説明

車両用ディスクブレーキのキャリパボディ

【課題】キャリパボディを大型化させることなく液通孔を容易に形成することのできるモノコック構造ラジアルマウント式ピストン対向型の車両用ディスクブレーキのキャリパボディを提供する。
【解決手段】モノコック構造ラジアルマウント式ピストン対向型のディスクブレーキのキャリパボディ3において、シリンダ孔4の底部と該シリンダ孔内に収容されたピストン5との間に画成される液圧室8に作動液を供給するための液通孔として、一方の作用部3aの取付ボルト挿通孔3fより外側から他方3bの作用部のシリンダ孔4の液圧室8に向けて第1液通孔12を穿設し、他方の作用部3bから取付ボルト挿通孔3fと一方の作用部3aのシリンダ孔4との間を通して該シリンダ孔の液圧室8に向けて第2液通孔13を穿設する。第1液通孔12と第2液通孔13とをディスク軸と直交方向のキャリパボディの中心線L1よりも他方の作用部側で交差させて連通させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ディスクブレーキのキャリパボディに関し、詳しくは、自動二輪車や自動車等の各種走行車両に用いられるディスクブレーキにおけるモノコック構造ラジアルマウント式ピストン対向型のキャリパボディの構造に関し、特に、キャリパボディ内に設けられる液通孔の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用ディスクブレーキとして、ディスクロータの両側部にキャリパボディの作用部を対向配置し、各作用部にピストンを収容するシリンダ孔をディスクロータ側へ開口させてそれぞれ設けるとともに、一方の作用部のディスク回転方向両側部にディスク半径方向の取付ボルト挿通孔をそれぞれ設けたモノコック構造ラジアルマウント式ピストン対向型の車両用ディスクブレーキのキャリパボディが知られている。
【0003】
このキャリパボディでは、一方の作用部に形成された取付ボルト挿通孔を避けて、液圧室へ供給する液通孔を形成しなければならないことから、キャリパボディの外部に別部材の液通管を設けたものがあった(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
また、取付ボルト挿通孔を設けている一方の作用部から他方の作用部のシリンダ孔の液圧室に向けて穿設される第1液通孔と、一方の作用部から取付ボルト挿通孔よりも外側を通過して一方の作用部のシリンダ孔の液圧室に向けて穿設される第2液通孔と、他方の作用部から取付ボルト挿通孔よりも外側を通過して前記第2液通孔に向けて穿設される補助液通孔とを備え、該補助液通孔と前記第1液通孔とを交差させるとともに、この交差部にユニオン孔を、前記第1液通孔にブリューダ孔をそれぞれ形成したものがある(例えば、特許文献2参照。)。
【特許文献1】実開平7−12638号公報
【特許文献2】特開2005−163820号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述の特許文献1のものでは、連通管を用いることから、部品点数の増加や作業工数の増加を招き、コストダウンの妨げとなっていた。また、特許文献2のものでは、取付ボルト挿通孔よりも外側を通過するように液通孔を形成することから、キャリパボディが大型化するとともに、液通孔が複雑に配管されることから加工工数が多くなっていた。また、第2液通孔及び補助液通孔の加工時に形成されるキャリパ外面に開口する開口部をプラグで塞ぐ必要があった。
【0006】
そこで本発明は、キャリパボディを大型化させることなく液通孔を容易に形成することのできるモノコック構造ラジアルマウント式ピストン対向型の車両用ディスクブレーキのキャリパボディを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明は、ディスクロータを挟んで対向配置される一対の作用部をディスクロータの外周を跨ぐブリッジ部と共に一体形成したモノコック構造のキャリパボディであって、前記作用部にそれぞれ設けられたピストン収容用のシリンダ孔と、一方の作用部のディスク回転方向両側部にそれぞれ設けられたディスク半径方向の取付ボルト挿通孔とを備えたモノコック構造ラジアルマウント式ピストン対向型の車両用ディスクブレーキのキャリパボディにおいて、各シリンダ孔の底部と該シリンダ孔内に収容されたピストンとの間に画成される液圧室に作動液を供給するための液通孔として、一方の作用部の前記取付ボルト挿通孔より外側から他方の作用部のシリンダ孔の液圧室に向けて第1液通孔を穿設し、他方の作用部から前記取付ボルト挿通孔と一方の作用部のシリンダ孔との間を通して該シリンダ孔の液圧室に向けて第2液通孔を穿設するとともに、前記第1液通孔と前記第2液通孔とをディスク軸と直交方向のキャリパボディの中心線よりも他方の作用部側で交差させて連通させ、第1液通孔及び第2液通孔のいずれか一方の外面開口部にユニオン孔を、いずれか他方の外面開口部にブリューダ孔をそれぞれ形成したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明の車両用ディスクブレーキのキャリパボディによれば、少ない加工工数でディスクロータの両側に対向する液圧室を、第1液通孔と第2液通孔とで連通させることができるとともに、ユニオン孔から液圧室までの各液通孔の長さを極力短くすることができ、効率よく制動力を得ることができる。また、取付ボルト挿通孔よりもキャリパボディ内側に液通孔を形成させることができることから、キャリパボディの小型化及び軽量化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図1乃至図6は本発明の車両用ディスクブレーキのモノコック構造ラジアルマウント式ピストン対向型キャリパボディの一形態例を示す図で、図1は図4のI-I断面図、図2は図5のII-II断面図、図3は図4のIII-III断面図、図4はディスクブレーキの正面図、図5はディスクブレーキの平面図、図6はディスクブレーキの斜視図である。
【0010】
