説明

車両用エアバッグ装置

【課題】 車体板材に形成した開口部に取付けた長尺状の蓋体が開く際に、蓋体の長手方向中央の変形を抑制する。
【解決手段】 フードアウタパネル12に形成されたエアバッグ展開用開口部14を閉塞する長尺形状のカバー20の車体後側縁部における長手方向の中央部と、長手方向の中央部と長手方向の両端部との間の部位には、それぞれ支持手段としての帯状部24が一体形成されている。帯状部24の上端はヒンジ部25となっており、この屈曲板状のヒンジ部25が変形することで、カバー20が閉位置から開放方向へ開くようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンフード等の車体板材に形成した開口部を通してエアバッグを展開させる車両用エアバッグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、エンジンフードのフードアウタパネルの上面側にエアバッグを展開し、衝突時に衝突体を保護する構造が開示されている。この構造では、車体前部のエンジンルームの上方を覆うエンジンフードのフードアウタパネルに、エアバッグ展開用の開口部を形成し、この開口部をフードガーニッシュパネルによって開閉可能に覆っている。
【特許文献1】特開2003−104144号
【特許文献2】特開2003−165402号
【特許文献3】特開2003−252140号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1の構造では、フードガーニッシュパネルが、その後端部における車幅方向両端部に形成したヒンジによってフードアウタパネルに形成されたフランジのピンに回転可能に軸支されている。このため、フードガーニッシュパネルが左右のピンを中心に開く際に、支持されていないフードガーニッシュパネルの長手方向中央部が回転中心線から離れる方向へ大きく撓む場合がある。
【0004】
本発明は上記事実を考慮し、フードアウタパネル等の車体板材に形成した開口部に取付けたフードガーニッシュパネル等の長尺状の蓋体が開く際に、蓋体の長手方向中央の変形を抑制できる車両用エアバッグ装置を提供することが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の本発明の車両用エアバッグ装置は、車体板材に形成された長尺形状の開口部を通って展開するエアバッグと、前記開口部を閉塞する長尺形状の蓋体と、前記蓋体の長手方向に沿った一方の周縁部であって、前記長手方向中央部と前記長手方向両端部とに配置され、前記蓋体を前記開口部を閉塞する位置から開放する位置へ回転可能に支持する支持手段と、を有することを特徴とする。
【0006】
車体板材に形成された長尺形状の開口部を閉塞している長尺形状の蓋体は、エアバッグが開口部を通って展開する際に、蓋体の長手方向に沿った一方の周縁部であって、長手方向中央部と長手方向両端部とに配置された支持手段を中心に回転する。この際、蓋体の長手方向に沿った各支持手段の間の部位が回転半径の外側方向へ変形するが、支持手段を長手方向中央部に配置したため、蓋体の長手方向中央部において、蓋体の回転半径の外側方向への変形量が支持手段によって抑制される。
【0007】
請求項2記載の本発明は、請求項1に記載の車両用エアバッグ装置において、前記車体板材はエンジンフードであり、前記開口部が前記エンジンフードの後端付近に形成され、前記開口部と前記蓋体とは車幅方向中央部が車体前方へ膨らんだ湾曲形状であることを特徴とする。
【0008】
エンジンフードの後端付近に形成され、車幅方向中央部が車体前方へ膨らんだ湾曲形状の開口部を閉塞している同じく湾曲形状の蓋体は、エアバッグが開口部を通って展開する際に、蓋体の長手方向に沿った一方の周縁部であって、長手方向中央部と長手方向両端部とに配置された支持手段を中心に回転する。この際、蓋体の長手方向に沿った各支持手段の間の部位が回転半径の外側方向へ変形するが、支持手段を長手方向中央部に配置したため、蓋体の長手方向中央部において、蓋体の回転半径の外側方向への変形量が支持手段によって抑制される。この結果、蓋体の長手方向中央部はウインドシールドガラスの中央部に当たらない。
【発明の効果】
【0009】
請求項1記載の本発明は、車体板材に形成した開口部に取付けた長尺状の蓋体が開く際に、蓋体の長手方向中央の変形を抑制できる。
【0010】
