説明

車両用シート装置

【課題】シートクッションの幅方向外側面にウエビング巻取装置の搭載スペースを確保できない車両に対してもラップベルトをウエビング巻取装置で巻き取ることができる車両用シートを提供する。
【解決手段】車両用シート装置10では、シートクッション16の右側のサイドサポート部16Bが内部空間を有しており、この内部空間内には、ラップベルト20Bの長手方向一端部が係止されたウエビング巻取装置36が収容されている。したがって、この車両用シート装置10では、シートクッション16の幅方向外側面(車体側部22Aとシートクッション16との間など)にウエビング巻取装置36の搭載スペースを確保できない車両に対してもラップベルト20Bをウエビング巻取装置36で巻き取ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シート装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、着座乗員の腰部を拘束するラップベルトが、シートクッションの車幅方向外側の側面に取り付けられたウエビング巻取装置に巻き取られる構成の車両用シートが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−223536号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の如き車両用シートでは、シートクッションと車体側部との間にリトラクタを配置する為の搭載スペースが必要であり、車両によっては搭載スペースの確保が困難な場合がある。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、シートクッションの幅方向外側面にウエビング巻取装置の搭載スペースを確保できない車両に対してもラップベルトをウエビング巻取装置で巻き取ることができる車両用シートを提供することが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明に係る車両用シート装置は、幅方向中央部で着座乗員の尻部を支持すると共に、幅方向両側部が幅方向中央部よりも上方側へ膨出したサイドサポート部とされ、幅方向一側の前記サイドサポート部が内部空間を有し、当該サイドサポート部における着座乗員と対向する部位に前記内部空間に連通した開口部が形成されたシートクッションと、前記開口部に装着されると共に、前記内部空間と外部を連通させるスリット状のウエビング挿通孔が形成されたウエビングガイド部材と、前記内部空間内に収容されたウエビング巻取装置と、長手方向一端部が前記ウエビング巻取装置に係止されると共に、長手方向中間部が前記ウエビング挿通孔に挿通され、長手方向他端部が前記シートクッションの幅方向他側で前記シートクッション又は車体に係止されることにより着座乗員の腰部を拘束するラップベルトと、を備えている。
【0007】
請求項1に記載の車両用シート装置では、シートクッションの幅方向一側のサイドサポート部が内部空間を有しており、この内部空間内には、ラップベルトの長手方向一端部が係止されたウエビング巻取装置が収容されている。したがって、この車両用シート装置では、シートクッションの幅方向外側面にウエビング巻取装置の搭載スペースを確保できない車両に対してもラップベルトをウエビング巻取装置で巻き取ることができる。
【0008】
しかも、幅方向一側のサイドサポート部における着座乗員と対向する部位には、上記内部空間に連通した開口部が形成されており、この開口部に装着されたウエビングガイド部材には、ラップベルトの長手方向中間部が挿通されるウエビング挿通孔が形成されている。これにより、長手方向一端部がウエビング巻取装置に係止され、長手方向他端部がシートクッションの幅方向他側でシートクッション又は車体に係止されるラップベルトを、最短経路で着座乗員の腰部に巻き掛けることができるため、ラップベルトによる着座乗員の拘束性を向上させることができる。
【0009】
請求項2に記載の発明に係る車両用シート装置は、請求項1に記載の車両用シート装置において、前記シートクッションは、クッションパッドを下側から支持するクッションパンと、前記クッションパッドの表面を覆うシート表皮とを備え、前記開口部は、前記クッションパンに形成された第1開口部と、前記クッションパッドに形成された第2開口部と、前記シート表皮に形成された第3開口部とによって構成され、前記ウエビングガイド部材は、前記ウエビングガイド部材が前記シートクッションの外側から前記開口部に装着されることにより前記第1開口部の前記周縁部に引っ掛かる係止爪を有することを特徴としている。
