説明

車両用収納部構造

【課題】収納部におけるリッド部材の剛性を、収納性の悪化等の事態を生じることなく充分に確保する。
【解決手段】車室内に配設された後列シート5からなる乗員用シートの前方部に車室フロア1を下方に凹入させた収納部6が設けられた車両用収納部構造において、上記収納部6の上面開口部を覆うようにリッド部材10を設け、上記収納部6の内部に車両整備用のツール部材としてのジャッキ12を配設するとともに、このジャッキ12に上記リッド部材10を支持させるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品を収納するための収納部が車室フロアに設けられた車両用収納部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、下記特許文献1に示されるように、車室フロアに設けられて少なくとも頂部の一部が開放された箱状のケース本体と、このケース本体内の開放部に配設されてケース本体を開閉する蓋(リッド部材)とからなる小物入れ部を、後列シートからなる乗員用シートの前方側に設けることにより、この乗員用シートの前方側に位置するデッドスペースを物品の収納部として有効に利用し得るように構成した自動車室内の収納構造が知られている。
【特許文献1】特開2000−335313号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上記小物入れ部を開閉するリッド部材の上面には、乗員用シートに着座した乗員の足が載置されるため、このリッド部材の剛性はできるだけ大きい方が望ましい。しかしながら、そのための措置として例えばリッド部材をむやみに厚くしたような場合には、リッド部材の重量が重くなって開閉時の操作性が損なわれるとともに、物品を収納するための空間が狭くなって収納性が悪化する等の問題が生じる。
【0004】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、収納性の悪化等の事態を生じることなくリッド部材の剛性を充分に確保することが可能な車両用収納部構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するためのものとして、本発明は、車室内に配設された乗員用シートの前方部に車室フロアを下方に凹入させた収納部が設けられた車両用収納部構造であって、上記収納部の上面開口部を覆うリッド部材を備え、上記収納部の内部に車両整備用のツール部材が配設されるとともに、このツール部材によって上記リッド部材が支持されるように構成されたことを特徴とするものである(請求項1)。
【0006】
本発明によれば、収納部の内部に収納された車両整備用のツール部材を、リッド部材を支持する支持部材として利用するようにしたため、乗員用シートに着座した乗員の足元部に形成されたデッドスペースに上記ツール部材をすっきり収納しながら、上記リッド部材の支持剛性を充分に確保することができる。この結果、リッド部材を厚くして収納部の収納性等を犠牲にすることなく、上記リッド部材の剛性を効果的に向上させることができ、上記乗員用シートに着座してリッド部材の上面に足を載置する乗員の乗り心地を良好状態に維持することができる。
【0007】
上記ツール部材は、上記リッド部材を介して入力される上下方向の荷重を支持可能に構成されていることが好ましい(請求項2)。
【0008】
このようにすれば、上記乗員用シートに着座した乗員の足部から入力される上下方向の荷重に充分耐え得る支持剛性をリッド部材に付与することができる。
【0009】
また、上記構成においては、上記収納部の凹入高さと上記ツール部材の高さが一致するように構成されていることが好ましい(請求項3)。
【0010】
このようにすれば、上記リッド部材を、周囲の車室フロアに対しその上面高さを一致させた状態で(つまりリッド部材の上面と周囲の車室フロアの上面とを略面一にした状態で)ツール部材に支持させることができ、上記乗員の乗り心地をより良好状態に維持できるという利点がある。
【0011】
上記収納部は、上記ツール部材の収納スペースと、他の物品の収納スペースとを備えていることが好ましい(請求項4)。
【0012】
このようにすれば、ツール部材の収納と他の小物類等の物品の収納とを両立させることができ、上記収納部の収納性をより効果的に向上させることができる。
【0013】
上記収納部の内壁部には、上記ツール部材が着脱自在に固定される係止部が設けられていることが好ましい(請求項5)。
