説明

車両用灯具

【課題】雪道など走路が見え難い状況においても、走路の特定が容易となる。
【解決手段】車両の進行方向を照射する車両用灯具1,2,100であって、光源光によって前記進行方向と直交する方向に延在する帯状の配光パターンPLINE,SLINEを灯具前方に形成する照射機構20,60,109を備えることを特徴とする車両用灯具1,2,100により達成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の進行方向を照射する車両用灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
ヘッドランプおよびフォグランプなどの車両用灯具は、一般に、車両の進行方向の視認性を確保するために当該進行方向の路面を一定の範囲にわたって照明する。ところで、雪道など進行方向の路面が見え難い状況では、運転者は路肩の溝や突起物などを手掛かりとして当該路面を特定しながら走行する必要がある。しかしながら、路面や路肩に一様に雪が積もっているような状況下では、ヘッドランプおよびフォグランプなどで進行方向を照明しながら走行した場合でも、積雪によって路肩の溝や突起物の形状や色を判別し難くなっている。
【0003】
そこで、可視スペクトル以外の波長のレーザー光を路面へ照射してその照射領域をカメラで撮像し、その画像を運転者に表示する方法が提案されている(例えば特許文献1参照)。この方法では、運転者は、濃霧や雪道など視界の悪い状況下での走行時に、車内のモニタなどに表示される画像によって、ヘッドランプなどの照明だけでは特定しにくい路面や路肩の状況を視認することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−134509号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の方法では、運転者が進行方向と車内のモニタの両方を見ながら運転する必要があることから注意が散漫になり易く運転の安全性が損なわれる。また、この方法では、路面や路肩に一様に雪が積もっているような状況では、レーザー光の照射範囲の撮像画像によっても路肩の溝や突起物の形状や色を判別し難いことがあった。
本発明は、上記状況に鑑みてなされたもので、路面や路肩に一様に雪が積もっているような状況下での走行時においても、走路やその側方の地形に対する視認性を向上させることによって運転者による走路の特定を補助することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的は、本発明に係る下記の(1)〜(5)の特徴を有する車両用灯具により達成される。
(1)
車両の進行方向を照射する車両用灯具であって、
光源光によって前記進行方向と直交する方向に延在する帯状の配光パターンを灯具前方に形成する照射機構を備えることを特徴とする車両用灯具。
【0007】
このような車両用灯具によれば、雪道など走路が見え難い状況においても、帯状の配光パターンによって走路やその側方の地形に対する視認性が向上するので、走路の特定が容易となる。また、運転者は車内のモニタなどを見ながら運転する必要がないので運転の安全性が損なわれることもない。
【0008】
(2)
(1)の車両用灯具において、
前記照射機構は、
主配光パターンを形成するための光源である第1光源と、
前記帯状の配光パターンを形成するための光源である第2光源と、
を備え、
前記第2光源は、前記主配光パターンと波長および単位面積あたりの照度の少なくとも一方が異なる光を出射することが好ましい。
【0009】
これにより、例えば主配光パターンに一部が重なるように帯状の配光パターンが形成された場合でも、帯状の配光パターンの主配光パターンに対する識別が容易であるので、走路やその側方の地形に対する視認性が低下しにくい。
【0010】
(3)
(1)の車両用灯具において、
前記照射機構は、光源と、前記光源からの光を灯具前方へ投影する投影レンズとを備え、
前記光源と前記投影レンズとの間に、前記光源からの光の波長および単位面積あたりの照度の少なくとも一方を変化させて出射することにより前記帯状の配光パターンを形成するためのスリットが設けられていることが好ましい。
【0011】
これにより、いわゆるプロジェクタ型の灯具ユニットに新たにスリットを設けるだけで帯状の配光パターンを形成することができる。
【0012】
(4)
(1)から(3)のいずれかの車両用灯具において、
前記帯状の配光パターンを形成するための前記光源は、レーザー光を出射することが好ましい。
【0013】
このように、照度のより高いレーザー光を用いることにより、走路やその側方の地形に対する視認性がより向上する。
【0014】
(5)
(1)から(4)のいずれかの車両用灯具において、
前記車両用灯具は、フォグランプであり、
車両前方にすれ違い配光パターンを形成するための灯具とは別個に設けられ、
