説明

車両用冷却装置

【課題】補機冷却性能とメンテナンス性に優れた低コストの車両用冷却装置を提供する。
【解決手段】車両1に搭載されるエンジン2と、冷却液を通す液管11aによって車両前方側からの空気流を通過させる面状体が形成されたラジエータ11と、車両前方側からの空気流によって冷却されるようエンジン2よりもラジエータ11寄りに配置されたECU12とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用冷却装置、特に車両に搭載される電子制御ユニットのように発熱する補機を冷却するのに好適な車両用冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近時、自動車等の車両においては、車両走行を補助する補機の1つである電子制御ユニット(ECU)が数多く使用されている。このECU、特に原動機室内に装備されるECUにおいては、エンジンや電動機のような原動機を収納する原動機室内の温度がその原動機の運転に伴って上昇するとき、CPU処理能力を低下させないように内部の能動素子等から発生した熱を効率良く外部に放熱させる必要がある。そこで、従来から、原動機室内のECU等のように発熱部を有する補機を空気流により冷却する車両用冷却装置が提案されている。
【0003】
従来のこの種の車両用冷却装置としては、例えばECUを収納するケースに空気吸入口を形成するとともに、そのケース内をラジエータ用冷却ファンのファンシュラウド内に連通させる連通管を設けて、ECUの周囲に効率良く空気流を形成するようにしたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、ラジエータ冷却用のファンに加えてサブファンを設け、そのサブファンによりECU収納ケース内に空気流を生じさせてECUを空冷するようにしたものも知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
さらに、インテークマニホールドの管壁の一部をECUのケースと一体化することで、スペースの有効活用と配線長の短縮化を図ったものが知られている(例えば、特許文献3参照)。
【特許文献1】特開2000−257429号公報
【特許文献2】特開2000−192816号公報
【特許文献3】特開2004−239211号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前述のような従来の車両用冷却装置にあっては、ECU自体とその支持部材が共にラジエータタンクの後方に位置していたため、ラジエータ通過後の高温の空気によってECUやその支持部材が受熱し、そのラジエータタンク側から受熱量が多くなってしまうことによって、ECUの十分な放熱ができなかった。
【0007】
また、ECUが冷却用のケース内に収納されるとともにその冷却専用の多数の部材を原動機室内に設ける構成であったため、コスト高を招き易く、専用のレイアウトが必要なばかりか、原動機室が狭い場合のメンテナンスも容易でなかった。
【0008】
そこで、本発明は、補機冷却性能とメンテナンス性に優れた低コストの車両用冷却装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的達成のため、本発明に係る車両用冷却装置は、(1)車両に搭載される原動機と、前記車両に搭載されるとともに冷却液を通す液管によって面状体が形成され、前記面状体を通過する空気流によって前記液管を介し前記冷却液から放熱させる放熱器と、前記車両に搭載され、車両前方側からの空気流によって冷却されるよう前記原動機よりも前記放熱器寄りに配置された補機と、を備えたものである。
この構成により、原動機よりも放熱器寄りに配置された補機の周りをクールエアが流れて補機が有効に空冷されることになり、補機を空冷用のケースに収納したりそのための専用配管を設けたりする必要がなく、補機冷却性能とメンテナンス性に優れたものとなる。
本発明に係る車両用冷却装置は、あるいは、(2)車両に搭載される原動機と、前記車両に搭載されるとともに冷却液を通す液管によって面状体が形成され、前記面状体を通過する空気流によって前記液管を介し前記冷却液から放熱させる放熱器と、前記車両に搭載され、車両前方側からの空気流によって冷却されるよう前記車両の前後方向で前記放熱器と同等の位置か前記放熱器より車両前方側に配置された補機と、を備えたものである。
この構成により、車両の前後方向で放熱器と同等の位置か放熱器より車両前方側に配置された補機の周りをクールエアが流れて、補機が有効に空冷されることになる。したがって、補機を空冷用のケースに収納したりそのための専用配管を設けたりする必要がなく、補機冷却性能とメンテナンス性に優れたものとなる。
