説明

車両用スピーカー装置

【課題】音響の臨場感、音像定位感を向上してクリアな低音を再生する。
【解決手段】センターコンソール1の操作盤2とシフトレバー3との間における内部空間4の前部にはスピーカーボックス5及びウーハー6が設けられ、センターコンソール1の側壁にはスピーカーグリル7及びダクト開口8が設けられ、前席における運転席の足元又は助手席の足元に低音を再生するように、しかも、スピーカーボックス5が操作盤2で動かされる操作機構とシフトレバー11で動かされるシフト機構の間の何も配置されていなかったデッドスペースに設置されることによって、それまでただの空間であったデッドスペースをスピーカーボックス5の設置空間として活用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低音が強調できる車両用スピーカー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図5は、特許文献1で開示された車両音響システムを示す。図5において、乗用車31における前席の運転席32と助手席33との間にはセンターコンソール34が配置される。センターコンソール34には、音を作り出す音響装置35が設けられる。乗用車31の運転席側ドア36、助手席側ドア37、後部のシェルフボード38には、音響装置35か供給される音信号を音に再生して放出するスピーカー39が個別に設けられている。しかしながら、ウーハーの音を好適に再生するには、運転席側ドア36や助手席側ドア37の厚さが不足し、低音を強調できないという欠点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−270391号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
発明が解決しようとする課題は、低音の再生が満足できるものではないという点である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明による車両用スピーカー装置は、車両のセンターコンソールの内部中空空間を利用してウーハーに必要な筐体を形成し、前席における運転席の足元又は助手席の足元から低音を再生するようにしたものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明による車両用スピーカー装置は、センターコンソールの空間を利用してウーハーに必要な筐体を形成し、運転席の足元又は助手席の足元から低音が再生されるため、前席はもちろん、後席でも適切な音量の臨場感、音像定位感を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】実施の形態1のセンターコンソールを示す斜視図。
【図2】実施の形態1のセンターコンソールを示す側面図。
【図3】図2のA−A線断面図。
【図4】図2B−B線断面図。
【図5】従来の車両用音響システムの平面的な模式図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
「実施の形態1」
図1を参照し、実施の形態1に係る車両用スピーカー装置の構造を説明する。図1において、車両用スピーカー装置は、センターコンソール1の操作盤2とシフトレバー3との間における内部空間4の前部にはスピーカーボックス5及びウーハー6が設けられ、センターコンソール1の側壁にはスピーカーグリル7及びダクト開口8が設けられ、前席における運転席の足元又は助手席の足元に低音を再生するようした特徴を有する。
【0009】
操作盤2としては、エアコンや音響装置を操作する態様を例示した。センターコンソール1には、小物入れ9、サイドレバー10、コンソールボックス11も設けられる。
【0010】
ウーハー6がスピーカーボックス5の内部に設置され、スピーカーボックス5がダクト開口8に接続されてバスレフ型(バス・レフレックス、bass reflex)を構成している。バスレフ型は、ウーハー6から発生する音の低音域をヘルムホルツ共鳴によって増幅する方式であって、位相反転型とも呼ばれる。
【0011】
バスレフ型は、密閉型と比較すると、スピーカーボックス5の背圧の影響が小さく、伸び伸びと鳴るのが特徴とされる。むしろ、その特徴は、バックロードホーン型又は平面バッフルの方が著しい。よって、バスレフ型は、バックロードホーン型又は平面バッフルと比較すると、背圧の影響が大きいと言われる。
【0012】
また、バスレフ型は、密閉型よりも能率よく低音を再生する一方、ヘルムホルツ共鳴周波数より低い音圧出力は急激に減衰するため、低音再生の帯域には限界がある。その一方、バスレフ型は、バックロードホーン型よりは低い帯域まで低音を再生する。
【0013】
バスレフ型の変形例として、ダンプドバスレフ型がある。これはヘルムホルツ共鳴を制動(ダンプ)しQ値を小さくしたものであって、特性は密閉型とバスレフ型の中間的なものになる。ウーハー6の形式としては、振動板ユニット後方から発生する音を封殺する密閉型、振動板ユニット後方から発生する音の低音域をヘルムホルツ共鳴によって増幅する方式であるバスレフ型が存在する。いずれにせよ前面から再生する音については手を加えない。
【0014】
また、ダブルバスレフ型があるが、それはバスレフ型を二重にしたものであり、ヘルムホルツ共鳴が二重になるため、より低い帯域まで効率よく低音を再生する。
【0015】
図2を参照し、センターコンソール1の内部空間におけるスピーカーボックス5の周りについて説明する。センターコンソール1の内部空間には、スピーカーボックス5、操作盤2で動かされる操作機構13、シフトレバー11で動かされるシフト機構14が配置される。スピーカーボックス5は、操作機構13とシフト機構14との間の何も配置されていなかったデッドスペースに設置されるので、それまでただの空間であったデッドスペースをスピーカーボックス5の設置空間として活用できる。
【0016】
図3を参照し、スピーカーボックス5の内部構造について説明する。スピーカーボックス5のスピーカーグリル7の側の側壁にはウーハー用孔16が設けられる。そして、ウーハー6のスピーカーコーンの大口径側フランジ部17がウーハー用孔16に嵌めこまれて装着され、ウーハー6の振動ユニット18がスピーカーボックス5の内部に配置される。
