説明

車両用灯具

【課題】制御回路部の小型化と、LED光源組立部との近接配置によりユニットの小型化を図り、コンパクトな車両用灯具を提供する。
【解決手段】ランプボディ1と、ランプボディ1の前方に位置する前面カバー2とからなる灯室3内に、複数のLED10を有するLED光源組立部55と、LED光源組立部55の背後に位置する制御回路部56とを備える車両用灯具であって、LED10は、導電性のバスバーに電気的に連結され、前面カバー2に対向する位置に発光面を形成しており、制御回路部56は、導電性のバスバーに回路素子が電気的に連結され、前面カバー2に対して、LED光源組立部55の発光面の背後側に形成されており、LEDが固定されたバスバーと、回路素子が固定されたバスバーとは導電可能に接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LEDを光源する車両用灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、発光効率と電力消費特性に優れるLEDが車両用灯具の光源として多様されている(例えば、特許文献1参照)。この車両用灯具は、LEDを搭載したLED光源組立部と、これを制御する制御回路部とを組み合わせたユニットを備える。図12に示すように、従来、制御回路部にはプリント基板8が用いられており、LED光源組立部の裏側にジャンプコード15で接続されていた。
【特許文献1】特開2003−115208号公報 第3頁〜第4頁 図1
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ユニットの小型化の要請を満たすには、LED光源組立部9と制御回路部とを近接させて配置することが好ましいが、プリント基板8が発熱するため、ある程度の空間を維持する必要があり、従来の構成ではコンパクトな配置に限界がある。また、従来のプリント基板では、発熱の抑制を目的として、電圧あるいは電流を分散させるための分散抵抗が必要で、そのため、抵抗数が多くなり、制御回路部が大きくなってしまう。発熱の問題が解消されれば、制御回路部の小型化と、LED光源組立部との近接配置の両方を実現することができる。
【0004】
本発明の目的は、制御回路部の小型化と、LED光源組立部との近接配置によりユニットの小型化を図り、コンパクトな車両用灯具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、ランプボディと、前記ランプボディの前方に位置する前面カバーとからなる灯室内に、複数のLED光源と、前記LED光源の背後に位置する点灯回路部とを備える車両用灯具であって、前記LED光源は、導電性のバスバーに電気的に連結され、前記前面カバーに対向する位置に発光面を形成しており、前記点灯回路部は、導電性のバスバーに回路素子が電気的に連結され、前記前面カバーに対して、前記LED光源の発光面の背後側に形成されており、前記LED光源が固定されたバスバーと、前記回路素子が固定されたバスバーとは導電可能に接続されている。
【0006】
上記構成によれば、LED光源と点灯回路部とがいずれも放熱効果の高いバスバーで構成されるため、LED光源と点灯回路部との近接配置が可能となる。また、放熱効果の高いバスバーを使用することで発熱を考慮した分散抵抗が不要あるいは個数の低減ができるため、点灯回路部自体の小型化が可能となる。この結果、LED光源と点灯回路部とで構成されるユニットの小型化が可能となり、灯具全体をコンパクトにすることができる。
【0007】
本発明において、前記LED光源が固定されたバスバーと、前記回路素子が固定されたバスバーとが、一体のバスバーで形成されている。この構成によれば、LED光源と点灯回路部のバスバーを一体化し、電子部品の組み立て後に折り曲げ加工するため、ユニットの小型化が可能で、灯具全体をコンパクトにすることができる。
【0008】
本発明において、前記LED光源が固定されたバスバーと、前記回路素子が固定されたバスバーとは、それぞれ別体の基板に保持されており、前記回路素子が固定されたバスバーを保持する基板は、前記LED光源が固定されたバスバーを保持する基板の背後に屈曲可能に形成されている。この構成によれば、LED光源と点灯回路部のバスバーを別々に成形した後、双方を屈曲可能に接続するため、同様にユニットの小型化が可能で、灯具全体をコンパクトにすることができる。
【0009】
本発明において、前記基板は前記ランプボディで構成されており、前記バスバーは前記ランプボディの両面に支持されている。この構成によれば、階段状など複雑な形状に成形加工されたLED光源のバスバーと点灯回路部のバスバーを的確に固定することができるので、湾曲形状の前面カバーであってもユニットを効率よく収容することができ、従って灯具全体をコンパクトにすることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、LED光源と点灯回路部とがいずれも放熱効果の高いバスバーで構成されるため、LED光源と点灯回路部との近接配置が可能となる。また、放熱効果の高いバスバーを使用することで発熱を考慮した分散抵抗が不要となるため、点灯回路部自体の小型化が可能となる。この結果、LED光源と点灯回路部とで構成されるユニットの小型化が可能となり、灯具全体をコンパクトにすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1は、本発明の実施の形態における車両用灯具の構成を示す水平断面図である。ここでは、本発明の車両用灯具の一例として、標識灯であるテールアンドドストップランプを用いて説明する。