上記(1)、(2)に記載の構成を有する車両用冷却装置においては、(3)前記補機の前端が、車両前方側からの空気流を通過させる前記面状体より車両前方側に位置するのが望ましい。これにより、放熱器を通過していないクールエアによって補機が十分に冷却される。
【0010】
また、上記(1)、(2)に記載の構成を有する車両用冷却装置においては、(4)前記補機のうち表面温度が高くなる部位が前記補機のうち車両前方側に位置するのがよい。これにより、クールエアが補機の表面温度の高い部位に先に当たり、補機の冷却効果が高まる。
上記(1)、(2)に記載の車両用冷却装置においては、(5)前記補機が、前記車両に搭載される電子制御ユニットであるのが好ましい。この構成により、電子制御ユニットが効率的に冷却され、その処理速度や信頼性が向上する。
さらに、上記(1)、(2)に記載の車両用冷却装置は、好ましくは、(6)前記補機が、前記放熱器の面状体の外周近傍に配置され、前記放熱器を通過した空気流と前記補機の周りを通過する空気流とを分離するよう、前記放熱器の近傍に、前記補機の周りを通過する空気を吸入する空気清浄器が配置されたものである。
【0011】
この構成により、放熱器を通過した高温の空気流が空気清浄器によって補機側の空気流から分離されるとともに、補機の周りを流れる空気が空気清浄器に吸入され、補機の周りを流れる空気流がクールエアでかつ補機の空冷に有効な流量となる。
【0012】
上記(6)に記載の構成を有する車両用冷却装置においては、(7)前記補機の位置が前記空気清浄器の位置より車両前方側であることが好ましい。これにより、空気清浄器に取り込まれるクールエアによって補機が冷却され、補機の冷却効果が高まる。
【0013】
上記(7)に記載の車両用冷却装置においては、(8)前記空気清浄器に空気吸入用のダクトが装着され、該ダクトの空気吸入口が、前記補機の後部近傍に位置するのが好ましい。この構成により、空気清浄器への空気の取り込みに伴って、車両の前方から後方側に向かう方向へ空気流を方向付けることができ、補機の周囲を流れる空気流の流量を確実に増加させることができ、冷却効率が高まる。
【0014】
この場合、(9)前記ダクトの空気吸入口が、前記補機に対し前記放熱器とは反対側に向かって開口しているのが望ましい。これにより、補機の表面に向かう空気流も形成されることになり、冷却効率が高まる。
【0015】
上記(6)に記載の車両用冷却装置においては、(10)前記補機が、前記車両に搭載される電子制御ユニットであり、該電子制御ユニットが、前記空気清浄器のケースに支持されているのが好ましい。この構成により、電子制御ユニットが効率的に冷却され、その処理速度や信頼性が向上する。
【0016】
また、上記(6)に記載の車両用冷却装置においては、(11)前記放熱器の近傍に設けられ、前記放熱器を通過する空気流を生じさせるファンと、前記ファンの周囲で前記放熱器の片面側を覆うファンシュラウドと、を備え、前記空気清浄器のケースが、前記ファンシュラウドと一体に形成されているのが望ましい。
【0017】
この構成により、部品点数が削減されるのみならず、空気清浄器を支持する手段が大幅に簡素化され、放熱器の周辺のレイアウトの自由度も高まる。
【0018】
この場合、(12)前記空気清浄器のケースが、前記ファンの側方で上下方向に延びているのが好ましい。この構成により、狭い原動機室内に原動機の配置スペースを十分に確保できる。
【0019】
さらに、この場合、(13)前記空気清浄器のケースに前後方向に開閉可能なキャップが装着されたものであるのが好ましい。この構成により、空気清浄器のメンテナンスが容易化されるとともに、補機のメンテナンス時の作業空間も確保され、メンテナンス性が向上する。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、原動機よりも放熱器寄りに配置された補機の周りをクールエアが流れて補機が有効に空冷されるようにすることで、補機を空冷用のケースに収納したりそのための専用配管を設けたりする必要がなく、補機冷却性能とメンテナンス性に優れた車両用冷却装置を提供することができる。
また、本発明によれば、車両の前後方向で放熱器と同等の位置か放熱器より車両前方側に配置された補機の周りをクールエアが流れて、補機が有効に空冷されるようにすることで、補機を空冷用のケースに収納したりそのための専用配管を設けたりする必要がなく、補機冷却性能とメンテナンス性に優れた車両用冷却装置を提供することができる。
