説明

車両用暖房装置

【課題】輻射熱暖房装置とカーエアコンとを連携制御した車両用暖房装置を提供する。
【解決手段】車室内外の環境情報と車両運転情報に応じて空調ユニットの必要吹出温度を算出して車室内空調を制御する車室内空調装置であって、前記空調ユニットの足元吹出し風量が、調整可能である車室内空調装置と、乗員の足元雰囲気を暖房する輻射熱暖房装置とを具備する車両用暖房装置において、前記足元吹出し風量が保有する足元吹出し熱量と、輻射熱暖房装置の投入電力との相互の割合が、乗員の足において同一温感となるように、前記車室内空調装置と前記輻射熱暖房装置を制御したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、輻射熱暖房装置とカーエアコンとを足元の温感を一定に保つように連携制御した車両用暖房装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の座席足元に面状発熱体を配置する技術が知られている。特許文献1には、車室内の内装具に面状発熱体を配設して車室内を暖房する車両用暖房装置であって、前記面状発熱体は座席に着座した乗員の膝部から足部の少なくとも一部に対応した場所に配設され、膝部側よりも足部側に対応した場所の前記面状発熱体の発熱密度を高くした車両用暖房装置が開示されている。しかしながら、特許文献1のものでは、面状発熱体とカーエアコンを同時に使用すると、足元の温感が足りなかったり上がりすぎたりする問題が生じていた。
【0003】
温感とは、温熱感とも言われ、暑い、寒いといった温熱感覚を表すもので、非特許文献1の33頁に詳しく解説されている。これまでの研究の結果、皮膚温は、非常によく温感を表すものといえる。サーマルマネキンを用いてその表面温度を皮膚温として検出し、乗員の温感を、「やや暖かい」を1、「無感」を0、「やや涼しい」を−1などで評価する手法が確立されている(以下、温感の「やや暖かい」を1、「無感」を0とする)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−64681号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】藤原健一監修「カーエアコン」、東京電気大学出版局、2009年9月20日発行、33、88〜94頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記問題に鑑み、輻射熱暖房装置とカーエアコンとを足元の温感を一定に保つように連携制御した車両用暖房装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1の発明は、車室内外の環境情報と車両運転情報に応じて空調ユニット(HVAC)の必要吹出温度(TAO)を算出して車室内空調を制御する車室内空調装置であって、前記空調ユニット(HVAC)の足元吹出し風量が、調整可能である車室内空調装置と、乗員の足元雰囲気を暖房する輻射熱暖房装置とを具備する車両用暖房装置において、前記足元吹出し風量が保有する足元吹出し熱量(Qf)と、輻射熱暖房装置の投入電力(Q)との相互の割合が、乗員の足において同一温感となるように、前記車室内空調装置と前記輻射熱暖房装置を制御したことを特徴とする車両用暖房装置である。
【0008】
これにより、カーエアコンと連携制御をとって、足元の温感を満足させつつ省燃費を実現することができる。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、エンジン水温が所定値以上のときは、前記足元吹出し風量が保有する足元吹出し熱量(Qf)と、輻射熱暖房装置の投入電力(Q)との相互の割合が、乗員の足において同一温感となるように、前記足元吹出し風量を増加させ、かつ、前記輻射熱暖房装置の投入電力を減少させ、エンジン水温が所定値未満のときは、前記足元吹出し風量が保有する足元吹出し熱量(Qf)と、輻射熱暖房装置の投入電力(Q)との相互の割合が、乗員の足において同一温感となるように、前記足元吹出し風量を減少させ、かつ、前記輻射熱暖房装置の投入電力を増加させたことを特徴とする。
これにより、乗員の足において同一温感となるように、足元吹出し風量が保有する足元吹出し熱量(FOOT吹出し熱量)Qfと、輻射熱暖房装置の投入電力Qとの相互の割合を制御したものであって、少ない投入電力でも温感に与える影響の大きい輻射熱加熱装置を使用することにより、燃費効率を増大させたものである。
【0010】
