車両用シート
【課題】コンパクトな構造の保持機構を備えた車両用シートを提供すること。
【解決手段】車両用シート1は、シートバック3の前倒れに伴って、リクライナ4(5)のポール36とラチェット40が係合する係合ゾーン40aから、このポール36とラチェット40が非係合するフリーゾーン40bを過ぎ、このポール36とラチェット40が再係合する再係合ゾーン40aに到達しても、ポール36とラチェット40とを非係合状態に保持する保持機構を備えている。この保持機構は、リクライナ4(5)のヒンジピン4a(5a)に締結されているリク解除操作プレート58と、このリク解除操作プレート58の動きを規制可能なピン50bを有する操作リンク50とから構成されている。この操作リンク50は、シートバック3側のフレーム22に枢着されている。
【解決手段】車両用シート1は、シートバック3の前倒れに伴って、リクライナ4(5)のポール36とラチェット40が係合する係合ゾーン40aから、このポール36とラチェット40が非係合するフリーゾーン40bを過ぎ、このポール36とラチェット40が再係合する再係合ゾーン40aに到達しても、ポール36とラチェット40とを非係合状態に保持する保持機構を備えている。この保持機構は、リクライナ4(5)のヒンジピン4a(5a)に締結されているリク解除操作プレート58と、このリク解除操作プレート58の動きを規制可能なピン50bを有する操作リンク50とから構成されている。この操作リンク50は、シートバック3側のフレーム22に枢着されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シートバックの前倒れに伴って、リクライナのポールとラチェットが係合する係合ゾーンから、このポールとラチェットが非係合するフリーゾーンを過ぎ、このポールとラチェットが再係合する再係合ゾーンに到達しても、ポールとラチェットとを非係合状態に保持する保持機構を備えた車両用シートが既に知られている。ここで、下記特許文献1には、この保持機構を利用して、シートバックの前傾姿勢の保持を行っている技術が開示されている。これにより、シートバックを前傾姿勢に保持させるレバーの操作を、シートバックが前傾姿勢に到達する前に解除しても、シートバックが大倒し姿勢になることなく、シートバックを前傾姿勢に保持できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−6931号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した特許文献1の技術では、保持機構を構成する連結レバーがシートクッション側のフレームに枢着されているため、この保持機構が大がかりな構造となっていた。
【0005】
本発明は、このような課題を解決しようとするもので、その目的は、コンパクトな構造の保持機構を備えた車両用シートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記の目的を達成するためのものであって、以下のように構成されている。
請求項1に記載の発明は、シートバックの前倒れに伴って、リクライナのポールとラチェットが係合する係合ゾーンから、このポールとラチェットが非係合するフリーゾーンを過ぎ、このポールとラチェットが再係合する再係合ゾーンに到達しても、ポールとラチェットとを非係合状態に保持する保持機構を備えた車両用シートであって、保持機構は、リクライナのヒンジピンに締結されているリク解除操作プレートと、このリク解除操作プレートの動きを規制可能なピンを有する操作リンクとから構成されており、操作リンクは、シートバック側のフレームに枢着されていることを特徴とする構成である。
この構成によれば、操作リンクは、シートバック側のフレームに枢着されているため、従来技術の説明と異なり、保持機構をコンパクトにできる。特に、左のリクライナの付近において、その径方向にコンパクトにできる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】図1は、本発明の実施例に係る助手席の内部のフレームの斜視図である。
【図2】図2は、図1の助手席のリクライナの分解斜視図である。
【図3】図3は、図1の助手席の動きを示す模式図である。
【図4】図4は、図1のIV−IV線断面図である。
【図5】図5は、図1の助手席の主要部の側面模式図であり、ウォークイン姿勢に切り替える前の通常姿勢の状態を示している。
【図6】図6は、ウォークイン姿勢に切り替えるウォークインレバーを操作した状態を示している。
【図7】図7は、ウォークイン姿勢の切り替え途中の状態を示している。
【図8】図8は、ウォークイン姿勢の切り替え完了の状態を示している。
【図9】図9は、図1の助手席の側面模式図であり、大倒し姿勢に切り替える前の通常姿勢の状態を示している。
【図10】図10は、大倒し姿勢に切り替えるストラップを操作した状態を示している。
【図11】図11は、大倒し姿勢の切り替え途中の状態を示している。
【図12】図12は、大倒し姿勢の切り替え完了の状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を実施するための形態を、図1〜12を用いて説明する。なお、以下の説明にあたって、「車両用シート」の例として、「後部座席(図示しない)が存在する助手席1」を例に説明していく。また、以下の説明にあたって、上、下、前、後、左、右とは、上述した図に記載した、上、下、前、後、左、右の方向、すなわち、この助手席1を基準にしたときの上、下、前、後、左、右の方向を示している。
【0009】
まず、図1〜5を参照して、本発明の実施例に係る助手席1の概略構成を説明する。図1に示すように、この助手席1は、主として、シートクッション2(図1において、クッションフレーム10の一部のみを示している)と、シートバック3(図1において、バックフレーム20のみを示している)とから構成されている。このシートバック3は、シートクッション2に対して左右に対を成すリクライナ4、5を介して組み付けられている。
【0010】
このように左右のリクライナ4、5を介して組み付けられていることにより、通常モード(乗員が着座できるように、シートバック3が後傾姿勢となった状態であり、図3(A)、図3(F)に示す状態)において、シートクッション2に対するシートバック3の傾き角度を任意に調節できる。
【0011】
また、このように左右のリクライナ4、5を介して組み付けられていることにより、通常モードからウォークインモード(後部座席の乗員が乗降できるように、シートバック3がシートクッション2に対して略重なり合う姿勢となった状態であり、図3(D)に示す状態)または大倒しモード(シートバック3の背面を荷物を置く面として使用できるように、ウォークインモードと同じく、シートバック3がシートクッション2に対して略重なり合う姿勢となった状態であり、図3(I)に示す状態))に切り替えることができる。
