説明

車両用バッテリケース

【課題】カバー部材及びトレイ部材のシール部の変形や形状のばらつきによらず、接触面圧を確保してバッテリケースに必要なシール性能を安定させることの可能な車両用バッテリケースを提供する。
【解決手段】トレイ側周縁部(32)とカバー側周縁部(36)とが重なり合う状態に保持する保持部材(28,29)とを備え、トレイ側周縁部及びカバー側周縁部のいずれか一方に、周方向に沿って連続して設けられた溝部(50)と、トレイ側周縁部及びカバー側周縁部のいずれか他方に、周方向に沿って連続して立設されるとともに溝部に係合可能な凸部(42)とが形成され、凸部と溝部との間に配置される弾性部材(46)とをさらに備え、凸部及び弾性部材の少なくともいずれか一方は、弾性部材の溝部側表面が溝部の内壁に接触するように、凸部の連続方向に垂直な断面視において、断面が凸部の先端側から基端に向けて幅広に形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用バッテリケースに係り、詳しくは電動車両を駆動するバッテリを収納するためのバッテリケースに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、大容量のバッテリが搭載され、当該バッテリの電力で駆動される駆動モータを動力源の1つとするハイブリッド車や電気自動車が広く開発されている。
このような電動車両に搭載されるバッテリケースは、一例としてバッテリを収納する樹脂で構成されたトレイ部材と、当該トレイ部材を覆う樹脂で構成されたカバー部材とから構成される。また、バッテリとして、例えばリチウムイオン電池が使用される。
【0003】
リチウムイオン電池のような高度の防水性が要求されるバッテリを収納する方法として、例えば特許文献1には、カバー部材とトレイ部材との周縁部の接合部に防水用のシール部材を設ける構成とすることで、接合部からの水の浸入を防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−87645号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このようなシール部材では、カバー部材及びトレイ部材の周縁部を締結部材により締結することで、締結部材の軸線方向に押圧する圧縮力が作用し、カバー部材及びトレイ部材とシール部材とが接触する接触面が加圧され、これにより接触面圧が確保されてシール性能が維持される。
この点で、上記特許文献1に開示された従来技術では、カバー部材とトレイ部材との接合の周縁部にシール部材が供給されている構成であるため、カバー部材及びトレイ部材の周縁部の肉厚等の形状のばらつきや、冷熱温度の影響や熱クリープによるカバー部材及びトレイ部材の変形に伴い、接触面を略均等に加圧することができなくなるためにシール性能が低下してしまい、防水性や信頼性が低下するという問題がある。
【0006】
また、カバー部材及びトレイ部材周縁部の変形の防止や、形状のばらつきによる接触面圧のばらつきを略均等にするために締結部材の間隔を狭くすると、部品点数が増加する上に工数が増加するために生産性が低下し、好ましいことではない。
本発明は、上述した課題を解決すべくなされたものであり、その目的とするところは、カバー部材及びトレイ部材のシール部の変形や形状のばらつきによらず、接触面圧を確保してバッテリケースに必要なシール性能を安定させることの可能な車両用バッテリケースを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するべく、請求項1の車両用バッテリケースは、車両を駆動するバッテリを収納する車両用バッテリケースにおいて、前記バッテリを保持する保持部と、該保持部から径方向外側に延びるトレイ側周縁部とから構成されたトレイ部材と、前記バッテリを覆うカバー部と、カバー部から径方向外側に延びるとともに前記トレイ側周縁部に重なり合うカバー側周縁部とから構成されたカバー部材と、前記トレイ側周縁部と前記カバー側周縁部とが重なり合う状態に保持する保持部材とを備え、前記トレイ側周縁部及び前記カバー側周縁部のいずれか一方に、周方向に沿って連続して設けられた溝部と、前記トレイ側周縁部及び前記カバー側周縁部のいずれか他方に、周方向に沿って連続して立設されるとともに前記溝部に係合可能な凸部とが形成され、該凸部と前記溝部との間に配置される弾性部材をさらに備え、前記凸部及び前記弾性部材の少なくともいずれか一方は、前記弾性部材の溝部側表面が前記溝部の内壁に接触するように、前記凸部の連続方向に垂直な断面視において、断面が前記凸部の先端側から基端に向けて幅広に形成されることを特徴とする。
