説明

車両用空調装置

【課題】熱交換器を収容するケーシングを大きく変更することなく寒冷地に適用できるようにしてコストを低減しながら、高い暖房能力を得ることができるようにする。
【解決手段】車両用空調装置1は、冷媒を圧縮するコンプレッサ100と、コンプレッサ100の冷媒吐出側に接続された熱交換器11と、熱交換器11の冷媒出口側に接続される熱交換器10と、熱交換器10の冷媒出口側に接続される減圧弁装置101と、減圧弁装置101の冷媒出口側及びコンプレッサ100の冷媒吸入側に接続され、減圧弁装置101から流出した冷媒を加熱する冷媒加熱器102と、熱交換器10、11を収容するケーシング3とを備えている。ケーシング3には、空気流路Rが形成されている。熱交換器10、11は空気流路R内に配設されている。熱交換器11は熱交換器10よりも空気流れ下流側に位置付けられている。熱交換器11には、熱交換器10よりも高温の冷媒が流れる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車等に搭載される車両用空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、この種の車両用空調装置は、冷却用及び加熱用熱交換器と、これら熱交換器を収容するケーシングとを備えている。ケーシングには、空調用空気をケーシング内に導入するための導入口と、ケーシング内で生成された調和空気を導出するための導出口と、導入口から導出口まで延びる空気流路が形成されており、空気流路に冷却用及び加熱用熱交換が配設されている。さらに、空気流路には、冷却用熱交換器を通過する空気量と、加熱用熱交換器を通過する空気量とを変更する温度調節ダンパが設けられている。温度調節ダンパの動作によって所望温度の調和空気が生成されて車室の各部に供給される。
【特許文献1】特開2008−62659号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、車両が使用される環境は様々であり、冷房が不要な寒冷地で使用される場合には、冷却用熱交換器が無駄なものとなるので冷却用熱交換器を省略した形状の寒冷地専用のケーシングを作製するのが好ましいが、専用品を作製するのはコストがかかるので、ケーシングは他地域用のものと共通化したいという要求がある。
【0004】
また、寒冷地では高い暖房能力が要求されるので、特許文献1のように1つの加熱用熱交換器を設けただけでは十分な暖房能力が得られないこともある。
【0005】
本発明は斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、熱交換器を収容するケーシングを大きく構造変更することなく寒冷地仕様及び他地域仕様にできるようにしてコストを低減しながら、寒冷地仕様時には高い暖房能力が得られるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明では、コンプレッサの吐出側に接続される第1熱交換器と、第1熱交換器の冷媒出口側に接続される第2熱交換器とをケーシングの空気流路に配設し、比較的高温の冷媒が流れる第1熱交換器を第2熱交換器の空気流れ下流側に位置付けるようにした。
【0007】
具体的には、第1の発明では、上記コンプレッサの冷媒吐出側に接続され、冷媒と外部空気とを熱交換させる第1熱交換器と、上記第1熱交換器の冷媒出口側に接続され、冷媒と外部空気とを熱交換させる第2熱交換器と、上記第2熱交換器の冷媒出口側に接続され、冷媒を減圧する減圧弁装置と、上記減圧弁装置の冷媒出口側及び上記コンプレッサの冷媒吸入側に接続され、上記減圧弁装置から流出した冷媒を加熱する冷媒加熱器と、上記第1及び第2熱交換器を収容するケーシングとを備え、上記ケーシングには、該ケーシング内に空気を導入するための導入口、該ケーシング内の空気を導出させるための導出口及び該導入口から該導出口まで延びる空気流路が形成され、上記第1及び第2熱交換器は上記空気流路内に配設され、上記第1熱交換器は上記第2熱交換器よりも空気流れ下流側に位置付けられている構成とする。
