説明

車両用ブレーキ装置および車両用ブレーキ装置の制御方法

圧力信号を提供するマスタ・ブレーキ・シリンダと、マスタ・ブレーキ・シリンダに接続されたブレーキ媒体貯蔵容器と、マスタ・ブレーキ・シリンダにおける第1の入口およびブレーキ媒体貯蔵容器における第2の入口と結合されている第1のブレーキ回路であって、圧力信号に対応する力を第1の車輪に与えるために、第1の車輪に配置された少なくとも1つの第1の車輪ブレーキ・シリンダを設け、提供された閉鎖信号を受け取ったとき、第1の車輪ブレーキ・シリンダへの圧力信号の伝送を阻止するために、第1の入口と第1の車輪ブレーキ・シリンダとの間に配置された遮断弁を設け、ブレーキ媒体貯蔵容器から第1の車輪ブレーキ・シリンダへのブレーキ媒体の供給流れを制御するために、第2の入口と第1の車輪ブレーキ・シリンダとの間に配置された制御弁を設けた、第1のブレーキ回路と、を備えた車両用ブレーキ装置、および、その制御方法に関するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用ブレーキ装置に関するものである。さらに、本発明は、自動車用ブレーキ装置の制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド車は、回生制動用に設計されているブレーキ装置を有している。回生制動においては、ハイブリッド車の電動機、一般に駆動電動機は、発電機として運転される。回生制動において得られた電気エネルギーは、中間蓄積されたのちに、車両の加速のために使用されることが好ましい。このようにして、走行の間における頻繁な制動において通常車が有する動力損失が低減される。これは、通常車に比較して、ハイブリッド車のエネルギー消費および有害物質エミッションを低減させる。
【0003】
回生制動が車両の制動距離にできるだけ影響を与えないように、特定の状況においては車両のブレーキ装置が適合されなければならない。例えば、電気エネルギー蓄積装置が充満している場合、全てのブレーキ・トルクを通常のブレーキを介して、特に少なくとも1つの摩擦ブレーキを介して提供すべきであり、その理由は、このような状況においては、回生ブレーキは、たいていの場合、車輪にブレーキ・トルクを与えないからである。
【0004】
さらに、電動機の発電機としての運転は、一般に、車両の所定最小速度を前提とする。したがって、回生ブレーキ装置は、しばしば、前方走行車両が停止するまでの間、車両の車輪にブレーキ・トルクを与えることができない。そのために、車両を停止するとき、通常のブレーキ装置が、低速範囲内において、効かなくなった回生ブレーキのブレーキ作用をより高いブレーキ・トルクにより補償しなければならない。
【0005】
他方で、たいていの場合、高い回生度を達成するために、車輪にできるだけ少ない油圧ブレーキ力を与えることが望ましい。例えば、ブレーキ作用を再び回生ブレーキの方向にシフトさせるために、切換過程により、しばしば、切り離された発電機が回生ブレーキとして投入される。ここで、全ブレーキ・トルクが常に確保されるべき場合、通常の摩擦ブレーキの割合はそれに対応して低減されなければならない。
【0006】
希望の全ブレーキ・トルクを確保するために、回生ブレーキの実際ブレーキ・トルクに通常の摩擦ブレーキのブレーキ・トルクが適合される過程は、しばしば共用過程と呼ばれる。回生ブレーキを備えた多くの車両においては、この共用は、ドライバによるブレーキ入力要素の操作を介して行われる。このとき、ドライバは、減速制御装置の役目をする。回生ブレーキ・トルクが切り離されているかまたは使えないとき、この場合、ドライバは、ドライバにより希望された全減速が確保されるように、ペダルを介して通常のブレーキ・トルクを適合させる。しかしながら、この過程は、ドライバの側におけるより高い作業労力を必要とする。
【0007】
作業労力の少ない、車両の全減速の制御の可能性は、例えばEHB装置のようなブレーキ・バイ・ワイヤ(Brake-by-Wire)ブレーキ装置が提供する。ブレーキ・バイ・ワイヤ・ブレーキ装置においては、ペダルを切り離すことにより、ドライバがこのためにペダルまたは他のブレーキ入力要素の追加操作を実行する必要なく、ブレーキ・トルクの共用が実行可能である。したがって、ブレーキ・バイ・ワイヤ・ブレーキ装置においては、ドライバは共用過程を全く気づかない。しかしながら、ブレーキ・バイ・ワイヤ・ブレーキ装置の費用のかかる電子装置および機械装置/油圧装置に基づき、通常のブレーキ・バイ・ワイヤ・ブレーキ装置は高価である。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、請求項1の特徴を有する車両用ブレーキ装置および請求項10の特徴を有する車両用ブレーキ装置の制御方法を提供する。
この場合、制御信号とは、例えば、マスタ・ブレーキ・シリンダから少なくとも1つの第1の車輪ブレーキ・シリンダに伝送される出力または伝送される圧力と理解される。伝送されたこの出力により、第1の車輪ブレーキ・シリンダは、それに付属の第1の車輪にブレーキ・トルクを与えるように作動される。ここで、第1のブレーキ回路は少なくとも1つの第1の車輪ブレーキ・シリンダを含む。第1のブレーキ回路は、さらに、少なくとも1つの他の車輪に付属されている少なくとも1つの他の車輪ブレーキ・シリンダを有していてもよいことは明らかである。
【0009】