請求項2記載の本発明は、蓋体がウインドシールドガラスの中央部に当たるのを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明における車両用エアバッグ装置の一実施形態を図1〜図7に従って説明する。
【0012】
なお、図中矢印UPは車体上方方向を示し、図中矢印FRは車体前方方向を示している。
【0013】
図4に示される如く、本実施形態における自動車の車体10の前部上面には、車体10の外周部を形成する車体板材(車体外板)である金属板から成るエンジンフードアウタパネル12(以後フードアウタパネルという)が配置されている。また、フードアウタパネル12における後端付近となる後端縁部12Aの前方側近傍には、開口部としてのエアバッグ展開用開口部14が形成されている。
【0014】
エアバッグ展開用開口部14はその長手方向を車幅方向に沿って形成されており、エアバッグ展開用開口部14の車体上方から見た平面視形状は、フードアウタパネル12の後端縁部12Aに沿って車幅方向に延び車幅方向中央部が車体前方へ膨らんだ長尺形状の湾曲形状としての円弧状となっている。
【0015】
図3に示される如く、フードアウタパネル12におけるエアバッグ展開用開口部14の周縁部には、フードを閉じた状態で、車体下方側へ凹んだ棚部16が周方向に連続して形成されている。この棚部16はプレス加工等によって形成されており、フードアウタパネル12の意匠面(表面)を形成する基部12Bから車体下方へ向かって屈曲された縦壁16Aと、縦壁16Aの下端部からエアバッグ展開用開口部14の内側に向かって直角に屈曲された横板部16Bと、横板部16Bの内側端部から車体下方へ向かって屈曲されたフランジ16Cとで構成されている。また、フランジ16Cはフードアウタパネル12におけるエアバッグ展開用開口部14の周縁部となっている。
【0016】
図4に示される如く、フードアウタパネル12のエアバッグ展開用開口部14には蓋体としてのカバー20が取付けられている。カバー20の車体上方から見た平面視形状は、フードアウタパネル12の後端縁部12Aに沿って延び車幅方向中央部が車体前方へ膨らんだ長尺形状の湾曲形状としての円弧状になっており、カバー20によってエアバッグ展開用開口部14の全域が閉塞されている。
【0017】
図3に示される如く、カバー20はフードアウタパネル12と略同一の板厚に設定され、金属板によって構成されている。カバー20の意匠面(表面)を形成する基部20Aの周縁部からは、フードを閉じた状態で、車体下方へ向かって屈曲された縦壁20Bが形成されており、縦壁20Bの下端部からはエアバッグ展開用開口部14の内側に向かって直角に屈曲された下板部20Cが形成されている。また、基部20Aの周縁部と縦壁20Bと下板部20Cとによってカバー20の周縁下部には凹部20Dが形成されており、カバー20の下板部20Cは、フードアウタパネル12のエアバッグ展開用開口部14に形成した棚部16の横板部16B上に載置されている。
【0018】
図4に示される如く、カバー20における長手方向に沿った一方の周縁部である車体後側縁部における長手方向の中央部と、長手方向の中央部と長手方向の両端部との間の部位である長手方向両端部近傍の合計3箇所には、それぞれ支持手段としての帯状部24が一体形成されている。
【0019】
図7に示される如く、帯状部24の上端はヒンジ部25となっており、この屈曲板状のヒンジ部25が変形することで、カバー20が図7に実線で示す閉位置から図7に二点鎖線で示すように開放方向(矢印B)へ開くようになっている。
【0020】
図1に示される如く、帯状部24の下部は取付部31となっている。取付部31は車体前方上側から車体後方下側に向かって延びた平板状とされており、取付部31はブラケット32によってフード34に固定されている。また、取付部31には貫通孔36が形成されており、取付部31と重なり合うブラケット32のカバー取付部32Aには貫通孔38が形成されている。これらの貫通孔36、38には車体前方側からボルト40が挿入されており、ボルト40はブラケット32のカバー取付部32Aの後面に配置されたナット42に螺合している。
【0021】
また、本実施形態では、カバー20が展開する際に、遠心力とエアバッグの押圧力によってカバー20の長手方向に沿った各帯状部24の間の部位がカバー20の回転半径外側方向、即ち、帯状部24から離間する方向へ変形する。これと異なり、帯状部24によって連結されているカバー20の長手方向中央部と両端部においては、回転半径外側方向、即ち、帯状部24から離間する方向への変形が抑制されるようになっている。
