説明

車両用エネルギー吸収部材

【課題】フロントサイドフレーム同士がすれ違った状態で衝突した場合でも衝撃エネルギーを良好に吸収することができる車両用エネルギー吸収部材を提供する。
【解決手段】車両用エネルギー吸収部材42は、左フロントサイドフレーム12の前部を構成し、左フロントサイドフレーム12の後部サイドフレーム41に着脱自在に取り付けて衝撃エネルギーを吸収する部材である。この車両用エネルギー吸収部材42は、後部サイドフレーム41から車体前方に向けて延出された軽合金製のフレーム部67と、フレーム部67の周壁から外方に向けて張り出された軽合金製の外張出枠部68、内張出枠部69、上張出枠部71および下張出枠部72とを有し、フレーム部67および各張出枠部68,69,71,72が軽合金材で一体に押出成形されたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衝撃エネルギーを吸収するために左右のフロントサイドフレームの前部に備えた車両用エネルギー吸収部材に関する。
【背景技術】
【0002】
車体フレーム構造のなかには、左右のフロントサイドフレームをアルミ合金製のエネルギー吸収部材で形成したものがある。
このエネルギー吸収部材は、周壁を断面多角形に形成することで複数の頂部を有し、対向する頂部間に亘って設けられた複数の補強リブを有し、それぞれの補強リブが略中央で互いに交差するように押出成形された部材である。
【0003】
エネルギー吸収部材をフロントサイドフレームに適用することで、フロントサイドフレームの前端部に衝撃が作用した場合に、フロントサイドフレームを座屈させて衝撃エネルギーを吸収することが可能になる(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2004−106612公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、自動車の車種が異なった場合、フロントサイドフレームの高さ寸法や幅寸法が異なる。
異なる車種が対向した場合、一方の車種のフロントサイドフレームは、他方の車種のフロントサイドフレームに対してずれた(オフセットされた)状態になる。
【0005】
よって、車両同士が対向した状態で衝突した場合でも、一方の車種のフロントサイドフレームと他方の車種のフロントサイドフレームとが当接しないで、互いにすれ違うことが考えられる。
このため、衝突により発生する衝撃エネルギーを良好に吸収することは難しい。
【0006】
本発明は、フロントサイドフレーム同士がすれ違った状態で衝突した場合でも衝撃エネルギーを良好に吸収することができる車両用エネルギー吸収部材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明は、車体前部の左右側にそれぞれ設けられたフロントサイドフレームの前部を構成し、前記フロントサイドフレームの基部に着脱自在に取り付けて衝撃エネルギーを吸収する車両用エネルギー吸収部材であって、前記フロントサイドフレームの基部から車体前方に向けて延出された軽合金製のフレーム部と、前記フレーム部の周壁から外方に向けて張り出された軽合金製の張出枠部と、を有し、前記フレーム部および前記張出枠部が軽合金材で一体に押出成形されたことを特徴とする。
【0008】
請求項2に係る発明は、前記張出枠部のうち、前記フレーム部の車体外側に向けて張り出された外張出枠部が、フロントピラーから車体前方に延出したアッパーメンバーに着脱自在に取り付けられたことを特徴とする。
【0009】
請求項3に係る発明は、前記張出枠部のうち、前記フレーム部の下側に向けて張り出された下張出枠部が、前記フロントサイドフレームの下側に取り付けたサブフレームに着脱自在に取り付けられたことを特徴とする。
【0010】
請求項4に係る発明は、前記張出枠部は、前記フレーム部の車体外側に向けて張り出され、フロントピラーから車体前方に延出したアッパーメンバーに着脱自在に取り付けられた外張出枠部と、前記フレーム部の下側に向けて張り出され、前記フロントサイドフレームの下側に取り付けたサブフレームに着脱自在に取り付けられた下張出枠部と、を有し、前記フレーム部、前記外張出枠部および前記下張出枠部で断面略L字形を形成することを特徴とする。
【0011】
