説明

車両用冷却装置

【課題】車両の下方より回り込んだ熱風が滞留することに起因する熱交換性能の低下を抑制できる車両用冷却装置を提供する。
【解決手段】空気吸引口21が開口された車両の内部スペースに熱交換体2と送風機3が配置され、熱交換体2が内部を流れる冷媒と送風機3の吸引力によって空気吸引口21より吸引された冷却風との間で熱交換することによって冷媒を冷却する車両用冷却装置1Aであって、空気吸引口21と熱交換体2との間のスペースを上下方向に仕切る仕切ダクト7が設けられた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気調和装置の冷媒の冷却や動力装置の冷却を行う車両用冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の従来の車両用冷却装置としては、特許文献1に開示されたものがある。この車両用冷却装置100は、図6に示すように、車両のエンジンルームに配置された空調用コンデンサ101とラジエータ102と送風機103を有する。空調用コンデンサ101は、車室内の空調に利用する冷媒と冷却風との間で熱交換して冷媒を冷却する。ラジエータ102は、エンジンの冷却に利用する冷却水と冷却風との間で熱交換して冷却水を冷却する。
【0003】
空調用コンデンサ101の上下端の上流側と、空調用コンデンサ101とラジエータ102の下端等には、熱風回り込み防止ダクト104,105がそれぞれ設けられている。これにより、空調用コンデンサ101やラジエータ102の通過後の昇温した冷却風(以下、熱風という)が空調用コンデンサ101やラジエータ102の上下端の外側から回り込み、この回り込んだ熱風が再び空調用コンデンサ101等を通過し、熱交換性能が低下しないようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−35476号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記した車両用冷却装置100は、図7(a)に示すように、車両のエンジンルーム110に設置される。エンジンルーム110の前方にはバンパ111を境として上側空気吸引口112と下側空気吸引口113が開口されている。エンジンルーム110の下方には、車両用冷却装置100を通過した冷却風がエンジンルーム110内に滞留しないように開口部114が形成される。送風機103の吸引力によって上側空気吸引口112と下側空気吸引口113より冷却風が吸引され、この吸引された冷却風が空調用コンデンサ101とラジエータ102の順に通過し、開口部114等より外部に排出される。
【0006】
一方、図7(b)に示すように、送風機103は、モータ部120とモータ部120によって回転する羽根部121と、羽根部121の外周に配置され、モータ部120を支持するシュラウド122とから構成されている。シュラウド122には羽根部121の先端回転軌跡に沿って円形開口部122aが形成されている。このように円形開口部122aを形成することによって整流された送風による強力な吸引力が得られる。その一方で、円形開口部122aより外側エリアは送風による吸引力が弱い。特に、シュラウド122の四隅付近は、送風が滞留し易い。
【0007】
アイドリング時のように走行風がない場合には、空調用コンデンサ101及びラジエータ102を通過後の昇温した冷却風(以下、熱風という。)が車体の下方の開口部114より外部に出て、車体の前方に回り込む場合がある。すると、上側空気吸引口112からは冷却風が吸引されるが、下側空気吸引口113からは熱風が吸引されることになる。すると、下側空気吸引口113から吸引された熱風の内で吸引力の弱いエリアに吸引されたものは、図7(b)にて矢印で示すように、空気密度の関係で上方に移動し、熱風滞留エリアEが形成される。このように熱風が滞留すると、空調用コンデンサ101等の熱交換性能が低下するという問題がある。
【0008】
そこで、本発明は、前記した課題を解決すべくなされたものであり、車両の下方より回り込んだ熱風が滞留することに起因する熱交換性能の低下を抑制できる車両用冷却装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の発明は、空気吸込口が開口された車両の内部スペースに熱交換体と送風機が配置され、前記熱交換体が内部を流れる冷媒と前記送風機の吸引力によって前記空気吸込口より吸引された冷却風との間で熱交換することによって冷媒を冷却する車両用冷却装置であって、前記空気吸引口と前記熱交換体との間のスペースを上下方向に仕切る仕切部材が設けられたことを特徴とする。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1記載の車両用冷却装置であって、前記空気吸引口は、バンパを境として上下位置に設けられた上側空気吸引口と下側空気吸引口とを有することを特徴とする。