本発明は、ブレーキ装置の第1のブレーキ回路がマスタ・ブレーキ・シリンダから切離し可能であるとき、回生ブレーキと通常の摩擦ブレーキとの共用のために有利であるという知見に基づいている。この場合、ドライバは、第1のブレーキ回路を、もはやブレーキ・ペダルおよびマスタ・ブレーキ・シリンダを介して直接制御しない。第1のブレーキ回路をマスタ・ブレーキ・シリンダから切り離したのち、さらに、第1のブレーキ回路の少なくとも1つの第1の車輪ブレーキ・シリンダを、共用が考慮される第2の方法で操作する可能性を有していることは有利である。
【0010】
本発明は、さらに、上記の可能性がコスト的に有利にいかに実行可能であるかの知見に基づいている。このために、マスタ・ブレーキ・シリンダと第1の車輪ブレーキ・シリンダとの間に遮断弁が配置され、遮断弁は、閉鎖により、第1の車輪ブレーキ・シリンダへの圧力信号の伝送を阻止するので、第1の車輪ブレーキ・シリンダをマスタ・ブレーキ・シリンダから切り離す。さらに、第1のブレーキ回路はブレーキ媒体貯蔵容器に直接接続され且つ第1のブレーキ回路のブレーキ媒体貯蔵容器との接続点の近くに制御弁が配置されるので、ブレーキ媒体貯蔵容器から第1の車輪ブレーキ・シリンダへのブレーキ媒体の供給流れが制御弁により制御可能である。このようにして、第1の車輪ブレーキ・シリンダにおけるブレーキ圧力は、制御弁により制御可能である。この場合、制御弁は、第1の車輪ブレーキ・シリンダが第1の車輪に与える力もまた制御する。これにより、第1の車輪に与えられるブレーキ・トルクは制御弁により制御可能である。
【0011】
したがって、いかなる全ブレーキ・トルクがドライバにより希望されたか、いかなる実際の回生ブレーキ・トルクが回生ブレーキにより与えられたか、通常のブレーキ装置によりいかなる油圧ブレーキ・トルクが存在するか、および希望の全ブレーキ・トルクと実際の回生ブレーキ・トルクとの間にいかなる差がなお存在するかを、センサによりまたは評価により決定する可能性が存在する。それに続いて、決定された差に対応するブレーキ・トルクを、制御弁により、第1の車輪に与えることが可能である。これは、ドライバがさらに追加の作業労力を費やす必要なく、共用を可能にする。これにより、十分な回生差が適切なコストで保証されている。
【0012】
しかしながら、本発明は、ハイブリッド車における使用に限定されていない。例えば、横方向加速度の関数としてのブレーキ力分配もまた本発明により実行可能である。横方向加速度の関数としてのブレーキ力分配においては、カーブ走行において発生する起立力に対応して、ブレーキ力が車両の幾つかの車輪に、好ましくは後車軸の両方の車輪に分配される。このようにして、車輪の摩擦係数、特に後車輪の摩擦係数が横方向加速度に適応されてもよい。これにより、車両はカーブにおいてより安定して制動される。車両の車輪に与えられるべきブレーキ・トルクを決定するために、センサ装置により決定された横方向加速度が使用されることが好ましい。
【0013】
さらに、動的カーブ制動に対する本発明の使用が提供される。動的カーブ制動においては、カーブ内側車輪におけるブレーキ力がカーブ外側車輪におけるブレーキ力よりも上昇される。これは動的走行特性を達成する。
【0014】
さらに、本発明は、後退の間における有利な制動に対しても使用可能である。特に、この場合、後車軸におけるブレーキ力の上昇により、後退走行に対してより良好なブレーキ力分配が設定される。これは後退ブレーキ力分配とも呼ばれる。特に、緩速の下り後退走行においては、これはきわめて安定なブレーキ特性を可能にする。
【0015】
したがって、上記の説明から明らかなように、本発明の適用はハイブリッド車に限定されていない。その代わりに、他の車両タイプのブレーキ特性が同様に本発明により改善可能である。上で説明された可能性を実行するために、第1のブレーキ回路がマスタ・ブレーキ・シリンダから切り離される。第1のブレーキ回路の少なくとも1つの第1の車輪ブレーキ・シリンダは、このとき、実際走行状況に適合されたブレーキ・トルクが少なくとも1つの第1の車輪に与えられるように、制御弁により制御される。
【0016】
さらに、本発明は、第1のブレーキ回路を切り離すことにより、ドライバが、第1のブレーキ回路を、もはや直接ブレーキ・ペダルに与えられる力を介して制御する必要がないように、ペダル感覚を改善する可能性を保証する。このようにして、ペダル・ストロークもまた短縮可能である。本発明は、後輪駆動車両または全輪駆動車両に対してきわめて有利な通常のブレーキ・バイ・ワイヤ・ブレーキ装置に対する、簡単に操作可能で且つコスト的に有利な代替態様を提供する。しかしながら、本発明は、バイ・ワイヤ前輪車軸を有する前輪駆動に対しても使用可能である。
【0017】
例えば、制御弁は、閉鎖状態、開放状態、および閉鎖状態と開放状態との間の少なくとも1つの中間状態に調節可能である。特に、制御弁は常時調節可能な弁であってもよい。したがって、比較的コスト的に有利なこの制御弁の実施形態は、回生ブレーキ・トルクの共用、横方向加速度の関数としてのブレーキ力分配、動的カーブ制動および後車軸におけるブレーキ力の上昇の少なくともいずれかのための第1の車輪ブレーキ・シリンダの操作を保証する。
【0018】
好ましい一実施形態において、第1のブレーキ回路の第2の入口と制御弁との間に第1の分岐点が配置され、この場合、第1の車輪ブレーキ・シリンダは、制御弁をバイパスして、第1の車輪ブレーキ・シリンダからブレーキ媒体貯蔵容器へのブレーキ媒体の排出流れが導かれるように、第1の分岐点に結合されている。ブレーキ媒体貯蔵容器内には一般に比較的低い内圧が作用しているにすぎないので、流入するブレーキ媒体に対して反力が作用することはほとんどない。したがって、上記の実施形態は、第1の車輪ブレーキ・シリンダにおけるブレーキ力の急速な低下を可能にする。ここで、第1の分岐点と第1の車輪ブレーキ・シリンダとの間に車輪出口弁が配置され、車輪出口弁は、制御弁をバイパスして、第1の車輪ブレーキ・シリンダからブレーキ媒体貯蔵容器へのブレーキ媒体の排出流れを制御するように設計されていることが好ましい。