【0014】
このようにすれば、収納部の内壁部に固定されたツール部材により上記リッド部材をより安定した状態で支持できるとともに、車両整備時に上記ツール部材を使用する場合には、このツール部材を容易に収納部から離脱させて取り出すことができるという利点がある。
【0015】
上記ツール部材はジャッキであることが好ましい(請求項6)。
【0016】
このようにすれば、極めて大きな支持力を有したジャッキを利用して上記リッド部材に入力される上下方向の荷重をより安定して支持することができる等の利点がある。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように、本発明によれば、収納性の悪化等の事態を生じることなくリッド部材の剛性を充分に確保することが可能な車両用収納部構造を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1〜図4は、本発明の車両用収納部構造の実施形態を示している。この車両の車室の底部を形成する車室フロア1上には、運転席2および助手席3からなる前列シート4が配設されるともに、その後方側には、車幅方向に延びる一体のシートクッションを備えたいわゆるベンチシートタイプの後列シート5からなる乗員用シートが配設されている。そして、この後列シート5の前方側には、車室フロア1を下方に凹入させてなる左右一対の収納部6,6が設けられている。
【0019】
上記車室フロア1は、鋼板材等により形成されて左右両側辺部がサイドシルSの内壁面等に固定されたフロアパネル7と、その上面を覆うフロアマット8とを有している。また、上記後列シート5の設置部の前方側には、フロアパネル7を下方に凹入させることにより凹入部7aが形成されるとともに、この凹入部7aの内壁部に発泡ウレタン等からなる被覆材9が設置されることにより、上記収納部6の収納空間が形成されている。この収納空間の上方には、平面視で略矩形に形成された板状体11と、その上面に敷設されたフロアマット8とからなるリッド部材10が、上記収納部6の上面開口部を覆うように設置されている。
【0020】
上記収納部6の内部には、車両整備用のツール部材としてのジャッキ12が配設されている。このジャッキ12は、その高さ寸法が上記収納部6の凹入高さと略一致する状態で収納部6の内部に配設されることにより、上記リッド部材10を、周囲の車室フロア1に対しその上面高さと一致させた状態で下から支持するように構成されている。
【0021】
上記ジャッキ12は、上記収納部6の底壁部に設置された係止部13に着脱自在に固定されている。具体的には、上記ジャッキ12の脚部が上記係止部13に係止ボルト等を介して取り外し可能な状態で取り付けられることにより、ジャッキ12の駆動軸15が車幅方向に沿うように配設された状態で、上記収納部6の底部にジャッキ12が着脱自在に固定されている。
【0022】
また、上記ジャッキ12は、収納部6の内部においてその後端部寄りの所定部位に配設されることにより、上記リッド部材10の後端部近傍を支持するように構成されている。一方、上記リッド部材10の前端部は、上記被覆材9の前端部上面に形成された段部9aに載置されて支持されている。これにより、リッド部材10の前端部および後端部が下から支持され、図2のように後列シート5に着座した乗員の足部がリッド部材10の上面に載置された状態においても、この乗員の足部から入力される上下方向の荷重に充分耐え得る支持剛性が上記リッド部材10に付与されるように構成されている。
【0023】
また、上記のようにジャッキ12が収納部6内の後端部寄りに配設されることにより、このジャッキ12の前方側に広い空間が形成され、当該部分に乗員の靴や各種小物類等の他の物品を収納し得るように構成されている。すなわち、収納部6は、ジャッキ12の収納スペースと、他の物品の収納スペースとを有するように構成されている。
【0024】
上記リッド部材10は、上記ジャッキ12の上部14に着脱自在に取り付けられている。すなわち、上記リッド部材10には、ジャッキ12の荷受台14aの近傍に設けられた左右一対の取付面14bに対応する膨出部16が設けられるとともに、その下面には、上記取付面14bに形成された係止孔17に対して係脱可能に係止される一対の係止クリップ18が突設されている。そして、上記係止クリップ18の先端部が上記係止孔17に圧入される等により、ジャッキ12の上部14に上記リッド部材10が着脱自在に取り付けられている。
【0025】