【0010】
請求項2に記載の車両用シート装置では、ウエビングガイド部材がシートクッションの外側から開口部に装着されると、ウエビングガイド部材に設けられた係止爪が、クッションパンに形成された第1開口部の孔縁部に引っ掛かる。これにより、ウエビングガイド部材をクッションパンすなわちシートクッションに係止することができるため、シートクッションへのウエビングガイド部材の組付作業を容易なものにすることができる。
【0011】
請求項3に記載の発明に係る車両用シート装置は、請求項2に記載の車両用シート装置において、前記第1開口部の周縁部は、前記第2開口部の内方側へ突出すると共に、当該突出部と前記ウエビングガイド部材に設けられたフランジ部との間で前記第3開口部の周縁部が挟持されていることを特徴としている。
【0012】
請求項3に記載の車両用シート装置では、クッションパンに形成された第1開口部の周縁部が、クッションパッドに形成された第2開口部の内方側へ突出している。そして、この突出部とウエビングガイド部材に設けられたフランジ部との間には、シート表皮に形成された第3開口部の周縁部が挟持されている。つまり、ウエビングガイド部材のフランジ部と、上記突出部(クッションパン)との間にはクッションパッドが介在していないため、クッションパッドの変形によってクッションパンへのウエビングガイド部材の係止状態(クッションパンに対する係止爪の引っ掛かり状態)が不安定になることを防止できる。したがって、ウエビングガイド部材が開口部から不要に外れることを防止できる。
【0013】
請求項4に記載の発明に係る車両用シート装置は、請求項2又は請求項3に記載の車両用シート装置において、前記ウエビングガイド部材は、自らの高さ方向に沿って前記開口部に装着されると共に、前記ウエビング挿通孔を介して互いに反対側へ突出した一対の前記係止爪を有し、当該一対の係止爪は、前記ウエビングガイド部材の高さ方向にずれて配置されていることを特徴としている。
【0014】
請求項4に記載の車両用シート装置では、ウエビングガイド部材が開口部に装着される際には、ウエビング挿通孔を介して互いに反対側へ突出した一対の係止爪が、クッションパンの第1開口部の周縁部に当たって撓んだ後に第1開口部の周縁部に引っ掛かる。このとき、一対の係止爪は、ウエビング挿通孔を狭めるように撓むが、この発明では、一対の係止爪がウエビングガイド部材の高さ方向、すなわちウエビングガイド部材の開口部への装着方向にずれて配置されているため、一対の係止爪は交互に撓む。したがって、一対の係止爪が同時に撓むためのスペースを確保するために、ウエビング挿通孔の幅寸法を拡大する必要がない。これにより、ウエビング挿通孔の幅寸法を小さく設定することができるため、ウエビング挿通孔の内周部とラップベルトとの間の隙間から内部空間内へゴミなどが侵入することを抑制できる。
【0015】
請求項5に記載の発明に係る車両用シート装置は、請求項1〜4の何れか1項に記載の車両用シート装置において、前記ウエビング挿通孔への前記ラップベルトの挿通方向に沿った前記ウエビングガイド部材の高さ方向の一端部には、前記開口部の周縁部に対して前記シートクッションの外側から係合するフランジ部が設けられると共に、前記ウエビングガイド部材の前記高さ方向の寸法は、前記開口部の幅寸法よりも狭く設定されていることを特徴としている。
【0016】
請求項5に記載の車両用シート装置では、ウエビングガイド部材がシートクッションの開口部の周縁部に係合するフランジ部を有しているため、ウエビングガイド部材を開口部に対してその装着姿勢のままで挿通させようとしても、フランジ部が邪魔になり挿通させることができないが、ウエビングガイド部材の高さ方向が開口部の幅方向に沿うようにウエビングガイド部材を傾けることにより、ウエビングガイド部材が開口部を挿通可能となる。したがって、例えば、ラップベルト及びウエビングガイド部材が組み付けられたウエビング巻取装置を、シートクッションの内部空間に収容した後でも、開口部を介してラップベルト及びウエビングガイド部材をシートクッションの外側へ引き出すことができ、開口部に対してシートクッションの外側からウエビングガイド部材を装着することができる。これにより、本車両用シート装置の製造作業を容易なものにすることができる。また、開口部を狭めることができるため、結果としてウエビングガイド部材のフランジ部の幅寸法を小さくすることができ、ウエビングガイド部材を小型化することができる。したがって、開口部に装着されたウエビングガイド部材が、着座乗員に干渉することを抑制できる。