【0012】
以下に、これらシートクッション2と、シートバック3と左のリクライナ4とを個別に説明していく。なお、右のリクライナ5は、左のリクライナ4と同じであるため、その詳細な説明は省略することとする。
【0013】
はじめに、シートクッション2から説明していく。このシートクッション2は、主として、クッションフレーム10と、このクッションフレーム10を包み込むクッションパッド(図示しない)と、このクッションパッドの表面をカバーリングする表皮(図示しない)とから構成されている。
【0014】
このクッションフレーム10は、ロアアーム12aを有する左のサイドフレーム12と、ロアアーム14aを有する右のサイドフレーム14と、この両サイドフレーム12、14の前端を橋渡すフロントロッド(図示しない)と、この両サイドフレーム12、14の後端を橋渡すリアロッド18とから、略矩形枠状に形成されている。
【0015】
この左のサイドフレーム12の外面には、図4〜5に示すように、第1の切りお越し片66aと第2の切りお越し片66bとが形成されたブラケット66が締結されている。この左のロアアーム12aの内面には、後述する左のリクライナ4のラチェット40が締結されている。このことは、右のロアアーム14aにおいても同様である。
【0016】
また、この左のロアアーム12aの外周には、後述するヒンジピン54の位置決めスペーサ56に当接可能な第1のストッパ12a1と第2のストッパ12a2とが形成されている。これにより、シートバック3が過剰に前倒れしたり後ろ倒れしたりすることを規制できる。このことは、右のロアアーム14aにおいても同様である。シートクッション2は、このように構成されている。
【0017】
また、この左のロアアーム12aの外面には、後述する左のリクライナ4のヒンジピン4aを介してスライド解除リンク60が枢着されている。このスライド解除リンク60の一端と、後述するスライドロック機構(図示しない)との間には、第1の操作ケーブル80が掛け留めされている。この第1の操作ケーブル80は、筒状に形成されたアウタケーブル80aと、このアウタケーブル80aの内側に差し込まれたインナケーブル80bとから2重構造となっている。
【0018】
そして、この第1の操作ケーブル80におけるアウタケーブル80aの一端は、上述したブラケット66の第1の切りお越し片66aに掛け留めされ、同他端は、後述するスライドロック機構(図示しない)の近傍に設けられたブラケット(図示しない)の切りお越し片(図示しない)に掛け留めされている。一方、この第1の操作ケーブル80におけるインナケーブル80bの一端は、上述したスライド解除リンク60の一端に掛け留めされ、同他端は、上述したスライドロック機構(図示しない)のフック(図示しない)に掛け留めされている。
【0019】
また、このスライド解除リンク60の他端には、後述する第2のケーブル操作リンク52のピン52bを引っ掛け可能なフック60aが形成されている。なお、このスライド解除リンク60には、通常モードにおいて、その一端側が上述したブラケット66の第2の切りお越し片66bに押し当てられるように(図5において、スライド解除リンク60が時計回り方向(矢印A方向)に付勢されるように)、自身60と上述したブラケット66の第2の切りお越し片66bとの間にトーションばね68が掛け渡されている。
【0020】
このように構成されたシートクッション2は、公知のスライド機構(図示しない)を介して、床フロア(図示しない)に組み付けられている。これにより、助手席1を前後にスライドさせることができる。また、このスライド機構(図示しない)には、シートクッション2のスライドをロック可能な公知のスライドロック機構(図示しない)が組み付けられている。これにより、助手席1のスライド位置を任意に調節できる。シートクッション2は、このように構成されている。
【0021】
次に、図1に戻って、シートバック3を説明する。このシートバック3も、主として、バックフレーム20と、このバックフレーム20を包み込むバックパッド(図示しない)と、このバックパッドの表面をカバーリングする表皮(図示しない)とから構成されている。
【0022】
このバックフレーム20も、左のサイドフレーム22と、右のサイドフレーム24と、この両サイドフレーム22、24の上端を橋渡すアッパフレーム26とから、略コ字状に形成されている。
【0023】
このアッパフレーム26の左側(バックフレーム20の左側の肩口に相当する部位)には、ウォークインレバー82が枢着されている。また、このアッパフレーム26の左側には、切りお越し片28aが形成されたブラケット28が締結されている。一方、左のサイドフレーム22の下側にも、第1の切りお越し片62aと第2の切りお越し片62bとが形成されたブラケット62が締結されている。
【0024】
また、図4〜5に示すように、左のサイドフレーム22の下側には、その内面側に第1のケーブル操作リンク50、その外面側に第2のケーブル操作リンク52が枢着されている。詳しくは、これら両ケーブル操作リンク50、52は、ヒンジピン54を介して一体と成るように左のサイドフレーム22の下側に枢着されている。
【0025】
この第1のケーブル操作リンク50の一端と、上述したウォークインレバー82との間に第2の操作ケーブル84が掛け留めされている。この第2の操作ケーブル84は、上述した第1の操作ケーブル80と同様に、筒状に形成されたアウタケーブル84aと、このアウタケーブル84aの内側に差し込まれたインナケーブル84bとから2重構造となっている。
【0026】
そして、この第2の操作ケーブル84におけるアウタケーブル84aの一端も、上述したブラケット28の切りお越し片28aに掛け留めされ、同他端も、上述したブラケット62の第1の切りお越し片62aに掛け留めされている。一方、この第2の操作ケーブル84におけるインナケーブル84bの一端も、上述したウォークインレバー82に掛け留めされ、同他端も、上述した第1のケーブル操作リンク50の一端に掛け留めされている。
【0027】
また、この第1のケーブル操作リンク50の他端には、後述するリク解除操作プレート58の長孔58aと短孔58bとの内部を移動可能なピン50bが形成されている。なお、この第1のケーブル操作リンク50には、通常モードにおいて、その一端側が上述したブラケット62の第2の切りお越し片62bに押し当てられるように(図5において、第1のケーブル操作リンク50が反時計回り方向(矢印B方向)に付勢されるように)、自身50と上述したブラケット62の第1の切りお越し片62aとの間に引っ張りばね64が掛け渡されている。
【0028】