さらに、放熱器を通過した高温の空気流が空気清浄器によって補機側の空気流から分離されるとともに、補機の周りを流れる空気が空気清浄器に吸入されるようにすれば、補機の周りを流れる空気流がクールエアでかつ補機の空冷により有効な流量となるようにすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しつつ説明する。
【0022】
図1は、本発明の一実施形態に係る車両用冷却装置の要部平面図、図2は本発明の一実施形態に係る車両用冷却装置の要部背面図、図3は本発明の一実施形態に係る車両用冷却装置の要部を背面側から見た斜視図、図4は本発明の一実施形態に係る車両用冷却装置で冷却される補機の装着状態を示す空気清浄器の側面図である。
【0023】
本実施形態の車両用冷却装置は、図1から図3に示すように、車両1(詳細図示せず)の前方側、例えば車両1のバンパ・グリル開口部1aの後方に搭載された公知のラジエータ11と、その車両1の走行を補助する補機、例えばラジエータ11に対し左側の側方に配置されたECU(Electronic Control Unit;電子制御ユニット)12と、空気清浄器
、例えばラジエータ11に対し左端部背面側に配置されたエアクリーナ13とを備えている。
【0024】
ラジエータ11は、その詳細を図示しないが、その後方に配置される原動機、例えば内燃機関である横置き式の多気筒ガソリンエンジン2のウォータージャケット(詳細図示せず)に連通する冷却水(冷却液)通路を形成した複数列の液管11aと、これらの液管11aの上下両端部に接続するアッパータンク部11dおよびロワタンク部11eと、複数列の液管11aの間に設けられた複数の放熱フィン11bとを有しており、図示しないウォータポンプおよびサーモスタットと共にエンジン冷却装置を構成している。
【0025】
このエンジン冷却装置においては、ウォータポンプの作動によりロワタンク部11eから図示しない耐熱性・耐圧性のロワホースを通して冷却水がエンジン2に供給されるとともに、エンジン2からの冷却水が図示しない耐熱性・耐圧性のアッパーホースを通してアッパータンク部11dに戻るようになっている。また、ラジエータ11の複数列の液管11aは、互いに平行に離間配置されて鉛直方向および車両左右方向に広がる平坦な通気性の面状体を形成しており、その面状体の前面であるラジエータ前面11cから車両後方側に、例えばラジエータ前面11cに対し略直角に交差する図1中の矢印Da方向に、空気流が通過するようになっている。そして、エンジン2を冷却するとともに加熱された冷却液は、車両走行時または後述する電動ファン21の作動時に矢印Da方向の空気流によって、液管11aおよび放熱フィン11bを介して放熱するようになっている。すなわち、ラジエータ11はエンジン冷却装置において冷却水から放熱させる放熱器となっている。なお、サーモスタットは、ウォータポンプの吸入側に配置され、冷却水温度に応じて開閉する流量調節バルブとして機能するものであり、ラジエータ11を通る冷却液の流量を調節することができるようになっている。
【0026】
ECU12は、車両1の補機の1つで、詳細を図示しないが、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)およびバックアップ用メモリとしてのEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)が実装され、さらに、A/D変換器等を含む入力インターフェース回路と、リレー回路やドライバ回路等を含む出力インターフェース回路と、他のECUとの間で通信を行うための通信インターフェースとが実装された電子制御回路基板を、熱伝導率の高い金属、例えばアルミニウム製のケース内に収納したものである。なお、このようなECU12の内部構成自体は、例えば特開2002−84054号公報に記載されている。
【0027】
ECU12は、内部のROMに予め格納された制御プログラムに従い、各センサ情報入力や他のECUからの制御情報である通信入力等に基づいてエンジン2の運転を制御する機能を有しており、その制御を実行する際には、ECU12の内部の能動素子(例えばパワートランジスタ、パワーIC)等からは熱が発生する。
【0028】
しかし、ECU12はエンジンルーム(原動機室)内に配置されるため、ECU12からの放熱を促進する必要があり、ECU12は、ラジエータ前面11cの外周近傍で、車両前方側からの空気流(ラジエータ前面11cに対し交差する方向の空気流)によって冷却されるようになっている。すなわち、車両1に搭載されるECU12は、車両1の前方側からの空気流によって冷却されるように、エンジン2よりもラジエータ11寄りとなるラジエータ11の外周近傍に配置されており、具体的には、図1、図2に示すように、車両1の前後方向でラジエータ11と同等の位置(車両前後方向におけるラジエータ11および電動ファン21の配置領域内の位置)か、あるいは、ラジエータ11より車両前方側に、ECU12の位置(前後方向中心位置)が設定されている。
