車両用シート
【課題】内部にスペアタイヤを格納できる上に、スペアタイヤを格納した状態で良好な乗り心地が得られる車両用シートを提供すること。
【解決手段】シートクッション2と、シートバック3と、を備える車両用シートであって、シートクッション2は、上面が開口した容器状であって、内部に、スペアタイヤ10が、シートクッションスプリングとして機能するように格納されるシートクッションフレーム4と、シートクッションフレーム4の上側に着脱可能に設けられ、前記シートクッションフレーム4の上面開口部4Aを覆蓋するシートクッションパッド5と、を有し、シートクッションフレーム4の中央部には、スペアタイヤ10の格納時にスペアタイヤ10のハブ孔10Bに挿通されてスペアタイヤ10とともにシートクッションスプリングとして機能する中子4Cが設けられている車両用シート。
【解決手段】シートクッション2と、シートバック3と、を備える車両用シートであって、シートクッション2は、上面が開口した容器状であって、内部に、スペアタイヤ10が、シートクッションスプリングとして機能するように格納されるシートクッションフレーム4と、シートクッションフレーム4の上側に着脱可能に設けられ、前記シートクッションフレーム4の上面開口部4Aを覆蓋するシートクッションパッド5と、を有し、シートクッションフレーム4の中央部には、スペアタイヤ10の格納時にスペアタイヤ10のハブ孔10Bに挿通されてスペアタイヤ10とともにシートクッションスプリングとして機能する中子4Cが設けられている車両用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートにかかり、特に、内部にスペアタイヤを格納できる車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両には大きな荷物を積載できるという利便性や商品性が求められているので、荷室を拡大することが求められている。
【0003】
ここで、車両には、通常、タイヤがパンクした場合に備えてスペアタイヤが装備されている。
【0004】
しかしながら、これまで、スペアタイヤは、荷室内に格納されることが多かったので、荷室にスペアタイヤを格納するためのスペースを確保する必要があり、このスペースの分だけ荷室が狭くなるという問題があった。また、見栄えや荷物を積み降ろしするときの利便性の観点から、荷室においてはスペアタイヤ収納部の段差をなくするような設計が求められる。
【0005】
そこで、荷室以外の場所、たとえばシートの内部や下方にスペアタイヤを格納することが考えられた。
【0006】
このような例としては、たとえば、シートクッションと、この後端部に装備されたシートバックで構成され、シートのクッション本体を前端部を中心に前方に向けて回動可能にクッションフレームに装備し、クッション本体の下端側空間部に収容容器を設けた乗り物用シートがある(特許文献1)。
【0007】
また、ボディのクォータパネルに沿って装架されるように該クォータパネルに回動可能に支持された台座と、この台座上に回転可能に支持され、中空構造を有すると共にその中空内部に一定の対象物を収容し得るように構成されたケースと、前記台座に格納式に取り付けられた脚部と、を備え、前記台座を前記クォータパネルから回動することにより、前記ケースによってシートクッション部が構成されるようにした自動車用サードシートもある(特許文献2)。
【特許文献1】特開平7-59632号
【特許文献2】特開平8-238966号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、クッション本体の下端側空間部に収容容器を設けた乗り物用シートにおいては、前記収容容器に格納できるスペアタイヤの大きさに限度があり、余り大きなスペアタイヤを格納できないという問題がある。
【0009】
また、台座上に回転可能に支持されたケースをシートクッションとする形態の自動車用サードシートにおいては、通常、前記ケースを樹脂系材料で形成すると考えられるから、乗り心地が固くなり勝ちである。
【0010】
本発明は、上記問題を解決すべく成されたもので、内部にスペアタイヤを格納できる上に、スペアタイヤを格納した状態で良好な乗り心地が得られる車両用シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に記載の発明は、乗員が着座するシートクッションと、前記乗員が背を凭せ掛けるシートバックと、を備える車両用シートであって、前記シートクッションは、上面が開口した容器状であって、内部に、スペアタイヤが、シートクッションスプリングとして機能するように格納されるシートクッションフレームと、前記シートクッションフレームの上側に着脱可能に設けられ、前記シートクッションフレームの開口部を覆蓋するシートクッションパッドと、を有し、前記シートクッションフレームの中央部には、スペアタイヤの格納時に前記スペアタイヤのハブ孔に挿通されて前記スペアタイヤとともにシートクッションスプリングとして機能する中子が設けられていることを特徴とする。
