説明

車両用機能部品の保護構造

【課題】ボルトキャップなどを専用に設定することなく、製造コストの増加を抑制し、燃料タンクのような車両用機能部品を保護することができる車両用機能部品の保護構造を提供する。
【解決手段】 サイドメンバ1に荷重が入力されたときに、車体のフロア下部に設けられた燃料タンク2の近傍に配置されたボルト部材8のねじ部8aから燃料タンク2を保護する車両用燃料タンクの保護構造において、燃料タンク2の近傍にワイヤーケーブル15を把持可能な保護ブラケット11を設け、サイドメンバ1に荷重が入力されたときに、この保護ブラケット11がねじ部8aを覆うように変形することにより、燃料タンク2をねじ部8aから保護するように構成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用機能部品の保護構造に関し、特に車体フロア下方に搭載される燃料タンクの保護構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用燃料タンクは、一般的に車体フロア下方に懸架されており、前記燃料タンクの近傍にボルト部材などの突出部を有する周辺部品が配置されている。このため、サイドメンバなどの車体部材に荷重が入力すると、燃料タンクは前記突出部と当接するおそれがある。この対策として、ボルト部材の突出部を合成樹脂等の材質により椀状に形成されたボルトキャップによって被覆する従来技術がある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】実開平1−144512号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記の従来技術では、前記ボルトキャップを燃料タンクの保護のために専用に設定しなければならず、製造コストの増加を招くという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、製造コストの増加を抑制し、燃料タンクのような車両用機能部品を保護することができる車両用機能部品の保護構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本発明は、車体部材に荷重が入力されたときに、車体に設けられた機能部品の近傍に配置された突出部から前記機能部品を保護する車両用機能部品の保護構造において、前記機能部品の近傍に長尺部材を把持している保護ブラケットを設け、車体部材に荷重が入力されたときに、前記機能部品と保護ブラケットが当接して、この保護ブラケットが前記突出部を覆うように変形することにより、前記機能部品を前記突出部から保護するように構成したことを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、長尺部材を把持している保護ブラケットを用いて、燃料タンクのような機能部品をボルト部材の突出部から保護するので、ボルトキャップなどを専用に設定することなく、製造コストの増加を抑制し、燃料タンクのような機能部品を保護することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
【0009】
図1〜5は本発明にかかる車両用機能部品の保護構造の一実施形態を示し、図1は燃料タンク周辺の平面図であり、図2は図1のA−A線による断面図であり、図3はジョイント部の分解斜視図であり、図4は保護ブラケットの斜視図であり、図5は燃料タンクの保護作用を説明する図1のA−A線による断面図であり、(a)は車体部材に荷重が入力される前の状態を示し、(b)は車体部材に荷重が入力された後の状態を示す。
【0010】
本実施形態は、図1に示すように、車体の左右両側に配置され、車体前後方向に延在する一対のサイドメンバ(車体部材)1を有する車体を、トレーリング式サスペンションによって懸架するタイプの車両に設けられた燃料タンク(機能部品)2の保護構造に関する。トレーリング式サスペンションは、左右輪それぞれに対応して設けられた車体前後方向に延在する一対のトレーリングアーム3と該トレーリングアーム3を連結するように車体左右方向に延びるビーム4とを備えている。トレーリングアーム3は、前端部3aをサイドメンバ1にジョイント部5を介して回動可能に支持され、後端部3bに車輪6が装着されている。なお、トレーリングアーム3の回動軸3cは互いに同軸、かつ車体左右方向となるように設けられている。
【0011】
また、本実施形態の車体には、サイドメンバ1に挟まれるように車体左右方向の略中央部に燃料タンク2が車体のフロア下方に吊り下げられて支持されている。
【0012】
ジョイント部5は、図2及び図3に示すように、一対のジョイントブラケット7、ボルト部材8、ナット部材9、ブッシュ10、及び保護ブラケット11とで構成される。
【0013】
ジョイントブラケット7は、車体外側の外壁部7aと車体内側の内壁部7b(取付面)とからなり、サイドメンバ下面部1aから車体下方へ延設されている。また、外壁部7aと内壁部7bとには、それぞれ前記ボルト部材8が挿通可能なボルト孔7c、7dが設けられている。
【0014】
