説明

車両用バルブ及びその製造方法

【課題】折曲げ部の配線回路パターンにヒビ割れや断線が生じないようにして該配線回路パターンの信頼性を高める。
【解決手段】金属基板5上に配線回路パターンが形成される一面5aとは反対側の他面5bに基板折曲げ溝6を形成した後、その金属基板5の一面5aに絶縁層32を形成する。そして、絶縁層32の上に配線回路パターン19を形成し、前記配線回路パターン19のうちLEDからなる光源を実装する光源実装部と、基板折曲げ溝6と対峙する前記金属基板5の一面5aに形成された前記配線回路パターン19上にクリーム半田を塗布する。次に、金属基板5を炉内に入れてリフローした後、前記基板折曲げ溝6にて金属基板5を多角形状に折り曲げて略球体をなすLEDバルブ部を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LEDを光源とした車両用バルブに関し、配線回路パターンを形成した金属基板を多角形状に折り曲げて略球体をなすようにLEDバルブ部を形成する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、平面視五角形をなす中央部分の各辺より脚部となるウイング部を形成した金属基板に対して、その各ウイング部の一面にLEDとこれに接続される回路パターンを形成すると共に他面に溝を形成し、その溝を折曲げ部位として各ウイング部を折り曲げることにより、全体形状を五角錐形状とした自動車用のLED電球が開示されている。
【0003】
また、特許文献2には、基板本体に折り曲げ可能な屈曲溝部を形成したプリント基板を、前記屈曲溝部を屈曲部として立体的に組み立てた技術が開示されている。
【特許文献1】特開2006−210340号公報
【特許文献2】実開昭63−152260号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2に開示された技術では、何れもウイング部及びプリント基板を、溝部を折曲げ部位として折り曲げているので、配線回路パターンに折り曲げ時の応力が掛かってヒビ割れが生じたり、回路自体が断線する恐れがある。
【0005】
そこで、本発明は、折曲げ部の配線回路パターンにヒビ割れや断線が生じないようにして該配線回路パターンの信頼性を高めることのできる車両用バルブ及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、金属基板の一面に配線回路パターンが形成されて複数個のLEDからなる光源が実装されると共に他面に基板折曲げ溝が形成され、その基板折曲げ溝にて該金属基板を多角形状に折り曲げることで略球体としたLEDバルブ部と、このLEDバルブ部が取り付けられる、電子回路部が設けられた内蔵基板を取り付けたバルブソケットと、を備えた車両用バルブであって、前記基板折曲げ溝と対峙する前記金属基板の一面の部位に、前記光源を前記配線回路パターンの光源実装部に実装する際に使用するクリーム半田を塗布して配線回路パターンを保護する回路保護部を形成したことを特徴としている。
【0007】
請求項2に記載の車両用バルブの製造方法は、金属基板上に配線回路パターンが形成される一面とは反対側の他面に基板折曲げ溝を複数形成する溝形成工程と、前記金属基板の一面に絶縁層を形成する絶縁層形成工程と、前記絶縁層の上に配線回路パターンを形成する回路形成工程と、前記配線回路パターンのうちLEDからなる光源を実装する光源実装部と、前記基板折曲げ溝と対峙する前記金属基板の一面に形成された前記配線回路パターン上にクリーム半田を塗布する半田塗布工程と、前記金属基板を炉内に入れてリフローするリフロー工程と、前記基板折曲げ溝にて前記金属基板を多角形状に折り曲げて略球体をなすLEDバルブ部を形成するバルブ部形成工程と、前記LEDバルブ部を、電子回路部が設けられた内蔵基板を取り付けたバルブソケットに取り付けて車両用バルブとする組立工程と、を備えたことを特徴としている。
【0008】
