説明

車両用灯火制御装置

【課題】車外の明るさが短時間で明暗を繰り返したときに、それに同期した車両灯火の点消灯の繰り返しを抑制可能な車両用灯火制御装置を提供する。
【解決手段】検出照度Aが基準照度Bに達しさらに第1基準時間T1経過後に、さらに、検出照度Aと、基準照度Bより高く昼間照度Cより低い条件照度Dとを比較して、その結果に基づいてヘッドランプ10の消灯時期を遅延させている。これにより、トンネルを出た直後に続いてトンネルがあるような場合には、従来の灯火制御装置の場合よりも前照灯の消灯タイミングを遅らせることができるので、ヘッドランプ10が各トンネルの出口と次のトンネルの入り口との間で消灯・点灯を繰り返して運転者が煩わしく感じる、あるいは,対向車両の運転者が何かの合図と勘違いするといった問題の発生を防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両外部の明るさに基づいて車両の灯火の点消灯を制御する車両用灯火制御装置に関するものであり、自動車等に用いて好適である。
【背景技術】
【0002】
昼間に車両用灯火制御装置を作動させて走行中に、複数個の陸橋の下をくぐりながら走る場合などにおいては、周囲の明るさが短時間で明暗を繰り返すことになる。そうすると、車両用灯火制御装置は、短い周期でヘッドランプの点灯・消灯を繰り返してしまう。この動作は、対向車の運転者に不審な行動と受け取られかねない。また、ヘッドランプ点灯・消灯に同期して車室内のコンビネーションメータの照明も点灯・消灯されるので、運転者自身にとっても煩わしく感じられる。
【0003】
このような問題を解決するために考案された従来の車両用灯火制御装置として、たとえば、車両の周囲の明るさ(照度)によりヘッドランプを消灯してから短時間で点灯させる状態が複数回連続して生じた場合に、断続状態であることを予測してヘッドランプの消灯時期を遅らせる構成としたものがある(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平11−34735号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来の車両用灯火制御装置においては、ヘッドランプが短時間で点消灯を繰り返したことを検出してから消灯タイミングを遅らせる処置を実行している。このため、最初と次回のヘッドランプの点灯消灯、いわゆるパッシングは回避できない。
【0005】
本発明は、上記の問題点に鑑みなされたもので、車両外部の明るさが短時間で明暗を繰り返したときに、それに同期した車両灯火の点消灯の繰り返しを抑制することができるような車両用灯火制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記目的を達成する為、以下の技術的手段を採用する。
【0007】
本発明の請求項1に記載の車両用灯火制御装置は、車両の前方の明るさを検出する前方照度センサと、車両の上方の明るさを検出する上方照度センサと、前方照度センサにより検出された照度である前方検出照度または上方照度センサにより検出された照度である上方検出照度またはそれらの両方の検出照度に基づいて車両の灯火を点消灯させる制御を行う制御部と、を備えた車両用灯火制御装置において、制御部は、前照灯を消灯させている期間中に前方照度センサによって検出された照度である昼間照度を記憶する昼間照度記憶手段を備え、制御部は、車両の前照灯を点灯中において、前方検出照度が昼間照度に基づき得られた条件照度より大きい場合、車両の灯火を消灯させる制御を行うことを特徴としている。
【0008】
従来の車両用灯火制御装置を備えた車両が前照灯を点灯しているとき、たとえばトンネル内を走行しているときに、車両がトンネルの出口に差し掛かると車両前方の明るさがだんだん上昇し、前方照度センサにより検出される前方検出照度が上昇してくる。そして、車両用灯火制御装置は、前方検出照度が所定の基準照度に達した時点から計時を開始し計時時間が所定の基準時間に達すると前照灯を消灯する。ここで、従来の車両用灯火制御装置を備えた車両が複数のトンネルが連続して設置される区間を走行中であるときには、車両用灯火制御装置は、初めのトンネルの出口近傍において一端前照灯を消灯させた後、次のトンネルに進入したところで再度前照灯を点灯させることになる。
【0009】
ところで、トンネルが短い間隔で並んでいる場合、つまり、初めのトンネルの出口から次のトンネルの入り口までの距離が短い場合について考える。先ず、最初のトンネル内を走行中その出口に差し掛かると前方検出照度は上昇し出口前後で所定の基準照度に達する。そして、車両が最初のトンネルを出ると検出照度はさらに上昇する。しかし、車両前方の短い距離を隔てた部分には二番目のトンネルの入り口、すなわち照度の低い部分が存在しているため、車両前方の照度である前方検出照度の上昇度合いは前方直ぐ近くに二番目のトンネルが無い場合に比べて緩やかになる。一方、最初のトンネルを出た後に車両の進行方向前方にトンネル等照度が低い部分が無い場合は、前方検出照度はすばやく上昇する。すなわち、車両がトンネルを出た直後における前方検出照度の上昇度合いがトンネル出口から先の道路状況に対応して変化している。本発明の請求項1に記載の車両用灯火制御装置は、上述の現象、すなわち、車両がトンネルを出た直後における前方検出照度の上昇度合いはトンネル出口から先の道路状況に依存すること、に着目し、車両がトンネルを出た直後、つまり前照灯点灯状態から明るい所へ出たときにおいて前方検出照度の上昇度合いを検出し、それに基づいて前照灯の消灯タイミングを制御することにより、短周期の前照灯の点消灯現象発生を抑制しようとするものである。
【0010】
