説明

車両用レーダセンサ

本発明は、レーダ光線源と、当該光線源の前に配置され、レーダ光線を屈折させる素材から成り、少なくとも一方の側に凸表面(14)を有するレンズ(12)と、を備えた車両用レーダセンサにおいて、凸表面(14)が、方位角(Y1、Y2)よりも仰角(Z1、Z2)においてより強い湾曲を有することを特徴とする、上記レーダセンサに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーダ光線源と、当該光線源の前に配置され、レーダ光線を屈折させる素材から成り、少なくとも一方の側に凸表面を有するレンズと、を備えた車両用レーダセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
車両内では、運転者支援システム、例えば間隔警告システム及び制御システムとの関連で、自車両の周囲の物体、特に他の車両の位置を測定するためにレーダセンサが使用される。例えば、約77GHzの周波数により動作する長距離レーダセンサ(LRR)や、周波数が24GHzの短距離レーダセンサ(SRR)が一般的に用いられる。レーダセンサが車両に組み込まれ、先行車両までの間隔を測定する機能を果たす場合に、車道から遥かに離れた物体によりレーダエコーが可能な限り全く引き起こされず又は僅かなレーダエコーが引き起こされる一方で、先行車両が通常存在する角度領域において最大強度及び感度が実現されるように、レンズは、放出され及び/又は受信されたレーダ光線を、前方に方向付けられる少なくとも1つのレーダローブに対して収束させるという目的を有する。角度分解型レーダセンサ(winkelaufloesender Radarsensor)の場合、方位角において扇形に展開される複数のレーダローブが生成され、様々なローブから獲得される信号間の振幅比及び位相比から、測定物体の方位角が推測される。
【0003】
車両用レーダセンサの一般的に用いられる構造形状の場合、球面レンズ、又は、回転体の形状をした一般的なレンズであって、レーダ光線の各周波数について高い屈折率を有する合成樹脂から成り、集光レンズのように光線を収束させる上記レンズが利用される。その際に、方位角(Azimut)(水平方向)及び仰角(Elevation)(垂直方向)において、基本的に同一の指向性が実現される。レンズの焦点面において相並んで配置される複数のアンテナ素子を有する角度分解型レーダセンサの場合には、場合によっては、これらアンテナ間の干渉によって、方位角における指向性の、ある程度の変更が起こりうる。
【0004】
しかしながら多くの場合、特に長距離レーダセンサにおいては、方位角よりも仰角において光線をより強く収束させること、従って、一方では、方位角において十分な幅の視野が実現され、他方では、より強い収束によって、仰角において不要なエネルギー損失が回避される共に、車道の路面(地表面クラッタ)等の反射による妨害信号がより良好に抑制されることが望まれるであろう。このような異方性の、即ち、仰角と方位角において異なる指向性を実現するための可能な方法は、複数のレンズを備えた複雑なレンズシステムを利用することにある。しかしながらこのことは、車両用のレンーダセンサの場合には、コストの理由から、さらにレンズシステムの所要面積が大きいために実行可能ではない。
【0005】
独国特許出願公開第102007036262号明細書には、背中合わせに配置された2つの円柱形平凸レンズあって、その円柱軸が互いに直角に通っており異なる焦点距離を有する上記レンズで構成されるレーダセンサが開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、コンパクトなレンズと、仰角と方位角において改善された指向性と、を備えたレーダセンサを創出することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本課題は、凸表面が、方位角よりも仰角においてより強い湾曲を有することにより解決される。
【0008】
本発明にかかるレーダセンサにおいては、方位角及び仰角における屈折動作は、レンズの同一の凸表面により決定されるため、レンズは、平凸レンズとして、又は、凹/凸レンズとしても構成することが可能であり、これにより、レンズ及びレーダシステム全体のコンパクトな構造が獲得される。その際レンズは、方位角及び仰角において類似した大きさの開口部(Apertur)を有するように形成され、このことは、アンテナパターンにおける望まないサブローブを抑制することに寄与する。