【0029】
そのため、エアクリーナ13は、ラジエータ11の左端部(外周部)直後の背面側で左右の空間を区画し、ラジエータ11を通過した空気流とECU12の周りを通過する空気流とを左右に分離するようになっている。また、ECU12の位置(前後方向中心位置)がそのエアクリーナ13の位置より車両前方側にあることで、車両前方側からエンジンルーム内に流れ込んでエアクリーナ13に吸入されるクールエアの空気流がラジエータ11を通過した後の空気流から確実に分離されつつECU12の周囲を流れ、ECU12の周囲を流れるクールエアの流量が十分に確保されるようになされている。
【0030】
具体的には、エアクリーナ13は、例えば軽量な樹脂製のエアクリーナケース31およびエアクリーナキャップ32によって形成される外郭の内部に、フィルタであるエアエレメント33と、図示しないHC吸着フィルター(カーボンフィルタ)とを収納し、さらに、図示しないエアフローメータを装着したものである。
【0031】
ラジエータ11の背面側には公知の電動ファン21が設けられており、電動ファン21は、電動ファンモータ21aにより回転駆動され、ラジエータ11を車両前方側から後方側に向かって矢印Da方向に通過する空気流を生じさせる。この電動ファン21は、エンジン2の冷却水温度を所定範囲に維持するよう、ECU12によって駆動制御されるようになっている。
【0032】
電動ファン21の周囲にはラジエータ11の背面側を覆うファンシュラウド22が設けられており、エアクリーナケース31はファンシュラウド22と一体に形成されている。このエアクリーナケース31は電動ファン21の側方でファンシュラウド22から後方に突出しつつ鉛直方向(上下方向)に延びており、このエアクリーナケース31には前後方向に開閉可能なエアクリーナキャップ32が下端部をケース31にヒンジ結合されて装着されている。図3中のエアクリーナキャップ32は開放した状態で示されている。
【0033】
また、エアクリーナ13のエアクリーナケース31には、空気吸入用のインレットダクト35と、エンジン2側への吸気通路を形成する吸気管部36(図3参照)とが装着されており、そのインレットダクト35の空気吸入口35aは、ECU12の後部近傍に位置している。そして、ECU12は、このエアクリーナ13のエアクリーナケース31とインレットダクト35との間、すなわち吸気経路の折れ曲がったダクト曲げ部35bの内側スペース内に配置されるとともに、図2および図4に示すように、エアクリーナケース31の左側壁から突出する複数個所、例えば4箇所の凸状部31p(例えば、雌ねじ穴を有するナットを埋設した筒状突起部または雄ねじ部を有する段付き状突部)に図示しないボルトまたはナットで締結された締結部12mを有している。ECU12は、このようにしてエアクリーナケース31にその左側面から所定の隙間を隔てて支持されている。
【0034】
インレットダクト35の空気吸入口35aは、ECU12の周囲の空気をECU12側に向かって吸込む方向、例えば車両1の左方に向かって開口しており、エアクリーナ13による空気の吸入時にECU12の周りにECU12側に向かう空気流およびECU12に沿って流れる空気流が形成されるようになっている。ここにいうECU12の周囲の空気をECU12側に向かって吸込む方向は、クールエアの取り込みを考慮し、インレットダクト35の空気吸入口35aがECU12に対してラジエータ11とは反対側に向かって開口しているのが好ましい。
【0035】
より具体的には、略直方体形状のアルミニウムケースを有するECU12の前端面12aはラジエータ前面11cより車両前方側しており、ECU12の後端面12bはエアクリーナ13の後端面13bよりも前方に位置している。また、ECU12のうち、例えばパワートランジスタ等の能動素子からの発熱によって表面温度が高くなる部位12cが、車両前方側に位置している(図4参照)。さらに、ECU12のうち表面温度が高い左右方向一方側の面を冷却する空気流量が他方側の面よりも空気流量が多くなるように設定されている。エアクリーナ13の出口側の吸気管部36は、例えばエアクリーナケース31から右側に突出し、エンジン2の図示しない吸気マニホルドに接続されている(図3参照)。
【0036】
