説明

車両用空調システム

【課題】乗員の利便性を向上させることが可能な車両用空調システムを提供する。
【解決手段】車室内を前方スペースと後方スペースとに仕切った状態と仕切っていない状態とで切換可能な装置と、前方スペースに送風する前方側空調装置と、後方スペースに送風する後方側空調装置とを備えた空調システムにおいて、そのシステムの制御装置50は、後方側空調装置によって後方スペースから吸気することで結露の発生を防止する結露防止制御実行部102と、非仕切状態で前方側空調装置と後方側空調装置とを作動させて、後方スペースの温度を快速で適温とする快速適温制御実行部104と、仕切状態でフロントウィンドへの着氷を解氷する解氷制御実行部106とを有する。これにより、後方スペースの結露発生を防止し、後方スペースの快適性を担保し、さらに、早急にフロントウィンドを解氷することが可能となり、乗員の利便性を向上させることが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用空調システム、詳しくは、車室内を前方スペースと後方スペースとに仕切った状態と仕切っていない状態とで切換可能な車両に搭載される車両用空調システムに関する。
【背景技術】
【0002】
乗員の快適性を担保するべく、多くの車両にはエアコン等の空調装置が設けられており、車室内の温度を快適な温度とすることが可能となっている。ただし、空調装置の作動時には比較的多くの電力を消費するため、省電力化が求められている。このため、下記特許文献1,2に記載されているように、車室内を前方スペースと後方スペースとに仕切った状態と仕切っていない状態とで切換可能な車室仕切装置を車両に設け、空調装置によって室温調整が行われるスペースの容積を小さくすることで省電力化を図る技術の開発が進められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−362128号公報
【特許文献2】特開2000−219087号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記車室仕切装置が設けられた車両では、例えば、前方スペースにのみ乗車しているような場合に、車室内を前方スペースと後方スペースとに仕切ることで、前方スペースだけを室温調整することが可能となり、省電力化を図ることが可能となる。ただし、前方スペースだけの室温調整は、前方スペースにのみ乗車している場合に限られることから、後方スペースへの乗車、若しくは、後方スペースからの降車に伴って、前方スペースと後方スペースとに仕切った状態である仕切状態と仕切っていない状態である非仕切状態との間で切り換えられる。この切換時においては、例えば、誰も乗車していないにも関わらず適温とされている後方スペースに、後方スペース内の温度と外気温との温度差に依拠して結露が発生し、リアウィンド等が曇る場合がある。また、例えば、室温調整がされていない後方スペースへ乗員が乗り込むことで、乗員が不快な思いをしたり、乗員の呼気に依拠して結露が発生する場合がある。このような後方スペースでの結露,後方スペースへの乗員の不快感等は、乗員の利便性を損なうものであり、早急に解消されることが望ましい。
【0005】
また、例えば、冬期での車両始動時には、車両の窓に着氷していることが多くあり、解氷するまで車両を走行させることができず、不便である。特に、リアウィンドは電熱線等により比較的速く解氷することが可能であるが、フロントウィンドには電熱線等が設けられていないため、フロントウィンドの解氷には、ある程度の時間を要する。このため、フロントウィンドの解氷時間を短縮することができれば、乗員の利便性を向上させることが可能となる。本発明は、そのような事情に鑑みてなされたものであり、仕切状態と非仕切状態とで切換可能な車両用空調システムにおいて、乗員の利便性を向上させることが可能な車両用空調システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本願の請求項1に記載の車両用空調システムは、(A)車室内を、前方に設けられた座席が配置されている前方スペースと後方に設けられた座席が配置されている後方スペースとに仕切った状態である仕切状態と仕切っていない状態である非仕切状態とで切換可能な車室仕切装置と、(B)前記前方スペースに送風可能な前方側空調装置と、(C)前記後方スペースから吸気可能な後方側吸気装置と、(D)前記車室仕切装置の作動を制御することで、前記仕切状態と前記非仕切状態とのいずれかを選択的に実現するとともに、前記前方側空調装置と前記後方側吸気装置との各々の作動を制御するように構成された制御装置とを備え、前記制御装置は、(a)前記前方スペースにのみ乗車している場合に、前記仕切状態を実現しつつ、前記前方側空調装置によって前記前方スペース内の温度を調整する前方スペース温度調整部と、(b)前記仕切状態と前記非仕切状態との切換後に、前記後方側吸気装置によって前記後方スペース内の空気を吸気し、前記後方スペースでの結露の発生を防止する結露防止制御を実行する結露防止制御実行部とを有することを特徴とする。
【0007】
また、請求項2に記載の車両用空調システムは、請求項1に記載の車両用空調システムにおいて、前記結露防止制御実行部は、前記後方スペースからの降車時における前記非仕切状態から前記仕切状態への切換後に、前記結露防止制御を実行する降車時結露防止制御実行部を有することを特徴とする。
【0008】
また、請求項3に記載の車両用空調システムは、請求項2に記載の車両用空調システムにおいて、当該車両用空調システムは、前記前方側空調装置と前記後方側吸気装置とを、前記後方側吸気装置が吸気した空気を前記前方側空調装置に流入可能に連通する連通路を備え、前記降車時結露防止制御実行部は、前記結露防止制御実行時に、前記連通路を介して前記後方側吸気装置から流入した空気を、前記前方側空調装置によって送風することを特徴とする。
【0009】
また、請求項4に記載の車両用空調システムは、請求項2または請求項3に記載の車両用空調システムにおいて、当該車両用空調システムは、前記後方スペースへ外気を導入可能な外気導入口を有し、その外気導入口を開くことで前記後方スペースへ外気を導入し、前記外気導入口を閉じることで前記後方スペースへの外気導入を遮断する外気導入装置を備え、前記降車時結露防止制御実行部は、前記結露防止制御実行時に、前記外気導入装置によって前記後方スペースへ外気を導入することを特徴とする。
【0010】
また、請求項5に記載の車両用空調システムは、請求項1ないし請求項4のいずれか1つに記載の車両用空調システムにおいて、前記結露防止制御実行部は、前記後方スペースへの乗車時における前記仕切状態から前記非仕切状態への切換後に、前記結露防止制御を実行する乗車時結露防止制御実行部を有することを特徴とする。
【0011】
また、請求項6に記載の車両用空調システムは、請求項5に記載の車両用空調システムにおいて、当該車両用空調システムは、前記前方側空調装置と前記後方側吸気装置とを、前記後方側吸気装置が吸気した空気を前記前方側空調装置に流入可能に連通する連通路を備え、前記乗車時結露防止制御実行部は、前記結露防止制御実行時に、前記連通路を介して前記後方側吸気装置から流入した空気を、前記前方側空調装置によって除湿した後に送風することを特徴とする。