【0008】
請求項2の車両用バッテリケースでは、請求項1において、前記凸部の連続方向に垂直な断面視において、前記弾性部材の断面形状は前記凸部に嵌め込み可能な略V字形状または略逆V字形状であることを特徴とする。
請求項3の車両用バッテリケースでは、請求項1または2において、前記弾性部材は弾性ゴム部材であることを特徴とする。
【0009】
請求項4の車両用バッテリケースでは、請求項1乃至3のいずれかにおいて、前記溝部は、前記凸部の連続方向に水平な断面視において、内底壁の面積よりも開口部面積が拡大する形状であることを特徴とする。
請求項5の車両用バッテリケースでは、請求項1乃至4のいずれかにおいて、前記溝部は、底壁を貫通して設けられた空気孔と、前記弾性部材を前記溝部へ係合した後に前記空気孔を閉塞する密閉栓とを備えたことを特徴とする。
【0010】
請求項6の車両用バッテリケースでは、請求項1乃至5のいずれかにおいて、前記弾性部材及び前記溝部の内壁の少なくともいずれか一方には、いずれか他方に接触する1つ以上の突起部が設けられていることを特徴とする。
請求項7の車両用バッテリケースでは、請求項1乃至6のいずれかにおいて、前記トレイ側周縁部に接触して配置され、一端が前記トレイ側周縁部から径方向外側へ所定長さ延びて設けられる第1狭持部材と、前記カバー側周縁部に接触して配置され、一端が前記カバー側周縁部から径方向外側へ所定長さ延びて設けられる第2狭持部材とをさらに備え、前記第1及び第2狭持部材は、前記トレイ側周縁部及びカバー側周縁部より径方向外側の所定位置で締結部材により締結されることを特徴とする。
【0011】
請求項8の車両用バッテリケースでは、請求項1乃至7のいずれかにおいて、前記凸部と前記溝部とが係合した際に、前記溝部の広がりを規制する規制部を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の車両用バッテリケースによれば、カバー側周縁部及びトレイ側周縁部は保持部材により重なり合う状態に保持され、カバー側周縁部及びトレイ側周縁部のいずれか一方に周方向に連続した溝部が設けられ、いずれか他方の周縁部の周方向に沿って連続した凸部が設けられており、溝部と凸部との間には連続した弾性部材が配置されており、凸部及び弾性部材の少なくともいずれか一方は、弾性部材の溝部側表面が溝部の内壁に接触するように、凸部の連続方向に垂直な断面視で断面が凸部の先端側から基端に向けて幅広に形成される。
【0013】
従って、保持部材によりトレイ側周縁部及びカバー側周縁部が重なり合う状態に保持されることにより、保持部材の軸線方向に押圧する圧縮力が作用し、カバー側周縁部からトレイ側周縁部に向かって押圧され、凸部及び弾性部材の少なくともいずれか一方が凸部の連続方向に垂直な断面視において幅広であって弾性部材が溝部の内壁に接触しつつ溝部に押し込まれるので、接触面積が拡大して溝部の内壁から弾性部材との接触面直方向に押圧する圧縮力を受ける面積が拡大することにより、高い接触面圧が得られる。
【0014】
これにより、保持部材の保持力がばらつく場合でも、カバー側周縁部をトレイ側周縁部方向へ押圧する圧縮力が作用すると、弾性部材が溝部に押し込まれることにより溝部の内壁から弾性部材との接触面直方向に押圧する圧縮力が作用するので、接触面直方向に作用する圧縮力のばらつきは低減され、シール性能を安定させることができるとともに信頼性を向上させることができる。
【0015】
また、バッテリケースを構成するカバー部材やトレイ部材の形状がばらついたとしても、保持部材の軸線方向に押圧する圧縮力により弾性部材が溝部に押し込まれることにより、弾性部材のシール性能を維持することができるとともにバッテリケースの防水性を向上させることができる。
さらに、冷熱温度の影響等でカバー部材やトレイ部材が変形して形状がばらついたとしても、弾性部材のシール性能を維持することができる。
【0016】
請求項2の車両用バッテリケースによれば、凸部の連続方向に垂直な断面視において、弾性部材の断面形状は凸部に嵌め込み可能な略V字形状または略逆V字形状であるので、弾性部材の凸部への艤装性を向上させることができ、生産性を向上させることができる。
請求項3の車両用バッテリケースによれば、弾性部材は弾性ゴム部材であることにより溝部との接触面を良好にシールするので、シール性能が向上し、防水性を向上させることができる。
【0017】