フォグランプモードと前記帯状の配光パターンを形成するモードとが切り替え可能であることが好ましい。
【0015】
これにより、運転者が悪天候時などの視認性の向上を目的としてフォグランプを車両に設置する際にフォグランプの付加機能として帯状の配光パターンを照射して走路やその側方の地形に対する視認性を向上させる機能を容易に車両に付加することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る車両用灯具の実施形態の一例であるヘッドランプ1の水平断面図である。
【図2】ヘッドランプ1による走路上の配光パターンである。
【図3】本発明に係る車両用灯具の実施形態の他の一例であるヘッドランプ2の水平断面図である。
【図4】図3に示すII−II線を通る鉛直断面におけるヘッドランプ2の断面図である。
【図5】ヘッドランプ2による走路上の配光パターンである。
【図6】本発明に係る車両用灯具の実施形態のさらに他の一例であるフォグランプ100の鉛直断面図である。
【図7】フォグランプモードにおいてフォグランプ100により形成される配光パターンである。
【図8】ラインパターンモードに切り替えたときのフォグランプ100の鉛直断面図である。
【図9】ラインパターンモードにおいてフォグランプ100により形成される配光パターンである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る車両用灯具の好適な実施形態について図面を参照して説明する。なお、本明細書において、「前方」とは、以下に示す各実施形態の車両用灯具における光源光の照射方向(例えば図1、図3では右方向、図6、図8では左方向)であり、「車両前方」および「灯具前方」と同意である。また、「後方」とは、上記の「前方」と反対の方向(図1、図3では左方向、図6、図8では右方向)であり、「車両後方」および「灯具後方」と同意である。
【0018】
図1は、本発明に係る車両用灯具の実施形態の一例であるヘッドランプ1の水平断面図である。また、図2は、ヘッドランプ1による走路上の配光パターンである。図1に示すように、本実施形態に係るヘッドランプ1は、車両の右前端部に配置される灯具であって、ランプボディ11とその前方側の開口部に取り付けられた素通し状の透光カバー13とで形成される灯室内に、3つの灯具ユニット20,40,60とエクステンションパネル15とが配置された構成となっている。
【0019】
透光カバー13は、その水平方向の断面形状は車両前端部の右側コーナ部の車体形状に略連続するような形状となっており、図示は省略するが、その鉛直方向の断面形状は下端縁および上端縁は車両後方側へ回り込むような形状となっている。3つの灯具ユニット20,40,60は、車幅方向内側から灯具ユニット40、灯具ユニット20、および灯具ユニット60の順に、車両後方側にずれつつ互いに隣り合うように配置されている。エクステンションパネル15は、灯具正面視において各灯具ユニット間の隙間および灯具ユニットとランプボディ11との隙間を覆うように、透光カバー13に沿って配置されている。
【0020】
灯具ユニット20は、車両の走路上に主配光パターンであるロービーム配光パターンPLOW(図2参照)を形成するためのプロジェクタ型の灯具ユニットである。この灯具ユニット20は、図1に示すように、レンズホルダ21、投影レンズ23、光源バルブ25、リフレクタ27、およびシェード29を有する。なお、灯具ユニット20は、ロービーム配光パターンPLOWを形成するための灯具ユニットであるが、ロービーム配光パターンPLOWを照射するロービームモードだけでなく、ハイビーム配光パターンを照射するハイビームモードにおいても灯具ユニット40とともに点灯する。
【0021】
レンズホルダ21は、後端側においてリフレクタ27の前端部に固定されており、前端側において投影レンズ23を支持する。投影レンズ23は、灯具前方側の表面(前面)が凸曲面であり車両後方側の表面(後面)が平面である平凸レンズであり、そのレンズ光軸が車両前後方向に延びる灯具光軸Axと略一致するように配置されている。この投影レンズ23は、その後方側焦点Fを含む焦点面上の像を反転像として前方へ投影する。
【0022】
光源バルブ25は、バルブ中心軸が灯具光軸Axと略一致するように配置された放電バルブであり、リフレクタ27の後方側中央に設けられた開口部に取り付けられている。本例の光源バルブ25は、バルブ中心軸方向に沿って線分状に延びる光源部25aにおいて放電発光する。この光源バルブ25には、例えばメタルハライドバルブが好ましく用いられる。
【0023】
リフレクタ27は、水平断面の外形および内形が半楕円形と略等しく、その内面は光源部25aからの光を灯具前方へ向けて光軸Ax寄りに反射させる反射面27aとなっている。また、このリフレクタ27は、水平方向の対称位置に設けられたエイミングブラケット27bを有し、このエイミングブラケット27bを介してランプボディ11に設けられたエイミング機構50に支持されている。