請求項3に記載の車両用バルブの製造方法は、金属基板上に配線回路パターンが形成される一面とは反対側の他面に基板折曲げ溝を形成すると共にその基板折曲げ溝と対峙する前記一面の部位に凹溝を形成する溝形成工程と、前記凹溝を除く前記一面に接着剤を塗布した後、絶縁層を貼り付ける絶縁層形成工程と、前記絶縁層上に配線回路パターンを形成する回路形成工程と、前記配線回路パターンのうちLEDからなる光源を実装する光源実装部にクリーム半田を塗布する半田塗布工程と、前記金属基板を炉内に入れてリフローするリフロー工程と、前記基板折曲げ溝にて前記金属基板を多角形状に折り曲げて略球体をなすLEDバルブ部を形成するバルブ部形成工程と、前記LEDバルブ部を、電子回路部が設けられた内蔵基板を取り付けたバルブソケットに取り付けて車両用バルブとする組立工程と、を備えたことを特徴としている。
【0009】
請求項4に記載の車両用バルブの製造方法は、請求項2または請求項3において、前記溝形成工程で、同一ヶ所に設ける基板折曲げ溝を複数形成することを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に記載の車両用バルブによれば、他面に形成した基板折曲げ溝と対峙する金属基板の一面の部位にクリーム半田を塗布して配線回路パターンを保護する回路保護部を形成したことにより、金属基板を折り曲げたときに前記クリーム半田が、基板折曲げ時に折曲げ部に作用する力を分散させ、配線回路パターンがヒビ割れるのを抑制し断線を回避させる。したがって、本発明によれば、ひび割れや断線の無い配線回路パターンを持つ信頼性の高い車両用バルブを提供することができる。
【0011】
請求項2に記載の車両用バルブの製造方法によれば、他面に形成した基板折曲げ溝と対峙する金属基板の一面に形成した配線回路パターン上にクリーム半田を塗布することで、このクリーム半田が、金属基板を折り曲げた時の折曲げ部に作用する力を分散させて配線回路パターンへのひび割れや断線を無くす。したがって、本発明方法によれば、ひび割れや断線の無い配線回路パターンを持つ信頼性の高い車両用バルブを製造することができる。
【0012】
請求項3に記載の車両用バルブの製造方法によれば、金属基板の他面に形成した基板折曲げ溝と対峙する一面の部位に凹溝を形成し、その凹溝を除く前記一面に塗布した接着剤に絶縁層を貼り付け、その絶縁層上に銅箔を貼り付けて配線回路パターンを形成した後に、金属基板を折り曲げると、前記凹溝の上に設けられた部位に相当する配線回路パターンが浮き上がり、基板折曲げ時に作用する折曲げ力が配線回路パターンに加わるのを防止する。したがって、本発明方法によれば、ひび割れや断線の無い配線回路パターンを持つ信頼性の高い車両用バルブを製造することができる。
【0013】
請求項4に記載の車両用バルブの製造方法によれば、溝形成工程において同一ヶ所に設ける基板折曲げ溝を複数形成することで、基板折曲げ溝の数が増えた分だけ金属基板を折り曲げ易くできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を適用した具体的な実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0015】
「車両用バルブの構造説明」
図1(A)は車両用バルブの平面図、図1(B)は車両用バルブの右側面図、図1(C)は車両用バルブの底面図、図1(D)は車両用バルブの正面図、図2は車両用バルブの縦断面図、図3(A)はLEDバルブ部の平面図、図3(B)はLEDバルブ部の右側面図、図3(C)はLEDバルブ部の底面図、図3(D)はLEDバルブの正面図、図4(A)はLEDバルブ部を構成する金属基板を基板折曲げ溝が形成された面を上向きとして示す展開図、図4(B)はその金属基板の側面図、図4(C)は金属基板に形成した基板折曲げ溝の断面図、図5はLEDバルブ部を構成する金属基板を配線回路パターンが形成された面を上向きとして示す展開図、図6(A)はバルブソケットの平面図、図6(B)はバルブソケットの右側面図、図6(C)はバルブソケットの底面図、図6(D)はバルブソケットの正面図、図7(A)は図6(A)のA−A線断面図、図7(B)は図6(B)のB−B線断面図、図7(C)は図6(B)のC−C線断面図である。なお、図1及び図2では、配線回路パターン19の図示は省略してある。
