説明

車両用空調装置

【課題】大型化することなく空調性能を向上することができる車両用空調装置を提供する。
【解決手段】第1および第2のペルチェユニット17、18に冷却水を供給するとともに放熱器19と接続された冷却水路20と、第1および第2のペルチェユニットに加える電圧の極性および大きさを制御するエアコンECU14とを備えた車両用空調装置10であって、第1および第2のペルチェユニットは、水冷用熱交換器と、空調用空気と熱交換を行う空冷用熱交換器と、を有し、第1のペルチェユニットは、空調用空気を車室内に供給する供給経路に設置され、第2のペルチェユニットは、第1のペルチェユニットよりも下流側の供給経路に設置され、冷却水路は、放熱器を通過した冷却水が第1のペルチェユニットの水冷用熱交換器を通過した後に、第2のペルチェユニットを通過するよう放熱器、第1のペルチェユニットおよび第2のペルチェユニットを接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用空調装置に関し、特に、ペルチェユニットを備える車両用空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両に搭載される空調装置においては、熱電素子を備えたユニット(以下、ペルチェユニットという)により空調用空気を加熱および冷却するものがある。
【0003】
この種の車両用空調装置として、並列に設置される二つのペルチェユニットを備え、一方のペルチェユニットで空調用空気を加熱し、もう一方のペルチェユニットで空調用空気を冷却するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
この特許文献1に記載された従来の車両用空調装置は、空調用空気を加熱するペルチェユニットおよび空調用空気を冷却するペルチェユニットを暖房用ダクトおよび冷房用ダクトにそれぞれ備え、暖房用ダクトおよび冷房用ダクトの吹出口および排気口の開閉状態を切換えることにより車室内に加熱された空気あるいは冷却された空気を供給するようになっている。
【0005】
また、この特許文献1に記載された従来の車両用空調装置は、暖房用ダクトと冷房用ダクトとの間に混合ダンパを備えており、この混合ダンパを開状態に移行し、加熱された空気と冷却により除湿された空気とを混合することにより、車室内に除湿され温度調節された空気を供給するようになっていた。
【0006】
また、ペルチェユニットに印加する電圧の極性を切換えることにより、空調用空気を加熱あるいは冷却するものが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0007】
この特許文献2に記載された従来の車両用空調装置は、ペルチェ素子と、ペルチェ素子の一方の面に接した水冷式熱交換器と、ペルチェ素子の他方の面に接した空冷式熱交換器とによって構成される第1および第2のペルチェユニットと、ラジエータおよび第1のペルチェユニットを接続する第1の循環水路と、廃熱回収器および第2のペルチェユニットを接続する第2の循環水路と、を備えている。また、第1の循環水路および第2の循環水路は、第1および第2のペルチェユニットの上流側および下流側においてバルブを介して互いに接続されるとともに、各循環水路には、それぞれポンプが設置されていた。この構成により、空調装置は、暖房時において、内燃機関の廃熱により加熱された循環水をバルブを介して第1および第2の循環水路に循環させ、第1および第2のペルチェユニットに供給することにより、内燃機関の廃熱を利用するようになっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平8−200877号公報
【特許文献2】特開平10−35268号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上述のような特許文献1に記載の従来の車両用空調装置にあっては、二つのペルチェユニットのいずれにも空冷を行うための送風機を設置する必要があった。そのため、装置が大型化し、車両への搭載が難しくなるという問題が生じていた。さらに、車室内に除湿された空気を供給する場合には、空調用空気は、冷却により除湿された空気と、加熱により除湿されていない空気とを混合させて車室内に供給するため、除湿性能が十分に得られないという問題があった。
【0010】
また、上述のような特許文献2に記載の従来の車両用空調装置にあっては、空調用空気を加熱する際には、内燃機関の廃熱により循環水の温度を上昇させる必要があった。そのため、内燃機関を搭載していない車両や、走行条件に応じて内燃機関の駆動が停止するハイブリッド車両においては、加熱性能が十分に得られないという問題があった。また、二つのペルチェユニットに二つの循環水路をそれぞれ接続する必要があるとともに、それぞれの循環水路にポンプが配置されているため、装置が大型化するという問題があった。
【0011】
したがって、いずれに記載の車両用空調装置にあっても、装置を大型化することなく空調性能を向上することができないという問題があった。
【0012】