請求項5に係る発明は、前記張出枠部は、前記フレーム部の車体内側に向けて張り出された内張出枠部と、前記フレーム部の車体外側に向けて張り出され、フロントピラーから車体前方に延出したアッパーメンバーに着脱自在に取り付けられた外張出枠部と、前記フレーム部の上側に向けて張り出された上張出枠部と、前記フレーム部の下側に向けて張り出され、前記フロントサイドフレームの下側に取り付けたサブフレームに着脱自在に取り付けられた下張出枠部と、を有し、前記フレーム部、前記内外の張出枠部および前記上下の張出枠部で断面略十字形を形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る発明では、フロントサイドフレームの基部から車体前方に向けてフレーム部を延出した。そして、フレーム部の周壁から外方に向けて張出枠部を張り出した。
よって、例えば、フレーム部に対して衝突物がすれ違った場合に、衝突物を張出枠部で受けることができる。
これにより、衝突物から伝わる衝撃を張出枠部で支えて、衝撃エネルギーを良好に吸収することができるという利点がある。
【0013】
また、フレーム部および張出枠部を軽合金材で一体に押出成形した。
よって、フレーム部および張出枠部を一部材で形成することが可能になり、構成の簡素化を図ることができる。
さらに、フレーム部および張出枠部を軽合金材で成形することで、フロントサイドフレームの軽量化を図ることができるという利点がある。
【0014】
加えて、車両用エネルギー吸収部材を、フロントサイドフレームの基部に着脱自在に取り付けた。
よって、フロントサイドフレームに軽衝撃が作用した場合には、車両用エネルギー吸収部材のみを座屈させて衝撃エネルギーを吸収することができる。
これにより、車両用エネルギー吸収部材のみを交換するだけで、修理を完了できるので、修理費を抑えることができるという利点がある。
【0015】
請求項2に係る発明では、フレーム部の車体外側に向けて外張出枠部を張り出し、外張出枠部をアッパーメンバーに取り付けた。よって、外張出枠部に作用した衝撃をアッパーメンバーに分散させることが可能になる。
これにより、車両用エネルギー吸収部材の軽量化を一層図るとともに、衝撃エネルギーの吸収性を高めることができるという利点がある。
【0016】
請求項3に係る発明では、フレーム部の車体下側に向けて下張出枠部を張り出し、下張出枠部をサブフレームに取り付けた。よって、下張出枠部に作用した衝撃をサブフレームに分散させることが可能になる。
これにより、車両用エネルギー吸収部材の軽量化を一層図るとともに、衝撃エネルギーの吸収性を高めることができるという利点がある。
【0017】
請求項4に係る発明では、フレーム部の車体外側に向けて外張出枠部を張り出し、外張出枠部をアッパーメンバーに取り付けた。よって、外張出枠部に作用した衝撃をアッパーメンバーに分散させることが可能になる。
加えて、フレーム部の車体下側に向けて下張出枠部を張り出し、下張出枠部をサブフレームに取り付けた。下張出枠部に作用した衝撃をサブフレームに分散させることが可能になる。
これにより、車両用エネルギー吸収部材の軽量化をより一層図るとともに、衝撃エネルギーの吸収性をさらに高めることができるという利点がある。
【0018】
さらに、フレーム部、外張出枠部および下張出枠部で断面略L字形を形成した。
よって、フレーム部から張り出した張出枠部の面積を大きく確保することが可能になる。これにより、例えば、フレーム部に対して衝突物がすれ違った場合に、衝突物を張出枠部で確実に受け、衝撃エネルギーを良好に吸収することができるという利点がある。
【0019】
請求項5に係る発明では、フレーム部の車体外側に向けて外張出枠部を張り出し、外張出枠部をアッパーメンバーに取り付けた。よって、外張出枠部に作用した衝撃をアッパーメンバーに分散させることが可能になる。
加えて、フレーム部の車体下側に向けて下張出枠部を張り出し、下張出枠部をサブフレームに取り付けた。下張出枠部に作用した衝撃をサブフレームに分散させることが可能になる。
これにより、車両用エネルギー吸収部材の軽量化をより一層図るとともに、衝撃エネルギーの吸収性をさらに高めることができるという利点がある。
【0020】
さらに、フレーム部、内外の張出枠部および上下の張出枠部で断面略十字形を形成した。
