説明

車両用空調装置

【課題】車載バッテリーを冷却するための熱交換器における結露を防止する。
【解決手段】車室内と車室外の少なくとも一方から導入した空気の熱を冷媒に吸熱して車室内の冷房を行う車室内熱交換器7と、車室内空気の熱を冷媒に吸熱して車載バッテリー3を冷却するバッテリー冷却用熱交換器20と、バッテリー冷却用熱交換器20へ流入する冷媒流量を調節する電磁弁26とを備えた車両用空調装置において、バッテリー冷却用熱交換器20の吹き出し風温度が車室内熱交換器7の吹き出し風温度よりも高くなるように電磁弁26を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両用空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
積層電池集合体と吸気および排気ダクトをケース内に収納した車載用電池パック内に、空調用冷凍サイクルのエバポレーターを設置し、エバポレーターで冷却した冷風を用いて積層電池集合体を冷却するようにした車両用空調装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
この装置では、エバポレーターで発生する結露が電池パックケース内のエバポレーター近傍に設置されたドレイン部に溜まり、液体は通すが気体は通さないフィルターを通して車載用電池パックの外に排出される。
【0003】
この出願の発明に関連する先行技術文献としては次のものがある。
【特許文献1】特開2006−179190号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来の車両用空調装置では、車載用電池パック内のエバポレーターで発生した結露がケース内のドレイン部に溜まるだけの構成となっているため、エバポレーター表面に付着した結露が積層電池集合体に飛散したり、車両の加減速や傾きが原因でドレイン部から排水が溢れ出すおそれがある。また、積層電池集合体を急速に冷却するとドレイン部に大量の排水が溜まり、溢れ出す可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
車室内と車室外の少なくとも一方から導入した空気の熱を冷媒に吸熱して車室内の冷房を行う第1熱交換手段と、車室内空気の熱を冷媒に吸熱して車載バッテリーを冷却する第2熱交換手段と、第2熱交換手段へ流入する冷媒流量を調節する流量調節手段とを備えた車両用空調装置において、第2熱交換手段の吹き出し風温度が第1熱交換手段の吹き出し風温度よりも高くなるように流量調節手段を制御する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、車載バッテリー冷却用の第2熱交換手段を通過する空気温度が露点を下回ることがなく、第2熱交換手段での結露を防止できる。したがって、車載バッテリーを収納する電池パックドレイン部の排水の飛散や溢れ出しが発生することはない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
図1は一実施の形態の車両用空調装置の構成を示す。一実施の形態の車両用空調装置は、車室内の空調(冷暖房)を行う車室内空調装置と、バッテリーの冷却を行うバッテリー冷却装置とから構成され、詳細を後述するコンプレッサーや車室外熱交換器などの一部の機器は両装置に共用とされる。
【0008】
まず、車室内空調装置の構成を説明する。図1において、コンプレッサー1は車両のエンジンルームに設置された電動コンプレッサーであり、コンプレッサー1のケース内にコンプレッサー駆動用の電動モーター1aとモーター駆動用のインバーター1bが一体に収納されている。コンプレッサー1には、モータージェネレーター2で発電された電力か、またはモータージェネレーター2で発電された後にいったんバッテリー3に蓄えられた電力が、車両用インバーター4を介して供給される。
【0009】
車室外熱交換器5は車室外に設けられ、コンプレッサー1から吐出される冷媒の熱を外気に放熱するコンデンサーとして機能する。車室外熱交換器5から流出した冷媒は、膨張弁6で断熱膨張して車室内熱交換器7へ流入した後、コンプレッサー1へ戻る。車室内熱交換器7は車室内空調用ダクト8内に設置され、その一端はコンプレッサー1の冷媒吸入口1cに、他端は膨張弁7にそれぞれ接続される。そして、ブロアファン9により送風された空気から吸熱して冷却する吸熱器として機能する。
