説明

車両用アームレスト

【課題】アームレスト芯材の外表面を軟質樹脂成形体からなるアームレスト表皮で被包し、アームレスト表皮の周縁に沿って設けたアンダーカット状の掛止め部をアームレスト芯材に係着してなる廉価タイプのアームレストであって、外観性能並びに手触り感を向上させる。
【解決手段】アームレスト30は、アームレスト芯材40と、このアームレスト芯材40の表面に被包される軟質樹脂からなるアームレスト表皮50とから構成され、アームレスト表皮50の周縁に沿って一体形成した掛止め部51をアームレスト芯材40の周縁端末40aに係着して簡単に端末処理が行なえるとともに、このアームレスト表皮50には、縫製糸60a,60bを使用したステッチラインAが形成されていることにより、外観上のアクセント効果や手触り感を向上させるとともに、所望ならば溝部52により分割構造の印象を与え、高級感をより一層強調する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両用アームレストに係り、特に、廉価に製作できるとともに、外観見栄えを向上させた車両用アームレストに関する。
【背景技術】
【0002】
図6には、ドアパネルの室内側に取り付けられるドアトリム1が示されている。上記ドアトリム1は、所望の曲面形状に成形されたドアトリム本体2の表面に各種機能部品、例えば、アームレスト3やインサイドハンドルユニット4、スピーカグリル5等の機能部品を所定位置に取り付けて構成されている。更に詳しくは、図7に示すように、ドアトリム本体2は、ドアパネル(図示せず)に対する取付剛性を備え、かつ保形性を有する樹脂芯材2aの表面に表皮2bを貼付して構成されている。そして、ドアトリム本体2に取り付けられるアームレスト3は、従来ではアームレスト芯材3aの表面にアームレストパッド3bを積層し、更に、その外表面をアームレスト表皮3cにより被包してなる三層積層体が一般に使用されているが、部品点数が多く、かつアームレスト3の周縁端末におけるアームレスト表皮3cの端末処理が面倒である。
【0003】
ところで、最近では、図8に示すように、廉価タイプのアームレスト6として、硬質の合成樹脂の射出成形体からなるアームレスト芯材7と、軟質樹脂、例えば、サーモプラスチックエラストマー(TPE)や軟質塩ビ等の軟質樹脂を射出成形することにより形成されるアームレスト表皮8との二層積層体から構成し、特に、アームレスト表皮8の端末処理については、アームレスト表皮8の周縁に沿ってアンダーカット状に掛止め部8aを一体形成し、アームレスト芯材7の周縁端末7aにこの掛止め部8aを係着処理して端末処理を簡素化した廉価タイプのアームレスト6が最近では提案されている。この廉価タイプのアームレスト6の構成については、特許文献1に詳細に記載されている。
【0004】
【特許文献1】特開2004−345566号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、ドアトリム1に装備されるアームレスト3は、アームレスト芯材3a、アームレストパッド3b、アームレスト表皮3cから構成される三層構造のものでは、部品点数が多く、材料費が嵩むとともに、端末処理作業も面倒である等の問題点がある。また、図8に示す廉価タイプのアームレスト6では、アームレスト芯材7とアームレスト表皮8との2部材であるため、コストが廉価になるものの、アームレスト表皮8は、軟質樹脂の射出成形体で構成され、樹脂外観が強調されるため、本皮仕様の縫製タイプの構造のものに比べ外観見栄えに劣るとともに、手触り感についても、満足のいくものではなく、外観見栄え、手触り感に高級感を付与することが望まれていた。
【0006】
この発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、ドアトリム、リヤサイドトリム等の自動車用内装部品に装備される車両用アームレストであって、基本的には、アームレスト芯材の表面に軟質樹脂成形体からなるアームレスト表皮を被包して構成される廉価タイプの車両用アームレストにおいて、外観見栄え、並びに手触り感において、高級感を付与することができる車両用アームレストを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、内装トリム部品の表面所定位置に取り付けられる車両用アームレストであって、所要形状に成形された樹脂成形体からなるアームレスト芯材の表面を軟質樹脂成形体からなるアームレスト表皮で被包するとともに、アームレスト表皮の周縁に沿ってアンダーカット形状に成形された掛止め部をアームレスト芯材の周縁端末に嵌め込むことで端末処理を施した車両用アームレストにおいて、前記アームレスト表皮は、縫製糸によるステッチラインが設けられていることを特徴とする。
【0008】
ここで、本発明に係る車両用アームレストを装着する内装トリム部品としては、ドアトリム本体、リヤサイドトリム本体等が考えられる。更に、車両用アームレストを構成するアームレスト芯材は、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アイオノマー系樹脂、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン(ABS)樹脂等の合成樹脂を使用した射出成形体、あるいはモールドプレス成形体が使用されている。
【0009】