よって、フレーム部から張り出した張出枠部の面積を大きく確保することが可能になる。これにより、例えば、フレーム部に対して衝突物がすれ違った場合に、衝突物を張出枠部で確実に受け、衝撃エネルギーを良好に吸収することができるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明を実施するための最良の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、「前」、「後」、「左」、「右」は作業者から見た方向にしたがい、前側をFr、後側をRr、左側をL、右側をRとして示す。
【0022】
図1は本発明に係る車両用エネルギー吸収部材(第1実施の形態)を備えた車体フレーム構造の斜視図である。
車体フレーム構造10は、エンジンルーム11の左右枠部を形成する左右のフロントサイドフレーム(フロントサイドフレーム)12,13と、左右のフロントサイドフレーム12,13の前端部に設けられたバルクヘッド15と、左右のフロントサイドフレーム12,13の後端部から延出された左右のアウトリガー16(右アウトリガーは図示せず)と、左右のアウトリガー16および左右のフロントサイドフレーム12,13の後端部に設けられたダッシュボードロア17(図2も参照)とを備える。
【0023】
バルクヘッド15は、左支柱21、右支柱22、上梁部23および下梁部24を有する。このバルクヘッド15にラジエータ(図示せず)が取り付けられている。
左支柱21は、左フロントサイドフレーム12の前端部に着脱自在に取り付けられている。右支柱22は、右フロントサイドフレーム13の前端部に着脱自在に取り付けられている。
下梁部24は、左端部24aが左フロントサイドフレーム12の前端部に着脱自在に取り付けられ、右端部24bが右フロントサイドフレーム13の前端部に着脱自在に取り付けられている。
【0024】
さらに、車体フレーム構造10は、左フロントサイドフレーム12に対して車体外側に設けられた左アッパーメンバー(アッパーメンバー)26と、右フロントサイドフレーム13に対して車体外側に設けられた右アッパーメンバー(アッパーメンバー)27とを備える。
【0025】
左アッパーメンバー26は、左フロントピラー(フロントピラー)28から車体前方に延出された部材である。
右アッパーメンバー27は、右フロントピラー(フロントピラー)29から車体前方に延出された部材である。
【0026】
加えて、車体フレーム構造10は、左右のフロントサイドフレーム12,13の下側にサブフレーム31が取り付けられている。
サブフレーム31は、図示しないエンジンやトランスミッションを載置するためのフレームである。
【0027】
このサブフレーム31は、左右のフロントサイドフレーム12,13の前端部にそれぞれ設けられた左右の前脚部32,33(左前脚部32は図3参照)と、左右のフロントサイドフレーム12,13の後端部にそれぞれ設けられた左右の後脚部34,35(右前脚部35は図3参照)と、左右の前脚部32,33および左右の後脚部34,35に設けられた略矩形状のサブフレーム本体36とを有する。
【0028】
図2は第1実施の形態に係る車両用エネルギー吸収部材を備えた左右のフロントサイドフレームを示す斜視図である。
左フロントサイドフレーム12は、ダッシュボードロア17の左端部17aから車体前方に延出された後部サイドフレーム(基部)41と、後部サイドフレーム41の前端部41aから車体前方に延出された軽合金製のエネルギー吸収部材(車両用エネルギー吸収部材)42とを備える。
エネルギー吸収部材42は、左フロントサイドフレーム12の前部を構成し、左フロントサイドフレーム12の後部サイドフレーム41に着脱自在に取り付けて衝撃エネルギーを吸収する部材である。
【0029】
右フロントサイドフレーム13は、ダッシュボードロア17の右端部17bから車体前方に延出された後部サイドフレーム(基部)44と、後部サイドフレーム44の前端部44aから車体前方に向けて延出された軽合金製のエネルギー吸収部材(車両用エネルギー吸収部材)45とを備える。
エネルギー吸収部材45は、右フロントサイドフレーム13の前部を構成し、右フロントサイドフレーム13の後部サイドフレーム44に着脱自在に取り付けて衝撃エネルギーを吸収する部材である。