【0010】
車室内空調用ダクト8の車室内熱交換器7の上流側には、車室内空気を導入する内気導入口と、走行風圧を受けて外気を導入する外気導入口が設置される。内気導入口と外気導入口とが分岐する部分には、内気導入量と外気導入量とを任意の比率で開閉するインテークドア10が設置される。インテークドア10はインテークドア・アクチュエーター10aにより開閉駆動される。インテークドア10の開度であるインテークドア開度Xintは、内気導入量が100%で外気導入量が0%の“フル内気導入”となる位置をXint=0%とし、内気導入量が0%で外気導入量が100%の“フル外気導入”となる位置をXint=100%とする。内気導入口および外気導入口と車室内熱交換器7の間に配置されるブロアファン9は、ブロアファンモーター11により回転駆動され、内気導入口と外気導入口の少なくとも一方から導入した空気を車室内空調用ダクト8の下流へ送風する。
【0011】
一方、車室内空調用ダクト8の車室内熱交換器7の下流側には、エンジン(不図示)の冷却水を循環して車室内熱交換器7を通過した空気を過熱するためのヒーターコア12と、エアーミックスドア13が設置される。エアーミックスドア13はエアーミックスドア・アクチュエーター13aにより開閉駆動され、ヒーターコア12を通過する空気と通過しない空気との割合を調節してヒータコア12を通過する風量を可変にする。エアーミックスドア13の開度であるエアーミックスドア開度Xmixは、ヒーターコア12を通過する空気が0%となるときをエアーミックスドア開度X=0%(全閉、フルクール)とし、すべての空気がヒータコア12を通過するときをエアーミックスドア開度Xmix=100%(全閉、フルホット)とする。
【0012】
次に、バッテリー冷却装置の構成を説明する。バッテリー3を冷却するために、バッテリー冷却用ダクト18の内部にバッテリー冷却ファン19やバッテリー熱交換器20が設置される。バッテリー冷却ファン19により送風された空気はバッテリー冷却用熱交換器20で冷却され、バッテリー吸気ダクト21を通ってバッテリー3へ流れ込み、バッテリー3を冷却してバッテリー排気ダクト22から排出される。ここで、バッテリー冷却ファン19は車室内の空気をバッテリー冷却用ダクト18内に取り込み、バッテリー3を冷却した後の空気はバッテリー排気ダクト22を通して車室内またはトランクルーム内へ排出される。バッテリー冷却ファン19はファンモーター25により回転駆動される。
【0013】
バッテリー冷却用熱交換器20には、車室外熱交換器5から吐出した冷媒の一部が分流して電磁弁26を通り、さらにバッテリー冷却用膨張弁27で断熱膨張して流入する。バッテリー冷却用熱交換器20で外部の空気から吸熱してガス化した冷媒は、コンプレッサー1の吸入口1cへ戻る。電磁弁26は、バッテリー冷却用熱交換器20に流入する冷媒量を調節するための流量制御バルブとして機能する。
【0014】
制御装置30はマイクロコンピューターとメモリなどの周辺部品から構成され、後述する空調制御プログラムを実行して車室内の空調とバッテリー3の冷却を行う。制御装置30は、日射センサー31から日射量Qsunを、外気温センサー32から車室外空気温度(外気温度)Tambを、室温センサー33から車室内空気温度(車室内温度)Ticを、室温設定器34から車室内設定温度Tptcを、エバポレーター吹き出し風温度センサー35から車室内熱交換器7の吹き出し風温度Toutを、バッテリー用エバポレーター吹き出し風温度センサー36からバッテリー冷却用熱交換器20の吹き出し風温度Tboutなどを入力する。
【0015】
制御装置30は、入力した上記の熱環境情報に基づいてコンプレッサー毎分回転数Ncomp、エアーミックスドア開度Xmix、インテークドア開度Xint、吹き出し口モード、ブロアファン電圧Vfan1、バッテリー冷却ファン電圧Vfan2、目標吹き出し風温度Tofなどの目標冷暖房条件を演算し、車室内の冷暖房条件が演算結果の目標冷暖房条件を維持するように、ブロアファンモーター11、バッテリー冷却ファンモーター25、インテークドア・アクチュエーター10a、エアーミックスドア・アクチュエーター13aなどを駆動制御し、コンプレッサー1の回転速度を制御する。
【0016】