請求項3の発明は、請求項1の発明において、エンジン水温が所定値以上のときは、前記輻射熱暖房装置をOFFにし、エンジン水温が所定値未満のときは、前記輻射熱暖房装置をONにして、前記足元吹出し風量が保有する足元吹出し熱量(Qf)と、輻射熱暖房装置の投入電力との相互の割合が、乗員の足において同一温感となるように、前記足元吹出し風量を減少させ、かつ、前記輻射熱暖房装置の投入電力を増加させたことを特徴とする。
これにより、乗員の足において同一温感となるように、足元吹出し風量が保有する足元吹出し熱量(FOOT吹出し熱量)Qfと、輻射熱暖房装置の投入電力Qとの相互の割合を制御したものであって、少ない投入電力でも温感に与える影響の大きい輻射熱加熱装置を使用することにより、燃費効率を増大させたものであり、車室内空調制御のためにわざわざ不要なエンジンを稼動させてしまうことが無い。
【0011】
請求項4の発明は、請求項1から3のいずれか1項記載の発明において、前記吹出し風量が、FOOT吹出し口の吹出し風量であることを特徴とする。
【0012】
請求項5の発明は、請求項1から4のいずれか1項記載の発明において、前記吹出し風量が、FOOT吹出し口の吹出し風量とKNEE吹出し口の吹き出し風量の合計であることを特徴とする。
【0013】
請求項6の発明は、請求項1から5のいずれか1項記載の発明において、前記吹出し風量を前記空調ユニット(HVAC)のブロアにより調整したことを特徴とする。
【0014】
請求項7の発明は、請求項1から6のいずれか1項記載の発明において、前記吹出し風量を前記空調ユニット(HVAC)のFOOT吹出し口のドア開度により調整したことを特徴とする。
【0015】
請求項8の発明は、請求項1から7のいずれか1項記載の発明において、前記吹出し風量を前記空調ユニット(HVAC)のKNEE吹出し口のドア開度により調整したことを特徴とする。
【0016】
請求項9の発明は、請求項2から8のいずれか1項記載の発明において、エンジン水温が所定値未満のときは、前記足元吹出し風量をゼロとしたことを特徴とする。
【0017】
請求項10の発明は、請求項1又は2の発明において、前記空調ユニット(HVAC)の必要吹出温度(TAO)、前記空調ユニット(HVAC)の設定温度、外気温度、内気温度、足元雰囲気温度、又は、シートヒータ温度に基づいて、前記輻射熱暖房装置のON、OFFを制御したことを特徴とする。
【0018】
なお、上記に付した符号は、後述する実施形態に記載の具体的実施態様との対応関係を示す一例である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態における車両用暖房装置の概略図である。
【図2】本発明の一実施形態における輻射熱暖房装置の一例である。
【図3】オートエアコン制御における必要吹出温度TAOとFOOT吹出し風量との関係を示したグラフの一例である。
【図4】同一温感が得られるようした、FOOT吹出し熱量(足元吹出し熱量)Qfとヒータ投入電力(消費電力)Qの関係を示す図であり、(a)〜(c)は、それぞれ、ヒータ投入電力、FOOT吹出し熱量、燃費(L/100km)と、足元吹出し風量との関係を示した図である。
【図5】狙いの温感Pの場合において、足元吹出し風量Va、輻射熱暖房装置の投入電力(ヒータ電力)Q、皮膚温度Tsk等の相互関係を示す数式の一例である。
【図6】本発明の第2実施形態の変形例の概念的なフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態を説明する。各実施態様について、同一構成の部分には、同一の符号を付してその説明を省略する。
図1は、本発明の一実施形態における車両用暖房装置の概略図である。輻射熱暖房装置1は、車両のステアリングコラム下の壁面で乗員の足元上部辺りに設置されている。図2は、本発明の一実施形態における輻射熱暖房装置の一例である。発熱体2は、図2のように電気ヒータ線が蛇行配線したもので、表面部材、火傷防止材3(低熱伝導率素材)によってサンドイッチ状に形成されている。発熱体2には、電気ヒータ線の代わりに、PTC特性のある抵抗体をシート状に成形したヒータを使用しても良い。
【0021】
車両用空調装置は、車両走行用エンジンにより駆動される圧縮機、凝縮器、受液器、膨張弁、蒸発器からなる冷凍サイクルと、空調ユニット(HVAC)からなっている。空調ユニットは、ブロアを有する送風機ユニットを付属するとともに、車室内へ向かって送風される空気通路を構成する樹脂製の空調ケースを有し、この空調ケース内に冷却用熱交換器をなす蒸発器と加熱用熱交換器をなすヒータコアを内蔵している。空調ユニット(HVAC)に内蔵したエアミックスドアの開度を調節することによって、空気の温度を調整して、デフロスタ(DEF)吹出口、フェイス(FACE)吹出口、足元(FOOT)吹出口(及び、膝(KNEE)吹出口)から空調風を吹き出す。KNEE吹出口がある場合は、FOOT吹出口とKNEE吹出口との風量割合を調整するドアが設けられている。
