説明

車両用動力伝達装置

【課題】減速エコランを実施しても伝動ベルトの滑りを抑制することができる車両用動力伝達装置を提供する。
【解決手段】エンジン12に連結された第1軸36と、駆動輪24に連結された第2軸50と、第1軸36および第2軸50に固設されたプライマリプーリ52およびセカンダリプーリ54と、プーリ52および54のV溝56にそれぞれ巻き掛けられた伝動ベルト58とを備え、エンジン12によって駆動される機械式油圧ポンプ44から圧送された作動油を制御することにより変速比を連続的に変化させるベルト式無段変速機20を含む車両用動力伝達装置10であって、第2軸50と駆動輪24との間に設けられ、機械式油圧ポンプ44からの作動油が作用されるときはそれら第2軸50と駆動輪24との間の動力伝達を許容し、前記作動油が作用されないときは前記動力伝達を阻止する油圧式動力伝達遮断機構74を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベルト式無段変速機を備える車両用動力伝達装置に係り、特に、そのベルト式無段変速機のベルト滑りを抑制するための技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両用無段変速機には、例えば、特許文献1に記載されたトロイダル式無段変速機や、特許文献2に記載されたベルト式無段変速機がある。上記ベルト式無段変速機は、エンジンに連結されるための第1軸と、その第1軸と平行に設けられ、駆動輪に連結されるための第2軸と、それら第1軸および第2軸に固設された一対の溝幅可変プーリと、それら一対の溝幅可変プーリのV溝にそれぞれ巻き掛けられた伝動ベルトとを備え、前記エンジンによって駆動される油圧ポンプから圧送された作動油を制御することにより、前記V溝の溝幅を変化させて前記伝動ベルトの掛かり径を変化させることで変速比を連続的に変化させるように構成される。
【0003】
近年燃費向上を目的として、車両停止時においてエンジンを停止させる所謂アイドリングストップが実現されるようになっている。このとき、エンジンが停止されると、そのエンジンによって駆動される油圧ポンプも同様に停止されるが、上記ベルト式無段変速機を備える車両用動力伝達装置においてアイドリングストップを実施する場合には、車両停止中であっても発進応答性を確保するため、ベルト式無段変速機を制御する油圧シリンダに所定の油圧(待機圧)を供給する必要がある。したがって、車両停止時(エンジン停止時)に油圧を発生させるため、油圧ポンプとは別の油圧発生/維持装置たとえば電動式油圧ポンプを使用して油圧を発生させる場合がある。この電動式油圧ポンプは、アイドリングストップ実施中の油抜けを補うことが目的であるため、比較的低出力容量のものが採用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−3084号公報
【特許文献2】特開平7−133853号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、更なる燃費向上を目的として、上記ベルト式無段変速機を備える車両用動力伝達装置において車両減速走行中に車両停止に先立ってエンジンを停止させる所謂減速エコランを実施することが検討されている。ここで、上記減速エコラン実施中において例えば急ブレーキにより駆動輪がロック状態となった場合を想定する。この場合、駆動輪からベルト式無段変速機の第2軸に設けられた溝幅可変プーリまでは駆動輪と共に回転がロックされるが、第1軸に設けられた溝幅可変プーリにはその溝幅可変プーリよりエンジン側の回転部材から伝達された慣性トルクが入力される。前記電動式油圧ポンプは、発進応答性を確保するために上記溝幅可変プーリの溝幅を制御する油圧シリンダに所定の油圧(待機圧)を供給するのに必要且つ十分な比較的小さな吐出容量を備えるのみであり、上記慣性トルクによっても伝動ベルトが滑らないほどの挟圧力を上記溝幅可変プーリに生じさせるほどの吐出容量を備えない。そのため、減速エコランを実施すると所定の状況下で伝動ベルトが溝幅可変プーリに対して滑る所謂ベルト滑りが起こる可能性があった。
【0006】
それに対し、電動式油圧ポンプを、上記慣性トルクによっても伝動ベルトが滑らないほどの挟圧力を上記溝幅可変プーリに生じさせるほどの吐出容量を備えるものに変更することも考えられるが、そうすると大型の電動式油圧ポンプが必要となり、車両用動力伝達装置が大型化すると共にその車両用動力伝達装置の製造コストが増すという問題が考えられる。
【0007】