【0008】
この構成によれば、第1熱交換器にはコンプレッサから吐出された高温冷媒が流れることになり、第2熱交換器には、第1熱交換器を流れて温度が低下した冷媒が流れることになる。そして、冷媒の温度が高い第1熱交換器を空気流れ方向下流側に位置付けているので、第2熱交換器を通過して暖められた空気が第1熱交換器を通過する際に、より高温の冷媒と熱交換することになり、ケーシング内で高温の空気を効果的に生成することが可能になる。
【0009】
また、ケーシングには、第1及び第2熱交換器が配設されているので、それらを配設するためのスペースを利用すれば、第1及び第2熱交換器を従来例のような冷却用及び加熱用熱交換器に置き換えることが可能であり、ケーシングを寒冷地仕様と他地域仕様とで大きく構造変更せずに済む。
【0010】
第2の発明では、第1の発明において、ケーシングの空気流路には、第1熱交換器を流れる空気量と第2熱交換器を流れる空気量との少なくとも一方を変更する温度調節ダンパが配設されている構成とする。
【0011】
この構成によれば、温度調節ダンパを作動させて第1熱交換器に流れる空気量を減少させて第2熱交換器に流れる空気量を増加させると空気の温度が低下し、反対に、第1熱交換器に流れる空気量を増加させて第2熱交換器に流れる空気量を減少させると、空気の温度が上昇する。このように、ケーシングから導出される空気の温度を調節することが可能になる。尚、第1熱交換器を流れる空気量のみ変化させた場合や、第2熱交換器に流れる空気量のみを変化させた場合も、同様に温度調節が可能である。
【0012】
第3の発明では、第1または2の発明において、冷媒加熱器を制御する制御装置と、空調装置の運転開始予告情報を送出する運転開始予告情報送出装置とを備え、上記制御装置は、上記運転開始予告情報送出装置から送出される運転開始予告情報に基づいて、空調装置の運転が開始される所定時間前に上記冷媒加熱器を作動させる構成とする。
【0013】
この構成によれば、空調装置の運転が開始される前に冷媒を予め加熱することが可能になるので、暖房の即効性が得られる。
【0014】
第4の発明では、第1または2の発明において、冷媒加熱器を制御する制御装置と、車室外の気温を検出する外気温度検出部とを備え、上記制御装置は、上記外気温度検出部から出力される外気温度に基づいて、外気温度が所定値よりも低い場合に所定値以上の場合に比べて上記冷媒加熱器の加熱量を増大させる構成とする。
【0015】
この構成によれば、外気温度が低いときに高い暖房能力を得るようにしながら、外気温度が高い場合に冷媒の加熱量を減少させて無駄なエネルギ消費が抑制される。
【0016】
第5の発明では、第3または4の発明において、車両に搭載されたバッテリの残量を検出するバッテリ残量検出部を備え、冷媒加熱器は、上記バッテリに接続された電気式ヒーターで構成され、制御装置は、上記バッテリ残量検出部から出力されるバッテリ残量に基づいて、バッテリ残量が所定値よりも少ない場合に所定値以上の場合に比べて上記冷媒加熱器の加熱量を減少させる構成とする。
【0017】
この構成によれば、バッテリの残量が少ないときにはバッテリの消費量が抑制されるので、バッテリ上がり等のトラブルを回避することが可能になる。
【発明の効果】
【0018】
第1の発明によれば、コンプレッサの冷媒吐出側に接続される第1熱交換器と、第1熱交換器の冷媒出口側に接続される第2熱交換器とをケーシングの空気流路に配設し、比較的高温の冷媒が流れる第1熱交換器を第2熱交換器よりも空気流れ下流側に位置付けたので、高温の空気を効果的に生成でき、十分な暖房能力を得ることができる。また、ケーシングには、第1及び第2熱交換器の代わりに従来例のような冷却用及び加熱用熱交換器を配設することも可能になるので、仕向地に応じてケーシングを大きく構造変更せずに済み、コストを低減できる。
【0019】
第2の発明によれば、第1熱交換器を流れる空気量と第2熱交換器を流れる空気量との少なくとも一方を変更する温度調節ダンパをケーシングに配設したことで、より快適な暖房を実現できる。
【0020】
