説明

車両用フロントピラー構造

【課題】三角窓部の車両後側枠部の断面強度を向上させることができる車両用フロントピラー構造を得る。
【解決手段】フロントピラー22の後側縦枠部34は、サイドメンバアウタパネル42の後側枠部42Aと、後側枠部42Aより車両幅方向内側に配置されるアッパアウタリインフォース52の後側枠部52Bと、後側枠部52Bより車両幅方向内側に配置されるリアインナパネル46と、を備えている。アッパアウタリインフォース52は、前側フランジ部52Eの車両後端部から車両内側に向かって延びる前側壁部52Fと、前側壁部52Fの車両内側端部から車両後方側及び車両内側に斜め方向に延びる略直線状の縦壁部52Gと、縦壁部52Gの車両内側端部から車両後方側に延びる後側フランジ部52Hと、を備えている。縦壁部52Gは、後側縦枠部34の水平断面の図心60より車両幅方向内側に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用フロントピラー構造に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、三角窓部を備えたフロントピラーにおける三角窓部の後縁枠部として、アウタパネルとインナパネルとの間にアウタリインフォースが配置された構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−235983号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記先行技術による場合、強度部材であるアウタリインフォースが、フロントピラーにおける三角窓部の後縁枠部の図心よりも車両外側に配置されており、車両の前面衝突時(以下、前突時という。)に強度部材として十分に活用されておらず、非効率である。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、三角窓部の車両後側枠部の断面強度を向上させることができる車両用フロントピラー構造を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明に係る車両用フロントピラー構造は、フロントピラーの車両外側に配置され、車両上下方向中間部に三角窓部としての外側開口枠部が形成されると共に車両上下方向に沿って延在するアウタパネルと、前記アウタパネルより車両内側に配置され、車両上下方向中間部に前記三角窓部を構成する枠部の少なくとも一部が形成されると共に車両上下方向に沿って延在するインナパネルと、前記アウタパネルと前記インナパネルとの間に配置され、車両上下方向中間部に前記三角窓部としての内側開口枠部が形成されると共に車両上下方向に沿って延在し、かつ、前記内側開口枠部の後部が前記三角窓部の車両後側枠部の水平断面の図心よりも車両内側に配置されたリインフォースと、を有するものである。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載の車両用フロントピラー構造において、前記インナパネルは、前記三角窓部の車両後側が開口した構成とされているものである。
【0008】
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2に記載の車両用フロントピラー構造において、前記リインフォースにおける前記内側開口枠部の後部は、車両前後方向に延在される前後一対の前側フランジ部及び後側フランジ部と、前記前側フランジ部の車両後端側から車両内側に向かって延設される前側壁部と、前記前側壁部の車両内側端部と前記後側フランジ部の車両前端部とを水平断面にて直線状に繋ぐように形成された中間壁部と、を有するものである。
【0009】
請求項1記載の本発明によれば、車両上下方向中間部に三角窓部としての外側開口枠部が形成されたアウタパネルと、三角窓部を構成する枠部の少なくとも一部が形成されたインナパネルとの間に、三角窓部としての内側開口枠部が形成されたリインフォースが配置されている。リインフォースにおける内側開口枠部の後部は、三角窓部の車両後側枠部の水平断面の図心よりも車両内側に配置されており、車両の前突時の入力に対して圧縮側(図心より車両内側)の耐力を上げることでリインフォースを高強度化することができる。これによって、三角窓部の車両後側枠部の断面強度を向上させることができる。
【0010】