【0024】
シェード29は、レンズホルダ21に固定された略板状部材であって、その上端縁29aが投影レンズ23の後方側焦点Fを通るようにレンズホルダ21の内部空間における略下半部に配置されている。したがって、シェード29は、リフレクタ27の反射面27aからの反射光のうち、投影レンズ23を経て灯具前方へ上向きに出射する光の大半を遮蔽する。このシェード29の上端縁29aは、水平方向においては、投影レンズ23の後方側焦点面に沿って略円弧状に延びており、鉛直方向においては、ロービーム配光パターンPLOW(すれ違い配光パターン)における対向車側水平カットラインと自車側斜めカットラインとが交差するエルボ点に対応する位置を境に段違いとなっている。
【0025】
灯具ユニット40は、ハイビームモードにおいて灯具ユニット20とともに点灯させることによって、ハイビーム配光パターン(図示は省略)を形成するためのプロジェクタ型の灯具ユニットである。この灯具ユニット40は、図1に示すように、レンズホルダ41、投影レンズ43、光源バルブ45、およびリフレクタ47を有する。なお、この灯具ユニット40は、灯具ユニット20のシェード29に対応する構成を備えていないが、それ以外の上記構成については灯具ユニット20のレンズホルダ21、投影レンズ23、光源バルブ25、およびリフレクタ27と略同様である。
【0026】
また、この灯具ユニット40のリフレクタ47は、灯具ユニット20のリフレクタ27と同様に、水平方向の対称位置に設けられたエイミングブラケット47bを有し、このエイミングブラケット27bを介してランプボディ11に設けられたエイミング機構50に支持されている。ただし、この灯具ユニット40におけるリフレクタ47の反射面47aは、灯具ユニット20におけるリフレクタ27の反射面27aと比べて、光源部45aからの光の収束位置を投影レンズ43の後方側焦点Fにより近づけるような形状となっている。
【0027】
灯具ユニット60は、車両の進行方向と直交する方向に延在する帯状の配光パターンであるラインパターンPLINE(図2参照)を形成するためのレーザー光を出射することのできるレーザー光源ユニットである。この灯具ユニット60は、図1に示すように、ケース61、基板63、レーザーダイオード65、およびヒートシンク67を有する。
【0028】
ケース61は、中空で略円筒形の筐体である。また、ケース61の内部には、前方側の面にレーザーダイオード65が取り付けられた基板63が収容されている。また、基板63の後方側の面にはヒートシンク67が取り付けられている。そして、このヒートシンク67の放熱フィンの一部は、ケース61の後方側の開口から灯室内に露出している。
【0029】
レーザーダイオード65は、基板63を介して電流が供給されることによりレーザー光を前方側へ向けて発光する。レーザーダイオード65から出射したレーザー光は、ケース61の前方側の面に設けられた水平方向に延びるスリット61aを通ってケース61の外部へと出射する。なお、レーザーダイオード65には、図2に示すラインパターンPLINEを形成するために十分な拡散角でレーザー光を出射するものが好ましく用いられる。しかしながら、出射するレーザー光の拡散角が上記の条件に満たないレーザーダイオードであっても、拡散角を拡げるための光学素子と組み合わせて用いてもよい。また、図2に示すラインパターンPLINEを形成するためにレーザーダイオード65からレーザー光を高速でスキャンニングしながら出射してもよい。
【0030】
本例のヘッドランプ1は、以上に説明した灯具ユニット60を備えることにより、灯具ユニット60から照射されるレーザー光によって、図2に示すように車両の走路上だけでなくその側方まで延びるラインパターンPLINEを形成することができる。したがって、例えば雪道などロービーム配光パターンPLOWだけでは走路が見え難いときに灯具ユニット60を点灯させて進行方向にラインパターンPLINEを形成することによって、走路やその側方の地形に対する視認性を向上させることができる。ゆえに、運転者による走路の特定が容易となる。
【0031】
なお、本例では、灯具ユニット60に搭載されるレーザーダイオード65は、その発光波長のピークが可視光域である。したがって、車両の運転者は、ラインパターンPLINEを目視で確認して走路やその側方の地形を把握することができる。ゆえに、進行方向の走路およびその周辺の地形などを赤外センサやミリ波レーダーなどで検出してその検出結果を車内のモニタなどに表示する方法と比べて、運転者は車内のモニタなどを見ながら運転する必要がないので、運転の安全性が損なわれることがない。
【0032】