請求項4の車両用バッテリケースによれば、溝部は凸部の連続方向に水平な断面視で見た断面における内底壁の面積よりも開口部面積が拡大される形状であるので、弾性部材との接触面積が拡大されることにより溝部の内壁から接触面への圧縮力がより高くなるので、シール性能がより向上し、防水性を向上させることができる。
請求項5の車両用バッテリケースによれば、溝部は底壁を貫通した空気孔を備えているので、弾性部材の溝部への艤装時に、弾性部材を係合させる際に溝部の底壁にかかる圧力を空気孔から圧抜きすることができるので、弾性部材の艤装性のばらつきを改善させることができる。
【0018】
また、凸部に嵌め込まれた弾性部材を溝部へ係合した後に密閉栓で空気孔を閉塞することにより、溝部の底壁は連続した底壁となるので、溝部に係合された弾性部材の溝部側表面と内壁との閉空間の密閉性が確保され、弾性部材のシール性能を確保することができる。
請求項6の車両用バッテリケースによれば、弾性部材及び溝部の内壁の少なくともいずれか一方に、いずれか他方に接触する1つ以上の突起部が設けられているので、弾性部材との接触面数及び接触面積が拡大され、溝部の内壁から接触面への圧縮力がより高くなるので、シール性能がより向上することにより防水性を向上させることができる。
【0019】
請求項7の車両用バッテリケースによれば、トレイ側周縁部に接触して配置され、一端がトレイ側周縁部の径方向外側に所定長さ延びて設けられた第1狭持部材と、カバー側周縁部に接触して配置され、一端がカバー側周縁部の径方向外側に所定長さ延びて設けられた第2狭持部材とは、トレイ側周縁部及びカバー側周縁部から径方向外側の所定位置で締結部材により締結される。
【0020】
これにより、締結部材の軸線方向に締結力がかかるのでカバー側周縁部がトレイ側周縁部方向に押圧されて凸部に嵌め込まれたシール部材が溝部の内壁に押し込まれ、弾性部材と内壁との接触面直方向に圧縮力が作用するので、高い接触面圧を得ることができ、シール性能が向上することにより防水性を向上させることができる。
また、接触面直方向に作用する押圧力のばらつきが低減されるので、締結部材の締め付けトルクのトルク管理が容易になり、生産性を向上させることができる。
【0021】
請求項8の車両用バッテリケースによれば、凸部と溝部とが係合した際に、溝部の広がりを規制する規制部を備えているので、溝部が広がることにより接触面圧が低減し、シール性能が低減することを抑制することができる。また、広がりを規制することによって、凸部に嵌め込まれたシール部材が溝部の内壁に強く押し込まれるので楔効果がより発揮することとなり、より高い接触面圧を得てシール性能が向上することにより、防水性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係るバッテリケースが載置された電気自動車の斜視図である。
【図2】図1に示したバッテリケースの概略構成図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係るバッテリケースの分解斜視図である。
【図4】図2のA−A線に沿う縦断面の拡大図である。
【図5】本発明の第2実施形態に係るバッテリケースの分解斜視図である。
【図6】第2実施形態における、図2のA−A線に沿う縦断面の拡大図である。
【図7】本発明の第3実施形態における、図2のA−A線に沿う縦断面の拡大図である。
【図8】図7の分解図である。
【図9】本発明の第4実施形態における、図2のA−A線に沿う縦断面の拡大図である。
【図10】図9の分解図である。
【図11】本発明の第5実施形態における、図2のA−A線に沿う縦断面の拡大図である。
【図12】図11の分解図である。
【図13】本発明の第6実施形態における、図2のA−A線に沿う縦断面の拡大図である。
【図14】図13の分解図である。
【図15】本発明の第7実施形態における、図2のA−A線に沿う縦断面の拡大図である。
【図16】図15の分解図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明に係るバッテリケースが搭載された電気自動車の斜視図である。
図1に示すように、電気自動車1は車体2の床下に載置されたバッテリケース10と、図示しない外部からの充電経路とを備えており、当該充電経路から電力の供給を受けて充電を行う充電器12が車体2の後部に配置され、バッテリケース10は充電器12に接続されて蓄電するように構成されている。
【0024】
図2に示すように、バッテリケース10は、樹脂トレイ(トレイ部材)20と、カバー(カバー部材)22と、樹脂トレイ20の外周を覆う第1板金プレート(第1狭持部材)24と、カバー22の周縁部を覆う第2板金プレート(第2狭持部材)26と、第1及び第2板金プレート24、26を締結するボルト28及びナット29(保持部材)とから構成されている。