【0012】
また、請求項7に記載の車両用空調システムは、(A)車室内を、前方に設けられた座席が配置されている前方スペースと後方に設けられた座席が配置されている後方スペースとに仕切った状態である仕切状態と仕切っていない状態である非仕切状態とで切換可能な車室仕切装置と、(B)前記前方スペースに送風可能な前方側空調装置と、(C)前記後方スペースに送風可能な後方側空調装置と、(D)前記車室仕切装置の作動を制御することで、前記仕切状態と前記非仕切状態とのいずれかを選択的に実現するとともに、前記前方側空調装置と前記後方側空調装置との各々の作動を制御するように構成された制御装置とを備え、前記制御装置は、(a)前記前方スペースにのみ乗車している場合に、前記仕切状態を実現しつつ、前記前方側空調装置によって前記前方スペース内の温度を調整する前方スペース温度調整部と、(b)前記後方スペースへの乗車時における前記仕切状態から前記非仕切状態への切換後に、前記前方側空調装置だけでなく、前記後方側空調装置をも作動させて、前記後方スペース内の温度を適温とする快速適温制御を実行する快速適温制御実行部とを有することを特徴とする。
【0013】
また、請求項8に記載の車両用空調システムは、請求項7に記載の車両用空調システムにおいて、前記前方側空調装置は、前記前方スペースから吸気可能な構造とされ、当該車両用空調システムは、前記前方側空調装置と前記後方側空調装置とを、前記前方側空調装置が吸気した空気を前記後方側空調装置に流入可能に連通する連通路を備え、前記快速適温制御実行部は、前記快速適温制御実行時に、前記連通路を介して前記前方側空調装置から流入した空気を、前記後方側空調装置によって送風することを特徴とする。
【0014】
さらに、請求項9に記載の車両用空調システムは、(A)車室内を、前方に設けられた座席が配置されている前方スペースと後方に設けられた座席が配置されている後方スペースとに仕切った状態である仕切状態と仕切っていない状態である非仕切状態とで切換可能な車室仕切装置と、(B)前記前方スペースに送風可能な前方側空調装置と、(C)前記車室仕切装置の作動を制御することで、前記仕切状態と前記非仕切状態とのいずれかを選択的に実現するとともに、前記前方側空調装置の作動を制御するように構成された制御装置とを備え、前記制御装置は、前記前方スペースの窓への着氷時に、前記仕切状態を実現しつつ、前記前方側空調装置によって前記前方スペース内の窓に向かって温風を送風し、解氷する解氷制御を実行する解氷制御実行部を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に記載の車両用空調システムでは、後方スペースからの吸気によって、後方スペースから湿った空気を排気したり、後方スペース内の温度と外気温との温度差を小さくすることが可能となる。それら湿った空気,室内外の温度差等は、結露発生の要因と考えられている。したがって、請求項1に記載の車両用空調システムによれば、後方スペースでの結露の発生を防止することが可能となり、乗員の利便性を向上させることが可能となる。
【0016】
また、請求項2に記載の車両用空調システムでは、後方スペースからの降車時に結露防止制御が実行される。後方スペースから乗員が降り、前方スペースにのみ乗車している状態となると、省電力化を図るべく、非仕切状態から仕切状態に切り換えられるが、後方スペース内の温度は、暫くの間、適温が維持される。誰も乗車していないにも関わらず適温とされている後方スペース内の温度と外気温とは、比較的大きく、この温度差に依拠して結露が発生する場合がある。そこで、請求項2に記載の車両用空調システムでは、誰も乗車していない後方スペースから後方側吸気装置によって吸気するように構成されている。これにより、後方スペース内の温度と外気温との温度差を小さくすることが可能となり、降車時における後方スペースでの結露の発生を防止することが可能となる。
【0017】
また、請求項3に記載の車両用空調システムでは、後方側吸気装置によって吸気された空気が前方スペースに送風される。後方スペースからの降車時には、上述したように、誰も乗車していない後方スペースから後方側吸気装置によって吸気されるように構成されており、この吸気される空気は、快適な温度とされている。したがって、請求項3に記載の車両用空調システムによれば、快適な温度とされている空気を、誰も乗車していない後方スペースから前方スペースに送風することが可能となり、省電力化の進んだシステムを構築することが可能となる。
【0018】
また、請求項4に記載の車両用空調システムでは、降車時における結露防止制御実行時に後方スペースに外気が導入される。これにより、後方スペース内の温度と外気温との温度差を早急に小さくすることが可能となり、後方スペースでの結露の発生を好適に防止することが可能となる。
【0019】
また、請求項5に記載の車両用空調システムでは、後方スペースへの乗車時に結露防止制御が実行される。後方スペースへの乗車時には、後方スペースの温度は適温とされておらず、後方スペースの乗員の呼気によって結露が発生する場合がある。請求項5に記載の車両用空調システムでは、後方スペースの乗員の呼気を後方側吸気装置によって吸気することが可能となっており、これにより、乗車時における後方スペースでの結露の発生を防止することが可能となる。
【0020】
また、請求項6に記載の車両用空調システムでは、後方側吸気装置によって吸気された空気が除湿された後に前方スペースに送風される。後方スペースから吸気された空気を前方スペースに送風することで、車室内の空気を循環させることが可能となり、車室内の温度を効率よく適温とすることが可能となる。ただし、呼気等の湿った空気が車室内で循環されると、結露発生の要因となる。請求項6に記載の車両用空調システムでは、除湿された空気を車室内で循環させることが可能となり、省電力化を図るとともに、結露の発生を防止することが可能となる。
【0021】
また、請求項7に記載の車両用空調システムでは、後方スペースへの乗車時に、後方スペース内の温度を早急に快適な温度にする制御が実行される。後方スペースへの乗車に伴って仕切状態から非仕切状態に切り換えられた直後には、後方スペース内の温度は外気温に近く、後方スペースの乗員が不快な思いをする虞がある。請求項7に記載の車両用空調システムでは、後方スペースへの乗車時に、前方側空調装置および後方側空調装置の2台の空調装置によって、車室内の温度調整が行われる。これにより、後方スペース内の温度を早急に快適な温度とすることが可能となり、乗員の利便性を向上させることが可能となる。
【0022】
また、請求項8に記載の車両用空調システムでは、前方側空調装置が吸気可能な構造とされるとともに、その前方側吸気装置によって吸気された空気が後方スペースに送風される。後方スペースへの乗車前には、仕切状態において前方スペース内の温度調整が行われており、前方スペース内の温度は快適な温度とされている。つまり、前方側空調装置によって吸気される空気は、快適な温度とされている。したがって、請求項8に記載の車両用空調システムによれば、快適な温度とされている空気を後方スペースに送風することが可能となり、後方スペース内の温度を早急に快適な温度とすることが可能となる。
