車両用エアサスペンション式シート支持装置
【課題】車両用エアサスペンション式シート支持装置において、バルブの過敏な動作を抑制して、過剰な空気の消費を抑えるとともにバルブの耐久性の向上を図る。
【解決手段】バルブ80を前後に移動させることによりバルブ80が揺動し、これによってバルブ80が開閉してエアスプリング30に対する空気の給排気がなされる構成において、バルブ80の小移動時にはバルブ80を揺動させず、大きくバルブ80が移動する時にはバルブ80を揺動させる圧縮ばね121を設け、小移動時のバルブ開閉を抑える。
【解決手段】バルブ80を前後に移動させることによりバルブ80が揺動し、これによってバルブ80が開閉してエアスプリング30に対する空気の給排気がなされる構成において、バルブ80の小移動時にはバルブ80を揺動させず、大きくバルブ80が移動する時にはバルブ80を揺動させる圧縮ばね121を設け、小移動時のバルブ開閉を抑える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両が備えるシートをエアスプリングを用いて支持する車両用エアサスペンション式シート支持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
中型・大型トラックやバス等の大型自動車のブレーキ装置としてエアブレーキ装置が用いられているが、このエアブレーキ装置に供給する空気を、運転席等のシートのクッションに利用したエアサスペンション式シート支持装置が知られている(特許文献1,2等参照)。
【0003】
公知のエアサスペンション式シート支持装置は、シャーシ等の固定部材に固定されるロアフレームの上方にリンク機構を介してアッパーフレームが上下動可能に支持され、アッパーフレームに車両用シートのシートクッションが固定される構成が多い。リンク機構としては2本のリンクバーをX字状に組んだ折り畳み自在なXリンクを左右一対の状態で備えたものが一般的であり、ロアフレームとアッパーフレームとの間に、シートに着座した乗員の荷重をアッパーフレームを介して受けるエアスプリングが配されている。そして、シートに入力される上下方向の振動に応じて、エアスプリングに空気を供給したり、エアスプリングから空気を排出したりするバルブが設けられており、このバルブの作用によって、シート高さ(シートクッションの着座面の高さ)が一定に保たれながら振動が吸収され、快適な乗り心地が得られるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2597171号公報
【特許文献2】特開平5−131869号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のエアサスペンション式シート支持装置は、上記のバルブとエアサスペンションの組み合わせにより、乗員の体重が変化しても空気圧を利用してシート高さを自動的に一定に保持する機能(シート高さ一定機能)とともに、体格に合わせてシート高さを変更して設定することのできる機能(シート高さ設定機能)を有しているものがある。ところが、走行中において車体の上下振動を受けていると、エアスプリングに対して常に、かつ、頻繁に空気が供給されたり排気されたりすることになり、これは、過剰な空気の消費量やバルブの耐久性の低下といった問題を招く。
【0006】
よって本発明は、バルブの過敏な動作を抑制することができ、これによって過剰な空気の消費が抑えられるとともにバルブの耐久性の向上が図られる車両用エアサスペンション式シート支持装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の車両用エアサスペンション式シート支持装置は、ロアフレームと、このロアフレームの上方に配され、車両用シートを支持するアッパーフレームと、前記ロアフレームに対して前記アッパーフレームを上下動可能に支持し、アッパーフレームの上下動に伴い、水平方向に移動する水平移動部材を有するリンク機構と、空気供給源から空気が供給され、前記アッパーフレームが上方から受ける荷重を受けるとともに、アッパーフレームの高さを調節するエアスプリングと、このエアスプリングの振動を吸収するダンパと、前記アッパーフレームの高さ位置を調節するシート高さ調節手段とを備えた車両用エアサスペンション式シート支持装置において、前記シート高さ調節手段は、前記エアスプリングに対する空気の供給・排出を行うバルブ開閉部を有し、鉛直方向に延びるバルブ軸を支点として水平方向に回動可能に支持されたバルブと、前記リンク機構の前記水平移動部材に連結され、かつ、該水平移動部材と一体に水平方向に沿って移動するスライダと、このスライダと前記バルブの前記バルブ開閉部との間に配設されるカム部材と、前記バルブと一体に回動するとともに、バルブの回動軌跡が描く円形の径方向に沿って移動可能に設けられた可動部材と、この可動部材に一端が、前記スライダに他端が、それぞれ回転可能に係止された状態で、これら可動部材とスライダとの間に架け渡され、バルブの回動に応じて旋回可能とされ、前記スライダが水平方向へ移動することにより、その移動方向に応じて前記カム部材を前記バルブのバルブ開閉部に作用させる旋回部材と、この旋回部材の旋回に伴って前記径方向に移動する前記可動部材を前記スライダの方向に弾性的に付勢する付勢手段とを備えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、バルブの過敏な動作を抑制することができ、これによって過剰な空気の消費が抑えられるとともにバルブの耐久性の向上が図られるといった効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施形態に係るシート支持装置の全体を示す斜視図である。
【図2】同装置の平面図である。
【図3】同装置の側面図である。
【図4】同装置が具備するシート高さ調節手段の斜視図である。
【図5】図4からバルブガイドを除いた状態を示す斜視図である。
【図6】シート高さ調節手段の平面図である。
【図7】シート高さ調節手段の一部側面図である。
【図8】シート高さ調節手段のバルブおよびその周辺を示す平面図である。
【図9】シート高さ調節手段によるバルブ開閉作用を示す平面図である。
【図10】シート高さ調節手段のロックバーの作用を示す平面図である。
【図11】シート高さ調節手段のバルブおよびその周辺を示す下面図である。
【図12】バルブに設けられた圧縮ばねの作用を示す図であって、バルブの小移動時を示す下面図である。
【図13】圧縮ばねの作用を示す図であって、バルブが給気のために回動開始する時を示す下面図である。
【図14】圧縮ばねの作用を示す図であって、バルブの給気停止が開始される時を示す下面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明に係る車両用エアサスペンション式シート支持装置(以下、シート支持装置)の一実施形態を説明する。
【0011】
(1)基本構成
図1〜図3は一実施形態のシート支持装置の全体を示す図であって、それぞれ斜視図、平面図、側面図である。これら図中、符号10は長方形状の枠体からなるロアフレームである。ロアフレーム10は、車両に組み込まれた状態で、車両の前後方向(図面で矢印Fは前方、Rは後方を示している)に延びる左右一対のレールメンバー11と、レールメンバー11の前端どうし、および後端どうしを連結する左右方向に延びる前後一対の横メンバー12とから構成されている。ロアフレーム10は、車両のシャーシに対してほぼ水平な状態に固定される。なお、以下の説明で前後・左右・上下といった方向は、当該シート支持装置が車両に組み込まれた状態での方向と定義する。
【0012】
ロアフレーム10の上方には、リンク機構20を介してアッパーフレームが支持されており、このアッパーフレームに車両用シートのシートクッション(いずれも図示略)が固定される。リンク機構20は、2本のリンクバー21,22がリンク軸23を介してX状に組まれた左右一対のXリンク24を備えている。リンクバー21,22はリンク軸23を支点として互いに回転自在とされている。
【0013】