請求項2記載の本発明によれば、インナパネルは、三角窓部の車両後側が開口した構成とされており、インナパネルに三角窓部の後部が形成されていない。すなわち、車両の前突時の入力に対してリインフォースにおける内側開口枠部の後部の圧縮側(図心より車両内側)の耐力を上げることで、従来構成と同等の耐力を確保しつつ、インナパネルの一部(三角窓部の後部)を廃止することができる。これによって、三角窓部の車両後側枠部の軽量化が可能となる。
【0011】
請求項3記載の本発明によれば、リインフォースは、前側フランジ部の車両後端側から車両内側に向かって前側壁部が延設され、この前側壁部の車両内側端部と後側フランジ部の車両前端部とを直線状に繋ぐ中間壁部が形成されており、リインフォースの断面線長を短くすることができる。このため、三角窓部の車両後側枠部の更なる軽量化が可能である。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように、請求項1記載の本発明に係る車両用フロントピラー構造は、三角窓部の車両後側枠部の断面強度を向上させることができるという優れた効果を有する。
【0013】
請求項2記載の本発明に係る車両用フロントピラー構造は、インナパネルの一部を廃止することで、三角窓部の車両後側枠部を軽量化できるという優れた効果を有する。
【0014】
請求項3記載の本発明に係る車両用フロントピラー構造は、三角窓部の車両後側枠部の更なる軽量化を実現できるという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】第1実施形態に係る車両用フロントピラー構造を備えた車両を示す斜視図である。
【図2】第1実施形態に係る車両用フロントピラー構造のインナパネル及びリインフォースパネルの構成を示す分解側面図である。
【図3】第1実施形態に係る車両用フロントピラー構造を示す側面図である。
【図4】図1中の2−2線における横断面図であって、車両用フロントピラー構造における三角窓部の車両後側枠部を示す図である。
【図5】第2実施形態に係る車両用フロントピラー構造のインナパネル及びリインフォースパネルの構成を示す分解側面図である。
【図6】第2実施形態に係る車両用フロントピラー構造を示す側面図である。
【図7】第2実施形態に係る車両用フロントピラー構造における三角窓部の車両後側枠部を示す横断面図である。
【図8】従来の車両用フロントピラー構造における三角窓部の車両後側枠部を示す横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図1〜図8を用いて、本発明に係る車両用フロントピラー構造の第1実施形態について説明する。なお、これらの図において適宜示される矢印FRは車両前方側を示しており、矢印UPは車両上方側を示しており、矢印OUTは車両幅方向外側を示している。
【0017】
図1には、車両用フロントピラー構造が適用された車両10の斜視図が示されている。この図に示されるように、車両10のボデー本体11には、フード12によって覆われたエンジンルームの車両後方側に車室14が設けられており、車室14の車両下方側にはフロアパネル(図示省略)の車両幅方向両側に沿って延在するサイドシル16が配設されている。車室14の車両上部にはルーフパネル18が配設されており、ルーフパネル18の車両幅方向両側に車両前後方向に沿ってルーフサイドレール20が配設されている。
【0018】
車両10の両側のサイドシル16とルーフサイドレール20の車両前方側には、車両上下方向に延在すると共に車両上下方向中間部から車両後方側に斜め上方に延びたフロントピラー22が配設されている。フロントピラー22の下端部はサイドシル16の前端部に結合され、フロントピラー22の上端部はルーフサイドレール20の前端部に結合されている。車室14の車両前方側には、車両幅方向両側のフロントピラー22の間に車両上方側に緩やかに傾斜するウィンドウシールドガラス24が配設されている。ルーフサイドレール20とフロントピラー22とサイドシル16と図示しないセンターピラー等で囲まれた開口部には、フロントサイドドア26が図示しないドアヒンジにより開閉可能に配設されている。
【0019】
