説明

車両用フードエアバッグ装置

【課題】車両用フードエアバッグ装置において、フードアウタパネルの開口部と該開口部に設けられるドアとの意匠性を良好に維持して車両の外観品質を向上させることを目的とする。
【解決手段】フードアウタパネル22の開口部22Aを覆うドア18が、エアバッグ袋体16の展開時にヒンジ21により支持される。ヒンジ21は、フードインナパネル24に対して所定範囲内で相対変位可能となるように該フードインナパネル24側の段付きボルト52(連結部材)に連結されている。このため、ドア18を取り付けてフードアウタパネル22の開口部22Aを覆う際に、該開口部22Aとドア18との間の寸法のばらつきを、ヒンジ21が段付きボルト52に対して相対変位することで吸収することができ、意匠性を良好に維持して車両の外観品質を向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアバッグ袋体をフード外へ膨張させる車両用フードエアバッグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒンジ部となる延長部を介して長方形のリッド(ドア)が取り付けられたエアバッグモジュールケースを、フードの開口部に固定したフードエアバッグ装置が開示されている(特許文献1参照)。また、リッドが、インストルメントパネルの開口に対して、所定範囲の変位を許容する係合手段を介してフローティング状態で取り付けられたエアバッグ式乗員保護装置が開示されている(特許文献2参照)。
【特許文献1】特許第3245489号公報
【特許文献2】特開平7−117609号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記した従来例のように、ドアが取り付けられた状態のエアバッグモジュールケースを保持部材に固着して予組立(サブアッセンブリ化)しておき、これをフードインナパネル等の骨格部材にボルトを用いて組み付けることでフードアウタパネルの開口部をドアで覆うようにする場合、サブアッセンブリ時における各部品の寸法のばらつきと、骨格部材への組付け時のばらつきの両方が、開口部とドアとの意匠性に影響する。
【0004】
本発明は、上記事実を考慮して、車両用フードエアバッグ装置において、フードアウタパネルの開口部と該開口部に設けられるドアとの意匠性を良好に維持して車両の外観品質を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の発明は、フードにおけるフードアウタパネルとフードインナパネルとの間に配設され、インフレータからのガスの供給を受けて前記フードアウタパネルの開口部を通じて前記フード外へ膨張展開するエアバッグ袋体と、通常使用時に前記開口部を覆うように設けられ、前記エアバッグ袋体の膨張時に前記エアバッグ袋体の膨張力により展開して前記開口部を開放するドアと、前記フードインナパネルに対して所定範囲内で相対変位可能となるように該フードインナパネル側の連結部材に連結され、前記ドアの展開時に該ドアを支持するヒンジと、を有することを特徴としている。
【0006】
請求項1に記載の車両用フードエアバッグ装置では、ドアの展開を支持するヒンジが、フードインナパネルに対して所定範囲内で相対変位可能となるフローティング状態で該フードインナパネル側の連結部材に連結されているので、ドアをフードインナパネルに取り付けて該ドアでフードアウタパネルの開口部を覆う際に、該開口部とドアとの間の寸法のばらつきを、ヒンジが連結部材に対して相対変位することで吸収することができる。ドアは、エアバッグ袋体やインフレータ等とはサブアッセンブリされないので、該サブアッセンブリ時の寸法ばらつきについては考慮する必要がない。このため、フードアウタパネルの開口部と該開口部に設けられるドアとの意匠性を良好に維持して車両の外観品質を向上させることが可能である。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載の車両用フードエアバッグ装置において、前記ドアは、弾性変形することで前記フードアウタパネルから離脱可能な複数個のクリップにより前記開口部を覆う位置に保持されていることを特徴としている。