【0011】
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2記載の車両用冷却装置であって、前記熱交換体は、車室内の空調に利用する第1冷媒と冷却風との間で熱交換して第1冷媒を冷却する空調用空冷コンデンサ部と、車両の電動機の冷却に利用する第2冷媒と冷却風との間で熱交換して第2冷媒を冷却するサブラジエータとを備えたことを特徴とする。
【0012】
請求項4の発明は、請求項3記載の車両用冷却装置であって、空調用コンデンサは、車室内の空調に利用する第1冷媒と冷却風との間で熱交換して第1冷媒を冷却する空調用空冷コンデンサ部と、前記サブラジエータの第2冷媒中に配置され、第2冷媒と第1冷媒との間で熱交換して第1冷媒を冷却する空調用水冷コンデンサ部とを有し、第2冷媒が前記空調用水冷コンデンサ部、前記空調用空冷コンデンサ部の順に流れるよう構成されていることを特徴とする。
【0013】
請求項5の発明は、請求項3又は請求項4記載の車両用冷却装置であって、前記サブラジエータは上部に、前記空調用空冷コンデンサ部は下部に配置されており、前記サブラジエータと前記空調用空冷コンデンサ部の間を前記仕切部材が仕切っていることを特徴とする。
【0014】
請求項6の発明は、請求項1〜請求項5記載の車両用冷却装置であって、前記仕切部材は、仕切ダクトであることを特徴とする。
【0015】
請求項7の発明は、請求項5又は請求項6記載の車両用冷却装置であって、前記空調用空冷コンデンサ部が蒸発器としても作動できるよう構成されていると共に、前記仕切部材は、前記空気吸引口と前記サブラジエータ及び前記空調用空冷コンデンサ部との間のスペースを上下方向に仕切る仕切位置と、前記サブラジエータの前面を遮蔽する遮蔽位置との間で移動自在に設けられており、前記空調用空冷コンデンサ部が凝縮器として作動させる場合には、前記仕切部材を仕切位置に変移させ、前記空調用空冷コンデンサ部が蒸発器として作動させる場合には、前記仕切部材を遮蔽位置に変移させたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1の発明によれば、アイドリング時のように走行風がない場合、熱交換体を通過後の昇温した冷却風(以下、熱風という。)が車両の下方より空気吸引口に回り込む場合がある。このような状況では、空気吸引口の上側からは冷却風が、空気吸引口の下側からは熱風がそれぞれ吸引される。空気吸引口の下側から吸引された熱風の内で吸引力の弱いエリアに吸引されたものは空気密度の関係で上方に移動するが、仕切部材によって送風機のシュラウドの最上端の隅付近まで上昇できないため、滞留することなく熱交換体を通過する。一方、空気吸引口の上側から吸引された冷却風の内で吸引力の弱いエリアに吸引されたものは、シュラウドの最上端の隅付近に滞留する可能性があるが、その冷却風は昇温されていないものであり、熱交換体による熱交換の低下をあまり招来しない。以上より、車両の下方より回り込んだ熱風の滞留に起因する熱交換性能の低下を抑制できる。
【0017】
請求項2の発明によれば、車両の下方から回り込んだ熱風は、バンパによって上昇を規制され、確実に下側空気吸引口より吸引されるため、上側空気吸引口からは熱風が吸引されず、車両の下方より回り込んだ熱風の滞留に起因する熱交換性能の低下を確実に抑制できる。
【0018】
請求項3の発明によれば、エンジンと電動機の双方を動力源とするハイブリッド電気自動車や電動機のみを動力源とする電気自動車について、請求項1又は請求項2の発明の効果が得られる。
【0019】
請求項4の発明によれば、空調用コンデンサとして空調用空冷コンデンサ部のみならず空調用水冷コンデンサ部を有するものについても、請求項1の発明の効果が得られる。
【0020】