本実施形態では、このように、エンジン2よりもラジエータ11寄りとなるよう車両1の前後方向でラジエータ11と同等の位置かそれより前方側に配置したECU12の周りにエアクリーナ13による空気吸入に伴う空気流を形成するとともに、そのエアクリーナ13によって、ラジエータ11を通過した後の空気流をECU12の周りの空気流と分離する構成となっている。
【0037】
次に、その作用について説明する。
【0038】
前述のように構成された本実施形態の車両用冷却装置では、車両1の走行時には、エンジン2よりもラジエータ11寄りに配置されたECU12の周りに車両1の前方側からのクールエアが流れる。また、ECU12が車両1の前後方向でラジエータ11と同等の位置かラジエータ11より車両前方側に配置されているので、ECU12の周りをクールエアが十分に流れてECU12が有効に空冷されることになる。したがって、このECU12やその支持部分は、ラジエータ11を通過した後の高温の空気に接し難く、エンジン2からの熱も受け難い。しかも、ECU12を空冷用のケースに収納したり、そのための専用配管を設けたりする必要がない。その結果、補機冷却性能とメンテナンス性に優れた車両用冷却装置となる。
さらに、本実施形態では、車両1の走行時に、ECU12の後端部近傍でかつラジエータ11の左端部背面に近接配置されたエアクリーナ13によって、ラジエータ11を通過した高温の空気流が、ECU12の周りを流れるECU12側の空気流から分離される。したがって、ECU12の周りを流れる空気がエアクリーナ13に吸入されるとともに、ECU12の周りを流れる空気流がECU12の空冷に非常に有効な流量となり、このECU12やその支持部分がラジエータ11を通過した後の高温の空気によって受熱することがより有効に防止される。
【0039】
また、ECU12がエアクリーナ13よりも車両前方側に位置するので、エアクリーナ13に取り込まれるクールエアによってECU12が冷却され、ECU12の冷却効果が高まることになる。
【0040】
さらに、ECU12の前端面12aがラジエータ前面11cより車両前方側に位置することから、ラジエータ11を通過していないクールエアによってECU12が十分に冷却される。
【0041】
しかも、ECU12のうち表面温度が高くなる部位が車両前方側に位置することから、クールエアがECU12の表面温度の高い部位に先に当たることになり、ECU12の冷却効果が高まる。
【0042】
本実施形態では、さらに、エアクリーナ13のインレットダクト35の空気吸入口35aが、ECU12の後部近傍に位置するので、エアクリーナ13への空気の取り込みに伴って、ECU12の周囲を流れる空気流を後方側(Da方向)へも方向付けて、その流量を確実に増加させることができ、冷却効率を高めることができる。
【0043】
特に、インレットダクト35の空気吸入口35aが、ECU12に対しラジエータ11とは反対側に向かって開口しているので、ECU12の広い左側の側面に向かう空気流をも形成することで、冷却効率をより高めることができる。
【0044】
また、ECU12は、エアクリーナ13の吸気経路の折れ曲がった部分の内側でエアクリーナケース31に支持されているので、エアクリーナ13の近傍のスペースが有効活用されるとともに、エアクリーナ13の吸入空気に引かれる周囲の空気の流れによってECU12が効率的に冷却され、その処理速度や信頼性が向上する。
【0045】
しかも、エアクリーナ13のエアクリーナケース31が、電動ファン21の側方で上下方向に延びているので、狭いエンジンルーム内にエンジン2の配置スペースを十分に確保できる。
【0046】
また、エアクリーナ13のエアクリーナケース31に前後方向に開閉可能なエアクリーナキャップ32が装着されているので、エアクリーナ13のメンテナンスが容易化され、ECU12のメンテナンス時の作業空間も確保され、メンテナンス性が向上する。
【0047】
加えて、ファンシュラウド22とエアクリーナケース31とが一体に形成されているので、部品点数が削減されるばかりでなく、エアクリーナを支持するための手段が大幅に簡素化されることになり、レイアウトの自由度をも高め得るコンパクトな車両用冷却装置とすることができる。
【0048】
このように、本実施形態においては、ラジエータ11を通過した高温の空気流がエアクリーナ13によってECU12側の空気流から分離されるとともに、ECU12の周りを流れる空気がエアクリーナ13に吸入されることで、ECU12の周りを流れる空気流がクールエアでかつECU12の空冷に有効な流量となるように構成されているので、ECU12を空冷用のケースに収納したりそのための専用配管を設けたりする必要がなくなり、ECU12の冷却性能とメンテナンス性に優れた低コストの車両用冷却装置を提供することができる。