【0022】
空調ユニットは、空調制御装置ECUにより制御される。この空調制御装置ECUには、車両の熱負荷を検出するための内気温度センサ、外気温度センサ、日射量を検出する日射センサなどから、それぞれ検出した検出信号Trm(車室内温度)、Tam(外気温度)、Ts(日射強度信号)が入力されるとともに、インストルメントパネル内に配設されたエアコン操作パネルからの操作信号として設定温度Tsetなどが入力される。その他、車両運転情報、冷凍サイクルのエバポレータ温度なども入力される。そして、空調制御装置ECUが、空調ユニットから車室内に吹き出される空調風の、運転モード、吹出口モード、吹出温度、送風量などを制御している。足元雰囲気を暖房するためには、通常は足元(FOOT)吹出口11が設置されているが、図2のように、足元(FOOT)吹出口11と膝(KNEE)吹出口12がともに設けられていてもよい。
【0023】
オートエアコン制御において、乗員の希望する温度(上記設定温度Tset)に対して、空調制御装置ECUは、現在の車室内温度、外気温度、日射強度などの車室内外環境条件を検出して、いま空調ユニットから何度の風を出せばよいかを計算する。この計算値は、必要吹出温度TAOと呼ばれ、オートエアコン制御における基本となる値である(必要吹出温度TAOの一般的な式としては、TAO=Kset・Tset−Kr・Trm−Kam・Tam−Ks・Ts+C、ただし、Kset、Kr、Kam、Ksは各信号のゲイン、Cは、定数である)。なお、空調ユニットによる一般的な空調制御、オートエアコンの制御については、非特許文献1の88〜94頁に詳しく解説されている。本発明の一実施形態における空調ユニットによる空調制御は、非特許文献1のような基本の制御に限定されること無く、幅広く変形例に適用されるものである。
【0024】
エアコン操作パネルには、空調運転をON/OFFするA/Cスイッチや、運転モードを自動/手動に切り替えるオートエアコンスイッチ、足元用の輻射熱暖房装置やシートヒータにそれぞれON/OFFスイッチと手動設定器(デジタル設定又はダイヤル設定)などが備えられている。なお、設定温度Tsetは、運転モードが自動又は手動の場合にも機能している。ここで、車室内外の環境情報として、外気温度、内気温度、必要吹出温度TAO、設定温度Tset、輻射熱暖房装置やシートヒータの手動設定温度、足元雰囲気温度、湿度などを指すものとする。車両運転情報としては、エンジン水温、冷凍サイクルのエバポレータ温度、車速、空調運転モード、吹出口モードなど車両に関する情報が幅広く必要に応じて選択される。
【0025】
(第1実施形態)
次に、輻射加熱の特有の特徴について説明した後、本発明の一実施形態を説明する。
図2に示すように、本発明の一実施形態における輻射熱暖房装置1は、車両のステアリングコラム下の壁面で乗員の足元上部辺りに設置されている。人体の中で寒冷感を感じやすい足部を、局所的に主に輻射により効率よく暖房するものである。
本発明の一実施形態は、このような輻射熱加熱装置の特徴をうまく活用して、カーエアコンと連携制御をとって、足元の温感を満足させつつ省燃費を実現することを狙ったものである。
【0026】
電気ヒータなどの輻射熱加熱装置は、輻射熱により加熱するので、温風を送風して足を暖める場合と異なり、少ない熱量で同じ温感が得られるので、熱効率が良い。いわば、車両用空調装置のFOOTモードで高い電力を消費して得られる温感が、輻射熱加熱装置では低い電力で同じ温感が得られるのである。したがって、輻射熱加熱装置を使用すれば、その分燃費が向上するのである。
図3は、オートエアコン制御における必要吹出温度TAOと足元(FOOT)吹出し風量との関係を示したグラフの一例である。なお、本発明においては、吹出し風量とは、単位時間当たりの風量(m3/h)を指している。KNEE吹出し口がある場合は、足元吹出し風量は、FOOT吹出し風量とKNEE吹き出し風量との合計とする。
【0027】
オートエアコン制御においては、図3に見られるように、一般的に必要吹出温度TAOに応じて自動的に吹出し風量が定まるのが普通である。本発明では、オートエアコン制御における通常の吹出し風量を意図的に増減させて、その分輻射熱加熱装置を使用することで、温感の減少を補償して、結果的に同一温感が得られるように制御したものである。輻射熱加熱装置を使用することで、燃費効率も増大させることができる。なお、図3に見られるような通常の吹出し風量に比べて増減させるために、空調ユニット(HVAC)のブロア、FOOT吹出し口のドア開度、KNEE吹出し口のドア開度、あるいは、両者のドア開度を調整して行ってもよい。