【0008】
請求項2に記載の車両用フードエアバッグ装置では、ドアが複数個のクリップによりフードアウタパネルの開口部を覆う位置に保持され、該クリップは、自身が弾性変形することでフードアウタパネルから離脱可能に構成されているので、通常使用時には開口部はドアにより安定的に覆われた状態となっている。また、エアバッグ袋体の膨張時にその膨張力がドアに作用すると、クリップが弾性変形してフードアウタパネルから離脱することで、ドアが展開可能となる。このため、請求項2に記載の車両用フードエアバッグ装置では、通常使用時に開口部とドアとの意匠性を良好に維持できると共に、エアバッグ袋体の膨張時には該膨張力によりドアを展開させて、該エアバッグ袋体をフード外へ膨張展開させることができる。
【0009】
請求項3の発明は、請求項2に記載の車両用フードエアバッグ装置において、前記連結部材における前記ヒンジの相対変位可能範囲は、該相対変位可能範囲において前記クリップが前記フードアウタパネルから離脱可能となるように設定されていることを特徴としている。
【0010】
請求項3に記載の車両用フードエアバッグ装置では、ドアがエアバッグ袋体の膨張力により押し上げられると、クリップがフードアウタパネルから離脱してドアが展開する。ここで、クリップは、連結部材におけるヒンジの相対変位可能範囲においてフードアウタパネルから離脱することが可能であるので、ヒンジの存在がクリップの離脱の妨げになることを抑制でき、ドアをより安定的に展開させることが可能である。
【0011】
請求項4の発明は、請求項1から請求項3の何れか1項に記載の車両用フードエアバッグ装置において、前記ヒンジは、前記ドアの展開に伴って塑性変形し易いように該ドアより低剛性に構成され、かつ余長部として構成された変形ストローク確保用の変形可能部を有することを特徴としている。
【0012】
請求項4に記載の車両用フードエアバッグ装置では、エアバッグ袋体の膨張力によりドアが押し上げられると、該ドアよりも低剛性に構成されたヒンジが塑性変形することで該ドアの展開が支持され、かつ余長部として構成された変形ストローク確保用の変形可能部がドアの展開に伴って伸長することで、該ドアがヒンジを中心としてフードアウタパネル上へ反転するように円滑に展開する。このため、エアバッグ袋体の膨張時に、ドアをヒンジにより支持した状態で十分に展開させて開口部を開放することが可能である。
【0013】
請求項5の発明は、請求項1から請求項4の何れか1項に記載の車両用フードエアバッグ装置において、前記連結部材は、前記フードインナパネル側に固定され該フードインナパネルと前記フードアウタパネルとを連結して補強するリインフォースメントに対して配設されていることを特徴としている。
【0014】
請求項5に記載の車両用フードエアバッグ装置では、連結部材が、フードインナパネル側に固定され該フードインナパネルとフードアウタパネルとを連結して補強するリインフォースメントに対して配設されているので、エアバッグ袋体の膨張力によりドアが展開する際に、ヒンジをより安定的に係止することができ、これによってドアをより安定的に展開させることが可能である。
【0015】
請求項6の発明は、請求項1から請求項5の何れか1項に記載の車両用フードエアバッグ装置において、前記ヒンジは、前記連結部材に連結される先端部において補強されていることを特徴としている。
【0016】
請求項6に記載の車両用フードエアバッグ装置では、ヒンジは、連結部材に連結される先端部において補強されているので、エアバッグ袋体の膨張力によりドアが押し上げられ、ヒンジの先端部が連結部材に係止された際に該係止状態が安定しており、これによりドアをより安定的に展開させることが可能である。
【0017】
請求項7の発明は、請求項1から請求項6の何れか1項に記載の車両用フードエアバッグ装置において、前記連結部材は、前記ヒンジの車両上下方向及び車両前後方向への相対変位を所定範囲内で許容する段付きボルトであることを特徴としている。
【0018】
