説明

車両用制御装置

【課題】運転者が車両の走行中に受ける違和感を抑制することができる車両用制御装置を提供することを目的とする。
【解決手段】車両1が搭載する内燃機関10の機関回転速度変化と当該車両1の車速変化とが比例関係にない場合に、機関回転速度の変化に応じて内燃機関10の機関音を調節可能であることを特徴とする。したがって、例えば、機関回転速度が増加しているものの車速が上昇せずほぼ一定のままである場合に、機関回転速度の変化にあわせて機関音が調節されるので、運転者が車両の走行中に受ける違和感を抑制することができる車両用制御装置を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用制御装置に関し、特に、車両に搭載される内燃機関の機関音を制御する車両用制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
乗用車、トラックなどの車両に搭載される従来の車両用制御装置として、例えば、特許文献1に記載のエンジン音強調装置は、加速時に車両の速度増加と内燃機関の機関回転速度増加とが比例的に連動しない車両において、機関回転速度の変動にかかわらず車両の速度増加に基づいて、内燃機関のエンジン音を大きくするエンジン音調整手段を備える。ここで、運転者が車両から感じる加速感は、実際の車速の変化だけでなく、エンジン音等によっても異なる。これにより、この特許文献1に記載のエンジン音強調装置は、車両の速度増加と内燃機関の機関回転速度増加とが比例的に連動しない場合にも、車両の速度増加に応じてエンジン音が強調されることで、車両の運転者が適正な加速感を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−83818号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述した特許文献1に記載されているエンジン音強調装置では、例えば、アクセル開度の増加に伴った変速であるいわゆるパワーオンダウンシフト時において上記のように車速の上昇に伴ってエンジン音を調整しただけでは、運転者が車両の走行中に違和感を受ける場合があった。
【0005】
そこで本発明は、運転者が車両の走行中に受ける違和感を抑制することができる車両用制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明による車両用制御装置は、車両が搭載する内燃機関の機関回転速度変化と当該車両の車速変化とが比例関係にない場合に、前記機関回転速度の変化に応じて前記内燃機関の機関音を調節可能であることを特徴とする。
【0007】
また、上記車両用制御装置は、前記車両に搭載される変速機の変速比が増加する側への変速中に前記機関音を相対的に大きくするように構成してもよい。
【0008】
また、上記車両用制御装置は、前記車両に対する加速要求操作の操作量の増加に伴った前記変速中に前記機関音を相対的に大きくするように構成してもよい。
【0009】
また、上記車両用制御装置は、前記車両に搭載される変速機の変速比が予め設定される所定変速比幅より大きく変更される場合に前記機関音を相対的に大きくするように構成してもよい。
【0010】
また、上記車両用制御装置は、前記車両に搭載される変速機の変速比が飛び段変速によって大きく変更される場合に前記機関音を相対的に大きくするように構成してもよい。
【0011】
また、上記車両用制御装置は、前記機関回転速度の変化量が予め設定される所定変化量より大きいと予測される場合に前記機関音を相対的に大きくするように構成してもよい。
【0012】
また、上記車両用制御装置は、前記機関回転速度の変化開始時点から変化終了時点までの期間に前記機関音を相対的に大きくするように構成してもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る車両用制御装置によれば、車両が搭載する内燃機関の機関回転速度変化と当該車両の車速変化とが比例関係にない場合に、機関回転速度の変化に応じて内燃機関の機関音を調節可能であるので、運転者が車両の走行中に受ける違和感を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、本発明の実施形態1に係るエンジン音制御装置を適用した車両を示す概略構成図である。
【図2】図2は、本発明の実施形態1に係るエンジン音制御装置の概略構成図である。
【図3】図3は、本発明の実施形態1に係るエンジン音制御装置のエンジン音制御の一例を示すタイムチャートである。
【図4】図4は、本発明の実施形態1に係るエンジン音制御装置のエンジン音制御の一例を説明するフローチャートである。
【図5】図5は、本発明の実施形態2に係るエンジン音制御装置のエンジン音制御の一例を説明するフローチャートである。
【図6】図6は、本発明の変形例に係るエンジン音制御装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明に係る車両用制御装置の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、或いは実質的に同一のものが含まれる。
【0016】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係るエンジン音制御装置を適用した車両を示す概略構成図、図2は、本発明の実施形態1に係るエンジン音制御装置の概略構成図、図3は、本発明の実施形態1に係るエンジン音制御装置のエンジン音制御の一例を示すタイムチャート、図4は、本発明の実施形態1に係るエンジン音制御装置のエンジン音制御の一例を説明するフローチャートである。
【0017】
本実施形態に係る車両用制御装置としてのエンジン音制御装置100は、図1に示すように、乗用車、トラックなどの車両1に搭載され、この車両1に搭載される変速機3を制御するものである。このエンジン音制御装置100は、動力発生手段が発生させる動力がトルクコンバータ2を介して入力される変速機3を搭載する車両1に適用されるものである。すなわち、車両1は、本実施形態のエンジン音制御装置100を備える。
【0018】
ここでまず、車両1は、図1に示すように、内燃機関としてのエンジン10を動力発生源として走行する。本実施形態のエンジン10は、例えば、空気と燃料との混合気の燃焼に伴ってシリンダボア内に往復運動可能に設けられるピストンが2往復する間に、吸気行程、圧縮行程、膨張行程及び排気行程からなる一連の4行程を行う、いわゆる4サイクルエンジンである。この実施形態において、エンジン10は、ガソリンを燃料とするレシプロ式の火花点火式内燃機関であるが、エンジン10はこれに限定されるものではない。エンジン10は、例えば、LPGやアルコールを燃料とする火花点火式内燃機関であってもよいし、いわゆるロータリー式の火花点火式内燃機関であってもよいし、ディーゼル機関であってもよい。また、車両1は、動力発生源として、エンジン10に加えて電動モータを備えるハイブリッド車両であってもよい。
【0019】
車両1は、内燃機関としてのエンジン10と、トルクコンバータ2と、変速機3と、プロペラシャフト4と、デファレンシャルギヤ5と、後輪駆動軸6と、車輪(前輪)7F及び車輪(後輪)7Rと、制動装置8とを備える。
【0020】
エンジン10は、動力発生手段であり、車両1に搭載され、駆動操作部材としてのアクセルペダル10aの操作に応じて車両1の各車輪7Rに駆動力を発生させるものである。エンジン10は、車両1の進行方向(図1中の矢印Y方向)前方に搭載されて、トルクコンバータ2、変速機3、プロペラシャフト4、デファレンシャルギヤ5、後輪駆動軸6を介して、左右の車輪7Rを駆動する。そして、左右の車輪7Fは、車両1の操舵輪となる。このように、車両1は、いわゆるFR(Front engine Rear drive)の駆動形式を採用する。なお、本実施形態に係るエンジン音制御装置100は、駆動形式に関わらずエンジン10を備える種々の駆動形式の車両に適用できる。
