説明

車両用サイドミラー

【課題】ベース部材及びミラーハウジングの両方に樹脂製の凸部を設け、これら凸部をプレートで覆うようにする場合に、プレート同士が固着しないようすることで回動時に異音の発生を抑制するとともにプレートの割れを抑制する。
【解決手段】格納ユニットは、樹脂製の固定軸と、ミラーハウジングに固定される樹脂製の駆動ケースとを備えている。固定軸には固定側凸部57が形成され、固定側凸部57を覆って保護するための固定側プレート60が取り付けられている。駆動ケースには可動側凸部71が形成され、可動側凸部71を覆って保護するための可動側プレート80が取り付けられている。固定側プレート60の接触面61aと、可動側プレート80の接触面81aとが線接触するように形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車等に取り付けられる車両用サイドミラーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両の側部には後方確認用のサイドミラーが取り付けられている。サイドミラーは、車両に固定されるベース部と、ミラーを保持するミラーハウジングと、ミラーハウジングをベース部に対して回動可能に連結して該ミラーハウジングを使用状態と格納状態とに切り替える格納ユニットとを備えている。
【0003】
格納ユニットは、例えば、特許文献1に開示されているように、ベース部に固定されるベース側部材と、ミラーハウジングに固定されるとともにモータ等を収容するケースとを備えている。ベース側部材には、支軸が設けられており、ベース側部材の支軸周りには、複数の固定側凸部が周方向に間隔をあけて設けられている。一方、ケースには、複数の可動側凸部が設けられている。
【0004】
ケースはバネによってベース側部材に接する方向に付勢されており、格納状態にあるとき、及び使用状態にあるときにベース側部材の固定側凸部と可動側凸部とが係合する。この状態からミラーハウジングを例えば手で動かす場合には、バネの付勢力に抗してケース側の可動側凸部がベース側部材の固定側凸部を乗り越えるように移動し、これによりミラーハウジングが回動可能となる。
【0005】
特許文献1では、ベース側部材の固定側凸部が金属製で、ケースの可動側凸部が樹脂製とされており、ケースの可動側凸部を金属製のプレートで被覆することによって固定側凸部との摺接による損傷を防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−287594号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、サイドミラーの軽量化のためにベース側部材を樹脂製にしたいという要求がある。この場合、ベース側部材の固定側凸部も樹脂製となるので、ケースの可動側凸部との摺接の際に損傷する懸念がある。そこで、ベース側部材の固定側凸部もケース側の可動側凸部と同様に金属製のプレートで被覆することが考えられる。
【0008】
しかしながら、このようにした場合には、上記したようにケースはバネによってベース側部材に接する方向に付勢されているので、ケース側の可動側プレートがベース側部材の固定側プレートに強く面接触することになり、可動側プレート及び固定側プレートが固着する恐れがある。両プレートが固着すると、ミラーハウジングを手で回動させようとした際に、ケース側の可動側プレートが移動し始めたとき、それに固着しているベース部材側の固定側プレートがつられて同方向に動こうとして固定側凸部から浮き上がるように弾性変形する。固定側プレートがある程度まで弾性変形すると固定側プレートの持つ復元力によって固定側プレートが可動側プレートから離れて勢いよく元の形状に復元する。この固定側プレートが復元した瞬間に固定側凸部に当たって異音が発生するという問題がある。
【0009】
また、固定側プレートが固定側凸部から浮き上がるように変形するということは、固定側プレートが無理に変形しているということであり、このようなな変形が何度も繰り返されると固定側プレートが割れることがある。
【0010】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ベース部材及びミラーハウジングの両方に樹脂製の凸部を設け、これら凸部をそれぞれ保護用のプレートで覆うようにする場合に、プレート同士が固着しないようすることで回動時に異音の発生を抑制するとともにプレートの割れを抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明では、両プレートを線接触させることによって固着するのを抑制するようにした。