【0016】
車両用バルブ1は、図1及び図2に示すように、金属基板を多角形状に折り曲げることで略球体としたLEDバルブ部2と、電子回路部が設けられた内蔵基板3を取り付けたバルブソケット4と、を備え、LEDバルブ部2をバルブソケット4に取り付けることによって構成されている。
【0017】
LEDバルブ部2は、図3から図5に示すように、最終形態を略球体とする展開した形状とした金属基板5を多角形状に折り曲げることにより形成される。かかる金属基板5には、LEDの点灯により発せられる熱を効率良く放熱するために、放熱性に優れたアルミニウム合金板等が使用される。
【0018】
前記金属基板5は、図3の如く略球体をなす最終形態を展開した図4及び図5に示すように、平面視で三角形状をなす天板部5Aと、この天板部5Aの各辺に連結される平面視六角形状をなす上板部5B、5C、5Dと、この上板部5B、5C、5Dの側辺に連結される平面視五角形状をなす側板部5E、5F、5Gと、この側板部5E、5F、5Gに連結される平面視四角形状をなす下板部5H、5I、5Jと、前記上板部5B、5C、5Dの下辺に連結される平面視略四角形状をなす取付け板部5K、5L、5Mとから構成されている。
【0019】
そして、この金属基板5の他面5bには、図4に示すように板厚方向にその板厚の約半分程度まで切り込まれた基板折曲げ溝6〜17が形成されている。中央の天板部5Aと上板部5B、5C、5Dとの連結部には、それぞれ基板折曲げ溝6、7、8が形成されている。また、上板部5B、5C、5Dと側板部5E、5F、5Gとの連結部には、それぞれ基板折曲げ溝9、10、11が形成されている。また、側板部5E、5F、5Gと下板部5H、5I、5Jとの連結部には、それぞれ基板折曲げ溝12、13、14が形成されている。また、下板部5H、5I、5Jと取付け板部5K、5L、5Mとの連結部には、それぞれ基板折曲げ溝15、16、17が形成されている。
【0020】
前記基板折曲げ溝6の深さHは、金属基板5の材質と板厚Tにより決められ、該金属基板5を折り曲げた時に折れてしまうことがないような寸法とされる。また、この基板折曲げ溝6の形状に関しては、図4(C)に示す如く半円形状であっても良く、或いは、折り曲げたときに折曲げ部が密着するようにV字状とすることが望ましい。
【0021】
一方、金属基板5の一面5aには、図5に示すように、LEDからなる光源18を点灯させるための配線回路パターン19と、光源18を実装させる光源実装部20とが形成されている。配線回路パターン19は、天板部5Aと上板部5B、5C、5Dと側板部5E、5F、5Gと下板部5H、5I、5Jとにそれぞれ形成されている。これら配線回路パターン19のうち、側板部5E、5F、5Gに形成される部位には、スルーホール21が形成されている。光源実装部20は、上板部5B、5C、5Dと側板部5E、5F、5Gと下板部5H、5I、5Jとにそれぞれ形成されている。
【0022】
配線回路パターン19は、金属基板5の一面5aに絶縁層を形成した後、その絶縁層上に銅箔を設け、この銅箔をマスキングしてエッチングすることにより所定パターン形状に形成される。製造方法については、後述するものとする。
【0023】
前記取付け板部5K、5L、5Mには、LEDバルブ部2をバルブソケット4に固定させるための爪部係止溝22が形成されている。この爪部係止溝22は、両側縁にそれぞれコ字状をなす溝として形成されている。
【0024】