【0025】
樹脂トレイ20やカバー22は電気絶縁性を有する樹脂で構成されており、当該樹脂は、例えばガラス繊維などの補強部材により強化されている。
図3に、本発明の第1実施形態である、バッテリケース10の分解斜視図を示している。
図3に示すように、樹脂トレイ20にはバッテリモジュール30が複数配置されて設けられている。バッテリモジュール30は、リチウムイオン電池で構成されるバッテリセルを複数個直列に接続したものである。なお、二次電池であればリチウムイオン電池に限られない。
【0026】
樹脂トレイ20の外周には第1板金プレート24が配置されて設けられており、第1板金プレート24の一端は、樹脂トレイ20の径方向外側にトレイ側周縁部32よりも所定の長さ延びで形成されており、当該一端には貫通孔34がそれぞれ穿設されている。
樹脂トレイ側周縁部32は、カバー側周縁部36と重なり合う。カバー側周縁部36には第2板金プレート26が配置されて設けられており、第2板金プレート26の一端は、カバー22の径方向外側にカバー側周縁部36よりも所定長さ延びて形成されており、当該一端には第1板金プレート24に穿設された貫通孔34と重なる所定の位置に貫通孔38が穿設されている。
【0027】
樹脂トレイ側周縁部32には、カバー側周縁部36と重なり合わさる重合部40に周方向に沿って連続した突出部(凸部)42が立設されている。
詳しくは、図4のA−A線に沿う縦断面の拡大図を示すように、樹脂トレイ側周縁部32に立設された突出部42の断面は、突出部42の連続方向に垂直な断面視において先端44から基端に向かって幅が拡大する末広がり状の形状である。
【0028】
突出部42には連続したシール部材(弾性部材)46が嵌め込まれている。シール部材46の突起部42に嵌め込まれた状態で見た断面は略逆V字形状であり、シール部材46の断面形状は突出部42の基端方向に幅が拡大する末広がり形状である。なお、シール部材46は、例えば弾性ゴム部材から構成されたシール部材であるが、必要な防水性を得られるものであればこれに限られない。
【0029】
シール部材46が突出部42の頂面44に接する面の背面には、リップ(突起部)48が設けられている。
溝部50はトレイ側周縁部32よりも肉厚なカバー側周縁部36に設けられ、突出部42を覆うよう連続して設けられており、突出部42の連続方向に水平な断面視で見た断面における内底壁(内壁)52の面積よりも開口部面積が拡大する末広がり形状に形成されている。
【0030】
これより、溝部50に突出部42を係合することで、溝部50の内側壁(内壁)54にシール部材46の溝部側表面が押圧されて接触するとともに、リップ48が内底壁52に押圧されて接触する。
突出部42が立設された樹脂トレイ側周縁部32には、突出部42が溝部50に係合する際に、突出部42及びシール部材46の圧力Pによって溝部が広がらないように溝部50の形状を維持するように規制する規制部100が設けられる。
【0031】
これにより、圧力Pに対して第一及び第二板金プレート24、26と突出部42及びシール部材46とが楔効果を向上させるので、シール性能がより向上する。なお、規制部100は周方向に沿って連続した環状に設けてもよいが、必要に応じて所定の間隔をあけた突起形状としてもよい。
トレイ側周縁部32の重合部40の背面の周方向に沿って、背面端から外壁56に向かってリブ58がそれぞれ伸びて設けられており、リブ58により樹脂トレイ20の剛性が確保される。第1板金プレート24はリブ58の下端に接するように配置されており、他端は樹脂トレイ20の底壁60に延びて設けられている。
【0032】
カバー側周縁部36の重合部40の背面には背面端に凸部62が突出して設けられており、凸部62は周方向に沿ってそれぞれ配置されている。凸部62を覆う屈曲部64が設けられた第2板金プレート26の他端は、折り曲げられてカバー側周縁部36に当接しており、凸部62は第2板金プレート26の引き抜き防止部材となる。
第1板金プレート24及び第2板金プレート26は、各一端に穿設された貫通孔34、38にボルト28及びナット29をそれぞれ嵌め合わせて締結されている。これにより、樹脂トレイ側周縁部32とカバー側周縁部36とが第1板金プレート24及び第2板金プレート26によって狭持される。
【0033】