【0012】
前記車両用シートにおいては、スペアタイヤは、ハブ孔に中子が挿通された状態でシートクッションフレーム内に格納される。そして、シートクッションフレーム内にスペアタイヤを格納後、シートクッションフレームの上面にシートクッションパッドを装着してシートクッションフレームの上面開口部を覆蓋する。
【0013】
この状態において、乗員がシートクッションに着座すると、内部に格納されたスペアタイヤと中子とがシートクッションスプリングとして機能する。
【0014】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の車両用シートにおいて、前記シートクッションフレームの内部に、格納されたスペアタイヤを所定の位置に保持するスペーサが設けられていることを特徴とする。
【0015】
前記車両用シートにおいては、シートクッションフレームの内部に格納されたスペアタイヤは、スペーサによって所定の位置に保持されるから、車両が走行中にシートクッションフレーム内でスペアタイヤが移動することが抑止される。
【0016】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の車両用シートにおいて、前記シートクッションフレームと前記シートクッションパッドとの間には、前記シートクッションフレームの上面開口部を覆蓋する蓋が設けられていることを特徴とする。
【0017】
前記車両用シートにおいては、シートクッションフレームにスペアタイヤを格納した場合にスペアタイヤと中子の上面との間に段差が生じるときであっても、シートクッションフレームの上面開口部を蓋で覆蓋することにより、前記段差が解消される。
【0018】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の車両用シートにおいて、スペアタイヤが格納されたシートクッションフレームの上面開口部を前記蓋で覆蓋したときに前記スペアタイヤに対する前記蓋の相対位置が変化しないように位置決めする位置決め部材が前記蓋に設けられていることを特徴とする。
【0019】
前記車両用シートにおいては、シートクッションフレームにスペアタイヤを格納した後、シートクッションフレームの上面開口部を前記蓋で覆蓋すると、蓋に設けられた位置決め部材によって前記スペアタイヤに対する相対位置が変化しないように前記蓋が位置決めされる。
【0020】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4の何れか1項に記載の車両用シートにおいて、 前記シートクッションパッドが表皮と一体に形成されているとともに、前記表皮には、シートクッションフレームの外周部に係合する係合部材が固定されていることを特徴とする。
【0021】
前記車両用シートにおいては、表皮に固定された係合部材を、シートクッションフレームの外周部において前記係合部材が係合する係合部に係合させることにより、シートクッションパッドをシートクッションフレームの上面に装着することができる。
【発明の効果】
【0022】
以上説明したように、請求項1に記載の発明においては、スペアタイヤはシートクッションフレーム内に格納されるから、荷室のスペースを犠牲にすることなく、スペアタイヤの格納スペースを確保することができる。また、シートクッションフレーム内にスペアタイヤを直接格納している故に、スペアタイヤを格納するための格納容器をシートクッションフレームと別個に設ける必要がなく、構成が簡略化できる。加えてスペアタイヤおよび中子をシートクッションスプリングとして機能させているから、座り心地がよい。
【0023】
請求項2に記載の発明においては、シートクッションフレームに格納されたスペアタイヤは、スペーサによって所定の位置に保持される。したがって、車両や乗員からの衝撃でスペアタイヤの位置がずれて座り心地が悪化することが抑止される。
【0024】
請求項3に記載の発明においては、前述のように、シートクッションフレームにスペアタイヤを格納した場合にスペアタイヤと中子の上面との間に段差が生じるときであっても、シートクッションフレームの上面開口部を蓋で覆蓋することにより、前記段差が解消される。したがって、蓋がない場合に比較して更に良好な座り心地が得られる。
【0025】
請求項4に記載の発明においては、蓋に設けられた位置決め部材によって前記スペアタイヤに対する相対位置が変化しないように前記蓋が位置決めされるから、前記位置決め部材がない場合と比較して蓋とスペアタイヤとの相対位置が変化することによる座り心地の悪化を効果的に抑止できる。
【0026】
請求項5に記載の発明によれば、表皮に固定された係合部材を、シートクッションフレームの外周部に設けられた係合部に係合させることにより、シートクッションパッドをシートクッションフレームの上面に装着でき、前記係合部材を前記係合部から脱着することにより、シートクッションパッドをシートクッションフレームの上面から脱着できる。