LEDバルブ部2を形成するには、天板部5Aと上板部5B、5C、5Dの連結部を基板折曲げ溝6、7、8を折曲げ部位として山折りに折った後、上板部5B、5C、5Dと側板部5E、5F、5Gの連結部を基板折曲げ溝9、10、11を折曲げ部位として山折りに折る。また、側板部5E、5F、5Gと下板部5H、5I、5Jの連結部を基板折曲げ溝12、13、14を折曲げ部位として山折りに折った後、上板部5B、5C、5Dと取付け板部5K、5L、5Mの連結部を基板折曲げ溝15、16、17を折曲げ部位として山折りに折る。このように金属基板5を各基板折曲げ溝6〜17にて山折りにして多角形状に折り曲げることで略球体をなすLEDバルブ部2が形成される。
【0025】
内蔵基板3は、図2に示すように、抵抗等の電子部品23が実装されることにより電子回路部を構成している。この内蔵基板3の電子回路部と金属基板5の配線回路パターン19とは、スルーホール21に一端を接続し内蔵基板3の配線パターン24に他端を接続した電線25にて電気的に接続されている。
【0026】
バルブソケット4は、図6及び図7に示すように、内蔵基板3を内部中央に支持すると共にLEDバルブ部2を取り付けるバルブ固定部26と、相手端子が設けられるソケット(図示は省略する)に装着される差し込み部27と、を有した絶縁体から構成されている。
【0027】
バルブ固定部26には、LEDバルブ部2の内部に挿入されて取付け板部5K、5L、5Mを内側から支持する取付け板部支持面26A、26B、26Cが形成されている。この取付け板部支持面26A、26B、26Cには、前記取付け板部5K、5L、5Mに形成された爪部係止溝22に係合して前記LEDバルブ部2をバルブソケット4に固定させるための係合爪28が形成されている。
【0028】
また、バルブ固定部26には、側板部5E、5F、5Gを内側から支持する側板部支持面26D、26E、26Fが形成されている。側板部支持面26D、26E、26Fは、前記各取付け板部支持面26A、26B、26Cの間にそれぞれ形成されている。さらに、バルブ固定部26には、下板部5H、5I、5Jを内側から支持する下板部支持面26G、26H、26Iが形成されている。
【0029】
差し込み部27には、車両用バルブ1を装着させるソケットに設けられた外部端子と接続する端子線29、30が設けられている。これら端子線29、30は、一端を内蔵基板3の電子回路部と接続させ、他端を差し込み部27の側面からその先端部に引き出している。一方の端子線29は、プラス側の端子線で、他方の端子線30は、マイナス側の端子線とされる。また、この差し込み部27には、内蔵基板3が設けられる部位から先端部にかけて端子線29、30を挿入配索させる配線孔31が貫通形成されている。配線孔31は、バルブソケットをシングル球とダブル球に共用するため4つ形成されており、それぞれの場合に選択的に使用される。
【0030】
そして本実施形態の車両用バルブ1においては、他面5bに形成した基板折曲げ溝6〜17と対峙する金属基板5の一面5aの部位にクリーム半田を塗布して配線回路パターン19を保護する回路保護部が形成されている。この回路保護部については、後述するが、金属基板5を折り曲げたときに配線回路パターン19がヒビ割れるのを抑制し且つ断線を回避させる機能をするものである。
【0031】
「車両用バルブの製造方法」
次に、車両用バルブの製造方法について説明する。図8はLEDバルブ部を形成する一連の製造工程を示し、図8(A)は溝形成工程図、図8(B)は絶縁層形成工程図、図8(C)は回路形成工程図、図8(D)は半田塗布工程図、図8(E)はバルブ部形成工程図である。
【0032】
先ず、平板形状をなす大型のアルミニウム合金板から打ち抜き加工又はリューター加工を行って展開した金属基板5を形成する。次に、溝形成工程を行う。溝形成工程では、図8(A)に示すように、金属基板5上に配線回路パターン19が形成される一面5aとは反対側の他面5bに基板折曲げ溝6(6〜17)を形成する。図8(A)では、断面略V字状をなす溝として基板折曲げ溝6を形成している。V字状溝の形態に基板折曲げ溝6を形成すれば、金属基板5を折り曲げたときに、溝部の傾斜面6a、6b同士が密着して折曲げ部の強度が高くなる。
【0033】