【0028】
本実施形態は、車室内外の環境情報と車両運転情報に応じて空調ユニットHVACの必要吹出温度TAOを算出して車室内空調を制御する車室内空調装置であって、空調ユニット(HVAC)の足元吹出し風量が、調整可能である車室内空調装置と、乗員の足元雰囲気を暖房する輻射熱暖房装置とを具備する車両用暖房装置において、足元吹出し風量が保有する足元吹出し熱量(FOOT吹出し熱量)Qfと、輻射熱暖房装置の投入電力Qとの相互の割合が、乗員の足において同一温感となるように、車室内空調装置と輻射熱暖房装置を制御したものである。ここで、同一温感とは、特定の温度による温感のみならず、ある程度の温感幅を持った同一温感であっても良い。また、狙いとすべき同一温感は「やや暖かい」や「無感」など適宜定められる。
【0029】
図4は、同一温感が得られるようした、FOOT吹出し熱量(足元吹出し熱量)Qfとヒータ投入電力(消費電力)Qの関係を示す図であり、(a)〜(c)は、それぞれ、ヒータ投入電力、FOOT吹出し熱量、燃費(L/100km)と、足元吹出し風量との関係を示した図である。多くの車両の場合には、足元吹出し風量がゼロのときに燃料消費量が最小となるが、次のように車両の特性によっては、ある足元吹出し風量においてピーク値(最小消費電力量)が出現する。
足元吹出し熱量(Qf)+輻射熱暖房装置の投入電力(Q)=最小消費電力量
すなわち、温感を満足させつつ、輻射熱暖房装置とエアコンの合計消費電力が最小になるように風量割合を増減する。
【0030】
また、図4の場合では、保つべき同一温感は、輻射熱暖房装置(ヒータ)OFFのときの空調ユニット(HVAC)の図3で決まる足元吹出し風量による温感である。保つべき同一温感は、これに限定されずに、適宜任意に設定しても良い(この場合の保つべき同一温感は、FOOT風量ゼロのときのヒータで決まる温感で見てもよい)。常に、快適な温感(例えば、温感1=やや暖かい)をキープするようにすると良い。
【0031】
このように、本発明の一実施形態は、乗員の足において同一温感となるように、足元吹出し風量が保有する足元吹出し熱量(FOOT吹出し熱量)Qfと、輻射熱暖房装置の投入電力Qとの相互の割合を制御したことを特徴としている。吹出し風量を、輻射熱加熱装置を使用することで意図的に減少させ、かつ、同一温感は保持できるように制御したものであって、少ない投入電力でも温感に与える影響の大きい輻射熱加熱装置を使用することにより、燃費効率を増大させたものである。
【0032】
(第2実施形態)
次の第2実施形態は、輻射熱加熱装置の特性による燃費効率に加えて、車両の特性を加味して車室内空調装置と輻射熱暖房装置を制御したものである。空調ユニット(HVAC)には、加熱用熱交換器をなすヒータコアを内蔵している。このヒータコアは、車両走行用エンジンの冷却水(温水)を熱源として空気を加熱するものである。エンジンの冷却水のエンジン水温がある所定の閾値の前後で、次のように暖房に使用する熱源を切り替えると、熱効率が上がり、延いては、省燃費を実現できることになる。
【0033】
空調ユニット(HVAC)のヒータコアを利用して暖房する場合に、冷却水(温水)に熱源としての余裕がある場合(エンジン水温がある所定値以上)には、なんら冷却水(温水)を熱源として利用することに熱効率上問題は生じない。しかしながら、冷却水(温水)に熱源としての余裕がなくなると(エンジン水温がある所定値未満)、車室内空調制御のためにわざわざエンジンの回転数を上げる指令を発生させたりすることがある。特に、ハイブリッド車(HV車)やエコノミーランニングシステム搭載車(アイドルストップ車)などのエンジンを停止する機会の多い車両においては、冷却水(温水)に熱源としての余裕がなくなると、車室内空調制御のためにわざわざエンジンを稼動させる指令を発生させることとなって、省燃費の上から好ましくない。このような状況を改善して省燃費を実現したものが、第2実施形態である。
【0034】
すなわち、暖房として利用できる熱源が、ヒータコアに流れるエンジン冷却水に充分存在する場合(エンジン水温がある所定値以上)には、狙いとすべき同一温感に対して、乗員の足元雰囲気を暖房する上で、空調ユニット(HVAC)の足元に送風される風量による暖房に多くを依存し、逆に、冷却水に熱源としての余裕がなくなると(エンジン水温がある所定値未満)、輻射熱暖房装置の投入電力Qの割合を増加させるのである。