第3の発明によれば、空調装置の運転が開始される所定時間前に冷媒加熱器を作動させるようにしたので、暖房の即効性を得ることができ、乗員の快適性をより一層高めることができる。
【0021】
第4の発明によれば、外気温度に基づいて冷媒加熱器による加熱量を変更できるので、必要時には高い暖房能力を確保して快適性を高めながら、高い暖房能力が必要でない場合に無駄なエネルギの消費を抑制できる。
【0022】
第5の発明によれば、冷媒加熱器を電気式ヒーターとしてシンプルな構成とする場合には、バッテリ上がりを回避でき、車両の走行に支障をきたす虞れをなくすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0024】
尚、実施形態の説明では、説明の便宜を図るために、「前」とは車両の前側を、また、「後」とは車両の後側を、さらに、「左」とは車両の左側を、さらにまた、「右」とは車両の右側をそれぞれ表すこととしている。
【0025】
図1は、本発明の実施形態に係る車両用空調装置1を示し、この車両用空調装置1は、自動車の車室内に搭載される室内ユニットU1と、自動車の車室外に搭載される室外ユニットU2と、制御装置106と、始動タイマ107と、外気温センサ108と、バッテリ残量検出センサ109とを備えている。室内ユニットU1は、図示しないが自動車のインストルメントパネル内の左右方向中央部に配設されている。また、室外ユニットU2は、図示しないが主にエンジンルームに配設されている。
【0026】
上記車両用空調装置1は、冷却用熱交換器が不要な寒冷地において使用される寒冷地仕様である。
【0027】
図2に示すように、室内ユニットU1は、送風ファン5と、上流側熱交換器(第2熱交換器)10及び下流側熱交換器(第1熱交換器)11と、温度調節ダンパ27と、ロータリダンパ35及びデフベント切替ダンパ55と、ケーシング3とを備えている。図1に示すように、室外ユニットU2は、冷媒を圧縮するコンプレッサ100と、減圧弁装置101と、冷媒加熱器102と、アキュムレータ103とを備えている。上記上流側熱交換器10及び下流側熱交換器11と、コンプレッサ100と、減圧弁装置101と、冷媒加熱器102と、アキュムレータ103とは、配管104により環状に接続されており、上流側熱交換器10及び下流側熱交換器11と室外ユニットU2とでヒートポンプが構成されている。
【0028】
コンプレッサ100は、電動モーター100aで作動する圧縮機構100bを有し、吸入した冷媒を圧縮して吐出するように構成された周知のものであり、制御装置106により制御されるようになっている。また、このコンプレッサ100は、単位時間当たりの吐出量を変化させることができる可変容量型のものである。具体的には、電動モーター100aの回転数を変更するように構成されている。尚、圧縮機構100bが有する圧縮室(図示せず)の容積を変化させるようにしてもよい。
【0029】
下流側熱交換器11は、ヒートポンプの放熱器として機能するものである。下流側熱交換器11は、冷媒が流れるチューブと伝熱用フィン(共に図示せず)とを交互に積層してなるチューブアンドフィンタイプの熱交換器である。下流側熱交換器11の冷媒流入口(図示せず)が配管104を介してコンプレッサ100の冷媒吐出口(図示せず)に接続されており、コンプレッサ100から吐出された高温冷媒の全てが下流側熱交換器11に流入するようになっている。
【0030】
上流側熱交換器10も、下流側熱交換器11と同様にヒートポンプの放熱器として機能するものであり、チューブアンドフィンタイプの熱交換器である。上流側熱交換器10は下流側熱交換器11よりも大型である。具体的には、上流側熱交換器10のチューブ長さ及び幅寸法は下流側熱交換器11のチューブ長さ及び幅寸法よりもそれぞれ長く設定されている。上流側熱交換器10の冷媒流入口(図示せず)が配管104を介して下流側熱交換器11の冷媒流出口(図示せず)に接続されている。よって、下流側熱交換器11を流れる冷媒の温度は、上流側熱交換器10を流れる冷媒の温度よりも高くなる。
【0031】