次に、絶縁層形成工程を行う。絶縁層形成工程では、図8(B)に示すように、前記基板折曲げ溝6とは反対側の金属基板5の一面5aに全体に亘って絶縁層32を形成する。絶縁層32は、導電性のある金属基板5とその上に形成される配線回路パターン19とを絶縁するために形成される。
【0034】
次に、回路形成工程を行う。回路形成工程では、図8(C)に示すように、絶縁層32の上に銅箔33を設け、その銅箔33の上にマスキングをしてエッチングすることにより、所定の配線回路パターン19を形成する。
【0035】
次に、半田塗布工程を行う。半田塗布工程では、図8(D)に示すように、配線回路パターン19のうち光源実装部20と、基板折曲げ溝6(6〜17)と対峙する金属基板5の一面5aに形成された配線回路パターン19上にクリーム半田を塗布する。クリーム半田は、光源18を配線回路パターン19に接続するのに光源実装部20に塗布するが、基板折曲げ溝6(6〜17)と対峙する部位にも塗布する。基板折曲げ溝6(6〜17)と対峙する部位に塗布されたクリーム半田は、配線回路パターン19をヒビ割れ等から保護するための回路保護部34として機能する。前記クリーム半田を塗布する範囲は、少なくとも基板折曲げ溝6が形成される部位と、その折れ曲がる部位全体とされる。
【0036】
次に、リフロー工程を行う。リフロー工程では、光源実装部20に塗布したクリーム半田34の上にLEDである光源18を載せ、前記金属基板5を炉内に入れてリフローする。これにより、光源18は、配線回路パターン19に接続される。
【0037】
次に、バルブ部形成工程を行う。バルブ部形成工程では、図8(E)に示すように、前記基板折曲げ溝6(6〜17)にて金属基板5を折り曲げて略球体をなすLEDバルブ部2を形成する。基板折曲げ溝6の部位から金属基板5を折り曲げると、その折曲げ部位には折曲げ力が配線回路パターン19に作用してヒビ割れ等を発生させるが、その折曲げ力を前記回路保護部34が分散させる。そのため、基板折曲げ溝6と対峙する部位に形成された配線回路パターン19をヒビ割れから回避することができ、回路自体の断線が抑制される。
【0038】
次に、組立工程を行う。組立工程では、略球体としたLEDバルブ部2を、電子回路部が設けられた内蔵基板3を取り付けたバルブソケット4に取り付けて車両用バルブ1を完成させる。LEDバルブ部2をバルブソケット4に取り付けるに際しては、前記取付け板部5K、5L、5Mに形成された爪部係止溝22に、該バルブソケット4に設けた係合爪28を嵌め込んで係止させる。前記係合爪28が爪部係止溝22に係止されることで、前記LEDバルブ部2とバルブソケット4とが固定される。
【0039】
以上のように本発明方法によれば、他面5bに形成した基板折曲げ溝6(6〜17)と対峙する金属基板5の一面5aに形成した配線回路パターン19上にクリーム半田を塗布することで、このクリーム半田からなる回路保護部34が、前記金属基板5を折り曲げた時の折曲げ部に作用する力を分散させて配線回路パターン19へのひび割れや断線を無くすことができる。したがって、本発明方法によれば、ひび割れや断線の無い配線回路パターン19を持つ信頼性の高い車両用バルブ1を製造できる。
【0040】
また、本発明方法によれば、光源18をリフローにて配線回路パターン19に接続するために用いるクリーム半田を基板折曲げ溝6(6〜17)と対峙する部位に塗布しているので、光源実装部20にクリーム半田を載せる工程の中で塗布することができる。したがって、専用工程を設ける必要が無く、製造工程を簡略化することができる。
【0041】
また、本発明方法によって製造された車両用バルブ1によれば、他面5bに形成した基板折曲げ溝6と対峙する金属基板5の一面5aの部位にクリーム半田を塗布して配線回路パターン19を保護する回路保護部34を形成したことにより、金属基板5を折り曲げたときに前記クリーム半田が、基板折曲げ時に折曲げ部に作用する力を分散させ、配線回路パターン19がヒビ割れるのを抑制すると共に断線を回避させる。したがって、本発明によれば、ひび割れや断線の無い配線回路パターン19を持つ信頼性の高い車両用バルブ1となる。