本発明は以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、ベルト式無段変速機を備え、減速エコランの実施中におけるベルト式無段変速機のベルト滑りを抑制することができる車両用動力伝達装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる目的を達成するための請求項1にかかる発明の要旨とするところは、(a)エンジンに連結されるための第1軸と、その第1軸と平行に設けられ、駆動輪に連結されるための第2軸と、それら第1軸および第2軸に固設された一対の溝幅可変プーリと、それら一対の溝幅可変プーリのV溝にそれぞれ巻き掛けられた伝動ベルトとを備え、前記エンジンによって駆動される油圧ポンプから圧送された作動油を制御することにより、前記V溝の溝幅を変化させて前記伝動ベルトの掛かり径を変化させることで変速比を連続的に変化させるベルト式無段変速機を含む車両用動力伝達装置であって、(b)前記第2軸と前記駆動輪との間に設けられ、前記油圧ポンプからの作動油が作用されるときはそれら第2軸と駆動輪との間の動力伝達を許容し、前記作動油が作用されないときは前記動力伝達を阻止する油圧式動力伝達遮断機構を備えることにある。
【0009】
また、請求項2にかかる発明の要旨とするところは、請求項1にかかる発明において、前記油圧式動力伝達遮断機構は、(a)内周側に位置し、前記作動油が供給される油路と、その油路から外周面まで径方向に貫通させられた1又は複数の貫通孔とを有する軸部材と、(b)その軸部材の外周側にその軸部材の軸中心線まわりの相対回転可能に嵌め入れられ、前記貫通孔の外周側開口に対向する凹面が内周面に形成された円筒状伝達部材と、(c)前記貫通孔の開口内に突き出し可能にその貫通孔に嵌め入れられた係合子とを備え、(d)前記油路から前記貫通孔へ作動油が供給された場合には、その貫通孔から突き出た前記係合子が前記円筒状伝達部材の凹面に嵌り込むことにより前記円筒状伝達部材と前記軸部材との間の動力伝達を可能とし、前記油路から前記貫通孔へ作動油が供給されない場合には、前記係合子が前記貫通孔内へ押し込まれることにより前記円筒状伝達部材と前記軸部材との間の動力伝達を阻止するものであることにある。
【0010】
また、請求項3にかかる発明の要旨とするところは、請求項1または2にかかる発明において、(a)前記第2軸の後段に減速歯車装置を備え、(b)前記軸部材は前記第2軸の端部であり、(c)前記円筒状伝達部材は前記減速歯車装置の駆動歯車であることにある。
【0011】
また、請求項4にかかる発明の要旨とするところは、請求項1乃至3のいずれか1にかかる発明において、(a)前記係合子は球形であり、(b)前記凹面は半球面状であることにある。
【発明の効果】
【0012】
請求項1にかかる発明の車両用動力伝達装置によれば、ベルト式無段変速機を備える車両用動力伝達装置において車両減速走行中にエンジンを停止させる所謂減速エコランが実施されているときに例えば急ブレーキにより駆動輪がロックするような場合であっても、エンジンが停止されるとそのエンジンによって駆動される油圧ポンプも同様に停止され、その油圧ポンプからの作動油が作用されないために油圧式動力伝達遮断機構により第2軸と駆動輪との間の動力伝達が阻止(遮断)されるので、第1軸および第2軸が共に自由回転状態となる。そのため、第1軸に設けられた溝幅可変プーリにその溝幅可変プーリよりエンジン側の回転部材から伝達された慣性トルクが入力される場合であっても、第1軸および第2軸が共に回転可能であるために伝動ベルトが溝幅可変プーリに対して滑る所謂ベルト滑りを抑制することができる。
【0013】
また、請求項2にかかる発明の車両用動力伝達装置によれば、油圧式動力伝達遮断機構は、前記作動油が供給される油路と、軸部材に形成された貫通孔と、円筒状伝達部材に形成された凹面と、係合子とから構成されるので、簡単な構成により減速走行中のエコラン制御の実施中のベルト滑りを抑制することができる。また、現行のものから大幅な変更が不要であるために油圧式動力伝達遮断機構を車両用動力伝達装置に設けることによるコストアップを抑えることができる。
【0014】
また、請求項3にかかる発明の車両用動力伝達装置によれば、減速エコランが実施されているときに例えば急ブレーキにより駆動輪がロックするような場合であっても、エンジンによって駆動される油圧ポンプからの作動油が作用されないために油圧式動力伝達遮断機構により第2軸と上記駆動歯車との間の動力伝達が阻止(遮断)されるので、第1軸および第2軸が共に自由回転状態となりベルト滑りを抑制することができる。
【0015】
また、請求項4にかかる発明の車両用動力伝達装置によれば、係合子が安価な部品から成り、また凹面を形成するための加工が簡単なために、油圧式動力伝達遮断機構を安価に構成することができる。
【0016】
ここで、好適には、前記凹面は、前記油圧ポンプから作動油が圧送されている場合に前記係合子とその凹面との係合によるトルク容量が最大伝達トルクよりも大きくなるように、また、前記油圧ポンプから作動油が圧送されていない場合には前記係合子が凹面によって前記貫通孔内に押し込まれるように、形状および深さが設定される。このようにすれば、エンジン作動時における第2軸から駆動輪までの動力伝達を確実に行いつつも、減速走行中のエコラン制御の実施中(エンジン停止時)にはエンジンが停止されて直ぐに第2軸と駆動輪との間の動力伝達を遮断することができる。