請求項7に記載の車両用フードエアバッグ装置では、連結部材が、ヒンジの車両上下方向及び車両前後方向への相対変位を所定範囲内で許容する段付きボルトであるので、ドアをフードインナパネルに取り付けて該ドアでフードアウタパネルの開口部を覆う際には、ヒンジが段付きボルトに対して車両前後方向や車両上下方向に適宜相対変位することができ、これにより開口部とドアとの間の寸法のばらつきを吸収できる。また、エアバッグ袋体が膨張してドアが展開する際にも、ヒンジが段付きボルトに対して車両前後方向や車両上下方向に適宜相対変位することができ、これによりドアの展開を円滑化することができる。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように、本発明に係る請求項1に記載の車両用フードエアバッグ装置によれば、フードアウタパネルの開口部と該開口部に設けられるドアとの意匠性を良好に維持して車両の外観品質を向上させることができる、という優れた効果が得られる。
【0020】
請求項2に記載の車両用フードエアバッグ装置によれば、通常使用時に開口部とドアとの意匠性を良好に維持できると共に、エアバッグ袋体の膨張時には該エアバッグ袋体をフード外へ膨張展開させることができる、という優れた効果が得られる。
【0021】
請求項3に記載の車両用フードエアバッグ装置によれば、ヒンジの存在がクリップの離脱の妨げになることを抑制でき、ドアをより安定的に展開させることができる、という優れた効果が得られる。
【0022】
請求項4に記載の車両用フードエアバッグ装置によれば、エアバッグ袋体の膨張時に、ドアをヒンジにより支持した状態で十分に展開させて開口部を開放することができる、という優れた効果が得られる。
【0023】
請求項5に記載の車両用フードエアバッグ装置によれば、連結部材をフードインナパネル側に固定されたリインフォースメントに対して配設することで、ドアをより安定的に展開させることができる、という優れた効果が得られる。
【0024】
請求項6に記載の車両用フードエアバッグ装置によれば、連結部材に連結されるヒンジの先端部を補強することで、ドアをより安定的に展開させることができる、という優れた効果が得られる。
【0025】
請求項7に記載の車両用フードエアバッグ装置によれば、開口部とドアとの間の寸法のばらつきを吸収できると共に、ドアの展開を円滑化することができる、という優れた効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。図1において、本実施の形態に係る車両用フードエアバッグ装置10は、車両における例えばフロント側のフード12に設けられており、エアバッグ袋体16と、ドア18と、ヒンジ21とを有している。
【0027】
エアバッグ袋体16は、フード12におけるフードアウタパネル22とフードインナパネル24との間に配設され、インフレータ26からのガスの供給を受けてフードアウタパネル22の開口部22Aを通じてフード12外へ膨張展開するように構成されている。また、エアバッグ袋体16は、インフレータ26と共にモジュールケース28内に収納されており、これによりエアバッグモジュール14が構成されている。
【0028】
モジュールケース28は、フードアウタパネル22の開口部22Aに対応して開口すると共に、車幅方向に長尺に形成された箱状部材であり、具体的には、車両前側の壁部材30と、車両後側の壁部材32と、底部部材34とを例えば溶接することで箱形状に形成されている。底部部材34には、壁部材30より車両前方及び壁部材32より後方に夫々延長されたフランジ部34Fが設けられている。即ちエアバッグモジュール14は、モジュールケース28のフランジ部34Fの部分において、ボルト36及びナット38を用いてフードインナパネル24に取り付けられ、リインフォースメント40と共締めされている。
【0029】
リインフォースメント40は、例えば断面逆ハット形に形成され、フードアウタパネル22とフードインナパネル24との間に車幅方向に延設されている。またリインフォースメント40は、フードインナパネル24に対して直接的に結合されており、例えばマスチック42を介してフードアウタパネル22を支持するように構成されている。
【0030】
インフレータ26は、モジュールケース28内に収納され、図示しない衝突体が車両の前部に衝突した際に、エアバッグ袋体16に対して膨張用のガスを供給するためのガス供給源であって、例えば、取付けブラケット44を用いることでモジュールケース28の車両前側の壁部材30寄りの底部部材34に固定されている。