減圧弁装置101は、周知の減圧弁を内蔵している。減圧弁装置101の冷媒流入口(図示せず)は上流側熱交換器10の冷媒流出口(図示せず)に接続されている。下流側熱交換器11及び上流側熱交換器10を順に流れて凝縮された冷媒は、減圧弁装置101を通過して減圧されて下流側へ流れるようになっている。
【0032】
冷媒加熱器102は、電熱線102aを絶縁した状態で金属パイプにより被覆してなる、いわゆるシーズヒータ(電気式ヒーター)で構成されている。配管104は、冷媒加熱器102の熱が冷媒に伝わるように取り廻されている。この冷媒加熱器102は、制御装置106により制御されるようになっている。
【0033】
アキュムレータ103は、冷媒を貯留するように構成された周知のものである。アキュムレータ103は、減圧弁装置101の冷媒流出口(図示せず)から延びる配管104の下流側に設けれられている。アキュムレータ103の冷媒流出口(図示せず)はコンプレッサ100の冷媒吸入口(図示せず)に接続されている。
【0034】
制御装置106には、始動タイマ107、外気温センサ108及びバッテリ残量検出センサ109が接続されている。制御装置106は、始動タイマ107、外気温センサ108及びバッテリ残量検出センサ109の出力信号に基づいて冷媒加熱器102のON/OFF切替、通電時間及び供給する電流値を制御するように構成されている。また、制御装置106は、コンプレッサ100のモーター100aの制御も行う。
【0035】
始動タイマ107は、乗員が空調装置1を作動させる時刻をセットすることができるように構成されている。制御装置106は、始動タイマ107の出力信号に基づいて、何分後に空調装置1を作動させる必要があるかを得ることができる。始動タイマ107が本発明の運転開始予告情報送出装置に相当する。
【0036】
外気温センサ108は、車室外の気温を検出する温度センサで構成されている。制御装置106は、外気温センサ108の出力信号に基づいて、車室外の気温を得ることができる。外気温センサ108は、本発明の外気温度検出部に相当する。
【0037】
バッテリ残量検出センサ109は、車両に搭載されているバッテリ110に接続されており、バッテリ110の残量を検出するためのものである。バッテリ残量検出センサ109は、具体的には、バッテリ110の電圧値に基づいてバッテリ残量を得るように構成されている。制御装置106は、バッテリ残量検出センサ109の出力信号に基づいて、バッテリ110の残量を得る。バッテリ残量検出センサ109は、本発明のバッテリ残量検出部に相当する。
【0038】
制御装置106は、始動タイマ107により空調装置1の作動開始時刻を得て、作動開始時刻になると空調装置1を作動させる。さらに、制御装置106は、作動開始時刻の所定時間前に冷媒加熱器102に電流を流して予熱を開始する。この所定時間とは、例えば、10分程度が好ましいが、これに限られるものではない。
【0039】
制御装置106は、外気温センサ108により車室外の気温を得て、この気温に基づいて冷媒加熱器102の加熱量を変更する。具体的には、車室外の気温が所定温度よりも低い場合には、所定温度以上の場合に比べて冷媒加熱器102に供給する電流値を大きくして加熱量を増大させる。所定温度とは、例えば、5℃程度に設定するのが好ましい。また、冷媒加熱器102による加熱量は、3段階以上の多段階に変更するようにしてもよい。例えば、閾値として5℃、0℃、−5℃の3つを設けておき、車室外の気温が5℃よりも低く、0℃以上の場合には、加熱量を最小に設定し、0℃よりも低く、−5℃以上のときには加熱量を中くらいに設定し、−5℃よりも低い場合には、加熱量を最大に設定する。また、車室外の気温に対し冷媒加熱器102の加熱量を連続的に変化させるようにしてもよい。
【0040】
制御装置106は、バッテリ残量検出センサ109によりバッテリ残量を得て、このバッテリ残量に基づいて冷媒加熱器102の加熱量を変更するように構成されている。具体的には、バッテリ残量が所定値よりも少ない場合には、所定値以上の場合に比べて冷媒加熱器102の加熱量を減少させる。所定値とは、エンジンの始動が可能な程度のバッテリ残量である。