請求項5の発明によれば、請求項3又は請求項4の発明の効果に加え、第1冷媒と冷却風との温度差は、第2冷媒と冷却風との温度差に比べて大きいために、空調用空冷コンデンサ部に熱風が導かれても熱交換性能が大きく低下することはないが、その反面、サブラジエータに熱風が導かれた場合には熱交換性能が大きく低下することになるため、車両の下方より回り込んだ熱風の滞留に起因する熱交換性能の低下を極力抑制できる。
【0021】
請求項6の発明によれば、請求項1〜請求項5の発明の効果に加え、空気吸引口の下側から吸引された熱風と、空気吸引口の上側から吸引された冷却風が仕切ダクトを介して仕切られるため、熱風の熱が冷却風に伝達されることを極力防止できる。
【0022】
請求項7の発明によれば、請求項5又は請求項6の発明の効果に加え、空調用空冷コンデンサ部が凝縮器として作動させる場合(冷房運転時)には、前記したように、車両の下方より回り込んだ熱風の滞留に起因する熱交換性能の低下を抑制できる。その上、空調用空冷コンデンサ部が蒸発器として作動させる場合(暖房運転時)には、サブラジエータでは第2冷媒が冷却風によって冷却されず、空調用水冷コンデンサ部では高温の第2冷媒より第1冷媒が吸熱できるため、空調用水冷コンデンサ部での熱交換効率が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第1実施形態を示し、紙面左が車両前端部、紙面上下が重量方向上下で、エンジンルームに設置された車両用冷却装置の構成図である。
【図2】本発明の第1実施形態を示し、(a)は熱交換体を冷却風の流れの上流側より見た斜視図、(b)は熱交換体を冷却風の流れの下流側より見た斜視図である。
【図3】本発明の第1実施形態を示し、車両用冷却装置が組み込まれたシステムの要部構成図である。
【図4】本発明の第1実施形態を示し、(a)はアイドリング時にあって、車両用冷却装置に吸引された冷却風の流れを説明する側面図、(b)は車両用冷却装置に吸引された冷却風の流れを説明するための送風機等の正面図である。
【図5】本発明の第2実施形態を示し、紙面左が車両前端部、紙面上下が重量方向上下で、エンジンルームに設置された車両用冷却装置の構成図である。
【図6】従来例の車両用冷却装置の構成図である。
【図7】(a)は従来例の車両用冷却装置をエンジンルームに設置した状態を示す構成図、(b)は車両用冷却装置に吸引された冷却風の流れを説明するための送風機等の正面面である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0025】
(第1実施形態)
図1〜図5は本発明の第1実施形態を示し、図1は紙面左が車両前端部、紙面上下が重量方向上下で、エンジンルームに設置された車両用冷却装置の構成図、図2(a)は熱交換体を冷却風の流れの上流側より見た斜視図、図2(b)は熱交換体を冷却風の流れの下流側より見た斜視図、図3は車両用冷却装置が組み込まれたシステムの要部構成図、図4(a)はアイドリング時にあって、車両用冷却装置に吸引された冷却風の流れを説明する側面図、図4(b)は車両用冷却装置に吸引された冷却風の流れを説明するための送風機等の正面図である。
【0026】
図1に示すように、車両は、エンジン30と電動機31(図3に示す)を動力装置とするハイブリッド電気自動車であり、エンジンルーム20内にエンジン30が搭載されている。エンジンルーム20の前部には、空気吸引口21が開口されている。空気吸引口21は、バンパ22を境として上下位置に設けられた上側空気吸引口21aと下側空気吸引口21bから構成されている。上側空気吸引口21aにはグリル23が設置されている。エンジンルーム20のエンジン30の下方には、エンジンルーム20内の熱を逃がすための開口部24が開口されている。エンジンルーム20内で、且つ、空気吸引口21とエンジン30及び開口部24との間の位置には、冷却風ダクト25が設けられており、この冷却風ダクト25内に車両用冷却装置1Aが設置されている。
【0027】
図2(a)、(b)及び図3に詳しく示すように、車両用冷却装置1Aは、熱交換体2と送風機3とを有する。これら熱交換体2と送風機3は、空気吸引口21からの冷却風の流れに沿って配置されている。熱交換体2は、冷却風の流れ方向の同じ位置に設置された空調用コンデンサ4及びサブラジエータ5と、これらより下流位置に設置されたメインラジエータ6とから構成されている。空調用コンデンサ4は、車室内の空調に利用する第1冷媒(例えば二酸化炭素)と冷却風との間で熱交換して第1冷媒を冷却する空調用空冷コンデンサ部4Aと、サブラジエータ5の一方のタンク部5a内、つまり、第2冷媒中に配置され、第2冷媒と第1冷媒との間で熱交換して第1冷媒を冷却する空調用水冷コンデンサ部4B(図3に示す)とからなり、第2冷媒が空調用水冷コンデンサ部4B、空調用空冷コンデンサ部4Aの順に流れるよう構成されている。
