説明

車両用後部荷室構造

【課題】
後部荷室の底面を形成する荷室フロアを覆って前後に延びると共に、シートバックの起立時には荷室フロアに沿って延び、シートバックの倒伏時には所定高さ上方に移動して荷室フロアとの間に収納ボックスを形成する可動ボックス部材を設けることで、シートバック倒伏時の該シートバックの段差の解消と、荷室の使い勝手との両立を図ることができる車両用後部荷室構造の提供を目的とする。
【解決手段】
シートバック18が倒伏可能に設けられたリヤシート20と、リヤシート20の後方に設けられた後部荷室24とを備えた車両用後部荷室構造であって、後部荷室24の底面を形成する荷室フロア4を覆って前後に延びると共に、シートバック18の起立時には荷室フロア4に沿って延び、シートバック18の倒伏時には所定高さ上方に移動して荷室フロア4との間に収納ボックスを形成する可動ボックス部材25を備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、シートバックが倒伏可能に設けられたリヤシートと、このリヤシートの後方に設けられた後部荷室とを備えたような車両用後部荷室構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シートクッションとシートバックとを備えたリヤシートにおいて、シートクッションをシートバックと独立して、一対のリンクを介して車両前方に移動可能に構成すると共に、この前方に移動したシートクッションの座面上に、リクライニング軸を支点としてシートバックを略水平に前倒しすべく構成し、シートバックを倒伏させた時、リヤシート後方の後部荷室と客室とを連通させて、荷室スペースの拡大を図るように構成したものがある(特許文献1参照)。
【0003】
一方、リヤシートの後部に、車幅方向に延びるケースを介してトノカバーを設けると共に、リヤシート背面のフックと上記ケースとの間にシート状部材を設け、シートバックの起立状態下においては上述のシート状部材をU字状に撓ませると共に、シートバックの前倒し時には、倒伏したシートバックとケースとの間にシート状部材を張設して、該シート状部材で荷室(後部荷室)を上下に仕切る構造が開示されている(特許文献2参照)。
【0004】
この特許文献2に開示されたものは、シート状部材がシートと連動してリヤ荷室を仕切る構造であるが、上述のシート状部材の上部に荷物が搭載できるものではない。
【0005】
ところで、リヤシートのシートバックをシートクッション上に倒伏させた時、可及的フラットな荷室を形成することが要請されるが、荷室フロアと前倒させたシートバックの上面との間には段差が形成されるのが一般的であり、シートバック倒伏時の該シートバックの段差を解消しつつ、荷室の使い勝手を向上させることは困難であった。
【特許文献1】特開2004−359158号公報
【特許文献2】特開平6−270745号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、この発明は、後部荷室の底面を形成する荷室フロアを覆って前後に延びると共に、シートバックの起立時には荷室フロアに沿って延び、シートバックの倒伏時には所定高さ上方に移動して荷室フロアとの間に収納ボックスを形成する可動ボックス部材を設けることで、シートバック倒伏時の該シートバックの段差の解消と、荷室の使い勝手との両立を図ることができる車両用後部荷室構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明による車両用後部荷室構造は、シートバックが倒伏可能に設けられたリヤシートと、該リヤシートの後方に設けられた後部荷室とを備えた車両用後部荷室構造であって、上記後部荷室の底面を形成する荷室フロアを覆って前後に延びると共に、シートバックの起立時には荷室フロアに沿って延び、シートバックの倒伏時には所定高さ上方に移動して上記荷室フロアとの間に収納ボックスを形成する可動ボックス部材を備えたものである。
【0008】
上記構成によれば、リヤシートのシートバックを起立させた時、可動ボックス部材は荷室フロアに沿って延びる一方、リヤシートのシートバックを倒伏させた時、可動ボックス部材は所定高さ上方に移動して荷室フロアとの間に収納ボックスを形成する。このため、シートバック倒伏時の該シートバックの段差の解消と、荷室の使い勝手との両立を図ることができる。