【0027】
したがって、シートクッションパッドの装着、脱着が容易である。
【0028】
また、前記発明においては、シートクッションパッドは表皮と一体に形成されているから、シートクッションフレームへの装着、脱着時におけるシートクッションパッドの取り扱いが容易である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
1.実施形態1
【0030】
以下、本発明の車両用シートの一例について図面を用いて説明する。図1以下の図面において、矢印FR、RE、UP、DN、R、およびLは、夫々車両前方、車両後方、車両上方、車両下方、車両前方に向かって右方、および車両前方に向かって左方を示す。
【0031】
実施形態1に係る車両用シート1は、図1および図2に示すように、乗員が着座するシートクッション2と、シートクッション2に着座した乗員が背を凭せ掛けるシートバック3とを備える。
【0032】
シートクッション2は、図1〜図4に示すように、上面が開口した浅い箱状のシートクッションフレーム4と、シートクッションフレーム4の上方に、シートクッションフレーム4を上方から覆うように形成されたシートクッションパッド5とを有する。
【0033】
シートクッションフレーム4の上面には上面開口部4Aが形成され、内側には、スペアタイヤ10が、タイヤサイド10Aが車両上下方向を向くように格納される。シートクッションフレーム4の底面4Bの中央部には、略円柱状の中子4Cが立設され、側壁の4隅部には、スペーサ4Dが配設されている。中子4Cは、圧縮方向の弾性が、スペアタイヤ10の厚さ方向に沿った弾性と実質的に同一になるように形成されている。
【0034】
スペアタイヤ10をシートクッションフレーム4内部に格納すると、中子4Cがスペアタイヤ10のハブ孔10Bに挿通されるとともに、スペーサ4Dがスペアタイヤ10のトレッド面10Cに当接することにより、スペアタイヤ10はシートクッションフレーム4内の所定の位置に保持される。同時に、スペアタイヤ10と中子4Cとがシートクッションスプリングとして機能する。
【0035】
また、図1〜図6に示すように、シートクッションフレーム4の外周面4Gのうち、車両前方の面、および車両前方に向かって右方および左方の面に、後述する係合フック8が係合する係合孔4Eが2個ずつ設けられている。また、図8に示すように、係合孔4Eの車両下方縁部には、係合突出部4Fがシートクッションフレーム4の内側に向かって突出している。
【0036】
スペアタイヤ10とシートクッションパッド5との間には、上面開口部4Aを覆蓋する蓋6が配設されている。蓋6は、フェルトやスポンジシートなどの柔軟性材料により形成することができる。このように。シートクッションフレーム4にスペアタイヤ10を格納した後、蓋6で上面開口部4Aを覆蓋することにより、シートクッションパッド5を降ろしてその上に着座した乗員が、スペアタイヤ10と中子4Cとの凹凸による異物感を感じることが抑えられる。
【0037】
図1、図2、図5、および図6に示すように、蓋6の車両下方側の面の中央部には、シートクッションフレーム4の上面開口部4Aを覆蓋したときに中子4Cの頂部に係合する円環状突起6Aが形成されているとともに、各辺の側縁近傍には、シートクッションフレーム4の上面開口部4Aを覆蓋したときにシートクッションフレーム4の上面開口縁部に係合するリブ状突起6Bが形成されている。蓋6で上面開口部4Aを覆蓋したときに、円環状突起6Aが中子4Cに、リブ状突起6Bがシートクッションフレーム4の上面開口縁部に係合することにより、蓋6とスペアタイヤ10およびシートクッションフレーム4との相対的位置がずれて座り心地が悪化することが防止される。
【0038】
シートクッションパッド5はフォーム材で形成されているとともに、外側が表皮7で覆われている。シートクッションパッド5と表皮7とは一体に形成されている。図1および図2に示すように、シートクッションパッド5のシートクッションフレーム4に相対する側の面のうち、車両方向前方の面と車両前方に向かって右方および左方の面とに係合フック8が2個ずつ内側に向かって突出している。
【0039】
係合フック8は、図7および図8に示すように、鉤状に形成され、表皮7の外側から突出した先端部8Aと、シートクッションパッド5の内部に埋包された根元部8Bとを備える。
【0040】
以下、実施形態1に係る車両用シート1の作用について説明する。
【0041】
車両用シート1をシートとして使用するときは、図1、図2、および図8Aに示すように、内部にスペアタイヤ10を格納した状態のシートクッションフレーム4に、シートクッションパッド5が、車両上方から上面開口部4Aを覆うように被せられ、シートクッションパッド5の6個の係合フック8が全てシートクッションフレーム4の対応する係合孔4Eに係合されている。係合フック8が係合孔4Eに係合された状態においては、図8の(A)に示すように、係合フック8の先端部8Aが係合孔4Eの係合突出部4Fと係合する。