【0028】
サブラジエータ5は、電動機31及び制御部品等の冷却に利用する第2冷媒(例えば冷却水)と冷却風との間で熱交換して第2冷媒を冷却する。サブラジエータ5と空調用空冷コンデンサ部4Aは、上記したように冷却風の流れ方向の同一位置に設置され、サブラジエータ5が上部に、空調用空冷コンデンサ部4Aが下部に隣接配置されている。サブラジエータ5と空調用空冷コンデンサ部4Aは、冷却風ダクト25の断面サイズとほぼ同じサイズであり、冷却風ダクト25内に隙間なく収容されている。
【0029】
メインラジエータ6は、エンジン30の冷却に利用する冷却水と冷却風との間で熱交換して冷却水を冷却する。メインラジエータ6は、冷却風ダクト25の断面サイズとほぼ同じサイズであり、冷却風ダクト25内に隙間なく収容されている。
【0030】
又、空調用コンデンサ4(空調用空冷コンデンサ部4A、空調用水冷コンデンサ部4B)、サブラジエータ5及びメインラジエータ6は、基本的構成がほぼ同じであり、偏平状のチューブと放熱フィンとが交互に積層されたコア部と、このコア部の両端に配置されたタンク部とから構成されている。そして、空調用空冷コンデンサ部4Aとサブラジエータ5とメインラジエータ6は、互いにブラケット等によって固定されている。尚、図4(a)、(b)では、熱交換体のチューブ、放熱フィン、タンク部(空調用水冷コンデンサ部4Bが収容されたタンク部5aを除く。)には、符号を付していない。
【0031】
空気吸引口21と熱交換体2との間のスペースには、そのスペースを上下方向に仕切る仕切部材である仕切ダクト7が設けられている。仕切ダクト7は、詳細には、上側空気吸引口21aと下側空気吸引口21bの間と、サブラジエータ5と空調用空冷コンデンサ部4Aとの間を仕切る位置に配置されている。仕切ダクト7は、中空部を有する部材であり、中空部に断熱材を充填しても良い。
【0032】
送風機3は、図4(b)に示すように、モータ部10と、モータ部10によって回転する羽根部11と、羽根部11の外周に配置され、モータ部10を支持するシュラウド12とから構成されている。シュラウド12には羽根部11の先端回転軌跡に沿って円形開口部12aが形成されている。シュラウド12に円形開口部12aが形成されるため、円形開口部12aのエリアでは強い吸引力が得られる一方で、円形開口部12aの外側では、弱い吸引力しか得られない。特に、シュラウド12の四隅付近では、吸引力が弱い。
【0033】
上記構成において、送風機3が駆動されると、上側空気吸引口21a及び下側空気吸引口21bより冷却風が冷却風ダクト25に吸引される。上側空気吸引口21aより吸引された冷却風は、サブラジエータ5及びメインラジエータ6の主に上部を通ってエンジンルーム20の図示しない開口部等より外部に排出される。下側空気吸引口21bより吸引された冷却風は、空調用空冷コンデンサ部4A及びメインラジエータ6の主に下部を通ってエンジンルーム20の下方の開口部24等より外部に排出される。このように冷却風が空調用空冷コンデンサ部4A、サブラジエータ5及びメインラジエータ6を通過する過程で、第1冷媒や第2冷媒が冷却風と熱交換して冷却される。又、これらを通過した冷却風は、昇温された冷却風(以下、熱風という。)となる。
【0034】
車両の走行中にあっては、図1に示すように、空調用空冷コンデンサ部4A、サブラジエータ5及びメインラジエータ6を通過後の熱風は、走行ラム圧によってエンジンルーム20の外部に排出され、熱風が再び上側空気吸引口21aや下側空気吸引口21bより入り込むことはない。従って、上側空気吸引口21aや下側空気吸引口21bからは常に冷却風のみが連続的に吸引される。
【0035】
アイドリング時のように走行風がない場合にあっては、図4(a)に示すように、空調用空冷コンデンサ部4A、サブラジエータ5及びメインラジエータ6を通過後の熱風が開口部24より車両の下方を回り込んで空気吸引口21に達する場合がある。車両の前方に回り込んだ熱風は、下側空気吸引口21bより吸い込まれる。つまり、上側空気吸引口21aからは冷却風が、下側空気吸引口21bからは熱風がそれぞれ吸引される。
【0036】