【0009】
この発明の一実施態様においては、上記シートバックは、倒伏時に荷室フロアと段差を形成すると共に、該段差の高さ位置に上記可動ボックス部材が固定可能に構成されたものである。
【0010】
上記構成によれば、シートバックの倒伏時には荷室フロアと、倒伏させたシートバック上面との間に段差が形成されるが、可動ボックス部材はシートバックの倒伏時に所定高さ上方に移動して上述の段差の高さ位置に位置保持されるので、倒伏させたシートバック上面と可動ボックス部材とがフルフラットになり、シートバックの段差が完全に解消され、荷室の使い勝手がさらに向上する。
【0011】
この発明の一実施態様においては、上記シートバックの倒伏時に該シートバックの裏面と上記可動ボックス部材の上面とが連続した荷室面を形成するように構成されたものである。
【0012】
上記構成によれば、シートバックの倒伏時に形成される荷室面は、シートバック裏面(倒伏させたシートバックの上面)と上方に移動した可動ボックス部材上面とが連続する連続面となるので、良好な荷物の搭載面を確保することができる。
【0013】
この発明の一実施態様においては、上記可動ボックス部材は、上記シートバックの後端部に連結され、シートバックの倒伏移動に連動して上下に可動するように構成されたものである。
【0014】
上記構成によれば、可動ボックス部材がシートバックと連動するので、使い勝手がよく、また可動ボックス部材を駆動させる別の手段が不要であるため、構造のシンプル化を図ることができる。
【0015】
この発明の一実施態様においては、上記可動ボックス部材が上方に移動した時、該可動ボックス部材の上方および下方に荷物を収納可能に構成したものである。
【0016】
上記構成によれば、ニーズに応じて可動ボックス部材の上方、下方の少なくとも何れか一方に荷物を収納することができるので、荷物収納性の向上を図ることができる。
【0017】
この発明の一実施態様においては、上記可動ボックス部材は、荷室フロアに沿って延びる可動ボックス本体部と、該可動ボックス本体部の後端に枢着された可動後壁部とを備えたものである。
【0018】
上記構成によれば、可動ボックス本体部の後端に可動後壁部を設けているので、可動ボックス部材の剛性を確保することができる。特に、シートバックを倒伏させて可動ボックス部材で後部荷室を上下に仕切った時、可動ボックス本体部の後端を可動後壁部にて支持することができるので、可動ボックス部材の剛性確保と、収納空間の保持との両立を図ることができる。
【0019】
この発明の一実施態様においては、上記可動後壁部には、可動ボックス部材内とアクセス可能な開口部が形成されたものである。
上記構成によれば、開口部を設けたので、可動ボックス部材の内部に対する荷物の収納性を確保することができる。
【0020】
この発明の一実施態様においては、上記開口部にはその遊端部が可動ボックス部材内に開放する蓋部材が設けられたものである。
【0021】
上記構成によれば、蓋部材による開口部の閉成時には、可動ボックス部材内の密閉性を確保することができ、荷物収納時には荷物にて蓋部材を押圧すると、この蓋部材はその遊端部が可動ボックス部材内に開放(いわゆる内開き)するので、後部荷室を構成する車体側の部材との干渉がないうえ、荷物収納時の操作性の向上を図ることができる。
【0022】
この発明の一実施態様においては、上記可動ボックス部材は、可動ボックス本体部の前端部とシートバックの下端部とにそれぞれ連結された可動端部材を備えたものである。
【0023】
上記構成によれば、可動端部でシートバック下端部と可動ボックス本体部の前端部とを連結したので、シートバックの動きを可動端部材を介して確実に可動ボックス本体部に伝達することができ、簡単な構造でありながら可動ボックス部材の確実な動きを確保することができる。
【発明の効果】
【0024】