図1および図3に示すように、各Xリンク24の、前方に向かうにつれて上方に延びるように傾斜する前上がり側の各リンクバー21の後端(下端)は、左右方向に延びる後下側固定軸25に回転自在に取り付けられている。後下側固定軸25は、ロアフレーム10の後側の横メンバー12の近傍に配設されており、両端が左右のレールメンバー11にそれぞれ固定されている。前上がり側の各リンクバー21の後端は後下側固定軸25を介して連結された状態となっている。また、前上がり側の各リンクバー21の前端(上端)には、左右方向に延びる前上側可動軸26が取り付けられており、前上がり側の各リンクバー21の前端は、この前上側可動軸26を介して連結された状態となっている。
【0014】
一方、各Xリンク24の、前方に向かうにつれて下方に延びるように傾斜する前下がり側の各リンクバー22の後端(上端)には、左右方向に延びる後上側可動軸27が取り付けられており、前下がり側の各リンクバー22の後端は、この後上側可動軸27を介して連結された状態となっている。また、前下がり側の各リンクバー22の前端部は、左右方向に延びる前下側ローラ軸(水平移動部材)28に回転自在に取り付けられている。この前下側ローラ軸28は、両端に取り付けられたローラ28aを介して、ロアフレーム10の各レールメンバー11に沿って前後方向に移動自在に支持されている。前下側ローラ軸28が前後方向に移動する時、ローラ28aはレールメンバー11を転動し、これによって前下側ローラ軸28はレールメンバー11に沿って円滑に移動する。前下がり側の各リンクバー22の前端は、前下側ローラ軸28を介して連結された状態となっている。
【0015】
リンク機構20は、上記の左右一対のXリンク24、後下側固定軸25、前上側可動軸26、後上側可動軸27および前下側ローラ軸28から構成されている。図1に示すように、各Xリンク24にあっては、前上がり側のリンクバー21が、前下がり側のリンクバー22の内側に配されている。このリンク機構20は、後下側固定軸25を支点として、上側の前上側可動軸26と後上側可動軸27が互いに接近しながら上方に移動してXリンク24が立ち上がって伸張したり、これら前上側可動軸26と後上側可動軸27が互いに離間しながら下方に移動してXリンク24が折り畳まれ縮小したりするように作動する。Xリンク24が上方に伸張する際には、前下側ローラ軸28は、レールメンバー11に沿って後方に移動して後下側固定軸25に接近し、Xリンク24が縮小する際には、レールメンバー11を前方に移動して後下側固定軸25から離間する。
【0016】
ロアフレーム10内におけるリンク軸23の後方のスペースには、エアスプリング30が配設される。このエアスプリング30には、例えば車両のエアブレーキ装置を構成するエアコンプレッサ(空気供給源)から、圧縮された空気が供給されるようになっている。エアスプリング30は、空気が供給されると上方に膨出し、排気されると下方に縮小する。エアスプリング30の上方には、上記アッパーフレームに固定される受圧板31が設置されている。この受圧板31は、前方に延びる左右のステー部31aを有しており、これらステー部31aが、リンク軸23に外装されたスリーブ32に固定されている。このスリーブ32はリンク軸23と相対回転可能とされており、受圧板31はスリーブ32を介してリンク軸23に回転自在に支持されている。
【0017】
上記アッパーフレームは、受圧板31と、前上側可動軸26に載置されて支持されている。エアスプリング30には、上記空気供給源から送られる空気をエアスプリング30に供給したり、エアスプリング30内の空気を排出したりするバルブ80(図5、図7等参照)が接続されている。このバルブ80が給気状態になってエアスプリング30に空気が供給されると、受圧板31およびアッパーフレームが上昇してXリンク24が上方に伸張し、アッパーフレームに固定された車両用シートのシートクッション(以下、単にシートと言う)が上昇するようになっている。また、バルブ80が排気状態になると、シートに着座する乗員の荷重によりエアスプリング30から空気が排出され、これにより受圧板31およびアッパーフレームが下降してXリンク24が下方に縮小するように作動し、シートが下降するようになっている。
【0018】
図1および図3に示すように、一方(図1では手前側)のXリンク24の前上がり側のリンク21と前下側ローラ軸28との間には、オイルダンパ33が設けられている。このオイルダンパ33は、一端部が前上がりリンク21に固定された左右方向に延びるピン34に、また、他端部が前下側ローラ軸28に取り付けられたブラケット35に、それぞれ回転自在に装着されている。このオイルダンパ33により、エアスプリング30が作動した際に生じる振動が吸収され、リンク機構20の伸張・縮小の動作が緩衝されるようになっている。
【0019】
以上が、一実施形態のシート支持装置の基本構成である。このシート支持装置の上記ロアフレーム10の内側のスペースには、アッパーフレームの高さ位置を調節してシート高さを調節可能としたシート高さ調節手段40が装備されている。以下、このシート高さ調節手段について説明する。
【0020】
(2)シート高さ調節手段
図2に示すように、ロアフレーム10内のスペースの前部には、平面視略T字状のフレーム板41が配設されている。このフレーム板41は、図4および図6にも示すように、前後方向に延びる縦板部42と、左右方向に延びる横板部43を有している。このフレーム板41は、前下側ローラ軸28の下方に水平に配されており、縦板部42の先端が前側の横メンバー12に固定され、横板部43の先端が右側のレールメンバー11に固定されている。
【0021】
図2に示すように、フレーム板41上の、縦板部42と横板部43の交差部のやや右寄りには、前後方向に延び、左側に側板部50aを有するガイドプレート50が固定されている。このガイドプレート50の左側には、図5に示すようにスライダガイド51が固定されている。また、フレーム板41上におけるガイドプレート50の左寄り(図2で下側)には、バルブガイド60が固定されている。このバルブガイド60は、図4に示すように、フレーム板41に固定されたベース61と、このベース61上に固定されたカバー62とから構成されている。
【0022】
図4に示すように、ベース61の右端部には、上記スライダガイド51が固定されており、また、図6に示すように、ベース61の左端部の上には、前後方向に延びるラックギヤ70が固定されている。ラックギヤ70の内側(右側)の側面には、前後方向に並ぶギヤ歯70aが形成されている。スライダガイド51とラックギヤ70の表面高さは同じで、カバー62はこれらスライダガイド51とラックギヤ70の上に載置され固定されている。これにより、ベース61とカバー62との間には、スライダガイド51およびラックギヤ70の高さ分の上側スリット63が形成されている。この上側スリット63は、前後方向に開放している。また、ベース61の下面とフレーム板41との間には、ベース61の下面に形成された前後方向に延びる凹所により、下側スリット64が形成されている。この下側スリット64も、前後方向に開放している。
【0023】
バルブガイド60のベース61およびカバー62の左右方向中間部には、前後方向に延び、かつ、上下方向に貫通するガイド孔61b,62bがそれぞれ形成されており、さらにフレーム板41には、ガイド孔61b,62bと一致するガイド孔41bが形成されている。以降の説明では、これらガイド孔61b,62b,41bを1つのガイド孔65と総称する場合がある。
【0024】
図4および図7に示すように、バルブガイド60の下方には、フレーム板41を挟んで上記バルブ80が配設されている。このバルブ80は外観が矩形の箱状を呈するもので、図5に示すように、バルブホルダ85に固定されている。バルブホルダ85は、バルブ80を上下方向および左右方向に挟持する構成のもので、このバルブホルダ85の右側の端部には、上下方向に延び、上記ガイド孔65を貫通するバルブ軸86が設けられている。このバルブ軸86には、矩形板状の水平なスライドプレート87が係合されている。バルブ軸86はスライドプレート87の中心を貫通しており、スライドプレート87は、ベース61とフレーム板41との間の下側スリット64内に、前後方向に移動可能に収容されている。
【0025】