この状態を車両全体の熱効率で考えると、エンジン水温がある所定値以上では、暖房用の熱源は、エンジン冷却水に熱が余った状態であるから、ヒータコアに多くを依存すべきであって、輻射熱暖房装置の投入電力は減らされるべきである。また、エンジン水温がある所定値未満なら、当然その逆であるべきこととなる。なぜならば、車室内空調制御のためにわざわざ不要なエンジンを稼動させてしまうからである。
【0035】
本実施形態は、エンジン水温が所定値以上のときは、足元吹出し風量が保有する足元吹出し熱量Qfと、輻射熱暖房装置の投入電力Qとの相互の割合が、乗員の足において同一温感となるように、足元吹出し風量を増加させ、かつ、前記輻射熱暖房装置の投入電力を減少させ、エンジン水温が所定値未満のときは、前記足元吹出し風量が保有する足元吹出し熱量Qfと、輻射熱暖房装置の投入電力Qとの相互の割合が、乗員の足において同一温感となるように、足元吹出し風量を減少させ、かつ、輻射熱暖房装置の投入電力を増加させたものである。エンジン水温の閾値としての所定値としては、車両の仕様、特性に支配されるが、概ね50〜60℃程度が目安として、経験的に定めればよい。
【0036】
輻射熱暖房装置には、低温火傷、高温火傷を発生させることがあるので、足における皮膚温度Tskには安全温度としての限界がある。この安全温度から、図4(a)で輻射熱暖房装置の投入電力Qを設定しても良い。この場合、乗員の足において同一温感となるように足元吹出し風量が定められ、足元吹出し熱量Qfを定めることができる。その他、図3のオートエアコン制御における必要吹出温度TAOとFOOT吹出し風量との関係におけるFOOT吹出し風量を基準として、適宜足元吹出し風量を増減させて、乗員の足において同一温感となるように、足元吹出し熱量Qfと、輻射熱暖房装置の投入電力Qを設定すればよい。図4(c)に示すように、エンジン水温が所定値未満のときは、前記足元吹出し風量をゼロとしてもよい。この場合燃費が最小になる。
【0037】
図5は、狙いの温感Pの場合において、足元吹出し風量Va、輻射熱暖房装置の投入電力(ヒータ電力)Q、皮膚温度Tsk等の相互関係を示す数式の一例である。これは、足温感Pを満たすときのヒータ(輻射熱暖房装置)ONのときの足放熱量から、必要足到達輻射エネルギーを算出して、必要ヒータ電力との関係を得たものである。このような数式により、足元吹出し風量の増減量、輻射熱暖房装置の投入電力(ヒータ電力)Qとの関係をマップ化しておくと良い。この場合において、輻射熱暖房装置ONのとき、図4(c)から燃費が最小になるFOOT風量が定められて、図4(a)(b)からヒータ投入電力Q、足元吹出し熱量Qfを定めることができる。図4は、乗員の足において同一温感、皮膚温度が安全温度以下になるように、あらかじめ作成しておくとよい。
【0038】
第2実施形態の変形例として、エンジン水温が所定値以上のときは、輻射熱暖房装置をOFFにし、エンジン水温が所定値未満のときは、輻射熱暖房装置をONにして、足元吹出し風量が保有する足元吹出し熱量Qfと、輻射熱暖房装置の投入電力との相互の割合が、乗員の足において同一温感となるように、足元吹出し風量を減少させ、かつ、前記輻射熱暖房装置の投入電力を増加させても良い。
【0039】
図5は、本発明の第2実施形態の変形例の概念的なフローチャートである。
ステップ100で、エンジン水温が所定値以上か判断し、NOならステップ101で輻射熱暖房装置をONし、ステップ102に進む。YESならステップS104で輻射熱暖房装置をOFFにする。ステップ102では、マップを利用して、足元吹出し風量の変化量を求め、次に、ステップ103でドア開度、輻射熱暖房装置の投入電力Qを決定する。
なお、本発明の他の実施形態のフローチャートとしては、ステップ100においてエンジン水温の代りに、空調ユニット(HVAC)の必要吹出温度(TAO)、空調ユニット(HVAC)の設定温度、外気温度、内気温度、足元雰囲気温度、又は、シートヒータ温度に置き換えるとよい。
【0040】
本発明は、主に冬季に使用されるものであるが、冬季に限らず中間期(春、秋)にも使用可能なことは言うまでもない。他の実施形態として、必要吹出温度(TAO)に応じて、輻射熱暖房装置のON/OFFを切り替えるようにしても良い。すなわち、TAOが高いとき、夏だと判断し、輻射熱暖房装置をOFFとし、TAOが低いとき、冬だと判断し、輻射熱暖房装置をONにするようにしても良い。