【0012】
テールアンドドストップランプ100は、主に、ランプボディ1と、湾曲する前面カバー2と、ランプボディ1と前面カバー2とで画成された灯室3内に配置される、湾曲するリフレクター4と、リフレクター4の裏側に配設されているバスバーユニット5とで構成される。バスバーユニット5は、テールアンドドストップランプ100の光源であるLED10を搭載したLED光源組立部55と、LEDの発光を制御する制御回路部56とを備えたユニットである。図の例では、バスバーユニット5は、リフレクター4の車両幅方向中央部寄り側41と、車両左側近傍42においてリフレクター4に固定されている。本発明の車両用灯具では、従来のLED光源組立部55に加え、制御回路部56までバスバー回路で構成したことが重要な特徴である。
【0013】
尚、上下左右方向の三次面で湾曲するリフレクター4には、複数の放物反射面部44が設けられ、各放物反射面部44の後頂部にはLED係合部43が設けられており、LED本体11をLED係合部43に係合することで、LED10の発光中心が放物反射面部44に対し自ずと位置決めされるようになっている。符号20は、前面カバー2の裏側の少なくともリフレクター4の放物反射面部44形成領域全体に対応する領域に設けられた魚眼レンズである。
【0014】
また、リフレクター4のLED係合部43には、LED本体11を抜け止め把持する弾性フック45が設けられており、弾性フック45を弾性変形させることで、LED係合部43へのLED本体11(バスバーユニット5)のリフレクター4背面側からの挿脱着が容易になっている。
【0015】
符号6,7は、リフレクター4の左右の側縁部の前面側に組み付けられたリフレックスリフレクタである。なお、前面カバー2のリクレックスリフレクター6,7に対応する領域は、魚眼レンズ20が形成されていないノンステップ領域となっている。
【0016】
次に、バスバーユニット5を構成する、LED光源組立部55と制御回路部56の接続パターンについて説明する。
【0017】
図2は、本発明の実施の形態における車両用灯具の、バスバーユニットの第1の構成例を示す斜視図であり、また、図3は、当該第1の構成例のバスバーユニットの、成形前のバスバー基板を示す模式図である。図2および図3に示すように、第1の構成例であるバスバーユニット50は、LED光源組立部55と制御回路部56とを一体化したバスバー回路に、LEDやダイオード、抵抗などの部品を組み立て、その後、バスバー回路を保持するバスバー基板に曲げ加工(LED光源組立部55を階段状に折り曲げるなどの加工)を施して成形したものである。
【0018】
図3に示すように、バスバーユニット50の片方側の領域には、バスバー回路上に碁盤目状に赤色発光LED10を配置したLEDモジュールであるLED光源組立部55が形成されている。即ち、隣接する2本のバスバー16上に、LED本体11から導出する一対の接続端子12の一方がそれぞれ後述する接合方法により接合され、LED10の給電路を構成している。LED10は、矩形状の合成樹脂成形体であるLED本体11の裏側から一対の舌片状の金属製接続端子がL字状に導出する構造で、上記のように接続端子12の屈曲された先端側がバスバーユニット50のバスバー16にそれぞれ接合されることで、LED光源組立部55として一体化されている。
【0019】
また、バスバーユニット50の反対側の領域には、LED光源組立部55に接続し、LED10の点灯を制御する制御回路部56が形成されている。
【0020】
バスバーユニット50は、従来の車両用灯具では、LED光源組立部をバスバーで構成しても、制御回路部はプリント基板で形成していたため、双方を一体成形することは不可能であった。しかし、本発明の車両用灯具では制御回路部をもバスバー17で回路構成したので、一体成形が可能となった。
【0021】
次に、図4は、本発明の実施の形態における車両用灯具の、バスバーユニットの第2の構成例を示す斜視図である。図4に示すように、第2の構成例であるバスバーユニット51は、別工程で形成されたLED光源組立部55のバスバー基板と制御回路部56のバスバー基板とが、ジョイント端子13で接続された構成となっている。
【0022】
次に、図5は、本発明の実施の形態における車両用灯具の、バスバーユニットの第3の構成例を示す斜視図である。図5に示すように、第3の構成例であるバスバーユニット52は、別工程で形成されたLED光源組立部55のバスバー基板と制御回路部56のバスバー基板とが、端子付きコード14で接続された構成となっている。
【0023】
バスバーユニット51および52は、ユニットを一体化する場合に比べて部品点数が増加するが、制御回路部56のバスバー基板を標準化できるという利点がある。また、バスバーユニット52の場合、灯室のレイアウトに制限がある場合には、必ずしも近接配置に限定されず適当な場所に配置できるという利点もある。
【0024】
次に、制御回路部56の回路構成について説明する。図6は、本発明の実施の形態における車両用灯具の、バスバーで構成する制御回路部の一例を示す回路図である。同一機能をプリント基板で実現した場合の回路図(図13参照)と比較して、抵抗数を低減できるため、制御回路部56のバスバー基板自体を小型化することができる。
【0025】