また、上記バルブ軸86の、スライドプレート87より上側には、図4および図6等に示す円板ギヤ71が回転自在に装着されている。この円板ギヤ71は、バルブガイド60のベース61とカバー62との間の上側スリット63内に収容されている。図6に示すように、円板ギヤ71の外周面のギヤ歯71aは、上記ラックギヤ70のギヤ歯70aに噛み合っている。また、円板ギヤ71の上面中心にはボス71bが形成されており、このボス71bは、カバー62のガイド孔62bに挿入されている。
【0026】
上記バルブ80は、スライドプレート87がフレーム板41に、また、円板ギヤ71がベース61に上側から係合することにより、脱落不能に支持されている。そしてバルブ80は、円板ギヤ71のボス71bがカバー62のガイド孔62bに沿って移動することにより、バルブガイド60に対し前後方向に移動可能に支持されている。バルブ80が前後方向に移動する際には、円板ギヤ71のギヤ歯71aがラックギヤ70のギヤ歯70aに噛み合いながら、円板ギヤ71は転動する。
【0027】
上記バルブ80は、常閉式の給気弁および排気弁を内蔵したものであり、図8に示すように、右側の側面の前側には、給気弁を開く給気弁棒81が突出しており、後側には、排気弁を開く排気弁棒82が突出している。これら弁棒81,82は、常に突出する方向に付勢されており、バルブ80側に押し込まれることにより給気弁および排気弁は開状態となる。また、バルブ80の左側の側面の前側には、上記空気供給源から圧縮された空気をバルブ80内に導入する配管が接続される給気口83が設けられており、後側には、上記エアスプリング30に空気を送出する配管が接続される送出口84が設けられている。なお、給気弁棒81および排気弁棒82が、本発明のバルブ開閉部を構成している。
【0028】
上記バルブ軸86の、スライドプレート87より下側には、図8に示すカム(カム部材)90が配設されている。このカム90は、上記ガイドプレート50の側板部50aに沿って前後方向に摺動可能とされている。カム90の中間部には左側に膨出するボス92が形成されており、このボス92に、上記バルブ軸86が回転可能に貫通されている。すなわち上記バルブ80は、図9に示すように、バルブ軸86を支点としてバルブホルダ85ごと前後方向に回動可能に支持されている。カム90は、上記各弁棒81,82が突出するバルブ80の右側の側面とガイドプレート50の側板部50aとの間に挟まれ、バルブ軸86が貫通するボス92が各弁棒81,82の間に位置するように配設されている。
【0029】
図5および図7に示すように、バルブ80の底部には、バルブ80の前方および後方に延びるブラケット100が固定されている。そしてこのブラケット100の後側の端部には、図3および図7に示すように後方に延びるワイヤ101が係止されており、このワイヤ101を後方に引っ張ることにより、バルブ80はカム90とともに後方に移動させられるようになっている。そのワイヤ101は、シートの周辺に設けられ、乗員によって操作されるダイヤルやレバー等の操作部材に連結されている。
【0030】
また、バルブ80は、図3および図7等に示す引っ張りばねであるコイルスプリング102によって前方に付勢されている。このコイルスプリング102は、一端がブラケット100の前端部に係止され、他端がフレーム板41の縦板部42の前端部から下方に突出するフック42bにそれぞれ係合されている。
【0031】
バルブ80は、上記操作部材を、コイルスプリング102の付勢力に抗して操作することにより後方に移動する。また、操作部材を解除する方向に操作すると、バルブ80はコイルスプリング102に引っ張られて前方に移動する。操作部材には、操作を停止した位置で停止するストッパ機構が設けられており、操作部材の操作を停止すると、バルブ80はそのストッパ機構によって前後方向の移動が停止するようになされている。
【0032】
図5に示すように、上記前下側ローラ軸28には、前後方向に延びるロックバー72の前端部が回転可能に嵌合されている。このロックバー72は、後端部が上記バルブガイド60の上側スリット63に前後方向に移動自在に挿入されており、その後端面には、上記円板ギヤ71のギヤ歯71aに噛合可能なラック状のギヤ歯72aが形成されている。
【0033】
上側スリット63に後端部が挿入されたロックバー72の後方には上記円板ギヤ71が配されており、通常は、図10(a)に示すように、ロックバー72の後端と円板ギヤ71との間には所定の間隙が空くように設定されている。そして、リンク機構20が伸張するに伴って前下側ローラ軸28が前方に移動すると、図10(b)に示すように、ロックバー72の後端のギヤ歯72aが円板ギヤ71に噛み合う。
【0034】
ロックバー72のギヤ歯72aが円板ギヤ71に噛み合うと、前下側ローラ軸28はそれ以上の前進が規制され、リンク機構20は上方への伸張が阻止され、シートの上昇動作が停止させられる。このロックバー72と円板ギヤ71とによって、前下側ローラ軸28がバルブ80に接近する方向に後退して所定距離移動した時にその移動を規制してリンク機構20の作動をロックするサスペンションアッパー方向ロック機構が構成されている。
【0035】
ロックバー72の後端部の右寄りには、前後方向に延びる孔72bが形成されており、この孔72aに、図5〜図7で示す前後方向に延びるスライダ55の前端部に形成された上方に突出する凸部56が下側から嵌合している。スライダ55は、図5に示すように、後端部にブロック57を有しており、このブロック57は、ガイドプレート50の側板部50aとスライダガイド51との間において前後方向に摺動可能に挟まれている。上記リンク機構20の伸張・縮小に伴って前下側ローラ軸28が前後に移動し、ロックバー72が前後方向に移動すると、これに伴ってスライダ55のブロック57がガイドプレート50の側板部50aとスライダガイド51に案内されて前後方向に移動するようになっている。
【0036】
上記カム90は、バルブ軸86およびバルブホルダ85を介してバルブ80と一体的に前後方向に移動可能とされており、換言すると、バルブ80およびカム90と、ブロック57を後端部に有するスライダ55とは、前後方向に相対移動可能とされている。
【0037】
図8に示すように、バルブホルダ85の左端部(図8で下端部)には、左方向に延びる円筒状のハウジング110が固定されている。このハウジング110は、軸方向が、バルブ軸86を支点としたバルブ80の回動軌跡が描く円形の径方向に沿っている。ハウジング110は、先端部(左端部)が開口しており、その開口部には、ハウジング110の軸方向に沿って摺動可能にプラグ(可動部材)111が装着されている。図11に示すように、プラグ111とスライダ55の後端部のブロック57との間には、バルブ80の下面側に配されたロッド(旋回部材)120が架け渡されている。そしてハウジング110内には、プラグ111をハウジング110の開口側の方向(矢印P方向)に付勢する圧縮ばね(付勢手段)121が収納されている。
【0038】
上記バルブ80、スライダ55、カム90、バルブガイド60、サスペンションアッパー方向ロック機構(ロックバー72と円板ギヤ71)、ハウジング110に装着されたプラグ111、圧縮ばね121、ロッド等を主体として、シート高さ調節手段40が構成されている。続いて、このシート高さ調節手段40の作用を説明する。
【0039】
(3)シート高さ調節手段の作用
本実施形態のシート高さ調節手段40によると、シートを所望の高さに設定することができる“シート高さ設定機能”と、シートの高さが自動的に一定高さに保たれる“シート高さ一定機能”を有している。
【0040】
(3−1)シート高さ設定機能
シート高さ設定機能は、上記操作部材(ダイヤルやレバー等)を用い、ワイヤ101を介してバルブ80を前後方向に移動させることにより実行させることができる。すなわち、シートを高くしたい時には、操作部材によってバルブ80を後方に引っ張る。すると、図9(a)に示すように、ロッド120(図9ではロッド120を二点鎖線で示している)のプラグ111側への係止端部が相対的に前方に移動してロッド120が斜めの状態になり、これに追従してバルブ80は矢印F1方向に揺動する。これによりバルブ80は給気弁棒81がカム90で押されて給気状態となり、エアスプリング30に空気が供給され、リンク機構20が上方に伸張してシートが上昇する。操作部材の操作を停止させると、シートはその時の高さに保持される。
【0041】