また、レーザーダイオード65は、ラインパターンPLINEの単位面積あたりの照度がロービーム配光パターンPLOWよりも大きくなるような出力レベルを有するレーザー光を発光する。したがって、図2に示すように、ロービーム配光パターンPLOWと一部が重なるようにラインパターンPLINEが形成された場合でも、車両の運転者は、ラインパターンPLINEをロービーム配光パターンPLOWから容易に識別することができる。なお、ラインパターンPLINEの照度は一定であって良いが、例えば灯具ユニット60などにレーザーダイオード65の出力レベルを調整する構成を設けることで、走路の状況などに応じてラインパターンPLINEの照度調整を可能としても良い。また、上記照明調整を走行状況に応じて運転者が手動で行うことを可能とする構成を設けてもよい。
【0033】
図3は、本発明に係る車両用灯具の実施形態の他の一例であるヘッドランプ2の水平断面図であり、図4は、図3に示すII−II線を通る鉛直断面におけるヘッドランプ2の断面図である。また、図5は、ヘッドランプ2による走路上の配光パターンである。本例のヘッドランプ2において、上記のヘッドランプ1と同様の構成については同じ符号を付してその説明を適宜省略する。
【0034】
本例のヘッドランプ2は、上記のヘッドランプ1のようにラインパターンPLINEを形成するための光源を含む構成(灯具ユニット60)を別個に設ける替わりに、ロービーム配光パターンPLOWの中に単位面積あたりの照度が周囲よりも低い帯状のシェードパターンSLINE(図5参照)を形成するための構成を灯具ユニット20に設けた点が上記のヘッドランプ1と異なる。
【0035】
より具体的には、図3および図4に示すように、灯具ユニット20におけるリフレクタ27による反射光の光路上にシェードバー70が設けられている。このシェードバー70は、断面が略矩形の細長い板状部材であって、灯具ユニット20の内部におけるシェード29よりやや車両後方側に水平に架け渡されており、その両端がレンズホルダ21に固定されている。
【0036】
このようなシェードバー70を設けることにより、図5に示すように、灯具ユニット20を点灯させたときに、リフレクタ27による反射光の一部がシェードバー70で遮られることによってロービーム配光パターンPLOWの中に周囲よりも照度が低い帯状のシェードパターンSLINE(図5参照)が形成される。したがって、上記のヘッドランプ1でラインパターンPLINEを形成した場合と同様に、走路やその側方の地形に対する視認性が向上するので、運転者による走路の特定が容易となる。
【0037】
なお、上記のシェードバー70は、本発明におけるスリットの一例であり、灯具ユニット20からの出射光の一部の波長および単位面積あたりの照度の少なくとも一方を変化させることによりロービーム配光パターンPLOWの中に進行方向と直交する方向に延在する帯状の配光パターンを形成することができる構成であれば、上記スリットは本例のシェードバー70に限られない。
【0038】
具体的には、シェードバー70に替えて、シェードバー70と略同形状のカラーフィルター(バンドパスフィルター)をシェードバー70と同位置に設けてもよい。これにより、ロービーム配光パターンPLOWの中に周囲よりも色が異なる帯状のパターン(図示は省略)を形成することができる。そして、このようなカラーフィルターを設けた場合でも、同様に、運転者による走路の特定が容易となる。なお、周囲の天候状況などに応じて、運転者の操作によって上記帯状のパターンの色を変化させることを可能とする構成を設けてもよい。
【0039】
図6は、本発明に係る車両用灯具の実施形態のさらに他の一例であるフォグランプ100の鉛直断面図であり、図7は、フォグランプモードにおいてフォグランプ100により形成される配光パターンである。また、図8は、ラインパターンモードに切り替えたときのフォグランプ100の鉛直断面図であり、図9は、ラインパターンモードにおいてフォグランプ100により形成される配光パターンである。
【0040】
本例のフォグランプ100は、例えば濃霧の中など前方視界が悪い状況においてはフォグランプモードで点灯させるとともに、例えば雪道などロービーム配光パターンPLOWだけでは走路が見え難い状況においてはラインパターンモードに切り替えて点灯させることのできる車両用補助前照灯である。このフォグランプ100は、図6に示すように、ランプボディ101と、透光カバー103と、光源バルブ105と、リフレクタ107と、を備える。
【0041】
ランプボディ101は、内外面が略放物面である筐体である。そして、このランプボディ101は、灯具前後方向に貫通する貫通孔が中央部に設けられており、透光カバー103が取り付けられるフランジ部が外周縁部に設けられている。透光カバー103は、素通し状で断面が前方側に凸である成形部材であって、その外周縁部がランプボディ101のフランジ部に固定されている。
【0042】