この発明によれば、後部荷室の底面を形成する荷室フロアを覆って前後に延びると共に、シートバックの起立時には荷室フロアに沿って延び、シートバックの倒伏時には所定高さ上方に移動して荷室フロアとの間に収納ボックスを形成する可動ボックス部材を設けたので、シートバック倒伏時の該シートバックの段差の解消と、荷室の使い勝手との両立を図ることができる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
シートバック倒伏時の該シートバックの段差の解消と、荷室の使い勝手との両立を図るという目的を、シートバックが倒伏可能に設けられたリヤシートと、リヤシートの後方に設けられた後部荷室とを備えたものにおいて、後部荷室の底面を形成する荷室フロアを覆って前後に延びると共に、シートバックの起立時には荷室フロアに沿って延び、シートバックの倒伏時には所定高さ上方に移動して荷室フロアとの間に収納ボックスを形成する可動ボックス部材を備えるという構成にて実現した。
【実施例】
【0026】
この発明の一実施例を以下図面に基づいて詳述する。
図面は車両用後部荷室構造を示すが、まず、図1を参照して車体構造について説明する。
【0027】
車室の床面(下面)を形成するフロアパネル1を設け、このフロアパネル1の後部に、前低後高状に立上るキックアップ部2を介してフロアパネル1よりも1段高いキックアップフロア部3を連設し、このキックアップフロア部3の後部には後方に向けて略水平に延びるリヤフロア4を連設している。このリヤフロア4は後述する後部荷室24の底面を形成する荷室フロアである。
【0028】
上述のフロアパネル1の左右両側部には、サイドシルインナとサイドシルアウタとサイドシルレインフォースメントから成り、車両の前後方向に延びるサイドシル閉断面をもったサイドシル5を接合固定している。
【0029】
またリヤフロア4の左右両側部下面からキックアップ部2の左右両側部下面まで車両の前後方向に延びるリヤサイドフレーム6を設け、上述のリヤフロア4とこのリヤサイドフレーム6との間には車両の前後方向に延びる閉断面を形成している。
【0030】
さらに、上述のキックアップ部2およびキックアップフロア部3の車外側空間部(下方空間)には大型の車両補機としての燃料タンク7を配設する一方、この燃料タンク7の後部に対応して、キックアップフロア部3乃至リヤフロア4の下面には、左右のリヤサイドフレーム6,6を連結するリヤクロスメンバ8を車幅方向に向けて配設し、キックアップフロア部3乃至リヤフロア4とリヤクロスメンバ8との間には車幅方向に延びる閉断面9を形成している。
【0031】
ここで、上述のサイドシル5、リヤサイドフレーム6およびリヤクロスメンバ8は車体剛性部材(強度部材)である。なお、図中、10はフロントドア開口、11はリヤドア開口、12はセンタピラーである。
【0032】
次に、図1を参照してシート構造について説明する。
フロアパネル1の上部には、シートクッション13と、シートバック14と、ヘッドレスト15とを備えたフロントシート16(ドライバーズシートおよびパッセンジャーズシートから成るセパレート構造の前席シート)を配設する一方、キックアップフロア部3の上部にはシートクッション17と、シートバック18と、ヘッドレスト19とを備えたリヤシート20(後席シート)を配設している。
【0033】
この実施例においてはリヤシート20は図5〜図9に斜視図で示すようにベンチシートタイプに構成されている。一方、該リヤシート20におけるシートバック18はその下部に設けられたシートバック回動軸21を中心に前方に倒伏可能に構成されており、図4、図7に示すようにシートクッション17の座面上方に略水平に前倒し可能に構成されている。
【0034】
次に図1〜図16を参照して後部荷室構造について説明する。
図1に示すように、上述のリヤシート20の後方には、シートバック18と、リヤフロア4と、ルーフ部22と、リヤゲート23とで囲繞された後部荷室24を形成している。
【0035】
しかも、上述の後部荷室24の底面を形成する荷室フロアとしてのリヤフロア4上部には、可動ボックス部材25を設けている。
この可動ボックス部材25は、図2〜図9に示すように、リヤフロア4に沿って延びる可動ボックス本体部26と、この可動ボックス本体部26の後端に枢着された可動後壁部27と、可動ボックス本体部26の前端部とシートバック18の下端部とにそれぞれ連結された可動端部材28とを備えている。
