説明

車両用トランク構造

【課題】荷物の積載に支障を来たすことを防止しながら、ヒンジアームと荷物とが干渉するか否かを、トランクリッドを開閉することなく予め確認することができる車両用トランク構造を提供する。
【解決手段】ヒンジ機構3は、所定の回動によりトランクリッド2を開閉させるヒンジアーム8と、ヒンジカバー9と、規制部(ベースブラケット)とを備え、ヒンジカバー9は、その一端が、ヒンジアーム9と同一軸支点で車体に軸支されると共に、ヒンジアーム8と独立して回動可能とされ、少なくとも、上記所定の回動時において回動軌跡の最下部を描くヒンジアーム8の部位8bに沿った形状を有しており、ヒンジカバー9の回動が、規制部により、トランクリッド2の閉時におけるヒンジアーム8の位置で規制される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ヒンジ機構を介して車体に開閉自在に支持されたトランクリッドを車体後部に備えた車両用トランク構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用トランク構造としては、例えば、下記特許文献1、2に開示されているものが知られており、該特許文献1、2では、車体後部に配設されたトランクリッドが、車体に軸支されたヒンジアームを備えるヒンジ機構によって開閉自在に支持されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−63632号公報
【特許文献2】特開平6−42259号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1、2の場合、荷物の積載場所によっては、トランクリッドを閉める際、ヒンジアームが回動する途中で荷物と干渉するという問題があった。従って、両者が干渉した時には、一旦トランクリッドを開け、ヒンジアームの回動軌跡を推測しながら、荷物の積載場所を変更しなければならなかった。
【0005】
この発明は、荷物の積載に支障を来たすことを防止しながら、ヒンジアームと荷物とが干渉するか否かを、トランクリッドを開閉することなく予め確認することができる車両用トランク構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明の車両用トランク構造は、ヒンジ機構を介して車体に開閉自在に支持されたトランクリッドを車体後部に備えた車両用トランク構造であって、上記ヒンジ機構は、所定の回動により上記トランクリッドを開閉させるヒンジアームと、ヒンジカバーと、規制手段とを備え、上記ヒンジカバーは、その一端が、上記ヒンジアームと同一軸支点で車体に軸支されると共に、上記ヒンジアームと独立して回動可能とされ、少なくとも、上記所定の回動時において回動軌跡の最下部を描く上記ヒンジアームの部位に沿った形状を有しており、上記ヒンジカバーの回動が、上記規制手段により、上記トランクリッドの閉時における上記ヒンジアームの位置で規制されるものである。
【0007】
この構成によれば、トランクリッドを閉める前にヒンジカバーを回動操作すれば、トランクリッドを閉める際にヒンジアームと荷物とが干渉するか否かを、トランクリッドを実際に開閉することなく、ヒンジカバーの回動軌跡に基づいて予め確認することができる。
【0008】
また、荷物の出し入れの際、ヒンジカバーが邪魔であれば、該ヒンジカバーを上方に適宜回動させることで、荷物とヒンジカバーとの干渉を回避することができる。これにより、荷物の積載に支障を来たすことを防止できる。
【0009】
さらに、ヒンジカバーの回動を、トランクリッドの閉時におけるヒンジアームの位置で規制することにより、ヒンジアームと荷物とが干渉する虞の無い位置までヒンジカバーが侵入することを防止できる。このため、該ヒンジカバーによって荷物の積載領域が制限されることを防止でき、荷物の積載に支障を来たすことを防止できる。
【0010】
この発明の一実施態様においては、上記ヒンジカバーを上記軸支点とは異なる位置で上記ヒンジアームに脱着可能に連結する連結手段を備えたものである。
【0011】
この構成によれば、ヒンジアームとヒンジカバーとを連結することで、トランクリッドの開時には、ヒンジカバーをヒンジアームと連動して上方に回動させることができる。このため、荷物の出し入れの際、荷物とヒンジカバーとの干渉を確実に回避することができる。