本発明の請求項1に記載の車両用灯火制御装置は、前照灯点灯状態から明るい所へ出たとき、つまりトンネル内からその出口付近に到ったときにおける前方検出照度の上昇度合いを以下に説明する方法で検出している。先ず、前照灯を消灯させている期間中に前方照度センサによって検出された照度である昼間照度を昼間照度記憶手段に記憶させるとともにそれに基づいて制御部が条件照度を算出し記憶する。ここで、昼間照度とは、前照灯を消灯させている期間中に前方照度センサにより検出された照度であり、車両が昼間にトンネルや陸橋等太陽光を遮るものがほとんど無い区間を走行しているときに検出された照度である。そして、制御部は、車両の前照灯を点灯中において検出された前方検出照度が上述の条件照度より大きい場合に車両の灯火を消灯させる制御を行うようにしている。前方検出照度が条件照度よりも高い場合は、制御部は車両の進行方向前方にトンネルあるいは陸橋等の暗い影を形成するものがないと判定して前照灯を消灯させる。一方、前方検出照度が条件照度よりも低い場合は、車両の進行方向前方且つ現在走行中のトンネル出口から比較的近い位置に別のトンネルあるいは陸橋等の暗い影を形成するものが存在するものと判断し、そのまま前照灯を点灯させ続ける等の制御を行う。
【0011】
このような制御を行うことにより、トンネルを出た先の進路にトンネルあるいは陸橋等の暗い影を形成するものが連続して存在する場合は、最初のトンネルを出た後も前照灯が消灯されずに点灯され続けることになる。そして、前照灯点灯状態のままで次のトンネル等に進入する。次のトンネルを出た先に、さらに3つ目のトンネルがあれば、同様に前照灯は消灯されずに点灯されたままで3つ目のトンネルに進入する。以上説明した制御を行うことにより、短い間隔で配置された複数のトンネルを通過して行くときに、前照灯が各トンネルの出口と次のトンネルの入り口との間で消灯・点灯を繰り返して運転者が煩わしく感じるという問題を解消することができる。
【0012】
本発明の請求項2に記載の車両用灯火制御装置は、制御部は、前照灯を点灯中において前方検出照度および上方検出照度の少なくともどちらか一方が予め設定された基準照度を超えた時点から計時を開始し、計時時間が第1基準時間に達した時点において、前方検出照度が条件照度以上であるときには前照灯を消灯させ、前方検出照度が条件照度未満であるときは前照灯を点灯させ続けるとともに再び計時を開始し、計時時間が第2基準時間に達したときに前照灯を消灯させることを特徴としている。
【0013】
車両がトンネル内を走行中のとき、トンネルの出口が遠い先にある地点においては、前方検出照度および上方検出照度の両方とも低い値である。やがて、車両がトンネルの出口に近づくに連れて前方検出照度および上方検出照度の少なくともどちらか一方の値が上昇し始める。車両がトンネルの出口の直ぐ手前あるいはトンネルの出口を出て直ぐの地点に到ると、前方照度センサにより検出された照度である前方検出照度は昼間照度に基づいて得られた条件照度まで上昇する。すなわち、車両がトンネル内を走行中において、前方検出照度が、安定且つ低い値でいる状態から上昇を開始した場合、そのことは車両位置がトンネル出口の近くであることを意味している。そこで、トンネルの中心付近における最低照度よりも高く且つ条件照度よりも低い照度を基準照度として設定すれば、前方検出照度が基準照度に達したことから車両がトンネル出口に近づいたことを検出できる。前方検出照度が基準照度に達したことを検出した時点、すなわち車両がトンネル出口に近づいたことを検出した時点で前照灯を消灯しても視界確保上は問題無い。しかし、トンネルを出た先に直ぐ次のトンネルの入り口がある場合は、前照灯は一度消灯された後直ぐ再度点灯されることになり、いわゆる短周期の前照灯の点消灯現象が発生してしまう。
【0014】
そこで、本発明の請求項2に記載の車両用灯火制御装置では、前方検出照度および上方検出照度の少なくともどちらか一方が基準照度に達した時点から第1基準時間が経過したときの検出照度が条件照度未満であるとき、すなわちトンネルを出たすぐ先にトンネルあるいは陸橋等の暗い影を形成するものが連続して存在するとき、には第1基準時間経過後さらに第2基準時間経過後に前照灯を消灯させるようにしている。第2基準時間を適切に設定すれば、前照灯を消灯させる以前にトンネルに進入することになる。そうすれば、前照灯は点灯状態が継続して維持されるので、前照灯が各トンネルの出口と次のトンネルの入り口との間で消灯・点灯を繰り返して運転者に煩わしく感じさせるという問題を確実に解消することができる。
【0015】
本発明の請求項3に記載の車両用灯火制御装置は、制御部は、前照灯を点灯中において前方検出照度および上方検出照度の少なくともどちらか一方が予め設定された基準照度を超えた時点から計時を開始し、計時時間が第1基準時間に達した時点において、前方検出照度が条件照度以上であり且つ前方検出照度の変化率が正(検出照度が増大中)であるときには前照灯を消灯させ、前方検出照度が条件照度以上であり且つ前方検出照度の変化率が負(検出照度が減少中)であるとき、および前方検出照度が条件照度未満であるときは前照灯を点灯させ続けるとともに再び計時を開始し、計時時間が第2基準時間に達したときに前照灯を消灯させることを特徴としている。
【0016】
車両が走行中であるときの場面を考える。車両がトンネル内を走行中に出口付近に差し掛かり、前方検出照度および上方検出照度の少なくともどちらか一方が先に説明した基準照度に達し、その時点から計時を開始して第1基準時間が経過したときの前方検出照度が条件照度以上となった場合について考える。たとえば、走行中のトンネルの出口の先にトンネル等が無い場合は、前方検出照度は上昇し続けるので前方検出照度の変化率は正の値となる。これに対して、走行中のトンネルの出口の先にトンネル入り口等照度の低い場所がある場合は、前方検出照度は第1基準時間経過時点以前から低下し始めるので、第1基準時間経過時点における前方検出照度の変化率は負の値となる。すなわち、走行中のトンネルの出口の先に照度の低い場所、つまりトンネル等が無い場合とある場合とでは、第1基準時間経過時点における前方検出照度の変化率が異なっている。