フロントピラー22の車両上下方向中間部には、車両側方の視界を確保するための三角窓部30が設けられている。フロントピラー22には、三角窓部30の車両前縁に沿って車両後方側に緩やかな上り勾配となるように延びた前側傾斜枠部32と、三角窓部30の車両後縁に沿って車両上下方向に延びた車両後側枠部としての後側縦枠部34と、三角窓部30の車両下縁に沿って車両前後方向に延びた下側横枠部36とが形成されている。
【0020】
図2には、フロントピラー22を構成するピラーインナパネル及びアウタリインフォースの分解側面図が示されており、図3には、フロントピラー22の側面図が示されている。これらの図に示されるように、フロントピラー22は、車両幅方向内側に配置されるピラーインナパネル38と、ピラーインナパネル38よりも車両幅方向外側に配置される補強用のアウタリインフォース40と、アウタリインフォース40よりも車両幅方向外側に配置されるサイドメンバアウタパネル42(サイメンアウタ)と、を備えている。なお、図3では、フロントピラー22の構成を分りやすくするためにサイドメンバアウタパネル42を二点鎖線で図示している。
【0021】
ピラーインナパネル38は、当該ピラーインナパネル38の上部を形成して前側傾斜枠部32(図1参照)と対応する位置に配置されるアッパインナパネル44と、ピラーインナパネル38の上部の車両後部を形成して後側縦枠部34(図1参照)と対応する位置に配置されるリアインナパネル46と、ピラーインナパネル38の下部を形成して下側横枠部36(図1参照)と対応する位置に配置されるロアインナパネル48と、で構成されている。
【0022】
アッパインナパネル44には、車両前端が車両下方側に延びた前端下部44Aが形成されている。ロアインナパネル48には、上端部の車両前後の角部が切り欠かれた前側上端部48A及び後側上端部48Bが形成されている。アッパインナパネル44の前端下部44Aとロアインナパネル48の前側上端部48Aとが溶接等により接合されており、アッパインナパネル44の後端下部44Bとリアインナパネル46の上端部46Aとが溶接等により接合されている。さらに、リアインナパネル46の下端部46Bとロアインナパネル48の後側上端部48Bとが溶接等により接合されている。これによって、アッパインナパネル44とリアインナパネル46とロアインナパネル48とが一体化されたピラーインナパネル38が形成されている。アッパインナパネル44とリアインナパネル46とロアインナパネル48とで囲まれた部分に略矩形状で車両前方が細くなる開口部50が形成されており、開口部50の周囲が開口枠部となっている。ピラーインナパネル38の開口部50は、三角窓部30(図1参照)と対応する位置に配置されている。
【0023】
アウタリインフォース40は、当該アウタリインフォース40の上部を形成するアッパアウタリインフォース52と、当該アウタリインフォース40の下部を形成するロアアウタリインフォース54と、で構成されている。
【0024】
アッパアウタリインフォース52には、車両上下方向中間部に略矩形状で車両前方が細くなるように形成された開口部56が設けられている。アッパアウタリインフォース52には、開口部56の車両前縁に沿って車両後方側に上り勾配となるように略L字状に延びた前側枠部52Aと、開口部56の車両後縁に沿って車両上下方向に延びた後側枠部52Bと、開口部56の車両下縁に沿って車両前後方向に延びた下側枠部52Cとが形成されている。アッパアウタリインフォース52の開口部56は、三角窓部30(図1参照)に対応する位置に配置されており、前側枠部52Aと後側枠部52Bと下側枠部52Cとで「内側開口枠部」が構成されている。すなわち、後側枠部52Bが「内側開口枠部の後部」となっている。
【0025】
アッパアウタリインフォース52の下側枠部52Cより車両下方の下端部52Dとロアアウタリインフォース54の上端部54Aとが溶接等により接合されることで、アッパアウタリインフォース52とロアアウタリインフォース54とが一体化されたアウタリインフォース40が形成されている。このアウタリインフォース40は、ピラーインナパネル38に溶接等により接合されている。
【0026】
サイドメンバアウタパネル42は、アウタリインフォース40の車両外側を覆うと共に、車両上下方向中間部に三角窓部30(図1参照)としての外側開口枠部を備えている。図示を省略するが、サイドメンバアウタパネル42の上部と下部は車両後方側に延設されている。
【0027】