【0022】
具体的説明すると、図5に示される如く、カバー20が展開する際に、カバー20の車両右側部20Eは、長手方向中央部の帯状部24の取付中心P1(図1参照)と車幅方向右側の帯状部24の取付中心P1とを結ぶ直線L1と略平行になる回転軸を中心に展開すると共に、カバー20の車両左側部20Fは、長手方向中央部の帯状部24の取付中心P1と車幅方向左側の帯状部24の取付中心P1とを結ぶ直線L2と略平行になる回転軸を中心にして展開するようになっている。この際、カバー20の車両右側部20Eと車両左側部20Fにおける各帯状部24の間の部位が、回転半径外側方向へ遠心力とエアバッグの押圧力によって変形する。
【0023】
また、直線L1、L2はエアバッグ展開用開口部14及びカバー20の車幅方向両端部近傍の長手方向(接線方向)に沿っており、直線L1、L2は同一軸(一直線)上になく互いに交差している。即ち、左右の直線L1、L2は車幅方向に沿って延びる直線L3に対して左右対称で直線L1、L2の車幅方向外側が車幅方向内側に対して車体後方となるように所定角度θ1、θ2で(θ1=θ2)傾斜している。
【0024】
なお、左右の直線L1、L2が同一軸(一直線)上になく互いに交差するとは、直線L1、L2の延長線が交わる交差と、直線L1、L2の延長線が互いにくい違う交差と、の双方を含む。
【0025】
従って、カバー20が展開する際には、カバー20の車両右側部20Eは直線L1を中心に旋回し、カバー20の車両左側部20Fは直線L2を中心に旋回し、カバー20の車幅方向中央部は回転半径方向外側への変形が抑制されるようになっている。
【0026】
図7に示される如く、カバー20の縦壁20B及び下板部20Cと、帯状部24との間には、左右一対のスリット27が形成されており、これらの左右一対のスリット27によって、帯状部24とカバー20の縦壁20B及び下板部20Cとを分離することによって、ヒンジ部25が容易に変形するようになっている。また、帯状部24におけるヒンジ部25と取付部31との間には、エアバッグケース支持部26が一体形成されている。
【0027】
図1に示される如く、エアバッグケース支持部26の側断面形状(車体前後方向に沿った垂直断面を車幅方向から見た形状)は、車体前方へ向かって突出し、且つ車体後方側が開口した矩形枠状(略コ字状)となっており、車体上下方向に延びる当接部としての当接壁部26Aと、当接壁部26Aの上端部と下端部とをそれぞれ車体後方側から支持する第1支持部としての第1支持部壁部26Bと第2支持部としての第2支持壁部26Cとを備えている。なお、第1支持壁部26B及び第2支持壁部26Cは車体前後方向に沿って略水平に配置されている。
【0028】
また、第1支持壁部26Bの後端には、車体上方に向かって縦壁部26Dが形成されており、縦壁部26Dの上端がヒンジ部25となっている。一方、第2支持壁部26Cの後端には、取付部31が連結されている。
【0029】
図2に示される如く、エアバッグ展開時には、エアバッグ73がインフレータ72から吹出すガスによって、エアバッグケース70のエアバッグ展開用開口から車体後方へ向かって展開する。
【0030】
なお、折り畳み状態のエアバッグを収納するエアバッグケース70は、上端にエアバッグが飛び出すエアバッグ展開用開口が形成され、底面、車両前後方向両側面、及び車幅方向両側面が一体的に連結された箱状とされている。
【0031】
このため、エアバッグ展開時には、エアバッグケース70のエアバッグ展開用開口側端部としての後壁部の上部70Aが、エアバッグ73により車体後方(図2の矢印A方向)へ強く押圧され、車体後方側へ大きく変形しようとする。これに対して、本実施形態では、エアバッグケース70における後壁部の上部70Aの車体後方側近傍に配置されたエアバッグケース支持部26の当接壁部26Aが、エアバッグケース70の後壁部の上部70Aに車体後方側から当たり、エアバッグケース70における後壁部の上部70Aの車体後方への変形を抑制するようになっている。
【0032】
図4に示される如く、カバー20における車体前側縁部にはクリップ28が車幅方向に沿って所定の間隔で複数取付けられている。
【0033】
