説明

車両用圧縮空気供給装置

【課題】装置構成の簡素化を図った車両用圧縮空気供給装置を提供すること。
【解決手段】分岐室38と主ブレーキ用の圧縮空気回路51a,52aとの間に配置されるサービスブレーキ用圧力保護弁44,45と、分岐室38とパーキングブレーキ用の圧縮空気回路53aとの間に配置されるパーキングブレーキ用圧力保護弁48と、このパーキングブレーキ用圧力保護弁48と分岐室38とを繋ぐ供給路41に配置され、主ブレーキ用の圧縮空気回路51a,52aに供給される圧縮空気の圧力が所定圧力値に達するまで閉弁する圧力保護弁47とを備え、この圧力保護弁47をサービスブレーキ用圧力保護弁44,45及びパーキングブレーキ用圧力保護弁48と同一構造とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、車両のブレーキに圧縮空気を供給する車両用圧縮空気供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トラックやバス等の大型車両では、ブレーキチャンバーを作動させる作動流体として圧縮空気を用いたエアー式のブレーキ装置が採用され、この種のブレーキ装置では、各ブレーキチャンバーに圧縮空気を供給する車両用圧縮空気供給装置が搭載されている。この車両用圧縮空気供給装置は、空気圧縮機を備え、この空気圧縮機から吐出された圧縮空気をエアータンクに貯留し、このエアータンク内の圧縮空気を必要に応じて各ブレーキ回路に供給している。また、車両用圧縮空気供給装置は、各ブレーキ回路に対応する圧力保護弁をそれぞれ備え、これらブレーキ回路のいずれかが失陥した際には、この失陥したブレーキ回路に対応する圧力保護弁が閉じることにより、他の失陥していないブレーキ回路を保護するように機能している。
【0003】
また、近年、更なる安全性の観点から、サービスブレーキ回路に供給される圧縮空気の圧力が所定圧力値に達していないときには、パーキングブレーキ回路に対応する圧力保護弁を閉じることで、このパーキングブレーキへの圧力供給を停止する。通常、サービスブレーキは供給された圧縮空気の圧力によりブレーキ力を作動させる。一方、パーキングブレーキは、バネの付勢力を用いたスプリングブレーキであって、供給された圧縮空気の圧力によりブレーキ力を解除するように構成される。このため、パーキングブレーキ回路に対応する圧力保護弁の上流側に制御弁を設け、サービスブレーキ回路に供給される圧縮空気の圧力が充分でないためにサービスブレーキが作動不能である場合には、上記制御弁を閉弁することにより、パーキングブレーキ回路への圧力供給を停止してパーキングブレーキを解除できないようにしている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−23627号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来の制御弁は、サービスブレーキ回路の検出圧力によって制御されるソレノイドバルブの指令圧により開閉制御されていたため、装置内にソレノイドバルブや、このソレノイドバルブから制御弁に指令圧を出力するラインを設ける必要があり、装置構成が煩雑になるといった問題があった。
そこで、本発明は、装置構成の簡素化を図った車両用圧縮空気供給装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明は、車両に搭載する空気圧縮機を備え、該空気圧縮機から吐出した圧縮空気を車両の複数の負荷にそれぞれ供給する車両用圧縮空気供給装置において、前記空気圧縮機の吐出ラインに設けられて前記圧縮空気を各負荷に分岐する分岐室と、この分岐室と前記負荷としてのサービスブレーキ回路との間に配置されるサービスブレーキ用圧力保護弁と、前記分岐室と前記負荷としてのパーキングブレーキ回路との間に配置されるパーキングブレーキ用圧力保護弁と、このパーキングブレーキ用圧力保護弁と前記分岐室とを繋ぐ流路に配置され、前記サービスブレーキ回路に供給される圧縮空気の圧力が所定圧力値に達するまで閉弁する弁ユニットとを備え、この弁ユニットを前記各圧力保護弁と同一構造を有する圧力保護弁で形成したことを特徴とする。
【0007】