【0023】
また、請求項9に記載の車両用空調システムでは、前方スペースの窓への着氷時に、仕切状態を実現しつつ、温風が前方スペースの窓に向かって送風される。これにより、温風が送風されるスペースの容積を小さくすることで、フロントウィンドの解氷時間を短縮することが可能となり、乗員の利便性を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】実施例の車両用空調システムを搭載した車両を概略的に示す図である。
【図2】図1に示す車両用空調システムの制御を司る制御装置の機能を示すブロック図である。
【図3】実施例の車両用空調システム制御プログラムを示すフローチャートである。
【図4】車両用空調システム制御プログラムにおいて実行される前方スペース解氷サブルーチンを示すフローチャートである。
【図5】車両用空調システム制御プログラムにおいて実行される降車時結露防止サブルーチンを示すフローチャートである。
【図6】車両用空調システム制御プログラムにおいて実行される乗車時結露防止サブルーチンを示すフローチャートである。
【図7】車両用空調システム制御プログラムにおいて実行される快適性優先サブルーチンを示すフローチャートである。
【図8】車両用空調システム制御プログラムにおいて実行される変形例の乗車時結露防止サブルーチンを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を実施するための形態として、本発明の実施例を、図を参照しつつ詳しく説明する。
【0026】
<車両用空調システムの構成>
図1に、本発明の実施例の車両用空調システム10を搭載した車両12を示す。車両12は、電気自動車であり、電動モータに依拠して駆動するものとされている。また、車両12は、運転席14および助手席16によって構成される前席と、後席18とを備え、2列に並べられた座席配列とされている。車両用空調システム10は、車室20の内部を前席14,16が配置されている前方スペース22と後席18が配置されている後方スペース24とに仕切ることが可能な車室仕切装置26と、前方スペース22に調整された空気を送風可能な前方側空調装置27と、後方スペース24に調整された空気を送風可能な後方側空調装置28と、後方スペース24に外気を導入可能な外気導入ルーバ29とを備えている。
【0027】
車室仕切装置26は、内部にエアが充填されることで膨らむエア袋体30と、そのエア袋体30にエアを送り込むエアポンプ32と、エア袋体30とエアポンプ32とを連通するエア流路34と、そのエア流路34に設けられ、エアの流れを許容した状態と禁止した状態とで切り換える電磁弁36と、エア流路34の電磁弁36とエア袋体30との間に設けられ、エア袋体30内の空気圧を測定可能な圧力センサ38とを有している。エア袋体30は、前席14,16の背面に設けられ、内部にエアが充填されることで膨張し、車室20の内部が、エア袋体30によって前方スペース22と後方スペース24とに仕切られる。一方、エア袋体30は、内部からエアが抜かれることで収縮し、前方スペース22と後方スペース24との仕切りが解除される。つまり、車室仕切装置26は、車室20内を前方スペース22と後方スペース24とに仕切った状態である仕切状態と仕切っていない状態である非仕切状態とで切り換えることが可能な構造とされている。なお、エア袋体30は、透明な素材によって形成されており、仕切状態であっても、運転者は車両後方を視認することが可能となっている。
【0028】
また、前方側空調装置27は、前方スペース22に吹出口40を有し、前方スペース22に温風,冷風等の温度調整された空気を送ることで、車室20内の温度を変更することが可能とされている。前方側空調装置27は、除湿機能も有しており、除湿した空気を送風することも可能とされている。さらに、前方側空調装置27は、吹出口40から吸気することも可能とされている。その前方側空調装置27は、外気を車室内に導入した状態で送風する外気導入状態と、空気を車室内で循環させた状態で送風する内気循環状態とで切換可能とされている。また、前方側空調装置27の吹出口40は、前席14,16の乗員に向かって空気を送風するベント吹出口42とフロントウィンドに向かって空気を送風するデフ吹出口44とによって構成されており、ベント吹出口42とデフ吹出口44とのいずれか、若しくは、両方から送風可能とされている。
【0029】
一方、後方側空調装置28は、後方スペース24に温風,冷風等の温度調整された空気を送風することが可能とされており、さらに、後方スペース24から吸気することも可能とされている。その後方側空調装置28と前方側空調装置27とは、連通路46によって連結されており、その連通路46を介して、後方側空調装置28によって吸気された空気を前方側空調装置27に流入させ、前方側空調装置27によって前方スペース22に送風することが可能とされている。また、逆に、前方側空調装置27によって吸気された空気を後方側空調装置28に流入させ、後方側空調装置28によって後方スペース24に送風することが可能とされている。ちなみに、車両12は、上述したように、電気自動車であることから、前方側空調装置27および後方側空調装置28はエンジンの熱等を利用することができず、また、コンプレッサ等の駆動もエンジンの回転を利用することができないため、バッテリの電力に大きく依存して作動する構造とされている。
【0030】
また、外気導入ルーバ29は、後方スペース24に開口する外気導入口47と、その外気導入口47の開閉状態を切り換える電動シャッター48(図2参照)とを有しており、その外気導入口47を開くことで後方スペース24に外気を導入し、外気導入口47を閉じることで後方スペース24への外気の導入を遮断する構造とされている。
【0031】
さらに、車両用空調システム10は、図2に示すように、電子制御ユニット(以下、単に「ECU」という場合がある)50が設けられている。ECU50は、車室仕切装置26のエアポンプ32および電磁弁38,前方側空調装置27,後方側空調装置28,外気導入ルーバ29の電動シャッター48の作動を制御する制御装置であり、車室内の空調を制御するものである。ECU50は、CPU,ROM,RAM等を備えたコンピュータを主体として構成されたコントローラ52と、エアポンプ32の有するポンプモータ54に対応する駆動回路56と、電磁弁38の有するソレノイド58に対応する駆動回路60と、前方側空調装置27の有するコンプレッサ等62の駆動回路64と、後方側空調装置28の有するコンプレッサ等66の駆動回路68と、外気導入ルーバ29の有する電動シャッター48の駆動回路70とを有している。それら複数の駆動回路56,60,64,68,70には、コンバータ72を介してバッテリ74が接続されており、ポンプモータ54、ソレノイド58、コンプレッサ等62,66,電動シャッター48に、そのバッテリ74から電力が供給される。
【0032】
