説明

車両用充電装置

【課題】車両用充電装置において、電ケーブルの引き回し作業に伴う負担を軽減し、引き回し作業時の充電ケーブルの損傷を抑制することができる車両用充電装置を提供すること。
【解決手段】筐体1内に給電手段を有し、該給電手段から車載電池を備えた車両に電力を供給する充電ケーブル2を備える車両用充電装置であって、該筐体1内部から引きだされた該充電ケーブル2は、先端部に充電コネクタ3を有し、該充電ケーブル2の中間部を固定するケーブル固定部5を備えたアーム4を該ケーブル固定部5が筐体の上部に位置するように筐体1に設置し、該ケーブル固定部5から充電コネクタ3の先端部までの長さを、該ケーブル固定部5から筐体底面までの長さよりも短くした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気自動車やプラグインハイブリッドカー等の車載電池を備えた車両に対して充電を行うことができる車両用充電装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
今後、電気自動車やプラグインハイブリッドカー等の急速な普及が予想されるなか、特にガソリンスタンドでのガソリン給油時間と同程度の時間で、急速充電が行える充電装置(例えば、特許文献1)への需要増加が予想される。
【0003】
急速充電に使用される充電ケーブルには、許容電流が約16〜20A程度である普通充電ケーブルに比べて、数倍の電流が流れるため断面積を大きくとることが必要となり重量が大きくなる。
【0004】
一般に、急速充電対応型の車両用充電装置では、先端に充電用コネクタを有する充電ケーブルが車両用充電装置の筐体内部から引き出される構造が採用されている。なお、充電車両の種類や停車位置に柔軟に対応するために、充電ケーブルの長さは所定の余長を持って設計されることが通常である。
【0005】
急速充電時には、充電作業者が、重量の大きな充電ケーブルの先端部に設けた充電用コネクタを電気自動車等の車載電池を備えた車両に設けた給電口と接続する作業が必要となるが、前記のように急速充電に使用される充電ケーブルは総重量が大きくなるため、特に、充電コネクタを車両の給電口に接続する時には、充電コネクタの重量と、充電コネクタから充電ケーブルが地面に接触するまでの充電ケーブル自体の重量が作業者の負担となり取り扱いにくいという問題がある。また、地面に這わせた充電ケーブルの余長部の引き回し作業に伴う負担が大きい問題や、引き回し作業時に充電ケーブルが地面上の異物と接触して損傷を受けやすいという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−207668号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は前記を解決し、筐体内に給電手段を有し、該給電手段から電気自動車等の車載電池を備えた車両に電力を供給する充電ケーブルを備える車両用充電装置であって、該充電ケーブルの引き回し作業に伴う負担を軽減し、引き回し作業時の充電ケーブルの損傷を抑制することができる車両用充電装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するためになされた本発明の車両用充電装置は、筐体内に給電手段を有し、該給電手段から車載電池を備えた車両に電力を供給する充電ケーブルを備える車両用充電装置であって、該筐体内部から引きだされた該充電ケーブルは、先端部に充電コネクタを有し、該充電ケーブルの中間部を固定するケーブル固定部を備えたアームを該ケーブル固定部が筐体の上部に位置するように該筐体に設置し、該ケーブル固定部から充電コネクタの先端部までの長さを、該ケーブル固定部から筐体底面までの長さよりも短くしたことを特徴とするものである。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の車両用充電装置において、該アームは下面に溝部を備え、該溝部に該ケーブル固定部をアームに対してスライド自在に保持することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る車両用充電装置は、該給電手段から車載電池を備えた車両に電力を供給する充電ケーブルを備える車両用充電装置であって、該筐体内部から引きだされた該充電ケーブルは、先端部に充電コネクタを有し、該充電ケーブルの中間部を固定するケーブル固定部を備えたアームを該ケーブル固定部が筐体の上部に位置するように筐体に設置し、該充電ケーブル固定部から充電コネクタの先端部までの長さを、該充電ケーブル固定部から筐体底面までの長さよりも短くする構成により、常時、充電コネクタが床面から所定高さをもって吊下げた状態で保持されるため、充電ケーブルは常にアームによって充電コネクタの上方から支持されていることになり、充電コネクタを車両の給電口に接続する時に、充電コネクタと地面との間で充電ケーブルの撓み量が低減され、充電ケーブルや充電コネクタの重量による作業者の負担を軽減することができる。