ボルト部材8は、前記外壁部7aの車体外側からボルト孔7c、7dに挿通されると共に、内壁部7bの車体内側にねじ部8a(突出部)を突出させて、外壁部7aと内壁部7bとの間を連結し、トレーリングアーム3の回動軸3cが軸心となるように配置されている。
【0015】
ナット部材9は、内壁部7bより突出したねじ部8aと螺合して、ボルト部材8をジョイントブラケット7に固定すると共に、保護ブラケット11を内壁部7bの車体内側に取付けている。つまり、保護ブラケット11は、ジョイントブラケット7を介してサイドメンバ1に取付けられている。
【0016】
ブッシュ10は、外壁部7aと内壁部7bとの間に配置され、トレーリングアーム3の回動軸3cを中心とする円筒形状を成しており、ボルト部材8を挿通する内筒10aと、トレーリングアーム3の前端部3aと固定されると共に前記内筒10aよりも大きい径を持つ外筒10bと、内筒10aと外筒10bとの間隙に介在する弾性体10cとから構成される。つまり、トレーリングアーム3は、ボルト部材8にブッシュ10を介して回動可能に軸支されている。
【0017】
保護ブラケット11は、図4に示すように、内壁部7bに当接して取付けられるベース部(取付部)12と、該ベース部12の上端部から車体内側(燃料タンク2側)に向かって延びる上側フランジ部13aと、前記ベース部12の下端部から車体内側に向かって延びる下側フランジ部13bから構成される。
【0018】
ベース部12には、略中央部に前記ねじ部8aが挿通可能なボルト孔12aが形成されているとともに、該ボルト孔12aの前後両側に内壁部7b側(車体外側)に凸設した一対の立片12bが形成されている。立片12bは、ベース部12の一部を内壁部7b側に切り起こした略短冊形状の突起である。なお、内壁部7bには、立片12bに対応した位置に立片12bと係合可能の係合孔7eが設けられている。
【0019】
上側フランジ部13aと下側フランジ部13bとは、ボルト孔12aを挟むように車体上下方向に対向して、一対に設けられている。
【0020】
上側フランジ部13aは、ベース部12の上端部から、車体内側に向かうにつれてボルト孔12aに近接するように車体下方に傾斜して、その先端にボルト孔12aから離反するように車体上方に湾曲して形成される上側湾曲部14aを有する。また、下側フランジ部13bは、ベース部12の下端部から車体内側に向かうにつれて、ボルト孔12aに近接するように車体上方に傾斜して、その先端にボルト孔12aから離反するように車体下方に湾曲して形成される下側湾曲部14bを有する。上側湾曲部14aと下側湾曲部14bとは、図5(a)に示すように、ナット部材9の径寸法9aと、その外周にナット部材9を組付けるための工具を挿通可能にする工具スペース9bとを加えた湾曲部間距離Dの間隔を車体上下方向に確保している。
【0021】
また、上側湾曲部14aはワイヤーケーブル(長尺部材)15を把持している。ワイヤーケーブル15は、図示しないパーキングブレーキレバーと車輪6に制動力を与えるパーキングブレーキとを連結する索状部材であり、車体前方から後方へ延設され、サイドメンバ1と燃料タンク2との間を通るように配索されている。
【0022】
かかる構成によって、図5(b)に示すように、サイドメンバ1に車体外側から荷重が入力されると、サイドメンバ下面部1aから車体下方へ延設されているジョイントブラケット7は、車体内側(二点鎖線の矢印の方向)に移動する。つまり、ジョイント部5全体が燃料タンク2側に移動する。これによって、ジョイント部5の構成要素の中で最も車体内側に位置する上側湾曲部14aと下側湾曲部14bとが、燃料タンク2に当接する。このとき、上側フランジ部13aは、ベース部12の上端部からねじ部8aに近接するように車体下方に傾斜しているため、上側湾曲部14aと燃料タンク2とが当接して発生する車体左右方向の力によって、ベース部12の上端部を中心にねじ部8aに近接するように折れ曲がる。一方、下側フランジ部13bは、ベース部12の下端部からねじ部8aに近接するように車体上方に傾斜しているため、下側湾曲部14bと燃料タンク2とが当接して発生する車体左右方向の力によって、ベース部12の下端部を中心にねじ部8aに近接するように折れ曲がる。つまり、上側フランジ部13aと下側フランジ部13bとは、上側湾曲部14aと下側湾曲部14bとが当接するまで互いにねじ部8aに近接するように変形する。これにより、図5(b)の実線で示すように、ねじ部8aは、上側フランジ部13aと下側フランジ部13bとで覆われる。
【0023】
以下、実施形態の効果について説明する。
【0024】
(1) ワイヤーケーブル15を把持している保護ブラケット11を用いて、燃料タンク2をねじ部8aから保護するので、ボルトキャップなどを専用に設定することなく、製造コストの増加を抑制し、燃料タンク2を保護することができる。
【0025】
(2) サイドメンバ1に荷重が入力されたときに、上側フランジ部13a及び下側フランジ部13bが燃料タンク2に当接して、上側フランジ部13aと下側フランジ部13bとがねじ部8aを覆うように変形し、燃料タンク2とねじ部8aとの当接を防止するので、ボルトキャップなどを専用に設定することなく、製造コストの増加を抑制し、燃料タンク2を保護することができる。
【0026】