下側空気吸引口21bから吸引された熱風の内で吸引力の弱いエリアに吸引されたものは、図4(b)に示すように、空気密度の関係で上方に移動するが、仕切ダクト7によって冷却風ダクト25の最上方位置まで上昇できないため、シュラウド12の円形開口部12aの幅広位置までしか上昇できないことから滞留せずに空調用空冷コンデンサ部4A及びメインラジエータ6に向かって流れる。一方、上側空気吸引口21aから吸引された冷却風の内で吸引力の弱いエリアに吸引されたものは冷却風ダクト25の最上方位置の二隅付近で滞留する可能性があるが、その冷却風は昇温されていないものであり、サブラジエータ5及びメインラジエータ6による熱交換の低下をあまり招来しない。つまり、従来例のような熱風滞留エリアが形成されない。以上より、車両の下方より回り込んだ熱風の滞留に起因する熱交換性能の低下を抑制できる。
【0037】
空気吸引口21は、バンパ22を境として上下位置に設けられた上側空気吸引口21aと下側空気吸引口21bとから構成されているので、車両の下方から回り込んだ熱風は、バンパ22によって上昇を規制され、確実に下側空気吸引口21bより吸引されるため、上側空気吸引口21aからは熱風が吸引されず、車両の下方より回り込んだ熱風の滞留に起因する熱交換性能の低下を確実に抑制できる。
【0038】
サブラジエータ5は上部に、空調用空冷コンデンサ部4Aは下部に配置されており、サブラジエータ5と空調用空冷コンデンサ部4Aの間が仕切ダクト7で仕切られている。ここで、第1冷媒(例えば100℃)と冷却風(例えば30℃)との温度差は、第2冷媒(例えば60℃)と冷却風(例えば30℃)との温度差に比べて大きいために、空調用空冷コンデンサ部4Aに熱風(例えば50℃)が導かれても十分な温度差があることから熱交換性能が大きく低下することはないが、その反面、サブラジエータ5に熱風(例えば50℃)が導かれた場合には十分な温度差がないことから熱交換性能が大きく低下することになるため、車両の下方より回り込んだ熱風の滞留に起因する熱交換性能の低下を極力抑制できる。
【0039】
仕切部材は、仕切ダクト7にて構成されている。従って、下側空気吸引口21bから吸引された熱風と、上側空気吸引口21aから吸引された冷却風が仕切ダクト7を介して仕切られるため、熱風の熱が冷却風に伝達されることを極力防止できる。
【0040】
(第2実施形態)
図5は本発明の第2実施形態を示し、紙面左が車両前端部、紙面上下が重量方向上下で、エンジンルームに設置された車両用冷却装置の構成図である。
【0041】
図5において、この第2実施形態の車両用冷却装置1Bは、前記第1実施形態のものと比較するに、空調用空冷コンデンサ部4Aが蒸発器としても作動できるよう構成されていると共に、仕切部材である仕切ダクト7Aは、空気吸引口21とサブラジエータ5及び空調用空冷コンデンサ部4Aとの間のスペースを上下方向に仕切る仕切位置(図5の仮想性位置)と、サブラジエータ5の前面を遮蔽する遮蔽位置(図5の実線位置)との間で移動自在に設けられている。そして、空調用空冷コンデンサ部4Aが凝縮器として作動させる場合には、仕切ダクト7Aを仕切位置に変移させ、空調用空冷コンデンサ部4Aが蒸発器として作動させる場合には、仕切ダクト7Aを遮蔽位置に変移させる。
【0042】
他の構成は、前記第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。尚、図面の同一構成箇所には同一符号を付して明確化を図る。
【0043】
このように構成したので、空調用空冷コンデンサ部4Aが凝縮器として作動させる場合(冷房運転時)には、前記第1実施形態で説明したように、車両の下方から回り込んだ熱風の滞留に起因する熱交換性能の低下を抑制できる。その上、空調用空冷コンデンサ部4Aが蒸発器として作動させる場合(暖房運転時)には、サブラジエータ5では第2冷媒が冷却風によって冷却されず、空調用水冷コンデンサ部4Bでは高温の第2冷媒より第1冷媒が吸熱できるため、空調用水冷コンデンサ部4Bでの熱交換効率が向上する。
【0044】
(その他)
前記第1及び第2実施形態では、車両用冷却装置1A,1Bとして空調用コンデンサ4の他にメインラジエータ6とサブラジエータ5を有する場合(エンジンと電動機の双方を動力源とするハイブリッド電気自動車)について説明したが、空調用コンデンサ4とサブラジエータ5のみを有する場合(電動機のみを動力源とする電気自動車)についても、又、空調用コンデンサ4とメインラジエータ6のみを有する場合(エンジン自動車)についても本発明を適用できる。
【0045】