【0017】
請求項6に記載の発明に係る車両用シート装置は、請求項2〜5の何れか1項に記載の車両用シート装置において、前記シート表皮の前記第3開口部の周縁部には、布部材が縫製され、当該布部材は、前記開口部を介して前記内部空間内へ挿入されると共に、前記クッションパンに設けられたリブに巻き掛けられてクリップにより係止されていることを特徴としている。
【0018】
請求項6に記載の車両用シート装置では、シート表皮の第3開口部の周縁部に縫製された布部材が、クッションパンに設けられたリブに巻き掛けられてクリップにより係止されるため、第3開口部の周縁部を容易にクッションパンに係止することができる。
【0019】
請求項7に記載の発明に係る車両用シート装置は、請求項6に記載の車両用シート装置において、前記クリップは、金属製の金属クリップと、前記金属クリップの外側に装着された樹脂製の樹脂クリップとを有することを特徴としている。
【0020】
請求項7に記載の車両用シート装置では、シート表皮の第3開口部の周縁部に縫製された布部材が、金属クリップによってクッションパンのリブに係止されると共に、当該金属クリップの外側に樹脂クリップが装着されている。したがって、金属クリップによって布部材をリブに強固に係止することができると共に、樹脂クリップによって金属クリップの係止力を増加させつつ金属クリップとラップベルトとの接触を防止できる。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように、請求項1に記載の発明に係る車両用シート装置では、シートクッションの幅方向外側面にウエビング巻取装置の搭載スペースを確保できない車両に対してもラップベルトをウエビング巻取装置で巻き取ることができる。
【0022】
請求項2に記載の発明に係る車両用シート装置では、シートクッションへのウエビングガイド部材の組付作業を容易なものにすることができる。
【0023】
請求項3に記載の発明に係る車両用シート装置では、ウエビングガイド部材が開口部から不要に外れることを防止できる。
【0024】
請求項4に記載の発明に係る車両用シート装置では、ウエビング挿通孔の幅寸法を小さく設定することができ、これにより、ウエビング挿通孔の内周部とラップベルトとの間の隙間から内部空間内へゴミなどが侵入することを抑制できる。
【0025】
請求項5に記載の発明に係る車両用シート装置では、その製造作業を容易なものにすることができると共に、ウエビングガイド部材を小型化することができ、ウエビングガイド部材が着座乗員に干渉することを抑制できる。
【0026】
請求項6に記載の発明に係る車両用シート装置では、シート表皮の第3開口部の周縁部を容易にクッションパンに係止することができる。
【0027】
請求項7に記載の発明に係る車両用シート装置では、金属クリップによって布部材をリブに強固に係止することができると共に、樹脂クリップによって金属クリップの係止力を増加させつつ金属クリップとラップベルトとの接触を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施形態に係る車両用シート装置の構成を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施形態に係る車両用シート装置が搭載された車両の部分的な構成を示す概略的な縦断面図であり、この車両用シート装置を構成する車両用シートを正面側から見た図である。
【図3】本発明の実施形態に係る車両用シート装置が搭載された車両の部分的な構成を示す概略的な縦断面図であり、この車両用シート装置を構成する車両用シートを側面側から見た図である。
【図4】図4に対応した縦断面図であり、エアベルトが膨張した状態を説明するための図である。
【図5】本発明の実施形態に係る車両用シート装置の構成部材であるシートクッションの一部を切断した状態で示す拡大縦断面図である。
【図6】本発明の実施形態に係る車両用シート装置の構成部材であるシートクッションの部分的な構成を示す側面図である。
【図7】図5の一部を拡大した拡大縦断面図である。
【図8】本発明の実施形態に係る車両用シート装置の構成部材であるベゼルの斜視図である。
【図9】本発明の実施形態に係る車両用シート装置の構成部材であるベゼルの背面図である。
【図10】本発明の実施形態に係る車両用シート装置の構成部材であるシートクッションのクッションパンに形成された第1開口部をクッションパンの裏側から見た図である。
【図11】本発明の実施形態に係る車両用シート装置の構成部材であるラップベルトとブラケットの平面図である。