一方、第2のケーブル操作リンク52の他端にも、後述するスライド解除リンク60を押し当て可能なピン52bが形成されている。
【0029】
また、左のサイドフレーム22の下側には、その内面側にリク解除操作プレート58が左のリクライナ4のヒンジピン4aに締結される格好で設けられている。このリク解除操作プレート58には、その略周方向に沿って長孔58aと、この長孔58aの一端と連通するようにその略半径方向に沿って短孔58bとが形成されている。これら両孔58a、58bの内部は、上述したように、第1のケーブル操作リンク50のピン50bが移動可能となっている。
【0030】
また、左のサイドフレーム22の下側には、その外面側にストラップ70を有する大倒しレバー72が伝達ロッド74を介して枢着されている。この伝達ロッド74は、左右のサイドフレーム22、24を端渡すように構成されており、乗員がストラップ70を操作すると、左右のリクライナ4、5がロック状態からロック解除状態に切り替わるように、ワイヤー76とリク解除操作リンク78とを介してリク伝達ロッド6を回転させることができるように枢着されている。シートバック3は、このように構成されている。
【0031】
なお、上述したリク第1のケーブル操作リンク50と、リク解除操作プレート58とが、特許請求の範囲に記載の「保持機構」に相当する。
【0032】
最後に、左のリクライナ4を説明する。このリクライナ4は、公知のものであり、図2に示すように、主として、ハウジング42によって相対的に回転可能に組み付けられたガイド30と、ラチェット40とから構成されている。このガイド30の外面は、左のサイドフレームの外面に締結されており、このラチェット40の外面は、ロアアーム12aの内面に締結されている。
【0033】
このガイド30の内部には、リクライナ4のヒンジピン4aに係合するヒンジカム32と、このヒンジカム32の回転に伴ってスライドするスライドカム34と、このスライドカム34のスライドに伴ってスライドする一対のポール36、36とから構成されている。
【0034】
この両ポール36には、ラチェット40の内周面に形成された係合ゾーン40aと係合可能な係合歯36aが形成されている。なお、このヒンジカム32は、常時、両ポール36が外側に向けて付勢されるように、スパイラルスプリング38によって付勢されている。これにより、常時、リクライナ4をロック状態(ガイド30とラチェット40との相対回転が規制された状態)にできる。
【0035】
また、この図2からも明らかなように、ラチェット40の内周面には、一対のフリーゾーン40b、40bが形成されている。このフリーゾーン40bは、係合ゾーン40aよりラチェット40の中心側に向けて盛り上がり状に形成されている。そのため、左のリクライナ4は、シートバック3の前倒れに伴って、ポール36の係合歯36aがフリーゾーン40bに到達すると、ヒンジカム32の回転がガイド30に対して規制された状態となるように構成されている。
【0036】
なお、さらなるシートバック3の前倒れに伴って、ポール36の係合歯36aがフリーゾーン40bを過ぎると、このポール36の係合歯36aとラチェット40の係合ゾーン40aとが再係合することとなる。なお、左右のリクライナ4、5の各ヒンジピン4a、5a(図示しない)は、リク伝達ロッド6を介して締結されている。これにより、左右のリクライナ4、5の状態(ロック状態またはロック解除状態)を同期させることができる。左のリクライナ4は、このように構成されている。
【0037】
そして、上述したシートクッション2と、上述したシートバック3とから助手席1は構成されており、これら左右のリクライナ4、5を介して、シートバック3は、シートクッション2に対して組み付けられている。このとき、このシートバック3は、シートクッション2に対して上述した左右のリクライナ4、5のみでなく、スパイラルスプリング(図示しない)も介して組み付けられている。
【0038】
これにより、常時、シートバック3を前倒れ方向に付勢できるため、これら左右のリクライナ4、5のロック解除を行うと、このスパイラルスプリング(図示しない)の付勢力を利用して、シートバック3を通常モードからウォークインモードまたは通常モードから大倒しモードに切り替えることができる。
【0039】
続いて、上述した構成から成る助手席1の動作を説明する。なお、この説明にあたって、通常モードからウォークインモードに切り替える動作の説明と、通常モードから大倒しモードに切り替える動作との説明とを個別に行っていく。また、いずれの説明にあっても、通常モードでは、スライドロック機構はロック状態になっている。
【0040】
まず、図3および図5〜8を参照して、通常モードからウォークインモードに切り替える動作を説明していく。はじめに、図3(A)、図5に示す状態から、ウォークインレバー82を操作すると(図3(B)に示す状態)、第2の操作ケーブル84のインナケーブル84bが引っ張られる。これにより、第1のケーブル操作リンク50と第2のケーブル操作リンク52とが、ヒンジピン54の軸回りに引っ張りばね64の付勢力に抗して回転していく(図6参照)。
【0041】
このように第1のケーブル操作リンク50が回転していくと、そのピン50bがリク解除操作プレート58の短孔58bに入り込みながらその内面を押し当てるため、このリク解除操作プレート58を回転させることができる。これにより、左のリクライナ4のヒンジピン4aも回転するため、左のリクライナ4がロック状態からロック解除状態に切り替わる。
【0042】
また、このように第2のケーブル操作リンク52が回転していくと、そのピン52bがスライド解除リンク60に対して当接可能な位置に近づいていく。なお、左のリクライナ4のヒンジピン4aが回転すると、リク伝達ロッド6を介して右のリクライナ5のヒンジピン5a(図示しない)も回転するため、右のリクライナ5もロック状態からロック解除状態に切り替わる。
【0043】
このように左右のリクライナ4、5がロック状態からロック解除状態に切り替わると、シートバック3は、上述したようにスパイラルスプリング(図示しない)の付勢力によって、前倒れしていく(図7参照)。すなわち、左右のリクライナ4、5において、その両ガイド30、30が、その両ラチェット40、40に対して回転していく。
【0044】
この回転によって、左右のリクライナ4、5の各ポール36の係合歯36aが各フリーゾーン40bに到達すると、既に説明したように、各ヒンジカム32は、その回転が各ガイド30に対して規制された状態となっている。
【0045】
これにより、このヒンジカム32に係合された左のヒンジピン4aに締結されているリク解除操作プレート58も、その回転が左のサイドフレーム22に対して規制された状態となるため、リク解除操作プレート58の短孔58bに入り込んだ第1のケーブル操作リンク50のピン50bが引っ張りばね64の復元力よって戻ろうとしても、この戻りを防止できる。