【0049】
なお、前述の実施形態においては、車両1の補機をエンジン制御用のECUとしたが、他の制御を実行するECUであってもよいし、ECUでない補機、例えばバッテリやエンジン2からの熱の影響を受け易い他の補機であってもよい。また、車両搭載の原動機を内燃機関であるエンジン2としたが、電動機あるいは内燃機関と電動機を併用するハイブリッド方式のものといった他の原動機であってもよい。また、エンジン2は一例として横置きの多気筒ガソリンエンジンとしたが、縦置きのエンジンであってもよく、放熱器を通過する空気流を生じさせるファンは独立駆動式の電動ファンに限らず、エンジンあるいは他の原動機からの動力で回転するものであってもよい。ラジエータ11は液管11aが平坦な面状体をなすものとしたが、本発明における放熱器は、平坦な面状体や車両の左右および上下に広がる設置姿勢に限定されるものではないし、面状体を形成する液管は蛇行したり渦巻状に湾曲したりする少数本(例えば1本)の液管であってもよいし、多数本が平行に離間配置されたものであってもよい。
【0050】
また、本発明の車両用冷却装置は、水冷式の内燃機関の冷却を放熱器で放熱させるものに限らず、電動機を原動機とする場合あるいはエンジンと電動機を併用する場合に電動機を冷却する冷却水を放熱させるもの等であってもよい。さらに、エアクリーナはラジエータ11の左右方向片側の一端部背面で上下方向に長い形態で説明したが、エアクリーナが必ずしも略直方体形状である必要がないことはいうまでもない。
【0051】
また、インレットダクト35の空気吸入口35aは左方に向かっているものに限らず、ECU12に向かう空気流を惹起させるような空気の吸入をなすものであれば、空気吸入口35aは左方でなく他の方向(例えば、下方、上方、前方、後方、右方、斜め方向等)に向かっていてもよい。本発明にいう面状体と交差する方向の空気流は、車両後方側への空気流に限定されるものではなく、放熱器への主たる空気流通方向と補機の周りを流れる空気流の方向とが空気清浄器の両側で異なっているものでもよい。さらに、ファンシュラウド22とエアクリーナケース31を一体に形成するものとしたが、ファンシュラウド22とエアクリーナケース31が着脱可能な別部品であってもよく、ファンシュラウド22とエアクリーナケース31を一体に形成する場合でもインレットダクト35はエアクリーナケース31に対し着脱可能な別体部品であってもよい。
【0052】
以上説明したように、本発明の車両用冷却装置は、原動機よりも放熱器寄りに配置された補機の周りをクールエアが流れて補機が有効に空冷されるようにしたり、車両の前後方向で放熱器と同等の位置か放熱器より車両前方側に配置された補機の周りをクールエアが流れて補機が有効に空冷されるようにしたりすることで、補機を空冷用のケースに収納したりそのための専用配管を設けたりする必要がなく、補機冷却性能とメンテナンス性に優れた車両用冷却装置を提供することができるという効果を奏し、さらに、放熱器を通過した高温の空気流が空気清浄器によって補機側の空気流から分離されるとともに、補機の周りを流れる空気が空気清浄器に吸入され、補機の周りを流れる空気流がクールエアでかつ補機の空冷に有効な流量となるように構成すれば、補機を空冷用のケースに収納したりそのための専用配管を設けたりする必要をなくすことができ、補機冷却性能とメンテナンス性に非常に優れ、レイアウトの自由度にも優れた低コストの車両用冷却装置を提供することができるという効果を奏するものであり、車両用冷却装置、特に車両に搭載される電子制御ユニット等のように発熱部を有する補機を空気流により冷却する車両用冷却装置全般に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の一実施形態に係る車両用冷却装置の要部平面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る車両用冷却装置の要部背面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る車両用冷却装置の要部を背面側方から見た斜視図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る車両用冷却装置で冷却される補機の装着状態を示す空気清浄器の側面図である。
【符号の説明】
【0054】
1 車両
1a バンパ・グリル開口部
2 エンジン(原動機、内燃機関)
11 ラジエータ(放熱器、面状体)
11a 液管
11b 放熱フィン
11c ラジエータ前面(面状体の前面)