【0021】
トルクコンバータ2は、流体クラッチの一種であり、エンジン10の出力側に設けられ、エンジン10から出力された動力を、流体としての作動油を介して、あるいは、直接に伝達するものである。トルクコンバータ2は、例えば、ロックアップ機構を有するものがあり、エンジン10からの出力トルク(駆動力)を所定のトルク比で増加させて、あるいはそのままの出力トルクで、変速機3に伝達する。つまり、エンジン10が発生する動力は、トルクコンバータ2を介して変速機3に入力される。
【0022】
変速機3は、エンジン10の出力側に設けられ、エンジン10の回転出力が伝達されこのエンジン10の出力回転速度を変速するものである。言い換えれば、変速機3は、エンジン10からの駆動力、すなわち出力トルクを車両1の走行状態に応じた最適の条件で路面に伝達するために、エンジン10の出力側に設けられている。
【0023】
変速機3は、いわゆる自動変速機である。変速機3は、変速機3に入力される入力回転速度と変速機3から出力される出力回転速度との比である変速比を無段階(連続的)に変更可能な無段変速機(CVT:Continuously Variable Transmission)であってもよいし、変速比を段階的(不連続)に変更可能な有段変速機(AT:Automatic Transmission)であってもよい。ここで、変速機3の変速比は、変速機3への入力回転速度と変速機3からの出力回転速度との回転速度比(回転数比)であり、例えば、[変速機3への入力回転速度/変速機3からの出力回転速度]で算出することができる。そして、有段変速機には、例えば、複数の遊星歯車装置とクラッチとを組み合わせて構成される多段式の有段変速機などがある。この有段変速機は、複数の変速段を有しており、後述するように種々の運転状態に応じて複数の変速段のうちの1つが自動的に選択されることで、選択された変速段に応じた所定の変速比でエンジン10の出力回転速度を変速することができる。一方、無段変速機には、例えば、トロイダル式の無段変速機やベルト式の無段変速機などがある。トロイダル式の無段変速機は、入力側の回転部材である入力ディスクと出力側の回転部材である出力ディスクとの間に挟み込んだ伝達部材としてのパワーローラを介して各ディスクの間でトルクを伝達すると共に、パワーローラを傾転させて変速比を変化させるものである。ベルト式の無段変速機は、エンジン10からの駆動力が伝達される入力側の回転部材であるプライマリプーリ及びプライマリプーリに伝達された駆動力を変化させて出力する出力側の回転部材であるセカンダリプーリと、このプライマリプーリに伝達された駆動力をセカンダリプーリに伝達する伝達部材としてのベルトとにより構成され、ベルトとプーリとの接触半径を変化させて変速比を変化させるものである。なお、無段変速機には、この他にもハイブリッド車両に設けられ複数の遊星歯車装置などからなる無段式の変速機構などがある。
【0024】
ここで、本実施形態の変速機3は、特に断りの無い限り変速比を段階的(不連続)に変更可能な有段変速機であるものとして説明する。なお、変速機3は、無段変速機を用いた場合であっても、変速比をステップ状に区切った場合には、有段変速機を用いた場合と同様に変速比を段階的(不連続)に変更することも可能である。
【0025】
プロペラシャフト4は、変速機3から出力された動力を後側の車輪(後輪)7R側に伝達するものである。プロペラシャフト4は、デファレンシャルギヤ5を介して左右の後輪駆動軸6に連結されている。後輪駆動軸6には、左右の後輪となる車輪7Rが連結されている。車両1は、上記のように構成される動力伝達系統を介して、エンジン10の出力トルクが各車輪7Rに伝達される。
【0026】
制動装置8は、ブレーキペダル8aの操作に応じて車両1の車輪7F、7Rに制動力を発生させるものである。各車輪7F、7Rには、制動装置8の油圧制動部8bがそれぞれ設けられている。また、制動装置8を構成するマスタシリンダ8cと、油圧制動部8bのホイールシリンダ8dとを接続する作動液の液圧系には、運転者によるブレーキペダル8aのブレーキ操作(制動操作)とは別にホイールシリンダ8d内の液圧を増減し、ブレーキパッドやブレーキロータなどからなる油圧制動部8bを介して各車輪7F、7Rに付与する制動力を制御するブレーキアクチュエータ8eが設けられている。車両1は、上記のように構成される制動装置8により車輪7F、7Rに制動力が発生する。
【0027】
ところで、図1に示すように、車両1にはマイクロコンピュータを中心として構成され、エンジン10の各部を制御可能な電子制御ユニット(ECU:Electronic Control Unit)51が搭載されている。ECU51は、エンジン10、変速機3、制動装置8のブレーキアクチュエータ8eなどの車両1の各部に電気的に接続されており、これら車両1の各部を制御可能である。このECU51は、エンジン10の燃料噴射弁の燃料噴射時期や点火プラグの点火時期、電子スロットル装置のスロットル開度(スロットル弁が全開とされた場合のスロットル開度を100%とする)などを制御可能となっており、検出した吸入空気量、吸気温度、吸気圧(吸気管負圧)、スロットル開度、アクセル開度、エンジン回転数、エンジン冷却水温などのエンジン運転状態に基づいて燃料噴射量、噴射時期、点火時期、スロットル開度などを決定している。
【0028】
すなわち、エンジン10の吸気管の空気流動方向上流側にはエアフローセンサ52及び吸気温センサ53が装着され、また、エンジン10のサージタンクには吸気圧センサ54が設けられており、計測した吸入空気量、吸気温度、吸気圧(吸気管負圧)をECU51に出力している。
【0029】
また、エンジン10の電子スロットル装置にはスロットル開度センサ55が装着されており、現在のスロットル開度をECU51に出力している。ここで、ECU51は、検出されたスロットル開度や吸入空気量に基づいて内燃機関負荷としてのエンジン負荷(負荷率)を算出することができる。
【0030】
アクセルペダル10aにはアクセル開度センサ56が設けられており、アクセル開度センサ56は、現在のアクセル開度(アクセルが全開とされた場合のアクセル開度を100%とする)をECU51に出力している。なお、このアクセル開度センサ56は、運転者の車両1に対する加速の要求の有無及び運転者の車両1に対する加速の要求量を判定するためのパラメータとして、エンジン10が搭載された車両1のアクセルペダル10aの踏み込みに応じたアクセル開度を検出するものである。すなわち、アクセル開度センサ56が検出するアクセル開度は、運転者による車両1に対する加速要求操作の操作量に相当する。さらに言えば、アクセル開度センサ56が検出するアクセル開度は、運転者による車両1に対する加速要求に応じた駆動力の要求操作の操作量に相当する。つまり、アクセル開度センサ56が検出するアクセル開度は、運転者が車両1に要求する要求駆動力に応じた値に相当する。
【0031】
さらに、エンジン10のクランクシャフトにはクランク角センサ57が設けられ、検出したクランク角度をECU51に出力し、ECU51はクランク角度に基づいて各気筒における吸気行程、圧縮行程、膨張行程、排気行程を判別すると共に、エンジン回転数を算出する。なおここで、エンジン回転数は、言い換えれば、エンジン10のクランクシャフトの回転速度に対応し、このクランクシャフトの回転速度が高くなれば、クランクシャフトの回転数、すなわち、エンジン10のエンジン回転数も高くなる。
【0032】
また、エンジン10のシリンダブロックにはエンジン冷却水温を検出する水温センサ58が設けられており、検出したエンジン冷却水温をECU51に出力している。また、エンジン10の各燃料噴射弁に連通するデリバリパイプには燃料圧力を検出する燃圧センサ59が設けられており、検出した燃料圧力をECU51に出力している。
【0033】