【0042】
「他の実施形態1」
上述の実施形態では、金属基板5を折り曲げる時に折曲げ部の配線回路パターン19がヒビ割れや断線しないように、基板折曲げ溝6〜17と対峙する部位にクリーム半田を塗布して形成した回路保護部34を設けたが、ここでは、基板折曲げ溝6〜17と対峙する部位に凹溝を形成する。以下に、その具体的な車両用バルブの製造方法について説明する。前記した製造工程と同一工程については、ここではその説明は省略するものとする。
【0043】
図9は他の実施形態1におけるLEDバルブ部を形成する一連の製造工程を示す他の例であり、図9(A)は溝形成工程図、図9(B)は絶縁層形成工程図、図9(C)は回路形成工程図、図9(D)はバルブ部形成工程図である。
【0044】
金属基板5の他面5bに基板折曲げ溝6(6〜17)を形成する工程までは同じであるが、図9(A)に示すように、溝形成工程において前記基板折曲げ溝6と対峙する前記一面5aの部位に凹溝35を形成する。図9(A)では、前記凹溝35を半円形状をなす溝として形成しているが、コ字状或いはV字状をなす溝形状であってもよい。
【0045】
次に、絶縁層形成工程を行う。絶縁層形成工程では、凹溝35を除く前記一面5aに接着剤を塗布する。接着剤を塗布するに際しては、前記凹溝35の中まで塗らないようにする。次に、接着剤の上に図9(B)に示すように絶縁層32を貼り付ける。凹溝35の上に置かれた絶縁層32は、接着剤が塗布されていないため、前記一面5aに固定されていない。
【0046】
次に、回路形成工程を行う。回路形成工程では、図9(C)に示すように、絶縁層32の上に銅箔33を設け、その銅箔33の上にマスキングをしてエッチングすることにより、所定の配線回路パターン19を形成する。前記凹溝35の上に設けられた配線回路パターン19は、やはり凹溝35に接着された状態とされていない。
【0047】
次に、半田塗布工程を行う。半田塗布工程では、配線回路パターン19の光源実装部20の上にクリーム半田を塗布する。図9では、クリーム半田は、図示を省略してある。
【0048】
次いで、リフロー工程を行う。リフロー工程では、光源実装部20に塗布したクリーム半田の上にLEDである光源18を載せ、前記金属基板5を炉内に入れてリフローする。これにより、光源18は、配線回路パターン19に接続される。
【0049】
次に、バルブ部形成工程を行う。バルブ部形成工程では、図9(D)に示すように、前記基板折曲げ溝6(6〜17)にて金属基板5を折り曲げて略球体をなすLEDバルブ部2を形成する。基板折曲げ溝6の部位から金属基板5を折り曲げると、凹溝35の上に接着されずに設けられた絶縁層32と配線回路パターン19が浮き上がり、その弛みによって折曲げ部位に作用する折曲げ力が吸収される。そのため、基板折曲げ溝6と対峙する部位に形成された配線回路パターン19のヒビ割れや断線が回避される。
【0050】
そして、最後に組立工程を行うが、組立工程は先の実施形態と同じであるので、ここではその説明は省略する。
【0051】
この他の実施形態1によれば、接着剤が塗布されていない凹溝の上に設けられた部位に相当する配線回路パターン19が浮き上がることによって、基板折曲げ時に作用する折曲げ力が配線回路パターン19に加わるのを防止し、ひび割れや断線の無い配線回路パターン19を持つ信頼性の高い車両用バルブを製造することができる。
【0052】
「他の実施形態2」
この実施形態2では、先の実施形態における特に図8の溝形成工程において、同一ヶ所に設ける基板折曲げ溝6(6〜17)を複数形成する。それ以外は、図8の製造工程と同一であるので、各工程の具体的な説明は省略するものとする。
【0053】
図10は他の実施形態2におけるLEDバルブ部を形成する一連の製造工程を示し、図10(A)は溝形成工程図、図10(B)は絶縁層形成工程図、図10(C)は回路形成工程図、図10(D)は半田塗布工程図、図10(E)はバルブ部形成工程図である。
【0054】