本発明は、このような問題を解決するためになされたもので、大型化することなく空調性能を向上することができる車両用空調装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る車両用空調装置は、上記目的達成のため、(1)ペルチェ素子を有し、前記ペルチェ素子に加える電圧の極性に応じて車両の外部から車室内に供給される空調用空気を加熱あるいは冷却可能な第1のペルチェユニットおよび第2のペルチェユニットと、前記第1のペルチェユニットおよび前記第2のペルチェユニットに冷却水を供給するとともに、前記冷却水と前記車両の外部との間で熱交換を行う放熱器と接続された冷却水路と、前記第1のペルチェユニットおよび前記第2のペルチェユニットのペルチェ素子に加える電圧の極性および大きさを制御する制御手段と、を備えた車両用空調装置であって、前記第1のペルチェユニットおよび前記第2のペルチェユニットは、前記冷却水と熱交換を行う水冷用熱交換器と、前記空調用空気と熱交換を行う空冷用熱交換器と、をそれぞれ有し、前記水冷用熱交換器および前記空冷用熱交換器は、前記ペルチェ素子を挟むよう設置され、前記第1のペルチェユニットは、前記車両の外部から吸入された空調用空気を車室内に供給する供給経路に設置され、前記第2のペルチェユニットは、前記第1のペルチェユニットよりも下流側の前記供給経路に設置され、前記冷却水路は、前記放熱器を通過した冷却水が前記第1のペルチェユニットの水冷用熱交換器を通過した後に、前記第2のペルチェユニットの水冷用熱交換器を通過するよう前記放熱器、前記第1のペルチェユニットおよび前記第2のペルチェユニットを接続することを特徴とする。
【0014】
この構成により、第1のペルチェユニットにおいて冷却されることにより除湿された空調用空気を第2のペルチェユニットにより加熱して車室内に供給することができるので、車室内の除湿を行う場合には、車室内に供給される空調用空気の温度にかかわらず、除湿された空調用空気を供給することができる。また、内燃機関の廃熱を利用しないので、内燃機関を備えない車両および走行状況に応じて内燃機関の駆動が停止する車両に搭載する場合においても、空調用空気を加熱することができるとともに、一方のペルチェユニットにより加熱された冷却水が他方のペルチェユニットに供給されるので、冷却水路および冷却水路に設置されるポンプを複数用いることなく空調用空気に対する加熱度合いを高めることが可能となる。結果として、装置を大型化することなく空調性能を向上することができる。
【0015】
また、上記(1)に記載の車両用空調装置において、(2)前記車両は、内燃機関と、前記内燃機関を冷却するエンジン冷却水と前記車両の外部との間で熱交換を行うラジエータと、前記エンジン冷却水と前記空調用空気との間で熱交換を行う車室内用熱交換器と、前記内燃機関、前記ラジエータおよび前記車室内用熱交換器を接続し、前記内燃機関を通過したエンジン冷却水を前記車室内用熱交換器に供給するエンジン冷却水用循環水路と、を備え、前記車室内用熱交換器は、前記第2のペルチェユニットよりも下流側の前記供給経路に設置されることを特徴とする。
【0016】
この構成により、第1および第2のペルチェユニットに加え、内燃機関により駆動する車両において既存の車室内用熱交換器を用いて空調用空気を加熱することができるので、装置を大型化することなく暖房性能を向上することが可能となる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、大型化することなく空調性能を向上することができる車両用空調装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る車両用空調装置を示す概略構成図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係る空調ユニットを示す概略構成図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係るペルチェユニットを示す概略構成図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態に係るコア部を示す概略構成図である。
【図5】図4のA−A断面図である。
【図6】本発明の第1の実施の形態に係るコア部の拡大図である。
【図7】本発明の第1の実施の形態に係る車両用空調装置の動作モードを示す図である。
【図8】本発明の第2の実施の形態に係る車両用空調装置を示す概略構成図である。
【図9】本発明の第2の実施の形態に係る空調ユニットを示す概略構成図である。
【図10】本発明の第2の実施の形態に係る車両用空調装置の動作モードを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0020】
(第1の実施の形態)
本発明の第1の実施の形態に係る車両用空調装置を図1ないし図7を参照して説明する。なお、本実施の形態においては、本発明に係る車両用空調装置をエンジンおよびモータジェネレータにより駆動可能なハイブリッド車両に搭載する場合について説明する。
【0021】
車両用空調装置10は、第1ペルチェユニット17と、第2ペルチェユニット18と、電圧コントロールユニット12と、室外放熱器19と、冷却水路20と、ウォーターポンプ24と、エアコンECU14と、を備えている。
【0022】
第1ペルチェユニット17および第2ペルチェユニット18は、ペルチェ素子と冷却水および空調用空気との間で熱交換を行うようになっている。この第1ペルチェユニット17および第2ペルチェユニット18は、電圧コントロールユニット12と接続される入力端子をそれぞれ有している。これらの入力端子は、後述するペルチェ素子の電極と接続されており、入力端子に印加される電圧、すなわちペルチェ素子の電極に印加される電圧の極性に応じて空調用空気の加熱および冷却を行うようになっている。第1ペルチェユニット17および第2ペルチェユニット18の構造については、後に詳細に説明する。
【0023】