【0009】
本発明の好適な構成及び発展は、従属請求項で示される。
【0010】
好適に、レンズは、凸表面の向かい側、従って光線源の方を向いた側において、その円柱軸が垂直に通る凹形の円柱レンズ構造を有する。これにより、仰角においては、必要な光線収束が実現されるためにその凸表面が全体として比較的強く歪曲している必要があるレンズが、それにも関わらず方位角においては、レーダ光線の比較的弱い収束をもたらし又は当該収束を全くもたらさず、従って、対応する大きさの角度領域がカバーされうることが達成される。その際に、円柱状の凹形に歪曲した表面は、水平方向の切断面において、円の形状を有し、又は選択的に、楕円又は双曲線の形状を有しうる。
【0011】
レンズの凸表面は、好適に仰角及び方位角において、円錐曲線の形状、例えば楕円形状を有する。仰角において、レンズは好適に、無収差レンズとして構成される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
以下では、実施例が図を用いてより詳細に解説される。
【図1】斜め前方から見たレーダセンサのレンズの斜視図を示す。
【図2】斜め後方から見た図1のレンズの斜視図を示す。
【図3】図1のレンズの水平方向の断面図を示す。
【図4】図1のレンズの垂直方向の断面図を示す。
【図5】図1〜図4のレンズを備えたレーダセンサのための方位角−アンテナパターンを示す。
【図6】レーダセンサの仰角−アンテナパターンを示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1には、車両用レーダセンサのうち、例えば射出成形法によりマイクロ波を屈折させる合成樹脂から製造されレンズ12に組み込まれた保護カバー10の正面が示されている。保護カバー10は、レーダセンサの残りの構成要素、特に、レーダ光線の送信源及び反射されたレーダ信号を受信する受信素子を形成するアンテナ構成及び対応する電子回路を収容するハウジング(図示せず)を閉鎖する。図1では、レンズ12の、光線源に対して外方を向く表側が眺められる。この表側において、レンズは、様々な方向に様々な強度で歪曲された凸表面14を有する。
【0014】
図1では、矢印Y1及びY2によって、方位角平面、即ち、レンズ12の光軸を通って水平方向に伸びる平面が表される。この平面においては、凸表面14の湾曲が最小である。これに対して、矢印Z1及びZ2により開かれる、方位角平面に対して直角の仰角平面においては、凸表面14の湾曲が最大である。これに対応して、レンズ12は、水平方向よりも垂直方向(仰角方向)において、より小さな幅を有する。従って、凸形のレンズ本体は縦長の形状を有し、その長い方の側面が、土台面16によって、保護カバー10の周辺端部18と連結される。これに対して、上及び下の末端(図1の左及び右の末端)では、レンズ本体は、端部18の高さで先端が切断され、従って、レンズ本体は、端面20により画定される。
【0015】
図2は、保護カバー10の内側を見た図を示している。ここでは、保護カバーの内側、即ち光線源の方を向いた側において、固形プラスチックから成るレンズ12の本体が、平面22より画定され、但しこの平面22は凹形の円柱レンズ24により途中中断されていることが分かる。円柱レンズ24の円柱軸は、垂直に、即ち仰角方向に通っている。
【0016】
図3では、凹形の円柱レンズ24の横断面が観察される。本例では、凹形に歪曲された面は、切断面が、半径をRとする円弧の形状を有する。
【0017】
この断面図では、凸表面14は楕円形状を有する。
【0018】
図3には、図示されない高周波電子回路と共にレーダ光線源28を形成すると共に、反射されたレーダ信号を受信する役目を果たす4つのアンテナパッチ26が概略的に描かれている。示される例では、アンテナパッチ26は、円柱レンズ24を定める半径をRとする円のほぼ中心に存在するが、水平方向においては互いにずれており、レンズ12の光軸30に対して対称的に配置されている。従って、この4つのアンテナパッチ26によって、方位角において互いにずれた4つの送信及び受信ローブが形成される。従って、様々なバッチにより受信された信号の評価によって、測定物体の方位角を大まかに決定することが可能となる。
【0019】
円柱レンズ24と、方位角において弱く湾曲したレンズの凸表面14と、の組み合わせによる効果によって、レーダ光線の弱い収束が起こり、従って、比較的広い角度領域において、4つのアンテナパッチ全ての光線が光軸30の両側に放出されるように、アンテナパッチ26が存在する平面とレンズ12との間隔が選択される。