このように、本実施形態によれば、トレイ側周縁部32には突出部42が立設されており、突出部42の連続方向に垂直な断面視において突出部42の断面形状は突出部42の先端44から基端に向かって末広がり状であり、突出部42には、断面形状が略逆V字形状であって、突出部42の基端方向に幅が拡大する末広がり形状のシール部材46が嵌め込まれる。トレイ側周縁部32よりも肉厚なカバー側周縁部36には周方向に沿って連続した溝部50が設けられ、溝部50に突出部42及び突出部42に嵌め込まれたシール部材46が係合される。そして、樹脂トレイ20の外周には第1板金プレート24が、カバー側周縁部36の背面には第2板金プレート26がそれぞれ配置されて設けられており、それぞれの周縁部32、36から径方向外側に所定の長さ延びた第1及び第2板金プレート24、26の一端に穿設された貫通孔34、38にボルト28及びナット29をそれぞれ嵌め合わせて締結することにより、トレイ側周縁部32とカバー側周縁部36とが第1板金プレート24及び第2板金プレート26によって狭持される。
【0034】
従って、ボルト28及びナット29により締結された第1及び第2板金プレート24、26はカバー側周縁部36をトレイ側周縁部32方向に押圧し、突出部42に嵌め込まれたシール部材46が溝部50に押し込まれる。
これにより、シール部材46の末広がり形状によって溝部50の内側壁54とシール部材46との接触面積が拡大するので、接触面直方向に接触面を押圧する圧縮力が作用する面積も拡大するので高い接触面圧を得ることができ、シール性能が向上することにより防水性を向上させることができる。
【0035】
また、各ボルト28及びナット29を締結することによる各ボルト28の軸線方向の締結力がばらつく場合でも、カバー側周縁部36をトレイ側周縁部32方向へ押圧する押圧力が作用し、シール部材46が溝部50に押し込まれることにより溝部50の内側壁54からシール部材46との接触面直方向に接触面を押圧する圧縮力が作用するので、接触面直方向に作用する圧縮力のばらつきは低減され、シール性能を安定させることができるとともに信頼性を向上させることができる。
【0036】
さらに、シール部材46が溝部50に押し込まれることにより接触面直方向に作用する圧縮力のばらつきは低減されるので、ボルト28の締め付けトルクのトルク管理が容易になり、生産性を向上させることができる。
また、シール部材46は略逆V字形状であるので、突出部42への艤装性が向上され、生産性を向上させることができる。
【0037】
また、シール部材46は弾性ゴム部材から構成されるので、溝部50との接触面を良好にシールすることによりシール性能が向上し、防水性を向上させることができる。
そして、シール部材46の突出部42の先端44に接する面の背面にはリップ48が設けられており、リップ48が溝部50の内底壁52に接触することにより、シール部材46の接触面数が増加して接触面積が拡大するので、接触面直方向に作用する圧縮力がより高まり、シール性能が向上することにより防水性を向上させることができる。
【0038】
また、第1及び第2板金プレート24、26により樹脂トレイ20の外周及びカバー側周縁部36が狭持されて締結されることにより、トレイ側周縁部32及びカバー側周縁部36はトレイ側周縁部32方向に押圧されるので、シール部材46は溝部50の内側壁54に締め込まれ、シール部材46の接触面は内側壁54からの圧縮力により押圧され、接触面直方向の圧縮力が増加するので、シール性能が向上することにより、防水性を向上させることができる。
【0039】
次に、本発明に係る第2実施形態について説明する。
本実施形態の車両用バッテリケースは、第1実施形態に対して、カバー側周縁部36に突出部42を立設し、カバー側周縁部36より肉厚なトレイ側周縁部32に溝部50を設けた点が相違しており、その他の構成は共通している。従って、共通箇所の説明は省略し、相違点について説明する。
【0040】
図5は、本発明の第2実施形態に係る車両用バッテリケースの分解斜視図を示している。
図5に示すように、トレイ側周縁部32には溝部50が設けられている。
詳しくは、図6に図2のA−A線に沿う縦断面の拡大図を示すように、トレイ側周縁部32はカバー側周縁部36よりも肉厚であり、突出部42の連続方向に水平な断面視で見た断面形状において内底壁52の面積よりも開口部面積が拡大した形状の溝部50が設けられている。そして、カバー側周縁部36に立設された突出部42に略V字形状のシール部材46が嵌め込まれ、突出部42とともにシール部材46が溝部50に嵌め合わされている。
【0041】
また、突出部42が立設されたカバー側周縁部36には、突出部42が溝部50に係合する際に、突出部42及びシール部材46の圧力Pによって溝部50が広がらないように溝部50の形状を維持するよう規制する規制部100が設けられる。