この構成において、前記弁ユニット、前記サービスブレーキ用圧力保護弁及び前記パーキングブレーキ用圧力保護弁は、それぞれ、本体内を内側空間と外側空間とに区分けする仕切壁と、この仕切壁に設けられた弁座と、この弁座に弾性力を介して当接される弁体とを備える構成を有し、前記サービスブレーキ用圧力保護弁及び前記パーキングブレーキ用圧力保護弁は、前記内側空間に空気を流入して前記外側空間から空気を排出する一方、前記弁ユニットは、前記外側空間に空気を流入して前記内側空間から空気を排出するように空気供給路と接続した構成としてもよい。
【0008】
また、前記弁ユニットは、前記サービスブレーキ用圧力保護弁及び前記パーキングブレーキ用圧力保護弁よりも高い圧力値で開弁し、当該サービスブレーキ用圧力保護弁及びパーキングブレーキ用圧力保護弁よりも低い圧力値で閉弁するように設定されていてもよい。
【0009】
また、前記パーキングブレーキ用圧力保護弁の下流側と前記吐出ラインとを接続する空気流通管を設け、この空気流通管に、前記パーキングブレーキ回路の空気圧力が前記吐出ラインの空気圧力より上昇した際に作動するチェックバルブを設けてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、サービスブレーキ回路に供給される圧縮空気の圧力が所定圧力値に達するまで閉弁する弁ユニットを各圧力保護弁と同一構造を有する圧力保護弁で形成したため、部品の共通化を図ることができるとともに、サービスブレーキ回路の検出圧力によって制御されるソレノイドバルブや、このソレノイドバルブから指令圧を出力するラインが不要となり、装置構成の簡素化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本実施の形態に係る圧縮空気供給システムの構成を示す図である。
【図2】圧力保護弁の概略側断面図であり、Aは閉弁状態を示し、Bは開弁状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本発明を適用した実施の形態に係る圧縮空気供給システム1の構成を示す図である。
図1に示す圧縮空気供給システム1(車両用圧縮空気供給装置)は、例えば、トラックやバス等の大型車両に搭載されるエアー式ブレーキ装置等に駆動用の圧縮空気を供給する装置であり、コンプレッサー4(空気圧縮機)と、コンプレッサー4を制御するECU2と、コンプレッサー4から吐出された圧縮空気の水分を除去して、上記車両の負荷(例えばブレーキ装置)に乾燥した圧縮空気を供給するエアードライヤーモジュール10とを備えて構成される。
ECU2は、圧縮空気供給システム1を搭載する車両の車速等に基づいて、上記車両のエンジンを制御するとともに、コンプレッサー4及びエアードライヤーモジュール10の動作を制御する。また、ECU2には、車両の車速等に関する情報、車両の走行距離に関する情報等の車両の走行状況に関する情報及びエアードライヤー32の動作状況に関する情報が入力されている。
【0013】
エアードライヤーモジュール10は、負荷51が接続される出力ポート21、負荷52が接続される出力ポート22、負荷53が接続される出力ポート23、負荷54が接続される出力ポート24、及び、負荷55が接続される出力ポート25を備えている。
負荷51〜53は、上記したブレーキ装置を構成するものであり、本実施形態では、負荷51は前輪の主ブレーキ(サービスブレーキ)、負荷52は後輪の主ブレーキ(サービスブレーキ)、負荷53はパーキングブレーキである。また、負荷54,55は、ホーンやクラッチ駆動機構等の圧縮空気で駆動されるアクセサリー類である。
また、負荷51〜55は、圧縮空気が流れる圧縮空気回路(サービスブレーキ回路、パーキングブレーキ回路)51a〜55aを備え、これら圧縮空気回路51a〜55aにはそれぞれエアータンク51b〜55bが接続されている。
エアードライヤーモジュール10は、ECU2の制御によって開閉される電磁弁101、102、及び、エアードライヤーモジュール10の各部における空気圧を検出して、検出値をECU2に出力する圧力センサー121,122,123を備えている。ECU2は、圧力センサー121〜123の検出値に基づいて、電磁弁101,102を開閉させる。
【0014】