【0012】
一方、ヒンジアームとヒンジカバーとの連結を解除すれば、ヒンジカバーをヒンジアームと独立して回動させることができるため、トランクリッドを閉める際にヒンジアームと荷物とが干渉するか否かを、トランクリッドを実際に開閉することなく、ヒンジカバーの回動軌跡に基づいて予め確認することができる。
【0013】
この発明の一実施態様においては、上記ヒンジカバーが、上記トランクリッドの開時において、該トランクリッドの閉時の位置に保持されるものである。
【0014】
この構成によれば、トランクリッドの開時にヒンジカバーがヒンジアームと連動して回動することを防止できるため、明らかに荷物がヒンジアームと干渉しない場合等、ヒンジカバーを回動操作する必要がない場合にヒンジカバーが回動することを防止できる。
【発明の効果】
【0015】
この発明によれば、荷物の積載に支障を来たすことを防止しながら、ヒンジアームと荷物とが干渉するか否かを、トランクリッドを開閉することなく予め確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態に係る車両用トランク構造を備えた車体後部を示す斜視図。
【図2】トランクリッドの閉時における車体後部の状態を示す側断面図。
【図3】ヒンジアーム及びヒンジカバーの支持構造を示す斜視図。
【図4】ヒンジアームの回動動作を説明するための説明図。
【図5】トランクリッドの開時における車体後部の状態を示す側断面図。
【図6】ヒンジカバーの回動動作を説明するための説明図。
【図7】ヒンジアームの一部がヒンジカバーによって覆われた状態を示す断面図。
【図8】本発明の他の実施形態に係る車両用トランク構造を示す図であり、ヒンジアームとヒンジカバーとの連結状態を示す側断面図。
【図9】ヒンジアームとヒンジカバーとの連結部を示す要部斜視図。
【図10】本発明のさらに他の実施形態に係る車両用トランク構造を示す側断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を詳述する。
図1は、本発明の実施形態に係る車両用トランク構造を備えた車体後部を示す斜視図であり、図1に示す車体1には、その後部に配設されたトランクルームTRに対応して図2に示すようなトランクリッド2が配設されている。そして、このトランクリッド2が左右一対のヒンジ機構3(但し、図1ではその一方のみを示す)を介して車体に開閉自在に連結、支持されている。なお、図中において矢印(F)は車体前方、矢印(R)は車体後方を示す。
【0018】
ヒンジ機構3は、図1、図2に示すようにリヤウインド4の下方において水平方向に延びる車体1側のリヤパッケージトレイ5に固定されたベースブラケット6(図3参照)と、このベースブラケット6の軸7により一端が同一軸支点で車体1に軸支されたヒンジアーム8、ヒンジカバー9とを備えている。
【0019】
ヒンジアーム8は、中空筒状の部材であり、その軸7に支持された一端側において湾曲部8aが形成される一方、他端側にはトランクリッド2の前端部が固定されている。本実施形態では、図4にて二点鎖線で示すような、ヒンジアーム8の軸7を支点とした所定の回動により、トランクリッド2を図2、図5に示すように開閉することができるようになっている。そして、ヒンジアーム8に湾曲部8aを形成することで、トランクリッド2の開閉時、ヒンジアーム8と車体1側のリヤパッケージトレイ5との干渉を回避しながらヒンジアーム8を回動させることができるようになっている。
【0020】
一方、ヒンジカバー9は、例えば、該ヒンジカバー9と軸7との間に僅かな隙間を形成したり、ベアリングを設けたりすることにより、図6にて二点鎖線で示すように、ヒンジアーム8と独立して回動することが可能になっている。
【0021】
さらに、ヒンジカバー9には、図2、図3、図5、図6に示すように、その一部に側面視で凸状をなす被規制部9aが形成され、該被規制部9aは、図3に示すように、ベースブラケット6の車両前部に形成された規制部6aと当接可能となっている。
【0022】