そこで、本発明の請求項3に記載の車両用灯火制御装置は、前方検出照度および上方検出照度の少なくともどちらか一方が前照灯を消灯させる閾値である基準照度に達した時点から第1基準時間が経過したときの前方検出照度が条件照度以上である場合において、さらに、第1基準時間が経過した時点における前方検出照度の変化率を算出し、この前方検出照度の変化率の大きさに基づいて前照灯の消灯・点灯を制御している。これにより、短周期で前照灯の消点灯が繰り返されることを抑制することができる。すなわち、前方検出照度が前照灯を消灯させる閾値である基準照度に達した時点から第1基準時間が経過したときの前方検出照度が条件照度以上であり、且つそのときの前方検出照度の変化率が正であるときは、近くの前方にトンネル等が無いものと判定して前照灯を消灯する。一方、前方検出照度が前照灯を消灯させる閾値である基準照度に達した時点から第1基準時間が経過したときの前方検出照度が条件照度以上であり、且つそのときの前方検出照度の変化率が負であるときは、車両走行方向前方の近いところにトンネル等照度の低い場所が有るものと判定して前照灯を消灯させずさらに第2基準時間だけ前照灯を点灯させる。このため、第1基準時間が経過後さらに第2基準時間経過しないうちに前方のトンネルに進入すれば、前照灯が点灯状態のままで前方のトンネルに進入することになる。トンネルに進入すれば、前方検出照度および上方検出照度の少なくともどちらか一方が基準照度を下回り、制御部は前照灯点灯状態を維持する。したがって、最初のトンネルを出てから次のトンネルに進入するまでの期間中、前照灯は点灯されたままとなり「点灯→消灯→点灯」動作は行われない。これにより、短い間隔でトンネル等が連続して存在する道路を走行中において短周期で前照灯の消点灯が繰り返されることを抑制することができる。
【0017】
本発明の請求項4に記載の車両用灯火制御装置は、条件照度は、昼間照度に0以上1未満である予め定められた係数を乗じて得られることを特徴としている。
【0018】
車両が昼間時走行中において、気象条件、特に日照条件が安定している場合、トンネルの前後の路上において検出される昼間照度は同一となる。ところで、車両が複数のトンネルが連続して設置される区間を走行中であるときに、あるトンネルの出口と次のトンネルの入り口との距離が十分長い場合には、前方検出照度はトンネル出口手前から上昇し始めトンネル出口を過ぎてしばらく走行すると昼間照度に到達する。一方、あるトンネルの出口と次のトンネルの入り口との距離が短い場合には、前方検出照度はトンネル出口手前から上昇し始めトンネル出口を過ぎてさらに上昇するが、昼間照度に到達しない或る値がピークとなり、次のトンネル、すなわち照度の低い場所に接近するために低下し始める。そこで、トンネル内部の前方検出照度よりも高く且つ昼間照度よりも低い照度、つまり昼間照度に0以上1未満である予め定められた係数を乗じて得られた照度を条件照度として設定し、前方検出照度とこの条件照度との大きさを比較することにより、トンネルを出た後の車両の進行方向前方近くに照度の低い場所が在るか否かを正確に判断することができる。その判断結果に基づいて前照灯の点消灯を制御することにより、短い間隔でトンネル等が連続して存在する道路を走行中において短周期で前照灯の消点灯が繰り返されることを抑制することができる。
【0019】
本発明の請求項5に記載の車両用灯火制御装置は、車両の前方の明るさを検出する前方照度センサと、車両の上方の明るさを検出する上方照度センサと、前方照度センサにより検出された照度である前方検出照度または上方照度センサにより検出された照度である上方検出照度またはそれらの両方の検出照度に基づいて車両の灯火を点消灯させる制御を行う制御部と、を備えた車両用灯火制御装置において、制御部は、前照灯を点灯中において前方検出照度および上方検出照度の少なくともどちらか一方が予め設定された基準照度を超えた時点から計時を開始し、計時時間が第1基準時間に達した時点において、前方検出照度の変化率が正(検出照度が増大中)であるときには前照灯を消灯させ、前方検出照度の変化率が負(検出照度が減少中)であるときは前照灯を点灯させ続けるとともに再び計時を開始し、計時時間が第2基準時間に達したときに前照灯を消灯させることを特徴としている。
【0020】
昼間時に車両が複数のトンネルが連続して設置される区間を走行中である場合を考える。車両がトンネルの出口に近づくと前方検出照度が上昇し初め、トンネルから外へ出るとさらに上昇する。車両の進行方向前方には次のトンネルの入り口、つまり照度が低い場所があるので、車両が次のトンネルの入り口に近づくと、今度は前方検出照度が低下し始める。前方検出照度が上昇し始め予め設定された基準照度に達した時点から上昇中の前方検出照度が低下し始める時点までの時間は、二つのトンネルの間隔すなわち最初のトンネルの出口と次のトンネルの入り口との間の距離に依存し、二つのトンネルの間隔が短くなるに連れて時間も短くなる。したがって、前方検出照度が上昇し始め予め設定された基準照度に達した時点から計時を開始して計時時間が第1基準時間に達した時点における前方検出照度の変化率を算出することにより、最初のトンネルの出口から次のトンネルの出口までの距離がわずかであるか、十分長いかを判定することが出来る。すなわち、前方検出照度が基準照度に達してから第1基準時間経過したときの前方検出照度の変化率が正(検出照度が増大中)であれば、最初のトンネルの出口から次のトンネルの出口までの距離が十分長いことになる。したがって、その時点で前照灯を消灯させても、次のトンネルに近づいて再び前照灯が点灯されるまでにある程度の時間があり、運転者が短周期の前照灯の点消灯現象が発生したと認識することはない。一方、前方検出照度が基準照度に達してから第1基準時間経過したときの前方検出照度の変化率が負(検出照度が減少中)であれば、車両が次のトンネルの入り口に近い場所を走行中であることを意味し、最初のトンネルの出口から次のトンネルの出口までの距離が短いことになる。この場合は、前照灯を消灯させずにさらに第2基準時間だけ前照灯を点灯させ続ける。第2基準時間内に前方検出照度が前照灯を点灯させる閾値照度以下に低下すれば、車両は、最初のトンネルを出てから前照灯点灯状態のままで次のトンネルに進入することになり、やはり、運転者が短周期の前照灯の点消灯現象が発生したと認識することはない。