さらに、複数の駆動回路56,60,64,68,70には、コントローラ52が接続されており、コントローラ52が、それら複数の駆動回路56,60,64,68,70に各制御信号を送信することで、車室仕切装置26,前方側空調装置27,後方側空調装置28,外気導入ルーバ29の作動を制御するものとされている。また、コントローラ52には、上記圧力センサ38とともに、外気温を検出する外気温センサ76と、後方スペース24内の温度を検出する後方スペース温度センサ78と、前方側空調装置27の設定温度を取得する設定温度センサ80と、前席14,16および後席18の各々に設けられ、各座席14,16,18に乗員が着座しているか否かを検出する着座センサ82と、後に詳しく説明する快適性優先モードと結露防止優先モードとの何れかを選択する選択スイッチ84とが接続されている。
【0033】
<車両用空調システムの制御>
車両用空調システム10では、前席14,16および後席18に乗員が乗っている場合には、車室20内全体の温度調整を行うことが可能とされている。車室20内全体の温度調整は、車室を前方スペース22と後方スペース24とに仕切っていない状態である非仕切状態で前方側空調装置27によって温度調整を行うものであり、車室内全体を快適な温度とすることで、前席14,16、後席18の各乗員が快適に過ごすことができる。一方で、前方側空調装置27の作動には比較的多くの電力を消費するため、省電力化が求められており、特に、車両12は電気自動車であることから、省電力化を図ることで、航続距離を延ばすことが可能となる。
【0034】
そこで、車両用空調システム10では、例えば、前席14,16にのみ乗員が乗っている場合、つまり、後席18に誰も乗車していない場合には、車室を前方スペース22と後方スペース24とに仕切った状態である仕切状態で前方側空調装置27を作動させている。これにより、乗員の乗っている空間のみを冷暖房することが可能となり、省電力化を図ることが可能となる。ただし、例えば、出発時には、後方スペース24に乗員がいなくても、途中から後方スペース24に乗員が乗り込んでくる場合があり、このような場合には、室温調整が行われていない後方スペース24に乗り込んだ人が不快な思いをする虞がある。
【0035】
そこで、車両用空調システム10では、前席14,16にのみ乗員が乗っている場合に、途中で、後方スペース24に乗員が乗り込んできたときには、後方スペース24内の温度を快速で適温とする快速適温制御を実行することが可能となっている。この制御では、非仕切状態が実現されるとともに、前方側空調装置27だけでなく、後方側空調装置28も作動させ、さらに、前方スペース22の適温とされている空気を、後方スペース24に送風する制御であり、仕切状態において室温調整されていなかった後方スペース24内の温度を出来る限り早急に適温とすることが可能となる。
【0036】
快速適温制御では、まず、外気温Tが適温であるか否かが判定される。外気温Tが適温であれば、後方スペース24内の温度である後方スペース温度Tも適温であると考えられ、快速適温制御を実行する必要がないためである。そして、外気温Tが適温ではない場合、具体的には、外気温Tが10℃より低い、若しくは、25℃より高い場合には、非仕切状態において後方側空調装置28が作動させられ、後方スペース24に後方側空調装置28によって冷風、若しくは、温風が送風される。この際、前方側空調装置27は、前方スペース22から吸気するモードである吸気モードで作動させられる。これにより、適温とされている前方スペース22の空気を、連通路46を介して、後方側空調装置28に流入させることが可能となり、後方側空調装置28はその流入してきた適温とされた空気を後方スペース24に送風することが可能となる。このように、前方側空調装置27および後方側空調装置28の作動を制御することで、後方スペース温度Tを早急に適温とすることが可能となる。なお、後方スペース温度Tが適温となった場合には、後方側空調装置28を停止し、前方側空調装置27を通常に作動させる。つまり、前方側空調装置27を乗員によってスイッチ等で設定されている条件において作動させる。
【0037】
上記快速適温制御が実行されることで、後方スペース24の乗員の快適性を担保することが可能となる。また、出発時に後方スペース24に乗員がいなくて、途中から後方スペース24に乗員が乗り込んでくる場合には、上述した快適性の問題だけでなく、リアウィンドの曇り、つまり、後方スペース24で結露が発生する場合がある。これは、室温調整が行われていない後方スペース24に乗り込んだ人の呼気によって結露が発生することがあるためである。そこで、車両用空調システム10では、前席14,16にのみ乗員が乗っている場合に、途中で、後方スペース24に乗員が乗り込んできたときには、後方スペース24での結露の発生を防止する乗車時結露防止制御を実行することが可能となっている。
【0038】
乗車時結露防止制御では、まず、外気温Tが高いか否かが判定される。外気温Tが高い場合、つまり、暖かい場合には、後方スペース24の乗員の呼気によって結露が生じにくいと考えられ、乗車時結露防止制御を実行する必要がないためである。そして、外気温Tが高くない場合、具体的には、外気温Tが20℃より低い場合には、非仕切状態において、後方側空調装置28が、後方スペース24から吸気するモードである吸気モードで作動させられる。これにより、結露の要因である後方スペース24の乗員の呼気を後方スペース24から吸い出すことが可能となり、後方スペース24での結露の発生を防止することが可能となる。
【0039】
さらに、前方側空調装置27によって、内気循環状態で、除湿した温風をデフ吹出口44から送風する。これにより、後方側空調装置28によって吸い出された空気、つまり、後方スペース24の乗員の呼気の混ざった湿気を含んだ空気を、連通路46を介して、前方側空調装置27に流入させることが可能となり、前方側空調装置27はその流入してきた湿気を含んだ空気を除湿した後に、後方スペース24に送風することが可能となる。これにより、除湿された空気を車室内で循環させることが可能となり、効率よく車室内の温度調整を行うとともに、結露の発生を防止することが可能となる。なお、この乗車時結露防止制御と上記快速適温制御とは、同時に実行することはできず、上記選択スイッチ84によって選択されているモードに応じて実行されるようになっている。
【0040】
また、上記乗車時結露防止制御は、前席14,16にのみ乗員が乗っている場合に、途中で、後方スペース24に乗員が乗り込んできたときに実行される制御であるが、前席14,16および後席18に乗員が乗っている場合に、途中で、後方スペース24から乗員が降りたときに行われる降車時結露防止制御も、車両用空調システム10では、採用されている。前席14,16および後席18に乗員が乗っている場合には、非仕切状態で車室内全体が室温調整されているが、途中で、後方スペース24から乗員が降りると、誰も乗車していないにも関わらず適温とされている後方スペースに、後方スペース温度Tと外気温Tとの温度差に依拠して結露が発生する場合があるためである。
【0041】
降車時結露防止制御では、後方スペース24から乗員が降りた場合に、省電力化を図るべく、仕切状態が実現される。そして、後方側空調装置28を吸気モードで作動させる。これにより、後方スペース温度Tと外気温Tとの温度差を小さくすることが可能となる。さらに、冬期には、後方スペース24に外気を導入させる。これにより、後方スペース温度Tと外気温Tとの温度差を相当小さくすることが可能となる。また、後方スペース24からの降車直後の後方スペース温度Tは適温とされていることから、その適温とされている空気を有効利用するべく、後方スペース24内の空気が、前方スペース22に送風される。これにより、さらなる省電力化を図ることが可能となる。