【0019】
他の好ましい一実施形態において、制御弁の出口および遮断弁の出口が第2の分岐点に結合され、この場合、第2の分岐点と第1の車輪ブレーキ・シリンダとの間に第1の車輪入口弁が配置され、第1の車輪入口弁は、第2の分岐点から第1の車輪ブレーキ・シリンダへのブレーキ媒体の供給流れを制御するように設計されている。このようにして、第1の車輪ブレーキ・シリンダにおけるブレーキ圧力の上昇が確実に制御可能である。
【0020】
有利な一変更態様において、第1のブレーキ回路の第2の入口と制御弁との間に第3の分岐点が配置され、第3の分岐点に第1のポンプの吸込側が結合され、この場合、第1のポンプの吐出側が第1の車輪入口弁に結合されている。ポンプはブレーキ・バイ・ワイヤによる圧力上昇のために使用される。
【0021】
さらに、ブレーキ装置が、マスタ・ブレーキ・シリンダにおける第3の入口と結合されている、第2の車輪に配置された第2の車輪ブレーキ・シリンダを備えた第2のブレーキ回路を含んでいてもよく、第2の車輪ブレーキ・シリンダは、マスタ・ブレーキ・シリンダから第2の車輪ブレーキ・シリンダに圧力信号を伝送可能なように第3の入口と結合され、且つ圧力信号に対応する力を第2の車輪に与えるように設計され、この場合、第2のブレーキ回路は第2のポンプを有している。ここで、第2のブレーキ回路は、第2のブレーキ回路がマスタ・ブレーキ・シリンダから切離し可能ではないように形成されていることが好ましい。したがって、ドライバは、ブレーキ入力要素の操作を介して直接第2のブレーキ回路にブレーキ動作を与えることが可能である。この場合、好ましい一実施形態において、第2のブレーキ回路に回生ブレーキが接続されている。ドライバのブレーキ希望を測定するために、ブレーキ装置に他のセンサが接続されていてもよい。
【0022】
本発明の一変更態様において、ブレーキ装置が、第1の回転方向および第2の回転方向に運転可能な1つのモータを有し、この場合、モータが第1の回転方向に運転したときには第1のポンプはモータにより運転可能であるが、第2のポンプはモータから切り離され、およびモータが第2の回転方向に運転したときには第1および第2のポンプがモータにより運転可能である。これにより、モータによる第1のポンプの運転が必要なときに、第2のポンプの自動的な同時運転が阻止可能である。
【0023】
他の好ましい一変更態様において、第2のブレーキ回路が第1の状態および第2の状態に切換可能であり、これらの状態は、第1の状態に切り換えられた第2のブレーキ回路の第2のポンプの駆動は第2の車輪ブレーキ・シリンダにおいて圧力変化を発生させ、および第2の状態に切り換えられた第2のブレーキ回路の第2のポンプの駆動は第2のブレーキ回路内においてブレーキ媒体の循環流れを発生させるように形成されている。これは、例えば、第2のブレーキ回路が、第2の切換弁と第2のポンプとの間に配置された逆止弁、および第2のポンプに並列に配置された弁を有することにより実行可能であり、この場合、第2のブレーキ回路が、弁の閉鎖により第1の状態に、および弁の開放により第2の状態に切換可能である。これは、モータによる第1のポンプの駆動において第2のポンプの希望されない同時運転を阻止するための他の可能性を保証する。
【0024】
上記の利点は、対応する方法によってもまた保証されている。
本発明の他の特徴および利点を以下に図により説明する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1は、ブレーキ装置の第1の実施形態の回路図を示す。
【図2】図2は、ブレーキ装置の第2の実施形態の回路図を示す。
【図3】図3は、ブレーキ装置の第3の実施形態の回路図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に記載のブレーキ装置はハイブリッド車においてのみ使用可能ではない。その代わりに、例えばカーブ走行および後退走行の少なくともいずれかの間における制動において車両の車輪に好ましいブレーキ力分配を保証するために、このブレーキ装置は通常車においても使用可能である。
【0027】
図1は、ブレーキ装置の第1の実施形態の回路図を示す。
図1に示されているブレーキ装置は、前車輪12aおける12bを制動するための前方ブレーキ回路10、および後車輪16aおよび16bを制動するための後方ブレーキ回路14を含む。しかしながら、図示された例は、車輪12a、12b、16aおよび16bのこの分割に限定されていない。この例は、車輪12aおよび12bが車両の後車輪であり且つ車輪16aおよび16bが車両の前車輪である実施形態にも使用可能であることは明らかである。車輪12aおよび12bおよび車輪16aおよび16bは、車両の2つの異なる側に、または車両において対角方向に配置されている車輪の2つの対であってもよい。
【0028】
ここで、図1に示されているブレーキ回路は、4つの車輪12a、12b、16aおよび16bの固定数に限定されていないことを強調しておく。その代わりに、ブレーキ装置は、より多くの数の車輪を制御するように拡張されてもよい。例えば、このとき、ブレーキ装置は、前方ブレーキ回路10に対応する少なくとも2つのブレーキ回路を有している。
【0029】