一方、シートを低くしたい時には、操作部材によってバルブ80の停止状態を解除する。すると、バルブ80はコイルスプリング102に引っ張られて前方に移動し、図9(c)に示すように、ロッド120のプラグ111側への係止端部が相対的に後方に移動してロッド120が図9(a)と逆の斜め状態になり、これに追従してバルブ80は矢印R1方向に揺動する。これによりバルブ80は排気弁棒82がカム90で押されて排気状態となり、エアスプリング30内の空気はバルブ80から排出され、リンク機構20が下方に縮小してシートが下降する。そして操作部材の操作を停止させると、シートはその時の高さに保持される。なお、バルブ80の給排気時の傾斜位置は、カム90の端部に形成されたストッパ部91に当接することにより一定位置に定められる。
【0042】
(3−2)シート高さ一定機能
次に、シート高さ一定機能は、シートに乗員が着座した状態でシートが一定高さに保たれる機能である。すなわち、シートに乗員が着座すると、アッパーフレームからリンク機構20に荷重がかかるため、リンク機構20は下方に縮小し、これに伴って前下側ローラ軸28が前進する。すると、前下側ローラ軸28に連結されているロックバー72とスライダ55も、ともに前進する。
【0043】
スライダ55が前進すると、図9(a)に示すようにブロック57はバルブ軸86の前側に移動し、これによってロッド120は、ブロック57側への係止端部が相対的に前方に移動し、プラグ111側への係止端部が反動で後方に移動して斜めの状態になる。ロッド120がこのように斜めに作動することによりバルブ80は矢印F1方向に揺動し、これによりバルブ80は給気弁棒81がカム90で押されて給気状態となり、エアスプリング30に空気が供給され、リンク機構20が上方に伸張してシートが上昇する。
【0044】
シートが上昇したら前下側ローラ軸28は後退するのでスライダ55も後退し、図9(c)に示すようにブロック57はバルブ軸86の後側に移動する。これによってロッド120は、ブロック57側への係止端部が相対的に後方に移動し、プラグ111側への係止端部が反動で前方に移動し、図9(a)とは逆の斜め状態になる。ロッド120がこのように斜めに作動することによりバルブ80は矢印R1方向に揺動し、これによりバルブ80は排気弁棒82がカム90で押されて排気状態となり、エアスプリング30内の空気はバルブ80から排出され、リンク機構20が下方に縮小してシートが下降する。
【0045】
このようにリンク機構20の伸縮に追従してエアスプリング30に対する空気の供給/排出が繰り返されることにより、シートは上下に振動しながら自動的に一定高さに保たれる。シートが一定高さに保たれている時には、図9(b)に示すように、バルブ80は傾斜せず真っ直ぐな状態となって給気弁棒81および排気弁棒82はカム90で押されず、エアスプリング30に対する給排気は行われない中立状態となる。
【0046】
また、本実施形態では、シートから乗員が立ち上がって負荷が無くなった時、エアスプリング30の力でリンク機構20は上方に伸張してシートが上昇するが、ロックバー72が円板ギヤ71に噛合することにより、シートの上昇高さが規制される。このため、シートから乗員が立ち上がる際に急激にシートが上昇して乗員に当たるといった不快感が防止される。
【0047】
(3−3)圧縮ばねの作用
図9(b)に示すようにバルブ80が中立位置にある状態では、圧縮ばね121は最も伸張して弾発力が最も小さい。この中立位置から、図9(a)、または図9(c)に示すようにバルブ80が揺動してバルブ開閉がなされる際には、ロッド120の長さは不変であるからプラグ111がハウジング110内に摺動して圧縮ばね121が圧縮され、最も圧縮ばね121が圧縮した中間点を過ぎてから、さらに回動して圧縮ばね121は再び伸張してバルブ開閉位置までバルブ80は回動する。圧縮ばね121が最も圧縮した中間点を過ぎる際の圧縮ばね121の伸張動作により、いわゆるスナップ作用でバルブ80は付勢されて回動する。
【0048】
ここで、本実施形態では、上記圧縮ばね121の作用によって、シート高さ一定機能を働かせる上記スライダ55の移動量が小さい時にはバルブ80の開閉動作は行われず、過剰なバルブ開閉が抑制される。すなわち、図11(図11〜図14はバルブ80の下面側を示している、Fが前方、Rが後方)に示すように、シート高さが調節されてバルブ80が中立位置Aにある状態から、図12に示すようにバルブ80をBまでの短距離の間において後退させても、圧縮ばね121の力によってバルブ80はB位置からそれ以上後退はしない。このため、バルブ80は図9(a)に示すように揺動はせず、給気はなされない。つまりバルブ80の非作動範囲が生じている。
【0049】
そして、図13に示すように非作動範囲の臨界点であるB位置を超えてバルブ80が後退させられると、ロッド120で圧縮させられる圧縮ばね121は、バルブ80の揺動に伴って上記中間点まで圧縮させられ、さらに中間点を超えることにより、バルブ80はカム90によって給気弁棒81が押される給気位置まで揺動する。バルブ80が給気状態でシートは上昇し、図14に示すようにスライダ55のブロック57が後退してB位置付近に達すると、バルブ80は再び非作動範囲に入り、やがて給気が停止する。以上は給気の際の動作であるが、これと逆の動作が排気の際にも同様に起こる。
【0050】
以上の圧縮ばね121の作用により、スライダ55の小移動時にはバルブ80の給排気はなされず、したがってエアスプリング30には頻繁に空気が供給されたり排気されたりすることが回避される。このため、バルブ80の過敏な動作を抑制することができ、これによって過剰な空気の消費が抑えられるとともにバルブ80の耐久性の向上が図られる。
【0051】
スライダ55の移動量、すなわちシートの上下動量に対するバルブ80の開閉動作の開始点の設定は、圧縮ばね121の弾発力に依存するため、圧縮ばね121を弾発力の異なるものに変更することにより、バルブ80の開閉動作の開始点を所望通りに設定することができる。なお、上記実施形態では、スライダ55の小移動を抑える付勢手段として圧縮ばね121を用いているが、付勢手段として空気圧を利用したものなど、他の手段を用いることができる。
【符号の説明】
【0052】
10…ロアフレーム
20…リンク機構
23…リンク軸
28…後下側ローラ軸(水平移動部材)
30…エアスプリング
33…オイルダンパ
40…シート高さ調節手段
55…スライダ
80…バルブ
81…給気弁棒(バルブ開閉部)
82…排気弁棒(バルブ開閉部)
86…バルブ軸
90…カム(カム部材)
111…プラグ(可動部材)
120…ロッド(旋回部材)
121…圧縮ばね(付勢手段)
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両が備えるシートをエアスプリングを用いて支持する車両用エアサスペンション式シート支持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
中型・大型トラックやバス等の大型自動車のブレーキ装置としてエアブレーキ装置が用いられているが、このエアブレーキ装置に供給する空気を、運転席等のシートのクッションに利用したエアサスペンション式シート支持装置が知られている(特許文献1,2等参照)。
【0003】
公知のエアサスペンション式シート支持装置は、シャーシ等の固定部材に固定されるロアフレームの上方にリンク機構を介してアッパーフレームが上下動可能に支持され、アッパーフレームに車両用シートのシートクッションが固定される構成が多い。リンク機構としては2本のリンクバーをX字状に組んだ折り畳み自在なXリンクを左右一対の状態で備えたものが一般的であり、ロアフレームとアッパーフレームとの間に、シートに着座した乗員の荷重をアッパーフレームを介して受けるエアスプリングが配されている。そして、シートに入力される上下方向の振動に応じて、エアスプリングに空気を供給したり、エアスプリングから空気を排出したりするバルブが設けられており、このバルブの作用によって、シート高さ(シートクッションの着座面の高さ)が一定に保たれながら振動が吸収され、快適な乗り心地が得られるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2597171号公報