【0030】
ここで、左フロントサイドフレーム12は、右フロントサイドフレーム13と左右対称の部材である。
以下、左フロントサイドフレーム12(後部サイドフレーム41およびエネルギー吸収部材42)について説明して、右フロントサイドフレーム13(後部サイドフレーム44およびエネルギー吸収部材45)の説明を省略する。
【0031】
図3は第1実施の形態に係る車両用エネルギー吸収部材を備えた左フロントサイドフレームを示す側面図、図4は第1実施の形態に係る車両用エネルギー吸収部材を備えた左フロントサイドフレームを示す斜視図、図5は第1実施の形態に係る車両用エネルギー吸収部材を備えた左フロントサイドフレームを示す分解斜視図である。
後部サイドフレーム41は、エンジンルーム11(図1参照)側に設けられたインナーパネル51と、車体外側に配置されたアウターパネル52とを有する。
【0032】
インナーパネル51は、上壁部53、内壁部54および下壁部55で断面略コ字状に形成され、上壁部53の端部に上フランジ53aが形成され、下壁部55の端部に下フランジ55aが形成されている。
内壁部54は、前端部54aに上下の取付孔57,57が形成されている。
【0033】
アウターパネル52は、略帯状に形成されたプレートで、前端部52aの上端に折曲片59が形成され、前端部52aに上下の取付孔61,61が形成されている。
アウターパネル52の上辺52bが、インナーパネル51の上フランジ53aにスポット溶接され、アウターパネル52の折曲片59が、上壁部53の前端部53bにスポット溶接されている。
アウターパネル52の下辺52cが、インナーパネル51の下フランジ55aにスポット溶接されている。
【0034】
これにより、後部サイドフレーム41は、インナーパネル51およびアウターパネル52で断面略コ字状に形成される。
【0035】
エネルギー吸収部材42は、軽合金材であるアルミ合金で押出成形された吸収部材本体64と、吸収部材本体64を後部サイドフレーム41に取り付ける取付ブラケット65とを有する。
【0036】
吸収部材本体64は、後部サイドフレーム41から車体前方に向けて延出されたフレーム部67と、フレーム部67の周壁から外方に向けて張り出された外張出枠部(張出枠部)68、内張出枠部(張出枠部)69、上張出枠部(張出枠部)71および下張出枠部(張出枠部)72とを有する。
【0037】
吸収部材本体64は、フレーム部67、外張出枠部68、内張出枠部69、上張出枠部71および下張出枠部72が軽合金材で一体に押出成形されることで、断面略十字形に形成された部材である。
【0038】
フレーム部67は、周壁が外壁74、内壁75、上壁76および下壁77で断面略矩形に形成された筒状の部材で、外壁74に上下の取付孔78,78が貫通され、内壁75に上下の取付孔79,79が貫通されている。
このフレーム部67は、図4に示すように、後端部67aに、外壁74の取付孔78,78および内壁75の取付孔79,79を用いて、取付ブラケット65が上下のボルト81,81で着脱自在に取り付けられている。
【0039】
外張出枠部68は、フレーム部67の外壁74に設けられることで、フレーム部67の車体外側に向けて張り出された断面略コ字状の部材である。
具体的には、外張出枠部68は、外壁74の上端から車体外側に向けて張り出された外上張出壁83と、外壁74の下端から車体外側に向けて張り出された外下張出壁84と、外上張出壁83および外下張出壁84の両端に設けられた外張出壁85とを有する。
【0040】
この外張出枠部68は、図1に示すように、左アッパーメンバー26の前端部26aにボルト87で着脱自在に取り付けられている。
よって、外張出枠部68に作用した衝撃を左アッパーメンバー26に分散させることが可能になる。
これにより、エネルギー吸収部材42の軽量化を一層図るとともに、衝撃エネルギーの吸収性を高めることができる。
【0041】
内張出枠部69は、フレーム部67の内壁75に設けられることで、フレーム部67の車体内側に向けて張り出された断面略コ字状の部材である。
具体的には、内張出枠部69は、内壁75の上端から車体中央側に向けて張り出された内上張出壁91と、内壁75の下端から車体中央側に向けて張り出された内下張出壁92と、内上張出壁91および内下張出壁92の両端に設けられた内張出壁93とを有する。