制御装置30はまた、バッテリー冷却用熱交換器20の吹き出し風温度が所定の温度になるように電磁弁26を開閉制御する。コンプレッサー用インバーター1bは、コンプレッサー1の回転速度、電圧、電流、通信エラーの有無などの情報を制御装置30へ出力するとともに、制御装置30からコンプレッサー1のオン、オフ指令や回転速度指令を入力し、コンプレッサー1を駆動制御して車室内の空調とバッテリーの冷却に必要なコンプレッサー能力を調節する。
【0017】
バッテリー制御装置40はマイクロコンピューターとメモリなどの周辺部品から構成され、バッテリー3の充放電制御や温度管理などを行い、バッテリー3の温度が所定温度を超えた場合、あるいは急速な充放電が行われてバッテリー3の温度が急速に増加すると予測される場合などに、制御装置30へバッテリー3の急速冷却要求を出力する。なお、バッテリー制御装置40には、バッテリー3の温度を検出する温度センサー41が接続されている。
【0018】
図2および図3は、一実施の形態の空調制御プログラムを示すフローチャートである。制御装置30は所定時間ごとにこの空調制御プログラムを実行する。ステップ201で車両用空調装置の運転を開始すると、ステップ202で上述した各センサーから熱環境情報を入力する。すなわち、日射センサー31から日射量Qsunを、外気温センサー32から外気温度Tambを、室温センサー33から車室内温度Ticを、室温設定器34から車室内設定温度Tptcを、エバポレーター吹き出し風温度センサー35からの車室内熱交換器7の吹き出し風温度Toutを、バッテリー用エバポレーター吹き出し風温度センサー36からのバッテリー冷却用熱交換器20の吹き出し風温度Tboutなどを入力する。
【0019】
ステップ203では、車室内空調装置の目標吹き出し風温度Xmを演算する。ここで、車室内空調装置の目標吹き出し風温度Xmは、車室内空調ダクト8から不図示のベンチレータードア、フットドア、デフロスタドアを介して車室内へ吹き出される空気の温度である。目標吹き出し風温度Xmは、少なくとも日射量Qsun、車室内温度Ticおよび車室内設定温度Tptcに基づいて演算される。ステップ204において、乗員によりコンプレッサー1をオンする運転が選択されているか否かを判別する。コンプレッサー1をオンする運転が選択されている場合にはステップ205へ進み、オフする運転が選択されている場合には図3のステップ301へ進む。
【0020】
コンプレッサー1をオンする運転が選択されている場合は、ステップ205で、上記ステップ202で検出した車室内熱交換器7の吹き出し風温度Toutが所定の温度よりも低下したか否かを判別する。吹き出し風温度Toutが所定温度よりも低下していない場合には、車室内がまだ十分に冷却されていないと判断してステップ209へ進み、そうでない場合にはステップ206へ進む。
【0021】
吹き出し風温度Toutが所定温度よりも低下している場合は、ステップ206で、上記ステップ203で演算した車室内空調装置の目標吹き出し風温度Xmが所定の温度よりも高いか否かを判別する。目標吹き出し風温度Xmが所定温度よりも低ければ、車室内を優先的に冷房する要求が高いと判断してステップ209へ進み、そうでない場合にはステップ207へ進む。
【0022】
目標吹き出し風温度Xmが所定温度以上の場合は、ステップ207で、バッテリー冷却装置の目標吹き出し風温度を演算する。ここで、バッテリー冷却装置の目標吹き出し風温度は、バッテリー冷却用熱交換器20を通過した空気の温度、すなわちバッテリー冷却用熱交換器20の吹き出し風温度である。この一実施の形態では、上記ステップ202で検出した車室内熱交換器7の吹き出し風温度Toutと、予め設定された0よりも大きな数値ΔT1を用いて、(Tout+ΔT1)で算出される温度をバッテリー冷却装置の目標吹き出し風温度に設定する。ここで、車室内空気は車室内空調装置の車室内熱交換器7で冷却されるので、バッテリー冷却装置が吸い込む車室内空気の露点は、ほぼ車室内熱交換器7の吹き出し風温度Toutに等しいと見なせる。
【0023】
ここでは、バッテリー冷却装置の目標吹き出し風温度を(Tout+ΔT1)(ただし、ΔT1>0)に設定し、バッテリー冷却用熱交換器20の吹き出し風温度Tboutが露点以下にならないようにしたので、バッテリー冷却用熱交換器20における結露発生を防止することができる。なお、バッテリー3を冷却するために要求される空気温度は車室内温度よりも若干低い温度であり、(Tout+ΔT1)となっても問題はない。
【0024】