【0042】
車両用シート1からスペアタイヤ10を取り出すときは、図8の(B)に示すように、シートクッションパッド5における係合フック8が設けられた部分を表皮7の外側の面から押圧し、係合フック8の先端部8Aと、係合孔4Eの係合突出部4Fとの間の係合を解除する。
【0043】
そして図8の(C)に示すように、係合が解かれた係合フック8を若干車両上方に持ち上げ、係合孔4Eから外側に抜く。
【0044】
6個の係合フック8を全て対応する係合孔4Eから抜いたら、図9に示すように、シートクッションパッド5の車両前方側端部を表皮7ごと車両上方に持ち上げ、図10に示すように蓋6を外す。そして、図11に示すようにスペアタイヤ10を取り出す。
【0045】
スペアタイヤ10を取り出した後は、シートクッションパッド5を元の位置に戻し、6個の係合フック8を夫々シートクッションフレーム4の係合孔4Eに挿入して係合突出部4Fに係合させてシートクッションパッド5をシートクッションフレーム4に固定する。
【0046】
以上、実施形態1に係る車両用シートについて説明してきたが、本発明は、スペアタイヤを車内に格納する形態の車両用シートであれば、普通乗用車用のシートに限定されず、軽自動車用のシートやワゴン車用および軽トラック用のシートにも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】図1は、実施形態1に係る車両用シートにおいてスペアタイヤを格納した状態を示す車両前後方向に沿った平面で切断した断面図である。
【図2】図2は、実施形態1に係る車両用シートにおいてスペアタイヤを格納した状態を示す車両左右方向に沿った平面で切断した断面図である。
【図3】図3は、実施形態1に係る車両用シートの備えるシートクッションフレームにスペアタイヤを格納した状態を示す斜視図である。
【図4】図4は、実施形態1に係る車両用シートの備えるシートクッションフレームにおいてスペアタイヤを取り出した状態を示す斜視図である。
【図5】図5は、実施形態1に係る車両用シートの備えるシートクッションフレームにおいて上面開口部に蓋を被せた状態を示す斜視図である。
【図6】図6は、スペアタイヤを格納した状態のシートクッションフレームの上面開口部に蓋を被せようとするところを示す斜視図である。
【図7】図7は、実施形態1に係る車両用シートの備えるシートクッションパッドに設けられた係合フックの形態を示す斜視図である。
【図8】図8は、前記係合フックが、シートクッションフレームに設けられた係合孔に係合した状態から前記係合を解除する手順を示す説明図である。
【図9】図9は、実施形態1に係る車両用シートにおいて、係合フックの係合を解除してからシートクッションパッドを持ち上げるまでの手順の一部を示す説明図である。
【図10】図10は、実施形態1に係る車両用シートにおいて、シートクッションパッドを持ち上げた後、シートクッションフレームから蓋を外すまでの手順の一部を示す説明図である。
【図11】図11は、蓋を外した後、シートクッションフレームに格納されていたスペアタイヤを取り出すまでの手順を示す説明図である。
【符号の説明】
【0048】
1 車両用シート
2 シートクッション
3 シートバック
4 シートクッションフレーム
4A 上面開口部(開口部)
4B 底面
4C 中子
4D スペーサ
4E 係合孔
4F 係合突出部
4G 外周面
5 シートクッションパッド
6 蓋
6A 円環状突起(位置決め部材)
6B リブ状突起(位置決め部材)
7 表皮
8 係合フック(係合部材)
8A 先端部
8B 根元部
10 スペアタイヤ
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートにかかり、特に、内部にスペアタイヤを格納できる車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両には大きな荷物を積載できるという利便性や商品性が求められているので、荷室を拡大することが求められている。
【0003】
ここで、車両には、通常、タイヤがパンクした場合に備えてスペアタイヤが装備されている。
【0004】
しかしながら、これまで、スペアタイヤは、荷室内に格納されることが多かったので、荷室にスペアタイヤを格納するためのスペースを確保する必要があり、このスペースの分だけ荷室が狭くなるという問題があった。また、見栄えや荷物を積み降ろしするときの利便性の観点から、荷室においてはスペアタイヤ収納部の段差をなくするような設計が求められる。
【0005】
そこで、荷室以外の場所、たとえばシートの内部や下方にスペアタイヤを格納することが考えられた。
【0006】
このような例としては、たとえば、シートクッションと、この後端部に装備されたシートバックで構成され、シートのクッション本体を前端部を中心に前方に向けて回動可能にクッションフレームに装備し、クッション本体の下端側空間部に収容容器を設けた乗り物用シートがある(特許文献1)。