光源バルブ105は、ランプボディ101と透光カバー103とで形成される灯室内に配され、そのバルブ中心軸が灯具光軸Axと略一致するようにリフレクタ107の中央部に設けられた貫通孔に取り付けられている。この光源バルブ105には、例えばフィラメントタイプのバルブが用いられるが、放電バルブなど他の方式のバルブを用いてもよい。
【0043】
リフレクタ107は、水平断面の外形および内形が半楕円形と略等しく、内面が反射面107aとなっている中央部とその周りのフランジ部107bとで構成されている。反射面107aは、光源バルブ105の発光中心である光源部105aからの光を灯具前方へ向けて反射させる。また、フランジ部107bは、反射面107aを囲むように灯具光軸Axと略直交する方向に延出している。
【0044】
そして、本例のフォグランプ100は、灯室内におけるリフレクタ107と透光カバー103との間に、互いに対向するように2枚のスライド式シェード109が配されている。より具体的には、2枚のスライド式シェード109は、それぞれ灯具光軸Axよりも上方側および下方側に配置されている。そして、灯具光軸Axよりも上方側のスライド式シェード109は、平滑な下端面を有し、当該下端面が水平方向と略一致するように配置されている。また、灯具光軸Axよりも下方側のスライド式シェード109は、平滑な上端面を有し、当該上端面が水平方向と略一致するように配置されている。
【0045】
このスライド式シェード109は、フォグランプ100がフォグランプモードに設定されているときには、図6に示すように、フランジ部107bの前方側の面と対向する退避位置にある。スライド式シェード109がこの退避位置にあるときは、光源バルブ105からの光は、スライド式シェード109で遮られることなく灯具前方へと出射する。
【0046】
そして、(ロービーム用ヘッドランプとともに)フォグランプモードでフォグランプ100を点灯すると、図7に示すように、ロービーム用ヘッドランプにより形成されるロービーム配光パターンPLOWの手前側から走路の側方に掛けての比較的広い範囲にフォグランプ配光パターンPFOG−L,PFOG−Rが形成される。
【0047】
一方、フォグランプ100をラインパターンモードに切り替えると、2枚のスライド式シェード109がフランジ部107bの前方側の退避位置から図8に示す灯具中央寄りの遮光位置までスライド移動する。ここで、2枚のスライド式シェード109の上記遮光位置へのスライド移動が完了すると、互いのスライド式シェード109は、灯具光軸Axと直交する方向において間隔を開けて配置される。
【0048】
このようにフォグランプ100をラインパターンモードに切り替えて点灯すると、光源バルブ105からの光のうち、リフレクタ107の反射面107aにて反射された光の大半がスライド式シェード109によって遮られ、光源バルブ105からの直遮光の一部のみがスライド式シェード109の隙間から灯具前方へと出射する。そして、このとき、図9に示すように、フォグランプ配光パターンPFOG−L,PFOG−Rが幅の細い1本の帯状のラインパターンとなる。このラインパターンは、上記のヘッドランプ1において形成可能なラインパターンPLINEと同様に、車両の走路上だけでなくその側方まで延びる。
【0049】
以上のように、本例のフォグランプ100は、ラインパターンモードに切り替えて点灯することにより、車両の走路上から側方まで延びるラインパターンを形成することができるので、例えば雪道などロービーム配光パターンPLOWだけでは走路が見え難いときにフォグランプ100をラインパターンモードで点灯させることによって、走路やその側方の地形に対する視認性を向上させることができる。ゆえに、運転者による走路の特定が容易となる。
【0050】
また、本例のようにラインパターンを形成する機能をフォグランプ100に搭載することにより、運転者が悪天候時などの視認性の向上を目的としてフォグランプ100を車両に設置する際に、雪道の走路特定に有効なラインパターン照射機能をフォグランプ100の付加機能として容易に付加することができる。
【0051】
なお、本例のフォグランプ100において、スライド式シェード109を上記のようにスライド移動させるための動力機構については特に限定されないが、例えば、各々のスライド式シェード109の両面を挟持するローラと、当該ローラを回転駆動する小型のモータなどで構成されてよい。また、スライド式シェード109の間隔を調整可能な構成を設けることによって、ラインパターンモードに切り替えたときに形成されるラインパターンの太さなどを路面状況などに応じて変更可能としても良い。
【0052】
また、フォグランプ100は、本例のように光源バルブ105のみを光源とするものに限られず、例えば上記各モードの光源となる複数のLEDを備えてもよい。また、この場合、ラインパターンモードで点灯させるLED、フォグランプモードで点灯させるLED、DRL(Day Time Running Lamp)モードで点灯させるLEDを各々少なくとも1つずつ備え、各モードに対応するLEDを別個に点灯させることによりモード切り替えを可能としてもよい。