【0017】
また、好適には、前記油路は、前記ベルト式無段変速機が有する被潤滑部材へ潤滑油を供給する潤滑油路である。このようにすれば、現行のベルト式無段変速機にも備えられている潤滑油路を利用し、前記凹面、前記係合子、および前記貫通孔を追加するのみで油圧式動力伝達遮断機構を構成することができる。そのため、コストアップを抑えつつ減速走行中のエコラン制御の実施中のベルト滑りを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明が適用された車両用動力伝達装置の骨子図である。
【図2】図1に示す車両用動力伝達装置の要部を示す断面図である。
【図3】図2に示す車両用動力伝達装置のうちのベルト式無段変速機の第2軸のエンジン側の端部と、その端部の外周側に設けられた第1ドライブギヤとを含む部分を拡大して示す断面図である。
【図4】図3のIV-IV矢視部断面を示す断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の一実施例を図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の実施例において図は適宜簡略化或いは変形されており、各部の寸法比および形状等は必ずしも正確に描かれていない。
【実施例1】
【0020】
図1は、本発明が適用された車両用動力伝達装置10の骨子図と、その車両用動力伝達装置10を備える車両12に設けられた制御系統の要部を説明するブロック線図とを示す図である。図1において、車両用動力伝達装置10は、FF(フロントエンジン・フロントドライブ)方式の車両12に好適に採用されるものであり、車両12の駆動力源としてのエンジン14の後段に設けられている。この車両用動力伝達装置10は、エンジン14に連結されたトルクコンバータ16と、そのトルクコンバータ16からの出力の回転方向を車両前進用と車両後進用との間で切り換える前後進切換装置18と、その前後進切換装置18からの出力を変速するベルト式無段変速機20と、そのベルト式無段変速機20からの出力を減速する減速歯車装置22と、その減速歯車装置22からの出力を左右一対の駆動輪24の回転差を許容しつつそれら駆動輪24へ伝達する差動歯車装置26とを備えている。上記トルクコンバータ16、前後進切換装置18、ベルト式無段変速機20、減速歯車装置22、および差動歯車装置26は、トランスアクスルケース28内に収容されている。
【0021】
トルクコンバータ16は、エンジン14のクランク軸に連結され、そのエンジン14により回転駆動させられることによってトルクコンバータ16内の作動油の流動による流体流を発生させるポンプ翼車30と、トルクコンバータ16の出力部材としてのタービン軸32に連結され、上記流体流を受けて回転させられるタービン翼車34とを備える流体伝動装置である。
【0022】
前後進切換装置18は、サンギヤS、キャリヤCA、およびリングギヤRを含むダブルピニオン型の遊星歯車装置にて構成されている。サンギヤSはトルクコンバータ16のタービン軸32に連結され、キャリヤCAはベルト式無段変速機20の第1軸36に連結されている。そして、サンギヤSとキャリヤCAとの間に配設された前進用クラッチ38が係合させられると、タービン軸32と第1軸36とが直結させられ、トルクコンバータ16からの出力がエンジン回転と同じ回転方向でベルト式無段変速機20へ伝達される。また、リングギヤRとトランスアクスルケース28との間に配設された後進用ブレーキ40が係合させられると、第1軸36がタービン軸32に対して逆方向に回転させられる状態とされ、トルクコンバータ16からの出力がエンジン回転とは逆の回転方向でベルト式無段変速機20へ伝達される。
【0023】
トルクコンバータ16と前後進切換装置18との間には、エンジン14により駆動され、トランスアクスルケース28に設けられた図示しないオイルパン内に還流した作動油を吸入して油圧制御回路42のライン油路へ圧送する機械式油圧ポンプ44が設けられている。上記油圧制御回路42は、機械式油圧ポンプ44や後述の電動式油圧ポンプ48から圧送された油圧を元圧として、車両用動力伝達装置10が備える各種の油圧装置や被潤滑部材へ供給するための油圧を調圧するものである。機械式油圧ポンプ44のローターは、トルクコンバータ16のポンプ翼車30に連結されており、エンジン14により回転駆動させられるようになっている。すなわち、機械式油圧ポンプ44はエンジン14に直結されており、そのエンジン14が停止すればその機械式油圧ポンプ44も停止する。なお、機械式油圧ポンプ44は、本発明における油圧ポンプに相当するものである。
【0024】