【0012】
第1の発明は、車両に取り付けられるベース部と、ミラーが取り付けられるミラーハウジングと、上記ミラーハウジングを上記ベース部に回動可能に連結し、該ミラーハウジングを格納状態と使用状態とに切り替えるための格納ユニットとを備えた車両用サイドミラーにおいて、上記格納ユニットは、上記ベース部に固定される樹脂製の固定部材と、上記ミラーハウジングに固定されるとともに上記固定部材に回動可能に連結される樹脂製の可動部材と、該可動部材を上記固定部材に対し回動軸線方向に接近する方向に付勢するための付勢部材とを備え、上記固定部材における可動部材との対向面には、回動軸線方向に突出する固定側凸部が形成されるとともに、該固定側凸部を覆って保護するための固定側プレートが取り付けられ、上記可動部材における固定部材との対向面には、回動軸線方向に突出する可動側凸部が形成されるとともに、該可動側凸部を覆って保護するための可動側プレートが取り付けられ、上記可動側プレートにおける可動側凸部の側面を覆う部位が、上記付勢力により、上記固定側プレートにおける固定側凸部の側面を覆う部位に係合して上記ミラーハウジングの回動を阻止する一方、上記付勢力に抗して上記固定側凸部に乗り上がるように移動して上記ミラーハウジングの回動を許容するように構成され、上記固定側プレートにおける可動側プレートとの接触面と、上記可動側プレートにおける固定側プレートとの接触面とが線接触するように形成されていることを特徴とするものである。
【0013】
この構成によれば、ベース部に固定される固定部材の固定側凸部及びミラーハウジングに固定される可動部材の可動側凸部を樹脂製することでサイドミラーの軽量化が図られる。この場合に、固定側凸部が固定側プレートにより保護され、可動側凸部が可動側プレートにより保護されるので、両凸部の損傷が抑制される。
【0014】
そして、固定側プレート及び可動側プレートの両接触面が線接触しているので、付勢部材の付勢力により両接触面が圧接しても固着し難くなる。
【0015】
これにより、ミラーハウジングを回動させる際に可動側プレートが移動するとき、固定側プレートが可動側プレートにつられて動こうとすることはなく、可動側プレートが可動側凸部から浮き上がるのが抑制されるとともに、可動側プレートの無理な変形が抑制される。
【0016】
第2の発明は、第1の発明において、上記固定側プレートの接触面は、上記固定側凸部の側面を覆う平坦面で構成され、上記可動側プレートの接触面は、上記可動凹部の側面を覆う平坦面で構成され、回動軸線の径方向から見て、上記固定側プレートの接触面と上記可動側プレートの接触面との回動軸線に対する傾斜度合いが互いに相違していることを特徴とするものである。
【0017】
この構成によれば、固定側プレート及び可動側プレートの接触面を平坦面とすることで、両プレートの製造が容易に行えるようになり、この場合に、両接触面を固着し難くすることが可能になる。
【0018】
第3の発明は、第2の発明において、回動軸線の径方向から見て、上記固定側プレートの接触面の回動軸線に対する傾斜度合いが、上記可動側プレートの接触面の回動軸線に対する傾斜度合いよりも急となるように設定されていることを特徴とするものである。
【0019】
この構成によれば、固定側プレートの接触面が急な傾斜になることで、ミラーハウジングを回動させる際、可動側プレートの接触面が固定側プレートの接触面を乗り越えにくくなり、ミラーハウジングの状態が不意に切り替わってしまうのを抑制することが可能になる。また、異音の発生も抑制することが可能になる。
【発明の効果】
【0020】
第1の発明によれば、ベース部に固定される固定部材の固定側凸部及びミラーハウジングに固定される可動部材の可動側凸部を樹脂製としてサイドミラーの軽量化を図りながら、両凸部の損傷を抑制できる。そして、固定側プレート及び可動側プレートの両接触面を線接触させたことで、両接触面が固着し難くなり、これにより、ミラーハウジングの回動時に異音の発生を抑制できるとともに固定側プレートの割れを抑制することができる。
【0021】
第2の発明によれば、固定側プレート及び可動側プレートの接触面を平坦面で構成したので製造を容易に行うことができ、この場合に、固定側プレートの接触面と可動側プレートの接触面との回動軸線に対する傾斜角度を互いに相違させたので、両接触面を固着し難くして異音の発生及び固定側プレートの割れを抑制することができる。