【0053】
以上、本発明について好適な実施形態およびその変形例を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態およびその変形例に記載の範囲には限定されるものではなく、本発明の技術的特徴を損なわない範囲において、上記実施形態およびその変形例に様々な変更または改良を加えることができることは当業者にとって明らかである。
【0054】
例えば、LEDを光源とするプロジェクタ型のヘッドランプの光源部分にすれ違い配光パターンを形成するための光源となるLEDの他に、ラインパターン形成用のLEDを配置して切り替えあるいは同時点灯可能としても良い。なお、この場合、LEDからの出射光をラインパターンに成形する方法は特に限定されないが、例えば当該LEDの発光面の一部を覆うように当該発光面上にマスクを形成しても良い。また、LEDを光源とする多灯式ヘッドランプの場合に、少なくとも1つの灯具ユニットがロービームモードとラインパターンモードとを切り替えられるようにすることも可能であることは言うまでもない。
【0055】
また、上記実施形態およびその変形例は、いずれも車両の前方側に取り付けられる灯具であるが、本発明は、車両の後方などに取り付けられる灯具に適用することが可能であることは当業者にとって明らかである。
【符号の説明】
【0056】
1,2 ヘッドランプ
11 ランプボディ
13 透光カバー
15 エクステンションパネル
20 灯具ユニット(照射機構)
21 レンズホルダ
23 投影レンズ
25 光源バルブ(第1光源)
25a 光源部
27 リフレクタ
27a 反射面
27b エイミングブラケット
29 シェード
29a 上端縁
40 灯具ユニット
41 レンズホルダ
43 投影レンズ
45 光源バルブ(第1光源)
45a 光源部
47 リフレクタ
47a 反射面
47b エイミングブラケット
50 エイミング機構
60 レーザー光源ユニット
61 ケース
63 基板
65 レーザーダイオード(第2光源)
67 ヒートシンク
70 シェードバー(スリット)
100 フォグランプ
101 ランプボディ
103 透光カバー
105 光源バルブ
105a 光源部
107 リフレクタ
107a 反射面
107b フランジ部
109 スライド式シェード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の進行方向を照射する車両用灯具であって、
光源光によって前記進行方向と直交する方向に延在する帯状の配光パターンを灯具前方に形成する照射機構を備えることを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
前記照射機構は、
主配光パターンを形成するための光源である第1光源と、
前記帯状の配光パターンを形成するための光源である第2光源と、
を備え、
前記第2光源は、前記主配光パターンと波長および単位面積あたりの照度の少なくとも一方が異なる光を出射することを特徴とする請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項3】
前記照射機構は、光源と、前記光源からの光を灯具前方へ投影する投影レンズとを備え、
前記光源と前記投影レンズとの間に、前記光源からの光の波長および単位面積あたりの照度の少なくとも一方を変化させて出射することにより前記帯状の配光パターンを形成するためのスリットが設けられていることを特徴とする請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項4】
前記帯状の配光パターンを形成するための前記光源は、レーザー光を出射することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の車両用灯具。
【請求項5】
前記車両用灯具は、フォグランプであり、
車両前方にすれ違い配光パターンを形成するための灯具とは別個に設けられ、
フォグランプモードと前記帯状の配光パターンを形成するモードとが切り替え可能であることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の車両用灯具。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2013−58374(P2013−58374A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−195727(P2011−195727)
【出願日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【出願人】(000001133)株式会社小糸製作所 (1,575)
【Fターム(参考)】