樹脂トレイ20の外周には第1板金プレートが、カバー側周縁部36には第2板金プレートが接して配置されており、トレイ側周縁部32及びカバー側周縁部36から径方向外側に所定長さ延びた所定位置でボルト28及びナット29により締結されている。
【0042】
このように、本実施形態によれば、トレイ側周縁部32に設けられた溝部50には、カバー側周縁部36に立設された突出部42に嵌め込まれたシール部材46が係合されており、樹脂トレイ20の外周に接触して設けられた第1板金プレート24と、カバー側周縁部36に接触して設けられた第2板金プレート26とが配置され、一端がトレイ側周縁部32及びカバー側周縁部36の径方向外側に所定長さ延びた所定位置でボルト28及びナット29により締結される。
【0043】
このような構成にすることにより、ボルト28及びナット29の軸線方向に押圧力が作用するので、カバー側周縁部36はトレイ側周縁部32方向に押圧され、カバー側周縁部36に立設された突出部42に嵌め込まれたシール部材46は溝部50に押し込まれ、上記第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
また、シール部材46は略V字形状であるので、突出部42への艤装性が向上され、生産性を向上させることができる。
【0044】
次に、本発明に係る第3実施形態について説明する。
本実施形態の車両用バッテリケースは、第1実施形態に対して、溝部50は有底円筒状であるという点が相違しており、その他の構成は共通している。従って、共通箇所の説明は省略し、相違点について説明する。
図7は、本発明の第3実施形態に係る、図2のA−A線に沿う縦断面の拡大図である。
【0045】
図7に示すように、カバー側周縁部36に設けられた溝部50は有底の円筒状であり、溝部50にはシール部材46が係合されている。
図8に図7の分解図を示すように、突出部42に嵌め込まれたシール部材46は突出部42の先端44から基端に向かって末広がり形状であり、突出部42に嵌め込まれたシール部材46の両端の幅は溝部50の幅よりも拡大して構成されている。
【0046】
このような構成にすることにより、ボルト28及びナット29の軸線方向に押圧力が作用するので、カバー側周縁部36はトレイ側周縁部32方向に押圧され、トレイ側周縁部32に立設された突出部42に嵌め込まれたシール部材46は溝部50に押し込まれるので、上記第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
次に、本発明に係る第4実施形態について説明する。
【0047】
本実施形態の車両用バッテリケースは、第1実施形態に対して、溝部50の形状が内底壁52から略中央まで円筒形状をなしており、略中央から重合部40に向かって幅が拡大する末広がり形状であるという点が相違しており、その他の構成は共通している。従って、共通箇所の説明は省略し、相違点について説明する。
図9は、本発明の第4実施形態に係る、図2のA−A線に沿う縦断面の拡大図である。
【0048】
図9に示すように、カバー側周縁部36に設けられた溝部50は内底壁52から略中央まで円筒形状をなしており、略中央から重合部40に向かって幅が拡大する末広がり形状である。
図10に図9の分解図を示すように、溝部50の断面における略中央近傍の幅は、突出部42に嵌め込まれたシール部材46の断面における幅よりも縮小して構成されている。
【0049】
このような構成にすることにより、ボルト28及びナット29の軸線方向に押圧力が作用するので、カバー側周縁部36はトレイ側周縁部32方向に押圧され、トレイ側周縁部32に立設された突出部42に嵌め込まれたシール部材46は溝部50に押し込まれ、溝部50の末広がり形状によってシール部材46と内側壁54との接触面積が拡大するので、上記第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0050】
次に、本発明に係る第5実施形態について説明する。
本実施形態の車両用バッテリケースは、第4実施形態に対して、溝部50の末広がり形状における内側壁54に面するシール部材46の両側面には側面突起部がそれぞれ設けられている点が相違しており、その他の構成は共通している。従って、共通箇所の説明は省略し、相違点について説明する。
【0051】
図11は、本発明の第5実施形態に係る、図2のA−A線に沿う縦断面の拡大図である。