図4には、図1中の2−2線におけるフロントピラー22の後側縦枠部34の横断面図が示されている。この図に示されるように、後側縦枠部34は、サイドメンバアウタパネル42の後側枠部42Aと、後側枠部42Aより車両幅方向内側に配置されるアッパアウタリインフォース52(アウタリインフォース40)の後側枠部52Bと、後側枠部52Bより車両幅方向内側に配置されるリアインナパネル46(ピラーインナパネル38)と、を備えている。
【0028】
サイドメンバアウタパネル42の後側枠部42Aは、車両前後方向前方側に延びる前側フランジ部42Bと、前側フランジ部42Bの車両後端部から車両内側に向かって延びると共に、中間部で車両後方側に略S字状に屈曲された縦壁部42Cと、縦壁部42Cの車両内側端部から車両前後方向後方側に延びる後側フランジ部42Dと、を備えている。
【0029】
アッパアウタリインフォース52の後側枠部52Bは、車両前後方向前方側に延びる前側フランジ部52Eと、前側フランジ部52Eの車両後端部から車両内側に向かって延びる前側壁部52Fと、前側壁部52Fの車両内側端部から車両後方側及び車両内側に斜め方向に延びる略直線状の縦壁部52G(中間壁部)と、縦壁部52Gの車両内側端部から車両前後方向後方側に延びる後側フランジ部52Hと、を備えている。
【0030】
リアインナパネル46は、車両前後方向前方側に延びる前側フランジ部46Cと、前側フランジ部46Cの車両後端部から車両内側に向かって延びると共に、車両内側端部から車両後方側へ略L字状に屈曲された縦壁部46Dと、縦壁部46Dの車両後端部から車両前後方向後方側に延びる後側フランジ部46Eと、を備えている。
【0031】
サイドメンバアウタパネル42の前側フランジ部42Bと、アッパアウタリインフォース52の前側フランジ部52Eと、リアインナパネル46の前側フランジ部46Cは車両幅方向に重ねられた状態で溶接(スポット溶接)により接合されている。サイドメンバアウタパネル42の後側フランジ部42Dと、アッパアウタリインフォース52の後側フランジ部52Hと、リアインナパネル46の後側フランジ部46Eは車両幅方向に重ねられた状態で溶接(スポット溶接)により接合されている。これにより、フロントピラー22の後側縦枠部34は閉断面構造に形成されている。
【0032】
サイドメンバアウタパネル42の後側フランジ部42Dと、アッパアウタリインフォース52の後側フランジ部52Hと、リアインナパネル46の後側フランジ部46Eとの接合部には、ドアオープニングモール62に設けられた略U字状の取付部62Aが嵌合されている。ドアオープニングモール62はゴム等の弾性体で形成されている。
【0033】
後側縦枠部34の車両外側には、フロントサイドドア26の上部を構成する枠状のドアフレーム64が配設されている。なお、図4には、枠状のドアフレーム64の前部が図示されている。ドアフレーム64の内周側には、ゴム等の弾性体からなるドアガラスラン66が嵌着されている。ドアガラス68はドアガラスラン66の内方に弾性的に圧接されるように配置されており、ドアガラス68の閉時および昇降時のシール性が確保されるようになっている。また、ドアフレーム64の外周側には、ゴム等の弾性体からなるウェザーストリップ70が嵌着されている。ウェザーストリップ70は、フロントサイドドア26の閉止時にサイドメンバアウタパネル42の縦壁部42Cに接触して潰れ変形することでシール性が確保されるようになっている。
【0034】
サイドメンバアウタパネル42の前側フランジ部42Bの車両幅方向外側には、樹脂製のピラーアウタガーニッシュ72が接着剤74により取り付けられている。ピラーアウタガーニッシュ72の車両外側に形成された窪み部72Aには、三角窓部30のウィンドウシールドガラス31の後端部が装着されている。
【0035】
後側縦枠部34の車両内側には、リアインナパネル46に沿って樹脂製のピラーインナガーニッシュ76が配設されている。ピラーインナガーニッシュ76の後端部76Aはドアオープニングモール62に接触しており、ピラーインナガーニッシュ76の前端部76Bは、ウィンドウシールドガラス31と近接する位置まで延出されている。
【0036】
このような後側縦枠部34では、強度部材であるアッパアウタリインフォース52の略直線状の縦壁部52Gを後側縦枠部34の水平断面の図心60よりも車両幅方向内側へ通すように配置している。後側縦枠部34は、車両10の前突時の入力に対して、図心60よりも車両幅方向内側が圧縮になるが、アッパアウタリインフォース52の略直線状の縦壁部52Gを図心60よりも車両幅方向内側に配置することで、前突時の入力に対して圧縮側の耐力を上げる構成となっている。