冷却水路20は、ウォーターポンプ24、室外放熱器19、第1ペルチェユニット17および第2ペルチェユニット18を接続しており、ウォーターポンプ24により吐出された冷却水を、室外放熱器19、第1ペルチェユニット17、第2ペルチェユニット18の順に供給するようになっている。
【0024】
電圧コントロールユニット12は、エアコンECU14から入力される信号に応じて第1ペルチェユニット17および第2ペルチェユニット18にそれぞれ電圧を印加するようになっている。
【0025】
エアコンECU14は、双方向性バスを介して互いに接続されているCPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、入力ポート、および出力ポート等を備えたマイクロコンピュータによって構成されている。CPUは、RAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより、車両用空調装置10、すなわちエアコンの出力制御などを実行するようになっている。
【0026】
また、エアコンECU14は、後述する各センサから入力される信号に基づいて、第1ペルチェユニット17および第2ペルチェユニット18のペルチェ素子に印加される電圧の大きさおよび極性が調節されるよう電圧コントロールユニット12を制御するようになっている。なお、本実施の形態に係るエアコンECU14は、後述するように、本発明に係る制御手段を構成する。
【0027】
室外放熱器19は、電動ファン22により空冷されるようになっている。ここで、室外放熱器19が車両進行方向に対してラジエータ21の前方に位置する場合には、電動ファン22は、図1に示すようにラジエータ21を冷却するためのファンにより構成されることとなる。
【0028】
ウォーターポンプ24は、図示しないモータジェネレータとの間で電力の送受を行う走行用バッテリーと接続されており、この走行用バッテリーから供給される電力により駆動する公知の電動ポンプにより構成されている。なお、本実施の形態に係る車両用空調装置10がエンジンにより駆動する車両に搭載される場合には、ウォーターポンプ24は補機バッテリーから電力を取得するようにしてもよい。
【0029】
図2に示すように、本実施の形態に係る車両用空調装置10(図1参照)を構成する第1ペルチェユニット17および第2ペルチェユニット18は、車室内に空調用空気を供給するための空調ユニット11に組み込まれるようになっている。
【0030】
空調ユニット11は、車室内に空調用空気を供給するための供給経路としての空調ダクト37を備えている。空調ダクト37の上流側には、車両の外部から空気を吸入するための外気吸入口38および車室内の空気を吸入し循環させるための内気吸入口39が形成されている。
【0031】
外気吸入口38および内気吸入口39の下流側には、内外気切換えダンパ40が設置されている。本実施の形態においては、内外気切換えダンパ40は、エアコンECU14により制御される内外気切換えダンパ用モータ57によって可動するようになっている。エアコンECU14は、後述する外気温センサ36や車室内の温度を検出する車室内温度センサ69などから信号を入力すると、予めROMに記憶されている内外気切換えマップを参照することにより外気吸入口38から外気を吸入する外気吸入モードと内気吸入口39から内気を吸入する内気吸入モードとを切換えるようになっている。なお、エアコンECU14は、マニュアルモードにおいては、コントロールパネル56に設置されたスイッチが操作者により選択されることにより、内外気切換えダンパ用モータ57を駆動し内外気切換えダンパ40の状態を移行するようになっている。
【0032】
外気吸入口38の近傍には、外気温センサ36が設置されている。内外気切換えダンパ40の下流側には、ブロア41が設置されている。ブロア41は、空調ダクト37と一体に形成されているスクロールケーシング42と、ブロアモータ43と、ブロアモータ43により回転駆動される遠心式ファン44と、によって構成されている。
【0033】
遠心式ファン44は、ブロアモータ43に供給される制御電圧の電圧値に応じた回転速度で回転する。したがって、遠心式ファン44により車室内に供給される空調用空気の送風量は、ブロアモータ43に供給される制御電圧によって制御されるようになっている。
【0034】
エアコンECU14は、上述した各センサから信号を取得すると、ROMに予め記憶されているブロアモータ供給電圧マップを参照することにより、ブロアモータ43に供給する制御電圧を設定するようになっている。なお、マニュアルモードにおいては、エアコンECU14は、コントロールパネル56に設置され操作者が風量を選択するための風量設定スイッチの設定位置に応じて、ブロアモータ43に供給する制御電圧を設定するようになっている。
【0035】
空調ダクト37におけるブロア41の下流側には、第1ペルチェユニット17が設置されている。この第1ペルチェユニット17は、空調ダクト37の空気通路の全面を塞ぐように配置されており、印加される電圧の極性に応じて通過する空調用空気を加熱あるいは冷却するようになっている。さらに、空調ダクト37における第1ペルチェユニット17の下流側には、第2ペルチェユニット18が設置されている。この第2ペルチェユニット18は、空調ダクト37の空気通路の全面を塞ぐように配置されており、印加される電圧の極性に応じて、第1ペルチェユニット17を通過した空調用空気を加熱あるいは冷却するようになっている。
【0036】