コンプレッサー4は、図示しない補機ベルトを介してエンジンに連結され、エンジンの駆動力によって空気を圧縮する。コンプレッサー4は空気圧で制御され、この制御ライン26には電磁弁101が接続されており、電磁弁101の開閉によって、コンプレッサー4が空気を圧縮するロード状態と、圧縮を行わないアンロード状態とが切り替えられる。
【0015】
コンプレッサー4の吐出管(吐出ライン)11はエアードライヤーモジュール10の流入管31に接続され、流入管31にはエアードライヤー32が接続されている。エアードライヤー32は、ケース内に乾燥剤を収容しており、この乾燥剤によってコンプレッサー4から吐出された圧縮空気に含まれる水分等の異物を除去する。
コンプレッサー4とエアードライヤー32との間には、流入管31から分岐した分岐管31Aが接続され、この分岐管31Aには、排気バルブ33と排気口34とが直列に接続されている。この排気バルブ33が開くとエアードライヤー32の本体内の圧縮空気が排気口34から直接外部へ排出される。排気バルブ33は空気圧で制御され、その制御ライン39には電磁弁102が接続されている。電磁弁102は、ECU2の制御により開閉され、開弁状態においてエアードライヤー32下流側の空気圧を排気バルブ33に与える。排気バルブ33は通常時は閉鎖され、電磁弁102から空気圧が加わった場合のみ開弁して、圧縮空気を排気口34から放出する。
【0016】
ここで、エアードライヤーモジュール10内の空気圧が十分に高い状態で、排気バルブ33が開弁すると、エアードライヤー32よりも下流側(例えば、供給路35やエアータンク55a内)に貯留された圧縮空気がエアードライヤー32のケース内を逆流して排気口34から放出される。このときケースを通る空気は急速な減圧によってスーパードライとなり、ケース内の乾燥剤から水分を奪うので、乾燥剤が再生される。再生後の乾燥剤は、水分を吸着する吸着能が回復しており、圧縮空気の水分を除去可能となっている。この再生動作は、ECU2によって電磁弁102を開弁させることで、予め設定された時間毎、或いは、エアードライヤーモジュール10内の空気圧等が予め設定された条件を満たした場合等の所定の再生タイミング(所定のタイミング)で実行される。
【0017】
また、コンプレッサー4とエアードライヤー32との間には、流入管31から分岐した別の分岐管31Bが接続され、この分岐管31Bは空圧供給バルブ36を介いて、供給ポート28に接続されている。この空圧供給バルブ36は手動で開閉操作する操作スイッチ36Aを備え、この操作スイッチ36Aを押すと、空圧供給バルブ36が開弁して圧縮空気を供給ポート28から放出する。この供給ポート28には、例えば、自動車のタイヤのバルブ(空気を入れる口)に接続可能に構成されており、操作スイッチ36Aを操作することにより、タイヤに空気を補給することができる。また、エアードライヤー32の下流側で、供給路35から分岐した分岐管35Aには、安全弁37が設けられている。この安全弁37は、供給路35内やエアータンク51b〜55b内の空気圧力が異常上昇した際に開放されて圧力を外部に逃がすための弁である。
【0018】
エアードライヤー32より下流の供給路35には分岐室38が接続され、この分岐室38には、3つの供給路40、41、42が接続されている。供給路40には減圧弁43が設けられ、この減圧弁43の下流で供給路40が2つの供給路40A,40Bに分岐され、各供給路40A,40Bは、それぞれサービスブレーキ用圧力保護弁44,45を介して、各出力ポート21,22に接続されている。また、分岐室38に接続される別の供給路(流路)41には、減圧弁46と圧力保護弁(弁ユニット)47とが設けられ、この圧力保護弁47の下流で2つの供給路41A,41Bに分岐され、各供給路41A,41Bは、それぞれパーキングブレーキ用圧力保護弁48、アクセサリー用圧力保護弁49を介して、各出力ポート23,24に接続されている。更に、分岐室38に接続される別の供給路42は出力ポート25に接続されている。
サービスブレーキ用圧力保護弁44,45は、絞り及びチェック弁と並列に配置されている。これらサービスブレーキ用圧力保護弁44,45、パーキングブレーキ用圧力保護弁48、及び、アクセサリー用圧力保護弁49は、それぞれ対応する出力ポート21〜24に接続された負荷51〜54において、圧縮空気が流れる圧縮空気回路51a〜54aが失陥、すなわち当該回路での空気圧力が所定の閉弁圧力値を下回った際に閉鎖する。また、サービスブレーキ用圧力保護弁44,45、パーキングブレーキ用圧力保護弁48、及び、アクセサリー用圧力保護弁49は、各圧力保護弁が設けられた供給路内の空気圧力が所定の開弁圧力値を上回った際に開放されるように構成されている。