【0042】
この内張出枠部69は、図1に示すように、バルクヘッド15の左支柱21にボルト(図示せず)で着脱自在に取り付けられている。
【0043】
上張出枠部71は、フレーム部67の上壁76に設けられることで、フレーム部67の上側に向けて張り出された断面略コ字状の部材である。
具体的には、上張出枠部71は、上壁76の外端から上方に向けて張り出された上外張出壁95と、上壁76の内端から上方に側に向けて張り出された上内張出壁96と、上外張出壁95および上内張出壁96の両端に設けられた上張出壁97とを有する。
【0044】
下張出枠部72は、フレーム部67の下壁77に設けられることで、フレーム部67の下側に向けて張り出された断面略コ字状の部材である。
具体的には、下張出枠部72は、下壁77の外端から下方に向けて張り出された下外張出壁101と、下壁77の内端から下方に側に向けて張り出された下内張出壁102と、下外張出壁101および下内張出壁102の両端に設けられた下張出壁103とを有する。
【0045】
この下張出枠部72は、図3に示すように、サブフレーム31の左前脚部32に上下のボルト105,105およびナット(図示せず)で着脱自在に取り付けられている。
具体的には、左前脚部32に外側取付片32aおよび内側取付片33aが設けられている。外側取付片32aおよび内側取付片33aは、下張出枠部72に嵌め込まれ、上下のボルト105,105およびナット(図示せず)で下張出枠部72に取り付けられている。
【0046】
よって、下張出枠部72に作用した衝撃をサブフレーム31に分散させることが可能になる。
これにより、エネルギー吸収部材42の軽量化を一層図るとともに、衝撃エネルギーの吸収性を高めることができる。
【0047】
また、吸収部材本体64を構成するフレーム部67、外張出枠部68、内張出枠部69、上張出枠部71および下張出枠部72を軽合金材で一体に押出成形した。
よって、フレーム部67および各張出枠部68,69,71,72を一部材で形成することが可能になり、構成の簡素化を図ることができる。
さらに、フレーム部67および各張出枠部68,69,71,72を軽合金材で成形することで、左フロントサイドフレーム12の軽量化を図ることができる。
【0048】
取付ブラケット65は、図5に示すように、略L字形に形成された鋼製の外側ブラケット107と、略L字形に形成された鋼製の内側ブラケット108とで断面略矩形に形成されている。
取付ブラケット65は、前端部65aがフレーム部67の後端部67aに差し込み可能で、後端部65bが後部サイドフレーム41の前端部41a(図3参照)に差し込み可能な部材である。
【0049】
取付ブラケット65は、前端部65aがフレーム部67の後端部67aに差し込まれ、フレーム部67の後端部67aにボルト81…・ナット82…で取り付けられている。
また、取付ブラケット65は、後端部65bが後部サイドフレーム41の前端部41a(図3参照)に差し込まれ、後部サイドフレーム41の前端部41aにボルト111…・ナット112…で取り付けられている。
よって、吸収部材本体64は、取付ブラケット65を介して後部サイドフレーム41に着脱自在に取り付けられている。
【0050】
これにより、左フロントサイドフレーム12に軽衝撃が作用した場合には、エネルギー吸収部材42(すなわち、吸収部材本体64)のみを座屈させて衝撃エネルギーを吸収することが可能である。
したがって、エネルギー吸収部材42(すなわち、吸収部材本体64)のみを交換するだけで、修理を完了できるので、修理費を抑えることができる。
【0051】
図6は第1実施の形態に係る車両用エネルギー吸収部材を示す断面図である。
吸収部材本体64は、外張出枠部68、内張出枠部69、上張出枠部71および下張出枠部72で断面略十字形に形成されている。
【0052】
この吸収部材本体64は、フレーム部67から車体外側に向けて外張出枠部68が張り出されている。
これにより、吸収部材本体64は、衝撃エネルギーを吸収可能なエリアをフレーム部67から車体外側に向けてE1拡げることができる。
【0053】
また、吸収部材本体64は、フレーム部67から車体内側に向けて内張出枠部69が張り出されている。
これにより、吸収部材本体64は、衝撃エネルギーを吸収可能なエリアをフレーム部67から車体内側に向けてE2拡げることができる。