【0042】
具体的な制御について説明すれば、まず、外気温Tが適温であるか否かが判定される。外気温Tが適温であれば、外気温Tと後方スペース温度Tとの温度差は小さいと考えられ、降車時結露防止制御を実行する必要がないためである。そして、外気温Tが適温ではない場合、具体的には、外気温Tが10℃より低い、若しくは、25℃より高い場合には、仕切状態が実現され、後方側空調装置28が吸気モードで作動させられとともに、前方側空調装置27が通常に作動させられる。これにより、適温とされている後方スペース24の空気を、連通路46を介して、前方側空調装置27に流入させることが可能となり、前方側空調装置27はその流入してきた適温とされた空気を前方スペース22に送風することが可能となる。さらに、冬期には、外気導入ルーバ29が作動させられ、外気導入口47から後方スペース24へ外気が導入される。このように、前方側空調装置27,後方側空調装置28,外気導入ルーバ29の作動を制御することで、省電力化を図るとともに、後方スペース24での結露の発生を防止することが可能となる。なお、この制御は、予め設定された時間継続して実行され、その設定された時間の経過後に、後方側空調装置28を停止し、外気導入ルーバ29によって外気導入口47を閉める。
【0043】
さらに、車両用空調システム10では、車室仕切装置26および前方側空調装置27を利用して、フロンドウィンドへの着氷を解氷するための解氷制御も採用されている。冬期における車両の窓への着氷時には、解氷するまで車両を走行させることができず、不便であり、特に、リアウィンドは電熱線等により比較的速く解氷することが可能であるが、フロントウィンドには電熱線等が設けられていないため、この制御が採用されている。
【0044】
解氷制御は、エンジン始動時に実行される制御であり、まず、エンジン始動時に外気温Tが0℃より低いか否かが判定される。外気温Tが0度以上であれば、フロントウィンドへの着氷の可能性は低く、解氷制御を実行する必要がないためである。そして、外気温Tが0℃より低い場合には、仕切状態が実現され、前方側空調装置27によって、除湿した温風をデフ吹出口44から送風する。これにより、前方スペース22のみで除湿された温風を循環させることが可能となり、素早くフロントウィンドへの着氷を解かすことが可能となる。ちなみに、運転が開始された場合には、フロントウィンドへの着氷が解氷されたと考えられるため、仕切状態から非仕切状態に切り換えられ、前方側空調装置27を停止する。
【0045】
<車両用空調システム制御プログラム>
車両用空調システム10の制御は、図3にフローチャートを示す車両用空調システム制御プログラムが、イグニッションスイッチがON状態とされている間、短い時間間隔(例えば、数m〜数十msec)をおいてECU50のコントローラ52により繰り返し実行されることによって行われる。以下に、空調システム10の制御の流れを、図に示すフローチャートを参照しつつ、詳しく説明する。
【0046】
空調システム制御プログラムでは、まず、ステップ1(以下、単に「S1」と略す。他のステップについても同様とする)において、外気温センサ76の検出値に基づいて外気温Tが取得され、S2において、本プログラムの実行がエンジン始動後に初めて実行されたものであるか否かが判定される。そして、初めてのプログラムの実行でないと判定された場合には、解氷フラグFのフラグ値が0とされているか否かが判定される。そのフラグFは、解氷制御が実行中であるか否かを示すフラグであり、そのフラグFのフラグ値が1とされている場合には、解氷制御の実行中であることを示し、0とされている場合には、解氷制御の実行が終了していることを示している。なお、車両始動時には、そのフラグFのフラグ値は0にリセットされている。
【0047】
解氷フラグFのフラグ値が1とされていると判定された場合には、S4において、図4にフローチャートを示す前方スペース解氷サブルーチンが実行される。また、S2で本プログラムの実行がエンジン始動後に初めて実行されたものであると判定された場合にも、このサブルーチンが実行される。前方スペース解氷サブルーチンでは、まず、S21において、外気温Tが0℃より低いか否かが判定され、0℃より低いと判定された場合には、S22において、前方側空調装置27の電源がONとされているか否かが判定される。ONとされていると判定された場合には、S23において、前方側空調装置27の吹出口40にデフ吹出口44が選択されているか否かが判定され、デフ吹出口44が選択されていると判定された場合には、S24において、解氷フラグFのフラグ値が1とされる。次に、S25において、仕切状態が実現される。具体的には、エアポンプ32のポンプモータ54に駆動指令が送信され、電磁弁38のソレノイド58に開弁するための指令が送信される。そして、圧力センサ38によって検出されるエア袋体30内の空気圧が予め設定された設定圧となった時点で、ポンプモータ54に停止指令が送信され、ソレノイド58に閉弁するための指令が送信される。
【0048】
続いて、S26において、前方側空調装置27に除湿した温風を送風するための作動指令が送信される。空調装置28の制御は、公知であるため、詳しい説明は省略する。そして、S27において、運転が開始されたか否かが判定される。具体的には、アクセルペダルの踏み込み量が閾値以上であるか否かが判定され、アクセルペダルの踏み込み量が閾値以上、つまり、運転が開始されたと判定された場合には、S28において、非仕切状態が実現される。ちなみに、S21で外気温Tが0℃以上であると判定された場合、S22で前方側空調装置27の電源がOFFとされていると判定された場合、S23で前方側空調装置27の吹出口40にデフ吹出口44が選択されていないと判定された場合にも、S28において、非仕切状態が実現される。具体的には、電磁弁38のソレノイド58に開弁するための指令が送信され、エア袋体30が収縮させられる。そして、S29において、前方側空調装置27に停止指令が送信され、S30において、解氷フラグFのフラグ値が0とされ、本サブルーチンの実行が終了する。なお、S27で運転が開始されていないと判定された場合には、以降のステップを行わず、本サブルーチンの実行が終了する。そして、このサブルーチンの実行が終了した後、メインルーチンに戻り、本プログラムの1回の実行が終了する。
【0049】
また、メインルーチンのS3で解氷フラグFのフラグ値が1とされていないと判定された場合には、S5において、降車時結露防止フラグFB1,乗車時結露防止フラグFB2,快適性優先フラグFの全てのフラグ値が0とされているか否かが判定される。各フラグFB1,FB2,Fは、降車時結露防止制御,乗車時結露防止制御,快速適温制御の各々が実行中であるか否かを示すフラグであり、各フラグFB1,FB2,Fのフラグ値が1とされている場合には、各制御の実行中であることを示し、0とされている場合には、各制御の実行が終了していることを示している。なお、車両始動時には、各フラグFB1,FB2,Fのフラグ値は0にリセットされている。