また、車両用動力伝達装置10は、電動モータ46により駆動され、上記オイルパン内に還流した作動油を吸入して油圧制御回路42のライン油路へ圧送する電動式油圧ポンプ48を備えている。この電動式油圧ポンプ48は、専用の電動モータ46により駆動されるためにエンジン14が停止しても作動可能であって、少なくとも油圧ポンプ44よりも充分に小容量のものである。油圧制御回路42のライン油路のライン油圧が不足する場合、たとえばエンジン14が停止することで機械式油圧ポンプ44も停止してライン油圧が所定値よりも低くなった場合などには、そのライン圧を所定値以上に維持してベルト滑りを防止するために電動式油圧ポンプ48から上記ライン油路へ作動油が圧送されるようになっている。
【0025】
ベルト式無段変速機20は、前後進切換装置18およびトルクコンバータ16をそれぞれ介してエンジン14に連結された第1軸36と、その第1軸36と平行に設けられ、減速歯車装置22および差動歯車装置26をそれぞれ介して駆動輪24に連結された第2軸50と、第1軸36に固設されたプライマリプーリ(溝幅可変プーリ)52と、第2軸50に固設されたセカンダリプーリ(溝幅可変プーリ)54と、各プーリ52、54のV溝56にそれぞれ巻き掛けられた無端環状の伝動ベルト58とを備え、エンジン14によって駆動される機械式油圧ポンプ44から圧送された作動油を制御することにより、V溝56の溝幅を変化させて伝動ベルト58の掛かり径を変化させることで変速比を連続的に変化させる無段変速機である。
【0026】
図2は、図1の車両用動力伝達装置10の要部を示す断面図である。図2において、プライマリプーリ52は、第1軸36に固設された第1固定シーブ52aと、その第1固定シーブ52aに対して第1軸中心線C1方向の接近および離間可能に設けられた第1可動シーブ52bと、その第1可動シーブ52bを第1軸中心線C1方向に移動させることで第1固定シーブ52aと第1可動シーブ52bとの間のV溝56の溝幅を変化させる第1油圧シリンダ52cとを備えて構成されている。セカンダリプーリ54は、第2軸50に固設された第2固定シーブ54aと、その第2固定シーブ54aに対して第2軸中心線C2方向の接近および離間可能に設けられた第2可動シーブ54bと、その第2可動シーブ54bを第2固定シーブ54aに向けて押圧することで伝動ベルト58に幅方向の挟圧力を付与する第2油圧シリンダ54cとを備えて構成されている。
【0027】
以上のように構成されたベルト式無段変速機20では、第1油圧シリンダ52cへ供給されるプライマリ油圧および第2油圧シリンダ54cへ供給されるセカンダリ油圧が油圧制御回路42によって前記ライン油圧からそれぞれ調圧されることにより、各プーリ52、54のV溝56の溝幅がそれぞれ変化させられて伝動ベルト58の掛かり径が変化させられ、変速比(=第1軸回転速度/第2軸回転速度)が連続的に変化させられると共に、伝動ベルト58が滑りを生じないようにベルト挟圧力が制御される。図2において実線で示す伝動ベルト58は、プライマリプーリ52での掛かり径が最小値とされ且つセカンダリプーリ54での掛かり径が最大値とされて、ベルト式無段変速機20の変速比が最大値とされた状態を示している。また、図2において2点鎖線で示す伝動ベルト58は、プライマリプーリ52での掛かり径が最大値とされ且つセカンダリプーリ54での掛かり径が最小値とされて、ベルト式無段変速機20の変速比が最小値とされた状態を示している。
【0028】
図1に戻って、減速歯車装置22は、第2軸50の後段に設けられ、後に詳述する油圧式動力伝達遮断機構74を介して第2軸50に連結される第1ドライブギヤ60と、その第1ドライブギヤ60に噛み合わされ、第1軸36および第2軸50と平行に設けられたカウンタシャフト62に連結された第1ドリブンギヤ64と、カウンタシャフト62に固設された第2ドライブギヤ66と、その第2ドライブギヤ66に噛み合わされ、差動歯車装置26のデフケース68に固設された第2ドリブンギヤ70とを備えて構成されている。
【0029】
車両12には、例えばエンジン14や前後進切換装置18やベルト式無段変速機20などを制御するための制御装置として電子制御装置72が備えられている。電子制御装置72は、例えばCPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えた所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、CPUがRAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより車両12の各種制御を実行する。例えば、電子制御装置72は、エンジン14の出力制御、ベルト式無段変速機20の変速制御およびベルト挟圧力制御、油圧制御回路42のライン油圧の不足を補うための電動式油圧ポンプ48の作動を制御する電動式油圧ポンプ制御、例えば車両12の停止時や減速走行中などにおいて所定のエコラン制御開始条件が成立したときにエンジン14を停止させ、所定のエコラン制御終了条件が成立したときにエンジン14を再始動させるエコラン制御などを実行する。
【0030】