【0031】
ドア18は、通常使用時にフードアウタパネル22の開口部22Aを覆うように設けられ、エアバッグ袋体16の膨張時に該エアバッグ袋体16の膨張力により展開して開口部22Aを開放する蓋体であって、例えばアルミニウム板を成形したドアフレーム46の上から、合成樹脂製のカバー48を固着して構成され、図3に示されるように、フードアウタパネル22の開口部22Aの周縁22Bに、弾性変形することでフードアウタパネルから離脱可能な複数個のクリップ62により係止され、開口部22Aを覆う位置に保持されている。カバー48と周縁22Bとの間にはシール部材50が配設されている。クリップ62は、例えばドアフレーム46に固着されており、エアバッグ袋体16の膨張力がドア18に作用した際に弾性変形して、周縁22Bから離脱するようになっている。
【0032】
図1において、ヒンジ21は、フードインナパネル24に対して所定範囲内で相対変位可能となるように、該フードインナパネル24側の連結部材の一例たる段付きボルト52に連結され、ドア18の展開時に該ドア18を支持する部材であって、ドア18におけるドアフレーム46の後端側に、例えば該ドア18の長さ方向に沿って複数箇所設けられている。図2(A)に示されるように、ヒンジ21のうち、段付きボルト52に連結される先端部21Bは、補強部材58により補強され、かつ先端部21B及び補強部材58には、段付きボルト52のスパン52Aが隙間をもって挿通される貫通穴60が形成されている。
【0033】
図1に示されるように、段付きボルト52は、リインフォースメント40に固着された取付けブラケット54に、ナット56を用いて締結されており、図2(A)に示されるように、ヒンジ21の車両上下方向及び車両前後方向への相対変位、即ち矢印U方向及び矢印D方向、並びに矢印F及び矢印R方向への相対変位を、所定範囲内で許容するスパン52Aを有している。
【0034】
ヒンジ21の先端部21Bに設けられた貫通穴60の形状は、少なくともヒンジ21の車両上下方向の相対変位を許容するように、例えば矢印U方向及び矢印D方向に長い長穴として形成されている。この貫通穴60の長さを大きく設定すると、先端部21Bとスパン52Aとの間の隙間が大きくなり、段付きボルト52におけるヒンジ21の車両上下方向の相対変位可能範囲を拡大させることができる。従って、貫通穴60の形状設定により、段付きボルト52におけるヒンジ21の車両上下方向の相対変位可能範囲内において、クリップ62をフードアウタパネル22から離脱させることも可能である。なお、貫通穴60の形状は、これに限られるものではなく、例えば車幅方向の相対変位を許容するように、貫通穴60の車幅方向径をより大きく設定してもよい。
【0035】
また、図1に示されるように、ヒンジ21は、例えばドア18のドアフレーム46の後端側に一体的に設けられ、ドア18の展開に伴って塑性変形し易いように該ドア18のドアフレーム46より低剛性に構成され、かつ余長部として構成された変形ストローク確保用の変形可能部21Aを有している。変形可能部21Aは、ヒンジ21の低剛性部分を折曲げて余長部としたものであり、ドア18の展開に伴って伸長するようになっている。なお、変形可能部21Aの折曲げ形状や余長量は、図示のものに限られない。
【0036】
(作用)
本実施形態は、上記のように構成されており、以下その作用について説明する。まず、通常使用時について説明すると、図1,図2(A)において、車両用フードエアバッグ装置10では、ドア18の展開を支持するヒンジ21がフードインナパネル24側の段付きボルト52にフローティング状態で連結され、フードインナパネル24に対して所定範囲内、即ちスパン52Aと貫通穴60との間の隙間の範囲内、及びスパン52Aの長さの範囲内で相対変位可能となっているので、ドア18をフードインナパネル24に取り付けて該ドア18でフードアウタパネル22の開口部22Aを覆う際に、該開口部22Aとドア18との間の寸法のばらつきを、ヒンジ21が段付きボルト52に対して、矢印F方向及び矢印R方向、並びに矢印U方向に及び矢印D方向に相対変位することで吸収することができる。
【0037】