【0022】
第3の発明によれば、固定側プレートの接触面の回動軸線に対する傾斜度合いを可動側プレートの接触面の回動軸線に対する傾斜度合いよりも急にしたので、異音の発生を抑制しながら、ミラーハウジングの状態が不意に切り替わってしまうのを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】実施形態にかかる車両用サイドミラーが取り付けられた車両の一部を示す斜視図である。
【図2】車両用サイドミラーを後方から見た図である。
【図3】車両用サイドミラーの分解斜視図である。
【図4】格納ユニットの部分断面図である。
【図5】格納ユニットの他の部分断面図である。
【図6】駆動機構を平面的に見た説明図である。
【図7】固定軸の平面図である。
【図8】駆動ケースの底面図である。
【図9】固定側プレートの斜視図である。
【図10】固定側プレートの平面図である。
【図11】図10におけるXI−XI線断面図である。
【図12】固定側プレートと可動側プレートとの接触部を示す部分断面図である。
【図13】可動側プレートの斜視図である。
【図14】可動側プレートの平面図である。
【図15】図14におけるXV−XV線断面図である。
【図16】ミラーハウジングが回動範囲を僅かに超えて回動した状態を示す図12相当図である。
【図17】ミラーハウジングが回動範囲を大きく超えて回動した状態を示す図12相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0025】
図1は、本発明の実施形態にかかる車両用サイドミラー1が取り付けられた車両の一部を示す斜視図である。このサイドミラー1は、運転者の後方確認のために用いられるものであり、フロントドアFのアウタパネルPに取り付けられる、いわゆるドアミラーである。
【0026】
尚、以下の説明では、右側のサイドミラー1について説明するが、左側のサイドミラーについては、右側のサイドミラー1と左右対称であることを除けば同様の構成であることから、その説明を省略する。
【0027】
また、この実施形態の説明では、説明の便宜を図るために、車両前側を単に「前」といい、また、車両後側を単に「後」といい、車幅方向左側を単に「左」といい、車幅方向右側を単に「右」というものとする。
【0028】
図2及び図3に示すように、サイドミラー1は、後方確認用のミラー2と、アウタパネルPに取り付けられるベース部3と、ミラー2が取り付けられるミラーハウジング4と、ミラー2の角度調整を行う角度調整ユニット5と、ミラーハウジング4を格納状態と使用状態とに切り替えるための格納ユニット6とを備えている。角度調整ユニット5はミラーハウジング4にその後側から組み付けられる一方、格納ユニット6はミラーハウジング4にその前側から組み付けられる。
【0029】
ミラー2は左右方向に長い形状とされていて、鏡面が平面で構成された、いわゆる平面鏡である。図示しないが、ミラー2の裏面にはヒーターが設けられている。
【0030】
ベース部3は、図示しない締結部材によってアウタパネルPに締結固定され、アウタパネルPへの固定状態で左斜め上方へ延びている。ベース部3の上端部には、格納ユニット6が固定されるようになっている。
【0031】
ベース部3とアウタパネルPとの間には、防水用のシールラバー21が配設されている。また、ベース部3の下側は、下部カバー22により覆われている。
【0032】
ミラーハウジング4は、ハウジング本体25と、上部バイザーB1と、下部バイザーB2とを備えている。ハウジング本体25、上部バイザーB1及び下部バイザーB2は樹脂材を成形してなるものである。
【0033】
ハウジング本体25は、ミラー2の形状に対応して左右方向に長い形状となっている。ハウジング本体25の後側には、ミラー2及び角度調整ユニット5を収容するための左右方向に長い凹部26が後方に開放するように形成されている。
【0034】
ハウジング本体25の周縁部には、前側へ向けて延びる周壁部27が設けられている。周壁部27の内面と凹部26の外面とは複数のリブ28により連結されている。
【0035】
ハウジング本体25の左端下部には、ベース部3の上部に沿って延びるように延出する延出板部30が形成されている。延出板部30の中央部近傍には、ベース部3の上部の突出部分が挿入される挿入孔30aが形成されている。
【0036】