【0021】
以上により、本発明の請求項5に記載の車両用灯火制御装置によれば、トンネル等が連続して存在する道路を走行中において短周期で前照灯の消点灯が繰り返されることを抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明にかかる車両用灯火制御装置の実施の形態について、自動車においてヘッドランプの点灯または消灯を制御するヘッドランプ制御装置1に適用した場合を例に図を参照して説明する。
【0023】
(第1実施形態)
ヘッドランプ制御装置1は、図1に示すように、前照灯であるヘッドランプ10、照度センサ20、ライトコントロールスイッチ30、制御部である制御装置40、を備えている。図1中においては、分かり易さのためにヘッドランプ10の個数を1個として表示しているが、実際の自動車では、ヘッドランプ10は2個あるいは4個が用いられている。また、ヘッドランプ10がフィラメント電球の場合、制御装置30はリレー(図示せず)を介してヘッドランプ10を制御し、ヘッドランプ10が放電灯の場合、制御装置ウィンドシールド30はドライバ(図示せず)を介してヘッドランプ10を制御しているが、図1においては、リレーあるいはドライバの表示を省略している。
【0024】
照度センサ20は、自動車のフロントウィンドシールドの内側表面の運転者の前方視界を妨げない位置、たとえばリヤビューミラーの背後等に、車両外部からの光を受光可能に設置されている。照度センサ20は、光を受光するとその受光量に応じた大きさの検出信号(たとえば電圧信号)を出力する受光素子(図示せず)を備えている。受光素子としては、たとえばフォトダイオード等が用いられている。受光素子(図示せず)からの検出信号の大きさ、たとえば信号電圧は、照度が低いとき、つまり暗いときには低く、照度が高いとき、つまり明るいときには高くなっている。本発明の第1実施形態によるヘッドランプ制御装置1に用いられる照度センサ20は、上述した受光素子(図示せず)を2つ備えている。照度センサ20において、一つの受光素子(図示せず)は車両前方略水平方向からの光を受光可能に配置されており、その検出信号に基づいて後述する制御装置40が前方検出照度Aを算出している。もう一つの受光素子(図示せず)は車両上方略垂直方向からの光を受光可能に配置されており、その検出信号に基づいて後述する制御装置40が上方検出照度Eを算出している。
【0025】
ライトコントロールスイッチ30は、自動車が備える灯火の点灯・消灯を切り替えるためのスイッチである。ライトコントロールスイッチ30は、たとえば、ステアリングコラム(図示せず)に設置されているターンシグナルレバー(図示せず)の先端部に取り付けられ、ターンシグナルレバーの軸を中心として回転させることにより、選択ポジションを切り替えることができる。運転者の操作によりライトコントロールスイッチ30のオートポジション(図示せず)が選択されると、ヘッドランプ制御装置1が作動を開始する。
【0026】
制御装置40は、CPU41、RAM42、ROM43、入出力ポート44およびこれらを接続するデータバスやコントロールバス等のバス45を含んだマイクロコンピュータで構成されている。なお、ROM41には、後述するヘッドランプ10の制御を行なうための制御プログラムが記憶されている。入出力ポート44には、フリーランカウンタ等の自走式のタイマ46が接続されている。
【0027】
次に、以上説明したように構成された本発明の第1実施形態によるヘッドランプ制御装置1の作動について説明する。イグニッションスイッチ(図示せず)がON状態、すなわち自動車が作動中であるときに、運転者の操作によりライトコントロールスイッチ30がオートポジションに切り替えられると、制御装置40がそれを検知し、ヘッドランプ制御装置1の作動が開始される。以下に、ヘッドランプ制御装置1の作動を、図2に示すフローチャートを参照して説明する。ライトコントロールスイッチ30がオートポジションに切り替えられると、図2に示したヘッドランプ制御ルーチンが繰り返し実行される。
【0028】
まず、ステップ101では初期設定がなされ、前方検出照度A、上方検出照度E、昼間照度C、および条件照度Dのリセットがなされる。
【0029】
続いて、ステップ102では、照度センサ20により車両前方の明るさである前方検出照度Aを検出する。続いて、ステップ103では、照度センサ20により車両上方の明るさである上方検出照度Eを検出する。
【0030】
次のステップ104では、ヘッドランプ10の消灯条件が成立しているかどうかを判定する。すなわち、前方検出照度Aが前方検照度の基準照度B以上、且つ上方検出照度Eが上方検照度の基準照度G以上であるかどうかを判定する。ヘッドランプ10の消灯条件が成立していない場合、つまり前方検出照度Aが基準照度B以上且つ上方検出照度Eが基準照度G以上ではない場合は、ステップ121にてヘッドランプ10を点灯させ、再びステップ102へ戻る。一方、ヘッドランプ10の消灯条件が成立している場合は、続くステップ105へ進み、前方検出照度Aを昼間照度Cとする。
【0031】
続いて、ステップ108において、昼間照度Cに係数Kを乗じて条件照度Dを算出する。係数Kは、0より大きく且つ1未満であるような値である。また条件照度Dは基準照度Bよりも大きい値である。係数Kは、たとえば、0.7〜0.8くらいの値である。
【0032】
続いて、ステップ109において、ヘッドランプ10が点灯中であるか否かの判定を行う。ヘッドランプ10が点灯状態である場合は、さらにステップ110へ進む。一方、ヘッドランプ10が消灯中である場合は、再びステップ102へ戻る。