【0017】
スピーカーボックス5とセンターコンソール1の側壁との間の隙間19には、振動を吸収したり又は振動を抑制したりする防振材20が設置される。防振材20は、スピーカーグリル7及び口径側フランジ部17と干渉することなくスピーカーグリル7及び口径側フランジ部17を囲むような環状であって、スピーカーボックス5のスピーカーグリル7の側の側壁とセンターコンソール1の側壁とに接触され、スピーカーボックス5をセンターコンソール1やセンターコンソール1を設置する車体構成体21から離すようにセンターコンソール1の内部に宙吊り状態に支持する。よって、ウーハー6から発生した音が隙間19の全体に逃げることなくスピーカーグリル7から乗員の足元に放出される。車体構成体21は車体フロア又は車体フロアに敷設されるカーペットのような部材である。
【0018】
ウーハー6と図外の音響装置とを接続するハーネス23は、スピーカーボックス5の底壁に装着されたハーネスグロメット24を貫通してスピーカーボックス5の内外に配線される。スピーカーボックス5の内部には、スピーカーボックス5の内部空間を運転席側と助手席側とに仕切る隔壁25が設けられる。隔壁25の内部には、振動を吸収したり又は振動を抑制したりする防振材26が入っている。
【0019】
図4を参照し、ダクト開口8の周りの内部構造について説明する。ダクト開口8は、センターコンソール1の側壁からスピーカーボックス5の側に延びるコンソール側ダクト27で囲まれる。コンソール側ダクト27がセンターコンソール1の側壁からスピーカーボックス5の側に行くに従って上り勾配となる上向きに形成され、ダクト開口8からスピーカーボックス5の方にゴミが入りづらくなる。コンソール側ダクト27は、スピーカーボックス5の側壁に形成された貫通孔28を囲むボックス側ダクト29の内部に挿入される。
【0020】
以下、図示は省略するが、バスレフ型以外の密閉型、ASW型について説明する。先ず、密閉型は、スピーカーボックスにウーハーから前側に出る音をスピーカーボックスの外部に出す以外の孔が設けられておらず、ウーハーから後側に出る音をスピーカーボックスの内部で減衰させてスピーカーボックスから外部に出る音として利用しない形式である。
【0021】
よって、密閉型では、ウーハーの振動ユニットで音を再生する時は、ウーハーはその前側と後側とに同じ周波数で逆相の音波を放出する。そのため前後の音波が干渉しあって、互いに打ち消し合うことになる。この効果は特に周波数が低い音波、すなわち低音において著しい。周波数の高い音波は指向性が強く前面・後面に放出された音波はほぼ前と後ろに直進し、干渉する事が無いのだが、周波数の低い音波は指向性が小さく、進行方向と逆方向に簡単に回折して干渉する。そのため振動板ユニットを単独で鳴らすだけではまともな音の再生は困難であり、何らかの工夫が必要である。
【0022】
密閉型は特に単純なものであり、単に振動板ユニットを出口の無い箱に取り付けたものである。これにより振動板ユニット背後から出た音波を箱の中で封殺するのである。また箱の内部の空気がバネの役割を果たし、振動板ユニットの低音を増強する効果もある。
【0023】
次に、ASW型は、振動板ユニットの後側に出る音の低音をバスレフ型で増強し、振動板ユニットの前側に出る音を密閉型で封殺する(前後逆にしてもよい)方式か、又は、前側後側共に同じくバスレフ型で増強する方式である。この場合は、チューニング周波数を同一にすると、前面と後面の再生音の位相が逆であるため、互いに打ち消しあう事になるため、チューニング周波数は1オクターブ以上ずらすことが必要になる。振動板ユニットからの直接音は耳に届かないため、中高音は再生せず、低音のみを再生するウーハー6となる。すなわち、サブウーハー6に用いられるのがASW型である。
【符号の説明】
【0024】
1はセンターコンソール、2は操作盤、3はシフトレバー、4は内部空間、5はスピーカーボックス、6はウーハー、7はスピーカーグリル、8はダクト開口、9は小物入れ、10はサイドレバー、11はコンソールボックス、13は操作機構、14はシフト機構、15は欠番、16はウーハー用孔、17は大口径側フランジ部、18は振動ユニット、19は隙間、20は防振材、21は車体構成体、22は欠番、23はハーネス、24はハーネスグロメット、25は隔壁、26は防振材、27はコンソール側ダクト、28は貫通孔、29はボックス側ダクト、30は欠番、31は乗用車、32は運転席、33は助手席、34はセンターコンソール、35は音響装置、36は運転席側ドア、37は助手席側ドア、38は後部のシェルフボード、39はスピーカー。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
センターコンソールの内部空間の前部にはウーハーが設けられ、センターコンソールの側壁にはウーハーからの音をセンターコンソールの外部に出すスピーカーグリルが設けられたことを特徴とする車両用スピーカー装置。
【請求項2】
ウーハーはスピーカーボックスに設けられたバスレフ形に構成されたことを特徴とする請求項1記載の車両用スピーカー装置。
【請求項3】
スピーカーボックスがセンターコンソールの内部空間に宙吊りになるように防振材でセンターコンソールに取り付けられたことを特徴とする請求項1記載の車両用スピーカー装置。
【請求項4】
ウーハーが運転席側と助手席側とに個別に設けられたことを特徴とする請求項1記載の車両用スピーカー装置。
【請求項5】
スピーカーボックスが運転席側と助手席側とに隔壁で仕切られたことを特徴とする請求項4記載の車両用スピーカー装置。
【請求項6】
隔壁の内部には防振材が入れられたことを特徴とする請求項5記載の車両用スピーカー装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−215074(P2010−215074A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−63084(P2009−63084)
【出願日】平成21年3月16日(2009.3.16)
【出願人】(000138244)株式会社モルテン (105)
【Fターム(参考)】