延出板部30の上面には、格納ユニット6が固定されるようになっている。
【0037】
ハウジング本体25の後側には、上部バイザーB1及び下部バイザーB2から突出する爪(図示せず)を挿入して係合させるための複数の係合部32,32,…が設けられている。
【0038】
角度調整ユニット5は、ミラー2が固定されるミラーホルダー5aと、ホルダー駆動機構5bとを備えている。ミラーホルダー5aは、ホルダー駆動機構5bが有するピボット球を介してホルダー駆動機構5bに支持されている。また、ホルダー駆動機構5bは、ミラーハウジング4の凹部26の底壁部に締結固定されている。すなわち、ミラー2は、ミラーホルダー5a及びホルダー駆動機構5bと共にミラーハウジング4の凹部26内に収容され、この状態で、ホルダー駆動機構5bがミラーホルダー5aを傾動させることでミラーハウジング4に対して角度調整可能となっている。
【0039】
格納ユニット6は、車室内のボタン操作によってミラーハウジング4を格納状態と使用状態とに切り替えることができる、いわゆる電動格納ユニットである。
【0040】
格納状態とは、ミラーハウジング4の右端がフロントドアFのウインドガラスに接近してミラー2の鏡面が前後方向に延びる姿勢であり、また、使用状態とは、図 に示すようにミラーハウジング4の右端がウインドガラスから離れてミラー2の鏡面が左右方向に延びる姿勢である。
【0041】
図4や図6に示すように、格納ユニット6は、ベース部3に固定される樹脂製の固定軸(固定部材)40と、ミラーハウジング4に固定される樹脂製の駆動ケース(可動部材)41とを備えている。
【0042】
固定軸40の下部には、図7にも示すように、大径の取付座40aが設けられている。この取付座40aがベース部3に固定されている。固定軸40の取付座40aよりも上側は、上方へ延びる小径の円筒状部40bで構成されている。円筒状部40bは、駆動ケース41の底壁部に形成された貫通孔41a(図8に示す)を通り、図5や図6に示すように、該駆動ケース41の内部に収容されている。
【0043】
駆動ケース41の底壁部は、取付座40aの上面に対向するように配置されている。また、駆動ケース41は、円筒状部40bに対して回動可能に支持されている。円筒状部40bの中心線はミラーハウジング4の回動軸線X(図4に示す)となっている。
【0044】
駆動ケース41の内部には、ミラーハウジング4を駆動するための駆動機構が収容されている。駆動機構は、出力軸にウォームギヤからなる駆動ギヤ45が設けられた駆動モータ46と、図4及び図6に示すように駆動ギヤ46に噛み合う従動ギヤ47が基端部に設けられた回転軸48と、固定軸40の円筒状部40bの下端部に設けられたサンギヤ49とを有し、回転軸48の先端部には、サンギヤ49に噛み合うウォームギヤからなるプラネタリギヤ52が設けられている。そして、駆動ギヤ45に入力された駆動モータ46の出力は従動ギヤ47を介してプラネタリギヤ52に伝達されるようになっている。尚、駆動モータ46は、図示しない制御装置によって制御されるようになっている。
【0045】
また、図5に示すように、駆動ケース41の内部には、サンギヤ49及び駆動ケース40を下方へ付勢するコイルスプリングからなる付勢部材54が収容されている。この付勢部材54は、固定軸40の円筒状部40bを囲むように配置されている。
【0046】
円筒状部40bの外周面には、複数の歯58(図5に1つのみ示す)が周方向に間隔をあけて一体成形されている。歯58は上端に近づくほど細くなっている。
【0047】
図7に示すように、固定軸40の取付座40aの上面(駆動ケース41の底壁部に対向する面)には、一対の固定側凸部57が周方向に間隔をあけて一体成形されている。これら固定側凸部57,57は同じ形状であり、周方向に長く形成されている。図12にも示すように、各固定側凸部57の長手方向の両側面57a,57aは、上に向かって互いに接近するように、回動軸線Xに対し傾斜した平坦面で構成されている。つまり、固定側凸部57の長手方向の寸法は、上に行くほど(突出方向の先端面57bに近づくほど)短くなっている。また、先端面57bは、回動軸線Xの周方向に延びる平坦で構成されている。
【0048】
図4にも示すように、取付座40aの上面には、固定側プレート60が設けられている。固定側プレート60は、固定側凸部57,57を覆って保護するためのものであり、鋼板のプレス成形品である。
【0049】