上記のように構成された車両用収納部構造において、上記収納部6内に物品を収納する場合には、その上面開口部を覆った状態にあるリッド部材10を持ち上げるように引っ張り、ジャッキ12の上部に設けられた係止孔17から上記係止クリップ18を離脱させてリッド部材10をジャッキ12から取り外すことにより、図3に示すように、上記収納部6の上面開口部を開放する。そしてこの状態で、上記収納部6に対する物品の出し入れを行った後、上記係止クリップ18の先端部を係止孔17内に圧入する等により、リッド部材10をジャッキ12の上部14に取り付ける。このようにして収納部6内に配設されたジャッキ12の上部14に上記リッド部材10が取り付けられ、上記収納部6の上面開口部がリッド部材10により覆われた状態となると、収納部6内に収納された物品がリッド部材10により隠蔽されるとともに、このリッド部材10と、その周囲に位置する車室フロア1の上面部とによって、図2に示すように、後列シート5の前方部に平坦なフロア面が形成されることになる。
【0026】
また、上記収納部6内に収納されたジャッキ12を、その本来の機能である車両の修理用工具として使用する場合には、その上部14からリッド部材10を取り外して上記収納部6の上面開口部を開放した状態で、上記係止部13に係止されたジャッキ12の脚部を離脱させることにより、上記収納部6内からジャッキ12を取り出すようにする。
【0027】
上記のように車室内に配設された後列シート5からなる乗員用シートの前方部に車室フロア1を下方に凹入させた収納部6が設けられた車両用収納部構造において、上記収納部6の上面開口部を覆うようにリッド部材10を設け、上記収納部6の内部に車両整備用のツール部材としてのジャッキ12を配設するとともに、このジャッキ12に上記リッド部材10を支持させるようにした上記実施形態の構成によれば、収納性の悪化等の事態を生じることなくリッド部材10の剛性を充分に確保できるという利点がある。
【0028】
すなわち、上記構成によれば、収納部6の内部に収納されたジャッキ12を、リッド部材10を支持する支持部材として利用するようにしたため、後列シート5に着座した乗員の足元部に形成されたデッドスペースにジャッキ12をすっきり収納しながら、上記リッド部材10の支持剛性を充分に確保することができる。この結果、リッド部材10を厚くして収納部6の収納性等を犠牲にすることなく、上記リッド部材10の剛性を効果的に向上させることができ、上記後列シート5に着座して上記リッド部材10の上面に足を載置する乗員の乗り心地を良好状態に維持することができる。
【0029】
特に、上記実施形態のように、ジャッキ12を利用してリッド部材10を支持するようにした場合には、このジャッキ12を従来のように後部荷室内に収納する必要がないため、その分、後部荷室の荷物収納スペースを拡大することができる。しかも、上記ジャッキ12は極めて大きな支持力を有しているため、上記リッド部材10に入力される上下方向の荷重を安定して支持することができ、上記後列シート5に着座した乗員の乗り心地をより良好に確保できるという利点がある。
【0030】
さらに、上記ジャッキ12は、その上部14に設けられた荷受台14aを昇降駆動する機能を有しているため、車種や仕様の相違により収納部6の凹入高さが異なるような場合においても、当該収納部6の凹入高さに上記ジャッキ12の高さ寸法を容易に一致させることができる。この結果、上記のような車種や仕様の相違にかかわらず、上記リッド部材10を、周囲の車室フロア1に対しその上面高さを一致させた状態で(つまりリッド部材10の上面と周囲の車室フロア1の上面とを略面一にした状態で)ジャッキ12に支持させることができ、上記乗員の乗り心地をより良好状態に維持できるという利点がある。
【0031】
また、上記実施形態のように、収納部6の内部に、ジャッキ12の収納スペースと、乗員の靴や各種小物類等の他の物品の収納スペースとを設けることにより、ジャッキ12以外の種々の物品をも収納部6内に収納し得るように構成した場合には、ジャッキ12の収納と他の小物類等の物品の収納とを両立させることができ、上記収納部6の収納性をより効果的に向上できるという利点がある。
【0032】
特に、上記実施形態のように、収納部6内の後端部寄りの位置にジャッキ12を配設した場合には、例えば収納部6の前後方向中央部にジャッキ12を配設したような場合と異なり、ジャッキ12の設置部前方に仕切りのない広いスペースを確保することができるため、当該スペースに多様な物品を収納することができ、上記収納部6の収納性をさらに効果的に向上できるという利点がある。