ディスクブレーキ1は、車両前進時に車輪と共に矢印A方向に回転するディスクロータ2を挟んで対向配置される一対の作用部3a,3bを、ディスクロータ2の外周を跨ぐブリッジ部3cとともに一体成形したモノコック構造のキャリパボディ3を有している。
【0011】
各作用部3a,3bには、ディスクロータ2側が開口したシリンダ孔4が2個ずつ対向するようにしてそれぞれ設けられている。各シリンダ孔4内には、ピストン5がピストンシール6とダストシール7とを介して収容されており、4ポットのピストン対向型に形成され、各シリンダ孔4の底部と各ピストン5の底面との間には、作動液が供給される液圧室8がそれぞれ画成されている。
【0012】
シリンダ孔4の開口側には、ディスクロータ2を挟むようにしてライニング9aと裏板9bとからなる摩擦パッド9がそれぞれ対向配置されている。この摩擦パッド9は、ディスクロータ外周を跨いでディスク軸方向に掛け渡されたハンガーピン10によって裏板9bが吊持され、ディスク回入側及び回出側にそれぞれ設けられたトルク受部3d,3eの間でディスク軸方向に移動可能となっている。
【0013】
一方の作用部3aのディスク回入側及び回出側には、ディスク半径方向の取付ボルト挿通孔3f,3fが設けられており、この取付ボルト挿通孔3f,3fに挿通した取付ボルトを車体側に設けられているキャリパ取付部に螺着することにより、キャリパボディ3が車体に取り付けられる。
【0014】
各作用部3a,3b内には、隣接する液圧室8同士を連通させるための液圧室側連通部11,11が設けられる。また、キャリパボディ3のディスク回出側には、一方の作用部3aのディスク回出側の取付ボルト挿通孔3fより外側から他方の作用部3bのシリンダ孔4の液圧室8に向けて第1液通孔12を穿設し、他方の作用部3bから前記ディスク回出側の取付ボルト挿通孔3fと一方の作用部3aのシリンダ孔4との間を通して一方の作用部3aのシリンダ孔4の液圧室8に向けて第2液通孔13が穿設される。さらに、第1液通孔12と第2液通孔13とは、ディスク軸と直交方向のキャリパボディの中心線L1よりも他方の作用部3b側に形成した交差部C1で交差させて連通させるとともに、前記中心線L1と第2液通孔13との角度A1が、前記中心線L1と第1液通孔12との角度A2よりも大きく設定されている。
【0015】
また、第1液通孔12の外面開口部にはユニオン孔12aが、第2液通孔13にはブリューダ孔13aがそれぞれ形成され、ユニオン孔12aにはブレーキホースのユニオンボルトが、ブリューダ孔13aにはブリューダスクリュ14がそれぞれ螺着される。
【0016】
これにより、少ない加工工数でディスクロータ2の両側に対向する液圧室8を、第1液通孔12と第2液通孔13とで連通させることができるとともに、ユニオン孔12aから液圧室8までの各液通孔12,13を、取付ボルト挿通孔3fを避けながら、極力短い長さで形成することができ、効率よく制動力を得ることができる。
【0017】
なお、上述の形態例では、第1液通孔にユニオン孔を、第2液通孔にブリューダ孔をそれぞれ設けているが、本発明はこれに限らず、第2液通孔にユニオン孔を、第1液通孔にブリューダ孔を設けるものでも良い。また、4ポット対向型のキャリパボディに限らず、2ポット又は6ポット以上の対向型のキャリパボディにも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図4のI-I断面図である。
【図2】図5のII-II断面図である。
【図3】図4のIII-III断面図である。
【図4】本発明の一形態例を示すディスクブレーキの正面図である。
【図5】同じくディスクブレーキの平面図である。
【図6】同じくディスクブレーキの斜視図である。
【符号の説明】
【0019】
1…ディスクブレーキ、2…ディスクロータ、3…キャリパボディ、3a,3b…作用部、3c…ブリッジ部、3d…開口部、3d,3e…トルク受部、3f…取付ボルト挿通孔、4…シリンダ孔、5…ピストン、6…ピストンシール、7…ダストシール、8…液圧室、9…摩擦パッド、9a…ライニング、9b…裏板、10…ハンガーピン、11…液圧室側連通部、12…第1液通孔、12a…ユニオン孔、13…第2液通孔、13a…ブリューダ孔、14…ブリューダスクリュ、C1…交差部、L1…中心線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスクロータを挟んで対向配置される一対の作用部をディスクロータの外周を跨ぐブリッジ部と共に一体形成したモノコック構造のキャリパボディであって、前記作用部にそれぞれ設けられたピストン収容用のシリンダ孔と、一方の作用部のディスク回転方向両側部にそれぞれ設けられたディスク半径方向の取付ボルト挿通孔とを備えたモノコック構造ラジアルマウント式ピストン対向型の車両用ディスクブレーキのキャリパボディにおいて、各シリンダ孔の底部と該シリンダ孔内に収容されたピストンとの間に画成される液圧室に作動液を供給するための液通孔として、一方の作用部の前記取付ボルト挿通孔より外側から他方の作用部のシリンダ孔の液圧室に向けて第1液通孔を穿設し、他方の作用部から前記取付ボルト挿通孔と一方の作用部のシリンダ孔との間を通して該シリンダ孔の液圧室に向けて第2液通孔を穿設するとともに、前記第1液通孔と前記第2液通孔とをディスク軸と直交方向のキャリパボディの中心線よりも他方の作用部側で交差させて連通させ、第1液通孔及び第2液通孔のいずれか一方の外面開口部にユニオン孔を、いずれか他方の外面開口部にブリューダ孔をそれぞれ形成したことを特徴とする車両用ディスクブレーキのキャリパボディ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−185850(P2009−185850A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−24711(P2008−24711)
【出願日】平成20年2月5日(2008.2.5)
【出願人】(000226677)日信工業株式会社 (840)
【Fターム(参考)】