【特許文献2】特開平5−131869号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のエアサスペンション式シート支持装置は、上記のバルブとエアサスペンションの組み合わせにより、乗員の体重が変化しても空気圧を利用してシート高さを自動的に一定に保持する機能(シート高さ一定機能)とともに、体格に合わせてシート高さを変更して設定することのできる機能(シート高さ設定機能)を有しているものがある。ところが、走行中において車体の上下振動を受けていると、エアスプリングに対して常に、かつ、頻繁に空気が供給されたり排気されたりすることになり、これは、過剰な空気の消費量やバルブの耐久性の低下といった問題を招く。
【0006】
よって本発明は、バルブの過敏な動作を抑制することができ、これによって過剰な空気の消費が抑えられるとともにバルブの耐久性の向上が図られる車両用エアサスペンション式シート支持装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の車両用エアサスペンション式シート支持装置は、ロアフレームと、このロアフレームの上方に配され、車両用シートを支持するアッパーフレームと、前記ロアフレームに対して前記アッパーフレームを上下動可能に支持し、アッパーフレームの上下動に伴い、水平方向に移動する水平移動部材を有するリンク機構と、空気供給源から空気が供給され、前記アッパーフレームが上方から受ける荷重を受けるとともに、アッパーフレームの高さを調節するエアスプリングと、このエアスプリングの振動を吸収するダンパと、前記アッパーフレームの高さ位置を調節するシート高さ調節手段とを備えた車両用エアサスペンション式シート支持装置において、前記シート高さ調節手段は、前記エアスプリングに対する空気の供給・排出を行うバルブ開閉部を有し、鉛直方向に延びるバルブ軸を支点として水平方向に回動可能に支持されたバルブと、前記リンク機構の前記水平移動部材に連結され、かつ、該水平移動部材と一体に水平方向に沿って移動するスライダと、このスライダと前記バルブの前記バルブ開閉部との間に配設されるカム部材と、前記バルブと一体に回動するとともに、バルブの回動軌跡が描く円形の径方向に沿って移動可能に設けられた可動部材と、この可動部材に一端が、前記スライダに他端が、それぞれ回転可能に係止された状態で、これら可動部材とスライダとの間に架け渡され、バルブの回動に応じて旋回可能とされ、前記スライダが水平方向へ移動することにより、その移動方向に応じて前記カム部材を前記バルブのバルブ開閉部に作用させる旋回部材と、この旋回部材の旋回に伴って前記径方向に移動する前記可動部材を前記スライダの方向に弾性的に付勢する付勢手段とを備えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、バルブの過敏な動作を抑制することができ、これによって過剰な空気の消費が抑えられるとともにバルブの耐久性の向上が図られるといった効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施形態に係るシート支持装置の全体を示す斜視図である。
【図2】同装置の平面図である。
【図3】同装置の側面図である。
【図4】同装置が具備するシート高さ調節手段の斜視図である。
【図5】図4からバルブガイドを除いた状態を示す斜視図である。
【図6】シート高さ調節手段の平面図である。
【図7】シート高さ調節手段の一部側面図である。
【図8】シート高さ調節手段のバルブおよびその周辺を示す平面図である。
【図9】シート高さ調節手段によるバルブ開閉作用を示す平面図である。
【図10】シート高さ調節手段のロックバーの作用を示す平面図である。
【図11】シート高さ調節手段のバルブおよびその周辺を示す下面図である。
【図12】バルブに設けられた圧縮ばねの作用を示す図であって、バルブの小移動時を示す下面図である。
【図13】圧縮ばねの作用を示す図であって、バルブが給気のために回動開始する時を示す下面図である。
【図14】圧縮ばねの作用を示す図であって、バルブの給気停止が開始される時を示す下面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明に係る車両用エアサスペンション式シート支持装置(以下、シート支持装置)の一実施形態を説明する。
【0011】
(1)基本構成
図1〜図3は一実施形態のシート支持装置の全体を示す図であって、それぞれ斜視図、平面図、側面図である。これら図中、符号10は長方形状の枠体からなるロアフレームである。ロアフレーム10は、車両に組み込まれた状態で、車両の前後方向(図面で矢印Fは前方、Rは後方を示している)に延びる左右一対のレールメンバー11と、レールメンバー11の前端どうし、および後端どうしを連結する左右方向に延びる前後一対の横メンバー12とから構成されている。ロアフレーム10は、車両のシャーシに対してほぼ水平な状態に固定される。なお、以下の説明で前後・左右・上下といった方向は、当該シート支持装置が車両に組み込まれた状態での方向と定義する。
【0012】
ロアフレーム10の上方には、リンク機構20を介してアッパーフレームが支持されており、このアッパーフレームに車両用シートのシートクッション(いずれも図示略)が固定される。リンク機構20は、2本のリンクバー21,22がリンク軸23を介してX状に組まれた左右一対のXリンク24を備えている。リンクバー21,22はリンク軸23を支点として互いに回転自在とされている。
【0013】
図1および図3に示すように、各Xリンク24の、前方に向かうにつれて上方に延びるように傾斜する前上がり側の各リンクバー21の後端(下端)は、左右方向に延びる後下側固定軸25に回転自在に取り付けられている。後下側固定軸25は、ロアフレーム10の後側の横メンバー12の近傍に配設されており、両端が左右のレールメンバー11にそれぞれ固定されている。前上がり側の各リンクバー21の後端は後下側固定軸25を介して連結された状態となっている。また、前上がり側の各リンクバー21の前端(上端)には、左右方向に延びる前上側可動軸26が取り付けられており、前上がり側の各リンクバー21の前端は、この前上側可動軸26を介して連結された状態となっている。
【0014】
一方、各Xリンク24の、前方に向かうにつれて下方に延びるように傾斜する前下がり側の各リンクバー22の後端(上端)には、左右方向に延びる後上側可動軸27が取り付けられており、前下がり側の各リンクバー22の後端は、この後上側可動軸27を介して連結された状態となっている。また、前下がり側の各リンクバー22の前端部は、左右方向に延びる前下側ローラ軸(水平移動部材)28に回転自在に取り付けられている。この前下側ローラ軸28は、両端に取り付けられたローラ28aを介して、ロアフレーム10の各レールメンバー11に沿って前後方向に移動自在に支持されている。前下側ローラ軸28が前後方向に移動する時、ローラ28aはレールメンバー11を転動し、これによって前下側ローラ軸28はレールメンバー11に沿って円滑に移動する。前下がり側の各リンクバー22の前端は、前下側ローラ軸28を介して連結された状態となっている。
【0015】
リンク機構20は、上記の左右一対のXリンク24、後下側固定軸25、前上側可動軸26、後上側可動軸27および前下側ローラ軸28から構成されている。図1に示すように、各Xリンク24にあっては、前上がり側のリンクバー21が、前下がり側のリンクバー22の内側に配されている。このリンク機構20は、後下側固定軸25を支点として、上側の前上側可動軸26と後上側可動軸27が互いに接近しながら上方に移動してXリンク24が立ち上がって伸張したり、これら前上側可動軸26と後上側可動軸27が互いに離間しながら下方に移動してXリンク24が折り畳まれ縮小したりするように作動する。Xリンク24が上方に伸張する際には、前下側ローラ軸28は、レールメンバー11に沿って後方に移動して後下側固定軸25に接近し、Xリンク24が縮小する際には、レールメンバー11を前方に移動して後下側固定軸25から離間する。
【0016】