ドライバがブレーキ希望をブレーキ装置に入力するために、ブレーキ装置はブレーキ・ペダル18を含む。ブレーキ・ペダル18に、ペダル・ストローク・センサ、ブースタ膜ストローク・センサおよびロッド・ストローク・センサの少なくともいずれかが装着されていてもよい。しかしながら、ブレーキ・ペダル18の代わりに、またはブレーキ・ペダル18に追加して、ブレーキ希望を測定するためにブレーキ装置は他のブレーキ入力要素を含んでいてもよい。
【0030】
ブレーキ・ペダル18は、ブレーキ力増幅装置20を介してマスタ・ブレーキ・シリンダ22に結合されている。マスタ・ブレーキ・シリンダ22に、ブレーキ媒体貯蔵容器24、例えば油圧液貯蔵容器が装着されている。ブレーキ媒体貯蔵容器24は充填ノズル26を介してブレーキ液を充填可能である。
【0031】
ブレーキ媒体貯蔵容器24は、ブレーキ液がマスタ・ブレーキ・シリンダ22からブレーキ媒体貯蔵容器24内に流入可能なように、マスタ・ブレーキ・シリンダ22に接続されている。同様に、ブレーキ液は、対応する圧力比においてブレーキ媒体貯蔵容器24からマスタ・ブレーキ・シリンダ22内に流入可能である。
【0032】
マスタ・ブレーキ・シリンダ22に、前方ブレーキ回路10に対する第1の供給配管28および後方ブレーキ回路14に対する第2の供給配管30が装着されている。第1の供給配管28は、マスタ・ブレーキ・シリンダ22と前方ブレーキ回路10の高圧切換弁32との間を連絡している。分岐点33を介して、さらに、供給配管28に切換弁34が接続されている。これにより、マスタ・ブレーキ・シリンダ22から流出するブレーキ液流れは、供給配管28を介して、さらに高圧切換弁32を介してまたは切換弁34を介して選択的に、車輪12aおよび12bのブレーキ・キャリパ36aおよび36bの車輪ブレーキ・シリンダの方向に流れる。
【0033】
切換弁34に並列に、逆止弁38を含むバイパス配管が配置されている。切換弁34の誤作動において、もし逆止弁38を含むバイパス配管がなければマスタ・ブレーキ・シリンダ22とブレーキ・キャリパ36aおよび36bの車輪ブレーキ・シリンダとの間の油圧結合を切換弁34により遮断することになるが、切換弁34のこの誤作動においても、逆止弁38が、マスタ・ブレーキ・シリンダ22とブレーキ・キャリパ36aおよび36bの車輪ブレーキ・シリンダとの間の油圧結合を保証する。したがって、ブレーキ・キャリパ36aおよび36bは、切換弁34の故障の間においても、ブレーキ・ペダル18により操作可能である。
【0034】
分岐点39を介して、供給配管28に圧力センサ40もまた接続されている。圧力センサ40は、前方ブレーキ回路10内のブレーキ液の圧力を決定するように設計されている。
【0035】
切換弁34の供給配管28とは反対側から配管42が車輪入口弁44aに連絡し、車輪入口弁44aはブレーキ・キャリパ36aの車輪ブレーキ・シリンダに付属されている。分岐点43を介して、ブレーキ・キャリパ36bの車輪ブレーキ・シリンダに付属された車輪入口弁44bが、同様に配管42に接続されている。車輪入口弁44aおよび44bに並列に、逆止弁46aまたは46bを含むバイパス配管が配置されている。
【0036】
さらに、ポンプ48の吐出側は分岐点47を介して配管42に接続されている。好ましい一実施形態において、ポンプ48はシングル・ピストン・ポンプである。しかしながら、ポンプ48に対して、複数のピストンを備えたポンプ、非対称ポンプまたは歯車ポンプが使用されてもよい。
【0037】
ポンプ48の吸込側から配管50が逆止弁52を介して分岐点53に連絡し、分岐点53に車輪出口弁54aおよび54bが結合されている。分岐点55を介して、高圧切換弁32に連絡する配管56が配管50に接続されている。さらに、貯蔵室58が、逆止弁52と分岐点53との間の分岐点57を介して配管50と結合されている。
【0038】
車輪出口弁54aおよび54bはそれぞれ、ブレーキ・キャリパ36aまたは36bの車輪ブレーキ・シリンダに付属されている。このために、車輪出口弁54aおよび54bは配管59aまたは59bを介してブレーキ・キャリパ36aまたは36bの車輪ブレーキ・シリンダと結合されている。それぞれ1つの分岐点を介して、それぞれの車輪ブレーキ・キャリパ36aまたは36bに付属された車輪入口弁44aまたは44bが対応する配管59aまたは59bに結合されている。
【0039】
前方ブレーキ回路10の弁32、34、44a、44b、54aおよび54bは油圧弁として形成されていてもよい。切換弁34および車輪入口弁44aおよび44bは無通電において開放された弁として形成され、高圧切換弁32および車輪出口弁54aおよび54bは無通電において閉鎖された弁として形成されていることが好ましい。したがって、ドライバ側から要求された、ブレーキ・キャリパ36aおよび36bの車輪ブレーキ・シリンダ内の圧力上昇は、ブレーキ装置の正常なブレーキ作動において確実に保証されている。それに対応して、ブレーキ・キャリパ36aおよび36bの車輪ブレーキ・シリンダ内に形成された圧力は、再び急速に低下可能である。したがって、前方ブレーキ回路10は標準のESP油圧装置に対応する。
【0040】
供給配管30はマスタ・ブレーキ・シリンダ22を後方ブレーキ回路14の遮断弁60と結合している。前方ブレーキ回路10の切換弁34とは異なり、後方ブレーキ回路14の遮断弁60に並列に逆止弁を含むバイパス配管が配置されていない。供給配管30は、さらに、後方ブレーキ回路14の他の構成要素を供給配管30に結合するいかなる分岐点も有していない。したがって、後方ブレーキ回路14は、遮断弁60が閉鎖したとき、後方ブレーキ回路14はマスタ・ブレーキ・シリンダ22から切り離されるように形成されている。遮断弁60が閉鎖されたときマスタ・ブレーキ・シリンダ22からブレーキ・キャリパ62aおよび62bへの作用はもはや可能ではない。したがって、車輪16aおよび16bのブレーキ・キャリパ62aおよび62bを備えた後方ブレーキ回路14をマスタ・ブレーキ・シリンダ22(およびブレーキ・ペダル18)から切り離すことが希望された状況においては、遮断弁60を介してこれが可能である。