電子制御装置72のエコラン制御部は、燃費の向上、排気ガスの低減、および騒音の低減等のために、車両12の減速走行中において所定のエコラン制御開始条件が成立した場合には、エンジン14を一時的に停止させ且つ前進用クラッチ38および後進用ブレーキ40を共に解放させるエコランを実施する。また、エコラン制御部は、エコラン制御の実施中において所定のエコラン制御終了条件が成立した場合には、エンジン14を始動させ且つ前進用クラッチ38および後進用ブレーキ40のどちらかを係合させる。
【0031】
上記所定のエコラン制御開始条件は、例えば、シフトポジションが「D」ポジションであること、アクセル開度が零であること、ブレーキオンであること、および車速が所定値以下の低速又は停車中であること等である。また、上記所定のエコラン制御終了条件は、例えば、シフトポジションが「D」ポジションであるときにおいて、アクセルが踏み込まれたこと、又はブレーキオフとされたこと等である。
【0032】
電子制御装置72の電動式油圧ポンプ制御部は、エコラン制御部によりエンジン14が停止させられて機械式油圧ポンプ70が停止させられている間、エンジン14の再始動時においてクラッチ38または40、油圧シリンダ52cおよび54cの作動が遅れないように電動式油圧ポンプ48を継続的に作動させて油圧制御回路42のライン油圧が予め設定された待機圧となるようにする。これにより、エコラン制御の実施中の各油圧装置の油抜けが抑制され、エコラン制御終了直後の発進応答性が確保される。なお、上記待機圧は、エコラン制御実施中の第1油圧シリンダ52cおよび第2油圧シリンダ54cなど各油圧装置の油抜けを補うために必要且つ十分な値に設定される。そのため、電動式油圧ポンプ48は、上記待機圧を供給するのに必要且つ十分な吐出容量を備えるものであって、比較的低出力容量のものが採用される。
【0033】
ここで、上記減速走行中のエコラン制御の実施中において例えば急ブレーキにより駆動輪24がロック状態となった場合を想定する。この場合、駆動輪24からセカンダリプーリ54までは駆動輪24と同様に回転がロックされるが、プライマリプーリ52にはそのプライマリプーリ52よりエンジン14側の回転部材から伝達された慣性トルクが入力される。前述のように、電動式油圧ポンプ48は前記待機圧を供給するのに必要且つ十分な吐出容量を備える比較的低容量のものが選定されるために、上記慣性トルクによっても伝動ベルト58が滑らないほどのベルト挟圧力を各プーリ52および54に生じさせるほどの吐出容量を備えない。そのため、減速エコランを実施すると伝動ベルト58が各プーリ52および54に対して滑る所謂ベルト滑りが起こることが考えられる。しかしながら、本実施例の車両用動力伝達装置10は、エンジン14が停止されて機械式油圧ポンプ44から作動油が作用されないとき即ち減速エコラン実施中には第2軸50と第1ドライブギヤ60との間の動力伝達を阻止する油圧式動力伝達遮断機構74を備えることから、上記ベルト滑りが抑制される。以下、この油圧式動力伝達遮断機構74について詳述する。
【0034】
図3は、図2に示す車両用動力伝達装置10のうちのベルト式無段変速機20の第2軸50のエンジン14側の端部と、その端部の外周側に設けられた第1ドライブギヤ60とを含む部分を拡大して示す断面図である。図3において、油圧式動力伝達遮断機構74は、第2軸50のエンジン14側の端部と第1ドライブギヤ60との間に設けられている。この油圧式動力伝達遮断機構74は、機械式油圧ポンプ44からの作動油が作用されるときは第2軸50と第1ドライブギヤ60との間の動力伝達を許容し、機械式油圧ポンプ44からの作動油が作用されないときは第2軸50と第1ドライブギヤ60との間の動力伝達を阻止(遮断)するものである。本実施例の油圧式動力伝達遮断機構74は、ベルト式無段変速機20の第2軸50と駆動輪24との間の動力伝達経路のうちの、第2軸50のエンジン14側の端部と第1ドライブギヤ60との間に設けられている。
【0035】
図4は、図3のIV-IV矢視部断面を示す断面図である。図3及び図4に示すように、油圧式動力伝達遮断機構74は、第2軸50の内周部において第2軸中心線C2方向に穿設され、第2軸50のエンジン14側の端部を回転可能に支持する軸受76へ作動油を供給する潤滑油路78と、その潤滑油路78から第2軸50の外周面まで径方向に貫通させられて内周側が小径となるように段付状に形成され、周方向において等間隔に複数(本実施例では3つ)設けられた段付貫通孔80とを有する軸部材としての第2軸50を備えて構成される。軸受76は本発明における被潤滑部材に相当するものであり、また、段付貫通孔80は本発明における貫通孔に相当するものである。また、油圧式動力伝達遮断機構74は、上記第2軸50の外周側に第2軸中心線C2まわりの相対回転可能に嵌め入れられ、各段付貫通孔80の外周側の開口にそれぞれ対向する複数(本実施例では3つ)の半球面状の凹面82が内周面に形成された円筒状伝達部材としての第1ドライブギヤ60と、段付貫通孔80の大径部の内径よりも僅かに小さい直径を有し、段付貫通孔80の大径部内を摺動可能且つ段付貫通孔80の外周側の開口内に突き出し可能に各段付貫通孔80に各々嵌め入れられた複数(本実施例では3つ)の球形の係合子84とを備えて構成される。第2軸50の外周面のうちの段付貫通孔80の第2軸中心線C2方向の両側には、その第2軸50の外周面と第1ドライブギヤ60内周面との間に形成された環状隙間を封止する一対の環状シール部材86が設けられている。