【0033】
次に、ステップ110では、ヘッドランプ10の消灯条件が成立しているかどうかを判定する。すなわち、前方検出照度Aが前方検照度の基準照度B以上、且つ上方検出照度Eが上方検照度の基準照度G以上であるかどうかを判定する。ステップ110の判定処理の結果、ヘッドランプ10の消灯条件が成立していない場合は、再びステップ102へ戻る。ヘッドランプ10の消灯条件が成立している場合は、ステップ111へ進み、タイマカウントを開始する。
【0034】
続いて、ステップ112において、タイマカウント時間Tが第1基準時間T1に達したか否かを判定する。その結果、タイマカウント時間Tが第1基準時間T1に達していない場合は、タイマカウントを継続しつつ再度ステップ112へ戻る。ステップ112における判定の結果、タイマカウント時間Tが第1基準時間T1に達した場合は、次のステップ113にて、前方検出照度Aを算出する。
【0035】
続いて、ステップ114において、ステップ113で算出した前方検出照度Aがステップ108で算出した条件照度Dよりも大きいかどうかを判定する。ステップ114における判定の結果、前方検出照度Aが条件照度Dよりも大きい場合は、ステップ120へ進みヘッドランプ10を消灯させる。一方、ステップ114における判定の結果前方検出照度Aが条件照度Dよりも小さい場合は、ステップ115へ進み再度タイマカウントを開始する。すなわち、ステップ111において開始したタイマカウントをクリヤして、新たにカウントを始める。
【0036】
続いて、ステップ116において、タイマカウント時間Tが第2基準時間T2に達したか否かを判定する。その結果、タイマカウント時間Tが第2基準時間T2に達していない場合は、タイマカウントを継続しつつ再度ステップ116へ戻る。ステップ116における判定の結果、タイマカウント時間Tが第2基準時間T2に達した場合は、次のステップ117にて前方検出照度Aを算出し、続いてステップ118にて上方検出照度Eを算出する。
【0037】
続いて、ステップ119にて、ヘッドランプ10の消灯条件が成立しているかどうかを判定する。すなわち、前方検出照度Aが前方検照度の基準照度B以上、且つ上方検出照度Eが上方検照度の基準照度G以上であるかどうかを判定する。ステップ119の判定処理の結果、ヘッドランプ10の消灯条件が成立していない場合は、再びステップ102へ戻る。ステップ119の判定処理の結果、ヘッドランプ10の消灯条件が成立している場合は、ステップ120へ進みヘッドランプ10を消灯させる。
【0038】
ここで、本発明の第1実施形態によるヘッドランプ制御装置1における制御フロー中に設けた上述のステップ114の処理の効果について説明する。ステップ114は、ヘッドランプ10の消灯条件が成立した後さらに第1基準時間T1が経過した時点において、自動車の進路前方の近いところに自動車を太陽光から遮蔽するような遮蔽物、たとえばトンネル等が存在しているかどうか、を判断するために設けたものである。ヘッドランプ10の消灯条件が成立した時点、たとえば自動車がトンネルから出た時点以降の検出照度Aの上昇度合いは、自動車の進路前方の近いところに自動車を太陽光から遮蔽するような遮蔽物、たとえばトンネル等が存在している場合、とそのような遮蔽物が無い場合とでは異なっている。すなわち、自動車がトンネルから出た時点以降の検出照度Aの上昇度合いは、自動車の進路前方にトンネル等が存在しているときには、自動車の進路前方にトンネル等遮蔽物が存在しないときに比べて緩やかになる。したがって、ヘッドランプ10の消灯条件が成立した時点から第1基準時間経過後において、検出照度Aと条件照度Dとの大小関係を判定し、その判定結果に基づいて、進路前方の近い地点における遮蔽物、たとえばトンネル等の有無を判定している。つまり、検出照度Aが条件照度Dを上回っていれば進路前方に遮蔽物はないものと判断してヘッドランプ10を消灯させ、検出照度Aが条件照度D以下であれば進路前方に遮蔽物がある可能性が大であると判断して、言い換えると、ヘッドランプ10の点灯条件が成立するような環境が存在する可能性が大であると判断して、ヘッドランプ10の点灯状態を維持し、さらに第2基準時間だけヘッドランプ10の消灯動作を遅延させようとするものである。ステップ114における判断処理の結果、さらに第2基準時間だけヘッドランプ10の点灯状態を維持しているあいだに、自動車が次のトンネルの入り口に接近する、あるいは次のトンネルに進入すれば、ヘッドランプ10の消灯条件が不成立となり、ヘッドランプ10の点灯状態が継続される。
【0039】
このような制御を行うことにより、本発明の第1実施形態によるヘッドランプ制御装置1によれば、短い間隔で設置された複数のトンネル等を自動車が通過して行くときに、ヘッドランプ10の消灯タイミングを従来の車両用灯火制御装置による場合と比べて遅延させることができるので、前照灯が各トンネルの出口と次のトンネルの入り口との間で消灯・点灯を繰り返して運転者に煩わしく感じさせるという従来の車両用灯火制御装置による問題を解消することができる。
【0040】
次に、以上説明した本発明の第1実施形態によるヘッドランプ制御装置1のヘッドランプ10の点消灯制御を、図3に示す実際の走行状態における基づくタイミングチャートに基づいて総括する。
【0041】
自動車が走行している進路途上には、図3(a)に示すように2つのトンネルであるトンネル甲およびトンネル乙が短い間隔を隔てて設置されている。自動車がトンネル甲の入り口から離れているときには、図3(b)に示すように、照度センサ20により検出された自動車前方の照度である検出照度Aは昼間照度Cである。自動車がトンネル甲に近づくに連れて検出照度Aは低下していく。検出照度Aは、図3(b)に示すように、時刻t1においてトンネル甲の手前地点で基準照度Bとなる。制御装置40は、それを検知すると、図3(c)に示すように、ヘッドランプ10を点灯させる。
【0042】