この他の実施形態2では、金属基板5の折曲げ部位に2つの基板折曲げ溝6(6〜17)を形成する。基板折曲げ溝6の形状に関しては、先の図8と同じである。金属基板5の折曲げ部位に2つの基板折曲げ溝6(6〜17)を形成すれば、金属基板5を折り曲げたときに、基板折曲げ溝6の数が増えた分だけ金属基板5を折り曲げ易くなる。また、折り曲げ部位に対応する配線回路パターン19に作用する折り曲げ力も低減し、当該配線回路パターン19への負荷も低減し、より一層のヒビ割れ及び断線発生率を抑えることが可能となる。
【0055】
「他の実施形態3」
図11は他の実施形態3における車両用バルブを示し、図11(A)はその車両用バルブの平面図、図11(B)はその車両用バルブの右側面図、図11(C)はその車両用バルブの底面図、図11(D)はその車両用バルブの正面図、図12は図11に示すソケットを取り付ける前の車両用バルブを示し、図12(A)はその車両用バルブの平面図、図12(B)はその車両用バルブの右側面図、図12(C)はその車両用バルブの底面図、図12(D)はその車両用バルブの正面図、図13は図11のソケットの斜視図である。
【0056】
この他の実施形態3では、先の実施形態の図1で示したバルブソケット4とは異なる形状とした例であり、円筒状のソケット36を装着した形態としている。この実施形態3のバルブソケット4は、図1のLEDバルブ部2に装着される部位の形状と同じであるが、外に出ている部位の形状を円柱形状としている。ソケット36の底面には、プラス側の端子31が設けられている。
【0057】
この実施形態3のように、LEDバルブ部2に装着されるバルブソケット4の形態は、相手側ソケットの形状に応じて決められる。そのため、このバルブソケット4の形態に関しては、先の実施形態の形態に制限されることはない。
【0058】
以上、本発明を適用した具体的な実施形態について説明したが、本発明は、上述した実施形態に制限されない。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】図1(A)は車両用バルブの平面図、図1(B)は車両用バルブの右側面図、図1(C)は車両用バルブの底面図、図1(D)は車両用バルブの正面図である。
【図2】図2は車両用バルブの縦断面図である。
【図3】図3(A)はLEDバルブ部の平面図、図3(B)はLEDバルブ部の右側面図、図3(C)はLEDバルブ部の底面図、図3(D)はLEDバルブの正面図である。
【図4】図4(A)はLEDバルブ部を構成する金属基板を基板折曲げ溝が形成された面を上向きとして示す展開図、図4(B)はその金属基板の側面図、図4(C)は金属基板に形成した基板折曲げ溝の断面図である。
【図5】図5はLEDバルブ部を構成する金属基板を配線回路パターンが形成された面を上向きとして示す展開図である。
【図6】図6(A)はバルブソケットの平面図、図6(B)はバルブソケットの右側面図、図6(C)はバルブソケットの底面図、図6(D)はバルブソケットの正面図である。
【図7】図7(A)は図6(A)のA−A線断面図、図7(B)は図6(B)のB−B線断面図、図7(C)は図6(B)のC−C線断面図である。
【図8】図8はLEDバルブ部を形成する一連の製造工程を示し、図8(A)は溝形成工程図、図8(B)は絶縁層形成工程図、図8(C)は回路形成工程図、図8(D)は半田塗布工程図、図8(E)はバルブ部形成工程図である。
【図9】図9は他の実施形態1におけるLEDバルブ部を形成する一連の製造工程を示す他の例であり、図9(A)は溝形成工程図、図9(B)は絶縁層形成工程図、図9(C)は回路形成工程図、図9(D)はバルブ部形成工程図である。
【図10】図10は他の実施形態2におけるLEDバルブ部を形成する一連の製造工程を示し、図10(A)は溝形成工程図、図10(B)は絶縁層形成工程図、図10(C)は回路形成工程図、図10(D)は半田塗布工程図、図10(E)はバルブ部形成工程図である。
【図11】図11は他の実施形態3における車両用バルブを示し、図11(A)はその車両用バルブの平面図、図11(B)はその車両用バルブの右側面図、図11(C)はその車両用バルブの底面図、図11(D)はその車両用バルブの正面図である。
