと第2の切り替えスイッチ212の端子Cとを接続する構成である。
【0137】
上記構成により、選択ダイバーシティ構成は不可能となるが、2つの切り替えスイッチと2つの制御信号を削除できるため、コストを低減でき、かつ構成をシンプルにすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0138】
本発明の車両用アンテナ装置は、実環境に合わせた放射指向性を実現することで、高い感度性能を発揮することができる効果を有し、例えば車両用リア窓ガラスに搭載するアンテナ装置などに有用である。
【符号の説明】
【0139】
100 車両
101、151 第1のアンテナ
102、152 第2のアンテナ
103、153 第1のアンテナの給電部
104、154 第2のアンテナの給電部
105、107 第1の整合回路
106、108 第2の整合回路
115 合成分配器
116、118 受信部
117 位相器
112 リア窓ガラス
120、121、122、123、200 リア窓ガラス搭載アンテナ装置
131、132、133、134、135、136 アンテナ電流
140、141、142、143 指向性利得
171 第1のヒータ導線
172 第2のヒータ導線
211 第1の切り替えスイッチ
212 第2の切り替えスイッチ
213 第3の切り替えスイッチ
214 第4の切り替えスイッチ
311、312、313、314 制御信号


【特許請求の範囲】
【請求項1】
窓ガラス上の不平衡給電型の第1のアンテナと、前記窓ガラス上の前記第1のアンテナと同一形状の不平衡給電型の第2のアンテナと、前記第1のアンテナと前記第2のアンテナの給電部と接続される合成分配器と、前記分配合成器と接続される受信部とを備え、
前記第1のアンテナと前記第2のアンテナの素子の長さを前記受信部の動作周波数帯の3/4波長の実効長に設定し、前記第1のアンテナと前記第2のアンテナは素子の途中に折返し部を有し、前記第1のアンテナと前記第2のアンテナの給電部は前記窓ガラスの角において対称に配置され、かつ、前記第1のアンテナと前記第2のアンテナは前記窓ガラスの枠辺の2つ以上の辺に沿って配置されおり、前記第1のアンテナと前記第2のアンテナのうち少なくともひとつのアンテナと前記合成分配器との間に、前記第1のアンテナと前記第2のアンテナの動作位相を逆位相に調整する位相器を備えることを特徴とする車両用アンテナ装置。
【請求項2】
請求項1記載の車両アンテナ装置であって、前記窓ガラス上に貼付され、前記第1のアンテナと前記第2のアンテナに近接される前記窓ガラスと相似形状のヒータ導線を備え、
前記ヒータ導線は、前記第1のアンテナの給電部と前記第2のアンテナの給電部とを結ぶ対角線に沿って高周波的に非接続とされた第1のヒータ導線と第2のヒータ導線に分離されることを特徴とする車両用アンテナ装置。
【請求項3】
窓ガラス上の不平衡給電型の第1のアンテナと、前記窓ガラス上の前記第1のアンテナと同一形状の不平衡給電型の第2のアンテナと、前記第1のアンテナの給電部と接続される第1の切り替え手段と、前記第2のアンテナの給電部と接続される第2の切り替え手段と、前記第1の切り替え手段と前記第2の切り替え手段と接続される合成分配器と、前記分配合成器と接続される前記第3の切り替え手段と、前記第1ないし第3の切り替え手段と接続される第4の切り替え手段と、前記第3の切り替え手段と接続される受信部とを備え、
前記第1のアンテナと前記第2のアンテナの素子の長さを前記受信部の動作周波数帯の3/4波長の実効長に設定し、前記第1のアンテナと前記第2のアンテナは素子の途中に折返し部を有し、前記第1のアンテナと前記第2のアンテナの給電部は前記窓ガラスの角において対称に配置され、かつ、前記第1のアンテナと前記第2のアンテナは前記窓ガラスの枠辺の2つ以上の辺に沿って配置されおり、前記第1のアンテナと前記第2のアンテナのうち少なくともひとつのアンテナと前記合成分配器との間に、前記第1のアンテナと前記第2のアンテナの動作位相を逆位相になるように調整可能な位相器を備え、前記第1ないし第4の切り替え手段は前記受信部の制御信号により前記第1のアンテナと前記第2のアンテナをダイバーシティアンテナ構成もしくはアレーアンテナ構成に切り替えることを特徴とする車両用アンテナ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−170035(P2012−170035A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−31589(P2011−31589)
【出願日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】