【0019】
また、分岐室38に接続される供給路42と、パーキングブレーキ用圧力保護弁48の下流側の供給路41Aとの間には、これら各供給路42,41Aを連通するブリードバック通路(空気流通管)60が設けられている。このブリードバック通路60は、供給路42(すなわち分岐室38)から出力ポート23への空気の流れを阻止する逆止弁(チェックバルブ)61を備えている。この逆止弁61は、供給路41A内の空気圧力が供給路42内の空気圧力よりも低下した際に開放され、供給路41A内(例えば、パーキングブレーキ用のエアータンク53b)の圧力を逃がすように機能する。
【0020】
圧力センサー123は供給路35の空気圧を検出し、圧力センサー121は一方のサービスブレーキ用圧力保護弁44の下流側、すなわち出力ポート21の空気圧を検出し、圧力センサー122は他方のサービスブレーキ用圧力保護弁45の下流側である出力ポート22の空気圧を検出する。これらの検出値は各圧力センサー121〜123からECU2へ随時出力される。
【0021】
負荷53に相当する上記車両のパーキングブレーキ装置は、空気圧により制動力が解除されて走行可能となる。具体的には、上記パーキングブレーキは駐車時にスプリングの力でブレーキシューを拡げて制動力を発揮し、解除時にはエアードライヤーモジュール10から供給される空気圧によりスプリングの力に抗してブレーキシューを閉じる構成となっている。
このため、パーキングブレーキ装置は、エアータンク53b内に圧縮空気が十分に満たされている場合には、この空気圧力によってパーキングブレーキを解除することができる。一方、パーキングブレーキに対応する圧縮空気回路53aが失陥した場合には、パーキングブレーキ用圧力保護弁48が閉弁されることにより、圧縮空気回路53aへの圧縮空気の供給が断たれるため、パーキングブレーキは解除不能となる。
【0022】
ここで、パーキングブレーキ装置は、安全面から主ブレーキ装置が使用可能時に解除できることが前提であり、主ブレーキ装置に対応するエアータンク51b,52bの空気圧が十分でない場合はパーキングブレーキを解除しない方が好ましい。
このため、初期状態(例えば、新車時、車検時等でエアータンク51b,52b内の圧力が十分でない場合)には、エアータンク51b,52b内の空気圧が十分となるまで、パーキングブレーキに対応する圧縮空気回路53aに圧縮空気の供給を遮断する必要がある。本構成では、分岐室38に接続される供給路41に圧力保護弁47を設け、この圧力保護弁47の開弁圧力設定値を、上記したサービスブレーキ用圧力保護弁44,45の開弁圧力設定値よりも高く設定しておくことにより、主ブレーキ装置のエアータンク51b,52b内の空気圧が十分となる前に、パーキングブレーキ装置のエアータンク53bに圧縮空気が供給されることを防止できる。
更に、本構成では、ブリードバック通路60を設けることにより、主ブレーキ装置に対応する圧縮空気回路51a,52aが失陥した際に、パーキングブレーキを解除不能としている。具体的には、圧縮空気回路51a,52aが失陥した場合、供給路42内の空気圧が低下するため、ブリードバック通路60の逆止弁61が開放されて、エアータンク53b内の空気がブリードバック通路60を通じて放出される。更に、エアータンク53b内の空気圧の低下に伴い、パーキングブレーキ用圧力保護弁48が閉弁される。これにより、圧縮空気回路53aへの圧縮空気の供給が断たれ、パーキングブレーキは解除不能となる。
また、圧力保護弁47は、上記したサービスブレーキ用圧力保護弁44,45、パーキングブレーキ用圧力保護弁48、及び、アクセサリー用圧力保護弁49と同一構造に構成されている。これにより、各圧力保護弁を共通化することができるため、部品の共通化を図ることができるとともに、従来の制御弁のように、サービスブレーキ回路の検出圧力によって制御されるソレノイドバルブや、このソレノイドバルブから指令圧を出力するラインが不要となり、装置構成の簡素化を実現することができる。
【0023】