【0037】
次に、本実施形態の作用並びに効果について説明する。
【0038】
フロントピラー22を構成する後側縦枠部34は、リアインナパネル46とサイドメンバアウタパネル42の後側枠部42Aとの間に強度部材であるアッパアウタリインフォース52の後側枠部52Bが配設されている。アッパアウタリインフォース52の略直線状の縦壁部52Gは、後側縦枠部34の水平断面の図心60よりも車両幅方向内側を通るように配置されている。後側縦枠部34は、車両10の前突時の入力に対して、図心60よりも車両幅方向内側が圧縮になるが、アッパアウタリインフォース52の略直線状の縦壁部52Gを図心60よりも車両幅方向内側に配置することで、前突時の入力に対して圧縮側の耐力を上げ、アッパアウタリインフォース52を高強度化することができる。これによって、後側縦枠部34の断面強度を向上させることができる。また、アッパアウタリインフォースの後側枠部を図心60よりも車両幅方向外側に配置した場合に比べて、アッパアウタリインフォース52の後側枠部52Bの板厚を薄くすることができ、アッパアウタリインフォース52の軽量化が可能となる。
【0039】
さらに、アッパアウタリインフォース52の後側枠部52Bには、前側壁部52Fの車両内側端部と後側フランジ部52Hの車両前端部とを繋ぐ断面が略直線状の縦壁部52Gが設けられているので、アッパアウタリインフォース52の後側枠部52Bの水平方向の全長(断面線長)を短くすることができる。このため、アッパアウタリインフォース52の更なる軽量化を実現することができる。
【0040】
図8には、比較例に係るフロントピラー100の三角窓部の後側縦枠部102の横断面図が示されている。この図に示されるように、アッパアウタリインフォース104の後側枠部104Aは、車両前方側に延びる前側フランジ部104Bと、前側フランジ部104Bの車両後端部から車両内側に向かって延びる前側壁部104Cと、前側壁部104Cの車両内側端部から車両後方側に屈曲されると共に中間部で断面略L字状に車両内側に屈曲された縦壁部104Dと、縦壁部104Dの車両内側端部から車両後方側に延びる後側フランジ部104Eと、を備えている。前側壁部104C及び縦壁部104Dは、サイドメンバアウタパネル42の縦壁部42Cに沿って配置されている。
【0041】
この後側縦枠部102では、前突時の入力に対して後側縦枠部102の水平断面の図心106より車両幅方向内側が圧縮になるが、強度部材であるアッパアウタリインフォース104の前側壁部104C及び縦壁部104Dが図心106よりも車両幅方向外側を通るように配置されており、リアインナパネル46は薄板であるため強度部材として活用されない。そのため、アッパアウタリインフォース104の後側枠部104Aの板厚を厚くする必要がある。
【0042】
これに対して、本実施形態では、アッパアウタリインフォース52の縦壁部52Gが図心60よりも車両幅方向内側を通るように配置されており、前突時の入力に対して圧縮側の耐力を上げ、断面強度を向上させることができる。このため、アッパアウタリインフォース104の後側枠部104Aに比べてアッパアウタリインフォース52の後側枠部52Bの板厚を薄くすることができ、アッパアウタリインフォース104の軽量化を実現することができる。
【0043】
次に、図5〜図7を用いて、本発明に係る車両用フロントピラー構造の第2実施形態について説明する。なお、前述した第1実施形態と同一構成部分については、同一番号を付してその説明を省略する。
【0044】
図5〜図7に示されるように、フロントピラー80は、ピラーインナパネル82と、アウタリインフォース40と、サイドメンバアウタパネル42(サイメンアウタ)と、を備えている。第1実施形態と異なるところは、ピラーインナパネル82は、当該ピラーインナパネル38の上部を形成して前側傾斜枠部32(図1参照)と対応する位置に配置されるアッパインナパネル84と、ピラーインナパネル82の下部を形成して下側横枠部36(図1参照)と対応する位置に配置されるロアインナパネル86と、で構成されており、ピラーインナパネル82の車両後側が開口されている。言い換えると、ピラーインナパネル82には、三角窓部30(図1参照)の後部にリアインナパネルは設けられていない。