【0054】
加えて、吸収部材本体64は、フレーム部67から車体上側に向けて上張出枠部71が張り出されている。
これにより、吸収部材本体64は、衝撃エネルギーを吸収可能なエリアをフレーム部67から上方に向けてE3拡げることができる。
【0055】
さらに加えて、吸収部材本体64は、フレーム部67から車体下側に向けて下張出枠部72が張り出されている。
これにより、吸収部材本体64は、衝撃エネルギーを吸収可能なエリアをフレーム部67から下方に向けてE4拡げることができる。
【0056】
すなわち、吸収部材本体64は、衝撃エネルギーを吸収可能なエリアを、フレーム部67から車体外側に向けてE1、車体内側に向けてE2、上方に向けてE3、下方に向けてE4拡げることができる。
【0057】
以上説明したように、図2に示す左フロントサイドフレーム12の後部サイドフレーム41から車体前方に向けてフレーム部67を延出した。
そして、フレーム部67から外張出枠部68、内張出枠部69、上張出枠部71および下張出枠部72を張り出すことで、吸収部材本体64が断面略十字形に形成される。
【0058】
よって、フレーム部67から張り出した張出枠部の面積を大きく確保することが可能になる。
これにより、フレーム部67で衝撃エネルギーを良好に吸収することができ、さらに、フレーム部67に対して衝突物がすれ違った場合でも、衝突物を張出枠部で確実に受け、衝撃エネルギーを良好に吸収することができる。
【0059】
つぎに、エネルギー吸収部材42の作用を図7に基づいて説明する。
図7は第1実施の形態に係る車両用エネルギー吸収部材を用いた左フロントフレームに衝撃が作用する例を説明する図である。
吸収部材本体64は、フレーム部67に外張出枠部68を設けることで、衝撃Fがフレーム部67から車体外側に向けてE1ずれた場合でも、外張出枠部68で衝撃Fのエネルギーを吸収することができる。
【0060】
また、吸収部材本体64は、フレーム部67に内張出枠部69を設けることで、衝撃Fがフレーム部67から車体内側に向けてE2ずれた場合でも、内張出枠部69で衝撃Fのエネルギーを吸収することができる。
【0061】
さらに、吸収部材本体64は、フレーム部67に上張出枠部71を設けることで、衝撃Fがフレーム部67から上方に向けてE3ずれた場合でも、上張出枠部71で衝撃Fのエネルギーを吸収することができる。
【0062】
さらに加えて、吸収部材本体64は、フレーム部67に下張出枠部72を設けることで、衝撃Fがフレーム部67から下方に向けてE4ずれた場合でも、下張出枠部72で衝撃Fのエネルギーを吸収することができる。
【0063】
つぎに、第2実施の形態の車両用エネルギー吸収部材を図8〜図9に基づいて説明する。なお、第2実施の形態の車両用エネルギー吸収部材において第1実施の形態の構成部材と同一類似部材については説明を省略する。
【0064】
図8は本発明に係る車両用エネルギー吸収部材(第2実施の形態)を示す斜視図である。
第2実施の形態のエネルギー吸収部材(車両用エネルギー吸収部材)120は、第1実施の形態の吸収部材本体64および取付ブラケット65を一体に押出成形したもので、その他の構成は第1実施の形態のエネルギー吸収部材42と同じである。
【0065】
エネルギー吸収部材120は、フレーム部67の後端部67aに取付部122が一体に形成されている。
取付部122は、フレーム部67と同様に断面略矩形状に形成され、外壁122aに上下の取付孔123,123が形成され、内壁122bに上下の取付孔124,124が形成されている。
上下の取付孔123…,124…は、取付部122を、図3に示す後部サイドフレーム41の前端部41aにボルト止めするための孔である。
【0066】
すなわち、取付部122は、図3に示す後部サイドフレーム41の前端部41aに差し込まれ、後部サイドフレーム41の前端部41aにボルト・ナット(図示せず)で取り付けられる。
これにより、エネルギー吸収部材120が後部サイドフレーム41に着脱自在に取り付けられる。
【0067】
つぎに、エネルギー吸収部材120の製造方法を図9に基づいて説明する。
図9(a),(b)は第2実施の形態に係る車両用エネルギー吸収部材を製造する例を説明する図である。