【図12】本発明の実施形態に係る車両用シート装置のシートクッションの開口部にラップベルトを挿通させる際の状況を説明するための図である。
【図13】本発明の実施形態に係る車両用シート装置のシートクッションの開口部にベゼルを挿通させる際の状況を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図1〜図13を参照して、本発明の実施形態に係る車両用シート装置10について説明する。なお、各図に適宜記す矢印FR、矢印UP、矢印OUT、矢印INは、それぞれ車両用シート装置10が適用された車両11(図2参照)の前方向、上方向、車幅方向外側、車幅方向内側を示している。
【0030】
図1〜図4に示されるように、本車両用シート装置10は、車両用シート12と、シートベルト装置14とによって構成されている。車両用シート12は、本実施形態では、車両の右側に搭載された運転席であり、着座乗員Pの尻部を支持するシートクッション16と、着座乗員Pの背部を支持するシートバック18とを備えている。なお、車両用シート12の前方向、上方向、幅方向一側(右側)、幅方向他側(左側)は、車両11の前方向、上方向、車幅方向外側、車幅方向内側と略一致している。
【0031】
シートベルト装置14は、所謂3点式シートベルト装置であり、着座乗員Pを拘束するウエビングベルト20を有している。このウエビングベルト20は、着座乗員Pの上半身を拘束するショルダベルト20Aと、着座乗員Pの腰部を拘束するラップベルト20Bとが分割されている。
【0032】
ショルダベルト20Aの長手方向一端部は、シートバック18の後方側でアッパバックパネル22Bに取り付けられたウエビング巻取装置(リトラクタ)24の巻取軸に係止されている。このウエビング巻取装置24は、フォースリミッタを搭載している。ショルダベルト20Aの長手方向中間部は、シートバック18の後方側で車体22に支持された巻掛部材26(スリップジョイント)に巻き掛けられると共に、シートバック18のヘッドレスト部18Aの車幅方向外側でシートバック18に取り付けられたベルトガイド28に挿通されており、ショルダベルト20Aの長手方向他端部は、タングプレート30に係止されている。このタングプレート30は、シートクッション16の幅方向他側(左側)の側面に取り付けられたバックル32に連結可能とされており、当該連結状態では、着座乗員Pの上半身がショルダベルト20Aによって拘束される。
【0033】
ショルダベルト20Aの一部は、エアベルト34によって構成されている。このエアベルト34は、内部に設けられ図示しないエアバックがインフレータからのガス供給を受けて膨張されることにより膨張、展開されるようになっている(図2の二点鎖線および図4参照)。なお、図示は省略するが、この実施形態におけるインフレータは、バックル32側に設けられており、フレキシブルホース、バックル32、タングプレート30を介してエアベルト34(上記エアバック)にガスを供給するようになっている。このインフレータは、例えば車両の前面衝突(の不可避)及び側面衝突(の不可避)が検出又は予測された場合に、図示しないECUによって作動され、エアベルト34にガスを供給するようになっている。
【0034】
一方、図1及び図2に示されるように、ラップベルト20Bの長手方向一端部は、シートクッション16の幅方向一側(右側)の側部に設けられたウエビング巻取装置(リトラクタ)36の巻取軸に係止されている。このウエビング巻取装置36は、プリテンショナ機構及びALR機構を搭載している。ラップベルト20Bの長手方向他端部は、前述したタングプレート30に係止されており、タングプレート30がバックル32に連結されることにより、着座乗員Pの腰部がラップベルト20Bによって拘束される。
【0035】
ここで、本実施形態では、上述のシートクッション16は、図5に示されるように、クッションパッド38を下側から支持する樹脂製のクッションパン40と、クッションパッド38の表面を覆うシート表皮42とを備えている。また、シートクッション16は、図1及び図2に示されるように、幅方向中央部が着座乗員の尻部を支持する中央サポート部16Aとされ、幅方向両側部が幅方向中央部よりも上方側へ膨出したサイドサポート部16B、16Cとされている。これらのサイドサポート部16B、16Cは、着座乗員の尻部及び大腿部に対して側方から対向し、シートクッション16に対する着座乗員の車幅方向への位置ズレを抑制する。
【0036】