12 ECU(電子制御ユニット、補機)
12a 前端面
12b 後端面
12c 表面温度が高くなる部位
13 エアクリーナ(空気清浄器)
13b 後端面
21 電動ファン(ファン)
22 ファンシュラウド
31 エアクリーナケース(放熱器のケース)
32 エアクリーナキャップ(放熱器のケース)
33 エアエレメント(フィルタ)
35 インレットダクト(空気吸入用のダクト)
35a 空気吸入口
Da 方向(面状体と交差する方向)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される原動機と、
前記車両に搭載されるとともに冷却液を通す液管によって面状体が形成され、前記面状体を通過する空気流によって前記液管を介し前記冷却液から放熱させる放熱器と、
前記車両に搭載され、車両前方側からの空気流によって冷却されるよう前記原動機よりも前記放熱器寄りに配置された補機と、を備えた車両用冷却装置。
【請求項2】
車両に搭載される原動機と、
前記車両に搭載されるとともに冷却液を通す液管によって面状体が形成され、前記面状体を通過する空気流によって前記液管を介し前記冷却液から放熱させる放熱器と、
前記車両に搭載され、車両前方側からの空気流によって冷却されるよう前記車両の前後方向で前記放熱器と同等の位置か前記放熱器より車両前方側に配置された補機と、を備えた車両用冷却装置。
【請求項3】
前記補機の前端が、車両前方側からの空気流を通過させる前記面状体より車両前方側に位置することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両用冷却装置。
【請求項4】
前記補機のうち表面温度が高くなる部位が前記補機のうち車両前方側に位置することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両用冷却装置。
【請求項5】
前記補機が、前記車両に搭載される電子制御ユニットであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両用冷却装置。
【請求項6】
前記補機が、前記放熱器の面状体の外周近傍に配置され、
前記放熱器を通過した空気流と前記補機の周りを通過する空気流とを分離するよう、前記放熱器の近傍に、前記補機の周りを通過する空気を吸入する空気清浄器が配置されたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両用冷却装置。
【請求項7】
前記補機の位置が前記空気清浄器の位置より車両前方側であることを特徴とする請求項6に記載の車両用冷却装置。
【請求項8】
前記空気清浄器に空気吸入用のダクトが装着され、該ダクトの空気吸入口が、前記補機の後部近傍に位置することを特徴とする請求項6に記載の車両用冷却装置。
【請求項9】
前記ダクトの空気吸入口が、前記補機に対し前記放熱器とは反対側に向かって開口していることを特徴とする請求項8に記載の車両用冷却装置。
【請求項10】
前記補機が、前記車両に搭載される電子制御ユニットであり、
該電子制御ユニットが、前記空気清浄器のケースに支持されていることを特徴とする請求項6に記載の車両用冷却装置。
【請求項11】
前記放熱器の近傍に設けられ、前記放熱器を通過する空気流を生じさせるファンと、
前記ファンの周囲で前記放熱器の片面側を覆うファンシュラウドと、を備え、
前記空気清浄器のケースが、前記ファンシュラウドと一体に形成されていることを特徴とする請求項6に記載の車両用冷却装置。
【請求項12】
前記空気清浄器のケースが、前記ファンの側方で上下方向に延びていることを特徴とする請求項11に記載の車両用冷却装置。
【請求項13】
前記空気清浄器のケースに前後方向に開閉可能なキャップが装着されたことを特徴とする請求項11または請求項12に記載の車両用冷却装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−101987(P2009−101987A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−218259(P2008−218259)
【出願日】平成20年8月27日(2008.8.27)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000002967)ダイハツ工業株式会社 (2,560)
【出願人】(000237592)富士通テン株式会社 (3,383)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】