【0036】
上述の可動ボックス部材25は、図2、図5に示すシートバック18の起立時にはリヤフロア4に沿って延び、シートバック18をその回動軸21を支点として前方に傾動させると、図3、図6の中途状態となり、さらにシートバック18を傾動させて、このシートバック18を完全に倒伏させた倒伏時には、図4、図7に示すように、所定高さ上方に移動して、荷室フロアとしてのリヤフロア4との間に収納ボックス30を形成するものであって、このシートバック倒伏時において上述の可動ボックス部材25は、シートバック18の裏面と該可動ボックス部材25の上面とが連続した荷室面を形成しつつ上述の後部荷室24を上下に仕切って、可動ボックス本体部26およびシートバック18裏面上に荷室スペースが拡大された上側の荷物収納部29を形成すると共に、リヤフロア4と可動ボックス本体部26との間には下側の荷物収納部つまり収納ボックス30を形成して、可動ボックス部材25の上方および下方に荷物を収納することができるように構成している。ここで、上述の収納ボックス30は、汚れ物その他の荷物を収納するシークレットボックスとして有効利用することができる。
【0037】
図2、図3、図4に側面図で示すように、可動端部材28の基端部は、シートバック18内に設けられたシートバックフレーム31に対してボルト、ナット等の複数の取付け部材32にて連結され、可動端部材28の遊端部と、可動ボックス本体部26の前端部との間は、図10、図15に示すように、車幅方向に延びる共通のヒンジシャフト33を備えた複数のヒンジ34…にて角度変位可能に連結されている。
【0038】
また、図10、図16に示すように、可動ボックス本体部26の後端部と、可動後壁部27の遊端部との間は、車幅方向に延びる共通のヒンジシャフト35を備えた複数のヒンジ36…にて角度変位可能に連結されている。
【0039】
さらに、図16に示すように可動後壁部27の基端部は、リヤフロア4の後部上面に固定されたブラケット37に支軸38を介して起伏可能に枢支されている。
【0040】
ここで、上述のヒンジシャフト35には図16に示すように付勢手段としてのスプリング39を設け、このスプリング39の一端39aを可動ボックス本体部26の後端下面に当接し、スプリング39の他端39bを可動後壁部27の遊端側内面に当接することにより、可動ボックス部材25を常時上方にバネ付勢している。
【0041】
上述の可動後壁部27には、図7に示すように常開構造の開口部40を形成する場合と、図8、図9に示すように開口部41を開閉する単一または複数の蓋部材42を設ける場合とがあり、後者の蓋部材42を設ける場合には図16に断面図で示すように構成する。
【0042】
すなわち、可動後壁部27の開口部41上側に支軸43を介して蓋部材42を内開き可能に、つまり蓋部材42の遊端側がフロント方向に開くように、枢支すると共に、この支軸43には付勢手段としてのスプリング44を設け、このスプリング44の一端44aを可動後壁部27内面に当接し、スプリング44の他端44bを蓋部材42の内面に当接して、蓋部材42下部の切欠き部凸部45が、開口部41の下側口縁から上方に突出するストッパ46に常時圧接して、蓋部材42により開口部41を常閉構造と成すように構成する。
【0043】
収納ボックス30(いわゆるシークレットボックス)に長尺物、汚れ物その他の荷物を収納する場合には、荷物それ自体で蓋部材42の下方側を車両前方に押圧すると、図16に仮想線で示すように、スプリング44の付勢力に抗して蓋部材42が内方(車両前方)に開放されるので、乗員は一旦手動操作で蓋部材42を開放しなくても、荷物の押込み力によって該荷物を収納ボックス30に収納または格納することができる。図7、図8、図9の何れの開口部40,41も可動ボックス部材25により仕切られた収納ボックス30に対してアクセス可能に形成されたものである。
【0044】
ところで、図4に示すようにシートバック回動軸21を支点として、シートバック18をシートクッション17の座面上に前倒しさせた倒伏時には、シートバック18の裏面(倒伏させたシートバック18の上面)とリヤフロア4との間には図4に示す段差Sが形成される。