ドア18は、エアバッグ袋体16やインフレータ26等を有するエアバッグモジュール14とはサブアッセンブリされないので、該サブアッセンブリ時の寸法ばらつきについては考慮する必要がない。このため、フードアウタパネル22の開口部22Aと該開口部22Aに設けられるドア18との意匠性を良好に維持して車両の外観品質を向上させることが可能である。また、ドア18をエアバッグモジュール14と分離しているので、エアバッグモジュール14にドア18が組み付けられている場合と比較して、上下振動によるドア18の車両上下方向の動き量を少なくできるので、該上下振動対策としてのフローティング量を抑制することが可能である。
【0038】
また、図3に示されるように、車両用フードエアバッグ装置10では、ドア18が複数個のクリップ62によりフードアウタパネル22の開口部22Aを覆う位置に保持され、該クリップ62は、自身が弾性変形することでフードアウタパネル22から離脱可能に構成されているので、通常使用時には開口部22Aはドア18により安定的に覆われた状態となっている。このため、通常使用時に開口部22Aとドアとの意匠性を良好に維持できる。
【0039】
次に、衝突体が車両の前部に衝突した場合の作用について説明すると、図1において、車両用フードエアバッグ装置10では、衝突体の衝突によりインフレータ26が作動して、該インフレータ26から多量のガスがモジュールケース28内に折り畳み収納されているエアバッグ袋体16へ供給される。これによりエアバッグ袋体16が膨張し始めると、その膨張力によりドア18が開き、該エアバッグ袋体16がフード12の外へ膨張展開し、該エアバッグ袋体16に衝突体が当たることで、その衝撃が吸収される。
【0040】
具体的には、図4に示されるように、エアバッグ袋体16の膨張時にその膨張力がドア18に作用し、該ドア18がエアバッグ袋体16の膨張力により押し上げられると、クリップ62が弾性変形してフードアウタパネル22から離脱し、ドア18が展開可能となる。このとき、図2(B)に示されるように、ヒンジ21は、貫通穴60の下端が段付きボルト52に至るまで、該段付きボルト52に対して矢印U方向に相対変位することができ、貫通穴60の下端が段付きボルト52に至ったところで先端部21Bが該段付きボルト52に係止される。ヒンジ21の先端部21Bは、補強部材58により補強されており、また段付きボルト52は、リインフォースメント40に対して配設されているので、段付きボルト52における先端部21Bの係止状態が安定している。
【0041】
ヒンジ21の相対変位可能範囲の設定によっては、該相対変位可能範囲内においてクリップ62がフードアウタパネル22から離脱することができるので、ヒンジ21の存在がクリップ62の離脱の妨げになることを抑制でき、クリップ62をフードアウタパネル22から円滑に離脱させることができる(図5)。
【0042】
また、図5に示されるように、エアバッグ袋体16の膨張力によりドア18が押し上げられた際には、該ドア18よりも低剛性に構成されたヒンジ21が塑性変形することで該ドア18の展開が安定的に支持される。更に、余長部として構成された変形ストローク確保用の変形可能部21Aがドア18の展開に伴って伸長することで、例えばドア18が押し上げられて、すべてのクリップ62がフードアウタパネル22から離脱した後に、該ドア18がヒンジ21を中心としてフードアウタパネル22上へ反転するようにでき、安定したクリップ62の離脱を行うことで、ドア18を円滑に展開させることが可能である(展開状態については図示せず)。ドア18が展開することで、開口部22Aが開放され、該開口部22Aを通じてエアバッグ袋体16がフード12外へ膨張展開することが可能となる。
【0043】
なお、上記実施形態では、連結部材の一例として段付きボルト52を挙げたが、これに限られるものではなく、ヒンジ21をフローティング状態で連結できるものであれば、どのようなものを用いてもよい。また、ドアフレーム46の上からカバー48を固着することでドア18を構成するものとしたが、これに限られるものではなく、例えばカバー48を用いずに、ドアフレーム46自体がフードアウタパネル22の開口部22Aを覆うようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】通常使用時における車両用フードエアバッグ装置を、車幅方向におけるヒンジの位置で断面して示す断面図である。