【0036】
上記潤滑油路78には、前記油圧制御回路42から作動油が供給される。油圧制御回路42は、機械式油圧ポンプ44から圧送された油圧を元圧として複数の調圧弁で調圧された作動油を、例えばトルクコンバータ16、前進用クラッチ38、後進用ブレーキ40、第1油圧シリンダ52c、および第2油圧シリンダ54c等に供給するが、潤滑油路78には、例えば上記調圧弁からリリーフされた作動油がトランスアクスルケース28に形成された油路88を通じて供給されるようになっている。
【0037】
上記凹面82は、機械式油圧ポンプ44から作動油が圧送されて前記油圧制御回路42から潤滑油路78へ作動油が供給されている場合には、係合子84と凹面82との係合によるトルク容量が第2軸50と第1ドライブギヤ60との間の最大伝達トルクよりも大きくなるように、また、機械式油圧ポンプ44から作動油が圧送されず前記油圧制御回路42から潤滑油路78へ作動油が供給されていない場合には、係合子84が凹面82によって段付貫通孔80内に押し込まれるように、形状および深さが設定される。
【0038】
以上のように構成された油圧式動力伝達遮断機構74は、エンジン14により駆動されている機械式油圧ポンプ44から作動油が圧送されて前記油圧制御回路42から潤滑油路78を通じて段付貫通孔80へ作動油が供給された場合には、その段付貫通孔80から外周側へ突き出た係合子84が凹面82に嵌り込むことにより、第2軸50と第1ドライブギヤ60との間の動力伝達を可能とする。そして、油圧式動力伝達遮断機構74は、エンジン14が停止されることで機械式油圧ポンプ44から作動油が圧送されなくなり前記油圧制御回路42から潤滑油路78を通じて段付貫通孔80へ作動油が供給されなくなった場合には、係合子84を外周側へ押し付ける圧力が作用しなくなることでその係合子84が段付貫通孔80内へ押し込まれることにより、第2軸50と第1ドライブギヤ60との間の動力伝達を阻止(遮断)する。そのため、例えば、前記減速走行中のエコラン制御の実施中において例えば急ブレーキにより駆動輪24がロック状態となった場合であっても、第2軸50がロック状態とならず第1軸36と共に自由回転状態とされる。したがって、プライマリプーリ52にそのプライマリプーリ52よりエンジン14側の回転部材から伝達された慣性トルクが入力されても、第1軸36および第2軸50が共に回転することでベルト滑りの発生が抑えられる。
【0039】
本実施例の車両用動力伝達装置10によれば、エンジン12に連結された第1軸36と、その第1軸36と平行に設けられ、駆動輪24に連結された第2軸50と、それら第1軸36および第2軸50に固設されたプライマリプーリ52およびセカンダリプーリ54と、それらプーリ52および54のV溝56にそれぞれ巻き掛けられた伝動ベルト58とを備え、エンジン12によって駆動される機械式油圧ポンプ44から圧送された作動油を制御することにより、V溝56の溝幅を変化させて伝動ベルト58の掛かり径を変化させることで変速比を連続的に変化させるベルト式無段変速機20を含む車両用動力伝達装置10であって、第2軸50と駆動輪24との間に設けられ、機械式油圧ポンプ44からの作動油が作用されるときはそれら第2軸50と駆動輪24との間の動力伝達を許容し、前記作動油が作用されないときは前記動力伝達を阻止する油圧式動力伝達遮断機構74を備える。このようにすれば、簡単な構成の油圧式動力伝達遮断機構74により減速走行中のエコラン制御の実施中のベルト滑りを抑制することができる。また、現行の車両用動力伝達装置から大幅な変更が不要であるために油圧式動力伝達遮断機構74を車両用動力伝達装置10に設けることによるコストアップを抑えることができる。
【0040】
また、本実施例の車両用動力伝達装置10によれば、油圧式動力伝達遮断機構74は、第2軸50の内周部において第2軸中心線C2方向に穿設され、第2軸50のエンジン14側の端部を回転可能に支持する軸受76へ作動油を供給する潤滑油路78と、その潤滑油路78から第2軸50の外周面まで径方向に貫通させられて内周側が小径となるように段付状に形成され、周方向において等間隔に複数(本実施例では3つ)設けられた段付貫通孔80とを有する軸部材としての第2軸50と、その第2軸50の外周側に第2軸中心線C2まわりの相対回転可能に嵌め入れられ、各段付貫通孔80の外周側の開口にそれぞれ対向する複数(本実施例では3つ)の凹面82が内周面に形成された円筒状伝達部材としての第1ドライブギヤ60と、段付貫通孔80の大径部の内径よりも僅かに小さい直径を有し、段付貫通孔80の大径部内を摺動可能且つ段付貫通孔80の外周側の開口内に突き出し可能に各段付貫通孔80に各々嵌め入れられた複数(本実施例では3つ)の係合子84とを備えて構成されている。