(3) 上側フランジ部13aと下側フランジ部13bとは、ねじ部8aに近接するように傾斜しているため、互いにねじ部8aを覆うように変形し、燃料タンク2をねじ部8aから保護することができる。また、上側フランジ部13aの先端を湾曲させて、燃料タンク2と当接可能でワイヤーケーブル15を把持している上側湾曲部14aを形成したことによって、ボルトキャップなどを専用に設定することなく、製造コストの増加を抑制し、燃料タンク2を保護することができる。
【0027】
(4) 上側フランジ部13aと下側フランジ部13bとは、ねじ部8aを挟むように対向して、一対に設けられたことによって、上側湾曲部14aと下側湾曲部14bとが当接するまで変形してねじ部8aを覆うため、燃料タンク2とねじ部8aとの当接を防止することができる。
【0028】
(5) 上側湾曲部14aは、ねじ部8aから離反する方向に湾曲しているため、ワイヤーケーブル15を把持させ易い。
【0029】
(6) ワイヤーケーブル15を把持している保護ブラケット11を用いて、燃料タンク2をねじ部8aから保護するので、ボルトキャップなどを専用に設定することなく、製造コストの増加を抑制し、燃料タンク2を保護することができる。
【0030】
(7) 保護ブラケット11は、ベース部12に凸設した立片12bを有する一方、内壁部7bに立片12bが係合される係合孔7eが設けられているため、保護ブラケット11に荷重が入力された場合に周り止めの作用を有する。
【0031】
なお、本実施形態では、上側フランジ部13aと下側フランジ部13bとを有する保護ブラケット11について説明したが、本発明は上側フランジ部13aのみを設けた保護ブラケットでも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】燃料タンク周辺の平面図である。
【図2】図1のA−A線による断面図である。
【図3】ジョイント部の分解斜視図である。
【図4】保護ブラケットの斜視図である。
【図5】燃料タンクの保護作用を説明する説明図であり、(a)は車体に荷重が入力される前の状態を示し、(b)は車体に荷重が入力された後の状態を示す。
【符号の説明】
【0033】
1 サイドメンバ(車体部材)
2 燃料タンク(機能部品)
3 トレーリングアーム
7 ジョイントブラケット
7b 内壁部(取付面)
7e 係合孔
8 ボルト部材
8a ねじ部(突出部)
11 保護ブラケット
12 ベース部(取付部)
12b 立片
13a 上側フランジ部(フランジ部)
14a 上側湾曲部(湾曲部)
15 ワイヤーケーブル(長尺部材)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体部材に荷重が入力されたときに、車体に設けられた機能部品の近傍に配置された突出部から前記機能部品を保護する車両用機能部品の保護構造において、
前記機能部品の近傍に長尺部材を把持している保護ブラケットを設け、車体部材に荷重が入力されたときに、前記機能部品と保護ブラケットが当接して、この保護ブラケットが前記突出部を覆うように変形することにより、前記機能部品を前記突出部から保護するように構成したことを特徴とする車両用機能部品の保護構造。
【請求項2】
前記保護ブラケットは、前記車体部材に取付けられると共に、前記機能部品へ向かって傾斜して延びるフランジ部を有しており、車体部材に荷重が入力されたときに、前記フランジ部と機能部品とが当接して、フランジ部が前記突出部を覆うように変形し、機能部品と突出部との当接を防止することを特徴とする請求項1に記載の車両用機能部品の保護構造。
【請求項3】
前記フランジ部は、前記機能部品に向かうにつれて前記突出部に近接する方向に傾斜していて、
フランジ部の先端に、前記長尺部材を把持している湾曲部を形成したことを特徴とする請求項2に記載の車両用機能部品の保護構造。
【請求項4】
前記フランジ部は、前記突出部を挟むように対向させ、一対に設けられた
ことを特徴とする請求項2又は3に記載の車両用機能部品の保護構造。
【請求項5】
前記湾曲部は、前記突出部から離反する方向に湾曲していることを特徴とする請求項3又は4に記載の車両用機能部品の保護構造。
【請求項6】
前記機能部品は、車体のフロア下方に設けられた燃料タンクであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の車両用機能部品の保護構造。
【請求項7】
前記保護ブラケットは、前記車体部材との取付部に車体部材側へ凸設した立片を有する一方、車体部材の取付面には、この立片が係合される係合孔が設けられていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の車両用機能部品の保護構造。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−137322(P2007−137322A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−335838(P2005−335838)
【出願日】平成17年11月21日(2005.11.21)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】