一方、エンジン10の排気管には、三元触媒の排気ガス流動方向上流側にエンジン10の空燃比を検出するA/Fセンサ60、排気ガス流動方向下流側に酸素センサ61が設けられている。A/Fセンサ60は、三元触媒に導入される前の排気ガスの排気ガス空燃比を検出し、検出した空燃比をECU51に出力し、酸素センサ61は、三元触媒から排出された後の排気ガスの酸素濃度を検出し、検出した酸素濃度をECU51に出力している。このA/Fセンサ60により検出された空燃比(推定空燃比)は、吸入空気と燃料とからなる混合ガスの空燃比(理論空燃比)をフィードバック制御するために用いられる。すなわち、A/Fセンサ60は、排気ガス中の酸素濃度と未燃ガス濃度から排気空燃比をリッチ域からリーン域までの全域にわたり検出し、これをECU51にフィードバックすることにより燃料噴射量を補正し、燃焼を運転状態に合わせた最適な燃焼状態に制御可能となる。
【0034】
また、車両1の各車輪7F、7Rの近傍には、それぞれ車輪速度センサ62が設けられており、検出した各車輪7F、7Rの回転速度をECU51に出力している。ECU51は、各車輪速度センサ62により検出される各車輪7F、7Rの回転速度に基づいて、車両1の車速を算出することができる。なお、ECU51は、車両1の車速を車輪速度センサ62の検出結果ではなく、例えば後述の出力回転数センサ65による検出結果に基づいて算出してもよい。
【0035】
また、ブレーキペダル8aにはブレーキペダルセンサ63が設けられており、ブレーキペダルセンサ63は、検出したブレーキ操作のON/OFF、ペダルストロークやペダル踏力をECU51に出力している。なお、このブレーキペダルセンサ63は、運転者によるブレーキペダル8aの操作、すなわち、ブレーキ操作を検出するものである。
【0036】
また、変速機3の入力側(エンジン10側)には、入力回転数センサ64が設けられており、検出した変速機3への入力回転数(入力回転速度)をECU51に出力している。変速機3の出力側(車輪(後輪)7R側)には、出力回転数センサ65が設けられており、検出した変速機3からの出力回転数(出力回転速度)をECU51に出力している。なお、この変速機3への入力回転数は、基本的には、エンジン10の出力回転数であるエンジン回転数と対応している。
【0037】
したがって、ECU51は、燃料圧力が所定圧力となるようにエンジン10の高圧燃料ポンプを駆動すると共に、検出した吸入空気量、吸気温度、吸気圧、スロットル開度、アクセル開度、エンジン回転数、エンジン冷却水温などのエンジン運転状態に基づいて燃料噴射量(燃料噴射期間)、噴射時期、点火時期などを決定し、エンジン10の燃料噴射弁及び点火プラグを駆動して燃料噴射及び点火を実行する。また、ECU51は、検出した排気ガスの酸素濃度をフィードバックして空燃比がストイキ(理論空燃比)となるように燃料噴射量を補正している。
【0038】
このとき、ECU51は、エンジン10と変速機3とを組み合わせて車両1の駆動力を制御する。ECU51は、エンジン10の運転を制御可能であると共に変速機3の変速比(又は変速段)を制御可能である。基本的には、ECU51は、運転者による車両1に対する加速要求操作(駆動力要求操作)の操作量に相当するアクセル開度(アクセル操作量)に基づいて、エンジン10と変速機3とを協調制御し、エンジン10が発生させる機関トルクとしてのエンジントルクと機関回転速度としてのエンジン回転数とを制御して車両1の駆動力を制御する。なお、このアクセル開度センサ56が検出するアクセル開度は、上述したように運転者が車両1に要求する要求駆動力に応じた値に相当する。
【0039】
具体的には、ECU51は、図1に示すように、機能概念的に、機関制御手段としてのエンジン制御部51dと、変速制御手段としての変速機制御部51eとが設けられている。
【0040】
ここで、このECU51は、マイクロコンピュータを中心として構成され、処理部51a、記憶部51b及び入出力部51cを有し、これらは互いに接続され、互いに信号の受け渡しが可能になっている。入出力部51cにはエンジン10、変速機3を含む車両1の各部を駆動する不図示の駆動回路、上述した各種センサが接続されており、この入出力部51cは、これらのセンサ等との間で信号の入出力を行なう。また、記憶部51bには、エンジン10、変速機3を含む車両1の各部を制御するコンピュータプログラムが格納されている。この記憶部51bは、ハードディスク装置や光磁気ディスク装置、またはフラッシュメモリ等の不揮発性のメモリ(CD−ROM等のような読み出しのみが可能な記憶媒体)や、RAM(Random Access Memory)のような揮発性のメモリ、あるいはこれらの組み合わせにより構成することができる。処理部51aは、不図示のメモリ及びCPU(Central Processing Unit)により構成されており、少なくとも上述のエンジン制御部51d、変速機制御部51eを有している。ECU51による各種制御は、各部に設けられたセンサによる検出結果に基づいて、処理部51aが前記コンピュータプログラムを当該処理部51aに組み込まれたメモリに読み込んで演算し、演算の結果に応じて制御信号を送ることにより実行される。その際に処理部51aは、適宜記憶部51bへ演算途中の数値を格納し、また格納した数値を取り出して演算を実行する。なお、このエンジン10を含む車両1の各部を制御する場合には、前記コンピュータプログラムの代わりに、ECU51とは異なる専用のハードウェアによって制御してもよい。
【0041】
そして、エンジン制御部51dは、種々のセンサの検出結果に基づいてエンジン10の運転を制御し、このエンジン10の出力制御を行うものである。エンジン制御部51dは、基本的には、種々のセンサの検出結果に基づいて目標制御量を算出し、この目標制御量に基づいて、エンジン10の燃料噴射弁の燃料噴射時期や点火プラグの点火時期、電子スロットル装置のスロットル開度などを制御し、エンジン10から取り出される出力(エンジントルク、エンジン回転数)を制御する。
【0042】
エンジン制御部51dは、例えば、アクセル開度センサ56が検出する加速要求操作の操作量(加速要求量)、言い換えれば運転者が要求する要求駆動量に応じたアクセル開度と、車輪速度センサ62が検出する現在の車両1の車速などに基づいて、運転者が車両1に要求する要求駆動力に対応した車両1の目標駆動力(車両1が目標とする駆動力)を算出する。なお、この目標駆動力は、車速の増加にともなって減少し、アクセル開度の増加にともなって増加する。
【0043】
そして、エンジン制御部51dは、例えば、目標駆動力と車速とに基づいて、目標駆動力を得るためのエンジン10の目標の出力、すなわち、目標出力を算出し、その目標出力を最小の燃費で達成する目標制御量、例えば、目標のエンジントルク及び目標のエンジン回転数を算出する。そして、エンジン制御部51dは、エンジン10の燃料噴射弁の燃料噴射タイミングや点火プラグの点火時期、電子スロットル装置のスロットル開度などを制御してエンジン10から取り出される出力を制御し、エンジン10のエンジントルクが目標のエンジントルクとなり、エンジン回転数が目標のエンジン回転数となるようにエンジン10の運転を制御し、車両1の駆動力を制御する。
【0044】
変速機制御部51eは、種々のセンサの検出結果に基づいて変速機3の駆動を制御し、変速機3の変速制御を行うものである。変速機制御部51eは、基本的には、種々のセンサの検出結果に基づいて目標制御量を算出し、この目標制御量に基づいて、変速機3の各部、例えば、クラッチなどの油圧制御部に供給される油圧などを制御し、変速機3に入力される入力回転速度と変速機3から出力される出力回転速度との比である変速比を制御する。
【0045】
変速機制御部51eは、複数の変速線(不図示)に基づいて、変速機3の各部、例えば、クラッチなどの油圧制御部に供給される油圧などを制御し、変速機3に入力される入力回転速度と変速機3から出力される出力回転速度との比である変速比を制御する。ここでは、変速機3が有段変速機であるので、変速機制御部51eは、複数の変速線に基づいて、変速機3の各部を制御し、所定の変速比に対応した変速段に制御する。
【0046】