一方、アームレスト表皮としては、軟質塩ビ、サーモプラスチックエラストマー(TPE)等の軟質合成樹脂を射出成形することにより成形されている。そして、アームレスト芯材には、内装トリム部品に係着するための係止爪等の取付部が設定されているとともに、アームレスト表皮の周縁端末は、アームレスト芯材の周縁端末に掛け止めするための掛止め部がアンダーカット状に形成されている。また、アームレスト表皮に形成されるステッチラインは、縫製糸の縫製加工により形成されており、縫製糸の彩色は、アームレスト表皮の彩色と対比効果のある色彩を選ぶのがステッチラインを強調するためには好都合である。
【0010】
そして、本発明に係る車両用アームレストによれば、アームレスト芯材とアームレスト表皮の2部材からなり、廉価に製作できることに加えて、アームレスト表皮には、縫製糸によるステッチラインが形成されているため、外観上のアクセント効果が得られ、外観見栄えを高めることができるとともに、手で触れた際に良好な感触が得られ、高級感を付与できる。
【0011】
次いで、本発明の好ましい実施の形態においては、前記アームレスト表皮は、アームレスト芯材に形成されているコーナー溝部に対応して、アームレスト芯材側に凹設された溝部が形成されているとともに、この溝部を境として両側に沿ってそれぞれ縫製糸によるステッチラインが並列状に設けられていることを特徴とする。
【0012】
そして、この実施の形態によれば、アームレスト表皮に溝部を設定することで、この溝部を境界としてアームレスト表皮を分割構造に見せることができ、外観性能をより高めることができるとともに、アームレスト芯材を上級タイプと下級タイプで分ける必要がない。
【発明の効果】
【0013】
以上説明した通り、本発明に係る車両用アームレストは、保形性を有するアームレスト芯材の外表面を軟質樹脂成形体からなるクッション性に優れたアームレスト表皮で被包して構成され、2部材で構成することで廉価に製作できるとともに、アームレスト表皮には、縫製糸によるステッチラインを形成したため、外観見栄え並びに手触り感を高めることができることから、高級感を付与できるという効果を有する。
【0014】
更に、軟質樹脂成形体から構成するアームレスト表皮に溝部を設け、この溝部を境界として両サイドに縫製糸によるステッチラインを並列状に形成すれば、アームレスト表皮は、外観上は2分割構造となり、より外観性能を向上させることができるという効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明に係る車両用アームレストの実施例について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。尚、念のため付言すれば、本発明の要旨は特許請求の範囲に記載した通りであり、以下に説明する実施例の内容は、本発明の一例を示すものに過ぎない。
【実施例】
【0016】
図1乃至図5は本発明の一実施例を示すもので、図1は本発明に係る車両用アームレストをドア用のアームレストに適用したドアトリムを示す斜視図、図2は同ドアトリムの概略構成を示す断面図、図3は本発明に係る車両用アームレストをドア用のアームレストに適用した実施例を示す断面図、図4は図3に示すアームレストの構成を示す分解図、図5は同アームレストの変形例を示す断面図である。
【0017】
図1,図2において、ドアトリム10は、ドアトリム本体20と、このドアトリム本体20の表面略中央部に装着されているアームレスト30とから大略構成されている。更に詳しくは、このアームレスト30の上方には、インサイドハンドルエスカッション11が取り付けられているとともに、中接部分には、クロス等の装飾シート12が装着されている。また、アームレスト30の下方には、ポケット用開口13及びそのフロント側にはスピーカグリル14がドアトリム本体20と一体、あるいは別体に設けられている。
【0018】
更に詳しくは、上記ドアトリム本体20は、図示しないドアパネルへの取付剛性、並びに所要形状に成形された形状の保持性を有する樹脂芯材21の表面に表面風合い、並びに感触を良好にするための表皮22を貼付して構成されている。樹脂芯材21としては、汎用の合成樹脂、例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アイオノマー系樹脂、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン(ABS)樹脂等の合成樹脂をモールドプレス成形、あるいは射出成形等により所望の形状に成形してなり、表皮22は、樹脂芯材21の成形時に一体貼着される。また、表皮22としては、合成樹脂シート、織布、不織布等の布地シート等を適用することができ、合成樹脂シート、布地シートの裏面にクッション層を裏打ちすることもできる。
【0019】
そして、ドアトリム本体20の表面に取り付けられるアームレスト30は、乗員が肘を掛けて休むための機能と、側突時における乗員からの反力により撓むか、あるいは破断することで衝撃荷重を吸収する機能を備えている。そして、このアームレスト30は、図3,図4に示すように、アームレスト芯材40と、アームレスト表皮50とから構成されており、アームレスト芯材40は、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アイオノマー系樹脂、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン(ABS)樹脂等の汎用樹脂を射出成形することにより、図示する形状に成形されており、ドアトリム本体20の取付孔23及び取付用縁部24にそれぞれ取り付けるための係止爪41が設けられている。