つぎに、圧力保護弁47について説明する。
図2は、圧力保護弁47の概略側断面図であり、図2Aは閉弁状態を示し、図2Bは開弁状態を示す。
圧力保護弁47は、図2Aに示すように、バルブ本体(本体)70と、このバルブ本体70の上部側に設けられたカバー体71とを備える。カバー体71の内側には、コイルばね80と、このコイルばね80の上端を受ける第1のばね受け部材81と、コイルばね80の下端を受ける第2のばね受け部材82とを備え、カバー体71の上端部には調整ねじ83が取り付けられている。この調整ねじ83の先端は先細りであって、第2のばね受け部材82の内底部に当接し、ねじ込み深さに応じてコイルばね80を圧しつつ、下降させることが可能である。
また、第2のばね受け部材82の下面には、バルブ本体70の内径と略同じ大きさに形成された弁体84が取り付けられ、第2のばね付け部材82とともに、コイルばね80の軸方向に沿って移動する。
【0024】
一方、バルブ本体70内には円筒状に立設された仕切壁90が設けられ、この仕切壁90によって円柱状の内側空間91とドーナツ状の外側空間92とに区分けされている。この仕切壁90は、バルブ本体70の内径の略半分の位置に設けられ、この仕切壁90の上端部には、円環状の弁座93が形成されており、例えば、内側空間91から流入した圧縮空気の空気圧がコイルばね80のばね力Fを上回ると、この空気圧により弁体84が弁座93から離れる方向に移動し、圧力保護弁47が開弁される。
バルブ本体70には、内側空間91及び外側空間92に連通する位置に不図示のポートが形成されており、このポートを通じて図1に示す供給路に連通するように配置されている。
【0025】
ここでは圧力保護弁47について説明したが、本実施形態では、サービスブレーキ用圧力保護弁44,45、及び、パーキングブレーキ用圧力保護弁48についても当該圧力保護弁47と同一の構造を有して構成されている。このため、圧力保護弁47の開弁圧力設定値を、サービスブレーキ用圧力保護弁44,45の開弁圧力設定値よりも高く設定する場合には、調整ねじ83の調整によりコイルばね80の高さを調整すれば良い。
一方、圧力保護弁47の開弁圧力設定値を、サービスブレーキ用圧力保護弁44,45の開弁圧力設定値よりも高く設定した場合には、圧力保護弁47の閉弁圧力設定値もサービスブレーキ用圧力保護弁44,45の閉弁圧力設定値よりも高くなるのが一般的である。
この場合、供給路内の空気圧が所定の閉弁圧力設定値よりも低下すると、最初に圧力保護弁47が閉弁することとなり、不都合が生じる。このため、本構成では、サービスブレーキ用圧力保護弁44,45、及び、パーキングブレーキ用圧力保護弁48については、外側空間92に連通するポートを空気流入口とし、内側空間91に連通するポートを空気流出口として各供給路40A,40B,41Aに接続している。これに対して、圧力保護弁47では、サービスブレーキ用圧力保護弁44,45、及び、パーキングブレーキ用圧力保護弁48とは反対に、内側空間91に連通するポートを空気流入口とし、外側空間92に連通するポートを空気流出口として供給路41に接続している。
この種の圧力保護弁では、外側空間92に連通するポートを空気流入口、内側空間91に連通するポートを空気流出口として使用する場合に比べて、内側空間91に連通するポートを空気流入口、外側空間92に連通するポートを空気流出口として使用する方が、開弁圧力設定値と閉弁圧力設定値との差圧が大きくなることが判明している。
【0026】
次に、供給路に対するポートの接続位置を変更することで、開弁圧力設定値と閉弁圧力設定値との差圧が変化する点について説明する。ここでは、内側空間91に相当する仕切壁の直径をA、内側空間91及び外側空間92に相当するバルブ本体70の内径をB、ばね力をF、開弁圧力設定値をP、閉弁圧力設定値をP´とする。また、説明の便宜上、空気が流入する側には圧力があるが、空気が流出する側は大気圧(0Pa)とする。
(1)外側空間92に連通するポートを空気流入口、内側空間91に連通するポートを空気流出口として使用する場合。
開弁時の力のつり合いは、
P=4F/π×(1/B2−A2) (1)
となる。
一方、閉弁時の力のつり合いは、
P´=4F/π×(1/B2) (2)
となり、この(1)、(2)式から差圧ΔP1は、