さらに言えば、変速機制御部51eは、車両1に対する加速要求操作の操作量としてのアクセル開度と車両1の車速とに応じて定められた複数の変速線に基づいて、変速機3の変速制御を実行する。変速機制御部51eに用いられる変速線としては、変速機3における変速比が減少する側への変速、すなわち、アップシフトを行なうべきアクセル開度と車速との関係を規定したアップシフト線、変速機3における変速比が増加する側への変速、すなわち、ダウンシフトを行なうべきアクセル開度と車速とを規定したダウンシフト線などがある。これら各変速線は、例えば、アクセル開度と、車両1の車速と、変速機3の変速段との関係を記述した変速マップ(変速線図)において、異なる変速段が選択されるアクセル開度と車速との組み合わせの領域の境界線をなすものである。この変速機制御部51eに用いられる変速線は、車速、アクセル開度と変速段との関係が変速マップ(変速線図)として予め設定され、例えば、記憶部51bに格納されている。
【0047】
そして、変速機制御部51eは、アクセル開度センサ56が検出するアクセル開度もしくは車輪速度センサ62が検出する車速がアップシフト線を通過するように変化した場合に変速機3を制御してN速変速段(Nは現在の変速段)からN+1速変速段へのアップシフトを実行し、同様に、アクセル開度もしくは車速がダウンシフト線を通過するように変化した場合に変速機3を制御してN速変速段からN−1速変速段へのダウンシフトを実行する。つまり、変速機制御部51eは、変速マップ(変速線図)に基づいて、アクセル開度センサ56が検出した現在の実際のアクセル開度と、車輪速度センサ62が検出した現在の実際の車速とから変速機3の変速段(ギヤ段)を決定する。そして、変速機制御部51eは、この決定された変速段に基づいて変速指令を生成し変速機3に出力して変速機3の変速制御を実行し、すなわち、変速機3の変速段を上記の決定された変速段に制御する。
【0048】
ところで、上述した車両1では、例えば、変速時などにおいて、運転者が車両1の走行中に違和感を受けるおそれがある。すなわち、車両1では、例えば、アクセル開度の増加に伴った変速であるいわゆるパワーオンダウンシフト時に、ダウンシフトに伴うエンジン10の回転変化によりエンジン10の出力エンジントルクのイナーシャ(回転慣性)損失が大きくなる傾向にあり、つまり、エンジン10の回転変化に伴ってエンジンイナーシャトルクとして使われる分の出力エンジントルクが大きくなり、この結果、車輪7Rに伝達される出力軸トルク(駆動トルク)が小さくなり車両1の車輪7Rと路面との接触点に作用する駆動力が低下するおそれがある。上記のようなエンジン回転変化に伴ったイナーシャトルクによるエンジントルクの損失によって駆動力の低下が生じた場合、例えば、静粛性の高い車両1では運転者がエンジン回転数の上昇を感じにくく、これにより、出力エンジントルクがエンジンイナーシャトルクとして使われていることが感じられにくく、この結果、運転者がアクセルペダル10aを踏み込んでアクセル開度を大きくしているにもかかわらず上記のような駆動力の落ち込みを体感しやすくなり、運転者が車両1の挙動から違和感を受けやすい傾向にあった。例えば、いわゆる過給エンジンでは特に加速初期のレスポンスが悪い場合があり、駆動力の落ち込みを顕著に体感するおそれがある。
【0049】
またこの場合、例えば、仮に車両1の速度増加に基づいてエンジン10のエンジン音を大きくする構成を備えていても、車両1の車輪7Rと路面との接触点に作用する駆動力が落ち込むことで車速がほとんど上がらないことから、結果的にエンジン音が大きくならず、やはり運転者が車両1の走行中に受ける違和感は抑制されにくい。
【0050】
そこで、本実施形態の車両1が備える車両用制御装置としてのエンジン音制御装置100は、図1、図2に示すように、車両1が搭載するエンジン10のエンジン回転数(機関回転速度)変化とこの車両1の車速変化とが比例関係にない場合に、エンジン回転数の変化に応じてエンジン10の機関音であるエンジン音を調節可能とすることで、運転者が車両1の走行中に受ける違和感を抑制している。
【0051】
具体的には、本実施形態のエンジン音制御装置100は、図1に示すように、エンジン音調節装置110と、エンジン音制御部51fとを含んで構成される。
【0052】
エンジン音調節装置110は、エンジン10のエンジン音を調節するものである。ここで、エンジン10のエンジン音とは、典型的には、エンジン10が発する動作音であり、エンジン10の燃焼室で発生する燃焼音、エンジン10の燃焼室に空気を吸気する吸気通路で発生する吸気音、エンジン10の燃焼室から燃焼ガスを排気する排気通路において発生する排気音等のエンジン10の運転に伴って発生する音である。エンジン音調節装置110は、エンジン10の運転に伴って発生する音の大きさであるエンジン音圧レベルを調節することでエンジン音を調節する。本実施形態のエンジン音調節装置110は、エンジン10の吸気通路に設けられ、エンジン10の吸気音圧レベルを調節することでエンジン10のエンジン音を調節する。このエンジン音調節装置110は、エンジン音制御部51fにより制御される。
【0053】
図2は、本実施形態のエンジン音調節装置110を模式的に図示したものである。本実施形態のエンジン音調節装置110は、図2に示すように、エンジン10の燃焼室11に空気を吸入するための吸気系を切り替える吸気系切り替え機構である、いわゆるデュアルエアインテークシステム111により構成される。
【0054】
エンジン音調節装置110をなすデュアルエアインテークシステム111は、エンジン10の吸気系の吸気通路に設けられるものである。このエンジン10の吸気系の吸気通路は、燃焼室11側から順に、燃焼室11への吸入空気量を調節しエンジン10の負荷を調節する電子スロットル装置12、吸入空気から異物を取り除くエアクリーナ13が設けられている。
【0055】
そして、デュアルエアインテークシステム111は、プライマリーインテークポート112とセカンダリーインテークポート113とを含んで構成される。プライマリーインテークポート112とセカンダリーインテークポート113とは、それぞれ独立した別個の系統としてエアクリーナ13の吸気方向上流側に接続される。そして、このデュアルエアインテークシステム111は、少なくともセカンダリーインテークポート113の開放状態と閉鎖状態とを切り替え可能な構成である。このセカンダリーインテークポート113の開放状態と閉鎖状態との切り替えは、エンジン音制御部51fにより例えば開閉装置(不図示)などの駆動が制御されることで制御される。
【0056】
デュアルエアインテークシステム111は、セカンダリーインテークポート113が閉鎖状態である場合には、プライマリーインテークポート112とセカンダリーインテークポート113とのうちのプライマリーインテークポート112のみによってエアクリーナ13側に吸入空気を導入することができる。
【0057】
一方、デュアルエアインテークシステム111は、セカンダリーインテークポート113が開放状態である場合には、プライマリーインテークポート112とセカンダリーインテークポート113との両方によってエアクリーナ13側に吸入空気を導入することができる。
【0058】
したがって、このデュアルエアインテークシステム111は、エンジン音制御部51fによりセカンダリーインテークポート113が車両1やエンジン10の運転状態に応じて選択的に開放、閉鎖されることで、エンジン10の吸気系を複数の状態に切り替えることができる。
【0059】
例えば、デュアルエアインテークシステム111は、エンジン10の低回転域では、エンジン音制御部51fによりセカンダリーインテークポート113が閉鎖状態とされることで、プライマリーインテークポート112とセカンダリーインテークポート113とのうちのプライマリーインテークポート112のみから吸入空気を導入する。デュアルエアインテークシステム111は、エンジン10の中高回転域では、エンジン音制御部51fによりセカンダリーインテークポート113が開放状態とされることで、プライマリーインテークポート112とセカンダリーインテークポート113とによって吸入空気を導入する。これにより、デュアルエアインテークシステム111は、吸気圧損失を低減することができ、高出力のための必要吸入空気量を確保することが可能となる。