【0050】
各フラグFB1,FB2,Fの全てのフラグ値が0とされていると判定された場合には、S6において、前方側空調装置27の電源がONとされているか否かが判定され、ONとされていると判定された場合には、S7において、前席14,16のみに乗員が着座しているか否かが判定される。つまり、後方スペース24に誰も乗車していないか否かが判定される。この判定は、着座センサ82の検出値に基づいて行われる。後方スペース24に誰も乗車していないと判定された場合には、S8において、後席着座フラグFのフラグ値が1とされているか否かが判定される。後席着座フラグFは、後席18に着座していたか否かを示すフラグであり、フラグ値が1とされている場合には、後席18に着座していたことを示し、0とされている場合には、後席18に着座していなかったことを示している。なお、車両始動時には、フラグ値は0にリセットされている。そして、後席着座フラグFのフラグ値が0とされていると判定された場合には、S9において、仕切状態が実現され、S10において、前方側空調装置27に乗員による設定通りの作動指令が送信された後に、本プログラムの1回の実行が終了する。
【0051】
また、S8で後席着座フラグFのフラグ値が1とされていると判定された場合には、実際に前席14,16のみに着座しているのに、後席着座フラグFのフラグ値が1とされているということは、後方スペース24から乗員が降りた直後であると考えられることから、S11において、図5にフローチャートを示す降車時結露防止サブルーチンが実行される。ちなみに、S5で解氷フラグFのフラグ値が0とされていると判定され、S12で降車時結露防止フラグFB1のフラグ値が1とされていると判定された場合にも、このサブルーチンが実行される。
【0052】
降車時結露防止サブルーチンでは、まず、S31において、後席着座フラグFのフラグ値が0とされ、S32において、外気温Tが10℃より低いか否かが判定される。外気温Tが10℃より低いと判定された場合には、S33において、外気導入ルーバ29に外気導入口47を開くための指令が送信される。一方、外気温Tが10℃以上と判定された場合には、S34において、外気温Tが25℃より高いか否かが判定され、高いと判定された場合には、外気導入ルーバ29に外気導入口47を閉じるための指令が送信される。
【0053】
外気導入ルーバ29にいずれかの指令が送信された後に、S36において、仕切状態が実現され、S37において、降車時結露防止フラグFB1のフラグ値が1とされる。次に、S38において、後方側空調装置28に吸気モードでの作動指令が送信され、S39において、前方側空調装置27に乗員による設定通りの作動指令が送信される。続いて、S40において、S40において、カウンタCに1が加えられる。カウンタCは、降車時結露防止制御の実行時間を計測するためのものであり、S41において、カウンタCが予め設定された数値Cとなっているか否かが判定される。カウンタCがCとなっていると判定された場合には、S42において、降車時結露防止フラグFB1のフラグ値が0とされ、S43において、外気導入ルーバ29に外気導入口47を閉じるための指令が送信される。そして、S44において、後方側空調装置28に停止指令が送信され、本サブルーチンの実行が終了する。また、S41でカウンタCがCとなっていないと判定された場合、若しくは、S34で外気温Tが25℃以下と判定された場合にも、本サブルーチンの実行が終了する。そして、本サブルーチンの実行が終了した後、メインルーチンに戻り、本プログラムの1回の実行が終了する。
【0054】
また、メインルーチンのS7で後席18にも乗員が着座していると判定された場合には、S13において、後席着座フラグFのフラグ値が1とされ、S14において、仕切状態とされているか否かが判定される。仕切状態とされていないと判定された場合には、S10以降の処理が実行される。一方、仕切状態とされていると判定された場合には、前席14,16および後席18に着座しているのに、仕切状態とされているということは、後方スペース24に乗員が乗り込んだ直後であると考えられることから、S15において、選択スイッチ84によって、快適性優先モードと結露防止優先モードとのいずれのモードが選択されているかが判定される。結露防止優先モードが選択されていると判定された場合には、S16において、図6にフローチャートを示す乗車時結露防止サブルーチンが実行される。ちなみに、S12で降車時結露防止フラグFB1のフラグ値が0とされていると判定され、S17で乗車時結露防止フラグFB2のフラグ値が1とされていると判定された場合にも、このサブルーチンが実行される。
【0055】
乗車時結露防止サブルーチンでは、まず、S51において、非仕切状態が実現され、S52において、後方スペース温度センサ78の検出値に基づいて後方スペース温度Tが取得される。次に、S53において、外気温Tが20℃より低いか否かが判定される。外気温Tが20℃より低いと判定された場合には、S54において、後方スペース温度Tから外気温Tを減じた値が閾値Aより小さいか否かが判定される。閾値Aより小さいと判定された場合、つまり、後方スペース温度Tが外気温Tよりさほど高くないと判定された場合には、S55において、乗車時結露防止フラグFB2のフラグ値が1とされ、S56において、後方側空調装置28に吸気モードでの作動指令が送信される。そして、S57〜S59において、前方側空調装置27に、内気循環状態で除湿した温風をデフ吹出口44から送風するための作動指令が送信され、本サブルーチンの実行が終了する。
【0056】
また、S54で後方スペース温度Tから外気温Tを減じた値が閾値A以上であると判定された場合、つまり、後方スペース温度Tが外気温Tよりある程度高くなっていると判定された場合には、S60において、乗車時結露防止フラグFB2のフラグ値が0とされる。続いて、S61において、後方側空調装置28に停止指令が送信され、S62において、前方側空調装置27に乗員による設定通りの作動指令が送信された後にも、本サブルーチンの実行が終了する。なお、S53で外気温Tが20℃以上と判定された場合にも、本サブルーチンの実行が終了する。そして、本サブルーチンの実行が終了した後、メインルーチンに戻り、本プログラムの1回の実行が終了する。
【0057】
また、メインルーチンのS15で選択スイッチ84によって快適性優先モードが選択されていると判定された場合、若しくは、S17で乗車時結露防止フラグFB2のフラグ値が0とされていると判定された場合には、S18において、図7にフローチャートを示す快適性優先サブルーチンが実行される。このサブルーチンでは、まず、S71において、非仕切状態が実現され、S72において、後方スペース温度センサ78の検出値に基づいて後方スペース温度Tが取得される。次に、S73において、設定温度センサ80の検出値に基づいて前方側空調装置27の設定温度Tが取得され、S74において、後方スペース温度Tから設定温度Tを減じた値の絶対値が閾値Bより小さいか否かが判定される。その減じた値の絶対値が閾値Bより小さくないと判定された場合、つまり、後方スペース温度Tと設定温度Tとの差が大きいと判定された場合には、S75において、外気温Tが10℃より低いか否かが判定され、低いと判定された場合には、S76において、後方側空調装置28に温風を送風するための作動指令が送信される。一方、外気温Tが10℃以上であると判定された場合には、S77において、外気温Tが25℃より高いか否かが判定され、高いと判定された場合には、S78において、後方側空調装置28に冷風を送風するための作動指令が送信される。