ΔP1=P−P´=4F/π×[A2/B2(B2−A2)] (3)
となる。
(2)内側空間91に連通するポートを空気流入口、外側空間92に連通するポートを空気流出口として使用する場合。
開弁時の力のつり合いは、
P=4F/π×(1/A2) (4)
となる。
一方、閉弁時の力のつり合いは、
P´=4F/π×(1/B2) (5)
となり、この(4)、(5)式から差圧ΔP2は、
ΔP2=P−P´=4F/π×(B2−A2/A22) (6)
となる。
本実施形態では、B=(1.5〜2.5)×Aの範囲に設定しているため、これらを(3)、(6)式に代入してみると、
ΔP1<ΔP2 (7)
となり、外側空間92に連通するポートを空気流入口、内側空間91に連通するポートを空気流出口として使用する場合に比べて、内側空間91に連通するポートを空気流入口、外側空間92に連通するポートを空気流出口として使用する方が、開弁圧力設定値と閉弁圧力設定値との差圧が大きくなる。
なお、B>1.5Aとしている理由は、これ以下の条件の場合には、製造工程上、バルブ本体70内に仕切壁90を製造することが困難となるためである。また、B<2.5Aとしている理由は、これ以上の条件の場合には、バルブ本体70が大型化してしまうためである。この条件の中では、B=(1.8〜1.9)×Aとするのが最適であると実験等により判明している。
【0027】
このため、供給路に対するポートの接続位置を変更するといった簡単な構成で、圧力保護弁47の閉弁圧力設定値を、サービスブレーキ用圧力保護弁44,45、及び、パーキングブレーキ用圧力保護弁48の閉弁圧力設定値よりも低下させることができ、圧力保護弁47がサービスブレーキ用圧力保護弁44,45よりも先に閉弁するといった不都合を回避することができる。
【0028】
以上、説明したように、本実施形態によれば、分岐室38と主ブレーキ用の圧縮空気回路51a,52aとの間に配置されるサービスブレーキ用圧力保護弁44,45と、分岐室38とパーキングブレーキ用の圧縮空気回路53aとの間に配置されるパーキングブレーキ用圧力保護弁48と、このパーキングブレーキ用圧力保護弁48と分岐室38とを繋ぐ供給路41に配置され、主ブレーキ用の圧縮空気回路51a,52aに供給される圧縮空気の圧力が所定圧力値に達するまで閉弁する圧力保護弁47とを備え、この圧力保護弁47をサービスブレーキ用圧力保護弁44,45及びパーキングブレーキ用圧力保護弁48と同一構造としたため、各圧力保護弁を共通化して部品の共通化を図ることができるとともに、従来の制御弁のように、サービスブレーキ回路の検出圧力によって制御されるソレノイドバルブや、このソレノイドバルブから指令圧を出力するラインが不要となり、装置構成の簡素化を実現することができる。
【0029】
また、本実施形態によれば、サービスブレーキ用圧力保護弁44,45、及び、パーキングブレーキ用圧力保護弁48については、外側空間92に空気を流入し、内側空間91から空気を排出するのに対して、圧力保護弁47では、サービスブレーキ用圧力保護弁44,45、及び、パーキングブレーキ用圧力保護弁48とは反対に、内側空間91に空気を流入し、外側空間92から空気を排出するように空気供給路と接続したため、空気供給路に対する空気流入及び排出位置を変更するといった簡単な構成で、圧力保護弁47の閉弁圧力設定値を、サービスブレーキ用圧力保護弁44,45、及び、パーキングブレーキ用圧力保護弁48の閉弁圧力設定値よりも低下させることができ、圧力保護弁47がサービスブレーキ用圧力保護弁44,45よりも先に閉弁するといった不都合を回避することができる。
【0030】
また、本実施形態によれば、圧力保護弁47は、サービスブレーキ用圧力保護弁44,45及びパーキングブレーキ用圧力保護弁48よりも高い圧力値で開弁し、当該サービスブレーキ用圧力保護弁44,45及びパーキングブレーキ用圧力保護弁48よりも低い圧力値で閉弁するように設定されているため、簡単な構成で、主ブレーキ装置のエアータンク51b,52b内の空気圧が十分となる前に、パーキングブレーキ装置のエアータンク53bに圧縮空気が供給されることを防止できるとともに、パーキングブレーキ用圧力保護弁48がサービスブレーキ用圧力保護弁44,45よりも先に閉弁する不都合の回避を同時に実現できる。
【0031】