ロアフレーム10内におけるリンク軸23の後方のスペースには、エアスプリング30が配設される。このエアスプリング30には、例えば車両のエアブレーキ装置を構成するエアコンプレッサ(空気供給源)から、圧縮された空気が供給されるようになっている。エアスプリング30は、空気が供給されると上方に膨出し、排気されると下方に縮小する。エアスプリング30の上方には、上記アッパーフレームに固定される受圧板31が設置されている。この受圧板31は、前方に延びる左右のステー部31aを有しており、これらステー部31aが、リンク軸23に外装されたスリーブ32に固定されている。このスリーブ32はリンク軸23と相対回転可能とされており、受圧板31はスリーブ32を介してリンク軸23に回転自在に支持されている。
【0017】
上記アッパーフレームは、受圧板31と、前上側可動軸26に載置されて支持されている。エアスプリング30には、上記空気供給源から送られる空気をエアスプリング30に供給したり、エアスプリング30内の空気を排出したりするバルブ80(図5、図7等参照)が接続されている。このバルブ80が給気状態になってエアスプリング30に空気が供給されると、受圧板31およびアッパーフレームが上昇してXリンク24が上方に伸張し、アッパーフレームに固定された車両用シートのシートクッション(以下、単にシートと言う)が上昇するようになっている。また、バルブ80が排気状態になると、シートに着座する乗員の荷重によりエアスプリング30から空気が排出され、これにより受圧板31およびアッパーフレームが下降してXリンク24が下方に縮小するように作動し、シートが下降するようになっている。
【0018】
図1および図3に示すように、一方(図1では手前側)のXリンク24の前上がり側のリンク21と前下側ローラ軸28との間には、オイルダンパ33が設けられている。このオイルダンパ33は、一端部が前上がりリンク21に固定された左右方向に延びるピン34に、また、他端部が前下側ローラ軸28に取り付けられたブラケット35に、それぞれ回転自在に装着されている。このオイルダンパ33により、エアスプリング30が作動した際に生じる振動が吸収され、リンク機構20の伸張・縮小の動作が緩衝されるようになっている。
【0019】
以上が、一実施形態のシート支持装置の基本構成である。このシート支持装置の上記ロアフレーム10の内側のスペースには、アッパーフレームの高さ位置を調節してシート高さを調節可能としたシート高さ調節手段40が装備されている。以下、このシート高さ調節手段について説明する。
【0020】
(2)シート高さ調節手段
図2に示すように、ロアフレーム10内のスペースの前部には、平面視略T字状のフレーム板41が配設されている。このフレーム板41は、図4および図6にも示すように、前後方向に延びる縦板部42と、左右方向に延びる横板部43を有している。このフレーム板41は、前下側ローラ軸28の下方に水平に配されており、縦板部42の先端が前側の横メンバー12に固定され、横板部43の先端が右側のレールメンバー11に固定されている。
【0021】
図2に示すように、フレーム板41上の、縦板部42と横板部43の交差部のやや右寄りには、前後方向に延び、左側に側板部50aを有するガイドプレート50が固定されている。このガイドプレート50の左側には、図5に示すようにスライダガイド51が固定されている。また、フレーム板41上におけるガイドプレート50の左寄り(図2で下側)には、バルブガイド60が固定されている。このバルブガイド60は、図4に示すように、フレーム板41に固定されたベース61と、このベース61上に固定されたカバー62とから構成されている。
【0022】
図4に示すように、ベース61の右端部には、上記スライダガイド51が固定されており、また、図6に示すように、ベース61の左端部の上には、前後方向に延びるラックギヤ70が固定されている。ラックギヤ70の内側(右側)の側面には、前後方向に並ぶギヤ歯70aが形成されている。スライダガイド51とラックギヤ70の表面高さは同じで、カバー62はこれらスライダガイド51とラックギヤ70の上に載置され固定されている。これにより、ベース61とカバー62との間には、スライダガイド51およびラックギヤ70の高さ分の上側スリット63が形成されている。この上側スリット63は、前後方向に開放している。また、ベース61の下面とフレーム板41との間には、ベース61の下面に形成された前後方向に延びる凹所により、下側スリット64が形成されている。この下側スリット64も、前後方向に開放している。
【0023】
バルブガイド60のベース61およびカバー62の左右方向中間部には、前後方向に延び、かつ、上下方向に貫通するガイド孔61b,62bがそれぞれ形成されており、さらにフレーム板41には、ガイド孔61b,62bと一致するガイド孔41bが形成されている。以降の説明では、これらガイド孔61b,62b,41bを1つのガイド孔65と総称する場合がある。
【0024】
図4および図7に示すように、バルブガイド60の下方には、フレーム板41を挟んで上記バルブ80が配設されている。このバルブ80は外観が矩形の箱状を呈するもので、図5に示すように、バルブホルダ85に固定されている。バルブホルダ85は、バルブ80を上下方向および左右方向に挟持する構成のもので、このバルブホルダ85の右側の端部には、上下方向に延び、上記ガイド孔65を貫通するバルブ軸86が設けられている。このバルブ軸86には、矩形板状の水平なスライドプレート87が係合されている。バルブ軸86はスライドプレート87の中心を貫通しており、スライドプレート87は、ベース61とフレーム板41との間の下側スリット64内に、前後方向に移動可能に収容されている。
【0025】
また、上記バルブ軸86の、スライドプレート87より上側には、図4および図6等に示す円板ギヤ71が回転自在に装着されている。この円板ギヤ71は、バルブガイド60のベース61とカバー62との間の上側スリット63内に収容されている。図6に示すように、円板ギヤ71の外周面のギヤ歯71aは、上記ラックギヤ70のギヤ歯70aに噛み合っている。また、円板ギヤ71の上面中心にはボス71bが形成されており、このボス71bは、カバー62のガイド孔62bに挿入されている。
【0026】
上記バルブ80は、スライドプレート87がフレーム板41に、また、円板ギヤ71がベース61に上側から係合することにより、脱落不能に支持されている。そしてバルブ80は、円板ギヤ71のボス71bがカバー62のガイド孔62bに沿って移動することにより、バルブガイド60に対し前後方向に移動可能に支持されている。バルブ80が前後方向に移動する際には、円板ギヤ71のギヤ歯71aがラックギヤ70のギヤ歯70aに噛み合いながら、円板ギヤ71は転動する。
【0027】
上記バルブ80は、常閉式の給気弁および排気弁を内蔵したものであり、図8に示すように、右側の側面の前側には、給気弁を開く給気弁棒81が突出しており、後側には、排気弁を開く排気弁棒82が突出している。これら弁棒81,82は、常に突出する方向に付勢されており、バルブ80側に押し込まれることにより給気弁および排気弁は開状態となる。また、バルブ80の左側の側面の前側には、上記空気供給源から圧縮された空気をバルブ80内に導入する配管が接続される給気口83が設けられており、後側には、上記エアスプリング30に空気を送出する配管が接続される送出口84が設けられている。なお、給気弁棒81および排気弁棒82が、本発明のバルブ開閉部を構成している。
【0028】
上記バルブ軸86の、スライドプレート87より下側には、図8に示すカム(カム部材)90が配設されている。このカム90は、上記ガイドプレート50の側板部50aに沿って前後方向に摺動可能とされている。カム90の中間部には左側に膨出するボス92が形成されており、このボス92に、上記バルブ軸86が回転可能に貫通されている。すなわち上記バルブ80は、図9に示すように、バルブ軸86を支点としてバルブホルダ85ごと前後方向に回動可能に支持されている。カム90は、上記各弁棒81,82が突出するバルブ80の右側の側面とガイドプレート50の側板部50aとの間に挟まれ、バルブ軸86が貫通するボス92が各弁棒81,82の間に位置するように配設されている。
【0029】
図5および図7に示すように、バルブ80の底部には、バルブ80の前方および後方に延びるブラケット100が固定されている。そしてこのブラケット100の後側の端部には、図3および図7に示すように後方に延びるワイヤ101が係止されており、このワイヤ101を後方に引っ張ることにより、バルブ80はカム90とともに後方に移動させられるようになっている。そのワイヤ101は、シートの周辺に設けられ、乗員によって操作されるダイヤルやレバー等の操作部材に連結されている。