図1に示される如く、カバー20のクリップ取付部20Mは、屈曲した帯状の板部となっており、下板部20Cの先端部に一体形成されている。また、クリップ取付部20Mのの先端部20Nは下方へ向かって屈曲されており、クリップ取付部20Mの先端部20Nには、金属から成る側面視形状(車体前後方向に沿った垂直断面の形状)が略V字状のクリップ28(図6参照)が、その基端部28Aにおいてリベット30で固定されている。
【0034】
図6に示される如く、クリップ28は帯状の板ばねを曲げ加工することで形成されている。クリップ28の先端部28Bは、側面視形状(車体前後方向に沿った垂直断面の形状)で鉤状に屈曲されており、図1に示される如く、フードアウタパネル12の棚部16のフランジ16Cに弾性変形した状態で係止されている。これにより、カバー20は、フードアウタパネル12のエアバッグ展開用開口部14に取り付けられている。
【0035】
図6に示される如く、クリップ28の先端部28Bの下方側には、側断面形状(車体前後方向に沿った垂直断面の形状)が車体前方へ向かって三角形状の屈曲部28Cが形成されている。図1に示される如く、この屈曲部28Cはフランジ16Cの下端に当たっており、クリップ28の屈曲部28Cとカバー20の下板部20Cとで、棚部16のフランジ16Cを上下方向から挟持している。
【0036】
なお、図6の符号29は、クリップ28の基端部28Aに形成されたリベットを固定するための貫通孔である。
【0037】
また、図1及び図4にはカバー20の後端側のクリップ28は示されていないが、カバー20の後端側の車幅方向(カバー20の長手方向)に沿った適宜位置にはクリップ28がカバー20の前端側と同様に設定されている。
【0038】
カバー20における車体前方側に取付けられたクリップ28の先端部28Bは弾性変形した状態で、棚部16のフランジ16Cに車体前方(図1の矢印C方向)への弾性変形の反力を発生しており、図示していないカバー20における車体後方側に取付けられたクリップ28の先端部28Bは弾性変形した状態で、棚部16のフランジ16Cに車体後方(図1の矢印D方向)への弾性変形の反力を発生している。この結果、双方の弾性変形の反力によってカバー20がフードアウタパネル12のエアバッグ展開用開口部14に固定状態とされている。
【0039】
一方、エアバッグ展開時には、カバー20がエアバッグによって車体上方向へ向かって押圧されることで、クリップ28のエアバッグ展開用開口部14への係合が解除され、カバー20のヒンジ部25が変形することで、図3に二点鎖線で示すようにカバー20が上方へ開き、図5に示される如く、エアバッグ73がフード34と左右のフロントピラー35の上方に膨張展開するようになっている。
【0040】
図1に示される如く、エアバッグ装置52は皿状とされた取付ブラケット54の前後方向中央部54Aの上面に固定されており、取付ブラケット54の前後方向両端部54Bはフードインナパネル56に形成された開口部58の周縁部56Aの下面にボルトナット等の締結部材60によって固定されている。また、フードインナパネル56における開口部58の周縁部56Aは、インナリインホースメント62によって補強されており、インナリインホースメント62はその長手方向を車幅方向に沿って配置されている。インナリインホースメント62の車幅方向から見た断面形状は、開口部を上方へ向けたハット形状となっており、下板部62Aにはエアバッグ装置52を挿入するための開口部64が形成されている。インナリインホースメント62の下板部62Aにおける開口部64の周縁部には、締結部材60によってエアバッグ装置52のブラケット54が共締めされている。また、インナリインホースメント62の上端部に形成されたフランジ62Bは、フードアウタパネル12の基部12Bの下面12Cに接着剤68によって固定されている。また、インナリインホースメント62の下板部62Aとフランジ62Bとを連結している縦壁部62C、62Dの後側の縦壁部62Cの前面には、ブラケット32の取付フランジ32Bが溶接等によって結合されている。
【0041】
従って、帯状部24の取付部31は、ブラケット32とインナリインホースメント62とを介してフード34のフードアウタパネル12とフードインナパネル56とに連結されている。
【0042】
また、エアバッグケース70の内部には、略円柱形状のインフレータ72がフード幅方向(車幅方向)を軸方向として収容されていると共に折り畳み状態のエアバッグ73が収容されている。インフレータ72の内部には、一例としてスクイブ、着火剤、伝火剤、ガス発生剤、クーラント、フィルタ等が収納されている。