前記第1及び第2実施形態では、空調用コンデンサ4が空調用空冷コンデンサ部4Aと空調用水冷コンデンサ部4Bを有するものについて説明したが、空調用空冷コンデンサ部4Aのみを有するものについても発明を適用できることはもちろんである。
【符号の説明】
【0046】
1A,1B 車両用冷却装置
2 熱交換体
3 送風機
4 空調用コンデンサ
4A 空調用空冷コンデンサ部
4B 空調用水冷コンデンサ部
5 サブラジエータ
7,7A 仕切ダクト(仕切部材)
21 空気吸引口
21a 上側空気吸引口
21b 下側空気吸引口
22 バンパ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気吸込口(21)が開口された車両の内部スペースに熱交換体(2)と送風機(3)が配置され、前記熱交換体(2)が内部を流れる冷媒と前記送風機(3)の吸引力によって前記空気吸引口(21)より吸引された冷却風との間で熱交換することによって冷媒を冷却する車両用冷却装置(1A),(1B)であって、
前記空気吸引口(21)と前記熱交換体(2)との間のスペースを上下方向に仕切る仕切部材(7),(7A)が設けられたことを特徴とする車両用冷却装置(1A),(1B)。
【請求項2】
請求項1記載の車両用冷却装置(1A),(1B)であって、
前記空気吸引口(21)は、バンパ(22)を境として上下位置に設けられた上側空気吸引口(21a)と下側空気吸引口(21b)とを有することを特徴とする車両用冷却装置(1A),(1B)。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の車両用冷却装置(1A),(1B)であって、
前記熱交換体(2)は、車室内の空調に利用する第1冷媒と冷却風との間で熱交換して第1冷媒を冷却する空調用空冷コンデンサ部(4A)と、車両の電動機(31)の冷却に利用する第2冷媒と冷却風との間で熱交換して第2冷媒を冷却するサブラジエータ(5)とを備えたことを特徴とする車両用冷却装置(1A),(1B)。
【請求項4】
請求項3記載の車両用冷却装置(1A),(1B)であって、
空調用コンデンサ(4)は、車室内の空調に利用する第1冷媒と冷却風との間で熱交換して第1冷媒を冷却する空調用空冷コンデンサ部(4A)と、前記サブラジエータ(5)の第2冷媒中に配置され、第2冷媒と第1冷媒との間で熱交換して第1冷媒を冷却する空調用水冷コンデンサ部(4B)とを有し、第2冷媒が前記空調用水冷コンデンサ部(4B)、前記空調用空冷コンデンサ部(4A)の順に流れるよう構成されていることを特徴とする車両用冷却装置(1A),(1B)。
【請求項5】
請求項3又は請求項4記載の車両用冷却装置(1A),(1B)であって、
前記サブラジエータ(5)は上部に、前記空調用空冷コンデンサ部(4A)は下部に配置されており、前記サブラジエータ(5)と前記空調用空冷コンデンサ部(4A)の間を前記仕切部材(7),(7A)が仕切っていることを特徴とする車両用冷却装置(1A),(1B)。
【請求項6】
請求項1〜請求項5記載の車両用冷却装置(1A),(1B)であって、
前記仕切部材は、仕切ダクト(7),(7A)であることを特徴とする車両用冷却装置(1A),(1B)。
【請求項7】
請求項5又は請求項6記載の車両用冷却装置(1B)であって、
前記空調用空冷コンデンサ部(4A)が蒸発器としても作動できるよう構成されていると共に、
前記仕切部材(7),(7A)は、前記空気吸引口(21)と前記サブラジエータ(5)及び前記空調用空冷コンデンサ部(4A)との間のスペースを上下方向に仕切る仕切位置と、前記サブラジエータ(5)の前面を遮蔽する遮蔽位置との間で移動自在に設けられており、
前記空調用空冷コンデンサ部(4A)が凝縮器として作動させる場合には、前記仕切部材(7),(7A)を仕切位置に変移させ、
前記空調用空冷コンデンサ部(4A)が蒸発器として作動させる場合には、前記仕切部材(7),(7A)を遮蔽位置に変移させたことを特徴とする車両用冷却装置(1B)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−173357(P2010−173357A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−15364(P2009−15364)
【出願日】平成21年1月27日(2009.1.27)
【出願人】(000004765)カルソニックカンセイ株式会社 (3,404)
【Fターム(参考)】