【図12】図12は図11に示すソケットを取り付ける前の車両用バルブを示し、図12(A)はその車両用バルブの平面図、図12(B)はその車両用バルブの右側面図、図12(C)はその車両用バルブの底面図、図12(D)はその車両用バルブの正面図である。
【図13】図13は図11のソケットの斜視図である。
【符号の説明】
【0060】
1…車両用バルブ
2…LEDバルブ部
3…内蔵基板
4…バルブソケット
5…金属基板
6〜17…基板折曲げ溝
18…光源(LED)
19…配線回路パターン
20…光源実装部
22…爪部係止溝
28…係合爪
32…絶縁層
33…銅箔
34…回路保護部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属基板の一面に配線回路パターンが形成されて複数個のLEDからなる光源が実装されると共に他面に基板折曲げ溝が形成され、その基板折曲げ溝にて該金属基板を多角形状に折り曲げることで略球体としたLEDバルブ部と、このLEDバルブ部が取り付けられる、電子回路部が設けられた内蔵基板を取り付けたバルブソケットと、を備えた車両用バルブであって、
前記基板折曲げ溝と対峙する前記金属基板の一面の部位に、前記光源を前記配線回路パターンの光源実装部に実装する際に使用するクリーム半田を塗布して配線回路パターンを保護する回路保護部を形成した
ことを特徴とする車両用バルブ。
【請求項2】
金属基板上に配線回路パターンが形成される一面とは反対側の他面に基板折曲げ溝を形成する溝形成工程と、
前記金属基板の一面に絶縁層を形成する絶縁層形成工程と、
前記絶縁層の上に配線回路パターンを形成する回路形成工程と、
前記配線回路パターンのうちLEDからなる光源を実装する光源実装部と、前記基板折曲げ溝と対峙する前記金属基板の一面に形成された前記配線回路パターン上にクリーム半田を塗布する半田塗布工程と、
前記金属基板を炉内に入れてリフローするリフロー工程と、
前記基板折曲げ溝にて前記金属基板を多角形状に折り曲げて略球体をなすLEDバルブ部を形成するバルブ部形成工程と、
前記LEDバルブ部を、電子回路部が設けられた内蔵基板を取り付けたバルブソケットに取り付けて車両用バルブとする組立工程と、を備えた
ことを特徴とする車両用バルブの製造方法。
【請求項3】
金属基板上に配線回路パターンが形成される一面とは反対側の他面に基板折曲げ溝を形成すると共にその基板折曲げ溝と対峙する前記一面の部位に凹溝を形成する溝形成工程と、
前記凹溝を除く前記一面に接着剤を塗布した後、絶縁層を貼り付ける絶縁層形成工程と、
前記絶縁層上に配線回路パターンを形成する回路形成工程と、
前記配線回路パターンのうちLEDからなる光源を実装する光源実装部にクリーム半田を塗布する半田塗布工程と、
前記金属基板を炉内に入れてリフローするリフロー工程と、
前記基板折曲げ溝にて前記金属基板を多角形状に折り曲げて略球体をなすLEDバルブ部を形成するバルブ部形成工程と、
前記LEDバルブ部を、電子回路部が設けられた内蔵基板を取り付けたバルブソケットに取り付けて車両用バルブとする組立工程と、を備えた
ことを特徴とする車両用バルブの製造方法。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載の車両用バルブの製造方法であって、
前記溝形成工程で、同一ヶ所に設ける基板折曲げ溝を複数形成する
ことを特徴とする車両用バルブの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−129431(P2010−129431A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−304139(P2008−304139)
【出願日】平成20年11月28日(2008.11.28)
【出願人】(390005304)ピア株式会社 (19)
【Fターム(参考)】