【0007】
また、ボディのクォータパネルに沿って装架されるように該クォータパネルに回動可能に支持された台座と、この台座上に回転可能に支持され、中空構造を有すると共にその中空内部に一定の対象物を収容し得るように構成されたケースと、前記台座に格納式に取り付けられた脚部と、を備え、前記台座を前記クォータパネルから回動することにより、前記ケースによってシートクッション部が構成されるようにした自動車用サードシートもある(特許文献2)。
【特許文献1】特開平7-59632号
【特許文献2】特開平8-238966号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、クッション本体の下端側空間部に収容容器を設けた乗り物用シートにおいては、前記収容容器に格納できるスペアタイヤの大きさに限度があり、余り大きなスペアタイヤを格納できないという問題がある。
【0009】
また、台座上に回転可能に支持されたケースをシートクッションとする形態の自動車用サードシートにおいては、通常、前記ケースを樹脂系材料で形成すると考えられるから、乗り心地が固くなり勝ちである。
【0010】
本発明は、上記問題を解決すべく成されたもので、内部にスペアタイヤを格納できる上に、スペアタイヤを格納した状態で良好な乗り心地が得られる車両用シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に記載の発明は、乗員が着座するシートクッションと、前記乗員が背を凭せ掛けるシートバックと、を備える車両用シートであって、前記シートクッションは、上面が開口した容器状であって、内部に、スペアタイヤが、シートクッションスプリングとして機能するように格納されるシートクッションフレームと、前記シートクッションフレームの上側に着脱可能に設けられ、前記シートクッションフレームの開口部を覆蓋するシートクッションパッドと、を有し、前記シートクッションフレームの中央部には、スペアタイヤの格納時に前記スペアタイヤのハブ孔に挿通されて前記スペアタイヤとともにシートクッションスプリングとして機能する中子が設けられていることを特徴とする。
【0012】
前記車両用シートにおいては、スペアタイヤは、ハブ孔に中子が挿通された状態でシートクッションフレーム内に格納される。そして、シートクッションフレーム内にスペアタイヤを格納後、シートクッションフレームの上面にシートクッションパッドを装着してシートクッションフレームの上面開口部を覆蓋する。
【0013】
この状態において、乗員がシートクッションに着座すると、内部に格納されたスペアタイヤと中子とがシートクッションスプリングとして機能する。
【0014】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の車両用シートにおいて、前記シートクッションフレームの内部に、格納されたスペアタイヤを所定の位置に保持するスペーサが設けられていることを特徴とする。
【0015】
前記車両用シートにおいては、シートクッションフレームの内部に格納されたスペアタイヤは、スペーサによって所定の位置に保持されるから、車両が走行中にシートクッションフレーム内でスペアタイヤが移動することが抑止される。
【0016】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の車両用シートにおいて、前記シートクッションフレームと前記シートクッションパッドとの間には、前記シートクッションフレームの上面開口部を覆蓋する蓋が設けられていることを特徴とする。
【0017】
前記車両用シートにおいては、シートクッションフレームにスペアタイヤを格納した場合にスペアタイヤと中子の上面との間に段差が生じるときであっても、シートクッションフレームの上面開口部を蓋で覆蓋することにより、前記段差が解消される。
【0018】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の車両用シートにおいて、スペアタイヤが格納されたシートクッションフレームの上面開口部を前記蓋で覆蓋したときに前記スペアタイヤに対する前記蓋の相対位置が変化しないように位置決めする位置決め部材が前記蓋に設けられていることを特徴とする。
【0019】
前記車両用シートにおいては、シートクッションフレームにスペアタイヤを格納した後、シートクッションフレームの上面開口部を前記蓋で覆蓋すると、蓋に設けられた位置決め部材によって前記スペアタイヤに対する相対位置が変化しないように前記蓋が位置決めされる。
【0020】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4の何れか1項に記載の車両用シートにおいて、 前記シートクッションパッドが表皮と一体に形成されているとともに、前記表皮には、シートクッションフレームの外周部に係合する係合部材が固定されていることを特徴とする。