図9及び図10に示すように、固定側プレート60の形状は、固定軸40の取付座40a上面に沿って延びるリング形状となっている。固定側プレート60の周方向の2箇所には、径方向外方へ突出して周方向に延びる延出板部61,61が形成されており、各延出板部61によって固定側凸部57を覆うようになっている。図11にも示すように、延出板部61は、固定側凸部57の側面57aに沿って延び、該側面57aと同じように傾斜する平坦な接触面61a,61aと、固定側凸部57の先端面57bに沿って延びる平坦面61bとを有している。
【0050】
図9にも示すように、固定側プレート60には、固定軸40の取付座40aに係合する突片62が設けられている。この突片62が取付座40aに係合することで、固定側プレート60の固定軸40に対する位置ずれが抑制されるようになっている。図12に示すように、回動軸線Xの径方向から見て、固定側プレート60の接触面61aの回動軸線Xに対する傾斜角度をαとする。
【0051】
また、図5に示すように、固定軸40の上部には、付勢部材54の上端部に係止するストッパ70が設けられている。付勢部材54の付勢力によりサンギヤ49が下方に付勢されることにより、サンギヤ49の内面が歯58に圧接されるようになっている。サンギヤ49の内面には、歯58に係合する凹凸形状が設けられており、付勢部材54による付勢力によってサンギヤ49と固定軸40とが係合して一体に回転するようになる。
【0052】
また、同図に示すように、サンギヤ49が下方に付勢されると、サンギヤ49の下面が駆動ケース41の底壁部内面に接触し、これにより、駆動ケース41が取付座40aの上面に接近する方向に付勢されることになる。
【0053】
図8に示すように、駆動ケース41の底壁部には、固定側凸部57に係合する一対の可動側凸部71,71が固定軸40周りに間隔をあけて一体成形されている。これら可動側凸部71,71は同じ形状であり、固定側凸部57と同様に周方向に長く形成されている。図12にも示すように、各可動側凸部71の長手方向の両側面71a,71aは、下に向かって互いに接近するように、回動軸線に対し傾斜した平坦面で構成されている。つまり、可動側凸部71の長手方向の寸法は、下へ行くほど(突出方向の先端面71bに近づくほど)短くなっている。また、先端面71bは、回動軸線Xの周方向に延びる平坦で構成されている。
【0054】
各可動側凸部71は、一対の固定側凸部57,57間で周方向に移動可能となっており、この移動可能な範囲は、固定側凸部57,57及び可動側凸部71,71の周方向の寸法、及び周方向の位置によって任意に調整することが可能である。
【0055】
図4に示すように、駆動ケース40の底壁部には、可動側プレート80が設けられている。可動側プレート80は、可動側凸部71,71を覆って保護するためのものであり、鋼板のプレス成形品である。
【0056】
図13及び図14に示すように、可動側プレート80の形状は、リング形状となっている。可動側プレート80の周方向の2箇所には、可動側凸部71の形状に対応して下方へ突出する突出部81,81が形成されている。各突出部81は、可動側凸部71の側面71aに沿って延び、該側面71aと同じように傾斜する平坦な接触面81a,81aと、可動側凸部71の先端面71bに沿って延びる平坦な先端面81bとを有している。
【0057】
可動側プレート80には、駆動ケース41の底壁部に係合する突片82が設けられている。この突片82が底壁部に係合することで、可動側プレート80の底壁部に対する位置ずれが抑制されるようになっている。
【0058】
図12に示すように、回動軸線Xの径方向から見て、可動側プレート80の接触面81aの回動軸線に対する傾斜角度をβとする。このβは、αとは異なる角度に設定されている。具体的には、βよりもαの方が小さく設定されており、これにより、固定側プレート60の接触面61aの傾斜度合いが、可動側プレート80の接触面81aの傾斜度合いよりも急になる。
【0059】
ミラーハウジング4が使用状態となった時点で 図12に示すように、可動側プレート80の周方向一側の接触面81aが固定側プレート60の接触面61aに接触して、それ以上の回動が規制され、一方、ミラーハウジング4が格納状態となった時点で 図示しないが、可動側プレート80の周方向他側の接触面81aが固定側プレート60の他の接触面61aに接触して、それ以上の回動が規制される。
【0060】