【0033】
また、上記実施形態では、収納部6の底壁部に設置された係止部13にジャッキ12を着脱自在に固定したため、この収納部6の底壁部に固定されたジャッキ12により上記リッド部材10をより安定した状態で支持できるとともに、上記ジャッキ12をその本来の機能である車両の修理用工具として使用する場合には、ジャッキ12を容易に収納部6から離脱させて取り出すことができるという利点がある。
【0034】
なお、上記実施形態では、収納部6内にジャッキ12を配設するとともに、このジャッキ12によってリッド部材10が支持されるように構成したが、例えば各種車載工具が収納される工具箱など、他の車両整備用のツール部材にリッド部材10を支持させるようにしてもよい。いずれにせよ、後列シート5に着座した乗員の足部から入力される上下方向の荷重に充分耐え得る支持剛性をリッド部材10に付与できるものであれば、上記ツール部材として好適に使用することができる。
【0035】
また、上記実施形態に示すように車室フロア1に左右一対の収納部6,6が設けられた車両用収納部構造において、上記両収納部6,6をそれぞれ同一の構造としてもよいが、その何れか一方については、上記ジャッキ12等からなるリッド保持手段を省略するとともに、従来技術と同様に、リッド部材を、その基端部に設けられたヒンジ金具で枢支し、このヒンジ金具を支点に上記リッド部材を揺動変位させることにより収納部の上面開口部を開閉可能に構成してもよい。さらに、上記実施形態では、運転席2および助手席3からなる前列シート4の後方に配設された後列シート5の前方に左右一対の収納部6,6を配設した例について説明したが、これに限られず、例えば上記助手席3の前方部等に、上記ジャッキ12等からなるリッド保持手段が配設された収納部6を配設した構造とすることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の実施形態に係る車両用収納部を有する車両の平面図である。
【図2】上記車両用収納部の構造を示す側面断面図である。
【図3】上記車両用収納部の構造を示す正面断面図である。
【図4】上記車両用収納部の構造を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0037】
1 車室フロア
5 後列シート(乗員用シート)
6 収納部
10 リッド部材
12 ジャッキ(ツール部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室内に配設された乗員用シートの前方部に車室フロアを下方に凹入させた収納部が設けられた車両用収納部構造であって、
上記収納部の上面開口部を覆うリッド部材を備え、
上記収納部の内部に車両整備用のツール部材が配設されるとともに、このツール部材によって上記リッド部材が支持されるように構成されたことを特徴とする車両用収納部構造。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用収納部構造において、
上記ツール部材が、上記リッド部材を介して入力される上下方向の荷重を支持可能に構成されたことを特徴とする車両用収納部構造。
【請求項3】
請求項1または2に記載の車両用収納部構造において、
上記収納部の凹入高さと上記ツール部材の高さが一致するように構成されたことを特徴とする車両用収納部構造。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の車両用収納部構造において、
上記収納部が、上記ツール部材の収納スペースと、他の物品の収納スペースとを備えたことを特徴とする車両用収納部構造。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の車両用収納部構造において、
上記収納部の内壁部に、上記ツール部材が着脱自在に固定される係止部が設けられたことを特徴とする車両用収納部構造。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の車両用収納部構造において、
上記ツール部材がジャッキであることを特徴とする車両用収納部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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