【0043】
インフレータ72の外周部72Aには軸方向の複数箇所(例えば、二箇所)に締結具としての取付ボルト76がインフレータ72の半径方向が軸方向となるように立設されている。これに対応して、エアバッグケース70の底壁部70C及び取付ブラケット54にも、取付ボルト76が挿通されるボルト挿通孔78、80が形成されている。インフレータ72は取付ブラケット82に支持された状態で取付ボルト76をボルト挿通孔78、80内へ挿通させ、取付ブラケット54の下面側から締結手段としてのナット84を締め付けることにより、取付ブラケット54に強固に固定されている。なお、エアバッグ73は、上述したインフレータ72のガス吹出し口から吹出しされたガスが流入されるようにインフレータ72の周囲に折り畳み状態でエアバッグケース70内に収納されている。
【0044】
次に、本実施形態の作用を説明する。
【0045】
本実施形態では、インナリインホースメント62が接着剤68を介して予めフードアウタパネル12へ固着されており、フードアウタパネル12のエアバッグ展開用開口部14に、カバー20をかぶせ、開口部58、開口部64を通して下方からボルト40とナット42との締結によってカバー20をブラケット32取付けた後に、エアバッグ装置52をフード34の下方から取付ブラケット54とともにフードインナパネル56に締結部材60によって取付ける。
【0046】
次に、車両衝突時にエアバッグ装置52が作動し、エアバッグ73が展開した場合には、カバー20がエアバッグ73により車体上方へ押圧される。このため、カバー20をフードアウタパネル12のエアバッグ展開用開口部14に固定しているクリップ28の係合が外れ、カバー20は車体後側縁部に設けられた帯状部24のヒンジ部25を中心に回転し開放され、エアバッグ展開用開口部14からエアバッグ73が車体外側へ展開する。
【0047】
この際、図5に示される如く、カバー20における長手方向に沿った一方の周縁部である長手方向の中央部と、長手方向の中央部と長手方向の両端部との間の部位の3箇所に設けた帯状部24によってカバー20が支持されている。この結果、カバー20が展開する際に、カバー20の車両右側部20Eは、長手方向中央部の帯状部24の取付中心P1(図1参照)と車幅方向右側の帯状部24の取付中心P1とを結ぶ直線L1と略平行になる回転軸を中心に展開すると共に、カバー20の車両左側部20Fは、長手方向中央部の帯状部24の取付中心P1と車幅方向左側の帯状部24の取付中心P1とを結ぶ直線L2と略平行になる回転軸を中心にして展開する。更に、直線L1、L2は車幅方向に沿って延びる直線L3に対して左右対称で直線L1、L2の車幅方向外側が車幅方向内側に対して車体後方となるように所定角度θ1、θ2で(θ1=θ2)傾斜している。
【0048】
この結果、カバー20の車両右側部20Eは直線L1を中心に旋回し、カバー20の車両左側部20Fは直線L2を中心に旋回して、カバー20の車幅方向中央部は回転半径方向外側への変形が抑制される。
【0049】
従って、本実施形態では、フードアウタパネル12の後端縁部12Aに沿って延び車幅方向中央部が車体前方へ膨らんだ円弧状になっているカバー20が開いた際に、その車幅方向中央部が、フード34の後方に配置されたウインドシールドガラス90の中央部90Aの弱い部分に当たるのを防止できる。
【0050】
また、隣接する帯状部24の間の部位においても、隣接する帯状部24の間隔がカバー20の長手方向に沿ってカバー20の全長の1/2以下となっており、支持部が左右2箇所みの構成に比べて短い。このため、隣接する帯状部24の間の部位においても、カバー20の回転半径外側方向への変形量が小さくなる。
【0051】
また、本実施形態では、帯状部24を、カバー20の長手方向の中央部と、長手方向の中央部と長手方向の両端部との間の部位である長手方向両端部近傍の合計3箇所に配置した。この結果、最小数の帯状部24によって、カバー20の長手方向に沿った中央部を含む各部位の回転半径外側への変形を低減することができる。このため、重量増加及び部品点数の増加を抑制しつつ、カバー20の変形を効果的に抑制できる。
【0052】