また、本実施形態によれば、パーキングブレーキ用圧力保護弁48の下流側の供給路41Aと分岐室38から延びる供給路42とを接続するブリードバック通路60を設け、このブリードバック通路60に、パーキングブレーキ用の圧縮空気回路53aの空気圧力が供給路42の空気圧力より上昇した際に作動する逆止弁61を設けたため、主ブレーキ装置の圧縮空気回路51a,52aが失陥した場合に、パーキングブレーキ装置の圧縮空気回路53a内の圧縮空気を開放できるため、圧力保護弁47を設けるといった簡素な構成としてもパーキングブレーキを解除不能にできる。
【0032】
また、上述した実施の形態は、本発明を適用した一態様を示すものであって、本発明は上記実施の形態に限定されない。例えば、本発明の車両用圧縮空気供給装置の適用対象となる車両についても特に限定は無く、大型車両、小型車両、特殊車両、牽引車両、二輪車あるいは三輪車のいずれであってもよく、その規模及び形態は任意である。
【符号の説明】
【0033】
1 圧縮空気供給システム(圧縮空気供給装置)
4 コンプレッサー(空気圧縮機)
31 流入管(吐出ライン)
38 分岐室
40A,40B,41A,41B,42 供給路
41 供給路(経路)
44,45 サービスブレーキ用圧力保護弁
47 圧力保護弁(弁ユニット)
48 パーキングブレーキ用圧力保護弁
49 アクセサリー用圧力保護弁
51〜55 負荷
51a,52a 圧縮空気回路(サービスブレーキ回路)
53a 圧縮空気回路(パーキングブレーキ回路)
51b〜55b エアータンク
60 ブリードバック通路(空気流通管)
61 逆止弁(チェックバルブ)
70 バルブ本体(本体)
84 弁体
90 仕切壁
91 内側空間
92 外側空間
93 弁座

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載する空気圧縮機を備え、該空気圧縮機から吐出した圧縮空気を車両の複数の負荷にそれぞれ供給する車両用圧縮空気供給装置において、
前記空気圧縮機の吐出ラインに設けられて前記圧縮空気を各負荷に分岐する分岐室と、この分岐室と前記負荷としてのサービスブレーキ回路との間に配置されるサービスブレーキ用圧力保護弁と、前記分岐室と前記負荷としてのパーキングブレーキ回路との間に配置されるパーキングブレーキ用圧力保護弁と、このパーキングブレーキ用圧力保護弁と前記分岐室とを繋ぐ流路に配置され、前記サービスブレーキ回路に供給される圧縮空気の圧力が所定圧力値に達するまで閉弁する弁ユニットとを備え、この弁ユニットを前記各圧力保護弁と同一構造を有する圧力保護弁で形成したことを特徴とする車両用圧縮空気供給装置。
【請求項2】
前記弁ユニット、前記サービスブレーキ用圧力保護弁及び前記パーキングブレーキ用圧力保護弁は、それぞれ、本体内を内側空間と外側空間とに区分けする仕切壁と、この仕切壁に設けられた弁座と、この弁座に弾性力を介して当接される弁体とを備える構成を有し、前記サービスブレーキ用圧力保護弁及び前記パーキングブレーキ用圧力保護弁は、前記内側空間に空気を流入して前記外側空間から空気を排出する一方、前記弁ユニットは、前記外側空間に空気を流入して前記内側空間から空気を排出するように空気供給路と接続したことを特徴とする請求項1に記載の車両用圧縮空気供給装置。
【請求項3】
前記弁ユニットは、前記サービスブレーキ用圧力保護弁及び前記パーキングブレーキ用圧力保護弁よりも高い圧力値で開弁し、当該サービスブレーキ用圧力保護弁及びパーキングブレーキ用圧力保護弁よりも低い圧力値で閉弁するように設定されていることを特徴とする請求項1または2に記載の車両用圧縮空気供給装置。
【請求項4】
前記パーキングブレーキ用圧力保護弁の下流側と前記吐出ラインとを接続する空気流通管を設け、この空気流通管に、前記パーキングブレーキ回路の空気圧力が前記吐出ラインの空気圧力より上昇した際に作動するチェックバルブを設けたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の車両用圧縮空気供給装置。

【図1】
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【図2】
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