【0046】
そのため、左右のリクライナ4、5をロック解除状態に保持できる。このように戻りを防止できると、結果として、第2のケーブル操作リンク52のピン52bがスライド解除リンク60に対して当接可能な位置に近づいた状態に保持できる。
【0047】
さらに、シートバック3が前倒れしていくと、第2のケーブル操作リンク52のピン52bがスライド解除リンク60を押し当てはじめる。これにより、スライド解除リンク60が、左のリクライナ4のヒンジピン4aの軸回りにトーションばね68の付勢力に抗して回転していく。このとき、押し当てたピン52bがスライド解除リンク60のフック60aに引っ掛かるため、このピン52bの押し当て脱落することを防止できる。
【0048】
このようにスライド解除リンク60が回転していくと、第1の操作ケーブル80のインナケーブル80bが引っ張られるため、スライドロック機構(図示しない)をロック状態からロック解除状態に切り替えることができる。なお、シートバック3の前倒れは、シートバック3がシートクッション2に対して略重なり合う大倒し姿勢になるまで行われる(図3(C)、図8参照)。
【0049】
この大倒し姿勢では、スライド解除リンク60は回転したままの状態であるため、第1の操作ケーブル80のインナケーブル80bの引っ張りも保持され、スライドロック機構(図示しない)のロック解除状態も保持されることとなる。そのため、この大倒し姿勢において、助手席1を前方へスライドさせることができる(図3(D)参照)。
【0050】
なお、この大倒し姿勢になっても、上述したように、リク解除操作プレート58も、その回転が左のサイドフレーム22に対して規制された状態となっているため、左右のリクライナ4、5において、ポール36の係合歯36aがラチェット40の係合ゾーン40aに再到達していても、この左右のリクライナ4、5をロック解除状態に保持できる。
【0051】
このようにして、助手席1を通常モードからウォークインモードに切り替えることができる。このウォークインモードでは、上述したように、スライドロック機構(図示しない)はロック解除状態となっており、左右のリクライナ4、5もロック解除状態となっておいる。なお、ウォークインモードに切り替えた助手席1を通常モードに戻すには、シートバック3を引き起こせばよい(図3(E)参照)。
【0052】
次に、図3および図9〜12を参照して、通常モードから大倒しモードに切り替える動作を説明していく。はじめに、図3(F)、図9に示す状態から、ストラップ70を操作すると(図3(G)に示す状態)、大倒しレバー72が引き起こされる。これにより、伝達ロッド74が回転していくと共に、この回転によりワイヤー76も引き起こされていく。
【0053】
このようにワイヤーが引き起こされていくと、リク解除操作リンク78も引き起こされるため、リク伝達ロッド6を回転させることができる(図10参照)。これにより、左右のリクライナ4、5の各ヒンジピン4a、5a(図示しない)も回転するため、左右のリクライナ4、5がロック状態からロック解除状態に切り替わる。このとき、第1のケーブル操作リンク50のピン50bがリク解除操作プレート58の長孔58aの内部を移動する格好となりながら、リク解除操作プレート58も回転している。
【0054】
このように左右のリクライナ4、5がロック状態からロック解除状態に切り替わると、シートバック3は、上述したようにスパイラルスプリング(図示しない)の付勢力によって、前倒れしていく(図11参照)。
【0055】
さらに、シートバック3が前倒れしていくと、上述した通常モードからウォークインモードに切り替える動作の説明とは異なり、第2のケーブル操作リンク52のピン52bがスライド解除リンク60に対して当接可能な位置に近づいた状態になっていないため、第2のケーブル操作リンク52のピン52bがスライド解除リンク60を押し当てることがない。これにより、スライドロック機構はロック状態のままとなっている。
【0056】
なお、シートバック3の前倒れは、シートバック3がシートクッション2に対して略重なり合う大倒し姿勢になるまで行われる(図3(H)、図12参照)。このように大倒し姿勢になると、上述したように、左右のリクライナ4、5において、ポール36の係合歯36aとラチェット40の係合ゾーン40aとが再係合するため、この左右のリクライナ4、5をロック状態に戻すことができる。
【0057】
このようにして、助手席1を通常モードから大倒しモードに切り替えることができる。この大倒しモードでは、上述したように、スライドロック機構(図示しない)はロック状態となっており、左右のリクライナ4、5もロック状態となっている。なお、大倒しモードに切り替えた助手席1を通常モードに戻すには、ストラップ70操作による左右のリクライナ4、5をロック解除状態にしてシートバック3を引き起こせばよい。
【0058】
本発明の実施例に係る助手席1は、上述したように構成されている。この構成によれば、左のサイドフレーム22の下側には、その内面側にリク解除操作プレート58が左のリクライナ4のヒンジピン4aに締結される格好で設けられている。また、左のサイドフレーム22の下側には、その内面側に第1のケーブル操作リンク50が枢着されている。このリク解除操作プレート58には、第1のケーブル操作リンク50のピン50bが移動可能な長孔58aと短孔58bとが形成されている。そのため、第1のケーブル操作リンク50は、シートバック3側のフレームに枢着されているため、従来技術の説明と異なり、保持機構をコンパクトにできる。特に、左のリクライナ4の付近において、その径方向にコンパクトにできる。
【0059】
上述した内容は、あくまでも本発明の一実施の形態に関するものであって、本発明が上記内容に限定されることを意味するものではない。
実施例では、「車両用シート」の例として、「後部座席が存在する助手席1」を例に説明した。しかし、これに限定されるものでなく、例えば、「後部座席が存在する運転席」または「3列目座席が存在する2列目座席」であっても構わない。
【符号の説明】
【0060】
1 助手席(車両用シート)
2 シートクッション
3 シートバック
4 左のリクライナ
4a ヒンジピン
5 右のリクライナ
5a ヒンジピン
36 ポール
40 ラチェット
40a 係合ゾーン(再係合ゾーン)
40b フリーゾーン
50 第1のケーブル操作リンク(操作リンク)
50b ピン
58 リク解除操作プレート