自動車はヘッドランプ10を点灯させて、時刻t2にトンネル甲に進入する。やがて、自動車がトンネル甲の出口に近づくと、図3(b)に示すように、検出照度Aは上昇し始める。自動車が時刻t3にトンネル甲を出た後、検出照度Aは、時刻t4に基準照度Bに達する。制御装置40は、これを検知してタイマによる計時を開始し、時刻t4から第1基準時間T1が経過した時刻t5に到ると、制御装置40は、検出照度Aと条件照度Dとの大小関係を判定する。この場合、検出照度Aは、図3(b)に示すように、条件照度D未満である。このため、制御装置40は、ヘッドランプ10を消灯させずに点灯状態のままとし、且つ再度タイマによる計時を開始する。自動車がさらに走行して、次のトンネル乙に近づくと検出照度Aは低下し始め、時刻t5からまだ第2基準時間T2が経過していない時刻t6において検出照度Aは基準照度Bまで低下し、さらに低下し続ける。自動車は時刻t7においてトンネル乙に進入し、時刻t8に第2基準時間T2に達する。制御装置40は、時刻t8において検出照度Aと基準照度Bとの大小関係を判定する。この場合、検出照度Aは、図3(b)に示すように、基準照度B未満である。このため、制御装置40は、ヘッドランプ10を消灯させずに点灯状態のままとする。
【0043】
自動車はヘッドランプ10を点灯させてトンネル乙内を進行し、やがて、自動車がトンネル乙の出口に近づくと、図3(b)に示すように、検出照度Aは上昇し始める。自動車が時刻t9にトンネル乙を出た後、検出照度Aは、時刻t10に基準照度Bに達する。制御装置40は、これを検知してタイマによる計時を開始し、時刻t10から第1基準時間T1が経過した時刻t11に到ると、制御装置40は、検出照度Aと条件照度Dとの大小関係を判定する。トンネル乙よりも進行方向前方には、トンネル等太陽光を遮る構築物がないので、検出照度Aの上昇度合いはトンネル甲を出たときよりも大きい。このため、検出照度Aは、図3(b)に示すように、条件照度Dより大きく、制御装置40は、ヘッドランプ10を消灯させる。
【0044】
従来の車両用灯火制御装置を搭載した自動車が図3(a)に示す環境下を走行した場合を考える。従来の車両用灯火制御装置では、前照灯点灯中に照度センサが検出した検出照度が消灯条件照度に達すると、その時点から所定の遅延時間をカウントした後、前照灯を消灯させている。したがって、トンネル甲を出た後、図3中の時刻t5においてヘッドランプ10を消灯させ、トンネル乙に近づいた時刻t6において、再度ヘッドランプ10を点灯させることになる。つまり、短い間隔で設置された2つのトンネル甲、乙の中間部分において、ヘッドランプ10を一旦消灯させた後短時間経過後に再び点灯させることになる。一般に、ヘッドランプ10の点消灯と運転席のコンビネーションメータ(図示せず)の照明の点消灯とが同期しているため、短時間でヘッドランプ10が点灯→消灯→点灯と変化すると運転者にとって煩わしく感じられる。さらには、このようなヘッドランプ10の点滅を対向車両の運転者が視認すると、何かの合図では?と気にかけてしまう恐れがある。
【0045】
これに対して、本発明の第1実施形態によるヘッドランプ制御装置1によれば、検出照度Aが基準照度Bに達してから、遅延時間である第1基準時間T1経過後において、さらに、検出照度Aと、基準照度Bより高く昼間照度Cより低い条件照度Dとを比較して、その結果に基づいてヘッドランプ10の消灯時期を決定している。すなわち、検出照度Aが条件照度Dより高ければその時点でヘッドランプ10を消灯させ、検出照度Aが条件照度D以下であればその時点から第2基準時間T2だけ経過してからヘッドランプ10を消灯させている。トンネルの先の近い位置に次のトンネルがある場合、最初のトンネルを出てからの検出照度Aの上昇度合いは、トンネルの先にトンネル等の太陽光を遮る構築物が無い場合と比べて緩やかになり、第1基準時間T1経過したときの検出照度Aが未だに昼間照度Cまで回復していない可能性が高い。したがって、本発明の第1実施形態によるヘッドランプ制御装置1における制御方法によれば、トンネルを出た直後に続いてトンネルがあるような場合には、従来の灯火制御装置の場合よりも前照灯の消灯タイミングを遅らせることができるので、ヘッドランプ10が各トンネルの出口と次のトンネルの入り口との間で消灯・点灯を繰り返して運転者が煩わしく感じる、あるいは,対向車両の運転者が何かの合図と勘違いするといった問題の発生を防止することができる。
【0046】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態によるヘッドランプ制御装置1について説明する。本発明の第2実施形態によるヘッドランプ制御装置1では、第1実施形態によるヘッドランプ制御装置1に対して、制御フローを一部変更している。以下に、本発明の第3実施形態によるヘッドランプ制御装置1について、図4に示すフローチャートに基づいて説明する。図4においては、図2に示すフローチャート中と同一機能を果たすステップには同一符号を付してある。
【0047】
先ず、本発明の第1実施形態によるヘッドランプ制御装置1では、図2に示すように、ステップ114においてステップ113で算出した前方検出照度Aがステップ108で算出した条件照度Dよりも大きいかどうかを判定した際に、前方検出照度Aが条件照度Dよりも大きい場合は直ちにステップ120へ進みヘッドランプ10を消灯させている。一方、本発明の第2実施形態によるヘッドランプ制御装置1では、図4に示すように、ステップ114における判定の結果、前方検出照度Aが条件照度Dよりも大きい場合は続くステップ222に進む。ステップ222では前方検出照度Aの変化率が正または0であるか否かの判定を行う。ステップ222の判定の結果、前方検出照度Aの変化率が正または0である場合は、続くステップ120に進み、ヘッドランプ10を消灯させる。ステップ222の判定の結果、前方検出照度Aの変化率が正または0ではない、言い換えると前方検出照度Aの変化率が負である場合は、ステップ115に進み再度タイマカウントを開始する。すなわち、ステップ111において開始したタイマカウントをクリヤして、新たにカウントを始める。また、このときヘッドランプ10は継続して点灯状態が維持されている。