使用状態及び格納状態にあるミラーハウジング4を、この使用状態と格納状態との間の回動範囲を超える方向に一定値以上の外力が作用した場合には、付勢部材54による下向きの付勢力に抗して可動側プレート80の接触面81aが固定側プレート60の接触面61a上を摺接しながら上方へ移動していき(図16参照)、可動側プレート80の突出部81が固定側プレート60の平坦面61bに乗り上がる(図17参照)。
【0061】
また、サンギヤ49と固定軸40とは係合しているが、上記したミラーハウジング4の回動範囲を越える方向にミラーハウジング4を回動させていくと、一定値以上の外力が作用した場合には、上述の可動側プレート80の回動範囲を越えた移動が許容された後、サンギヤ49が付勢力に抗して上方へ移動して固定軸40の歯58との係合が解除されてサンギヤ49が固定軸40に対し回動可能となる。これにより、各部に無理な力がかからないようにすることができる。
【0062】
上記構成において、例えば格納状態にあるミラーハウジング4を使用状態に切り替える場合には、制御装置が駆動モータ46に対して正転するように通電する。このことで、駆動モータ46からプラネタリギヤ52に伝達された駆動力がサンギヤ49に入力する。これにより、サンギヤ49の外周面に沿ってプラネタリギヤ52を正方向に公転させる反力が作用し、この反力によってプラネタリギヤ52とともに、駆動ケース41及びミラーハウジング4が使用状態となるまで回動する。
【0063】
ミラーハウジング4が使用状態になると、図12に示すように可動側プレート80の周方向一側の接触面81aが固定側プレート60の接触面61aに接触して、それ以上の回動が規制される。この回動が規制されたことを、駆動モータ46の制御装置が検知すると駆動モータ46への通電が停止される。これにより、ミラーハウジング4が使用状態で保持される。
【0064】
また、使用状態にあるミラーハウジング4を格納状態に切り替える場合には、制御装置が駆動モータ46に対して逆転するように通電する。これにより、逆転した駆動モータ46からプラネタリギヤ52に伝達された駆動力がサンギヤ49に入力し、サンギヤ49の外周面に沿ってプラネタリギヤ52を逆方向に公転させる反力が作用し、この反力によってプラネタリギヤ52とともに、駆動ケース41及びミラーハウジング4が格納状態となるまで回動する。
【0065】
ミラーハウジング4が格納状態になると、可動側プレート80の周方向他側の接触面81aが固定側プレート60の他の接触面61aに接触して、それ以上の回動が規制される。この回動が規制されたことを、駆動モータ46の制御装置が検知すると駆動モータ46への通電が停止される。これにより、ミラーハウジング4が格納状態で保持される。
【0066】
使用状態及び格納状態では、駆動モーター46による周方向の駆動力及び付勢部材54による下向きの付勢力により、可動側プレート80の接触面81aが固定側プレート60の接触面61aに圧接することになる。
【0067】
このとき、図12に示すように、固定側プレート60の接触面61aの傾斜角度αと、可動側プレート80の接触面81aの傾斜角度βとが異なっていて接触面61aと接触面81aとが平行になってないので、両接触面61a,81aは面接触することなく、線接触する。これにより、接触面61aと接触面81aとが固着し難くなる。
【0068】
従って、例えば、ミラーハウジング4に対して回動範囲を超える方向に大きな外力が作用して、付勢部材54の付勢力に抗して可動側プレート80の接触面81aが回動軸線Xの周方向に移動しようとするとき、固定側プレート60の接触面61aから離れやすく、図16に示すように、接触面61a上を摺接しながら上方へ移動していく。このため、固定側プレート60の接触面61aが可動側プレート80の動きにつられて動こうとすることはなく、固定側プレート60が固定側凸部57から浮き上がるのが抑制されるとともに、固定側プレート60の無理な変形が抑制される。
【0069】
そして、図17に示すように、可動プレート80の突出部81が固定プレート60の平坦面61b(固定側凸部57)に乗り上がって駆動ケース41が押し上げられて回動が許容される。これにより、格納ユニット6の破損が防止される。
【0070】
以上説明したように、この実施形態にかかる車両用サイドミラー1によれば、ベース部3に固定される固定軸40の固定側凸部57及びミラーハウジング4に固定される駆動ケース41の可動側凸部71を樹脂製としてサイドミラー1の軽量化を図りながら、両凸部57,71をそれぞれ固定側及び可動側プレート60,80で覆って保護するようにしたので両凸部57,71の損傷を抑制できる。そして、固定側プレート60及び可動側プレート80の両接触面61a,81aを線接触させたことで、両接触面61a,81aが固着し難くなり、これにより、ミラーハウジング4の回動時に異音の発生を抑制できるとともに固定側プレート60の割れを抑制することができる。