【0045】
同図に示すように、シートバック18の後端部に連結された可動ボックス部材25はシートバック18の倒伏移動に連動して上下に可動すべく構成されており、シートバック18の倒伏時には可動ボックス部材25の可動ボックス本体部26が上記段差Sの高さ位置に固定されるように構成している。
【0046】
以下、図4、図10、図11〜図14を参照して、可動ボックス部材25を上記段差Sに相当する所定の高さで荷室側壁47(図10参照)に対してロック固定するロック機構の構成について説明する。
【0047】
一方のヒンジシャフト33は図10に平面図で示すように可動ボックス部材25の両サイドから車幅方向外方に突出すると共に、このヒンジシャフト33はシートバック回動軸21を支点とする移動軌跡α(図4参照)に沿って円弧状に移動する。
【0048】
そこで、図10のA−A線矢視断面図を図11に示すように、上述の移動軌跡αに対応する剛性かつ断面ハット形状のガイドレール48を、その荷室側端面が荷室側壁47と面一状または略面一状になるように設け、ヒンジシャフト33の突出部分をガイドレール48の凹状のガイド溝48aに沿って移動すべく構成している。
【0049】
図4に示す状態下の可動ボックス部材25(シートバック18倒伏時の可動ボックス部材25)のヒンジシャフト33は、図11に示すようにガイド溝48aの上端部に位置するので、この位置でヒンジシャフト33の下方移動を阻止するロック機構49を設けている。
【0050】
このロック機構49は荷室側壁47の車外側に固定されたブラケット50と、このブラケット50に取付けられたチューブホルダ51と、このチューブホルダ51に保持されたアウタチューブ52と、このアウタチューブ52の内部を移動するインナワイヤ53と、このインナワイヤ53の先端に取付けられたロック部材54と、このロック部材54とチューブホルダ51との間に張架されたリターンスプリング55とを備えている。
【0051】
また、上述のガイドレール48におけるヒンジシャフト33のロック位置(ヒンジシャフト33の直下位置)には、ロック部材54を挿通させる開口部48bを形成すると共に、この開口部48bからリテーナ48cおよびストッパ48dを切起こし形成し、これら両者48c,48dによりロック部材54を進退可能に保持すると共に、可動ボックス部材25および、これに上載された荷物の荷重を受け止めるように構成している。
【0052】
上述のインナワイヤ53の図示しない他端部には操作レバーが設けられ、この操作レバーのプル操作時にはロック部材54がヒンジシャフト33の直下部からガイド溝48a外に後退して、図11に示すロック状態から図12に示すアンロック状態となる。
【0053】
他方のヒンジシャフト35は図10に平面図で示すように可動ボックス部材25の両サイドから車幅方向外方に突出すると共に、このヒンジシャフト35は支軸38(図16参照)を支点とする移動軌跡β(図4参照)に沿って円弧状に移動する。
【0054】
そこで、図10のB−B線矢視断面図を図13に示すように、上述の移動軌跡βに対応する剛性かつ断面ハット形状のガイドレール56を、その荷室側端面が荷室側壁47と面一状または略面一状になるように設け、ヒンジシャフト35の突出部分をガイドレール56の凹状のガイド溝56aに沿って移動すべく構成している。
【0055】
図4に示す状態下の可動ボックス部材25(シートバック18倒伏時の可動ボックス部材25)のヒンジシャフト35は、図13に示すようにガイド溝56aの後端部に位置するので、この位置でヒンジシャフト35の前方移動を阻止するロック機構57を設けている。
【0056】
このロック機構57は荷室側壁47の車外側に固定されたブラケット58と、このブラケット58に取付けられたチューブホルダ59と、このチューブホルダ59に保持されたアウタチューブ60と、このアウタチューブ60の内部を移動するインナワイヤ61と、このインナワイヤ61の先端に取付けられたロック部材62と、このロック部材62とチューブホルダ59との間に張架されたリターンスプリング63とを備えている。
【0057】