空調ダクト37における第2ペルチェユニット18の下流側には、車両のフロント窓ガラスの内面に空調用空気を吹出すためのフロントデフロスタ吹出口48と、車両の運転者および助手席搭乗者の足元に空調用空気を吹出すための足元吹出口50と、車両の運転者および助手席搭乗者の頭部や胸部に向けて空調用空気を吹出すためのフェイス吹出口51とが形成されている。フェイス吹出口51は、フロントインストルメントパネルに配置されたセンタレジスタおよびサイドレジスタによって構成されている。
【0037】
フロントデフロスタ吹出口48、足元吹出口50およびフェイス吹出口51の上流側には、それぞれの吹出口の開閉状態を切換えるための切換えダンパ52、53、54が設置されている。切換えダンパ52、53、54は、エアコンECU14により制御される吹出口切換えダンパ用モータ59により駆動されるようになっており、エアコンECU14は、後述する各センサから信号を入力すると、これらの信号が表す値と切換えダンパ52、53、54の開度とが対応付けられた吹出口切換えマップを参照し、吹出口切換えダンパ用モータ59を駆動して切換えダンパ52、53、54の位置を切換えるようになっている。吹出口切換えマップは、ROMに予め記憶されている。
【0038】
エアコンECU14は、電動ファン22、ウォーターポンプ24、温度センサ34、コントロールパネル56、内外気切換えダンパ用モータ57、車室内温度センサ69および吹出し口切換えダンパ用モータ59と接続されている。
【0039】
温度センサ34は、空調ダクト37において、第2ペルチェユニット18を通過した直後の空調用空気の温度を検出し、この温度を表す信号をエアコンECU14に出力するようになっている。
【0040】
第1ペルチェユニット17および第2ペルチェユニット18(以下、特に第1ペルチェユニット17および第2ペルチェユニット18を区別しない場合には、第1ペルチェユニット17を例に説明する)は、図3に示すように、ペルチェ素子28(図4参照)と空調用空気との間およびペルチェ素子28と冷却水との間でそれぞれ熱交換を行うためのコア部29と、冷却水路20(図1参照)から流入口31を介して冷却水を取得しコア部29に供給するためのアッパータンク30と、コア部29を通過した取得した冷却水を流出口33を介して冷却水路20に流出するためのロアタンク32とを備えている。
【0041】
コア部29は、図4に示すように、複数のペルチェ素子28、チューブ64およびフィン66により構成されており、複数のペルチェ素子28は、長手方向が互いに平行となるよう配置されている。
【0042】
チューブ64は、本発明に係る水冷用熱交換器を構成しており、チューブ64の長手方向の両端部は、アッパータンク30(図3参照)およびロアタンク32にそれぞれ挿通されるようになっている。
【0043】
ペルチェ素子28、チューブ64およびフィン66のA−A線における断面図は、図5に示されるように、水冷側電極58と、この水冷側電極58と対向配置される空冷側電極60と、水冷側電極58および空冷側電極60の間に介装される複数のn型半導体層67およびp型半導体層68とによって構成されており、長手方向の両端部が、それぞれアッパータンク30(図3参照)およびロアタンク32(図3参照)の近傍に位置するよう配置されている。
【0044】
隣り合うペルチェ素子28は、水冷側電極58あるいは空冷側電極60が対向するように配置されている。チューブ64は、水冷側電極58が対向して隣り合う2つのペルチェ素子28の間に配置され、それぞれの水冷側電極58と接着層63により接着されるようになっている。同様に、フィン66は、空冷側電極60が対向して隣り合う2つのペルチェ素子28の間に配置され、それぞれの空冷側電極60と接着されるようになっている。
【0045】
ペルチェ素子28において、複数のn型半導体層67およびp型半導体層68のうち、長手方向に隣り合う一組のn型半導体層67およびp型半導体層68は、それぞれの一方端が同一の空冷側電極60に並べて接続される。また、このn型半導体層67およびp型半導体層68は、それぞれの他方端が互いに絶縁された水冷側電極58に接続される。したがって、水冷側電極58、n型半導体層67、空冷側電極60、p型半導体層68および水冷側電極58は、電気的に直列接続となる構造を有している。ここで、水冷側電極58にプラス電圧が印加されると、空冷側電極60が冷却され、水冷側電極58が加熱されるようになっている。さらに、このp型半導体層68は、長手方向において上記のn型半導体層67と反対側に位置するn型半導体層67とも組を形成するようになっており、この組においては、p型半導体層68とn型半導体層67とは同一の水冷側電極58に並べて接続されるとともに、他方端が互いに絶縁された空冷側電極60に接続される。この場合においても、空冷側電極60、p型半導体層68、水冷側電極58、n型半導体層67および空冷側電極60は、電気的に直列接続となる構造を有している。
【0046】
図6に示すように、ペルチェ素子28は、第1ペルチェユニット17に形成された図示しない入力端子を介して電圧コントロールユニット12(図1参照)と接続されており、電圧コントロールユニット12から印加される電圧の極性に応じて、水冷側電極58および空冷側電極60のうちいずれか一方の電極が加熱され、もう一方の電極が冷却されるようになっている。本実施の形態においては、ペルチェ素子28は、電圧コントロールユニット12から第1ペルチェユニット17の入力端子にプラス電圧が印加された場合に、空冷側電極60が冷却され、水冷側電極58が加熱されるようになっている。したがって、第1ペルチェユニット17を通過する空調用空気は、空冷側電極60により冷却されたフィン66に熱を吸収され、冷却されるようになっている。