【0030】
また、バルブ80は、図3および図7等に示す引っ張りばねであるコイルスプリング102によって前方に付勢されている。このコイルスプリング102は、一端がブラケット100の前端部に係止され、他端がフレーム板41の縦板部42の前端部から下方に突出するフック42bにそれぞれ係合されている。
【0031】
バルブ80は、上記操作部材を、コイルスプリング102の付勢力に抗して操作することにより後方に移動する。また、操作部材を解除する方向に操作すると、バルブ80はコイルスプリング102に引っ張られて前方に移動する。操作部材には、操作を停止した位置で停止するストッパ機構が設けられており、操作部材の操作を停止すると、バルブ80はそのストッパ機構によって前後方向の移動が停止するようになされている。
【0032】
図5に示すように、上記前下側ローラ軸28には、前後方向に延びるロックバー72の前端部が回転可能に嵌合されている。このロックバー72は、後端部が上記バルブガイド60の上側スリット63に前後方向に移動自在に挿入されており、その後端面には、上記円板ギヤ71のギヤ歯71aに噛合可能なラック状のギヤ歯72aが形成されている。
【0033】
上側スリット63に後端部が挿入されたロックバー72の後方には上記円板ギヤ71が配されており、通常は、図10(a)に示すように、ロックバー72の後端と円板ギヤ71との間には所定の間隙が空くように設定されている。そして、リンク機構20が伸張するに伴って前下側ローラ軸28が前方に移動すると、図10(b)に示すように、ロックバー72の後端のギヤ歯72aが円板ギヤ71に噛み合う。
【0034】
ロックバー72のギヤ歯72aが円板ギヤ71に噛み合うと、前下側ローラ軸28はそれ以上の前進が規制され、リンク機構20は上方への伸張が阻止され、シートの上昇動作が停止させられる。このロックバー72と円板ギヤ71とによって、前下側ローラ軸28がバルブ80に接近する方向に後退して所定距離移動した時にその移動を規制してリンク機構20の作動をロックするサスペンションアッパー方向ロック機構が構成されている。
【0035】
ロックバー72の後端部の右寄りには、前後方向に延びる孔72bが形成されており、この孔72aに、図5〜図7で示す前後方向に延びるスライダ55の前端部に形成された上方に突出する凸部56が下側から嵌合している。スライダ55は、図5に示すように、後端部にブロック57を有しており、このブロック57は、ガイドプレート50の側板部50aとスライダガイド51との間において前後方向に摺動可能に挟まれている。上記リンク機構20の伸張・縮小に伴って前下側ローラ軸28が前後に移動し、ロックバー72が前後方向に移動すると、これに伴ってスライダ55のブロック57がガイドプレート50の側板部50aとスライダガイド51に案内されて前後方向に移動するようになっている。
【0036】
上記カム90は、バルブ軸86およびバルブホルダ85を介してバルブ80と一体的に前後方向に移動可能とされており、換言すると、バルブ80およびカム90と、ブロック57を後端部に有するスライダ55とは、前後方向に相対移動可能とされている。
【0037】
図8に示すように、バルブホルダ85の左端部(図8で下端部)には、左方向に延びる円筒状のハウジング110が固定されている。このハウジング110は、軸方向が、バルブ軸86を支点としたバルブ80の回動軌跡が描く円形の径方向に沿っている。ハウジング110は、先端部(左端部)が開口しており、その開口部には、ハウジング110の軸方向に沿って摺動可能にプラグ(可動部材)111が装着されている。図11に示すように、プラグ111とスライダ55の後端部のブロック57との間には、バルブ80の下面側に配されたロッド(旋回部材)120が架け渡されている。そしてハウジング110内には、プラグ111をハウジング110の開口側の方向(矢印P方向)に付勢する圧縮ばね(付勢手段)121が収納されている。
【0038】
上記バルブ80、スライダ55、カム90、バルブガイド60、サスペンションアッパー方向ロック機構(ロックバー72と円板ギヤ71)、ハウジング110に装着されたプラグ111、圧縮ばね121、ロッド等を主体として、シート高さ調節手段40が構成されている。続いて、このシート高さ調節手段40の作用を説明する。
【0039】
(3)シート高さ調節手段の作用
本実施形態のシート高さ調節手段40によると、シートを所望の高さに設定することができる“シート高さ設定機能”と、シートの高さが自動的に一定高さに保たれる“シート高さ一定機能”を有している。
【0040】
(3−1)シート高さ設定機能
シート高さ設定機能は、上記操作部材(ダイヤルやレバー等)を用い、ワイヤ101を介してバルブ80を前後方向に移動させることにより実行させることができる。すなわち、シートを高くしたい時には、操作部材によってバルブ80を後方に引っ張る。すると、図9(a)に示すように、ロッド120(図9ではロッド120を二点鎖線で示している)のプラグ111側への係止端部が相対的に前方に移動してロッド120が斜めの状態になり、これに追従してバルブ80は矢印F1方向に揺動する。これによりバルブ80は給気弁棒81がカム90で押されて給気状態となり、エアスプリング30に空気が供給され、リンク機構20が上方に伸張してシートが上昇する。操作部材の操作を停止させると、シートはその時の高さに保持される。
【0041】
一方、シートを低くしたい時には、操作部材によってバルブ80の停止状態を解除する。すると、バルブ80はコイルスプリング102に引っ張られて前方に移動し、図9(c)に示すように、ロッド120のプラグ111側への係止端部が相対的に後方に移動してロッド120が図9(a)と逆の斜め状態になり、これに追従してバルブ80は矢印R1方向に揺動する。これによりバルブ80は排気弁棒82がカム90で押されて排気状態となり、エアスプリング30内の空気はバルブ80から排出され、リンク機構20が下方に縮小してシートが下降する。そして操作部材の操作を停止させると、シートはその時の高さに保持される。なお、バルブ80の給排気時の傾斜位置は、カム90の端部に形成されたストッパ部91に当接することにより一定位置に定められる。
【0042】
(3−2)シート高さ一定機能
次に、シート高さ一定機能は、シートに乗員が着座した状態でシートが一定高さに保たれる機能である。すなわち、シートに乗員が着座すると、アッパーフレームからリンク機構20に荷重がかかるため、リンク機構20は下方に縮小し、これに伴って前下側ローラ軸28が前進する。すると、前下側ローラ軸28に連結されているロックバー72とスライダ55も、ともに前進する。
【0043】
スライダ55が前進すると、図9(a)に示すようにブロック57はバルブ軸86の前側に移動し、これによってロッド120は、ブロック57側への係止端部が相対的に前方に移動し、プラグ111側への係止端部が反動で後方に移動して斜めの状態になる。ロッド120がこのように斜めに作動することによりバルブ80は矢印F1方向に揺動し、これによりバルブ80は給気弁棒81がカム90で押されて給気状態となり、エアスプリング30に空気が供給され、リンク機構20が上方に伸張してシートが上昇する。
【0044】
シートが上昇したら前下側ローラ軸28は後退するのでスライダ55も後退し、図9(c)に示すようにブロック57はバルブ軸86の後側に移動する。これによってロッド120は、ブロック57側への係止端部が相対的に後方に移動し、プラグ111側への係止端部が反動で前方に移動し、図9(a)とは逆の斜め状態になる。ロッド120がこのように斜めに作動することによりバルブ80は矢印R1方向に揺動し、これによりバルブ80は排気弁棒82がカム90で押されて排気状態となり、エアスプリング30内の空気はバルブ80から排出され、リンク機構20が下方に縮小してシートが下降する。
【0045】
このようにリンク機構20の伸縮に追従してエアスプリング30に対する空気の供給/排出が繰り返されることにより、シートは上下に振動しながら自動的に一定高さに保たれる。シートが一定高さに保たれている時には、図9(b)に示すように、バルブ80は傾斜せず真っ直ぐな状態となって給気弁棒81および排気弁棒82はカム90で押されず、エアスプリング30に対する給排気は行われない中立状態となる。