また、上述のガイドレール56におけるヒンジシャフト35のロック位置(ヒンジシャフト35の直前位置)には、ロック部材62を挿通させる開口部56bを形成すると共に、この開口部56bからリテーナ56cおよびストッパ56dを切起こし形成し、これら両者56c,56dによりロック部材62を進退可能に保持すると共に、可動ボックス部材25および、これに上載された荷物の荷重を受け止めるように構成している。
【0058】
上述のインナワイヤ61の図示しない他端部には操作レバーが設けられ、この操作レバーのプル操作時にはロック部材62がヒンジシャフト35の直前部からガイド溝56a外に後退して、図13に示すロック状態から図14に示すアンロック状態となる。
【0059】
ここで、上述のガイドレール48,56および、ロック機構49,57はヒンジシャフト33,35の左右両サイドにそれぞれ設けられたものである。また各ロック機構49,57のインナワイヤ53,61の他端部を一本化し、単一の操作レバーにてロック機構49,57をアンロック操作すべく構成することが望ましい。なお、図中、矢印Fは車両の前方を示す。
【0060】
このように構成した車両用後部荷室構造においては、図2、図5に示すシートバック18の起立時に、可動ボックス部材25の可動ボックス本体部26および可動後壁部27はリヤフロア4の上面を覆って前後方向に水平に延びている。
【0061】
リヤシート20のシートバック18を、その回動軸21を支点として前方に傾動させると、このシートバック18には可動端部材28が連結固定されているので、図3、図6に示す中途状態を介して、図4、図7に示すように、シートバック18の倒伏移動に連動して可動ボックス部材25が上方に可動し、特に図4に示すように可動ボックス本体部26は段差Sの高さ位置まで上動し、シートバック18の裏面(倒伏されたシートバック18の上面)と略フルフラットになる連続した荷室面を形成しつつ、可動ボックス部材25の上方および下方に荷物を収納可能な荷物収納部29および収納ボックス30を形成し、図4に示す位置の前後のヒンジシャフト33,35を図11、図13に示すロック機構49,57でそれぞれロック固定すると、可動ボックス部材25を同図に示す状態下にて荷室側壁47(図10参照)にロック固定して、この状態に保持することができる。
【0062】
このように、上記実施例の車両用後部荷室構造は、シートバック18が倒伏可能に設けられたリヤシート20と、該リヤシート20の後方に設けられた後部荷室24とを備えた車両用後部荷室構造であって、上記後部荷室24の底面を形成する荷室フロア(リヤフロア4参照)を覆って前後に延びると共に、シートバック18の起立時には荷室フロア(リヤフロア4)に沿って延び、シートバック18の倒伏時には所定高さ上方に移動して上記荷室フロア(リヤフロア4)との間に収納ボックス30を形成する可動ボックス部材25を備えたものである。
【0063】
この構成によれば、リヤシート20のシートバック18を起立させた時、可動ボックス部材25は荷室フロア(リヤフロア4)に沿って延びる一方、リヤシート20のシートバック18を倒伏させた時、可動ボックス部材25は所定高さ上方に移動して荷室フロア(リヤフロア4)との間に収納ボックス30を形成する。このため、シートバック18の倒伏時の該シートバック18の段差S(図4参照)の解消と、荷室の使い勝手との両立を図ることができる。
【0064】
また、上記シートバック18は、倒伏時に荷室フロア(リヤフロア4)と段差Sを形成すると共に、該段差Sの高さ位置に上記可動ボックス部材25が固定可能に構成されたものである。
【0065】
この構成によれば、シートバック18の倒伏時には荷室フロア(リヤフロア4)と、倒伏させたシートバック18の上面との間に段差Sが形成されるが、可動ボックス部材25はシートバック18の倒伏時に所定高さ上方に移動して上述の段差Sの高さ位置に位置保持されるので、倒伏させたシートバック18の上面と可動ボックス部材25とがフルフラットになり、シートバック18の段差Sが完全に解消され、荷室の使い勝手がさらに向上する。
【0066】
さらに、上記シートバック18の倒伏時に該シートバック18の裏面と上記可動ボックス部材25の上面とが連続した荷室面を形成するように構成されたものである(図4参照)。