また、充電ケーブルが地面上に接触することがないので、充電ケーブルの余長部の引き回し作業に伴う負担が大きい問題や、引き回し作業時に充電ケーブルが地面上の異物と接触して損傷を受けやすいという問題を効果的に回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施形態1に係る車両用充電装置の全体図である。
【図2】本発明に係る実施形態を説明する図面である。
【図3】実施形態1に係る車両用充電装置の筐体に充電コネクタを収納した図である。
【図4】アームの先端に充電コネクタ保持部を設けた状態を示す図である。
【図5】実施形態1に係る車両用充電装置の変形例を示す図である。
【図6】アームを補強する補助部材を設置した図である。
【図7】実施形態2に係る車両用充電装置の全体図である。
【図8】実施形態2に係る車両用充電装置の筐体に充電コネクタを収納した図である。
【図9】実施形態3に係る車両用充電装置の全体図である。
【図10】実施形態4に係る車両用充電装置の全体図である。
【図11】実施形態5に係る車両用充電装置の全体図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に本発明の好ましい実施形態を示す。図1〜図11は、各々、下記の実施形態1〜5に係る車両用充電装置の全体図を示している。下記のすべての実施形態において、車両用充電装置は、筐体1内に給電手段を有し、該給電手段から直流電力を車載電池を備えた車両に通電する充電ケーブル2を備えている。給電手段とは筐体1内に設置される電力変換装置、開閉器、制御装置等から構成されるものである。また、該充電ケーブル2は、筐体1の上部から引き出され、その先端部には充電コネクタ3を有している。該充電コネクタ3は、筐体1の上部に備えたアーム4により、床面から所定高さをもって吊下げた状態で保持されている。本発明では、固定部5を該筐体に対して移動可能とする構成により、急速充電に使用される重量の重い充電ケーブル2の引き回し作業に伴う負担を効果的に軽減している。以下、各々アームの形状が異なる各実施形態について説明する。
【0013】
(実施形態1)
実施形態1の車両用充電装置は、図1に示すように、筐体1の天井部6に対して回転自在に設けたアーム4を備え、充電ケーブル2は、アーム4の基端より外部に引き出されている。
【0014】
該アーム4は、該充電ケーブル2の中間部を固定するケーブル固定部5を備えていて、ケーブル固定部5は筐体1の上部、例えば天井部6よりも高い位置に保持されるように設けられている。また、該ケーブル固定部5は、アーム4の下面に形成された溝部(図示しない)で前後方向にスライド自在に保持されている。
本実施形態では、ケーブル固定部5は充電ケーブル2がケーブル固定部5に対して移動しないように握持つ構造としている。
なお、充電ケーブル2の中間部とは筐体1の外部に露出した充電ケーブル2の先端から基端までの間の途中の一部を意味するものであり、充電ケーブル2の先端から基端までの間の真中であることに限定されない。
【0015】
図2に示すように、ケーブル固定部5は、ケーブル固定部5から充電コネクタ3の先端部までの長さ(a)が、該ケーブル固定部5から筐体底面までの長さ(b)よりも短くなる位置で充電ケーブル2を固定しているため、充電コネクタ3は、常に、床面から所定高さをもって吊下げた状態で保持されている。本発明では、この構造を採用することにより、充電ケーブル2は常にアーム4によって充電コネクタ3の上方から支持されていることになり、作業者が充電コネクタ3を車両の給電口に接続する時に、充電コネクタ3と地面との間で充電ケーブル2の撓み量が低減され、充電ケーブル2や充電コネクタの重量による作業者の負担を軽減することができる。また、充電ケーブルが地面上に接触することがないので、引き回し作業時に充電ケーブルが地面上の異物と接触して損傷を受けやすいという問題を効果的に回避している。
【0016】
図3に示すように、筐体1には、その他、非充電時の充電コネクタ3を保持する充電コネクタ保持部7が設けられている。