シートクッション16の幅方向一側(右側)に設けられたサイドサポート部16Bは、図5に示されるように、内部空間44を有しており、この内部空間44内には前述したウエビング巻取装置36が収容されている。このウエビング巻取装置36は、ブラケット46を介して車両用シート12のスライドレール48に連結されており、図6に示されるように車両後方側へ傾斜した状態で配置されている。
【0037】
また、図5に示されるように、このサイドサポート部16Bは、着座乗員Pに対向する部位が傾斜面S(所謂カマチ部)とされており、当該傾斜面Sには内部空間44に連通した開口部50が形成されている。この開口部50は、図7に示されるように、クッションパン40に形成された第1開口部40Aと、クッションパッド38に形成された第2開口部38Aと、シート表皮42に形成された第3開口部42Aとによって構成されており、車両前後方向(シート前後方向)に沿って長尺に形成されている。
【0038】
クッションパン40の第1開口部40Aは、クッションパッド38の第2開口部38Aよりも小さく形成されており、第1開口部40Aの周縁部は、第2開口部38Aの内方側へ突出した突出部40Bとされている。また、シート表皮42の第3開口部42Aの周縁部には、布部材52が縫製されており、この布部材52は、第1開口部40Aを介して内部空間44内に挿入されている。内部空間44内に挿入された布部材52は、クッションパン40の裏側に設けられたリブ40Cに巻き掛けられており、当該巻き掛け部分が金属製の金属クリップ54によって係止されている。金属クリップ54の外側には、更に樹脂製の樹脂クリップ56が装着されており、この樹脂クリップ56によって金属クリップ54が覆われている。
【0039】
上述の開口部50には、ウエビングガイド部材としてのベゼル58が装着されている。このベゼル58は、図8及び図9に示されるように、長尺な枠状に形成されており、長手方向が開口部50の長手方向に沿う状態で開口部50の内側に配置されている。
【0040】
ベゼル58の高さ方向一端部(開口部50に装着された状態での上端側)には、フランジ部58Dが形成されている。このフランジ部58Dは、シートクッション16の外側から開口部50の周縁部に引っ掛かっており、クッションパン40の第1開口部40Aの周縁部(上記突出部40B)との間で、シート表皮42の第3開口部42Aの周縁部を挟持している。
【0041】
また、ベゼル58の高さ方向他端部(開口部50に装着された状態での下端側)には、ベゼル58の短手方向に並んだ一対の係止爪58B、58Cが、ベゼル58の長手方向に並んで複数(ここでは二組)設けられている。一対の係止爪58B、58Cは、ウエビング挿通孔58Aを介して互いに反対側へ突出すると共に、ベゼル58の高さ方向(開口部50へのベゼル58の装着方向。図7の矢印A方向)に互いにずれて(オフセットして)配置されている。
【0042】
これらの係止爪58B、58Cは、クッションパン40の突出部40Bに設けられた複数(ここでは一対二組)の係止突部40D、40E(図10参照)の下端縁に引っ掛かっている(図7参照)。これにより、ベゼル58がクッションパン40に係止されている。なお、図7に示されるように、上述の係止突部40D、40Eは、布部材52に形成された貫通孔52Aを介して第1開口部40Aの内方側へ突出している。
【0043】
さらに、このベゼル58には、開口部50の長手方向(ベゼル58の長手方向)に沿ったスリット状のウエビング挿通孔58Aが形成されている。このウエビング挿通孔58Aは、ベゼル58をその高さ方向に沿って貫通している。このウエビング挿通孔58Aには、上述したラップベルト20Bの長手方向中間部が挿通されている。なお、ウエビング挿通孔58Aへのラップベルト20Bの挿通方向は、ベゼル58の高さ方向及び開口部50へのベゼル58の装着方向(図7の矢印A方向)に沿っている(図7では説明の都合上、ラップベルト20Bの図示を省略してある)。
【0044】
ここで、上述のベゼル58は、ウエビング巻取装置36の製造段階において、長手方向一端部がウエビング巻取装置36の巻取軸に係止されたラップベルト20Bが、長手方向他端側からウエビング挿通孔58Aに挿通されると共に、ラップベルト20Bの長手方向他端部にブラケット60(図11及び図12参照)が取り付けられることにより、ラップベルト20Bに組み付けられる構成になっている。このブラケット60は、ラップベルト20Bの長手方向他端部を前述したタングプレート30に係止するために、タングプレート30にボルトにより締結されるものである。また、ラップベルト20Bの長手方向他端部は、ブラケット60に形成された挿通孔60Aに挿通され、挿通孔60Aの孔縁部に巻き掛けられると共に、当該巻き掛け前後の部分が縫製されることによりブラケット60に連結される。