【0060】
そして、エンジン音調節装置110をなすデュアルエアインテークシステム111は、エンジン音制御部51fによりセカンダリーインテークポート113が開放状態とされることで、プライマリーインテークポート112とセカンダリーインテークポート113との両方を介した吸気となり、この結果、エンジン音圧レベル(吸気音圧レベル)を相対的に増加しエンジン10のエンジン音(吸気音)を相対的に大きくすることができる。一方、エンジン音調節装置110をなすデュアルエアインテークシステム111は、エンジン音制御部51fによりセカンダリーインテークポート113が閉鎖状態とされることで、プライマリーインテークポート112のみを介した吸気となり、この結果、エンジン音圧レベル(吸気音圧レベル)を相対的に減少しエンジン10のエンジン音(吸気音)を相対的に小さくすることができる。
【0061】
エンジン音制御部51fは、エンジン音調節装置110を制御するものである。ここでは、エンジン音制御部51fは、上述したようにエンジン音調節装置110をなすデュアルエアインテークシステム111のセカンダリーインテークポート113の開放状態と閉鎖状態との切り替えを制御し、これにより、エンジン音圧レベル(吸気音圧レベル)を調節しエンジン10のエンジン音(吸気音)を調節する。本実施形態のエンジン音制御部51fは、ECU51に内蔵されている。すなわち、本実施形態のECU51は、機能概念的に処理部51aにエンジン音制御部51fが設けられている。なお、本実施形態では、エンジン音制御装置100のエンジン音制御部51fは、ECU51に組み込んで構成する場合で説明するがこれに限らない。エンジン音制御部51fは、例えば、ECU51とは別個に構成され、これをECU51に接続するようにして構成してもよい。
【0062】
そして、本実施形態のエンジン音制御部51fは、上述のように、エンジン回転数変化とこの車両1の車速変化とが比例関係にない場合に、エンジン回転数の変化に応じてエンジン音調節装置110を制御しエンジン音を調節する。
【0063】
ここで、エンジン回転数変化と車速変化とが比例関係にない場合とは、エンジン回転数の変化量に対して車速の変化量が比例的でなく、エンジン回転数変化と車速変化とが比例的に連動しない場合である。つまり、エンジン回転数変化と車速変化とが比例関係にない場合とは、エンジン回転数の変化量と車速の変化量との間の関係が非線形である場合、すなわち、エンジン回転数の変化量と車速の変化量との比が一定でない場合である。
【0064】
本実施形態のエンジン音制御部51fは、エンジン回転数変化と車速変化とが比例関係にない場合として、変速中にエンジン音調節装置110をなすデュアルエアインテークシステム111のセカンダリーインテークポート113の開放状態と閉鎖状態との切り替えを制御し、これにより、吸気音圧レベルを含むエンジン音圧レベルを調節しエンジン10の吸気音を含むエンジン音を調節するエンジン音制御を実行する。
【0065】
具体的には、本実施形態のエンジン音制御部51fは、変速機3の変速比が増加する側への変速であるダウンシフト中に、エンジン回転数の変化に応じて、すなわち、エンジン回転数の上昇にあわせて、セカンダリーインテークポート113を開放状態とし、吸気音圧レベルを相対的に大きくしエンジン10の吸気音を相対的に大きくするエンジン音制御としての吸気音増加制御を実行し、これにより、エンジン音圧レベルを相対的に大きくしエンジン10のエンジン音を相対的に大きくする。さらに言えば、本実施形態のエンジン音制御部51fは、変速機3の変速比が増加する側への変速であるダウンシフトであって、車両1に対する加速要求操作の操作量であるアクセル開度の増加に伴ったパワーオンダウンシフト中に上記の吸気音増加制御を実行し、これにより、エンジン音圧レベルを相対的に増加しエンジン10のエンジン音を相対的に大きくする。
【0066】
一方、本実施形態のエンジン音制御部51fは、パワーオンダウンシフト以外の運転状態では、セカンダリーインテークポート113を閉鎖状態とし、吸気音圧レベルを相対的に小さくしエンジン10の吸気音を相対的に小さくする吸気音増加制御を実行し、これにより、エンジン音圧レベルを相対的に小さくしエンジン10のエンジン音を相対的に小さくする。
【0067】
次に、図3のタイムチャートを参照して、本実施形態に係るエンジン音制御装置100のエンジン音制御の一例を説明する。本図では、横軸を時間軸とし、縦軸をエンジン回転数NE(変速機3への入力回転数Ntに相当)、出力軸トルク(車両1の車輪7Rと路面との接触点に作用する駆動力あるいは車両1に作用する前後方向への加速度Gに相当)、吸気音増加制御による吸気音圧レベル、エンジン音圧レベル、アクセル開度としている。
【0068】
上記のように構成されるエンジン音制御装置100は、運転者によりアクセルペダル10aが踏み込まれアクセル開度が増加して、時点t1にて、変速機制御部51eによりパワーオンダウンシフト制御の変速指令が生成され変速機3に出力され、変速制御としてパワーオンダウンシフト制御が実行されると、エンジン音制御部51fがエンジン回転数の変化に応じてエンジン音制御としての吸気音増加制御を実行する。
【0069】
エンジン音制御部51fは、エンジン回転数の変化開始時点t2から変化終了時点t3までの期間に、エンジン音調節装置110のセカンダリーインテークポート113を開放状態とし、吸気音圧レベルを相対的に大きくしエンジン10の吸気音を相対的に大きくする吸気音増加制御を実行し、これにより、エンジン音圧レベルを相対的に大きくしエンジン10のエンジン音を相対的に大きくする。ここで変化開始時点t2は、実際に変速機3での変速が開始されエンジン回転数の上昇が開始する時点である。変化終了時点t3は、変速機3での変速が終了しエンジン回転数の上昇が終了する時点である。ここでは、エンジン音制御部51fは、変化開始時点t2にて、エンジン音調節装置110のセカンダリーインテークポート113を開放状態とし、変化終了時点t3にて、エンジン音調節装置110のセカンダリーインテークポート113を閉鎖状態とする。
【0070】
したがって、このエンジン音制御装置100は、車両1が搭載するエンジン10のエンジン回転数変化とこの車両1の車速変化とが比例関係にない場合に、エンジン音制御部51fがエンジン音調節装置110を制御してエンジン回転数の変化に応じてエンジン10のエンジン音を調節可能とする。これにより、エンジン音制御装置100は、例えば、エンジン回転数が増加しているものの車速が上昇せずほぼ一定のままである場合であっても、エンジン回転数の上昇にあわせてエンジン音が調節されるので、運転者が車両1の走行中に受ける違和感を抑制することができる。
【0071】
すなわち、本実施形態のエンジン音制御装置100は、エンジン回転数変化と車速変化とが比例関係にない場合として、パワーオンダウンシフト中にエンジン音を相対的に大きくすることで、ダウンシフトに伴うエンジン10の回転数変化によりエンジン10の出力エンジントルクのイナーシャ(回転慣性)損失が大きくなり、つまり、時点t2から時点t3までのエンジン回転数の上昇によりエンジンイナーシャトルクとして使われる分の出力エンジントルクが大きくなった場合に、相対的に大きくなったエンジン音によって、運転者がエンジン回転数の上昇を感じやすくすることができ、エンジン10からの出力エンジントルクがエンジンイナーシャ(回転慣性)トルクに使われていることを運転者に知らせることができる。そして、エンジン音制御装置100は、パワーオンダウンシフト中に、相対的に大きくなったエンジン音によって、出力エンジントルクがエンジンイナーシャトルクとして消費されることを運転者に知らせることができるので、車輪7Rに伝達される出力軸トルク(駆動トルク)が小さくなることによるパワーオンダウンシフト中の時点t2から時点t3までの駆動力の落ち込みをエンジン音の増加で伝えることができる。