そして、油圧式動力伝達遮断機構74は、エンジン14により駆動されている機械式油圧ポンプ44から作動油が圧送されて油圧制御回路42から潤滑油路78を通じて段付貫通孔80へ作動油が供給された場合には、その段付貫通孔80から外周側へ突き出た係合子84が凹面82に嵌り込むことにより、第2軸50と第1ドライブギヤ60との間の動力伝達を可能とし、エンジン14が停止されることで機械式油圧ポンプ44から作動油が圧送されなくなり前記油圧制御回路42から潤滑油路78を通じて段付貫通孔80へ作動油が供給されなくなった場合には、係合子84が段付貫通孔80内へ押し込まれることにより、第2軸50と第1ドライブギヤ60との間の動力伝達を阻止(遮断)するものである。このようにすれば、簡単な構成により減速走行中のエコラン制御の実施中のベルト滑りを抑制することができる。
【0041】
また、本実施例の車両用動力伝達装置10によれば、第2軸50の後段に減速歯車装置22を備え、前記軸部材は第2軸50の端部であり、前記円筒状伝達部材は減速歯車装置22の駆動歯車としての第1ドライブギヤ60である。このようにすれば、減速走行中のエコラン制御が実施されているときに例えば急ブレーキにより駆動輪24がロックするような場合であっても、エンジン12によって駆動される機械式油圧ポンプ44からの作動油が作用されないために油圧式動力伝達遮断機構74により第2軸50と第1ドライブギヤ60との間の動力伝達が阻止(遮断)されるので、第1軸36および第2軸50が共に自由回転状態となり伝動ベルト58の滑りを抑制することができる。
【0042】
また、本実施例の車両用動力伝達装置10によれば、係合子84は球形であり、凹面82は半球面状である。このようにすれば、係合子84が安価な部品から成り、また凹面82を形成するための加工が簡単なために、油圧式動力伝達遮断機構74を安価に構成することができる。
【0043】
また、本実施例の車両用動力伝達装置10によれば、凹面82は、機械式油圧ポンプ44から作動油が圧送されている場合に係合子84とその凹面82との係合によるトルク容量が第2軸50と第1ドライブギヤ60との間の最大伝達トルクよりも大きくなるように、また、機械式油圧ポンプ44から作動油が圧送されず油圧制御回路42から潤滑油路78へ作動油が供給されていない場合には、係合子84が凹面82によって段付貫通孔80内に押し込まれるように、形状および深さが設定される。このようにすれば、エンジン作動時における第2軸50から駆動輪24までの動力伝達を確実に行いつつも、減速走行中のエコラン制御の実施中(エンジン停止時)にはエンジン12が停止されて直ぐに第2軸50と駆動輪24との間の動力伝達を遮断することができる。
【0044】
また、本実施例の車両用動力伝達装置10によれば、潤滑油路78は、ベルト式無段変速機20が有する被潤滑部材である軸受76へ潤滑油を供給するものである。このようにすれば、現行のベルト式無段変速機にも備えられている潤滑油路78を利用し、凹面82、係合子84、および段付貫通孔80を追加するのみで油圧式動力伝達遮断機構74を構成することができる。そのため、コストアップを抑えつつ減速走行中のエコラン制御中のベルト滑りを抑制することができる。
【0045】
以上、本発明の一実施例を図面を参照して詳細に説明したが、本発明はこの実施例に限定されるものではなく、別の態様でも実施され得る。
【0046】
たとえば、前述の実施例において、油圧式動力伝達遮断機構74は、第2軸50のエンジン14側の端部と第1ドライブギヤ60との間に設けられていたが、これに限らず、第2軸50と駆動輪24との間の動力伝達経路に設けられればよい。
【0047】
また、前述の実施例において、油圧式動力伝達遮断機構74の構成は一例が示されたものであって、その他の機械的構成によっても実現され得る。例えば、係合子84は球形であったが、例えば直方体や、軸中心線C2に平行な方向に長手状を為す棒状の部材などであってもよい。そして、凹面82は半球面状であったが、これに限られない。要するに、エンジン14により駆動されている機械式油圧ポンプ44から作動油が圧送されて油圧制御回路42から潤滑油路78を通じて段付貫通孔80へ作動油が供給された場合には、その段付貫通孔80から外周側へ突き出た係合子84が凹面82に嵌り込み、且つ、エンジン14が停止されることで機械式油圧ポンプ44から作動油が圧送されなくなり油圧制御回路42から潤滑油路78を通じて段付貫通孔80へ作動油が供給されなくなった場合には、係合子84を段付貫通孔80内へ押し込むようなものであれば、その形状および深さは適宜変更され得る。また、例えば、油圧式動力伝達遮断機構74は、潤滑油路78から段付貫通孔80へ作動油が供給された場合には係合子84が径方向外側へ移動することで第2軸50および第1ドライブギヤ60に係合してそれら第2軸50および第1ドライブギヤ60を相対回転不能に固定するものであったが、これに限らず、例えば、潤滑油路78から段付貫通孔80へ作動油が供給された場合には係合子84が例えば軸中心線C2方向へ移動することで第2軸50および第1ドライブギヤ60に係合してそれら第2軸50および第1ドライブギヤ60を相対回転不能に固定するものであってもよい。