ステップ208では、上記ステップ203で演算した車室内空調装置の目標吹き出し風温度Xmに基づいて、バッテリー冷却ファンモーター25の印加電圧を求める。この一実施の形態では、印加電圧の制御マップを次のような設定としている。目標吹き出し風温度Xmが所定の温度に達するまでは車室内の冷却を優先するためにオフとし、目標吹き出し風温度Xmが所定温度よりも高くなると車室内が十分に冷却されたと判断し、バッテリー冷却ファンモーター25の印加電圧をMAXまで上げてバッテリー冷却を優先する。このように、車室内空調装置の目標吹き出し風温度Xmに応じて、バッテリー冷却用熱交換器20を介してバッテリー3へ送風するバッテリー冷却ファン19およびモーター25の送風量を制御するようにしたので、車室内空調装置のクールダウン性を維持しながらバッテリー冷却装置のクールダウン性を確保することができる。
【0025】
目標吹き出し風温度Xmがさらに高くなり、車室内の空調状態が安定状態に近づいたと判断されると、車室内空調装置のブロアファンモーター11の印加電圧の低下に合わせてバッテリー冷却ファンモーター25の印加電圧を低下させる。これにより、車室内空調装置のブロアファン9のファン騒音と比較して、バッテリー冷却用ファン19のファン騒音が顕著にならないようにできる。
【0026】
ステップ209では、バッテリー冷却よりも車室内冷却を優先するために、バッテリー冷却ファンモーター25をオフに設定するとともに、電磁弁26を閉じてバッテリー冷却用熱交換器20への冷媒の流入を停止する。このように、車室内冷房用の車室内熱交換器7の吹き出し風温度が所定の温度より高い場合、または、車室内空調ダクト8から車室内へ吹き出される空気の目標温度Xmが所定の温度より低い場合には、電磁弁26を閉じてバッテリー冷却用熱交換器20への冷媒の流入を停止するようにしたので、車室内空気が十分に冷却されておらず、車室内冷房を優先させる必要があるときに、バッテリー冷却に振り向ける空調能力を0にして車室内空調能力の低下を防ぐことができる。
【0027】
ステップ301において、乗員によりコンプレッサー1をオフする運転が選択された場合のバッテリー冷却装置の目標吹き出し風温度を演算する。この一実施の形態では、ステップ202で検出した外気温Tambと予め設定された0よりも大きな数値ΔT2を用いて、(Tamb−ΔT2)で算出される温度をバッテリー冷却装置の目標吹き出し風温度に設定する。コンプレッサー1がオフの場合、一般的にはガラスの防曇のために外気を車室内に導入するので、バッテリー冷却装置が吸い込む空気の露点は外気温よりも低い。そのため、(Tamb−ΔT2)でバッテリー冷却用熱交換器20を制御すれば、バッテリー冷却用熱交換器20における結露を防止することができる。
【0028】
このように、コンプレッサー1が停止されたときは、バッテリー冷却用熱交換器20の吹き出し風温度が外気温Tambより低くなるように、電磁弁26によりバッテリー冷却用熱交換器20へ流入する冷媒流量を調節するようにしたので、バッテリー冷却用熱交換器20における結露を防止できる。
【0029】
ステップ302では、外気温Tambに基づいてバッテリー冷却ファンモーター25の印加電圧を設定する。この一実施の形態では、次のように設定する。外気温Tambが非常に低く、バッテリー冷却ファン19を運転しなくてもバッテリー3の温度が十分に低い場合には、バッテリー冷却ファンモーター25をオフにする。一方、外気温Tambがバッテリー3の要求する冷却温度付近にある場合は、バッテリー冷却ファンモーター25の印加電圧がMAXになるように設定する。このように、外気温Tambに応じてバッテリー冷却ファンモーター25の送風量を制御するので、バッテリー3に送風する必要がない低外気温時の無駄な送風を防止することができ、バッテリー3の電力消費を抑制しながらバッテリー3の冷却要求を満たすことができる。
【0030】
《空調制御の変形例》
図4は変形例の空調制御プログラムを示すフローチャートである。ステップ401で車両用空調装置の運転を開始すると、ステップ402で上述した各センサーから熱環境情報を入力する。すなわち、日射センサー31から日射量Qsunを、外気温センサー32から外気温度Tambを、室温センサー33から車室内温度Ticを、室温設定器34から車室内設定温度Tptcを、エバポレーター吹き出し風温度センサー35からの車室内熱交換器7の吹き出し風温度Toutを、バッテリー用エバポレーター吹き出し風温度センサー36からのバッテリー冷却用熱交換器20の吹き出し風温度Tboutを入力する。