なお、図4に示すように充電コネクタ保持部7はアーム4の先端部に垂下して設けたものとしてもよい。この場合において、充電コネクタ保持部7はケーブル固定部5と一体的に形成され、アーム4の下面に形成された溝部でスライド自在に設置される。
また、充電コネクタ保持部7は、断面積が大きく重量の大きい急速充電用の充電ケーブル2に対し、ねじれによる外力が加わらないことが好ましく、例えば、充電コネクタ3の先端部が筐体1の正面に向くように、配置することが好ましい。
また、該充電コネクタ保持部7に、アーム4の動きをロックするアームロック機構や、充電コネクタ3の取り外しを規制する充電コネクタロック機構を設けても良い。
【0017】
図5に示す構造は実施形態1の変形例であり、アーム4の基端は筐体1の側面に設けられた張出部11に設けられている。この場合においても、ケーブル固定部5は筐体1の上部、すなわち天井部6よりも高い位置するようにアーム4が設置されている。
【0018】
また、図6に示すようにアームの基端に、上方に向けて支持部9を延出し、支持部9とアーム4との間にワイヤー等からなる補助部材10を渡して、アーム4を引き上げ支持する構造としてもよい。この構造により、充電ケーブル2の重量によるアーム4の変形を低減させることができるので、アーム4をスムーズに回転させることができる。
【0019】
図1に示す本実施形態によれば、充電作業時には、作業者は、アーム4を回転させ、更に、ケーブル固定部5をアーム4の下面でスライドさせることにより、充電コネクタ3を車両の給電口の近傍まで移動させた上で、充電コネクタ3を車両の給電口に充電コネクタ3を接続させればよい。
これにより、充電コネクタ3は車両の給電口の近傍まで移動させ接続するまでの間、常に、床面から所定高さをもってアーム4に設けられたケーブル固定部5に吊下げた状態で保持されているため、急速充電に使用される充電ケーブル2や充電コネクタの重量による作業者の負担を軽減することができる。
【0020】
また、図4に示すように、充電コネクタ保持部7をアーム4より垂下して設けた場合には、充電コネクタ保持部7を車両の給電口の近傍まで移動させた上で、充電コネクタ保持部7から充電コネクタ3を取り外して、車両の給電口に充電コネクタ3を接続させればよく、さらに作業者の負担を軽減することができる。
【0021】
(実施形態2)
図7に示す実施形態2は、上記の実施形態1と基本構成は同一であり、アーム4を、屈伸する腕部により構成している。このような構成を採用することにより、ケーブル固定部5を筐体1に対して前後方向に移動させることができる。すなわち、車両の給電口の近くまで、アーム自体を自在に移動することによって作業性の向上が図られる。
本実施形態においても充電コネクタ保持部7はアーム4より垂下して設けることができる。
また、図8に示すように、充電コネクタ保持部7を筐体1に設けた場合には、充電コネクタ保持部7を筐体1の側面に設けた上充電コネクタ3の先端部を前方に向けるように保持しておくことができる。これにより、充電コネクタ3は車両の給電口への接続方向である前方に向けられ、充電ケーブル2がねじれることを防ぐことができる。なお、充電コネクタ3の先端のプラグ部を保護するためにカバー12が設けられている。
【0022】
(実施形態3)
図9に示す実施形態3では、筐体1に併設した充電ケーブル2の収納部8の上方に、前後方向に伸縮自在のアーム4を設けている。充電ケーブル2は、収納部8の正面開口部から外部に引き出される。
【0023】
該アーム4は、上記実施形態と同様に、該充電ケーブル2の中間部を固定するケーブル固定部5を備えているが、アームの下面には溝部が形成されておらず、アーム自体が筐体の前後方向にスライドすることにより、ケーブル固定部5を筐体1に対して移動させている。また、ケーブル固定部5は、ケーブル固定部5から充電コネクタ3の先端部までの長さが、該ケーブル固定部5から筐体底面までの長さよりも短くなる位置で充電ケーブル2を固定しているため、充電コネクタ3の先端部は、常に、床面から所定高さをもって吊下げた状態で保持されている。本発明では、この構造を採用することにより、充電ケーブル2が地面上に接触することがなく、充電ケーブル2の余長部の引き回し作業に伴う負担が大きい問題や、引き回し作業時に充電ケーブル2が地面上の異物と接触して損傷を受けやすいという問題を効果的に回避している点も上記実施形態と同様である。
【0024】
充電ケーブル2の収納部には、充電ケーブル2の巻き取り装置を備え、該充電ケーブル2の巻き取り動作を、アーム4の伸縮動作と連動させる自動制御手段を設けてもよい。
【0025】
(実施形態4)