【0048】
また、前述の実施例において、段付貫通孔80へは軸受76を潤滑するための潤滑油路78から作動油が供給されるようになっていたが、これに限らず、他の油路から作動油が供給されてもよい。
【0049】
また、前述の実施例においては、エコラン制御の実施中は常に電動式油圧ポンプ48が作動させられるようになっていたが、電動式油圧ポンプ48は機械式油圧ポンプ44に比べて応答性が優れているため、エコラン制御中にエンジン再始動が判定されたときに電動式油圧ポンプ48を作動させて各油圧装置へ油圧を速やかに供給するようにしても良いなど、種々の態様が可能である。
【0050】
また、前述の実施例では、電動式油圧ポンプ48が設けられていたが、その電動式油圧ポンプ48に替えて、油圧を維持するための蓄圧器が設けられてもよい。
【0051】
また、第1油圧シリンダ52cおよび第2油圧シリンダ54cなどの油圧装置からの油抜けが少ない構造のベルト式無段変速機20では、電動式油圧ポンプ48やそれに替わる蓄圧器は必ずしも必要ない。
【0052】
なお、上述したのはあくまでも一実施形態であり、その他一々例示はしないが、本発明は、その主旨を逸脱しない範囲で当業者の知識に基づいて種々変更、改良を加えた態様で実施することができる。
【符号の説明】
【0053】
10:車両用動力伝達装置
12:エンジン
20:ベルト式無段変速機
22:減速歯車装置
24:駆動輪
36:第1軸
44:機械式油圧ポンプ(油圧ポンプ)
50:第2軸(軸部材)
52:プライマリプーリ(溝幅可変プーリ)
54:セカンダリプーリ(溝幅可変プーリ)
56:V溝
58:伝動ベルト
60:第1ドライブギヤ(円筒状伝達部材、駆動歯車)
74:油圧式動力伝達遮断機構
78:潤滑油路(油路)
80:段付貫通孔(貫通孔)
82:凹面
84:係合子
C2:第2軸中心線(軸部材の軸中心線)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンに連結されるための第1軸と、該第1軸と平行に設けられ、駆動輪に連結されるための第2軸と、該第1軸および該第2軸に固設された一対の溝幅可変プーリと、該一対の溝幅可変プーリのV溝にそれぞれ巻き掛けられた伝動ベルトとを備え、前記エンジンによって駆動される油圧ポンプから圧送された作動油を制御することにより、該V溝の溝幅を変化させて該伝動ベルトの掛かり径を変化させることで変速比を連続的に変化させるベルト式無段変速機を含む車両用動力伝達装置であって、
前記第2軸と前記駆動輪との間に設けられ、前記油圧ポンプからの作動油が作用されるときは該第2軸と該駆動輪との間の動力伝達を許容し、該作動油が作用されないときは該動力伝達を阻止する油圧式動力伝達遮断機構を備えることを特徴とする車両用動力伝達装置。
【請求項2】
前記油圧式動力伝達遮断機構は、
内周側に位置し、前記作動油が供給される油路と、該油路から外周面まで径方向に貫通させられた1又は複数の貫通孔とを有する軸部材と、
該軸部材の外周側に該軸部材の軸中心線まわりの相対回転可能に嵌め入れられ、前記貫通孔の外周側開口に対向する凹面が内周面に形成された円筒状伝達部材と、
前記貫通孔の開口内に突き出し可能に該貫通孔に嵌め入れられた係合子とを備え、
前記油路から前記貫通孔へ作動油が供給された場合には、該貫通孔から突き出た前記係合子が前記円筒状伝達部材の凹面に嵌り込むことにより該円筒状伝達部材と前記軸部材との間の動力伝達を可能とし、前記油路から前記貫通孔へ作動油が供給されない場合には、前記係合子が前記貫通孔内へ押し込まれることにより前記円筒状伝達部材と前記軸部材との間の動力伝達を阻止するものである
ことを特徴とする請求項1の車両用動力伝達装置。
【請求項3】
前記第2軸の後段に減速歯車装置を備え、
前記軸部材は前記第2軸の端部であり、
前記円筒状伝達部材は前記減速歯車装置の駆動歯車である
ことを特徴とする請求項1または2の車両用動力伝達装置。
【請求項4】
前記係合子は球形であり、
前記凹面は半球面状である
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1の車両用動力伝達装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−154423(P2012−154423A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−14180(P2011−14180)
【出願日】平成23年1月26日(2011.1.26)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】