【0067】
この構成によれば、シートバック18の倒伏時に形成される荷室面は、シートバック18の裏面(倒伏させたシートバック18の上面)と上方に移動した可動ボックス部材25上面(詳しくは可動ボックス本体部26の上面)とが連続する連続面となるので、良好な荷物の搭載面を確保することができる。
【0068】
しかも、上記可動ボックス部材25は、上記シートバック18の後端部に連結され、シートバック18の倒伏移動に連動して上下に可動するように構成されたものである。
【0069】
この構成によれば、可動ボックス部材25がシートバック18と連動するので、使い勝手がよく、また可動ボックス部材25を駆動させる別の手段が不要であるため、構造のシンプル化を図ることができる。
【0070】
加えて、上記可動ボックス部材25が上方に移動した時、該可動ボックス部材25の上方および下方に荷物を収納可能に構成したものである。
【0071】
この構成によれば、ニーズに応じて可動ボックス部材25の上方、下方の少なくとも何れか一方に荷物を収納することができるので、荷物収納性の向上を図ることができる。
【0072】
また、上記可動ボックス部材25は、荷室フロア(リヤフロア4)に沿って延びる可動ボックス本体部26と、該可動ボックス本体部26の後端に枢着された可動後壁部27とを備えたものである。
【0073】
この構成によれば、可動ボックス本体部26の後端に可動後壁部27を設けているので、可動ボックス部材25の剛性を確保することができる。特に、シートバック18を倒伏させて可動ボックス部材25で後部荷室24を上下に仕切った時、可動ボックス本体部26の後端を可動後壁部27にて支持することができるので、可動ボックス部材25の剛性確保と、収納空間の保持との両立を図ることができる。
【0074】
さらに、上記可動後壁部27には、可動ボックス部材25内(つまり収納ボックス30内部)とアクセス可能な開口部40,41が形成されたものである。
【0075】
この構成によれば、開口部40,41を設けたので、可動ボックス部材25の内部に対する荷物の収納性を確保することができる。
【0076】
さらには、上記開口部41にはその遊端部が可動ボックス部材25内に開放する蓋部材42が設けられたものである。
【0077】
この構成によれば、蓋部材42による開口部41の閉成時には、可動ボックス部材25内の密閉性を確保することができ、荷物収納時には荷物にて蓋部材42を押圧すると、この蓋部材42はその遊端部が可動ボックス部材25内に開放(いわゆる内開き)するので、後部荷室24を構成する車体側の部材との干渉がないうえ、荷物収納時の操作性の向上を図ることができる。
【0078】
また、上記可動ボックス部材25は、可動ボックス本体部26の前端部とシートバック18の下端部とにそれぞれ連結された可動端部材28を備えたものである。
【0079】
この構成によれば、可動端部材28でシートバック18の下端部と可動ボックス本体部26の前端部とを連結したので、シートバック18の動きを可動端部材28を介して確実に可動ボックス本体部26に伝達することができ、簡単な構造でありながら可動ボックス部材25の確実な動きを確保することができる。
【0080】
図17は車両用後部荷室構造の他の実施例を示し、シートバック18における可動端部材28の取付け部に凹部64を形成し、シートバックフレーム31に予め溶接等の手段にて固定したナット32Aに対してボルト32Bを締付けることで、上述の凹部64に可動端部材28を連結固定し、この連結状態で可動端部材28がシートバック18の裏側の表皮部材18aと面一または略面一になるように構成すると共に、上述のボルト32Bの頭部が可動端部材28から荷室面側(図示上方)に突出しないようにボルト頭部を埋没させる凹部28aを、該可動端部材28に形成したものである。
【0081】
このように構成すると、図17に示すようにシートバック18を前方に倒伏させて、収納ボックス30を形成した時、シートバック裏面に対する可動端部材28の上方への出っ張り、可動端部材28の荷室面(図示の上面)に対するボルト頭部の突出がなくなるので、より一層良好なフルフラット化を図ることができる。