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シートバックの前倒れに伴って、リクライナのポールとラチェットが係合する係合ゾーンから、このポールとラチェットが非係合するフリーゾーンを過ぎ、このポールとラチェットが再係合する再係合ゾーンに到達しても、ポールとラチェットとを非係合状態に保持する保持機構を備えた車両用シートが既に知られている。ここで、下記特許文献1には、この保持機構を利用して、シートバックの前傾姿勢の保持を行っている技術が開示されている。これにより、シートバックを前傾姿勢に保持させるレバーの操作を、シートバックが前傾姿勢に到達する前に解除しても、シートバックが大倒し姿勢になることなく、シートバックを前傾姿勢に保持できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−6931号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した特許文献1の技術では、保持機構を構成する連結レバーがシートクッション側のフレームに枢着されているため、この保持機構が大がかりな構造となっていた。
【0005】
本発明は、このような課題を解決しようとするもので、その目的は、コンパクトな構造の保持機構を備えた車両用シートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記の目的を達成するためのものであって、以下のように構成されている。
請求項1に記載の発明は、シートバックの前倒れに伴って、リクライナのポールとラチェットが係合する係合ゾーンから、このポールとラチェットが非係合するフリーゾーンを過ぎ、このポールとラチェットが再係合する再係合ゾーンに到達しても、ポールとラチェットとを非係合状態に保持する保持機構を備えた車両用シートであって、保持機構は、リクライナのヒンジピンに締結されているリク解除操作プレートと、このリク解除操作プレートの動きを規制可能なピンを有する操作リンクとから構成されており、操作リンクは、シートバック側のフレームに枢着されていることを特徴とする構成である。
この構成によれば、操作リンクは、シートバック側のフレームに枢着されているため、従来技術の説明と異なり、保持機構をコンパクトにできる。特に、左のリクライナの付近において、その径方向にコンパクトにできる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】図1は、本発明の実施例に係る助手席の内部のフレームの斜視図である。
【図2】図2は、図1の助手席のリクライナの分解斜視図である。
【図3】図3は、図1の助手席の動きを示す模式図である。
【図4】図4は、図1のIV−IV線断面図である。
【図5】図5は、図1の助手席の主要部の側面模式図であり、ウォークイン姿勢に切り替える前の通常姿勢の状態を示している。
【図6】図6は、ウォークイン姿勢に切り替えるウォークインレバーを操作した状態を示している。
【図7】図7は、ウォークイン姿勢の切り替え途中の状態を示している。
【図8】図8は、ウォークイン姿勢の切り替え完了の状態を示している。
【図9】図9は、図1の助手席の側面模式図であり、大倒し姿勢に切り替える前の通常姿勢の状態を示している。
【図10】図10は、大倒し姿勢に切り替えるストラップを操作した状態を示している。
【図11】図11は、大倒し姿勢の切り替え途中の状態を示している。
【図12】図12は、大倒し姿勢の切り替え完了の状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を実施するための形態を、図1〜12を用いて説明する。なお、以下の説明にあたって、「車両用シート」の例として、「後部座席(図示しない)が存在する助手席1」を例に説明していく。また、以下の説明にあたって、上、下、前、後、左、右とは、上述した図に記載した、上、下、前、後、左、右の方向、すなわち、この助手席1を基準にしたときの上、下、前、後、左、右の方向を示している。
【0009】
まず、図1〜5を参照して、本発明の実施例に係る助手席1の概略構成を説明する。図1に示すように、この助手席1は、主として、シートクッション2(図1において、クッションフレーム10の一部のみを示している)と、シートバック3(図1において、バックフレーム20のみを示している)とから構成されている。このシートバック3は、シートクッション2に対して左右に対を成すリクライナ4、5を介して組み付けられている。
【0010】
このように左右のリクライナ4、5を介して組み付けられていることにより、通常モード(乗員が着座できるように、シートバック3が後傾姿勢となった状態であり、図3(A)、図3(F)に示す状態)において、シートクッション2に対するシートバック3の傾き角度を任意に調節できる。
【0011】
また、このように左右のリクライナ4、5を介して組み付けられていることにより、通常モードからウォークインモード(後部座席の乗員が乗降できるように、シートバック3がシートクッション2に対して略重なり合う姿勢となった状態であり、図3(D)に示す状態)または大倒しモード(シートバック3の背面を荷物を置く面として使用できるように、ウォークインモードと同じく、シートバック3がシートクッション2に対して略重なり合う姿勢となった状態であり、図3(I)に示す状態))に切り替えることができる。
【0012】
以下に、これらシートクッション2と、シートバック3と左のリクライナ4とを個別に説明していく。なお、右のリクライナ5は、左のリクライナ4と同じであるため、その詳細な説明は省略することとする。
【0013】
はじめに、シートクッション2から説明していく。このシートクッション2は、主として、クッションフレーム10と、このクッションフレーム10を包み込むクッションパッド(図示しない)と、このクッションパッドの表面をカバーリングする表皮(図示しない)とから構成されている。
【0014】
このクッションフレーム10は、ロアアーム12aを有する左のサイドフレーム12と、ロアアーム14aを有する右のサイドフレーム14と、この両サイドフレーム12、14の前端を橋渡すフロントロッド(図示しない)と、この両サイドフレーム12、14の後端を橋渡すリアロッド18とから、略矩形枠状に形成されている。
【0015】
この左のサイドフレーム12の外面には、図4〜5に示すように、第1の切りお越し片66aと第2の切りお越し片66bとが形成されたブラケット66が締結されている。この左のロアアーム12aの内面には、後述する左のリクライナ4のラチェット40が締結されている。このことは、右のロアアーム14aにおいても同様である。
【0016】
また、この左のロアアーム12aの外周には、後述するヒンジピン54の位置決めスペーサ56に当接可能な第1のストッパ12a1と第2のストッパ12a2とが形成されている。これにより、シートバック3が過剰に前倒れしたり後ろ倒れしたりすることを規制できる。このことは、右のロアアーム14aにおいても同様である。シートクッション2は、このように構成されている。