【0058】
後方側空調装置28に作動指令が送信された後に、S79において、快適性優先フラグFのフラグ値が1とされ、S80において、前方側空調装置27に吸気モードでの作動指令が送信される。そして、S81において、前方側空調装置27に内気循環状態とするための作動指令が送信され、本サブルーチンの実行が終了する。また、S74で後方スペース温度Tから設定温度Tを減じた値の絶対値が閾値Bより小さいと判定された場合、つまり、後方スペース温度Tと設定温度Tとの差が小さいと判定された場合には、S82において、快適性優先フラグFのフラグ値が0とされる。続いて、S83において、後方側空調装置28に停止指令が送信され、S84において、前方側空調装置27に乗員による設定通りの作動指令が送信された後にも、本サブルーチンの実行が終了する。なお、S77で外気温Tが25℃以下と判定された場合にも、本サブルーチンの実行が終了する。そして、本サブルーチンの実行が終了した後、メインルーチンに戻り、本プログラムの1回の実行が終了する。
【0059】
また、メインルーチンのS6で前方側空調装置27の電源がOFFとされていると判定された場合には、S19において、前方側空調装置27に停止指令が送信され、S20において、非仕切状態が実現された後に、本プログラムの1回の実行が終了する。
【0060】
<制御装置の機能構成>
以上のような空調システム制御プログラムが実行されて機能する車両用空調システム10のECU50は、その実行処理に依拠すれば、図2に示すような機能構成を有するものと考えることができる。その機能構成によれば、ECU50は、上記S7〜S10の処理を実行する機能部、つまり、前席14,16のみに乗員が乗っている場合に前方スペース22のみの温度調整を行う機能部として、前方スペース温度調整部100を、S31〜S44、および、S51〜S62の処理を実行する機能部、つまり、後方スペース24での結露の発生を防止する結露防止制御を実行する機能部として、結露防止制御実行部102を、S71〜S84の処理を実行する機能部、つまり、後方スペース温度Tを快速で適温とする快速適温制御を実行する機能部として、快速適温制御実行部104を、S21〜S29の処理を実行する機能部、つまり、フロントウィンドへの着氷を解氷する解氷制御を実行する機能部として、解氷制御実行部106を、それぞれ備えている。
【0061】
なお、結露防止制御実行部102は、S51〜S62の処理を実行する機能部、つまり、後方スペース24への乗車時に結露防止制御を実行する機能部として、乗車時結露防止制御実行部108を、S31〜S44の処理を実行する機能部、つまり、後方スペース24からの降車時に結露防止制御を実行する機能部として、降車時結露防止制御実行部110を、それぞれ有している。
【0062】
ちなみに、上記実施例において、車両用空調システム10は、車両用空調システムの一例であり、車室仕切装置26は、車室仕切装置の一例である。また、前方側空調装置27は、前方側空調装置の一例であり、後方側空調装置28は、後方側吸気装置および後方側空調装置の一例である。前方側空調装置27と後方側空調装置28とを連結する連通路46は、連通路の一例であり、外気導入ルーバ29,外気導入口47は、外気導入装置,外気導入口の一例である。さらに、ECU50は、制御装置の一例であり、そのECU50の前方スペース温度調整部100,結露防止制御実行部102,快速適温制御実行部104,解氷制御実行部106,乗車時結露防止制御実行部108,降車時結露防止制御実行部110は、それぞれ、前方スペース温度調整部,結露防止制御実行部,快速適温制御実行部,解氷制御実行部,乗車時結露防止制御実行部,降車時結露防止制御実行部の一例である。
【0063】
なお、本発明は、上記実施例に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した種々の態様で実施することができる。具体的には、例えば、上記実施例では、車室仕切装置として、エア袋体30という固体の部材によって車室を2つのスペースに仕切る装置を採用していたが、例えば、気流による壁を形成し、その気流の壁によって車室を仕切るような装置、具体的には、例えば、エアカーテン装置等を採用してもよい。
【0064】
また、上記実施例では、座席が2列並べられた車両を採用していたが、座席が3列以上並べられた車両を採用してもよい。このように、座席が3列以上並べられた車両を採用する場合には、車室仕切装置は、1列目の座席、つまり、運転席等と2列目の座席との間を仕切るものであってもよく、2列目以降の座席とその座席の後ろの座席、具体的にいえば、例えば、2列目の座席と3列目の座席との間を仕切るものであってもよい。
【0065】
また、上記実施例では、各制御を実行するか否かを外気温Tに依拠して判定していたが、後方スペース温度T等の各温度で判定してもよく、スイッチ等を利用して、乗員の意思に基づいて判定してもよい。例えば、冬期モードと夏期モードとのいずれかを選択可能なスイッチを車両に設け、その選択されたモードに応じた制御が実行されるように構成されてもよい。具体的にそのスイッチを採用した場合において、乗車時結露防止制御を実行するためのサブルーチンを、図8に示す。このサブルーチンは、図6に示す乗車時結露防止サブルーチンと殆ど同じであるため、異なるステップを中心に説明する。
【0066】
図8での乗車時結露防止サブルーチンでは、乗車時結露防止制御を実行するか否かの判定を、スイッチによって冬期モードが選択されているか否かによって行っている。つまり、S93において、冬期モードが選択されているか否かが判定され、冬期モードが選択されていると判定された場合に、S94〜S99,S102〜104において、図6に示す乗車時結露防止サブルーチンのS54〜S62と同じ処理が実行される。そして、S93で夏期モードが選択されていると判定された場合には、S100において、前方側空調装置27に乗員による設定通りの作動指令が送信されるようになっている。
【0067】
また、上記実施例での降車時結露防止制御において、外気温Tが高いような場合には、湿った空気の後方スペース24への導入を避けるべく、外気導入ルーバ29を閉状態としていたが、後方スペース温度Tと外気温Tとの温度差を早急に小さくするべく、外気導入ルーバ29を開状態としてもよい。また、外気導入ルーバ29を開閉状態を外気温Tに依拠して判定するのではなく、例えば、外気の湿度に依拠して判定してもよい。具体的には、湿度が高い場合には、外気導入ルーバ29を閉状態とし、湿度が低い場合には、外気導入ルーバ29を開状態とするような制御が実行されてもよい。
【0068】