図11に示すように、溝部50の末広がり形状における内側壁54に面するシール部材46の両側面には側面突起部(突起部)66がそれぞれ設けられている。
図12に図11の分解図を示すように、シール部材46の側面突起部66、66における幅は、シール部材が当接する溝部50の末広がり形状における溝部50内の幅よりも拡大して形成される。
【0052】
このような構成にすることにより、ボルト28及びナット29の軸線方向に押圧力が作用するので、カバー側周縁部36はトレイ側周縁部32方向に押圧され、トレイ側周縁部32に立設された突出部42に嵌め込まれたシール部材46は溝部50に押し込まれ、シール部材46の両側面に設けられた側面突起部66が溝部50の内側壁54に接触して内側壁54から押圧されるので、上記第4実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0053】
次に、本発明の第6実施形態について説明する。
本実施形態の車両用バッテリケースは、第4実施形態に対して、シール部材46の形状は突出部42の連続方向に垂直な断面視において断面が略逆V字形状であり、シール部材46は略同一幅であるという点が相違しており、その他の構成は共通している。従って、共通箇所の説明は省略し、相違点について説明する。
【0054】
図13は、本発明の第6実施形態に係る、図2のA−A線に沿う縦断面の拡大図である。
図13に示すように、突出部42にはシール部材46が嵌め込まれており、突出部42に嵌め込まれた状態で見たシール部材46は略逆V字形状である。
図14に図13の分解図を示すように、溝部50内の略中央近傍における幅は、突出部42に嵌め込まれたシール部材46の幅よりも縮小して構成されている。
【0055】
このような構成にすることにより、ボルト28及びナット29の軸線方向に押圧力が作用するので、カバー側周縁部36はトレイ側周縁部32方向に押圧され、トレイ側周縁部32に立設された突出部42に嵌め込まれたシール部材46は溝部50に押し込まれ、内側壁54との接触面積が拡大するので、上記第4実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0056】
次に、本発明の第7実施形態について説明する。
本実施形態の車両用バッテリケースは、第3実施形態に対して、溝部50の底壁に貫通孔を設け、密閉栓により貫通孔を閉塞するという点が相違しており、その他の構成は共通している。従って、共通箇所の説明は省略し、相違点について説明する。
図15は、本発明の第7実施形態に係る、図2のA−A線に沿う縦断面の拡大図である。
【0057】
図15に示すように、溝部50の底壁68に穿設された貫通孔(空気孔)70は密閉栓72により閉塞され、底壁68は連続した底壁となる。
図16に図15の分解図を示すように、貫通孔70は溝部50の空気孔となる。
このような構成にすることにより、突出部42に嵌め込まれたシール部材46を溝部50に係合する時にシール部材46と溝部50とが接触して接触面が形成されてシール部材46の溝部側表面と底壁68の間に閉空間が形成されることを防止するので、シール部材46を押し込むことによりシール部材46の溝部側表面と底壁68とで構成される空間の圧力が増加しても貫通孔70から圧力が抜かれてシール部材46の艤装性が悪化することを防止するので、艤装性が向上し、生産性を向上させることができる。
【0058】
また、密閉栓72で貫通孔70を閉塞することにより底壁68は連続した底壁となり、溝部50の密閉性が確保されるので、シール性能が向上することにより防水性を向上させることができる。
また、上記第3実施形態と同様の効果を得ることができる。
以上で実施形態の説明を終えるが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。
【0059】
例えば、上記各実施形態では、突出部42の連続方向に垂直な断面視で見た突出部42の断面における幅が、先端44から基端に向かって拡大する末広がり状の形状としているが、突出部42の先端44から基端に向かって同一幅形状とし、突出部42に嵌め込まれた弾性部材46の断面が突出部42の先端44から基端に向かって幅広の形状となるように形成してもよい。
【0060】
また、上記各実施形態では、樹脂トレイ20の外周及びカバー側周縁部36にそれぞれ第1及び第2板金プレート24、26を接して配置し、トレイ側周縁部32及びカバー側周縁部36から径方向外側の所定位置でボルト28及びナット29により締結し、カバー側周縁部36をトレイ側周縁部32方向に押圧する構成としているが、カバー側周縁部36をトレイ側周縁部32方向に押圧することができれば、これに限られない。