【0072】
この結果、エンジン音制御装置100は、運転者がアクセルペダル10aを踏み込んでアクセル開度を大きくしているにもかかわらず上記のように駆動力が落ち込んだとしても、パワーオンダウンシフト中に、相対的に大きくなったエンジン音によって、出力エンジントルクがエンジンイナーシャトルクとして消費されることを運転者に知らせることができ、駆動力の落ち込みをエンジン音の増加で伝えることができることから、運転者が車両1の挙動から違和感を受けることを抑制することができる。つまり、エンジン音制御装置100は、パワーオンダウンシフト時に駆動力、言い換えれば車両1の加速に反映されないエンジン回転数の上昇分を相対的に大きくなったエンジン音として運転者に伝えることで、駆動力の落ち込み分がエンジン回転の上昇に置き換わったものとして運転者に理解させることができるので、上記のように駆動力が落ち込んだとしても、運転者が車両1の走行中に受ける違和感を抑制することができる。
【0073】
このとき、エンジン音制御装置100のエンジン音制御部51fは、図3に例示するように、エンジン回転数の変化量、ここでは、ダウンシフトに伴うエンジン回転数の増加量が予め設定される所定変化量ThΔNeより大きいと予測される場合にエンジン音を相対的に大きくするように構成するとよい。ここで、所定変化量ThΔNeは、例えば、当該所定変化量に応じた変速が終了までの時間や駆動力の落ち込み量などに応じて運転者が違和感を受けうる範囲で実験等に基づいて予め設定しておけばよい。この場合、エンジン音制御装置100は、例えば、ダウンシフトに伴うエンジン回転数の増加量が所定変化量ThΔNeより大きいと予測される場合のみに、エンジン音制御部51fがエンジン音を相対的に大きくするようにエンジン音調節装置110を制御することで、出力エンジントルクのイナーシャ損失が相対的に大きく駆動力の落ち込みが相対的に大きくなるときにのみエンジン音を相対的に大きくする制御を実行することができる。なお、エンジン音制御部51fは、例えば、変速機制御部51eにより設定される目標の変速段とクランク角センサ57が検出する現在のエンジン回転数などに基づいて、エンジン回転数の増加量(変化量)が所定変化量ThΔNeより大きいか否かを予測すればよい。
【0074】
次に、図4のフローチャートを参照して、本実施形態に係るエンジン音制御装置100のエンジン音制御の一例を説明する。なお、これらの制御ルーチンは、数msないし数十ms毎の制御周期で繰り返し実行される。
【0075】
まず、エンジン音制御装置100のエンジン音制御部51fは、各種制御指令などに基づいて、エンジン音調節装置110をなすデュアルエアインテークシステム111を制御しセカンダリーインテークポート113を開放状態とし、吸気音圧レベルを相対的に大きくしエンジン10の吸気音を相対的に大きくする吸気音増加制御を実行中か否かを判定する(S100)。
【0076】
エンジン音制御部51fは、吸気音増加制御を実行中でないと判定した場合(S100:No)、各種制御指令などに基づいて、変速機制御部51eがアクセル開度の増加に伴った変速機3のパワーオンダウンシフト制御を実行中か否かを判定する(S102)。
【0077】
エンジン音制御部51fは、変速機制御部51eがパワーオンダウンシフト制御を実行中でないと判定した場合(S102:No)、現在の制御周期を終了し、次の制御周期に移行する。
【0078】
エンジン音制御部51fは、変速機制御部51eがパワーオンダウンシフト制御を実行中であると判定した場合(S102:Yes)、クランク角センサ57などの各種センサの検出結果などに基づいて、変速、すなわち、パワーオンダウンシフトによるエンジン回転数変化量が予め設定される所定変化量ThΔNeより大きいと予測できるか否かを判定する(S104)。エンジン音制御部51fは、パワーオンダウンシフトによるエンジン回転数変化量が所定変化量ThΔNe以下であると予測できる場合(S104:No)、現在の制御周期を終了し、次の制御周期に移行する。
【0079】
エンジン音制御部51fは、パワーオンダウンシフトによるエンジン回転数変化量が所定変化量ThΔNeより大きいと予測できる場合(S104:Yes)、クランク角センサ57などの各種センサの検出結果などに基づいて、実際に変速機3での変速が開始されエンジン回転数の変化が開始したか否かを判定する(S106)。エンジン音制御部51fは、実際に変速機3での変速が開始されておらずエンジン回転数の変化が開始していないと判定した場合(S106:No)、現在の制御周期を終了し、次の制御周期に移行する。
【0080】
エンジン音制御部51fは、実際に変速機3での変速が開始されエンジン回転数の変化が開始したと判定した場合(S106:Yes)、エンジン音調節装置110をなすデュアルエアインテークシステム111を制御しセカンダリーインテークポート113を開放状態とし、吸気音圧レベルを相対的に大きくしエンジン10の吸気音を相対的に大きくする吸気音増加制御を実行し、エンジン音圧レベルを相対的に大きくしエンジン10のエンジン音を相対的に大きくするエンジン音制御を実行して(S108)、現在の制御周期を終了し、次の制御周期に移行する。
【0081】
エンジン音制御部51fは、S100において吸気音増加制御を実行中であると判定した場合(S100:Yes)、クランク角センサ57などの各種センサの検出結果などに基づいて、現時点から変速終了までの予想時間が予め設定された所定時間より短いか否かを判定する(S110)。エンジン音制御部51fは、予想時間が所定時間以上であると判定した場合(S110:No)、現在の制御周期を終了し、次の制御周期に移行する。ここで、所定時間は、例えば、エンジン音制御部51fが吸気音増加制御の終了指令をエンジン音調節装置110に出力してから実際に吸気音圧レベルが相対的に小さくなりエンジン10の吸気音が相対的に小さくなり終わるまでの時間などに応じて予め設定しておけばよい。
【0082】
エンジン音制御部51fは、予想時間が所定時間より短いと判定した場合(S110:Yes)、すなわち、まもなく変速機3での変速が終了しエンジン回転数の変化が終了すると判定した場合、エンジン音調節装置110をなすデュアルエアインテークシステム111を制御しセカンダリーインテークポート113を閉鎖状態とし、吸気音圧レベルを相対的に小さくしエンジン10の吸気音を相対的に小さくして吸気音増加制御を終了し、エンジン音圧レベルを相対的に小さくしエンジン10のエンジン音を相対的に小さくしてエンジン音制御を終了して(S112)、現在の制御周期を終了し、次の制御周期に移行する。
【0083】
以上で説明した本発明の実施形態に係るエンジン音制御装置100によれば、車両1が搭載するエンジン10のエンジン回転数変化とこの車両1の車速変化とが比例関係にない場合に、エンジン回転数の変化に応じてエンジン10のエンジン音を調節可能である。
【0084】
したがって、エンジン音制御装置100は、車両1が搭載するエンジン10のエンジン回転数変化とこの車両1の車速変化とが比例関係にない場合に、エンジン音制御部51fがエンジン音調節装置110を制御してエンジン回転数の変化に応じてエンジン10のエンジン音を調節可能とすることで、例えば、エンジン回転数が増加しているものの車速が上昇せずほぼ一定のままである場合であっても、エンジン回転数の上昇にあわせてエンジン音が調節されるので、運転者が車両1の走行中に受ける違和感を抑制することができる。
【0085】
さらに、以上で説明した本発明の実施形態に係るエンジン音制御装置100によれば、車両1に搭載される変速機3の変速比が増加する側への変速であるダウンシフト中にエンジン音を相対的に大きくする。したがって、エンジン音制御装置100は、エンジン回転数変化と車速変化とが比例関係にない場合として、ダウンシフト中にエンジン音を相対的に大きくすることで、エンジン10からの出力エンジントルクがエンジンイナーシャ(回転慣性)トルクに使われていることを運転者に知らせることができ、駆動力の落ち込みをエンジン音の増加で伝えることができるので、運転者が車両1の走行中に受ける違和感を確実に抑制することができる。