図10に示す実施形態4では、筐体1の天井部6に、U字構造を持ったアーム4を設けている。アーム4は、筐体1の少なくとも一方の面(前面)に張り出した構造を有している。本実施形態では、筐体1の上部に突き出した少なくとも2本の支柱13で支えられているが、筐体の天井面に直接取り付ける構造としてよい。充電ケーブル2は、アーム4中央の支柱部14から外部に引き出されている。
【0026】
該アーム4は、上記実施形態と同様に、該充電ケーブル2の中間部を固定するケーブル固定部5を備え、該ケーブル固定部5は、アーム4の下面に形成された溝部(図示しない)でスライド自在に保持されている。また、ケーブル固定部5は、ケーブル固定部5から充電コネクタ3の先端部までの長さが、該ケーブル固定部5から筐体底面までの長さよりも短くなる位置で充電ケーブル2を固定しているため、充電コネクタ3の先端部は、常に、床面から所定高さをもって吊下げた状態で保持されている。本発明では、この構造を採用することにより、充電ケーブル2が地面上に接触することがなく、充電ケーブル2の余長部の引き回し作業に伴う負担が大きい問題や、引き回し作業時に充電ケーブル2が地面上の異物と接触して損傷を受けやすいという問題を効果的に回避している点も上記実施形態と同様である。
【0027】
(実施形態5)
図11に示す実施形態5では、筐体1の天井部6に、釣り竿状のアーム4を設けている。該アーム4は、天井部6に対して回転自在かつ起倒自在に設けられている。充電ケーブル2は、アーム4の基端より外部に引き出されている。
【0028】
該アーム4は、作業時に加わる外力によって前方に傾斜する構造を有し、これにより、ケーブル固定部5を筐体1に対して前後方向に移動させている。また、該アーム4に外力が加わって前方に最大傾斜した場合であっても、床面から所定高さをもって吊下げた状態で保持されている。
【0029】
該アーム4は、該充電ケーブル2の中間部を固定するケーブル固定部5を備え、該ケーブル固定部5は、アーム4の先端部に固定されている。
【0030】
ケーブル固定部5は、ケーブル固定部5から充電コネクタ3の先端部までの長さが、該ケーブル固定部5から筐体底面までの長さよりも短くなる位置で充電ケーブル2を固定しているため、充電コネクタ3の先端部は、常に、床面から所定高さをもって吊下げた状態で保持されている。本発明では、この構造を採用することにより、充電ケーブル2が地面上に接触することがなく、充電ケーブル2の余長部の引き回し作業に伴う負担が大きい問題や、引き回し作業時に充電ケーブル2が地面上の異物と接触して損傷を受けやすいという問題を効果的に回避している点は上記実施形態と同様である。
【0031】
なお、上記実施形態ではいずれもケーブル固定部5を備えたアームは筐体1に対して可動するものとしているが、本発明のアームは、筐体1より張り出すように設けてあればよく、筐体1に固定されていて可動しない構造としてもよい。
【符号の説明】
【0032】
1 筐体
2 充電ケーブル
3 充電コネクタ
4 アーム
5 ケーブル固定部
6 天井部
7 充電コネクタ保持部
8 収納部
9 支持部
10 補助部材
11 張出部
12 カバー
13 支柱
14 中央の支柱

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体内に給電手段を有し、該給電手段から車載電池を備えた車両に電力を供給する充電ケーブルを備える車両用充電装置であって、
該筐体内部から引きだされた該充電ケーブルは、先端部に充電コネクタを有し、
該充電ケーブルの中間部を固定するケーブル固定部を備えたアームを該ケーブル固定部が筐体の上部に位置するように該筐体に設置し、該ケーブル固定部から充電コネクタの先端部までの長さを、該ケーブル固定部から筐体底面までの長さよりも短くしたことを特徴とする車両用充電装置。
【請求項2】
該アームは下面に溝部を備え、該溝部に該ケーブル固定部をアームに対してスライド自在に保持することを特徴とする請求項1記載の車両用充電装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−90407(P2012−90407A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−234278(P2010−234278)
【出願日】平成22年10月19日(2010.10.19)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【出願人】(000227401)日東工業株式会社 (374)
【Fターム(参考)】