(a)において、図8に示すエネルギー吸収部材120の素材126を、軽合金材であるアルミ合金で一体に押出成形する。
素材126は、外張出枠部68の後端から後外張出枠部位128が一体に張り出され、内張出枠部69の後端から後内張出枠部129が一体に張り出され、上張出枠部71の後端から後上張出枠部131が一体に張り出され、下張出枠部72の後端から後下張出枠部132が一体に張り出されている。
【0068】
外張出枠部68の後端から後外張出枠部位128を想像線128aで切断する。内張出枠部69の後端から後内張出枠部129を想像線(図示せず)で切断する。
上張出枠部71の後端から後上張出枠部131を想像線131aで切断する。下張出枠部72の後端から後下張出枠部132を想像線132aで切断する。
【0069】
(b)において、外張出枠部68の後端から後外張出枠部位128を矢印の如く除去する。内張出枠部69の後端から後内張出枠部129を矢印の如く除去する。
上張出枠部71の後端から後上張出枠部131を矢印の如く除去する。下張出枠部72の後端から後下張出枠部132を矢印の如く除去する。
これにより、エネルギー吸収部材120が得られる。
【0070】
第2実施の形態のエネルギー吸収部材120によれば、フレーム部67の後端部67aに取付部122を一体に形成することで、第1実施の形態のエネルギー吸収部材42と比較して部品点数を減らすことができる。
【0071】
加えて、第2実施の形態のエネルギー吸収部材120によれば、第1実施の形態のエネルギー吸収部材42と同様の効果を得ることができる。
【0072】
前記第1〜第2の実施の形態では、エネルギー吸収部材42,120を、フレーム部67、外張出枠部68、内張出枠部69、上張出枠部71および下張出枠部72で断面略十字形に形成した例について説明したが、これに限らないで、エネルギー吸収部材(車両用エネルギー吸収部材)を略L字形に形成することも可能である。
【0073】
変形例のエネルギー吸収部材は、エネルギー吸収部材42,120から内張出枠部69および上張出枠部71が除去され、フレーム部67、外張出枠部68および下張出枠部72で略L字形に形成されたものである。
【0074】
このように、フレーム部67から外張出枠部68および下張出枠部72を張り出すことで、張出枠部の面積を大きく確保することが可能になる。
これにより、フレーム部67で衝撃エネルギーを良好に吸収することができ、さらに、フレーム部67に対して衝突物がすれ違った場合に、衝突物を張出枠部で確実に受け、衝撃エネルギーを良好に吸収することができる。
【0075】
すなわち、変形例のエネルギー吸収部材によれば、外張出枠部68および下張出枠部72を備えることで、第1、第2の実施の形態のエネルギー吸収部材42,120と同様の効果が得られる。
加えて、第1、第2の実施の形態のエネルギー吸収部材42,120の形状と比較してコンパクト化が図れるので、比較的狭い空間に対応することができる。
【0076】
なお、前記第1〜第2の実施の形態では、外張出枠部68を左アッパーメンバー26に着脱自在に取り付けた例について説明したが、これに限らないで、外張出枠部68を左アッパーメンバー26に着脱自在に取り付けなくても、エネルギー吸収部材42,120としての役割を果たすことができる。
【0077】
また、前記第1〜第2の実施の形態では、下張出枠部72をサブフレーム31に着脱自在に取り付けた例について説明したが、これに限らないで、下張出枠部72をサブフレーム31に着脱自在に取り付けなくても、エネルギー吸収部材42,120としての役割を果たすことができる。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明の車両用エネルギー吸収部材は、左右のフロントサイドフレームを備えた自動車への適用に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明に係る車両用エネルギー吸収部材(第1実施の形態)を備えた車体フレーム構造の斜視図である。
【図2】第1実施の形態に係る車両用エネルギー吸収部材を備えた左右のフロントサイドフレームを示す斜視図である。
【図3】第1実施の形態に係る車両用エネルギー吸収部材を備えた左フロントサイドフレームを示す側面図である。