【0046】
また、本実施形態では、シートから乗員が立ち上がって負荷が無くなった時、エアスプリング30の力でリンク機構20は上方に伸張してシートが上昇するが、ロックバー72が円板ギヤ71に噛合することにより、シートの上昇高さが規制される。このため、シートから乗員が立ち上がる際に急激にシートが上昇して乗員に当たるといった不快感が防止される。
【0047】
(3−3)圧縮ばねの作用
図9(b)に示すようにバルブ80が中立位置にある状態では、圧縮ばね121は最も伸張して弾発力が最も小さい。この中立位置から、図9(a)、または図9(c)に示すようにバルブ80が揺動してバルブ開閉がなされる際には、ロッド120の長さは不変であるからプラグ111がハウジング110内に摺動して圧縮ばね121が圧縮され、最も圧縮ばね121が圧縮した中間点を過ぎてから、さらに回動して圧縮ばね121は再び伸張してバルブ開閉位置までバルブ80は回動する。圧縮ばね121が最も圧縮した中間点を過ぎる際の圧縮ばね121の伸張動作により、いわゆるスナップ作用でバルブ80は付勢されて回動する。
【0048】
ここで、本実施形態では、上記圧縮ばね121の作用によって、シート高さ一定機能を働かせる上記スライダ55の移動量が小さい時にはバルブ80の開閉動作は行われず、過剰なバルブ開閉が抑制される。すなわち、図11(図11〜図14はバルブ80の下面側を示している、Fが前方、Rが後方)に示すように、シート高さが調節されてバルブ80が中立位置Aにある状態から、図12に示すようにバルブ80をBまでの短距離の間において後退させても、圧縮ばね121の力によってバルブ80はB位置からそれ以上後退はしない。このため、バルブ80は図9(a)に示すように揺動はせず、給気はなされない。つまりバルブ80の非作動範囲が生じている。
【0049】
そして、図13に示すように非作動範囲の臨界点であるB位置を超えてバルブ80が後退させられると、ロッド120で圧縮させられる圧縮ばね121は、バルブ80の揺動に伴って上記中間点まで圧縮させられ、さらに中間点を超えることにより、バルブ80はカム90によって給気弁棒81が押される給気位置まで揺動する。バルブ80が給気状態でシートは上昇し、図14に示すようにスライダ55のブロック57が後退してB位置付近に達すると、バルブ80は再び非作動範囲に入り、やがて給気が停止する。以上は給気の際の動作であるが、これと逆の動作が排気の際にも同様に起こる。
【0050】
以上の圧縮ばね121の作用により、スライダ55の小移動時にはバルブ80の給排気はなされず、したがってエアスプリング30には頻繁に空気が供給されたり排気されたりすることが回避される。このため、バルブ80の過敏な動作を抑制することができ、これによって過剰な空気の消費が抑えられるとともにバルブ80の耐久性の向上が図られる。
【0051】
スライダ55の移動量、すなわちシートの上下動量に対するバルブ80の開閉動作の開始点の設定は、圧縮ばね121の弾発力に依存するため、圧縮ばね121を弾発力の異なるものに変更することにより、バルブ80の開閉動作の開始点を所望通りに設定することができる。なお、上記実施形態では、スライダ55の小移動を抑える付勢手段として圧縮ばね121を用いているが、付勢手段として空気圧を利用したものなど、他の手段を用いることができる。
【符号の説明】
【0052】
10…ロアフレーム
20…リンク機構
23…リンク軸
28…後下側ローラ軸(水平移動部材)
30…エアスプリング
33…オイルダンパ
40…シート高さ調節手段
55…スライダ
80…バルブ
81…給気弁棒(バルブ開閉部)
82…排気弁棒(バルブ開閉部)
86…バルブ軸
90…カム(カム部材)
111…プラグ(可動部材)
120…ロッド(旋回部材)
121…圧縮ばね(付勢手段)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロアフレームと、
このロアフレームの上方に配され、車両用シートを支持するアッパーフレームと、
前記ロアフレームに対して前記アッパーフレームを上下動可能に支持し、アッパーフレームの上下動に伴い、水平方向に移動する水平移動部材を有するリンク機構と、
空気供給源から空気が供給され、前記アッパーフレームが上方から受ける荷重を受けるとともに、アッパーフレームの高さを調節するエアスプリングと、
このエアスプリングの振動を吸収するダンパと、
前記アッパーフレームの高さ位置を調節するシート高さ調節手段と
を備えた車両用エアサスペンション式シート支持装置において、
前記シート高さ調節手段は、
前記エアスプリングに対する空気の供給・排出を行うバルブ開閉部を有し、鉛直方向に延びるバルブ軸を支点として水平方向に回動可能に支持されたバルブと、
前記リンク機構の前記水平移動部材に連結され、かつ、該水平移動部材と一体に水平方向に沿って移動するスライダと、
このスライダと前記バルブの前記バルブ開閉部との間に配設されるカム部材と、
前記バルブと一体に回動するとともに、バルブの回動軌跡が描く円形の径方向に沿って移動可能に設けられた可動部材と、
この可動部材に一端が、前記スライダに他端が、それぞれ回転可能に係止された状態で、これら可動部材とスライダとの間に架け渡され、バルブの回動に応じて旋回可能とされ、前記スライダが水平方向へ移動することにより、その移動方向に応じて前記カム部材を前記バルブのバルブ開閉部に作用させる旋回部材と、
この旋回部材の旋回に伴って前記径方向に移動する前記可動部材を前記スライダの方向に弾性的に付勢する付勢手段と
を備えることを特徴とする車両用エアサスペンション式シート支持装置。
【請求項1】
ロアフレームと、
このロアフレームの上方に配され、車両用シートを支持するアッパーフレームと、
前記ロアフレームに対して前記アッパーフレームを上下動可能に支持し、アッパーフレームの上下動に伴い、水平方向に移動する水平移動部材を有するリンク機構と、
空気供給源から空気が供給され、前記アッパーフレームが上方から受ける荷重を受けるとともに、アッパーフレームの高さを調節するエアスプリングと、
このエアスプリングの振動を吸収するダンパと、
前記アッパーフレームの高さ位置を調節するシート高さ調節手段と
を備えた車両用エアサスペンション式シート支持装置において、
前記シート高さ調節手段は、
前記エアスプリングに対する空気の供給・排出を行うバルブ開閉部を有し、鉛直方向に延びるバルブ軸を支点として水平方向に回動可能に支持されたバルブと、
前記リンク機構の前記水平移動部材に連結され、かつ、該水平移動部材と一体に水平方向に沿って移動するスライダと、
このスライダと前記バルブの前記バルブ開閉部との間に配設されるカム部材と、
前記バルブと一体に回動するとともに、バルブの回動軌跡が描く円形の径方向に沿って移動可能に設けられた可動部材と、
この可動部材に一端が、前記スライダに他端が、それぞれ回転可能に係止された状態で、これら可動部材とスライダとの間に架け渡され、バルブの回動に応じて旋回可能とされ、前記スライダが水平方向へ移動することにより、その移動方向に応じて前記カム部材を前記バルブのバルブ開閉部に作用させる旋回部材と、
この旋回部材の旋回に伴って前記径方向に移動する前記可動部材を前記スライダの方向に弾性的に付勢する付勢手段と
を備えることを特徴とする車両用エアサスペンション式シート支持装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2011−98651(P2011−98651A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−254876(P2009−254876)
【出願日】平成21年11月6日(2009.11.6)
【出願人】(000004640)日本発條株式会社 (1,048)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年11月6日(2009.11.6)
【出願人】(000004640)日本発條株式会社 (1,048)
【Fターム(参考)】
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