【0047】
一方、ペルチェ素子28は、電圧コントロールユニット12からマイナス電圧を印加された場合には、空冷側電極60が加熱され、水冷側電極58が冷却されるようになっている。したがって、第1ペルチェユニット17を通過する空調用空気は、空冷側電極60により加熱されたフィン66から熱を取得し、加熱されるようになっている。
【0048】
室内用熱交換器を構成するフィン66は、ペルチェ素子28の空冷側電極60に絶縁膜61および接着層62を介して設けられ、ペルチェ素子28およびチューブ64の外部を流れる空気とペルチェ素子28との熱交換を促進させるようになっている。
【0049】
このフィン66は、例えば、空気流れ方向での断面形状が、波形状のコルゲートフィンにより構成されており、絶縁膜61に接着されている。接着層62は、ろう付けなど公知の接着方法において使用される接着剤により形成される。また、フィン66は、ペルチェ素子28と空気との熱交換効率を高めるための図示しないルーバおよびスリットが表面に形成されている。なお、フィン66は、金属帯板をプレス加工したプレートフィンなどにより構成されていてもよい。
【0050】
チューブ64は、例えば、金属帯板を順次折り曲げて形成した扁平チューブ、金属を押出成形した多孔扁平チューブ、金属薄板をプレス加工して最中合わせした積層チューブあるいは金属パイプなどにより構成されている。
【0051】
図1および図2に戻り、車両用空調装置10を構成するエアコンECU14は、コントロールパネル56からエアコンの駆動指示を表す信号が入力されると、ウォーターポンプ24および電動ファン22を駆動するとともに、第1ペルチェユニット17および第2ペルチェユニット18に印加される電圧の極性および大きさを選択し、この選択された電圧が第1ペルチェユニット17および第2ペルチェユニット18に印加されるよう、電圧コントロールユニット12を制御するようになっている。電圧の極性および大きさは、以下に示す動作モードおよび各センサから入力される信号が表す情報と予め対応付けられており、電圧値マップとして予めROMに記憶されている。したがって、本実施の形態に係るエアコンECU14は、本発明に係る制御手段を構成する。
【0052】
以上のような構成に基づく、本実施の形態に係る車両用空調装置の動作について図1ないし図7を参照して説明する。
【0053】
エアコンの駆動指示は、図7に示すように、空調用空気の冷却度合いを最大にする冷房MAXモード、車室内の温度調節をする温度調節モード、空調用空気の加熱度合いを最大にする暖房MAXモードおよび車室内の除湿を行うための除湿モードのうちのいずれかの動作モードを表すようになっている。エアコンECU14は、コントロールパネル56から駆動指示を取得すると、駆動指示が表す動作モードに応じて以下の制御を実行する。
【0054】
エアコンECU14は、コントロールパネル56から冷房MAXを表す信号が入力された場合には、第1ペルチェユニット17および第2ペルチェユニット18にプラス電圧が印加されるよう電圧コントロールユニット12を制御する。
【0055】
また、エアコンECU14は、コントロールパネル56から温度調節モードを表す信号が入力された場合には、第1ペルチェユニット17にプラス電圧を印加するとともに、第2ペルチェユニット18にマイナス電圧を印加するようになっている。この場合、エアコンECU14は、第2ペルチェユニット18に印加されるマイナス電圧の電圧値を調節することにより、車室内に供給される空調用空気の温度を調節する。したがって、エアコンECU14は、外気温センサ36や車室内温度センサ69から信号を入力すると、ROMに記憶された電圧値マップを参照し、第2ペルチェユニット18に印加されるマイナス電圧の電圧値の絶対値を高めることにより空調用空気の温度を高めたり、第2ペルチェユニット18に印加されるマイナス電圧の電圧値の絶対値を下げることにより空調用空気の温度を低くする。
【0056】
このとき、冷却水は、第1ペルチェユニット17において、加熱された水冷側電極58を冷却するので、空冷側電極60が0℃近傍の低温に保持される。したがって、空調用空気は、第1ペルチェユニット17を通過することにより十分冷却されるので、第2ペルチェユニット18において適宜加熱することにより、車室内に供給される空調用空気の温度幅を広げることが可能となる。また、第2ペルチェユニット18において空調用空気を加熱する際には、第1ペルチェユニット17を通過して加熱された冷却水が第2ペルチェユニット18に流入し、第2ペルチェユニット18の水冷側電極58を温めることになる。これにより、空冷側電極60の温度も高くなるので、エアコンECU14は、第2ペルチェユニット18に印加するマイナス電圧を低下させることができ、結果として、消費電力を低下することが可能となる。
【0057】
上記の温度調節モードにおける熱収支は、以下のように表される。
Q2' + P1 = Q2 (1)
Q3' = Q3 + P2 (2)
Q1 = Q2 + Q3 (3)
ここで、Q1は、室外放熱器19において冷却水が放熱する熱量(kW)、Q2は、第1ペルチェユニット17において冷却水が吸熱する熱量(kW)、Q3は、第2ペルチェユニット18において冷却水が放熱する熱量(kW)を表している。
【0058】
また、Q2'は、第1ペルチェユニット17において空調用空気が放熱する熱量(kW)、Q3'は、第2ペルチェユニット18において空調用空気が吸熱する熱量(kW)を表している。