【図4】第1実施の形態に係る車両用エネルギー吸収部材を備えた左フロントサイドフレームを示す斜視図である。
【図5】第1実施の形態に係る車両用エネルギー吸収部材を備えた左フロントサイドフレームを示す分解斜視図である。
【図6】第1実施の形態に係る車両用エネルギー吸収部材を示す断面図である。
【図7】第1実施の形態に係る車両用エネルギー吸収部材を用いた左フロントフレームに衝撃が作用する例を説明する図である。
【図8】本発明に係る車両用エネルギー吸収部材(第2実施の形態)を示す斜視図である。
【図9】第2実施の形態に係る車両用エネルギー吸収部材を製造する例を説明する図である。
【符号の説明】
【0080】
10…車体フレーム構造、12…左フロントサイドフレーム(フロントサイドフレーム)、13…右フロントサイドフレーム(フロントサイドフレーム)、26…左アッパーメンバー(アッパーメンバー)、27…右アッパーメンバー(アッパーメンバー)、28…左フロントピラー(フロントピラー)、29…右フロントピラー(フロントピラー)、31…サブフレーム、41,44…後部サイドフレーム(基部)、42,45,120…エネルギー吸収部材(車両用エネルギー吸収部材)、67…フレーム部、68…外張出枠部(張出枠部)、69…内張出枠部(張出枠部)、71…上張出枠部(張出枠部)、72…下張出枠部(張出枠部)、74…外壁(周壁の一部)、75…内壁(周壁の一部)、76…上壁(周壁の一部)、77…下壁(周壁の一部)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体前部の左右側にそれぞれ設けられたフロントサイドフレームの前部を構成し、前記フロントサイドフレームの基部に着脱自在に取り付けて衝撃エネルギーを吸収する車両用エネルギー吸収部材であって、
前記フロントサイドフレームの基部から車体前方に向けて延出された軽合金製のフレーム部と、
前記フレーム部の周壁から外方に向けて張り出された軽合金製の張出枠部と、を有し、
前記フレーム部および前記張出枠部が軽合金材で一体に押出成形されたことを特徴とする車両用エネルギー吸収部材。
【請求項2】
前記張出枠部のうち、前記フレーム部の車体外側に向けて張り出された外張出枠部が、フロントピラーから車体前方に延出したアッパーメンバーに着脱自在に取り付けられたことを特徴とする請求項1記載の車両用エネルギー吸収部材。
【請求項3】
前記張出枠部のうち、前記フレーム部の下側に向けて張り出された下張出枠部が、前記フロントサイドフレームの下側に取り付けたサブフレームに着脱自在に取り付けられたことを特徴とする請求項1記載の車両用エネルギー吸収部材。
【請求項4】
前記張出枠部は、
前記フレーム部の車体外側に向けて張り出され、フロントピラーから車体前方に延出したアッパーメンバーに着脱自在に取り付けられた外張出枠部と、
前記フレーム部の下側に向けて張り出され、前記フロントサイドフレームの下側に取り付けたサブフレームに着脱自在に取り付けられた下張出枠部と、
を有し、
前記フレーム部、前記外張出枠部および前記下張出枠部で断面略L字形を形成することを特徴とする請求項1記載の車両用エネルギー吸収部材。
【請求項5】
前記張出枠部は、
前記フレーム部の車体内側に向けて張り出された内張出枠部と、
前記フレーム部の車体外側に向けて張り出され、フロントピラーから車体前方に延出したアッパーメンバーに着脱自在に取り付けられた外張出枠部と、
前記フレーム部の上側に向けて張り出された上張出枠部と、
前記フレーム部の下側に向けて張り出され、前記フロントサイドフレームの下側に取り付けたサブフレームに着脱自在に取り付けられた下張出枠部と、
を有し、
前記フレーム部、前記内外の張出枠部および前記上下の張出枠部で断面略十字形を形成することを特徴とする請求項1記載の車両用エネルギー吸収部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−183946(P2008−183946A)
【公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−17026(P2007−17026)
【出願日】平成19年1月26日(2007.1.26)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】