【0071】
また、固定側プレート60及び可動側プレート80の接触面61a,81aを平坦面で構成したので両プレート60,80を容易に製造することができる。この場合に、固定側プレート60の接触面61aと可動側プレート80の接触面81aとの回動軸線Xに対する傾斜角度を互いに相違させるという簡単な構成で両接触面61a,81aを固着し難くすることができる。
【0072】
また、固定側プレート60の接触面61aの回動軸線Xに対する傾斜度合いを可動側プレート80の接触面81aの回動軸線Xに対する傾斜度合いよりも急にしたので、ミラーハウジング4の位置が不意に切り替わってしまうのを抑制できるとともに、接触面61aと接触面81aとが引っ掛かりにくくなり、異音の発生を抑制できる。
【0073】
また、本発明は、実施形態に限定されず、その精神又は主要な特徴から逸脱することなく他の色々な形で実施することができる。
【0074】
上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0075】
以上説明したように、本発明にかかる車両用サイドミラーは、例えば格納ユニットを備えたサイドミラーに有用である。
【符号の説明】
【0076】
1 車両用サイドミラー
2 ミラー
3 ベース部
4 ミラーハウジング
5 角度調整ユニット
6 格納ユニット
40 固定軸(固定部材)
41 駆動ケース(可動部材)
54 付勢部材
57 固定側凸部
60 固定側プレート
61a 接触面
71 可動側凸部
80 可動側プレート
81a 接触面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に取り付けられるベース部と、
ミラーが取り付けられるミラーハウジングと、
上記ミラーハウジングを上記ベース部に回動可能に連結し、該ミラーハウジングを格納状態と使用状態とに切り替えるための格納ユニットとを備えた車両用サイドミラーにおいて、
上記格納ユニットは、上記ベース部に固定される樹脂製の固定部材と、上記ミラーハウジングに固定されるとともに上記固定部材に回動可能に連結される樹脂製の可動部材と、該可動部材を上記固定部材に対し回動軸線方向に接近する方向に付勢するための付勢部材とを備え、
上記固定部材における可動部材との対向面には、回動軸線方向に突出する固定側凸部が形成されるとともに、該固定側凸部を覆って保護するための固定側プレートが取り付けられ、
上記可動部材における固定部材との対向面には、回動軸線方向に突出する可動側凸部が形成されるとともに、該可動側凸部を覆って保護するための可動側プレートが取り付けられ、
上記可動側プレートにおける可動側凸部の側面を覆う部位が、上記付勢力により、上記固定側プレートにおける固定側凸部の側面を覆う部位に係合して上記ミラーハウジングの回動を阻止する一方、上記付勢力に抗して上記固定側凸部に乗り上がるように移動して上記ミラーハウジングの回動を許容するように構成され、
上記固定側プレートにおける可動側プレートとの接触面と、上記可動側プレートにおける固定側プレートとの接触面とが線接触するように形成されていることを特徴とする車両用サイドミラー。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用サイドミラーにおいて、
上記固定側プレートの接触面は、上記固定側凸部の側面を覆う平坦面で構成され、
上記可動側プレートの接触面は、上記可動凹部の側面を覆う平坦面で構成され、
回動軸線の径方向から見て、上記固定側プレートの接触面と上記可動側プレートの接触面との回動軸線に対する傾斜度合いが互いに相違していることを特徴とする車両用サイドミラー。
【請求項3】
請求項2に記載の車両用サイドミラーにおいて、
回動軸線の径方向から見て、上記固定側プレートの接触面の回動軸線に対する傾斜度合いが、上記可動側プレートの接触面の回動軸線に対する傾斜度合いよりも急となるように設定されていることを特徴とする車両用サイドミラー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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