【0082】
図17に示すこの実施例においても、その他の構成、作用、効果については先の実施例と同様であるから、図17において前図と同一の部分には同一符号を付して、その詳しい説明を省略する。
【0083】
この発明の構成と、上述の実施例との対応において、
この発明の荷室フロアは、実施例のリヤフロア4に対応するも、
この発明は、上述の実施例の構成のみに限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本発明の後部荷室構造を備えた車両の側面図
【図2】図1の要部拡大側面図
【図3】シートバック傾動中途時の側面図
【図4】シートバック倒伏完了時の側面図
【図5】図2の概略斜視図
【図6】図3の概略斜視図
【図7】図4の概略斜視図
【図8】可動後壁部に設けた開口部の他の実施例を示す概略斜視図
【図9】可動後壁部に設けた開口部のさらに他の実施例を示す概略斜視図
【図10】図4の要部平面図
【図11】図10のA−A線矢視断面図
【図12】ワイヤプル操作時の説明図
【図13】図10のB−B線矢視断面図
【図14】ワイヤプル操作時の説明図
【図15】図10のC−C線矢視断面図
【図16】図10のD−D線矢視断面図
【図17】車両用後部荷室構造の他の実施例を示す拡大側面図
【符号の説明】
【0085】
4…リヤフロア(荷室フロア)
18…シートバック
20…リヤシート
24…後部荷室
25…可動ボックス部材
26…可動ボックス本体部
27…可動後壁部
28…可動端部材
30…収納ボックス
40,41…開口部
42…蓋部材
S…段差

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートバックが倒伏可能に設けられたリヤシートと、
該リヤシートの後方に設けられた後部荷室とを備えた車両用後部荷室構造であって、
上記後部荷室の底面を形成する荷室フロアを覆って前後に延びると共に、シートバックの起立時には荷室フロアに沿って延び、シートバックの倒伏時には所定高さ上方に移動して上記荷室フロアとの間に収納ボックスを形成する可動ボックス部材を備えた
車両用後部荷室構造。
【請求項2】
上記シートバックは、倒伏時に荷室フロアと段差を形成すると共に、該段差の高さ位置に上記可動ボックス部材が固定可能に構成された
請求項1記載の車両用後部荷室構造。
【請求項3】
上記シートバックの倒伏時に該シートバックの裏面と上記可動ボックス部材の上面とが連続した荷室面を形成するように構成された
請求項1または2記載の車両用後部荷室構造。
【請求項4】
上記可動ボックス部材は、上記シートバックの後端部に連結され、シートバックの倒伏移動に連動して上下に可動するように構成された
請求項1〜3の何れか1に記載の車両用後部荷室構造。
【請求項5】
上記可動ボックス部材が上方に移動した時、該可動ボックス部材の上方および下方に荷物を収納可能に構成した
請求項1〜4の何れか1に記載の車両用後部荷室構造。
【請求項6】
上記可動ボックス部材は、荷室フロアに沿って延びる可動ボックス本体部と、該可動ボックス本体部の後端に枢着された可動後壁部とを備えた
請求項1〜5の何れか1に記載の車両用後部荷室構造。
【請求項7】
上記可動後壁部には、可動ボックス部材内とアクセス可能な開口部が形成された
請求項6記載の車両用後部荷室構造。
【請求項8】
上記開口部にはその遊端部が可動ボックス部材内に開放する蓋部材が設けられた
請求項7記載の車両用後部荷室構造。
【請求項9】
上記可動ボックス部材は、可動ボックス本体部の前端部とシートバックの下端部とにそれぞれ連結された可動端部材を備えた
請求項6〜8の何れか1に記載の車両用後部荷室構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2006−327466(P2006−327466A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−155398(P2005−155398)
【出願日】平成17年5月27日(2005.5.27)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】