【0021】
前記車両用シートにおいては、表皮に固定された係合部材を、シートクッションフレームの外周部において前記係合部材が係合する係合部に係合させることにより、シートクッションパッドをシートクッションフレームの上面に装着することができる。
【発明の効果】
【0022】
以上説明したように、請求項1に記載の発明においては、スペアタイヤはシートクッションフレーム内に格納されるから、荷室のスペースを犠牲にすることなく、スペアタイヤの格納スペースを確保することができる。また、シートクッションフレーム内にスペアタイヤを直接格納している故に、スペアタイヤを格納するための格納容器をシートクッションフレームと別個に設ける必要がなく、構成が簡略化できる。加えてスペアタイヤおよび中子をシートクッションスプリングとして機能させているから、座り心地がよい。
【0023】
請求項2に記載の発明においては、シートクッションフレームに格納されたスペアタイヤは、スペーサによって所定の位置に保持される。したがって、車両や乗員からの衝撃でスペアタイヤの位置がずれて座り心地が悪化することが抑止される。
【0024】
請求項3に記載の発明においては、前述のように、シートクッションフレームにスペアタイヤを格納した場合にスペアタイヤと中子の上面との間に段差が生じるときであっても、シートクッションフレームの上面開口部を蓋で覆蓋することにより、前記段差が解消される。したがって、蓋がない場合に比較して更に良好な座り心地が得られる。
【0025】
請求項4に記載の発明においては、蓋に設けられた位置決め部材によって前記スペアタイヤに対する相対位置が変化しないように前記蓋が位置決めされるから、前記位置決め部材がない場合と比較して蓋とスペアタイヤとの相対位置が変化することによる座り心地の悪化を効果的に抑止できる。
【0026】
請求項5に記載の発明によれば、表皮に固定された係合部材を、シートクッションフレームの外周部に設けられた係合部に係合させることにより、シートクッションパッドをシートクッションフレームの上面に装着でき、前記係合部材を前記係合部から脱着することにより、シートクッションパッドをシートクッションフレームの上面から脱着できる。
【0027】
したがって、シートクッションパッドの装着、脱着が容易である。
【0028】
また、前記発明においては、シートクッションパッドは表皮と一体に形成されているから、シートクッションフレームへの装着、脱着時におけるシートクッションパッドの取り扱いが容易である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
1.実施形態1
【0030】
以下、本発明の車両用シートの一例について図面を用いて説明する。図1以下の図面において、矢印FR、RE、UP、DN、R、およびLは、夫々車両前方、車両後方、車両上方、車両下方、車両前方に向かって右方、および車両前方に向かって左方を示す。
【0031】
実施形態1に係る車両用シート1は、図1および図2に示すように、乗員が着座するシートクッション2と、シートクッション2に着座した乗員が背を凭せ掛けるシートバック3とを備える。
【0032】
シートクッション2は、図1〜図4に示すように、上面が開口した浅い箱状のシートクッションフレーム4と、シートクッションフレーム4の上方に、シートクッションフレーム4を上方から覆うように形成されたシートクッションパッド5とを有する。
【0033】
シートクッションフレーム4の上面には上面開口部4Aが形成され、内側には、スペアタイヤ10が、タイヤサイド10Aが車両上下方向を向くように格納される。シートクッションフレーム4の底面4Bの中央部には、略円柱状の中子4Cが立設され、側壁の4隅部には、スペーサ4Dが配設されている。中子4Cは、圧縮方向の弾性が、スペアタイヤ10の厚さ方向に沿った弾性と実質的に同一になるように形成されている。
【0034】
スペアタイヤ10をシートクッションフレーム4内部に格納すると、中子4Cがスペアタイヤ10のハブ孔10Bに挿通されるとともに、スペーサ4Dがスペアタイヤ10のトレッド面10Cに当接することにより、スペアタイヤ10はシートクッションフレーム4内の所定の位置に保持される。同時に、スペアタイヤ10と中子4Cとがシートクッションスプリングとして機能する。
【0035】
また、図1〜図6に示すように、シートクッションフレーム4の外周面4Gのうち、車両前方の面、および車両前方に向かって右方および左方の面に、後述する係合フック8が係合する係合孔4Eが2個ずつ設けられている。また、図8に示すように、係合孔4Eの車両下方縁部には、係合突出部4Fがシートクッションフレーム4の内側に向かって突出している。
【0036】
スペアタイヤ10とシートクッションパッド5との間には、上面開口部4Aを覆蓋する蓋6が配設されている。蓋6は、フェルトやスポンジシートなどの柔軟性材料により形成することができる。このように。シートクッションフレーム4にスペアタイヤ10を格納した後、蓋6で上面開口部4Aを覆蓋することにより、シートクッションパッド5を降ろしてその上に着座した乗員が、スペアタイヤ10と中子4Cとの凹凸による異物感を感じることが抑えられる。