【0031】
ステップ403では、車室内空調装置の目標吹き出し風温度Xmを演算する。目標吹き出し風温度Xmは、少なくとも日射量Qsun、車室内温度Ticおよび車室内設定温度Tptcに基づいて演算される。ステップ404において、乗員によりコンプレッサー1をオンする運転が選択されているか否かを判別する。コンプレッサー1をオンする運転が選択されている場合にはステップ405へ進み、オフする運転が選択されている場合には図3のステップ301へ進む。
【0032】
コンプレッサー1をオンする運転が選択されている場合は、ステップ405で、バッテリー制御装置40から急速冷却要求があるか否かを判別する。バッテリー制御装置40から急速冷却要求がない場合には、図2のステップ205へ進んで上述した通常の冷却制御を行う。一方、バッテリー制御装置40から急速冷却要求がある場合はステップ406へ進み、車室内熱交換器7の目標吹き出し風温度を3℃に設定する。ここで、3℃は車室内熱交換器7で凍結が発生しない下限温度である。これにより、バッテリー冷却温度を下げた場合にバッテリー冷却用熱交換器20における結露の発生を防止することができる。
【0033】
ステップ407ではバッテリー冷却装置の目標吹き出し風温度を3℃に設定する。なお、3℃はバッテリー冷却用熱交換器20で凍結が発生しない下限温度である。このように、バッテリー制御装置40から急速冷却要求があったときは、車室内熱交換器7およびバッテリー冷却用熱交換器20の吹き出し風温度が凍結しない下限温度となるように制御するようにしたので、バッテリー冷却装置が車室内から導入する空気の露点が低下し、バッテリー冷却用熱交換器20の吹き出し風温度を低下させてもバッテリー冷却用熱交換器20における結露の発生を防止でき、短時間でバッテリー3を冷却することができる。
【0034】
続くステップ408では、バッテリー冷却ファンモーター25の印加電圧をMAXに設定する。ステップ407と408でバッテリー3の冷却状態が最大冷却状態に設定されるので、バッテリー冷却を優先した運転が可能になる。
【0035】
図5は、バッテリー冷却装置の吹き出し風温度の制御プログラムを示すフローチャートである。制御装置30は所定時間ごとにこの制御プログラムを実行する。バッテリー冷却装置の吹き出し風温度制御は、電磁弁26の開閉制御によって行われる。ステップ501でバッテリー冷却装置の吹き出し風の温度制御を開始し、続くステップ502で、上記ステップ202またはステップ402で検出したバッテリー冷却用熱交換器20の吹き出し風温度Tboutと、上記ステップ208または301または407で演算したバッテリー冷却装置の目標吹き出し風温度との温度差ΔTboutを演算する。
【0036】
ステップ503では、ステップ502で算出した温度差ΔTboutの大小を比較し、(ΔTbout<−1.5℃)の場合にはステップ504へ進み、(ΔTbout>1.5℃)の場合にはステップ506へ進み、(|ΔTbout|<1.5℃)の場合はステップ505へ進む。(ΔTbout<−1.5℃)の場合はステップ504で電磁弁26を閉状態に設定し、(ΔTbout>1.5℃)の場合はステップ506で電磁弁26を開状態に設定する。ステップ505では電磁弁26の開閉状態を維持するように制御を行う。
【0037】
このように、バッテリー冷却用熱交換器20の吹き出し風温度が車室内冷房用の車室内熱交換器7の吹き出し風温度よりも高くなるように、バッテリー冷却用熱交換器20へ流入する冷媒流量を調節する電磁弁26を制御するようにしたので、車室内冷房用の車室内熱交換器7で冷却した車室内空気をバッテリー冷却用熱交換器20で冷却することになり、バッテリー冷却用熱交換器20で冷却する空気の露点は車室内冷房用の車室内熱交換器7を通過する空気の露点と同じになり、バッテリー冷却用熱交換器20を通過する空気温度が露点を下回ることがなく、バッテリー冷却用熱交換器20での結露を防止できる。したがって、車載バッテリーを収納する電池パックドレイン部の排水の飛散や溢れ出しが発生することはない。
【0038】
なお、上述した一実施の形態とその変形例では、コンプレッサー用インバーター1bを一体とした電動コンプレッサー1を例に上げて説明したが、ベルトを介してエンジンにより駆動されるコンプレッサーであっても同様な効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】一実施の形態の構成を示す図