【0048】
ここで、本発明の第2実施形態によるヘッドランプ制御装置1の特徴である、ステップ222の作用効果について説明する。
【0049】
前方検出照度Aの変化率が正であることは自動車前方の照度が高くなりつつあることを意味し、前方検出照度Aの変化率が0であることは自動車前方の照度がほとんど変化しないことを意味している。したがって、前方検出照度Aの変化率が正または0である場合は、自動車の進行方向前方に照度の低い部分、たとえばトンネル入り口等が無いことになる。これに対し、前方検出照度Aの変化率が負であることは自動車前方の照度が低くなりつつあることを意味し、したがって、自動車の進行方向前方に照度の低い部分、たとえばトンネル入り口等があることになる。したがって、ステップ222の判定処理を追加することにより、自動車進行方向前方の照度の様子を高精度で判定することができる。
【0050】
以上説明したように、本発明の第2実施形態によるヘッドランプ制御装置1によれば、前方検出照度Aと条件照度Dとの大小関係判定処理に加えて、前方検出照度Aの変化率が正または0であるのか、負であるのかの判定を行うことにより、自動車の進行方向前方におけるトンネル等の太陽光遮蔽構築物が存在をより高い精度で判定することができる。したがって、ヘッドランプ10が各トンネルの出口と次のトンネルの入り口との間で消灯・点灯を繰り返して運転者が煩わしく感じる、あるいは,対向車両の運転者が何かの合図と勘違いするといった問題の発生を確実に防止することができる。
【0051】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態によるヘッドランプ制御装置1について説明する。本発明の第3実施形態によるヘッドランプ制御装置1では、第1実施形態によるヘッドランプ制御装置1に対して、制御フローを一部変更している。以下に、本発明の第3実施形態によるヘッドランプ制御装置1について、図5に示すフローチャートに基づいて説明する。図5においては、図2に示すフローチャート中と同一機能を果たすステップには同一符号を付してある。
【0052】
先ず、本発明の第1実施形態によるヘッドランプ制御装置1では、図2に示すように、ステップ105〜ステップ108の処理により条件照度Dを算出している。さらに、ヘッドランプ10点灯中、ステップ110の判定処理にてヘッドランプ10の消灯条件が成立してから第1基準時間T1経過後に、ステップ114において、前方検出照度Aと条件照度Dとの大小関係を判別している。これに対して、本発明の第2実施形態によるヘッドランプ制御装置1では、図5に示すように、ステップ105〜ステップ108の処理を廃止し条件照度Dの算出を行わない。さらに、本発明の第2実施形態によるヘッドランプ制御装置1では、図5に示すように、ヘッドランプ10点灯中、ステップ110の判定処理にてヘッドランプ10の消灯条件が成立してから第1基準時間T1経過後において、ステップ314にて、前方検出照度Aの変化率が正または0であるか否かの判定を行う。ステップ314の判定の結果、前方検出照度Aの変化率が正または0である場合は、続くステップ120に進み、ヘッドランプ10を消灯させる。ステップ314の判定の結果、前方検出照度Aの変化率が正または0ではない、言い換えると前方検出照度Aの変化率が負である場合は、ステップ115に進み再度タイマカウントを開始する。すなわち、ステップ111において開始したタイマカウントをクリヤして、新たにカウントを始める。また、このときヘッドランプ10は継続して点灯状態が維持されている。
【0053】
前方検出照度Aの変化率が正であることは自動車前方の照度が高くなりつつあることを意味し、前方検出照度Aの変化率が0であることは自動車前方の照度がほとんど変化しないことを意味している。したがって、前方検出照度Aの変化率が正または0である場合は、自動車の進行方向前方に照度の低い部分、たとえばトンネル入り口等が無いことになる。一方、前方検出照度Aの変化率が負であることは自動車前方の照度が低くなりつつあることを意味し、したがって、自動車の進行方向前方に照度の低い部分、たとえばトンネル入り口等があることになる。したがって、ヘッドランプ10の消灯条件が成立してから第1基準時間T1経過後において、ステップ314の判定処理を行うことにより、自動車進行方向前方の照度の様子を高精度で判定することができる。
【0054】
以上説明したように、本発明の第3実施形態によるヘッドランプ制御装置1によれば、前方検出照度Aと条件照度Dとの大小関係判定処理に代えて、前方検出照度Aの変化率が正または0であるのか、負であるのかの判定を行うことにより、自動車の進行方向前方におけるトンネル等の太陽光遮蔽構築物が存在をより高い精度で判定することができる。また、条件照度Dの算出を行わないことにより、制御装置40を構成するマイクロコンピュータにおけるヘッドランプ制御処理速度を高める、あるいは、制御装置40を構成するマイクロコンピュータの容量増大を抑制できる。したがって、ヘッドランプ10が各トンネルの出口と次のトンネルの入り口との間で消灯・点灯を繰り返して運転者が煩わしく感じる、あるいは,対向車両の運転者が何かの合図と勘違いするといった問題の発生を確実に防止しつつ、制御装置40の構成を簡素化する、あるいは制御装置40の制御処理速度を高めることができる。
【0055】
なお、上記の各実施形態では、車両用灯火制御装置をヘッドランプの点灯及び消灯の制御に本発明を適用したが、本発明はこれに限定されるものではなく、テールランプや計器を照明する照明装置に適用してもよい。
【0056】