【0037】
図1、図2、図5、および図6に示すように、蓋6の車両下方側の面の中央部には、シートクッションフレーム4の上面開口部4Aを覆蓋したときに中子4Cの頂部に係合する円環状突起6Aが形成されているとともに、各辺の側縁近傍には、シートクッションフレーム4の上面開口部4Aを覆蓋したときにシートクッションフレーム4の上面開口縁部に係合するリブ状突起6Bが形成されている。蓋6で上面開口部4Aを覆蓋したときに、円環状突起6Aが中子4Cに、リブ状突起6Bがシートクッションフレーム4の上面開口縁部に係合することにより、蓋6とスペアタイヤ10およびシートクッションフレーム4との相対的位置がずれて座り心地が悪化することが防止される。
【0038】
シートクッションパッド5はフォーム材で形成されているとともに、外側が表皮7で覆われている。シートクッションパッド5と表皮7とは一体に形成されている。図1および図2に示すように、シートクッションパッド5のシートクッションフレーム4に相対する側の面のうち、車両方向前方の面と車両前方に向かって右方および左方の面とに係合フック8が2個ずつ内側に向かって突出している。
【0039】
係合フック8は、図7および図8に示すように、鉤状に形成され、表皮7の外側から突出した先端部8Aと、シートクッションパッド5の内部に埋包された根元部8Bとを備える。
【0040】
以下、実施形態1に係る車両用シート1の作用について説明する。
【0041】
車両用シート1をシートとして使用するときは、図1、図2、および図8Aに示すように、内部にスペアタイヤ10を格納した状態のシートクッションフレーム4に、シートクッションパッド5が、車両上方から上面開口部4Aを覆うように被せられ、シートクッションパッド5の6個の係合フック8が全てシートクッションフレーム4の対応する係合孔4Eに係合されている。係合フック8が係合孔4Eに係合された状態においては、図8の(A)に示すように、係合フック8の先端部8Aが係合孔4Eの係合突出部4Fと係合する。
【0042】
車両用シート1からスペアタイヤ10を取り出すときは、図8の(B)に示すように、シートクッションパッド5における係合フック8が設けられた部分を表皮7の外側の面から押圧し、係合フック8の先端部8Aと、係合孔4Eの係合突出部4Fとの間の係合を解除する。
【0043】
そして図8の(C)に示すように、係合が解かれた係合フック8を若干車両上方に持ち上げ、係合孔4Eから外側に抜く。
【0044】
6個の係合フック8を全て対応する係合孔4Eから抜いたら、図9に示すように、シートクッションパッド5の車両前方側端部を表皮7ごと車両上方に持ち上げ、図10に示すように蓋6を外す。そして、図11に示すようにスペアタイヤ10を取り出す。
【0045】
スペアタイヤ10を取り出した後は、シートクッションパッド5を元の位置に戻し、6個の係合フック8を夫々シートクッションフレーム4の係合孔4Eに挿入して係合突出部4Fに係合させてシートクッションパッド5をシートクッションフレーム4に固定する。
【0046】
以上、実施形態1に係る車両用シートについて説明してきたが、本発明は、スペアタイヤを車内に格納する形態の車両用シートであれば、普通乗用車用のシートに限定されず、軽自動車用のシートやワゴン車用および軽トラック用のシートにも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】図1は、実施形態1に係る車両用シートにおいてスペアタイヤを格納した状態を示す車両前後方向に沿った平面で切断した断面図である。
【図2】図2は、実施形態1に係る車両用シートにおいてスペアタイヤを格納した状態を示す車両左右方向に沿った平面で切断した断面図である。
【図3】図3は、実施形態1に係る車両用シートの備えるシートクッションフレームにスペアタイヤを格納した状態を示す斜視図である。
【図4】図4は、実施形態1に係る車両用シートの備えるシートクッションフレームにおいてスペアタイヤを取り出した状態を示す斜視図である。
【図5】図5は、実施形態1に係る車両用シートの備えるシートクッションフレームにおいて上面開口部に蓋を被せた状態を示す斜視図である。
【図6】図6は、スペアタイヤを格納した状態のシートクッションフレームの上面開口部に蓋を被せようとするところを示す斜視図である。
【図7】図7は、実施形態1に係る車両用シートの備えるシートクッションパッドに設けられた係合フックの形態を示す斜視図である。
【図8】図8は、前記係合フックが、シートクッションフレームに設けられた係合孔に係合した状態から前記係合を解除する手順を示す説明図である。
【図9】図9は、実施形態1に係る車両用シートにおいて、係合フックの係合を解除してからシートクッションパッドを持ち上げるまでの手順の一部を示す説明図である。