【0045】
そして、本車両用シート装置10の製造段階では、ウエビング巻取装置36がシートクッション16の内部空間44内に搭載された後で、開口部50を介してブラケット60がラップベルト20B及びベゼル58と共にシートクッション16の外側へ引き出される。この場合、開口部50において最も狭幅な部分の幅寸法W1(図12参照)は、ブラケット60へのラップベルト20Bの巻き掛け部分の厚さ寸法T1(図12参照)、及び、ベゼル58の高さ方向寸法にラップベルト20Bの厚さ寸法を加えた寸法T2(図13参照)よりも僅かに広く形成されている。なお、ベゼル58の高さ方向一端部(フランジ部58D側の端部)の幅寸法W2は、上記の幅寸法W1よりも大きく設定されている。
【0046】
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0047】
上記構成の車両用シート装置10では、シートクッション16の右側(車幅方向外側)のサイドサポート部16Bが内部空間44を有しており、この内部空間44内には、ラップベルト20Bの長手方向一端部が係止されたウエビング巻取装置36が収容されている。したがって、この車両用シート装置10では、シートクッション16の幅方向外側面(車体側部22Aとシートクッション16との間など)にウエビング巻取装置36の搭載スペースを確保できない車両に対してもラップベルト20Bをウエビング巻取装置36で巻き取ることができる。
【0048】
しかも、幅方向一側のサイドサポート部16Bにおける着座乗員Pと対向する部位(傾斜面S)には、内部空間44に連通した開口部50が形成されており、この開口部50に装着されたベゼル58には、ラップベルト20Bの長手方向中間部が挿通されるウエビング挿通孔58Aが形成されている。これにより、長手方向一端部がウエビング巻取装置36に係止され、長手方向他端部がシートクッションの幅方向他側でバックル32に係止されるラップベルト20Bを、最短経路で着座乗員Pの腰部に巻き掛けることができるため、ラップベルト20Bによる着座乗員の拘束性を向上させることができる。
【0049】
なお、ウエビング巻取装置36がシートクッション16の側面に取り付けられている場合や、ラップベルト20Bがシートクッション16の側面に形成された開口部から引き出される構成の場合には、ウエビング巻取装置36と着座乗員Pとの間のラップベルト20Bの一部がサイドサポート部16Bの頂部に巻き掛けられるため、サイドサポート部16B(クッションパッド38)が撓むことにより、ラップベルト20Bの拘束力が僅かに変化するが、本車両用シート装置10では、サイドサポート部16Bの撓みによる影響がなく好適である。
【0050】
また、本車両用シート装置10では、ベゼル58がシートクッション16の外側から開口部50に装着されると、ベゼル58に設けられた係止爪58B、58Cが、クッションパン40の第1開口部40Aの孔縁部に形成された係止突部40D、40Eに引っ掛かる。これにより、ベゼル58をクッションパン40すなわちシートクッション16に係止することができるため、ベゼル58が開口部50から不要に外れることを防止できる。しかも、シートクッション16へのベゼル58の組付作業が容易である。
【0051】
さらに、本車両用シート装置10では、クッションパン40に形成された第1開口部40Aの周縁部が、クッションパッド38に形成された第2開口部38Aの内方側へ突出した突出部40Bとされており、この突出部40Bとベゼル58のフランジ部58Dとの間に、シート表皮42の第3開口部42Aの周縁部が挟持されている。つまり、ベゼル58のフランジ部58Dと突出部40B(クッションパン40)との間にはクッションパッド38が介在していないため、クッションパッド38の変形によってクッションパン40へのベゼル58の係止状態(係止突部40D、40Eに対する係止爪58B、58Cの引っ掛かり状態)が不安定になることを防止できる。したがって、ベゼル58が開口部50から不要に外れることを防止できる。
【0052】