ヒンジカバー9は、被規制部9aが規制部6aに当接した時、トランクリッド2の閉時におけるヒンジアーム8の位置(図2に示す位置)で車両前方に回動することが規制されるようになっている。そして、ヒンジカバー9は、後述の回動操作を行わない限り、トランクリッド2の開閉時のいずれであっても、ヒンジカバー9の自重によって上記位置に保持されるようになっている。
【0023】
また、ヒンジカバー9は、図1〜図3、図5、図6に示すように、ヒンジアーム8の一部に沿った形状を有すると共に、図7に示すように、上方が開放された断面コ字状をなしている。これにより、ヒンジカバー9は、ヒンジアーム8と同じ位置にある時、図1、図2に示すようにその両側面及び下面の一部を覆うようになっている。
【0024】
特に、本実施形態では、図4に示すように、トランクリッド2が閉位置にある時、ヒンジアーム8の部位8bが回動軌跡の最下部を描くように設定されており、ヒンジカバー9は、少なくとも、上記所定の回動時において回動軌跡の最下部を描くヒンジアーム8の部位8bに沿った形状を有している。
【0025】
このように、本実施形態では、回動軌跡の最下部を描くヒンジアーム8の部位8bに沿った形状を有するヒンジカバー9を備えることで、トランクリッド2を閉める前にヒンジカバー9を回動操作すれば、トランクリッド2を閉める際に、ヒンジアーム8とトランクルームTRに積載した荷物とが干渉するか否かを、トランクリッド2を実際に開閉することなく、ヒンジカバー9の回動軌跡に基づいて予め確認することができる。
【0026】
また、荷物の出し入れの際、ヒンジカバー9が邪魔であれば、該ヒンジカバー9を上方に適宜回動させることで、荷物とヒンジカバー9との干渉を回避することができる。これにより、荷物の積載に支障を来たすことを防止できる。
【0027】
さらに、ヒンジカバー9の車両前方への回動を、トランクリッド2の閉時におけるヒンジアーム8の位置で規制することにより、ヒンジアーム8と荷物とが干渉する虞の無い車両前方の位置までヒンジカバー9が侵入することを防止できる。このため、該ヒンジカバー9によって荷物の積載領域が制限されることを防止でき、荷物の積載に支障を来たすことを防止できる。
【0028】
また、ヒンジカバー9は、トランクリッド2の開時において、トランクリッド2の閉時の位置に保持されるようになっている。この場合、トランクリッド2の開時にヒンジカバー9がヒンジアーム8と連動して回動することを防止できるため、明らかに荷物がヒンジアーム8と干渉しない場合等、ヒンジカバー9を回動操作する必要がない場合にヒンジカバー9が回動することを防止できる。これにより、例えば、軸7とヒンジカバー9との間の磨耗を抑制できるという効果が得られる。
【0029】
図8、図9は、本発明に係る車両用トランク構造の他の実施形態を示す。図8、図9に示す実施形態では、ヒンジカバー9が、フック部材10により、軸7とは異なる位置でヒンジアーム8に脱着可能に連結されている。なお、図8、図9において、図1〜図7に示す先の実施形態と同様の構成要素については、同一の番号を付して説明を省略する。
【0030】
図8、図9に示す本実施形態では、ヒンジカバー9に連結手段としてのフック部材10が設けられており、このフック部材10は、凹凸形状の操作部10aと、フック爪10bとを有している。そして、フック部材10は、図示しないスプリング、板バネ等の付勢手段により、ヒンジカバー9の他端(自由端)側に向かって常時付勢されている。
【0031】
また、ヒンジカバー9には、フック部材10の位置に対応して、これをスライド可能にガイドするスライド孔9bが穿設されており、ヒンジアーム8においても、スライド孔9bと対応する位置に同様のスライド孔8cが穿設されている。
【0032】
本実施形態では、図8、図9に示すように、ヒンジアーム8の一部をヒンジカバー9で覆った後、ヒンジアーム8の中空部にフック爪10bを挿入すると、これがヒンジアーム8の中空部内面に引っ掛かるようになっている。そして、この時、ヒンジアーム8とヒンジカバー9とが操作部10aとフック爪10bとの間に挟まれた状態となることで、ヒンジアーム8とヒンジカバー9とが連結されるようになっている。
【0033】
このように、ヒンジアーム8とヒンジアーム9とを連結することで、トランクリッド2の開時には、ヒンジカバー9をヒンジアーム8と連動して上方に回動させることができる。このため、荷物の出し入れの際、荷物とヒンジカバー9との干渉を確実に回避することができる。