次に、制御回路部56の電子部品の接続形態について説明する。図7は、本発明の実施の形態における車両用灯具の、制御回路部のバスバー回路の一例を示す模式図である。プリント基板で構成した従来の制御回路部(図14参照)は、はんだ接続が必須であったが、本発明の実施の形態における車両用灯具では、制御回路部をバスバー18で構成することにより、はんだ付けを廃止して、かしめ、溶接、圧接などの接続が可能となった。
【0026】
図8から図10は、バスバー回路における部品接続の概要を示す模式図である。本発明の実施の形態における車両用灯具の制御回路部では、バスバー回路で、かしめ(図8)、溶接(図9)、圧接(図10)などの方法により部品の接続を行うためはんだ接続が不要となる。プリント基板のはんだ付け部は(図15参照)、高温になるとはんだが溶融するため、プリント基板における発熱問題の場合と同様に、分散抵抗によりはんだ部分の発熱を許容値内に収める必要が生じる。そのため抵抗数が増加する。しかし、バスバーを用いて図8から図10に示すような接続方法で部品の接続を行えば、はんだに関わる熱の問題が解消し、抵抗数を低減することができるので、制御回路部とLED光源組立部を含むユニット、ひいては灯具全体を小型化することができる。
【0027】
次に、図11は、本発明の実施の形態における車両用灯具の、バスバーユニットのその他の実施の形態を示す模式図である。テールアンドドストップランプの前面カバーが湾曲しておらず平坦で、LED光源組立部55を、図1に示したような階段状に加工する必要がない場合、一体成形したバスバーユニット50を90度(図11(a))または180度(図11(b))折り曲げることにより、バスバー回路部分の省スペース化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施の形態における車両用灯具の構成を示す水平断面図
【図2】本発明の実施の形態における車両用灯具の、バスバーユニットの第1の構成例を示す斜視図
【図3】第1の構成例のバスバーユニットの、成形前の基板を示す模式図
【図4】本発明の実施の形態における車両用灯具の、バスバーユニットの第2の構成例を示す斜視図
【図5】本発明の実施の形態における車両用灯具の、バスバーユニットの第3の構成例を示す斜視図
【図6】本発明の実施の形態における車両用灯具の、バスバーで構成する制御回路部の一例を示す回路図
【図7】本発明の実施の形態における車両用灯具の、制御回路部のバスバー回路の一例を示す模式図
【図8】バスバー回路における部品接続の概要を示す模式図(かしめ)
【図9】バスバー回路における部品接続の概要を示す模式図(溶接)
【図10】バスバー回路における部品接続の概要を示す模式図(圧接)
【図11】本発明の実施の形態における車両用灯具の、バスバーユニットのその他の実施の形態を示す模式図
【図12】車両用灯具のLED光源組立部と制御回路部の従来構成を示す模式図
【図13】バスバーで構成する制御回路部と同一の機能をプリント基板で実現した場合の回路図
【図14】プリント基板で構成する従来の制御回路部を示す模式図
【図15】プリント基板におけるはんだ付けの概要を示す模式図
【符号の説明】
【0029】
1 ランプボディ
2 前面カバー
3 灯室
4 リフレクター
5 バスバーユニット
6、7 リクレックスリフレクター
8 プリント基板
9 LED光源組立部
10 LED
11 LED本体
12 接続端子
13 ジョイント端子
14 端子付きコード
15 ジャンプコード
16、17、18 バスバー
20 魚眼レンズ
43 LED係合部
44 放物反射面部
45 弾性フック
50、51、52 バスバーユニット
55 LED光源組立部
56 制御回路部
100 テールアンドドストップランプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ランプボディと、前記ランプボディの前方に位置する前面カバーとからなる灯室内に、複数のLED光源と、前記LED光源の背後に位置する点灯回路部とを備える車両用灯具であって、
前記LED光源は、導電性のバスバーに電気的に連結され、前記前面カバーに対向する位置に発光面を形成しており、
前記点灯回路部は、導電性のバスバーに回路素子が電気的に連結され、前記前面カバーに対して、前記LED光源の発光面の背後側に形成されており、
前記LED光源が固定されたバスバーと、前記回路素子が固定されたバスバーとは導電可能に接続されている車両用灯具。
【請求項2】
前記LED光源が固定されたバスバーと、前記回路素子が固定されたバスバーとが、一体のバスバーで形成されている請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項3】
前記LED光源が固定されたバスバーと、前記回路素子が固定されたバスバーとが、それぞれ別体の基板に保持されており、
前記回路素子が固定されたバスバーを保持する基板は、前記LED光源が固定されたバスバーを保持する基板の背後に屈曲可能に形成されている請求項1又は2に記載の車両用灯具。
【請求項4】
前記基板は前記ランプボディで構成されており、前記バスバーは前記ランプボディの両面に支持されている請求項1又は2に記載の車両用灯具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2008−84578(P2008−84578A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−260557(P2006−260557)
【出願日】平成18年9月26日(2006.9.26)
【出願人】(000001133)株式会社小糸製作所 (1,575)
【Fターム(参考)】