また、本車両用シート装置10では、ベゼル58が開口部50に装着される際には、ウエビング挿通孔58Aを介して互いに反対側へ突出した一対の係止爪58B、58Cが、クッションパン40の係止突部40D、40Eに当たって撓んだ後に係止突部40D、40Eの下端縁に引っ掛かる。このとき、一対の係止爪58B、58Cは、ウエビング挿通孔58Aを狭めるように撓むが、本車両用シート装置10では、一対の係止爪58B、58Cがベゼル58の高さ方向、すなわちベゼル58の開口部50への装着方向(図7の矢印A方向)にずれて配置されているため、一対の係止爪58B、58Cは交互に撓む。したがって、一対の係止爪58B、58Cが同時に撓むためのスペースを確保するために、ウエビング挿通孔58Aの幅寸法W3(図12参照)を拡大する必要がない。これにより、ウエビング挿通孔58Aの幅寸法W3を小さく設定することができるため、ウエビング挿通孔58Aの内周部とラップベルト20Bとの間の隙間から内部空間44内へゴミなどが侵入することを抑制できる。
【0053】
さらに、本車両用シート装置10では、ベゼル58が開口部50の周縁部に係合するフランジ部58Dを有しているため、ベゼル58を開口部50に対してその装着姿勢のままで挿通させようとしても、フランジ部58Dが邪魔になり挿通させることができないが、図13に示される如くベゼル58の高さ方向が開口部50の幅方向に沿うようにベゼル58を傾けることにより(図7を用いて表現すると、脚が短い方の係止爪58Bを脚が長い方の係止爪58C側へ倒す方向へ傾けることにより)、ベゼル58が開口部50を挿通可能となる。したがって、ラップベルト20B及びベゼル58が組み付けられたウエビング巻取装置36を、シートクッション16の内部空間44内に収容した後でも、開口部50を介してラップベルト20B及びベゼル58をシートクッション16の外側へ引き出すことができ、開口部50に対してシートクッション16の外側からベゼル58を装着することができる。これにより、本車両用シート装置10の製造作業を容易なものにすることができる。また、開口部50の幅寸法を小さく設定することができるため、結果としてベゼル58の幅方向W2を小さくすることができ、ベゼル58を小型化することができる。したがって、開口部50に装着されたベゼル58が、着座乗員Pに干渉することを抑制できる。
【0054】
また、本車両用シート装置10では、シート表皮42の第3開口部42Aの周縁部に縫製された布部材52が、クッションパン40に設けられたリブ40Cに巻き掛けられて金属クリップ54及び樹脂クリップ56によって係止される構成であるため、第3開口部42Aの周縁部を容易にクッションパン40に係止することができる。しかも、金属クリップ54の外側に樹脂クリップ56が装着されるため、金属クリップ54によって布部材52をリブ40Cに強固に係止することができると共に、樹脂クリップ56によって金属クリップ54の係止力を増加させつつ金属クリップ54とラップベルト20Bとの接触を防止できる。
【0055】
なお、上記実施形態では、ベゼル58(ウエビングガイド部材)に設けられた係止爪58B、58Cが、クッションパン40の係止突部40D、40Eに引っ掛かることで、ベゼル58がクッションパン40に係止される構成としたが、請求項1に係る発明はこれに限らず、ウエビングガイド部材のクッションパンへの取付方法は適宜変更することができる。
【0056】
また、上記実施形態では、クッションパン40の突出部40Bと、ベゼル58のフランジ部58Dとの間で、シート表皮42の第3開口部42Aの周縁部が挟持される構成にしたが、請求項1に係る発明はこれに限るものではなく、当該挟持構造は適宜変更することができる。
【0057】
また、上記実施形態では、係止爪58B、58Cがベゼル58の高さ方向にずれて配置された構成にしたが、請求項1に係る発明はこれに限るものではなく、係止爪58B、58Cがベゼル58の高さ方向において同じ高さに配置された構成にしてもよい。
【0058】
さらに、上記実施形態では、シート表皮42の第3開口部42Aの周縁部に縫製された布部材52が金属クリップ54及び樹脂クリップ56によってクッションパン40のリブ40Cに係止される構成にしたが、第3開口部42Aの周縁部のクッションパン40への係止方法は適宜変更することができる。
【0059】
また、上記実施形態では、車両用シート12が運転席である場合について説明したが、本発明はこれに限らず、車両の助手席や後部座席に対しても本発明を適用することができる。
【0060】
また、上記実施形態では、シートベルト装置14のショルダベルト20Aがエアベルト34を備えた構成にしたが、本発明はこれに限らず、ラップベルトを備えた通常の3点式シートベルト装置に対しても本発明を適用することができる。
【0061】