【0041】
ケーシング3は、樹脂製の左側ケース構成部材(図示せず)及び右側ケース構成部材2(図2に示す)を組み合わせてなる。このケーシング3の上半部前側には、送風ファン5を収容するファンハウジング7が他の部分と一体に形成されている。送風ファン5からの空気は、ケーシング3内部の前端側を下方へ流れて、該ケーシング3の下半部に収容された上流側熱交換器10と、下流側熱交換器11とを通過した後、ケーシング3の後側に形成されたデフロスタ口12、ベント口13及びフット口14から車室に供給されるようになっている。
【0042】
上記ファンハウジング7は、左右方向に延びる中心線を有する円筒状をなし、このファンハウジング7の中央部分に、送風ファン5を構成するシロッコファンがその回転軸を左右方向に向けた状態で収容されている。ファンハウジング7の送風ファン5周りには、該送風ファン5から吹き出した空気の流れが集合する空気流出通路17が形成され、この空気流出通路17の下流端は、ファンハウジング7の下側で開口している。また、ファンハウジング7の左側壁には、上記送風ファン5を駆動するためのファンモーター5a(図1に示す)の取付口18が形成されている。モーター取付口18には、ファンモーター5aが左右方向に延びる出力軸をファンハウジング7内に臨ませて気密状に取り付けられている。このファンモーター5aの出力軸に上記送風ファン5が回転一体に取り付けられている。ファンモーター5aは制御装置106に接続されており、制御装置106によりON/OFFの切替、回転数の変更が行われるようになっている。
【0043】
上記ファンハウジング7の右側壁には吸込口19が形成され、該吸込口19には、図示しないインテークボックスが接続されている。このインテークボックスには、車室外の空気を導入する外気導入口と、車室内の空気を導入する内気導入口とが形成されている。これら外気導入口及び内気導入口は、インテークボックス内部に配設された内外気切替ダンパにより開閉されるようになっている。
【0044】
ケーシング3内部の下半部前端側には、上記空気流出通路17の下流端に接続されて下側へ向かって斜め後方に延びる導風通路20が形成されている。導風通路20には、上流側熱交換器10が該導風通路20を横切るように配置されて収容されている。上流側熱交換器10は、チューブの延びる方向が上下方向となるように向いている。導風通路20を流れる空気は、上流側熱交換器10により加熱されることになる。
【0045】
上記導風通路20には、導風通路20から流れてきた空気を再加熱するための加熱通路21の上流端が連通している。加熱通路21の上流端と導風通路20との間には、両通路21、20を仕切るようにケーシング3の底壁から上方へ延びる縦壁23が形成されている。この縦壁23の上半部には、加熱通路21の上流端開口をなす第1開口部24が形成されている。また、第1開口部24の直上方には、上記縦壁23上端から上流側熱交換器10の下流側上端近傍に亘るように第2開口部25が形成されており、この第2開口部25が導風通路20の下流端開口をなしている。
【0046】
縦壁23の上端近傍には、第1開口部24及び第2開口部25を選択的に開閉する板状の温度調節ダンパ27が配置され、該温度調節ダンパ27は、左右方向に延びる支軸27aによりケーシング3に支持されている。この温度調節ダンパ27は、温調用アクチュエータ27a(図1に示す)により駆動されるようになっており、図2に示すように、温度調節ダンパ27を下方へ回動させて第2開口部25を全開とすると第1開口部24が全閉になる一方、図3(a)に示すように、温度調節ダンパ27を上方へ回動させて第1開口部24を全開とすると第2開口部25が全閉になる。また、図3(b)に示すように、温度調節ダンパ27を上記第1開口部24と第2開口部25との中間位置まで回動させると、第1開口部24と第2開口部25との両方が開いた状態となり、このときの温度調節ダンパ27の回動角度により両開口部24、25を通過する空気の量が変化するようになっている。
【0047】