また、上記実施例では、乗車時結露防止制御と快速適温制御とのいずれの制御が実行されるかを、選択スイッチ84を利用して乗員の意思に依拠して判定していたが、外気温,外気の湿度等に依拠して判定してもよい。具体的にいえば、外気の湿度が高いような場合には、乗車時結露防止制御を実行し、外気温と後方スペース温度との差が大きい場合には、快速適温制御を実行するように構成されてもよい。
【0069】
また、上記実施例で採用されている判定に用いられる外気温の閾温度、具体的には、例えば、解氷制御で用いられる閾温度0℃,降車時結露防止制御等で用いられる閾温度10℃,25℃等は、当然、任意に設定することが可能である。また、湿度等に応じて変更可能に構成されてもよい。
【符号の説明】
【0070】
10:車両用空調システム
20:車室
22:前方スペース
24:後方スペース
26:車室仕切装置
27:前方側空調装置
28:後方側空調装置(後方側吸気装置)
29:外気導入ルーバ(外気導入装置)
46:連通路
47:外気導入口
50:電子制御ユニット(制御装置)
100:前方スペース温度調整部
102:結露防止制御実行部
104:快速適温制御実行部
106:解氷制御実行部
108:乗車時結露防止制御実行部
110:降車時結露防止制御実行部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室内を、前方に設けられた座席が配置されている前方スペースと後方に設けられた座席が配置されている後方スペースとに仕切った状態である仕切状態と仕切っていない状態である非仕切状態とで切換可能な車室仕切装置と、
前記前方スペースに送風可能な前方側空調装置と、
前記後方スペースから吸気可能な後方側吸気装置と、
前記車室仕切装置の作動を制御することで、前記仕切状態と前記非仕切状態とのいずれかを選択的に実現するとともに、前記前方側空調装置と前記後方側吸気装置との各々の作動を制御するように構成された制御装置と
を備え、
前記制御装置は、
前記前方スペースにのみ乗車している場合に、前記仕切状態を実現しつつ、前記前方側空調装置によって前記前方スペース内の温度を調整する前方スペース温度調整部と、
前記仕切状態と前記非仕切状態との切換後に、前記後方側吸気装置によって前記後方スペース内の空気を吸気し、前記後方スペースでの結露の発生を防止する結露防止制御を実行する結露防止制御実行部と
を有することを特徴とする車両用空調システム。
【請求項2】
前記結露防止制御実行部は、
前記後方スペースからの降車時における前記非仕切状態から前記仕切状態への切換後に、前記結露防止制御を実行する降車時結露防止制御実行部を有することを特徴とする請求項1に記載の車両用空調システム。
【請求項3】
当該車両用空調システムは、
前記前方側空調装置と前記後方側吸気装置とを、前記後方側吸気装置が吸気した空気を前記前方側空調装置に流入可能に連通する連通路を備え、
前記降車時結露防止制御実行部は、
前記結露防止制御実行時に、前記連通路を介して前記後方側吸気装置から流入した空気を、前記前方側空調装置によって送風することを特徴とする請求項2に記載の車両用空調システム。
【請求項4】
当該車両用空調システムは、
前記後方スペースへ外気を導入可能な外気導入口を有し、その外気導入口を開くことで前記後方スペースへ外気を導入し、前記外気導入口を閉じることで前記後方スペースへの外気導入を遮断する外気導入装置を備え、
前記降車時結露防止制御実行部は、
前記結露防止制御実行時に、前記外気導入装置によって前記後方スペースへ外気を導入することを特徴とする請求項2または請求項3に記載の車両用空調システム。
【請求項5】
前記結露防止制御実行部は、
前記後方スペースへの乗車時における前記仕切状態から前記非仕切状態への切換後に、前記結露防止制御を実行する乗車時結露防止制御実行部を有することを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1つに記載の車両用空調システム。
【請求項6】
当該車両用空調システムは、
前記前方側空調装置と前記後方側吸気装置とを、前記後方側吸気装置が吸気した空気を前記前方側空調装置に流入可能に連通する連通路を備え、
前記乗車時結露防止制御実行部は、
前記結露防止制御実行時に、前記連通路を介して前記後方側吸気装置から流入した空気を、前記前方側空調装置によって除湿した後に送風することを特徴とする請求項5に記載の車両用空調システム。
【請求項7】
車室内を、前方に設けられた座席が配置されている前方スペースと後方に設けられた座席が配置されている後方スペースとに仕切った状態である仕切状態と仕切っていない状態である非仕切状態とで切換可能な車室仕切装置と、
前記前方スペースに送風可能な前方側空調装置と、
前記後方スペースに送風可能な後方側空調装置と、
前記車室仕切装置の作動を制御することで、前記仕切状態と前記非仕切状態とのいずれかを選択的に実現するとともに、前記前方側空調装置と前記後方側空調装置との各々の作動を制御するように構成された制御装置と
を備え、
前記制御装置は、
前記前方スペースにのみ乗車している場合に、前記仕切状態を実現しつつ、前記前方側空調装置によって前記前方スペース内の温度を調整する前方スペース温度調整部と、
前記後方スペースへの乗車時における前記仕切状態から前記非仕切状態への切換後に、前記前方側空調装置だけでなく、前記後方側空調装置をも作動させて、前記後方スペース内の温度を適温とする快速適温制御を実行する快速適温制御実行部と
を有することを特徴とする車両用空調システム。
【請求項8】
前記前方側空調装置は、前記前方スペースから吸気可能な構造とされ、
当該車両用空調システムは、
前記前方側空調装置と前記後方側空調装置とを、前記前方側空調装置が吸気した空気を前記後方側空調装置に流入可能に連通する連通路を備え、
前記快速適温制御実行部は、
前記快速適温制御実行時に、前記連通路を介して前記前方側空調装置から流入した空気を、前記後方側空調装置によって送風することを特徴とする請求項7に記載の車両用空調システム。
【請求項9】
車室内を、前方に設けられた座席が配置されている前方スペースと後方に設けられた座席が配置されている後方スペースとに仕切った状態である仕切状態と仕切っていない状態である非仕切状態とで切換可能な車室仕切装置と、
前記前方スペースに送風可能な前方側空調装置と、
前記車室仕切装置の作動を制御することで、前記仕切状態と前記非仕切状態とのいずれかを選択的に実現するとともに、前記前方側空調装置の作動を制御するように構成された制御装置と
を備え、
前記制御装置は、
前記前方スペースの窓への着氷時に、前記仕切状態を実現しつつ、前記前方側空調装置によって前記前方スペース内の窓に向かって温風を送風し、解氷する解氷制御を実行する解氷制御実行部を有することを特徴とする車両用空調システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−206527(P2012−206527A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−71333(P2011−71333)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(591261509)株式会社エクォス・リサーチ (1,360)
【Fターム(参考)】