【図10】図10は、実施形態1に係る車両用シートにおいて、シートクッションパッドを持ち上げた後、シートクッションフレームから蓋を外すまでの手順の一部を示す説明図である。
【図11】図11は、蓋を外した後、シートクッションフレームに格納されていたスペアタイヤを取り出すまでの手順を示す説明図である。
【符号の説明】
【0048】
1 車両用シート
2 シートクッション
3 シートバック
4 シートクッションフレーム
4A 上面開口部(開口部)
4B 底面
4C 中子
4D スペーサ
4E 係合孔
4F 係合突出部
4G 外周面
5 シートクッションパッド
6 蓋
6A 円環状突起(位置決め部材)
6B リブ状突起(位置決め部材)
7 表皮
8 係合フック(係合部材)
8A 先端部
8B 根元部
10 スペアタイヤ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗員が着座するシートクッションと、前記乗員が背を凭せ掛けるシートバックと、を備える車両用シートであって、
前記シートクッションは、上面が開口した容器状であって、内部にスペアタイヤがシートクッションスプリングとして機能するように格納されるシートクッションフレームと、前記シートクッションフレームの上側に着脱可能に設けられ、前記シートクッションフレームの開口部を覆蓋するシートクッションパッドと、を有し、
前記シートクッションフレームの中央部には、スペアタイヤの格納時に前記スペアタイヤのハブ孔に挿通されて前記スペアタイヤとともにシートクッションスプリングとして機能する中子が設けられていることを特徴とする車両用シート。
【請求項2】
前記シートクッションフレームの内部には、格納されたスペアタイヤを所定の位置に保持するスペーサが設けられている請求項1に記載の車両用シート。
【請求項3】
前記シートクッションフレームと前記シートクッションパッドとの間には、前記シートクッションフレームの上面開口部を覆蓋する蓋が設けられている請求項1または2に記載の車両用シート。
【請求項4】
スペアタイヤが格納されたシートクッションフレームの上面開口部を前記蓋で覆蓋したときに前記スペアタイヤに対する前記蓋の相対位置が変化しないように位置決めする位置決め部材が前記蓋に設けられている請求項3に記載の車両用シート。
【請求項5】
前記シートクッションパッドは、表皮と一体に形成されているとともに、前記表皮には、シートクッションフレームの外周部に係合する係合部材が固定されている請求項1〜4の何れか1項に記載の車両用シート。
【請求項1】
乗員が着座するシートクッションと、前記乗員が背を凭せ掛けるシートバックと、を備える車両用シートであって、
前記シートクッションは、上面が開口した容器状であって、内部にスペアタイヤがシートクッションスプリングとして機能するように格納されるシートクッションフレームと、前記シートクッションフレームの上側に着脱可能に設けられ、前記シートクッションフレームの開口部を覆蓋するシートクッションパッドと、を有し、
前記シートクッションフレームの中央部には、スペアタイヤの格納時に前記スペアタイヤのハブ孔に挿通されて前記スペアタイヤとともにシートクッションスプリングとして機能する中子が設けられていることを特徴とする車両用シート。
【請求項2】
前記シートクッションフレームの内部には、格納されたスペアタイヤを所定の位置に保持するスペーサが設けられている請求項1に記載の車両用シート。
【請求項3】
前記シートクッションフレームと前記シートクッションパッドとの間には、前記シートクッションフレームの上面開口部を覆蓋する蓋が設けられている請求項1または2に記載の車両用シート。
【請求項4】
スペアタイヤが格納されたシートクッションフレームの上面開口部を前記蓋で覆蓋したときに前記スペアタイヤに対する前記蓋の相対位置が変化しないように位置決めする位置決め部材が前記蓋に設けられている請求項3に記載の車両用シート。
【請求項5】
前記シートクッションパッドは、表皮と一体に形成されているとともに、前記表皮には、シートクッションフレームの外周部に係合する係合部材が固定されている請求項1〜4の何れか1項に記載の車両用シート。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−166546(P2009−166546A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−4418(P2008−4418)
【出願日】平成20年1月11日(2008.1.11)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年1月11日(2008.1.11)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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