【0017】
また、この左のロアアーム12aの外面には、後述する左のリクライナ4のヒンジピン4aを介してスライド解除リンク60が枢着されている。このスライド解除リンク60の一端と、後述するスライドロック機構(図示しない)との間には、第1の操作ケーブル80が掛け留めされている。この第1の操作ケーブル80は、筒状に形成されたアウタケーブル80aと、このアウタケーブル80aの内側に差し込まれたインナケーブル80bとから2重構造となっている。
【0018】
そして、この第1の操作ケーブル80におけるアウタケーブル80aの一端は、上述したブラケット66の第1の切りお越し片66aに掛け留めされ、同他端は、後述するスライドロック機構(図示しない)の近傍に設けられたブラケット(図示しない)の切りお越し片(図示しない)に掛け留めされている。一方、この第1の操作ケーブル80におけるインナケーブル80bの一端は、上述したスライド解除リンク60の一端に掛け留めされ、同他端は、上述したスライドロック機構(図示しない)のフック(図示しない)に掛け留めされている。
【0019】
また、このスライド解除リンク60の他端には、後述する第2のケーブル操作リンク52のピン52bを引っ掛け可能なフック60aが形成されている。なお、このスライド解除リンク60には、通常モードにおいて、その一端側が上述したブラケット66の第2の切りお越し片66bに押し当てられるように(図5において、スライド解除リンク60が時計回り方向(矢印A方向)に付勢されるように)、自身60と上述したブラケット66の第2の切りお越し片66bとの間にトーションばね68が掛け渡されている。
【0020】
このように構成されたシートクッション2は、公知のスライド機構(図示しない)を介して、床フロア(図示しない)に組み付けられている。これにより、助手席1を前後にスライドさせることができる。また、このスライド機構(図示しない)には、シートクッション2のスライドをロック可能な公知のスライドロック機構(図示しない)が組み付けられている。これにより、助手席1のスライド位置を任意に調節できる。シートクッション2は、このように構成されている。
【0021】
次に、図1に戻って、シートバック3を説明する。このシートバック3も、主として、バックフレーム20と、このバックフレーム20を包み込むバックパッド(図示しない)と、このバックパッドの表面をカバーリングする表皮(図示しない)とから構成されている。
【0022】
このバックフレーム20も、左のサイドフレーム22と、右のサイドフレーム24と、この両サイドフレーム22、24の上端を橋渡すアッパフレーム26とから、略コ字状に形成されている。
【0023】
このアッパフレーム26の左側(バックフレーム20の左側の肩口に相当する部位)には、ウォークインレバー82が枢着されている。また、このアッパフレーム26の左側には、切りお越し片28aが形成されたブラケット28が締結されている。一方、左のサイドフレーム22の下側にも、第1の切りお越し片62aと第2の切りお越し片62bとが形成されたブラケット62が締結されている。
【0024】
また、図4〜5に示すように、左のサイドフレーム22の下側には、その内面側に第1のケーブル操作リンク50、その外面側に第2のケーブル操作リンク52が枢着されている。詳しくは、これら両ケーブル操作リンク50、52は、ヒンジピン54を介して一体と成るように左のサイドフレーム22の下側に枢着されている。
【0025】
この第1のケーブル操作リンク50の一端と、上述したウォークインレバー82との間に第2の操作ケーブル84が掛け留めされている。この第2の操作ケーブル84は、上述した第1の操作ケーブル80と同様に、筒状に形成されたアウタケーブル84aと、このアウタケーブル84aの内側に差し込まれたインナケーブル84bとから2重構造となっている。
【0026】
そして、この第2の操作ケーブル84におけるアウタケーブル84aの一端も、上述したブラケット28の切りお越し片28aに掛け留めされ、同他端も、上述したブラケット62の第1の切りお越し片62aに掛け留めされている。一方、この第2の操作ケーブル84におけるインナケーブル84bの一端も、上述したウォークインレバー82に掛け留めされ、同他端も、上述した第1のケーブル操作リンク50の一端に掛け留めされている。
【0027】
また、この第1のケーブル操作リンク50の他端には、後述するリク解除操作プレート58の長孔58aと短孔58bとの内部を移動可能なピン50bが形成されている。なお、この第1のケーブル操作リンク50には、通常モードにおいて、その一端側が上述したブラケット62の第2の切りお越し片62bに押し当てられるように(図5において、第1のケーブル操作リンク50が反時計回り方向(矢印B方向)に付勢されるように)、自身50と上述したブラケット62の第1の切りお越し片62aとの間に引っ張りばね64が掛け渡されている。
【0028】
一方、第2のケーブル操作リンク52の他端にも、後述するスライド解除リンク60を押し当て可能なピン52bが形成されている。
【0029】
また、左のサイドフレーム22の下側には、その内面側にリク解除操作プレート58が左のリクライナ4のヒンジピン4aに締結される格好で設けられている。このリク解除操作プレート58には、その略周方向に沿って長孔58aと、この長孔58aの一端と連通するようにその略半径方向に沿って短孔58bとが形成されている。これら両孔58a、58bの内部は、上述したように、第1のケーブル操作リンク50のピン50bが移動可能となっている。
【0030】
また、左のサイドフレーム22の下側には、その外面側にストラップ70を有する大倒しレバー72が伝達ロッド74を介して枢着されている。この伝達ロッド74は、左右のサイドフレーム22、24を端渡すように構成されており、乗員がストラップ70を操作すると、左右のリクライナ4、5がロック状態からロック解除状態に切り替わるように、ワイヤー76とリク解除操作リンク78とを介してリク伝達ロッド6を回転させることができるように枢着されている。シートバック3は、このように構成されている。
【0031】
なお、上述したリク第1のケーブル操作リンク50と、リク解除操作プレート58とが、特許請求の範囲に記載の「保持機構」に相当する。
【0032】
最後に、左のリクライナ4を説明する。このリクライナ4は、公知のものであり、図2に示すように、主として、ハウジング42によって相対的に回転可能に組み付けられたガイド30と、ラチェット40とから構成されている。このガイド30の外面は、左のサイドフレームの外面に締結されており、このラチェット40の外面は、ロアアーム12aの内面に締結されている。
【0033】