【0059】
また、P1は、第1ペルチェユニット17において電圧コントロールユニット12から供給され消費される消費電力(kW)、P2は、第2ペルチェユニット18において電圧コントロールユニット12から供給され消費される消費電力(kW)を表している。
【0060】
また、エアコンECU14は、コントロールパネル56から暖房MAXモードを表す信号が入力された場合には、第1ペルチェユニット17および第2ペルチェユニット18にマイナス電圧が印加されるよう電圧コントロールユニット12を制御する。
【0061】
また、エアコンECU14は、除湿モードを表す信号が入力された場合には、第1ペルチェユニット17にプラス電圧を印加するとともに、第2ペルチェユニット18にマイナス電圧を印加する。この場合、エアコンECU14は、第1ペルチェユニット17に印加されるプラス電圧の電圧値を調節することにより、車室内に供給される空調用空気の温度を調節するようになっており、空調用空気の温度を高める場合には、第1ペルチェユニット17に印加されるプラス電圧の電圧値の絶対値を下げ、空調用空気の温度を低くする場合には、第1ペルチェユニット17に印加されるプラス電圧の電圧値の絶対値を高めるようになっている。この除湿モードにおいても、熱収支は上記の式(1)ないし(3)により表される。
【0062】
以上のように、本発明の第1の実施の形態に係る車両用空調装置においては、第1ペルチェユニット17において冷却されることにより除湿された空調用空気を第2ペルチェユニット18により加熱して車室内に供給することができるので、車室内の除湿を行う場合には、車室内に供給される空調用空気の温度にかかわらず、除湿された空調用空気を供給することができる。また、エンジンの廃熱を利用しないので、エンジンを備えない車両および走行状況に応じてエンジンの駆動が停止する車両に搭載する場合においても、空調用空気を加熱することができるとともに、一方のペルチェユニットにより加熱された冷却水が他方のペルチェユニットに供給されるので、冷却水路および冷却水路に設置されるウォーターポンプを複数用いることなく空調用空気に対する加熱度合いを高めることが可能となる。結果として、装置を大型化することなく空調性能を向上することができる。
【0063】
なお、以上の説明においては、車両用空調装置をエンジンおよびモータジェネレータにより駆動するハイブリッド車両に設置する場合について説明したが、これに限定されず、車両用空調装置をモータジェネレータにより駆動する電気自動車に設置するようにしてもよい。
【0064】
なお、上述した第1の実施の形態においては、空調用空気の温度調節を2つのペルチェユニットにより行う場合について説明したが、これに限定されず、次に説明する第2の実施の形態のように、空調用空気の温度調節を2つのペルチェユニットおよびヒータコアにより行うようにしてもよい。
【0065】
(第2の実施の形態)
本発明の第2の実施の形態に係る車両用空調装置について、図8および図10を参照して説明する。
【0066】
なお、第2の実施の形態に係る車両用空調装置の構成は、上述の第1の実施の形態に係る車両用空調装置の構成とほぼ同様であり、各構成要素については、図1ないし図6に示した第1の実施の形態と同様の符号を用いて説明し、特に相違点についてのみ詳述する。
【0067】
本実施の形態に係る車両用空調装置80は、内燃機関としてのエンジンにより駆動する車両に搭載されるようになっており、図8に示すように、電圧コントロールユニット12と、第1ペルチェユニット17と、第2ペルチェユニット18と、室外放熱器19と、冷却水路20と、ウォーターポンプ24と、エアコンECU88と、を備えている。
【0068】
また、車両用空調装置80は、エンジン冷却水と車両外部の空気との間で熱交換を行うラジエータ21と、エンジン冷却水と空調用空気との間で熱交換を行うヒータコア35と、を備えている。ここで、本実施の形態に係るヒータコア35は、本発明に係る車室内用熱交換器を構成する。
【0069】
ラジエータ21、ヒータコア35およびエンジンは、エンジン冷却水用循環水路26により接続されている。
【0070】
図9に示すように、本実施の形態に係る車両用空調装置80(図8参照)を構成する第1ペルチェユニット17、第2ペルチェユニット18およびヒータコア35は、車室内に空調用空気を供給するための空調ユニット81に組み込まれるようになっている。
【0071】
空調ユニット81は、車室内に空調用空気を供給するための供給経路としての空調ダクト37を備えている。空調ダクト37の上流側には、車両の外部から空気を吸入するための外気吸入口38および車室内の空気を吸入し循環させるための内気吸入口39が形成されている。
【0072】
エアコンECU88は、後述する各センサから取得する信号に基づいて、ブロアモータ43に供給する制御電圧を設定するようになっている。また、マニュアルモードにおいては、コントロールパネル56に設置されたスイッチが操作者により選択されることにより、ブロアモータ43に供給する制御電圧を設定するようになっている。
【0073】
空調ダクト37におけるブロア41の下流側には、第1ペルチェユニット17および第2ペルチェユニット18が設置されている。第1ペルチェユニット17および第2ペルチェユニット18は、空調ダクト37の空気通路の全面を塞ぐように配置されており、通過する空調用空気を冷却あるいは加熱するようになっている。
【0074】
空調ダクト37における第2ペルチェユニット18の下流側には、温水式ヒータとしてのヒータコア35が設置されている。空調用空気は、ヒータコア35を通過すると、エンジンにより加熱されたエンジン冷却水から熱を取得し、加熱されるようになっている。