また、上記の各実施形態では、ヘッドランプの消灯を遅延させた場合を説明したが、ランプを段階的に、例えばスモールランプのみ点灯、スモールランプおよびヘッドランプ点灯というように段階的に状態変更させるようにしてもよい。
【0057】
さらにまた、上記の各実施形態における係数Kは、予め固定値として記憶されていても良いし、あるいは車外の明るさ等外部条件に応じて変動させても良い
なお上記の各実施形態は、メタルハライドランプやキセノンランプ等の放電灯に用いるとより効果的である。特に高輝度放電灯(HID,ハイインテンシティディスチャージ)は、点消灯回数が多くなると寿命が短縮されるため、本実施の形態のように、なるべく連続点灯させるような制御を行うことにより、ヘッドランプの寿命を延長させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の第1実施形態による車両用灯火制御装置1の概略構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の第1実施形態による車両用灯火制御装置1におけるヘッドランプ消点灯制御の手順を示すフローチャートである。
【図3】(a)は、車両周辺環境の時間推移を、(b)は、照度センサ20による検出照度の時間推移を、(c)は、ヘッドランプの作動状態(点灯、消灯)の時間推移をそれぞれ示すタイミングチャートである。
【図4】本発明の第2実施形態による車両用灯火制御装置1におけるヘッドランプ消点灯制御の手順を示すフローチャートである。
【図5】本発明の第3実施形態による車両用灯火制御装置1におけるヘッドランプ消点灯制御の手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0059】
1 車両用灯火制御装置
10 ヘッドランプ(灯火、前照灯)
20 照度センサ
30 ライトコントロールスイッチ
31 ワイパーブレード
40 制御装置(制御部)
41 CPU
42 RAM
43 ROM
44 入出力ポート
45 バス
46 タイマ
101〜121、222、314 ステップ
A 前方検出照度
B 基準照度
C 昼間照度
D 条件照度
E 上方検出照度
G 基準照度
K 係数
T1 第1基準時間
T2 第2基準時間
T 時間
t 時刻

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の前方の明るさを検出する前方照度センサと、
車両の上方の明るさを検出する上方照度センサと、
前記前方照度センサにより検出された照度である前方検出照度または前記上方照度センサにより検出された照度である上方検出照度またはそれらの両方の検出照度に基づいて前記車両の灯火を点消灯させる制御を行う制御部と、を備えた車両用灯火制御装置において、
前記制御部は、前照灯を消灯させている期間中に前方照度センサによって検出された照度である昼間照度を記憶する昼間照度記憶手段を備え、
前記制御部は、前記車両の前照灯を点灯中において、前記前方検出照度が前記昼間照度に基づき得られた条件照度より大きい場合、前記車両の灯火を消灯させる制御を行うこと
を特徴とする車両用灯火制御装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記前照灯を点灯中において前記前方検出照度および前記上方検出照度の少なくともどちらか一方が予め設定された基準照度を超えた時点から計時を開始し、前記計時時間が第1基準時間に達した時点において、前記前方検出照度が前記条件照度以上であるときには前記前照灯を消灯させ、前記前方検出照度が前記条件照度未満であるときは前記前照灯を点灯させ続けるとともに再び計時を開始し、前記計時時間が第2基準時間に達したときに前記前照灯を消灯させることを特徴とする請求項1に記載の車両用灯火制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記前照灯を点灯中において前記前方検出照度および前記上方検出照度の少なくともどちらか一方が予め設定された基準照度を超えた時点から計時を開始し、前記計時時間が第1基準時間に達した時点において、前記前方検出照度が前記条件照度以上であり且つ前記前方検出照度の変化率が正(検出照度が増大中)であるときには前記前照灯を消灯させ、前記前方検出照度が条件照度以上であり且つ前記前方検出照度の変化率が負(検出照度が減少中)であるとき、および前記前方検出照度が前記条件照度未満であるときは前記前照灯を点灯させ続けるとともに再び計時を開始し、前記計時時間が第2基準時間に達したときに前記前照灯を消灯させることを特徴とする請求項1に記載の車両用灯火制御装置。
【請求項4】
前記条件照度は、前記昼間照度に0以上1未満である予め定められた係数を乗じて得られることを特徴とする請求項1から3に記載の車両用灯火制御装置。
【請求項5】
車両の前方の明るさを検出する前方照度センサと、
車両の上方の明るさを検出する上方照度センサと、
前記前方照度センサにより検出された照度である前方検出照度または前記上方照度センサにより検出された照度である上方検出照度またはそれらの両方の検出照度に基づいて前記車両の灯火を点消灯させる制御を行う制御部と、を備えた車両用灯火制御装置において、
前記制御部は、前記前照灯を点灯中において前記前方検出照度および前記上方検出照度の少なくともどちらか一方が予め設定された基準照度を超えた時点から計時を開始し、前記計時時間が第1基準時間に達した時点において、前記前方検出照度の変化率が正(検出照度が増大中)であるときには前記前照灯を消灯させ、前記前方検出照度の変化率が負(検出照度が減少中)であるときは前記前照灯を点灯させ続けるとともに再び計時を開始し、前記計時時間が第2基準時間に達したときに前記前照灯を消灯させることを特徴とする車両用灯火制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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