【0041】
後方ブレーキ回路14は圧力調節弁64を含み、圧力調節弁64は、その閉鎖状態およびその開放状態に調節可能であるほかに、閉鎖状態と開放状態との間に存在する少なくとも1つの中間状態にも調節可能である。圧力調節弁64はこの中間状態においては一部開放されているにすぎない。圧力調節弁64は、常時調節可能な、無通電において閉鎖された弁であることが好ましい。このような弁はPCV弁(圧力調節弁)とも呼ばれる。それとは異なり、前方ブレーキ回路10に対して、開放状態または閉鎖状態のみに切換可能なコスト的に有利な高圧切換弁32が使用されてもよい。
【0042】
さらに、圧力調節弁64は分岐点65を介して配管66に接続され、配管66はブレーキ媒体貯蔵容器24に連絡している。圧力調節弁64がブレーキ媒体貯蔵容器24に直接結合されていることにより、後方ブレーキ回路14内に形成されたブレーキ圧力は急速に低下可能である。
【0043】
前方ブレーキ回路10においては、形成されたブレーキ圧力の低下は貯蔵室58内へのブレーキ液の充填により行うことが可能である。この場合、貯蔵室58内に作用している圧力に抗してブレーキ液を貯蔵室58内に圧入するのに十分大きな最小の力が形成されなければならない。これは前方ブレーキ回路10内のブレーキ圧力の低下を緩やかに行わせる。「通常の」制動においては、圧力低下は弁44a/46aないしは44b/46bを介して行われる。制御の場合のみ、例えばABSにおいてのみ、この低下は車輪出口弁54aおよび54bを介して貯蔵室58内に行われる。
【0044】
ブレーキ媒体貯蔵容器24内へのブレーキ液の流入に抵抗する圧力は、貯蔵室58内に作用している圧力を下回っている。この理由から、ブレーキ液の一部は、比較的急速に、後方ブレーキ回路14からブレーキ媒体貯蔵容器24内に搬送可能である。
【0045】
配管66はブレーキ媒体貯蔵容器24を分岐点67とも結合し、分岐点67に2つの車輪出口弁68aおよび68bが結合されている。車輪出口弁68aおよび68bはそれぞれブレーキ・キャリパ62aまたは62bの車輪ブレーキ・シリンダに付属されている。
【0046】
圧力調節弁64に並列に、分岐点69を介してポンプ70が配置されている。ポンプ70は、シングル・ピストン・ポンプ、複数のピストンを有するポンプ、非対称ポンプまたは歯車ポンプであってもよい。分岐点71aを介して配管72がポンプ70の吐出側に接続され、ポンプ70は分岐点71bにおいて配管74に合流し、配管74は遮断弁60から車輪入口弁76bに連絡している。
【0047】
分岐点75を介して後方ブレーキ回路14の第2の車輪入口弁76aが配管74と結合されている。車輪入口弁76aおよび76bに並列に逆止弁78aおよび78bを含むバイパス配管が配置されている。車輪入口弁76aおよび76bはそれぞれ、配管80aまたは80bを介してブレーキ・キャリパ62aまたは62bの車輪ブレーキ・シリンダに接続されている。車輪出口弁68aおよび68bはそれぞれ、分岐点82aまたは82bを介して付属の配管80aまたは80bと結合されている。
【0048】
両方のポンプ48および70は共通の軸上に装着され、軸はモータ84により駆動される。コスト的に有利な一実施形態において、モータ84は、1つの回転方向にのみ回転するように形成されていてもよい。
【0049】
要するに、圧力調節弁64は、ポンプ70の吸込側(入口側)および出口弁68aおよび68bの吐出側(二次側)と共に直接ブレーキ媒体貯蔵容器24に接続されていることが保証されている。したがって、車輪16aおよび16bのブレーキ・キャリパ62aおよび62bの車輪ブレーキ・シリンダにおける希望されたブレーキ圧力の設定は圧力調節弁64により可能である。
【0050】
弁60、64、68a、68b、76aおよび76bは油圧弁である。好ましい一実施形態において、遮断弁60および車輪入口弁76aおよび76bは無通電において開放された弁である。この場合、圧力調節弁64および車輪出口弁68aおよび68bは無通電において閉鎖された弁として形成されていることが有利である。
【0051】
以下に、後方ブレーキ回路14の好ましい作動方法を説明する。
制動されていない場合、後方ブレーキ回路14の弁60、64、68a、68b、76aおよび76bは無通電である。したがって、通電されていない遮断弁60は開放され、およびマスタ・ブレーキ・シリンダ22と後方ブレーキ回路14との間、ないしはマスタ・ブレーキ・シリンダ22とブレーキ・キャリパ62aおよび62bの車輪ブレーキ・シリンダとの間の油圧結合は存在している。
【0052】
一般に、ドライバがブレーキ・ペダル18または他のブレーキ操作要素を操作した状況においてのみ、ブレーキ装置の(図示されていない)制御装置から弁60、64、68a、68b、76aおよび76bに電流信号が供給される。通電された遮断弁60は供給された電流信号に基づいて閉鎖され、これにより、マスタ・ブレーキ・シリンダ22は後方ブレーキ回路14から切り離される。この状況が存在した場合、ドライバはブレーキ・ペダル18を介して、なお前方ブレーキ回路10内に直接ブレーキ制動を与えるにすぎない。
【0053】