【図2】(A)段付きボルトに連結されたヒンジの先端部を示す拡大断面図である。(B)段付きボルトにおいてヒンジが矢印U方向に相対変位した状態を示す拡大斜視図である。
【図3】通常使用時における車両用フードエアバッグ装置を、車幅方向におけるクリップの位置で断面して示す断面図である。
【図4】車両用フードエアバッグ装置において、クリップがフードアウタパネルから離脱した状態を示す断面図である。
【図5】車両用フードエアバッグ装置において、クリップがフードアウタパネルから離脱し、ヒンジが段付きボルトに対して相対変位し、かつヒンジの変形可能部が伸長している状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0045】
10 車両用フードエアバッグ装置
12 フード
16 エアバッグ袋体
18 ドア
21 ヒンジ
21A 変形可能部
21B 先端部
22 フードアウタパネル
22A 開口部
24 フードインナパネル
26 インフレータ
40 リインフォースメント
52 段付きボルト(連結部材)
54 取付けブラケット(連結部材)
62 クリップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フードにおけるフードアウタパネルとフードインナパネルとの間に配設され、インフレータからのガスの供給を受けて前記フードアウタパネルの開口部を通じて前記フード外へ膨張展開するエアバッグ袋体と、
通常使用時に前記開口部を覆うように設けられ、前記エアバッグ袋体の膨張時に前記エアバッグ袋体の膨張力により展開して前記開口部を開放するドアと、
前記フードインナパネルに対して所定範囲内で相対変位可能となるように該フードインナパネル側の連結部材に連結され、前記ドアの展開時に該ドアを支持するヒンジと、
を有することを特徴とする車両用フードエアバッグ装置。
【請求項2】
前記ドアは、弾性変形することで前記フードアウタパネルから離脱可能な複数個のクリップにより前記開口部を覆う位置に保持されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用フードエアバッグ装置。
【請求項3】
前記連結部材における前記ヒンジの相対変位可能範囲は、該相対変位可能範囲において前記クリップが前記フードアウタパネルから離脱可能となるように設定されていることを特徴とする請求項2に記載の車両用フードエアバッグ装置。
【請求項4】
前記ヒンジは、前記ドアの展開に伴って塑性変形し易いように該ドアより低剛性に構成され、かつ余長部として構成された変形ストローク確保用の変形可能部を有することを特徴とする請求項1から請求項3の何れか1項に記載の車両用フードエアバッグ装置。
【請求項5】
前記連結部材は、前記フードインナパネル側に固定され該フードインナパネルと前記フードアウタパネルとを連結して補強するリインフォースメントに対して配設されていることを特徴とする請求項1から請求項4の何れか1項に記載の車両用フードエアバッグ装置。
【請求項6】
前記ヒンジは、前記連結部材に連結される先端部において補強されていることを特徴とする請求項1から請求項5の何れか1項に記載の車両用フードエアバッグ装置。
【請求項7】
前記連結部材は、前記ヒンジの車両上下方向及び車両前後方向への相対変位を所定範囲内で許容する段付きボルトであることを特徴とする請求項1から請求項6の何れか1項に記載の車両用フードエアバッグ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−196794(P2007−196794A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−16506(P2006−16506)
【出願日】平成18年1月25日(2006.1.25)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(306009581)タカタ株式会社 (812)
【Fターム(参考)】