【0075】
このヒータコア35の上流側には、ヒータコア35を通過する空気流量を調節するためのエアミックスダンパ46が設置されている。エアミックスダンパ46は、エアコンECU88により制御されるエアミックスダンパ用モータ70によって可動するようになっている。エアコンECU88は、外気温センサ36や車室内温度センサ69などの各センサから入力される信号に応じて、ヒータコア35を通過する空気流量が最小になるマックスクール(MAXCOOL)状態に対応する位置と、ヒータコア35を通過する空気流量が最大になるマックスホット(MAXHOT)状態に対応する位置との間で連続的にエアミックスダンパ46の位置を調節するようになっている。
【0076】
また、エアコンECU88は、電動ファン22、ウォーターポンプ24、温度センサ34、外気温センサ36、コントロールパネル56、内外気切換えダンパ用モータ57、エアミックスダンパ用モータ70、吹出し口切換えダンパ用モータ59および車室内温度センサ69と接続されている。
【0077】
温度センサ34は、空調ダクト37において、第2ペルチェユニット18を通過した直後の空調用空気の温度を検出し、検出した温度を表す信号をエアコンECU88に出力するようになっている。
【0078】
車両用空調装置80を構成するエアコンECU88は、コントロールパネル56からエアコンの駆動指示を表す信号が入力されると、ウォーターポンプ24および電動ファン22を駆動するとともに、第1ペルチェユニット17および第2ペルチェユニット18に印加される電圧の極性および大きさを選択し、この選択された電圧が第1ペルチェユニット17および第2ペルチェユニット18に印加されるよう、電圧コントロールユニット12を制御するようになっている。電圧の極性および大きさは、以下に示す動作モードおよび各センサから入力される信号が表す情報と予め対応付けられており、電圧値マップとして予めROMに記憶されている。また、後述するように、エアコンの駆動指示に応じて、エアミックスダンパ46の位置を調節するようになっている。したがって、本実施の形態に係るエアコンECU88は、本発明に係る制御手段を構成する。
【0079】
以上のような構成に基づく、本実施の形態に係る車両用空調装置の動作について図8ないし図10を参照して説明する。
【0080】
エアコンの駆動指示は、図10に示すように、空調用空気の冷却度合いを最大にする冷房MAXモード、車室内の温度調節をする温度調節モード、空調用空気の加熱度合いを最大にする暖房MAXモードおよび車室内の除湿を行うための除湿モードのうちのいずれかの動作モードを表すようになっている。エアコンECU88は、コントロールパネル56から入力された駆動指示を取得すると、駆動指示が表す動作モードに応じて以下の制御を実行する。
【0081】
エアコンECU88は、コントロールパネル56から冷房MAXを表す信号が入力された場合には、第1ペルチェユニット17および第2ペルチェユニット18にプラス電圧が印加されるよう電圧コントロールユニット12を制御する。また、エアコンECU88は、エアミックスダンパ用モータ70を制御してエアミックスダンパ46を全閉にし、空調用空気がヒータコア35を通過することを阻止する。
【0082】
また、エアコンECU88は、コントロールパネル56から温度調節モードを表す信号が入力された場合には、第1ペルチェユニット17および第2ペルチェユニット18にプラス電圧を印加するようになっている。また、エアミックスダンパ46の開度を調節することにより、エアミックスダンパ46を通過する空調用空気の流量を変化させ、車室内に供給される空調用空気の温度を調節するようになっており、空調用空気の温度を高める場合には、エアミックスダンパ46の開度を大きくし、空調用空気の温度を下げる場合には、エアミックスダンパ46の開度を小さくするようエアミックスダンパ用モータ70を制御する。したがって、本実施の形態に係る車両用空調装置80は、2つのペルチェユニット17、18のいずれをも空調用空気の冷却に使用することができるので、2つのペルチェユニット17、18のうち一方のみを空調用空気の冷却に使用する場合と比較して、温度調節モードにおける空調用空気の温度範囲を拡大することが可能となる。
【0083】
また、エアコンECU88は、コントロールパネル56から暖房MAXモードを表す信号が入力された場合には、第1ペルチェユニット17および第2ペルチェユニット18にマイナス電圧が印加されるよう電圧コントロールユニット12を制御する。また、エアコンECU88は、空調用空気がヒータコア35を通過するよう、エアミックスダンパ46を全開にする。これにより、車両用空調装置80は、2つのペルチェユニットのみにより空調用空気を加熱する場合と比較して、空調用空気の加熱度合いを高めることが可能となる。
【0084】
また、エアコンECU88は、除湿モードを表す信号が入力された場合には、第1ペルチェユニット17にプラス電圧を印加するとともに、第2ペルチェユニット18にマイナス電圧を印加するようになっている。この場合、エアコンECU88は、第1ペルチェユニット17に印加されるプラス電圧の電圧値を調節することにより、車室内に供給される空調用空気の温度を調節するようになっており、空調用空気の温度を高める場合には、第1ペルチェユニット17に印加されるプラス電圧の電圧値の絶対値を下げ、空調用空気の温度を高める場合には、第1ペルチェユニット17に印加されるプラス電圧の電圧値の絶対値を低くするようになっている。また、エアコンECU88は、エアミックスダンパ46の開度を調節することにより、エアミックスダンパ46を通過する空調用空気の流量を変化させ、車室内に供給される空調用空気の温度を調節するようになっている。