【0034】
一方、上記付勢手段の付勢に抗して操作部10aをスライド操作すると、フック爪10bをヒンジアーム8の中空部から抜き出すことが可能になっている。これにより、ヒンジアーム8とヒンジカバー9との連結を解除することができ、先の実施形態と同様、ヒンジカバー9をヒンジアーム8と独立して回動させることができるようになっている。
【0035】
このため、本実施形態においても、トランクリッド2を閉める際にヒンジアーム8と上記荷物とが干渉するか否かを、トランクリッド2を実際に開閉することなく、ヒンジカバー9の回動軌跡に基づいて予め確認することができる。
【0036】
また、本実施形態では、先の実施形態と同様、ヒンジカバー9に被規制部9aが形成されている。このため、ヒンジアーム8とヒンジカバー9との連結が解除された時、ヒンジカバー9は、上述の回動操作を行わない限り、トランクリッド2の開閉時のいずれであっても、トランクリッド2の閉時におけるヒンジアーム8の位置に保持されるようになっている。従って、上記連結が解除された時、ヒンジカバー9は、トランクリッド2の開時において、トランクリッド2の閉時の位置に保持されることになる。
【0037】
なお、連結手段としては、必ずしも上述したフック部材10に限定されるものではなく、ヒンジアーム8とヒンジカバー9とを着脱可能に連結するものであれば、例えば、マグネットや、面ファスナー等であってもよい。
【0038】
図10は、本発明に係る車両用トランク構造のさらに他の実施形態を示す。図10に示す実施形態では、トランクリッド2の開閉の途中、つまりはヒンジアーム58の回動の途中で、ヒンジアーム58の部位58bが回動軌跡の最下部を描くように設定されている。なお、図10において、図1〜図7に示す先の実施形態と同様の構成要素については、同一の番号を付して説明を省略する。
【0039】
このような場合であっても、図10に示すように、ヒンジカバー59が、少なくとも、所定の回動時において回動軌跡の最下部を描くヒンジアーム58の部位58bに沿った形状を有することで、トランクリッド2を閉める際にヒンジアーム58と上記荷物とが干渉するか否かを、トランクリッド2を実際に開閉することなく、ヒンジカバー59の回動軌跡に基づいて予め確認することができる。
【0040】
なお、その他の作用効果は、上述した先の実施形態と同様である。
【0041】
この発明の構成と、上述の実施形態との対応において、
この発明の、規制手段は、規制部6aに対応し、
以下同様に、
連結手段は、フック部材10に対応するも、
この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施の形態を得ることができる。
【符号の説明】
【0042】
2…トランクリッド
3…ヒンジ機構
6a…規制部
8、58…ヒンジアーム
9、59…ヒンジカバー
10…フック部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒンジ機構を介して車体に開閉自在に支持されたトランクリッドを車体後部に備えた車両用トランク構造であって、
上記ヒンジ機構は、所定の回動により上記トランクリッドを開閉させるヒンジアームと、ヒンジカバーと、規制手段とを備え、
上記ヒンジカバーは、その一端が、上記ヒンジアームと同一軸支点で車体に軸支されると共に、
上記ヒンジアームと独立して回動可能とされ、
少なくとも、上記所定の回動時において回動軌跡の最下部を描く上記ヒンジアームの部位に沿った形状を有しており、
上記ヒンジカバーの回動が、上記規制手段により、上記トランクリッドの閉時における上記ヒンジアームの位置で規制される
車両用トランク構造。
【請求項2】
上記ヒンジカバーを上記軸支点とは異なる位置で上記ヒンジアームに脱着可能に連結する連結手段を備えた
請求項1記載の車両用トランク構造。
【請求項3】
上記ヒンジカバーが、上記トランクリッドの開時において、該トランクリッドの閉時の位置に保持される
請求項1または2記載の車両用トランク構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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