【図2】一実施の形態の空調制御プログラムを示すフローチャート
【図3】図2に続く、一実施の形態の空調制御プログラムを示すフローチャート
【図4】一実施の形態の変形例の空調制御プログラムを示すフローチャート
【図5】一実施の形態のバッテリー冷却装置の吹き出し風温度制御プログラムを示すフローチャート
【符号の説明】
【0040】
1 コンプレッサー
5 車室外熱交換器(放熱手段)
7 車室内熱交換器(第1熱交換手段)
8 車室内空調用ダクト
19 バッテリー冷却ファン(バッテリー送風手段)
20 バッテリー冷却用熱交換器(第2熱交換手段)
25 バッテリー冷却ファンモーター(バッテリー送風手段)
26 電磁弁(流量調節手段)
30 制御装置(制御手段)
32 外気温センサー(外気温検出手段)
35 エバポレーター吹き出し風温度センサー(第1吹き出し風温度検出手段)
36 バッテリー用エバポレーター吹き出し風温度センサー(第2吹き出し風温度検出手段)
40 バッテリー制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室内と車室外の少なくとも一方から導入した空気の熱を冷媒に吸熱して車室内の冷房を行う第1熱交換手段と、
車室内空気の熱を冷媒に吸熱して車載バッテリーを冷却する第2熱交換手段と、
前記第2熱交換手段へ流入する冷媒流量を調節する流量調節手段とを備え、
コンプレッサーからの吐出冷媒を放熱手段で車室外へ放熱した後、前記第1熱交換手段へ供給するとともに、前記流量調節手段を介して前記第2熱交換手段へ供給する車両用空調装置であって、
前記第1熱交換手段の吹き出し風温度を検出する第1吹き出し風温度検出手段と、
前記第2熱交換手段の吹き出し風温度を検出する第2吹き出し風温度検出手段と、
前記第2熱交換手段の吹き出し風温度が前記第1熱交換手段の吹き出し風温度よりも高くなるように、前記流量調節手段を制御する制御手段とを備えることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用空調装置において、
前記第1熱交換手段と、前記第1熱交換手段の吹き出し風を過熱するための過熱手段とが車室内空調ダクト内に設けられており、
前記制御手段は、前記第1熱交換手段の吹き出し風温度が所定の温度より高い場合、または、前記車室内空調ダクトから車室内へ吹き出される空気の目標温度が所定の温度より低い場合には、前記流量調節手段により前記第2熱交換手段への冷媒の流入を停止することを特徴とする車両用空調装置。
【請求項3】
請求項2に記載の車両用空調装置において、
前記第2熱交換手段を介して前記車載バッテリーへ送風するバッテリー送風手段を備え、
前記制御手段は、前記目標温度に応じて前記バッテリー送風手段の送風量を制御することを特徴とする車両用空調装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の車両用空調装置において、
前記制御手段は、前記車載バッテリーの制御装置から急速冷却要求があったときは、前記第1熱交換手段および前記第2熱交換手段の吹き出し風温度が凍結しない下限温度となるように制御することを特徴とする車両用空調装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の車両用空調装置において、
車室外空気温度を検出する外気温検出手段を備え、
前記制御手段は、前記コンプレッサーが停止されたときは、前記第2熱交換手段の吹き出し風温度が前記外気温検出手段の検出温度より低くなるように、前記流量調節手段により前記第2熱交換手段へ流入する冷媒流量を調節することを特徴とする車両用空調装置。
【請求項6】
請求項5に記載の車両用空調装置において、
前記第2熱交換手段を介して前記車載バッテリーへ送風するバッテリー送風手段を備え、
前記制御手段は、前記外気温検出手段の検出温度に応じて前記バッテリー送風手段の送風量を制御することを特徴とする車両用空調装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2009−35153(P2009−35153A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−201604(P2007−201604)
【出願日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】