【0020】
一方、アームレスト表皮50は、サーモプラスチックエラストマー(TPE)や軟質塩ビ等の軟質樹脂材料を射出成形することにより、アームレスト芯材40を被包する外形状をもつように成形され、かつアームレスト表皮50の周縁部に沿ってアンダーカット状に掛止め部51が形成されている。すなわち、この掛止め部51は、図4に示すように、アームレスト芯材40の周縁端末40aに係着することで、アームレスト30の端末処理が簡単に行なえる。
【0021】
そして、本発明に係るアームレスト30は、アームレスト芯材40と、アームレスト表皮50との2部材から構成するとともに、アームレスト表皮50におけるアンダーカット状の掛止め部51を利用することで、廉価に製作できる利点を備えるとともに、特に、外観意匠性、手触り感を高めるために、アームレスト芯材40のコーナー溝部42に対応して、溝部52が形成されているとともに、この溝部52を境として両側に縫製糸60a,60bによるステッチラインAが並列状に形成されている。従って、このステッチラインAにより、外観上のアクセント効果を強調することができるとともに、手で触れた際に感触が良好なものとなり、外観意匠性並びに手触り感を良好に維持できるという効果がある。しかも、2本のステッチラインA間には、溝部52を形成することで、2枚のシートを縫製接合した印象を与えるため、より高級感を強調することができる。
【0022】
図5は、本発明の別実施例を示すもので、このアームレスト30Aについても、硬質樹脂からなるアームレスト芯材40の表面を軟質樹脂成形体からなるアームレスト表皮50により被包して構成されているとともに、アームレスト表皮50の周縁に沿って形成したアンダーカット状の掛止め部51をアームレスト芯材40の周縁端末40aに係着することで廉価に製作、並びに組み付けができるとともに、このアームレスト30Aについては、溝部52を省略し、縫製糸60による一列のステッチラインAを施しただけである。従って、このアームレスト30Aは、上述実施例よりも廉価に実施することができ、シンプルな外観が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明に係る車両用アームレストは、実施例で説明したドアトリム10のアームレスト30に適用する他に、リヤサイドトリム、あるいはワゴン車等のラゲージサイドトリム等に設けられるアームレストに適用することができる。更に、アームレスト30をドアトリム本体20に取り付ける手段としては、係止爪41を使用して行なったが、係止手段は係止爪41の他にクリップ止め等に代替することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係る車両用アームレストを装備したドアトリムの一実施例を示す斜視図である。
【図2】図1中II−II線断面図である。
【図3】図2に示すドアトリムに取り付けられるアームレストの構成を示す断面図である。
【図4】図3に示すアームレストの構成を分解して示す説明図である。
【図5】本発明に係る車両用アームレストの別実施例の構成を示す断面図である。
【図6】アームレストを装備した従来のドアトリムを示す外観図である。
【図7】図6中VII −VII 線断面図である。
【図8】従来の廉価構成のアームレストを示す説明図である。
【符号の説明】
【0025】
10 自動車用ドアトリム
20 ドアトリム本体
30 アームレスト
40 アームレスト芯材
41 係止爪
42 コーナー溝部
50 アームレスト表皮
51 掛止め部
52 溝部
60,60a,60b 縫製糸
A ステッチライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内装トリム部品(20)の表面所定位置に取り付けられる車両用アームレスト(30)であって、所要形状に成形された樹脂成形体からなるアームレスト芯材(40)の表面を軟質樹脂成形体からなるアームレスト表皮(50)で被包するとともに、アームレスト表皮(50)の周縁に沿ってアンダーカット形状に成形された掛止め部(51)をアームレスト芯材(40)の周縁端末(40a)に嵌め込むことで端末処理を施した車両用アームレスト(30)において、
前記アームレスト表皮(50)は、縫製糸(60,60a,60b)によるステッチライン(A)が設けられていることを特徴とする車両用アームレスト。
【請求項2】
前記アームレスト表皮(50)は、アームレスト芯材(40)に形成されているコーナー溝部(42)に対応して、アームレスト芯材(40)側に凹設された溝部(52)が形成されているとともに、この溝部(52)を境として両側に沿ってそれぞれ縫製糸(60a,60b)によるステッチライン(A)が並列状に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の車両用アームレスト。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−38845(P2007−38845A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−225323(P2005−225323)
【出願日】平成17年8月3日(2005.8.3)
【出願人】(000124454)河西工業株式会社 (593)
【Fターム(参考)】