【0061】
また、上記各実施形態では、トレイ側周縁部32の背面には剛性を確保するためのリブ58が、カバー側周縁部36の背面には第2板金プレート26の引き抜き防止部材として凸部62がそれぞれ配置されて設けられているが、リブ58や凸部62は設けなくてもよい。
さらに、上記各実施形態では、シール部材46にリップ48を設けているが、溝部50にシール部材46と接触する突起部を設けてもよい。
【0062】
また、上記各実施形態では電気自動車を例に説明したが、ハイブリッド車にも適用可能である。
【符号の説明】
【0063】
1 電気自動車
10 バッテリケース
20 樹脂トレイ(トレイ部材)
22 カバー(カバー部材)
32 トレイ側周縁部
36 カバー側周縁部
42 突出部(凸部)
46 シール部材(弾性部材)
48 リップ(突起部)
50 溝部
66 側面突起部(突起部)
70 貫通孔(空気孔)
72 密閉栓
100 規制部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両を駆動するバッテリを収納する車両用バッテリケースにおいて、
前記バッテリを保持する保持部と、該保持部から径方向外側に延びるトレイ側周縁部とから構成されたトレイ部材と、
前記バッテリを覆うカバー部と、カバー部から径方向外側に延びるとともに前記トレイ側周縁部に重なり合うカバー側周縁部とから構成されたカバー部材と、
前記トレイ側周縁部と前記カバー側周縁部とが重なり合う状態に保持する保持部材とを備え、
前記トレイ側周縁部及び前記カバー側周縁部のいずれか一方に、周方向に沿って連続して設けられた溝部と、
前記トレイ側周縁部及び前記カバー側周縁部のいずれか他方に、周方向に沿って連続して立設されるとともに前記溝部に係合可能な凸部とが形成され、
該凸部と前記溝部との間に配置される弾性部材をさらに備え、
前記凸部及び前記弾性部材の少なくともいずれか一方は、前記弾性部材の溝部側表面が前記溝部の内壁に接触するように、前記凸部の連続方向に垂直な断面視において、断面が前記凸部の先端側から基端に向けて幅広に形成されることを特徴とする車両用バッテリケース。
【請求項2】
前記凸部の連続方向に垂直な断面視において、前記弾性部材の断面形状は前記凸部に嵌め込み可能な略V字形状または略逆V字形状であることを特徴とする、請求項1に記載の車両用バッテリケース。
【請求項3】
前記弾性部材は弾性ゴム部材であることを特徴とする、請求項1または2に記載の車両用バッテリケース。
【請求項4】
前記溝部は、前記凸部の連続方向に水平な断面視において、内底壁の面積よりも開口部面積が拡大する形状であることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれかに記載の車両用バッテリケース。
【請求項5】
前記溝部は、
底壁を貫通して設けられた空気孔と、
前記弾性部材を前記溝部へ係合した後に前記空気孔を閉塞する密閉栓と、
を備えたことを特徴とする、請求項1乃至4のいずれかに記載の車両用バッテリケース。
【請求項6】
前記弾性部材及び前記溝部の内壁の少なくともいずれか一方には、いずれか他方に接触する1つ以上の突起部が設けられていることを特徴とする、請求項1乃至5のいずれかに記載の車両用バッテリケース。
【請求項7】
前記トレイ側周縁部に接触して配置され、一端が前記トレイ側周縁部から径方向外側へ所定長さ延びて設けられる第1狭持部材と、
前記カバー側周縁部に接触して配置され、一端が前記カバー側周縁部から径方向外側へ所定長さ延びて設けられる第2狭持部材とをさらに備え、
前記第1及び第2狭持部材は、前記トレイ側周縁部及びカバー側周縁部より径方向外側の所定位置で締結部材により締結されることを特徴とする、請求項1乃至6のいずれかに記載の車両用バッテリケース。
【請求項8】
前記凸部と前記溝部とが係合した際に、前記溝部の広がりを規制する規制部を備えることを特徴とする、請求項1乃至7のいずれかに記載の車両用バッテリケース。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2011−146288(P2011−146288A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−6970(P2010−6970)
【出願日】平成22年1月15日(2010.1.15)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【Fターム(参考)】