このガイド30の内部には、リクライナ4のヒンジピン4aに係合するヒンジカム32と、このヒンジカム32の回転に伴ってスライドするスライドカム34と、このスライドカム34のスライドに伴ってスライドする一対のポール36、36とから構成されている。
【0034】
この両ポール36には、ラチェット40の内周面に形成された係合ゾーン40aと係合可能な係合歯36aが形成されている。なお、このヒンジカム32は、常時、両ポール36が外側に向けて付勢されるように、スパイラルスプリング38によって付勢されている。これにより、常時、リクライナ4をロック状態(ガイド30とラチェット40との相対回転が規制された状態)にできる。
【0035】
また、この図2からも明らかなように、ラチェット40の内周面には、一対のフリーゾーン40b、40bが形成されている。このフリーゾーン40bは、係合ゾーン40aよりラチェット40の中心側に向けて盛り上がり状に形成されている。そのため、左のリクライナ4は、シートバック3の前倒れに伴って、ポール36の係合歯36aがフリーゾーン40bに到達すると、ヒンジカム32の回転がガイド30に対して規制された状態となるように構成されている。
【0036】
なお、さらなるシートバック3の前倒れに伴って、ポール36の係合歯36aがフリーゾーン40bを過ぎると、このポール36の係合歯36aとラチェット40の係合ゾーン40aとが再係合することとなる。なお、左右のリクライナ4、5の各ヒンジピン4a、5a(図示しない)は、リク伝達ロッド6を介して締結されている。これにより、左右のリクライナ4、5の状態(ロック状態またはロック解除状態)を同期させることができる。左のリクライナ4は、このように構成されている。
【0037】
そして、上述したシートクッション2と、上述したシートバック3とから助手席1は構成されており、これら左右のリクライナ4、5を介して、シートバック3は、シートクッション2に対して組み付けられている。このとき、このシートバック3は、シートクッション2に対して上述した左右のリクライナ4、5のみでなく、スパイラルスプリング(図示しない)も介して組み付けられている。
【0038】
これにより、常時、シートバック3を前倒れ方向に付勢できるため、これら左右のリクライナ4、5のロック解除を行うと、このスパイラルスプリング(図示しない)の付勢力を利用して、シートバック3を通常モードからウォークインモードまたは通常モードから大倒しモードに切り替えることができる。
【0039】
続いて、上述した構成から成る助手席1の動作を説明する。なお、この説明にあたって、通常モードからウォークインモードに切り替える動作の説明と、通常モードから大倒しモードに切り替える動作との説明とを個別に行っていく。また、いずれの説明にあっても、通常モードでは、スライドロック機構はロック状態になっている。
【0040】
まず、図3および図5〜8を参照して、通常モードからウォークインモードに切り替える動作を説明していく。はじめに、図3(A)、図5に示す状態から、ウォークインレバー82を操作すると(図3(B)に示す状態)、第2の操作ケーブル84のインナケーブル84bが引っ張られる。これにより、第1のケーブル操作リンク50と第2のケーブル操作リンク52とが、ヒンジピン54の軸回りに引っ張りばね64の付勢力に抗して回転していく(図6参照)。
【0041】
このように第1のケーブル操作リンク50が回転していくと、そのピン50bがリク解除操作プレート58の短孔58bに入り込みながらその内面を押し当てるため、このリク解除操作プレート58を回転させることができる。これにより、左のリクライナ4のヒンジピン4aも回転するため、左のリクライナ4がロック状態からロック解除状態に切り替わる。
【0042】
また、このように第2のケーブル操作リンク52が回転していくと、そのピン52bがスライド解除リンク60に対して当接可能な位置に近づいていく。なお、左のリクライナ4のヒンジピン4aが回転すると、リク伝達ロッド6を介して右のリクライナ5のヒンジピン5a(図示しない)も回転するため、右のリクライナ5もロック状態からロック解除状態に切り替わる。
【0043】
このように左右のリクライナ4、5がロック状態からロック解除状態に切り替わると、シートバック3は、上述したようにスパイラルスプリング(図示しない)の付勢力によって、前倒れしていく(図7参照)。すなわち、左右のリクライナ4、5において、その両ガイド30、30が、その両ラチェット40、40に対して回転していく。
【0044】
この回転によって、左右のリクライナ4、5の各ポール36の係合歯36aが各フリーゾーン40bに到達すると、既に説明したように、各ヒンジカム32は、その回転が各ガイド30に対して規制された状態となっている。
【0045】
これにより、このヒンジカム32に係合された左のヒンジピン4aに締結されているリク解除操作プレート58も、その回転が左のサイドフレーム22に対して規制された状態となるため、リク解除操作プレート58の短孔58bに入り込んだ第1のケーブル操作リンク50のピン50bが引っ張りばね64の復元力よって戻ろうとしても、この戻りを防止できる。
【0046】
そのため、左右のリクライナ4、5をロック解除状態に保持できる。このように戻りを防止できると、結果として、第2のケーブル操作リンク52のピン52bがスライド解除リンク60に対して当接可能な位置に近づいた状態に保持できる。
【0047】
さらに、シートバック3が前倒れしていくと、第2のケーブル操作リンク52のピン52bがスライド解除リンク60を押し当てはじめる。これにより、スライド解除リンク60が、左のリクライナ4のヒンジピン4aの軸回りにトーションばね68の付勢力に抗して回転していく。このとき、押し当てたピン52bがスライド解除リンク60のフック60aに引っ掛かるため、このピン52bの押し当て脱落することを防止できる。
【0048】
このようにスライド解除リンク60が回転していくと、第1の操作ケーブル80のインナケーブル80bが引っ張られるため、スライドロック機構(図示しない)をロック状態からロック解除状態に切り替えることができる。なお、シートバック3の前倒れは、シートバック3がシートクッション2に対して略重なり合う大倒し姿勢になるまで行われる(図3(C)、図8参照)。
【0049】
この大倒し姿勢では、スライド解除リンク60は回転したままの状態であるため、第1の操作ケーブル80のインナケーブル80bの引っ張りも保持され、スライドロック機構(図示しない)のロック解除状態も保持されることとなる。そのため、この大倒し姿勢において、助手席1を前方へスライドさせることができる(図3(D)参照)。
【0050】
なお、この大倒し姿勢になっても、上述したように、リク解除操作プレート58も、その回転が左のサイドフレーム22に対して規制された状態となっているため、左右のリクライナ4、5において、ポール36の係合歯36aがラチェット40の係合ゾーン40aに再到達していても、この左右のリクライナ4、5をロック解除状態に保持できる。