同時に、ドライバによるブレーキ・ペダル18の操作に基づき、実際の交通状況に関して車輪12a、12b、16aおよび16bにいかなる全ブレーキ・トルクが有利であるかを、適切なセンサ装置を介して決定することが可能である。それに続いて、車輪12aおよび12bに存在する実際のブレーキ圧力が決定される。次に、評価装置を介して、希望された全ブレーキ・トルクと車輪12aおよび12bに与えられたブレーキ・トルクとの間のブレーキ・トルク差が計算可能である。計算されたブレーキ・トルク差は、次に、ドライバの希望が最適に達成されるように、ポンプ70および圧力調節弁64により車輪16aおよび16bに能動的に設定可能である。
【0054】
後方ブレーキ回路14内に形成されたブレーキ圧力が低下されるべき場合、低下するブレーキ希望に対応して圧力調節弁64が開放される。ここで、ブレーキ液の一部は後方ブレーキ回路14から圧力調節弁64を介してブレーキ媒体貯蔵容器24内に急速に逆流可能である。
【0055】
以下に、図1に示されているブレーキ装置が回生制動のためにいかに使用可能であるかを例で説明する。このために、例えば、後方ブレーキ回路14は、回生制動の間に発電機として機能する電動機に接続されている。したがって、回生制動の間においては、発電機の一定ではない既知のブレーキ・トルクが車輪16aおよび16bに作用する。
【0056】
適切なセンサ装置により、ドライバによっていかなる全ブレーキ・トルクが希望されたかが決定される。同様に、通常の摩擦ブレーキにより車輪12aおよび12bに与えられたブレーキ・トルクおよび回生ブレーキにより車輪16aおよび16bに与えられたブレーキ・トルクが決定可能である。ここで、評価装置は、ドライバにより希望された全ブレーキ・トルクと車輪12a、12b、16aおよび16bに存在するブレーキ・トルクとの間のブレーキ・トルク差を計算可能である。それに続いて、このブレーキ・トルク差が上記の方法に対応して車輪16aおよび16bに設定される。ここに記載の共用過程はドライバにより全く感知されないので、運転快適性にも影響を与えることはない。
【0057】
好ましい一実施形態において、後車軸におけるブレーキ圧力の設定が圧力調節弁64のΔp操作により行われてもよい。この代わりに、後車軸におけるブレーキ圧力の圧力制御もまた可能である。このために、車輪16aまたは16bの少なくとも1つの範囲内および後車軸回路内の少なくともいずれかに少なくとも1つの圧力センサが配置されている。
【0058】
復帰レベルにおいては全ての弁60、64、68a、68b、76aおよび76bは無通電である。両方の車輪出口弁68aおよび68b、および圧力制御弁64の少なくともいずれかに欠陥があったとき、ブレーキ液流れはブレーキ媒体貯蔵容器24内に直接流入可能である。ブレーキ・キャリパ62aおよび62bの完全な故障を阻止するために、復帰レベルの機能をモニタリングすることが可能である。この場合、例えば、車輪16aおよび16bに存在するブレーキ圧の圧力勾配のモニタリングが実行されてもよい。それに対応して後方ブレーキ回路14の気密性もまたモニタリング可能である。
【0059】
上記の説明においては、後方ブレーキ回路14に発電機が接続されているブレーキ装置による回生制動過程が記載されている。発電機が前方ブレーキ回路10に接続されているとき、同様な過程を実行することもまた可能である。
【0060】
上記の方法により、カーブ走行の間および後退走行の間の少なくともいずれかにおける制動において車両の車輪に好ましいブレーキ力分配を設定することもまた可能である。これに対する例が、上記の横方向加速度の関数としてのブレーキ力分配、動的カーブ制動および後退走行の間の制動における後車軸のブレーキ力の上昇の少なくともいずれかである。
【0061】
図2は、ブレーキ装置の第2の実施形態の回路図を示す。
図2に示されているブレーキ装置は、図1のブレーキ装置の上記の構成要素10−82を有している。しかしながら、図2のブレーキ装置は、図1のブレーキ装置とは異なり、第1の回転方向およびそれとは反対の第2の回転方向に回転可能なモータ100を有している。したがって、モータ系は、モータ100の前方回転および後方回転が可能なように設計されている。さらに、モータ100と前方ブレーキ回路10のポンプ48との間にフリーホイールが形成されている。フリーホイールは、モータ100が第1の回転方向に運転されたとき直ちに開放するように形成されている。
【0062】
車輪16aおよび16bにのみブレーキ圧力が形成されるべき状況においては、モータ100はその第1の回転方向に、好ましくは後方回転で運転される。これにより、フリーホイールは開放され且つモータ100と前方ブレーキ回路10のポンプ48との間の機械的結合は遮断される。この理由から、第1の回転方向におけるモータ100の運転においては、後方ブレーキ回路14のポンプ70のみが駆動される。
【0063】
このようにして、両方のポンプ48および70が共通の軸上に装着され且つ同じモータ100から駆動可能であるにもかかわらず、ポンプ48とポンプ70との強制的な同時運転が阻止される。これは、ポンプ48の強制的な同時運転に基づいて前方ブレーキ回路10内に不必要な容積供給が行われることを阻止する。通常、前方ブレーキ回路10内のこの不必要な容積供給は、ペダル脈動および圧力均衡過程の少なくともいずれかを発生させる。したがって、ポンプ48の強制的な同時運転を阻止することにより、運転快適性を向上可能である。
【0064】
これに対して両方のポンプ48および70の運転が希望された場合、モータ100は、その第2の回転方向に、好ましくは前方運転で運転される。したがって、モータ100がその第2の回転方向に回転したとき、両方のポンプ48および70は同じ回転速度で駆動される。これは、2つの回路による圧力上昇および例えばABS制御の少なくともいずれかを可能にする。
【0065】