その他、空調ユニット(HVAC)の設定温度、外気温度、内気温度、足元雰囲気温度(足元センサ、TAOによる推定値など)、又は、シートヒータ温度に基づいて、前記輻射熱暖房装置のON、OFFを制御するようにしても良い。
【符号の説明】
【0041】
1 輻射熱暖房装置
2 発熱体
3 表面部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室内外の環境情報と車両運転情報に応じて空調ユニット(HVAC)の必要吹出温度(TAO)を算出して車室内空調を制御する車室内空調装置であって、前記空調ユニット(HVAC)の足元吹出し風量が、調整可能である車室内空調装置と、
乗員の足元雰囲気を暖房する輻射熱暖房装置と
を具備する車両用暖房装置において、
前記足元吹出し風量が保有する足元吹出し熱量(Qf)と、輻射熱暖房装置の投入電力(Q)との相互の割合が、乗員の足において同一温感となるように、前記車室内空調装置と前記輻射熱暖房装置を制御したことを特徴とする車両用暖房装置。
【請求項2】
エンジン水温が所定値以上のときは、前記足元吹出し風量が保有する足元吹出し熱量(Qf)と、輻射熱暖房装置の投入電力(Q)との相互の割合が、乗員の足において同一温感となるように、前記足元吹出し風量を増加させ、かつ、前記輻射熱暖房装置の投入電力を減少させ、
エンジン水温が所定値未満のときは、前記足元吹出し風量が保有する足元吹出し熱量(Qf)と、輻射熱暖房装置の投入電力(Q)との相互の割合が、乗員の足において同一温感となるように、前記足元吹出し風量を減少させ、かつ、前記輻射熱暖房装置の投入電力を増加させたことを特徴とする請求項1に記載の車両用暖房装置。
【請求項3】
エンジン水温が所定値以上のときは、前記輻射熱暖房装置をOFFにし、
エンジン水温が所定値未満のときは、前記輻射熱暖房装置をONにして、前記足元吹出し風量が保有する足元吹出し熱量(Qf)と、輻射熱暖房装置の投入電力との相互の割合が、乗員の足において同一温感となるように、前記足元吹出し風量を減少させ、かつ、前記輻射熱暖房装置の投入電力を増加させたことを特徴とする請求項1に記載の車両用暖房装置。
【請求項4】
前記吹出し風量が、FOOT吹出し口の吹出し風量であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の車両用暖房装置。
【請求項5】
前記吹出し風量が、FOOT吹出し口の吹出し風量とKNEE吹出し口の吹き出し風量の合計であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の車両用暖房装置。
【請求項6】
前記吹出し風量を前記空調ユニット(HVAC)のブロアにより調整したことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の車両用暖房装置。
【請求項7】
前記吹出し風量を前記空調ユニット(HVAC)のFOOT吹出し口のドア開度により調整したことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の車両用暖房装置。
【請求項8】
前記吹出し風量を前記空調ユニット(HVAC)のKNEE吹出し口のドア開度により調整したことを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の車両用暖房装置。
【請求項9】
エンジン水温が所定値未満のときは、前記足元吹出し風量をゼロとしたことを特徴とする請求項2から8のいずれか1項に記載の車両用暖房装置。
【請求項10】
前記空調ユニット(HVAC)の必要吹出温度(TAO)、前記空調ユニット(HVAC)の設定温度、外気温度、内気温度、足元雰囲気温度、又は、シートヒータ温度に基づいて、前記輻射熱暖房装置のON、OFFを制御したことを特徴とする請求項1又は2に記載の車両用暖房装置。

【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図1】
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【図2】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−192829(P2012−192829A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−58096(P2011−58096)
【出願日】平成23年3月16日(2011.3.16)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】