以上に於いては、本発明を特定の実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施形態が可能であることは当業者にとって明らかである。例えば、上記実施形態では、カバー20をその長手方向に沿った一方の周縁部である車体後側縁部における長手方向の中央部と、長手方向の中央部と長手方向の両端部との間の部位の3箇所に設けた帯状部24によって支持したが、帯状部24の配置位置は、カバー20の長手方向中央部に加え、長手方向中央部と長手方向両端部との間にそれぞれ2箇所以上配置し、合計5個以上とした構成としても良い。
【0053】
また、上記実施形態では、カバー20の縦壁20B及び下板部20Cと、帯状部24との間に左右一対のスリット27を形成し、帯状部24とカバー20の縦壁20B及び下板部20Cとを分離することによって、ヒンジ部25が容易に変形するようにしたが、左右一対のスリット27を形成しない構成としても良い。
【0054】
また、上記実施形態では、エアバッグ展開用開口部14及びカバー20の車体上方から見た平面視形状を、フードアウタパネル12の後端縁部12Aに沿って延び車体前方へ膨らんだ円弧状としたが、エアバッグ展開用開口部14及びカバー20の車体上方から見た平面視形状は円弧状に限定されず、エアバッグ展開用開口部14及びカバー20の車体上方から見た平面視形状を直線形状やV字状(屈曲形状)等の他の形状としても良い。
【0055】
また、上記実施形態では、フードアウタパネル12、カバー20及びクリップ28の材質をそれぞれ金属としたが、フードアウタパネル12、カバー20及びクリップ28の材質は金属に限定されず樹脂等の他の材質でも良い。また、フードアウタパネル12の材質とカバー20の材質とが同じ材料でなくても良い。
【0056】
また、上記実施形態では、車両板材をフードアウタパネル12としたが、車両板材はルーフパネル等の他の車両板材でも良い。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】図4の1−1線に沿った拡大断面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る車両用エアバッグ装置の図1に対応する作用説明図である。
【図3】図4の3−3線に沿った拡大断面図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る車両用エアバッグ装置が適用された車体を示す車体斜め前方から見た斜視図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る車両用エアバッグ装置が適用された車体のエアバッグ展開状態を示す車体斜め前方から見た斜視図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る車両用エアバッグ装置のクリップを示す車体斜め前方から見た斜視図である。
【図7】本発明の一実施形態に係る車両用エアバッグ装置の帯状部を示す車体斜め前方から見た斜視図である。
【符号の説明】
【0058】
12 フードアウタパネル(車体板材)
14 エアバッグ展開用開口部(開口部)
16 フードアウタパネルの棚部
20 カバー(蓋体)
24 帯状部(支持手段)
25 帯状部のヒンジ部
26 帯状部のエアバッグケース支持部
31 帯状部の取付部
52 エアバッグ装置
73 エアバッグ
90 ウインドシールドガラス


【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体板材に形成された長尺形状の開口部を通って展開するエアバッグと、
前記開口部を閉塞する長尺形状の蓋体と、
前記蓋体の長手方向に沿った一方の周縁部であって、前記長手方向中央部と前記長手方向両端部とに配置され、前記蓋体を前記開口部を閉塞する位置から開放する位置へ回転可能に支持する支持手段と、
を有することを特徴とする車両用エアバッグ装置。
【請求項2】
前記車体板材はエンジンフードであり、前記開口部が前記エンジンフードの後端付近に形成され、前記開口部と前記蓋体とは車幅方向中央部が車体前方へ膨らんだ湾曲形状であることを特徴とする請求項1に記載の車両用エアバッグ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−30738(P2007−30738A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−218596(P2005−218596)
【出願日】平成17年7月28日(2005.7.28)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】