【0051】
このようにして、助手席1を通常モードからウォークインモードに切り替えることができる。このウォークインモードでは、上述したように、スライドロック機構(図示しない)はロック解除状態となっており、左右のリクライナ4、5もロック解除状態となっておいる。なお、ウォークインモードに切り替えた助手席1を通常モードに戻すには、シートバック3を引き起こせばよい(図3(E)参照)。
【0052】
次に、図3および図9〜12を参照して、通常モードから大倒しモードに切り替える動作を説明していく。はじめに、図3(F)、図9に示す状態から、ストラップ70を操作すると(図3(G)に示す状態)、大倒しレバー72が引き起こされる。これにより、伝達ロッド74が回転していくと共に、この回転によりワイヤー76も引き起こされていく。
【0053】
このようにワイヤーが引き起こされていくと、リク解除操作リンク78も引き起こされるため、リク伝達ロッド6を回転させることができる(図10参照)。これにより、左右のリクライナ4、5の各ヒンジピン4a、5a(図示しない)も回転するため、左右のリクライナ4、5がロック状態からロック解除状態に切り替わる。このとき、第1のケーブル操作リンク50のピン50bがリク解除操作プレート58の長孔58aの内部を移動する格好となりながら、リク解除操作プレート58も回転している。
【0054】
このように左右のリクライナ4、5がロック状態からロック解除状態に切り替わると、シートバック3は、上述したようにスパイラルスプリング(図示しない)の付勢力によって、前倒れしていく(図11参照)。
【0055】
さらに、シートバック3が前倒れしていくと、上述した通常モードからウォークインモードに切り替える動作の説明とは異なり、第2のケーブル操作リンク52のピン52bがスライド解除リンク60に対して当接可能な位置に近づいた状態になっていないため、第2のケーブル操作リンク52のピン52bがスライド解除リンク60を押し当てることがない。これにより、スライドロック機構はロック状態のままとなっている。
【0056】
なお、シートバック3の前倒れは、シートバック3がシートクッション2に対して略重なり合う大倒し姿勢になるまで行われる(図3(H)、図12参照)。このように大倒し姿勢になると、上述したように、左右のリクライナ4、5において、ポール36の係合歯36aとラチェット40の係合ゾーン40aとが再係合するため、この左右のリクライナ4、5をロック状態に戻すことができる。
【0057】
このようにして、助手席1を通常モードから大倒しモードに切り替えることができる。この大倒しモードでは、上述したように、スライドロック機構(図示しない)はロック状態となっており、左右のリクライナ4、5もロック状態となっている。なお、大倒しモードに切り替えた助手席1を通常モードに戻すには、ストラップ70操作による左右のリクライナ4、5をロック解除状態にしてシートバック3を引き起こせばよい。
【0058】
本発明の実施例に係る助手席1は、上述したように構成されている。この構成によれば、左のサイドフレーム22の下側には、その内面側にリク解除操作プレート58が左のリクライナ4のヒンジピン4aに締結される格好で設けられている。また、左のサイドフレーム22の下側には、その内面側に第1のケーブル操作リンク50が枢着されている。このリク解除操作プレート58には、第1のケーブル操作リンク50のピン50bが移動可能な長孔58aと短孔58bとが形成されている。そのため、第1のケーブル操作リンク50は、シートバック3側のフレームに枢着されているため、従来技術の説明と異なり、保持機構をコンパクトにできる。特に、左のリクライナ4の付近において、その径方向にコンパクトにできる。
【0059】
上述した内容は、あくまでも本発明の一実施の形態に関するものであって、本発明が上記内容に限定されることを意味するものではない。
実施例では、「車両用シート」の例として、「後部座席が存在する助手席1」を例に説明した。しかし、これに限定されるものでなく、例えば、「後部座席が存在する運転席」または「3列目座席が存在する2列目座席」であっても構わない。
【符号の説明】
【0060】
1 助手席(車両用シート)
2 シートクッション
3 シートバック
4 左のリクライナ
4a ヒンジピン
5 右のリクライナ
5a ヒンジピン
36 ポール
40 ラチェット
40a 係合ゾーン(再係合ゾーン)
40b フリーゾーン
50 第1のケーブル操作リンク(操作リンク)
50b ピン
58 リク解除操作プレート
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートバックの前倒れに伴って、リクライナのポールとラチェットが係合する係合ゾーンから、このポールとラチェットが非係合するフリーゾーンを過ぎ、このポールとラチェットが再係合する再係合ゾーンに到達しても、ポールとラチェットとを非係合状態に保持する保持機構を備えた車両用シートであって、
保持機構は、
リクライナのヒンジピンに締結されているリク解除操作プレートと、このリク解除操作プレートの動きを規制可能なピンを有する操作リンクとから構成されており、
操作リンクは、シートバック側のフレームに枢着されていることを特徴とする車両用シート。
【請求項1】
シートバックの前倒れに伴って、リクライナのポールとラチェットが係合する係合ゾーンから、このポールとラチェットが非係合するフリーゾーンを過ぎ、このポールとラチェットが再係合する再係合ゾーンに到達しても、ポールとラチェットとを非係合状態に保持する保持機構を備えた車両用シートであって、
保持機構は、
リクライナのヒンジピンに締結されているリク解除操作プレートと、このリク解除操作プレートの動きを規制可能なピンを有する操作リンクとから構成されており、
操作リンクは、シートバック側のフレームに枢着されていることを特徴とする車両用シート。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−218675(P2012−218675A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−89192(P2011−89192)
【出願日】平成23年4月13日(2011.4.13)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年4月13日(2011.4.13)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【Fターム(参考)】
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