【0085】
このとき、冷却水は、第1ペルチェユニット17において、加熱された水冷側電極58を冷却するので、空冷側電極60が0℃近傍の低温に保持される。したがって、空調用空気は、第1ペルチェユニット17を通過することにより十分冷却されるので、第2ペルチェユニット18において適宜加熱することにより、車室内に供給される空調用空気の温度幅を広げることが可能となる。また、第2ペルチェユニット18において空調用空気を加熱する際には、第1ペルチェユニット17を通過して加熱された冷却水が第2ペルチェユニット18に流入し、第2ペルチェユニット18の水冷側電極58を温めることになる。これにより、空冷側電極60の温度も高くなるので、エアコンECU14は、第2ペルチェユニット18に印加するマイナス電圧を低下させることができ、結果として、消費電力を低下することが可能となる。
【0086】
また、エアコンECU88は、エンジンの暖機時など、エンジン冷却水が十分に温まっていない場合には、第2ペルチェユニット18に印加するマイナス電圧の電圧値を高めておき、エンジン冷却水がエンジンにより加熱された場合には、エアミックスダンパ46の開度を高めるとともに第2ペルチェユニット18に印加するマイナス電圧の電圧値を低下させて空調用空気の温度を調節することにより、第2ペルチェユニット18における電力消費量を低下させ、車両の燃費を向上することが可能となる。
【0087】
以上のように、本発明の第2の実施の形態に係る車両用空調装置においては、第1および第2ペルチェユニット17、18に加え、エンジンにより駆動する車両において既存のヒータコア35を用いて空調用空気を加熱することができるので、装置を大型化することなく暖房性能を向上することが可能となる。
【0088】
以上のように、本発明に係る車両用空調装置は、大型化することなく空調性能を向上することができるという効果を奏するものであり、ペルチェユニットにより構成される車両用空調装置に有用である。
【符号の説明】
【0089】
10 車両用空調装置
11 空調ユニット
12 電圧コントロールユニット
14 エアコンECU(制御手段)
17 第1ペルチェユニット
18 第2ペルチェユニット
19 室外放熱器(放熱器)
20 冷却水路
21 ラジエータ
22 電動ファン
24 ウォーターポンプ
26 エンジン冷却水用循環水路
28 ペルチェ素子
29 コア部
30 アッパータンク
32 ロアタンク
35 ヒータコア(車室内用熱交換器)
37 空調ダクト
38 外気吸入口
40 内外気切換えダンパ
41 ブロア
58 水冷側電極
60 空冷側電極
61 絶縁膜
62 接着層
63 接着層
64 チューブ(水冷用熱交換器)
66 フィン(空冷用熱交換器)
67 n型半導体層
68 p型半導体層
69 車室内温度センサ
80 車両用空調装置
81 空調ユニット
88 エアコンECU(制御手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペルチェ素子を有し、前記ペルチェ素子に加える電圧の極性に応じて車両の外部から車室内に供給される空調用空気を加熱あるいは冷却可能な第1のペルチェユニットおよび第2のペルチェユニットと、
前記第1のペルチェユニットおよび前記第2のペルチェユニットに冷却水を供給するとともに、前記冷却水と前記車両の外部との間で熱交換を行う放熱器と接続された冷却水路と、
前記第1のペルチェユニットおよび前記第2のペルチェユニットのペルチェ素子に加える電圧の極性および大きさを制御する制御手段と、を備えた車両用空調装置であって、
前記第1のペルチェユニットおよび前記第2のペルチェユニットは、前記冷却水と熱交換を行う水冷用熱交換器と、前記空調用空気と熱交換を行う空冷用熱交換器と、をそれぞれ有し、
前記水冷用熱交換器および前記空冷用熱交換器は、前記ペルチェ素子を挟むよう設置され、
前記第1のペルチェユニットは、前記車両の外部から吸入された空調用空気を車室内に供給する供給経路に設置され、
前記第2のペルチェユニットは、前記第1のペルチェユニットよりも下流側の前記供給経路に設置され、
前記冷却水路は、前記放熱器を通過した冷却水が前記第1のペルチェユニットの水冷用熱交換器を通過した後に、前記第2のペルチェユニットの水冷用熱交換器を通過するよう前記放熱器、前記第1のペルチェユニットおよび前記第2のペルチェユニットを接続することを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】
前記車両は、内燃機関と、前記内燃機関を冷却するエンジン冷却水と前記車両の外部との間で熱交換を行うラジエータと、前記エンジン冷却水と前記空調用空気との間で熱交換を行う車室内用熱交換器と、前記内燃機関、前記ラジエータおよび前記車室内用熱交換器を接続し、前記内燃機関を通過したエンジン冷却水を前記車室内用熱交換器に供給するエンジン冷却水用循環水路と、を備え、
前記車室内用熱交換器は、前記第2のペルチェユニットよりも下流側の前記供給経路に設置されることを特徴とする請求項1に記載の車両用空調装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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