図3は、ブレーキ回路の第3の実施形態の回路図を示す。このブレーキ装置は特にABS制御に対してきわめて適切である。
図3に示されているブレーキ装置は、図1のブレーキ装置の上記の構成要素10−84を有している。図1のブレーキ装置に対する補足として、図3のブレーキ装置はさらに弁110および逆止弁112を含む。
【0066】
弁110は分岐点111を介して配管114に接続され、配管114は配管42からポンプ48の出口に連絡している。さらに、弁110は、分岐点113を介して配管56に結合されている。弁110を前方ブレーキ回路10内に装着することにより、ポンプ48の吐出側(ポンプ出口側)は弁110を介してポンプ48の吸込側(ポンプ入口側)と結合されている。逆止弁112が配管114内に挿入されている。
【0067】
車輪16aおよび16bにおいてのみ圧力上昇が希望される状況においては、弁110が開放される。これにより、モータ84によりポンプ70と共に運転されるポンプ48は、循環させて吐出するにすぎず、したがって、車輪12aおよび12bにおける圧力上昇を阻止する。逆止弁112により、ドライバはポンプ脈動から切り離されている。このようにして、ポンプ48のポンプ70との強制的な同時運転にもかかわらず、ペダル脈動を最小にするかまたは阻止することが可能である。
【0068】
これに対して全ての車輪12a、12b、16aおよび16bにおいて圧力上昇が希望された場合、弁110は操作されず、したがって閉鎖されたままである。この場合、モータ84の運転は、両方のポンプ48および70の駆動の間に両方のブレーキ回路10および14内に圧力上昇を形成させる。
【符号の説明】
【0069】
10 第2のブレーキ回路、前方ブレーキ回路
12a、12b 第2の車輪、前車輪
14 第1のブレーキ回路、後方ブレーキ回路
16a、16b 第1の車輪、後車輪
18 ブレーキ入力要素、ブレーキ・ペダル
20 ブレーキ力増幅装置
22 マスタ・ブレーキ・シリンダ
24 ブレーキ媒体貯蔵容器
26 充填ノズル
28、30 供給配管
32 高圧切換弁
33、39、43、47、53、55、57、65、67、69、71a、71b、75、82a、82b、111、113 分岐点
34 切換弁
36a、36b 第2の車輪ブレーキ・シリンダ、ブレーキ・キャリパ
38、46a、46b、52、78a、78b、112 逆止弁
40 圧力センサ
42、50、56、59a、59b、66、72、74、80a、80b、114 配管
44a、44b、76a、76b 車輪入口弁
48、70 ポンプ
54a、54b、68a、68b 車輪出口弁
58 貯蔵室
60 遮断弁
62a、62b 第1の車輪ブレーキ・シリンダ、ブレーキ・キャリパ
64 制御弁、圧力調節弁
84、100 モータ
110 弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブレーキ入力要素(18)の操作を測定し且つブレーキ入力要素(18)の操作に対応する圧力信号を提供するように設計されているマスタ・ブレーキ・シリンダ(22)と、
前記マスタ・ブレーキ・シリンダ(22)に接続された、ブレーキ媒体を受け入れるためのブレーキ媒体貯蔵容器(24)と、および
マスタ・ブレーキ・シリンダ(22)における第1の入口およびブレーキ媒体貯蔵容器(24)における第2の入口と結合されている第1のブレーキ回路(14)であって、
第1の車輪(16a、16b)に配置された少なくとも1つの第1の車輪ブレーキ・シリンダ(62a、62b)が、マスタ・ブレーキ・シリンダ(22)から第1の車輪ブレーキ・シリンダ(62a、62b)に圧力信号を伝送可能なように前記第1の入口と結合され、且つ前記圧力信号に対応する力を第1の車輪(16a、16b)に与えるように設計されている、前記少なくとも1つの第1の車輪ブレーキ・シリンダ(62a、62b)を設け、
前記第1の入口と前記第1の車輪ブレーキ・シリンダ(62a、62b)との間に配置された遮断弁(60)が、提供された閉鎖信号を受け取ったとき、第1の車輪ブレーキ・シリンダ(62a、62b)への前記圧力信号の伝送を阻止するように設計されている、前記遮断弁(60)を設け、および
前記第2の入口と前記第1の車輪ブレーキ・シリンダ(62a、62b)との間に配置された制御弁(64)が、ブレーキ媒体貯蔵容器(24)から第1の車輪ブレーキ・シリンダ(62a、62b)へのブレーキ媒体の供給流れを制御するように設計されている、前記制御弁(64)を設けた、前記第1のブレーキ回路(14)と、を備えたことを特徴とする車両用ブレーキ装置。
【請求項2】
前記制御弁(64)が、閉鎖状態、開放状態、および閉鎖状態と開放状態との間の少なくとも1つの中間状態に調節可能であることを特徴とする請求項1に記載のブレーキ装置。
【請求項3】
前記制御弁(64)が常時調節可能な弁(64)であることを特徴とする請求項2に記載のブレーキ装置。
【請求項4】
前記第1のブレーキ回路(14)の第2の入口と前記制御弁(64)との間に第1の分岐点(65)が配置されていること、および
前記第1の車輪ブレーキ・シリンダ(62a、62b)が、前記制御弁(64)をバイパスして、第1の車輪ブレーキ・シリンダ(62a、62b)からブレーキ媒体貯蔵容器(24)へのブレーキ媒体の排出流れが導かれるように、前記第1の分岐点(65)に結合されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のブレーキ装置。
【請求項5】