その他、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更して実施できる。また、本発明の権利範囲が上記実施形態に限定されないことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0062】
10 車両用シート装置
16 シートクッション
16B、16C サイドサポート部
20B ラップベルト
36 ウエビング巻取装置
38 クッションパッド
38A 第2開口部
40 クッションパン
40A 第1開口部
40B 突出部
40C リブ
42 シート表皮
42A 第3開口部
44 内部空間
50 開口部
52 布部材
54 金属クリップ
56 樹脂クリップ
58 ベゼル(ウエビングガイド部材)
58A ウエビング挿通孔
58B、58C 係止爪
58D フランジ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
幅方向中央部で着座乗員の尻部を支持すると共に、幅方向両側部が幅方向中央部よりも上方側へ膨出したサイドサポート部とされ、幅方向一側の前記サイドサポート部が内部空間を有し、当該サイドサポート部における着座乗員と対向する部位に前記内部空間に連通した開口部が形成されたシートクッションと、
前記開口部に装着されると共に、前記内部空間と外部を連通させるスリット状のウエビング挿通孔が形成されたウエビングガイド部材と、
前記内部空間内に収容されたウエビング巻取装置と、
長手方向一端部が前記ウエビング巻取装置に係止されると共に、長手方向中間部が前記ウエビング挿通孔に挿通され、長手方向他端部が前記シートクッションの幅方向他側で前記シートクッション又は車体に係止されることにより着座乗員の腰部を拘束するラップベルトと、
を備えた車両用シート装置。
【請求項2】
前記シートクッションは、クッションパッドを下側から支持するクッションパンと、前記クッションパッドの表面を覆うシート表皮とを備え、前記開口部は、前記クッションパンに形成された第1開口部と、前記クッションパッドに形成された第2開口部と、前記シート表皮に形成された第3開口部とによって構成され、前記ウエビングガイド部材は、前記ウエビングガイド部材が前記シートクッションの外側から前記開口部に装着されることにより前記第1開口部の前記周縁部に引っ掛かる係止爪を有することを特徴とする請求項1に記載の車両用シート装置。
【請求項3】
前記第1開口部の周縁部は、前記第2開口部の内方側へ突出すると共に、当該突出部と前記ウエビングガイド部材に設けられたフランジ部との間で前記第3開口部の周縁部が挟持されていることを特徴とする請求項2に記載の車両用シート装置。
【請求項4】
前記ウエビングガイド部材は、自らの高さ方向に沿って前記開口部に装着されると共に、前記ウエビング挿通孔を介して互いに反対側へ突出した一対の前記係止爪を有し、当該一対の係止爪は、前記ウエビングガイド部材の高さ方向にずれて配置されていることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の車両用シート装置。
【請求項5】
前記ウエビング挿通孔への前記ラップベルトの挿通方向に沿った前記ウエビングガイド部材の高さ方向の一端部には、前記開口部の周縁部に対して前記シートクッションの外側から係合するフランジ部が設けられると共に、前記ウエビングガイド部材の前記高さ方向の寸法は、前記開口部の幅寸法よりも狭く設定されていることを特徴とする請求項1〜請求項4の何れか1項に記載の車両用シート装置。
【請求項6】
前記シート表皮の前記第3開口部の周縁部には、布部材が縫製され、当該布部材は、前記開口部を介して前記内部空間内へ挿入されると共に、前記クッションパンに設けられたリブに巻き掛けられてクリップにより係止されていることを特徴とする請求項2〜請求項5の何れか1項に記載の車両用シート装置。
【請求項7】
前記クリップは、金属製の金属クリップと、前記金属クリップの外側に装着された樹脂製の樹脂クリップとを有することを特徴とする請求項6に記載の車両用シート装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−63227(P2011−63227A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−218056(P2009−218056)
【出願日】平成21年9月18日(2009.9.18)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(509264383)リアコーポレーションジャパン株式会社 (1)
【Fターム(参考)】