【0020】
図4は、垂直方向、即ち仰角平面におけるレンズ12の切断面を示しており、仰角平面においては、凸表面14は同様に楕円形状を有するが、明らかにより強く歪曲している。この方向においては、円柱レンズ24は平坦であるように見える。レンズ12は、仰角において、アンテナパッチから発せられた発散光線を、ほぼ平行の光線束が発せられるように収束させる無収差レンズ(不遊レンズ)として機能する。
【0021】
図5及び図6には、図1〜図4で示したレンズジオメトリから生じた、方位角及び仰角におけるアンテナパターンが示されている。
【0022】
図5の曲線30、32、34及び36は、各アンテナパッチ26について、対応する信号の振幅Aを、信号が発せられる方位角αの関数として示している。各アンテナパッチが、幅の広いメインローブを形成し、当該メインローブが、約±50°の角度領域の渡って広がり、非常に弱く形成されたサブローブを伴うことが分かる。曲線は、アンテナパッチ26のずれに対応して、方位角において互いに少しずれているが、角度領域全体においては高い重なりを有し、これにより、信号の評価及び測定物体の方位角の決定が容易になる。
【0023】
図6では、曲線30’、32’、34’及び36’が、個々のアンテナパッチ26により送信された信号の振幅Aを、仰角αに応じて示している。ここでは、仰角において強く歪曲された凸表面14の収束効果により、約±6°の角度領域に渡って広がる細長いメインローブがもたらされることが分かる。仰角においても、メインローブは、比較的弱いサブローブを伴う。
【0024】
アンテナパッチ26は反射されたレーダ信号を受信する役目を果たすため、図5及び6のアンテナパターンは、受信アンテナの感度についてのパターンとしても解釈されうる。仰角における強い収束によって(図6)、地表クラッタ等の妨害信号が効果的に抑制されることが保障される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーダ光線源(28)と、前記光線源の前に配置され、前記レーダ光線を屈折させる素材から成り、少なくとも一方の側に凸表面(14)を有するレンズ(12)と、を備えた車両用レーダセンサにおいて、
前記凸表面(14)は、方位角(Y1、Y2)よりも仰角(Z1、Z2)においてより強い湾曲を有することを特徴とする、車両用レーダセンサ。
【請求項2】
前記レンズの前記凸表面(14)は、前記光線源(28)に対して外方を向く側に存在し、前記光線源(28)の方を向いた側には、凹形の円柱レンズ(24)が形成される、請求項1に記載のレーダセンサ。
【請求項3】
前記円柱レンズ(24)の凹形に湾曲した面は、切断面が円錐曲線の形状を有する、請求項2に記載のレーダセンサ。
【請求項4】
前記円柱レンズ(24)の凹形に湾曲した面は、切断面が円弧の形状を有する、請求項3に記載のレーダセンサ。
【請求項5】
前記レンズ(24)の前記凸表面(14)は、方位角平面及び仰角平面における切断面がそれぞれ円錐曲線の形状を有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載のレーダセンサ。
【請求項6】
前記凸表面(14)は、方位角平面及び仰角平面における切断面がそれぞれ楕円切片の形状を有する、請求項5に記載のレーダセンサ。
【請求項7】
前記レンズ(12)は、仰角において無収差レンズとして構成される、請求項1〜6のいずれか1項に記載のレーダセンサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2012−531600(P2012−531600A)
【公表日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−518053(P2012−518053)
【出願日】平成22年5月3日(2010.5.3)
【国際出願番号】PCT/EP2010/055967
【国際公開番号】WO2011/000607
【国際公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【出願人】(501125231)ローベルト ボッシュ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (329)
【Fターム(参考)】