前記第1の分岐点(65)と前記第1の車輪ブレーキ・シリンダ(62a、62b)との間に車輪出口弁(68a、68b)が配置され、前記車輪出口弁(68a、68b)は、前記制御弁(64)をバイパスして、第1の車輪ブレーキ・シリンダ(62a、62b)からブレーキ媒体貯蔵容器(24)へのブレーキ媒体の排出流れを制御するように設計されていることを特徴とする請求項4に記載のブレーキ装置。
【請求項6】
前記制御弁(64)の出口および前記遮断弁(60)の出口が第2の分岐点(71b)に結合されていること、および
前記第2の分岐点(71b)と前記第1の車輪ブレーキ・シリンダ(62a、62b)との間に第1の車輪入口弁(76a、76b)が配置され、前記第1の車輪入口弁(76a、76b)は、第2の分岐点(71b)から第1の車輪ブレーキ・シリンダ(62a、62b)へのブレーキ媒体の供給流れを制御するように設計されていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載のブレーキ装置。
【請求項7】
前記第1のブレーキ回路(14)の第2の入口と前記制御弁(64)との間に第3の分岐点(69)が配置され、前記第3の分岐点(69)に第1のポンプ(70)の吸込側が結合されていること、および
前記第1のポンプ(70)の吐出側が第1の車輪入口弁(76a、76b)に結合されていること、を特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載のブレーキ装置。
【請求項8】
ブレーキ装置が、マスタ・ブレーキ・シリンダ(22)に結合されている、第2の車輪(12a、12b)に配置された第2の車輪ブレーキ・シリンダ(36a、36b)を備えた第2のブレーキ回路(10)を含み、前記第2の車輪ブレーキ・シリンダ(36a、36b)は、マスタ・ブレーキ・シリンダ(22)から第2の車輪ブレーキ・シリンダ(36a、36b)に圧力信号を伝送可能なようにマスタ・ブレーキ・シリンダ(22)と結合され、且つ前記圧力信号に対応する力を第2の車輪(12a、12b)に与えるように設計されていること、および
前記第2のブレーキ回路(10)が第2のポンプ(48)を有すること、を特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載のブレーキ装置。
【請求項9】
ブレーキ装置が、第1の回転方向および第2の回転方向に運転可能な1つのモータ(100)を有し、この場合、前記モータ(100)が第1の回転方向に運転したときには第1のポンプ(70)はモータにより運転可能であるが、第2のポンプ(48)はモータ(100)から切り離され、およびモータ(100)が第2の回転方向に運転したときには第1および第2のポンプ(48、70)がモータ(100)により運転可能であることを特徴とする請求項8に記載のブレーキ装置。
【請求項10】
ブレーキ入力要素(18)の操作を測定し且つブレーキ入力要素(18)の操作に対応する圧力信号を提供するように設計されているマスタ・ブレーキ・シリンダ(22)と、
ブレーキ媒体を受け入れるためのブレーキ媒体貯蔵容器(24)と、および
マスタ・ブレーキ・シリンダ(22)における第1の入口およびブレーキ媒体貯蔵容器(24)における第2の入口と結合されている第1のブレーキ回路(14)であって、
第1の車輪(16a、16b)に配置された少なくとも1つの第1の車輪ブレーキ・シリンダ(62a、62b)が、マスタ・ブレーキ・シリンダ(22)から第1の車輪ブレーキ・シリンダ(62a、62b)に圧力信号を伝送可能なように前記第1の入口と結合され、且つ前記圧力信号に対応する力を第1の車輪(16a、16b)に与えるように設計されている、前記少なくとも1つの第1の車輪ブレーキ・シリンダ(62a、62b)を設け、
前記第1の入口と前記第1の車輪ブレーキ・シリンダ(62a、62b)との間に配置された遮断弁(60)を設け、および
前記第2の入口と前記第1の車輪ブレーキ・シリンダ(62a、62b)との間に配置された制御弁(64)を設けた、前記第1のブレーキ回路(14)と、を備えた車両用ブレーキ装置の制御方法において、
提供された閉鎖信号を受け取り、且つマスタ・ブレーキ・シリンダ(22)から第1の車輪ブレーキ・シリンダ(62a、62b)への前記圧力信号の伝送を阻止するために前記遮断弁(60)を閉鎖するステップと、
前記第1の車輪(16a、16b)に与えられるべきブレーキ圧力を有する、提供された制御信号を受け取るステップと、および
前記第1の車輪(16a、16b)における前記ブレーキ圧力を設定するために、前記制御弁(64)により、ブレーキ媒体貯蔵容器(24)から第1の車輪ブレーキ・シリンダ(62a、62b)へのブレーキ媒体の供給流れを制御するステップと、を有することを特徴とする車両用ブレーキ装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2011−509212(P2011−509212A)
【公表日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−541727(P2010−541727)
【出願日】平成20年11月14日(2008.11.14)
【国際出願番号】PCT/EP2008/065519
【国際公開番号】WO2009/089944
【国際公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【出願人】(591245473)ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング (591)
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【Fターム(参考)】