【0086】
さらに、以上で説明した本発明の実施形態に係るエンジン音制御装置100によれば、車両1に対する加速要求操作の操作量であるアクセル開度の増加に伴った変速であるパワーオンダウンシフト中にエンジン音を相対的に大きくする。したがって、エンジン音制御装置100は、エンジン回転数変化と車速変化とが比例関係にない場合として、パワーオンダウンシフト中にエンジン音を相対的に大きくすることで、運転者がアクセルペダル10aを踏み込んでアクセル開度を大きくしているにもかかわらず駆動力が落ち込んだとしても、パワーオンダウンシフト中に運転者が車両1の挙動から違和感を受けることを抑制することができる。
【0087】
さらに、以上で説明した本発明の実施形態に係るエンジン音制御装置100によれば、エンジン回転数の変化量が予め設定される所定変化量ThΔNeより大きいと予測される場合にエンジン音を相対的に大きくする。したがって、エンジン音制御装置100は、出力エンジントルクのイナーシャ損失が相対的に大きく駆動力の落ち込みが相対的に大きくなるときにのみエンジン音を相対的に大きくする制御を実行することができる。
【0088】
さらに、以上で説明した本発明の実施形態に係るエンジン音制御装置100によれば、エンジン回転数の変化開始時点から変化終了時点までの期間にエンジン音を相対的に大きくする。したがって、エンジン音制御装置100は、エンジン回転数が実際に変化しているときにのみエンジン音を相対的に大きくすることができるので、より適正に運転者が車両1の走行中に受ける違和感を抑制することができる。
【0089】
(実施形態2)
図5は、本発明の実施形態2に係るエンジン音制御装置のエンジン音制御の一例を説明するフローチャートである。実施形態2に係る車両用制御装置は、実施形態1に係る車両用制御装置と略同様の構成であるが機関音を相対的に大きくする条件が実施形態1に係る車両用制御装置とは異なる。その他、上述した実施形態と共通する構成、作用、効果については、重複した説明はできるだけ省略するとともに、同一の符号を付す。
【0090】
本実施形態の車両用制御装置としてのエンジン音制御装置200のエンジン音制御部51fは、図5に示すように、実施形態1のS104(図4参照)の判定にかえて、パワーオンダウンシフトによる変速機3の変速段変化が予め設定される所定段以上であるか否かを判定する(S204)。エンジン音制御部51fは、パワーオンダウンシフトによる変速機3の変速段変化が予め設定される所定段以上であると判定した場合(S204:Yes)、S106に移行し以降の処理を実行し、パワーオンダウンシフトによる変速機3の変速段変化が予め設定される所定段より少ないと判定した場合(S204:No)、現在の制御周期を終了し、次の制御周期に移行する。
【0091】
言い換えれば、エンジン音制御部51fは、パワーオンダウンシフトによる変速機3の変速段変化が予め設定される所定段以上であるか否かを判定することで、変速機3の変速比が予め設定される所定変速比幅より大きく変更されるか否かを判定する。そして、エンジン音制御部51fは、変速段変化が予め設定される所定段以上である場合、すなわち、変速比が所定変速比幅より大きく変更される場合に、エンジン音を相対的に大きくする制御を実行する。ここで、所定変速比幅に応じた所定段は、例えば、変速が終了までの時間や駆動力の落ち込み量などに応じて運転者が違和感を受けうる範囲で実験等に基づいて予め設定しておけばよい。エンジン音制御部51fは、変速機3が複数の変速段(ギヤ段)を有するATで構成される場合(あるいはATにおける複数の変速段(ギヤ段)のように変速比が複数のステップ状に区切られたCVTで構成される場合)には、いわゆる飛び段変速が実施され変速比が大きく変更されたことを条件としてエンジン音を相対的に大きくするように制御してもよい。
【0092】
エンジン音制御部51fは、例えば、所定段を3段程度に設定し、運転者によりアクセルペダル10aが踏み込まれアクセル開度が増加して、例えば上述の図3の時点t1にて、変速機制御部51eにより3段以上のパワーオンダウンシフト制御の変速指令が生成され変速機3に出力され、変速制御として3段以上のパワーオンダウンシフト制御が実行された場合に、エンジン音を相対的に大きくする制御を実行する。一方、エンジン音制御部51fは、時点t1にて、変速機制御部51eにより1段又は2段のパワーオンダウンシフト制御の変速指令が生成され変速機3に出力され、変速制御として1段又は2段のパワーオンダウンシフト制御が実行された場合には、エンジン音を相対的に大きくする制御を実行しない。
【0093】
この結果、エンジン音制御装置200は、例えば、ダウンシフトによる変速段変化が予め設定される所定段以上である場合(例えば、飛び段変速である場合)、すなわち、ダウンシフトにより変速比が所定変速比幅より大きく変更される場合のみに、エンジン音制御部51fがエンジン音を相対的に大きくするようにエンジン音調節装置110を制御することで、変速に相対的に長い時間を要し、出力エンジントルクのイナーシャ損失が相対的に大きく駆動力の落ち込みが相対的に大きくなるときにのみエンジン音を相対的に大きくする制御を実行することができる。さらに言えば、駆動力の落ち込み時間が長く、車速が上がらない時間が長い場合の方が車両1の挙動から運転者が受ける違和感が大きくなる傾向にあるが、本実施形態のエンジン音制御装置200は、ダウンシフトにより変速比が所定変速比幅より大きく変更される場合にエンジン音制御部51fがエンジン音を相対的に大きくするようにエンジン音調節装置110を制御するので、相対的に長い時間を要する変速時にのみ、駆動力の落ち込みがエンジン回転数の上昇に置き換わったものであると運転者に理解させることができる。そして、エンジン音制御装置200は、運転者が車両1の挙動から受ける違和感が小さくなる傾向にある場合、すなわち、相対的に短い時間ですむ変速時には、エンジン音を相対的に大きくする制御を実行せずにすますことができる。
【0094】
以上で説明した本発明の実施形態に係るエンジン音制御装置200によれば、エンジン音制御装置200は、車両1が搭載するエンジン10のエンジン回転数変化とこの車両1の車速変化とが比例関係にない場合に、エンジン音制御部51fがエンジン音調節装置110を制御してエンジン回転数の変化に応じてエンジン10のエンジン音を調節可能とすることで、例えば、エンジン回転数が増加しているものの車速が上昇せずほぼ一定のままである場合であっても、エンジン回転数の上昇にあわせてエンジン音が調節されるので、運転者が車両1の走行中に受ける違和感を抑制することができる。
【0095】
さらに、以上で説明した本発明の実施形態に係るエンジン音制御装置200によれば、車両1に搭載される変速機3の変速比が予め設定される所定変速比幅より大きく変更される場合、ここでは、ダウンシフトによる変速段変化が予め設定される所定段以上である場合にエンジン音を相対的に大きくする。あるいは、以上で説明した本発明の実施形態に係るエンジン音制御装置200によれば、車両1に搭載される変速機3の変速比が飛び段変速によって大きく変更される場合にエンジン音を相対的に大きくする。したがって、エンジン音制御装置200は、変速に比較的に長い時間を要し、車速が上がらない時間が相対的に長くなり車両1の挙動から運転者が違和感を受けやすいときにのみエンジン音を相対的に大きくする制御を実行することができる。
【0096】
なお、上述した本発明の実施形態に係る車両用制御装置は、上述した実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された範囲で種々の変更が可能である。本発明の実施形態に係る車両用制御装置は、以上で説明した実施形態を複数組み合わせることで構成してもよい。
【0097】
以上の説明では、車両用制御装置としてのエンジン音制御装置100、200をなすエンジン音調節装置110は、デュアルエアインテークシステム111により構成されるものとして説明したがこれに限らない。