【0045】
ロアインナパネル86は、第1実施形態のロアインナパネル48に比べて、後側上端部86Aが車両上方側に延出されている。アッパインナパネル44の前端下部44Aとロアインナパネル48の前側上端部48Aとが溶接等により接合されることで、アッパインナパネル44とロアインナパネル86とが一体化されたピラーインナパネル82が形成されている。
【0046】
図7に示されるように、フロントピラー80の後側縦枠部81は、サイドメンバアウタパネル42の後側枠部42Aと、アッパアウタリインフォース52(アウタリインフォース40)の後側枠部52Bと、で構成されている。すなわち、アッパアウタリインフォース52の後側枠部52Bの車両幅方向内側にリアインナパネルは設けられていない。
【0047】
このようなフロントピラー80の後側縦枠部81は、比較例の後側縦枠部102(図8参照)と同等の耐力を確保しつつ、ピラーインナパネル82の一部であるリアインナパネルを廃止することができる。このため、後側縦枠部81の更なる軽量化を実現することができる。また、部品点数の削減を通じ、型数や溶接点数の削減によるコストの削減も可能となる。さらに、リアインナパネルを廃止することで、後側縦枠部81の視界改善を図ることができる。
【0048】
なお、第1実施形態では、アッパアウタリインフォース52の後側枠部52Bは、前側壁部52Fと、この前側壁部52Fから斜め方向に延びる略直線状の縦壁部52Gとを備えているが、後側縦枠部の水平断面の図心60よりも車両幅方向内側に配置される構成であれば、アッパアウタリインフォース52の前側壁部52F及び縦壁部52Gの位置や形状は変更可能である。
【符号の説明】
【0049】
10 車両
22 フロントピラー
30 三角窓部
34 後側縦枠部(車両後側枠部)
38 ピラーインナパネル(インナパネル)
40 アウタリインフォース(リインフォース)
42 サイドメンバアウタパネル(アウタパネル)
42A 後側枠部(外側開口枠部)
46 リアインナパネル(インナパネル)
52 アッパアウタリインフォース(リインフォース)
52A 前側枠部(内側開口枠部)
52B 後側枠部(内側開口枠部の後部)
52C 下側枠部(内側開口枠部)
52E 前側フランジ部
52F 前側壁部
52G 縦壁部(中間壁部)
52H 後側フランジ部
60 図心
80 フロントピラー
81 後側縦枠部(車両後側枠部)
82 ピラーインナパネル(インナパネル)
84 アッパインナパネル(インナパネル)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロントピラーの車両外側に配置され、車両上下方向中間部に三角窓部としての外側開口枠部が形成されると共に車両上下方向に沿って延在するアウタパネルと、
前記アウタパネルより車両内側に配置され、車両上下方向中間部に前記三角窓部を構成する枠部の少なくとも一部が形成されると共に車両上下方向に沿って延在するインナパネルと、
前記アウタパネルと前記インナパネルとの間に配置され、車両上下方向中間部に前記三角窓部としての内側開口枠部が形成されると共に車両上下方向に沿って延在し、かつ、前記内側開口枠部の後部が前記三角窓部の車両後側枠部の水平断面の図心よりも車両内側に配置されたリインフォースと、
を有する車両用フロントピラー構造。
【請求項2】
前記インナパネルは、前記三角窓部の車両後側が開口した構成とされている請求項1に記載の車両用フロントピラー構造。
【請求項3】
前記リインフォースにおける前記内側開口枠部の後部は、
車両前後方向に延在される前後一対の前側フランジ部及び後側フランジ部と、
前記前側フランジ部の車両後端側から車両内側に向かって延設される前側壁部と、
前記前側壁部の車両内側端部と前記後側フランジ部の車両前端部とを水平断面にて直線状に繋ぐように形成された中間壁部と、
を有する請求項1又は請求項2に記載の車両用フロントピラー構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−183848(P2011−183848A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−48376(P2010−48376)
【出願日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】