【0098】
図6は、本発明の変形例に係るエンジン音制御装置の概略構成図である。本変形例に係る車両用制御装置としてのエンジン音制御装置100は、図6に示すように、エンジン音調節装置110aと、エンジン音制御部51fとを含んで構成される。
【0099】
そして、本変形例のエンジン音調節装置110aは、上述したデュアルエアインテークシステム111にかえて、吸気制御機構であるレゾネータ114aにより構成される。
【0100】
レゾネータ114aは、例えば、ヘルムホルツの共鳴原理を利用して特定の消音周波数(制御周波数)の音を低減させる消音器である。レゾネータ114aは、エンジン10の吸気系の吸気通路14に設けられる。レゾネータ114aは、吸気通路14においてエアクリーナ13の吸気方向下流側でこの吸気通路14の内部に開口するようにして接続される。
【0101】
レゾネータ114aは、エンジン音を構成する吸気音の特定の周波数である上記消音周波数の音波の振幅を減ずる機能を有する。このとき、このレゾネータ114aは、消音周波数の周辺の周波数の音波の振幅を増幅する特徴も有している。レゾネータ114aは、消音周波数の吸気音(エンジン音)の音圧レベルを大きく低下させることで、この消音周波数における吸気音(エンジン音)が小さくなる一方、この消音周波数の周辺の周波数の吸気音の音圧レベルが大きくなる現象が現れる。本変形例のエンジン音調節装置110aは、このレゾネータ114aによる音波の振幅の増幅効果を利用して、吸気音圧レベルを調節しエンジン10の吸気音を調節する。レゾネータ114aは、ECU51に電気的に接続されており、ECU51のエンジン音制御部51fにより消音周波数が調節される。
【0102】
すなわち、エンジン音制御部51fは、車両1が搭載するエンジン10のエンジン回転数変化とこの車両1の車速変化とが比例関係にない場合に、エンジン回転数の変化に応じてエンジン音調節装置110aをなすレゾネータ114aの消音周波数を制御し、吸気音圧レベルを調節しエンジン10の吸気音を調節し、これにより、エンジン音圧レベルを調節しエンジン10のエンジン音を調節する。この場合、エンジン音制御部51fは、エンジン回転数の変化に対して吸気音圧レベル(エンジン音圧レベル)をリニアに変化させるようにしてもよい。エンジン音制御部51fは、例えば、レゾネータ114aの消音周波数を徐々に変更して行くことで、レゾネータ114aの消音周波数の周囲の音圧レベルを徐々に上昇させ、吸気音の音圧レベルを徐々に大きくすることができる。
【0103】
この場合であっても、エンジン音制御装置100は、上記と同様に運転者が車両1の走行中に受ける違和感を抑制することができる。
【0104】
また、以上の説明では、車両用制御装置としてのエンジン音制御装置100、200をなすエンジン音調節装置110、110aは、エンジン10の吸気通路に設けられエンジン10の吸気音圧レベルを調節し吸気音を調節することでエンジン10のエンジン音を調節するものとして説明したがこれに限らず、排気通路に設けられ排気通路の排気音圧レベルを調節し排気音を調節することでエンジン10のエンジン音を調節する装置であってもよい。
【0105】
また、車両用制御装置としてのエンジン音制御装置100、200は、エンジン音調節装置110、110aにかえて、例えば、エンジン音の再生装置を備えていてもよく、すなわち、エンジン10が発するエンジン音を予め録音しておきこれを出力、再生することでエンジン音を調節する構成であってもよい。
【0106】
以上の説明では、運転者による車両に対する加速要求操作(駆動力要求操作)の操作量としてアクセル開度センサ56により検出されるアクセル開度を用いるものとして説明したが、運転者の加速要求操作に応じて変化する変化量であればこれに限らない。
【0107】
以上の説明では、車両用制御装置は、変速機の変速比が増加する側への変速であるダウンシフト中に内燃機関の機関音を相対的に大きくするものとして説明したがこれに限らない。車両用制御装置は、例えば、変速機の変速比が減少する側への変速であるアップシフト中に内燃機関の機関音を相対的に小さくするようにしてもよい。
【0108】
以上の説明では、車両用制御装置は、車両に対する加速要求操作の操作量の増加に伴ったパワーオンダウンシフト中に内燃機関の機関音を相対的に大きくするものとして説明したがこれに限らない。車両用制御装置は、例えば、いわゆるマニュアルシフトモードでのダウンシフト中に内燃機関の機関音を相対的に大きくするようにしてもよい。
【0109】
以上の実施形態1の説明では、機関回転速度の変化量が予め設定される所定変化量より大きいと予測される場合にのみ機関音を相対的に大きくするものとして説明したがこれに限らない。また、以上の実施形態2の説明では、車両に搭載される変速機の変速比が予め設定される所定変速比幅より大きく変更される場合にのみ機関音を相対的に大きくするものとして説明したがこれに限らない。
【産業上の利用可能性】
【0110】
以上のように、本発明に係る車両用制御装置は、運転者が車両の走行中に受ける違和感を抑制することができるものであり、車両に搭載される内燃機関の機関音を制御する種々の車両用制御装置に用いて好適である。
【符号の説明】
【0111】
1 車両
3 変速機
10 エンジン(内燃機関)
10a アクセルペダル
51 ECU
51f エンジン音制御部
56 アクセル開度センサ
57 クランク角センサ
62 車輪速度センサ
100、200 エンジン音制御装置(車両用制御装置)
110、110a エンジン音調節装置
111 デュアルエアインテークシステム
112 プライマリーインテークポート
113 セカンダリーインテークポート
114a レゾネータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両が搭載する内燃機関の機関回転速度変化と当該車両の車速変化とが比例関係にない場合に、前記機関回転速度の変化に応じて前記内燃機関の機関音を調節可能であることを特徴とする、
車両用制御装置。
【請求項2】
前記車両に搭載される変速機の変速比が増加する側への変速中に前記機関音を相対的に大きくする、
請求項1に記載の車両用制御装置。
【請求項3】
前記車両に対する加速要求操作の操作量の増加に伴った前記変速中に前記機関音を相対的に大きくする、
請求項2に記載の車両用制御装置。
【請求項4】
前記車両に搭載される変速機の変速比が予め設定される所定変速比幅より大きく変更される場合に前記機関音を相対的に大きくする、
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の車両用制御装置。
【請求項5】
前記車両に搭載される変速機の変速比が飛び段変速によって大きく変更される場合に前記機関音を相対的に大きくする、
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の車両用制御装置。
【請求項6】
前記機関回転速度の変化量が予め設定される所定変化量より大きいと予測される場合に前記機関音を相対的に大きくする、
請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の車両用制御装置。
【請求項7】
前記機関回転速度の変化開始時点から変化終了時点までの期間に前記機関音を相対的に大きくする、
請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の車両用制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−17320(P2011−17320A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−163723(P2009−163723)
【出願日】平成21年7月10日(2009.7.10)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】