加熱通路21の縦壁23近傍には、下流側熱交換器11が、その上側へ行くほど後方に位置する傾斜状態でかつ加熱通路21を横切るように配置されている。
【0048】
上記第2開口部25の上方には、導風通路20の下流端と加熱通路21の下流端とが連通するエアミックス空間29が形成されている。このエアミックス空間29では、導風通路20を流れた空気及び加熱通路21を流れた空気を混合して温度調節を行っている。すなわち、送風ファン5の回転速度が一定の状態で温度調節ダンパ27の回動角度を変更すると、温度調節ダンパ27の第1開口部24及び第2開口部25の開度によって、下流側熱交換器11を流れる空気量が変化し、これにより、ケーシング3内で生成される空気の温度が変化するようになっている。
【0049】
尚、図示しないが、第1開口部24のみ開閉する温度調節ダンパを設けてもよいし、第2開口部25のみ開閉する温度調節ダンパを設けてもよい。また、上流側熱交換器10を流れる空気量のみを変更するように空気流路Rの形状及び温度調節ダンパを設定してもよいし、下流側熱交換器11を流れる空気量のみを変更するように空気流路Rの形状及び温度調節ダンパを設定してもよい。
【0050】
また、ケーシング3の後側には、大略上下方向に延びるダクト30が他の部分と一体に形成されている。ダクト30の上端部には、前側にデフロスタ口12が形成されその後側に近接してベント口13が形成されている。上記デフロスタ口12は、デフロスタダクト(図示せず)を介してインストルメントパネルのフロントウインド下端近傍に開口するデフロスタノズルに接続されている。また、インストルメントパネルには、乗員の顔や胸に向けて調和空気を吹き出させる複数のベントノズルが開口しており、ケーシング3のベント口13は、ベントダクト(図示せず)を介して各ベントノズルに接続されている。また、ダクト30の下端部にはフット口14が形成され、このフット口14には前席乗員の足下及び後席乗員の足下まで延びるフットダクト(図示せず)が接続されるようになっている。
【0051】
ダクト30内の上半部には、上流端がエアミックス空間29の上部に連通し下流端が上記デフロスタ口12及びベント口13にそれぞれ接続される第1通路31が形成されている。
【0052】
また、ダクト30内の下半部には、上流端がエアミックス空間29の後部に連通し下流端が上記フット口14に接続される第2通路32が形成されている。この第2通路32の上流端は、前方に開口するとともに、加熱通路21の下流端開口及び第1通路31の上流端開口の間で両開口に近接して位置付けられており、加熱通路21の下流端開口、第2通路32の上流端開口及び第1通路31の上流端開口は並んでいる。
【0053】
第2通路32は、上流端開口から後方へ下降傾斜して延びた後、略鉛直下向きに屈曲して延びている。第2通路32と加熱通路21の下流側とは、ケーシング3に一体に形成された仕切壁51により仕切られている。該仕切壁51は、後側へ行くほど下側に位置するように下方へ湾曲形成され、この仕切壁51の前端部は、後述のロータリダンパ35のシール材が当接するように略平坦に形成されている。また、ケーシング3内壁における第1通路31の上流端開口と第2通路32の上流端開口との間には、ロータリダンパ35のシール材が当接するケーシング側シール部50が、前方へ下降傾斜して突出する板状に形成されている。このケーシング側シール部50も上記仕切壁51の前端部と同様に略平坦に形成されている。
【0054】
上記エアミックス空間29には、上記第1通路31の上流端開口及び第2通路32の上流端開口を選択的に開閉することにより、第1通路31及び第2通路32を切り替えるロータリダンパ35が配設されている。該ロータリダンパ35は、第1通路31及び第2通路32の上流端開口が並ぶ方向に回動する閉止壁部36と、該閉止壁部36の回動軸方向である左右方向両端にそれぞれ連なる三角形状の端壁部37とを備えている。閉止壁部36は、回動軸と略平行に延びる矩形の平板状をなし、また、左側及び右側端壁部37、37は閉止壁部36に対し略垂直に延びている。左側端壁部37には、支持軸38が左外方へ突出するように形成され、また、右側端壁部37には同様な支持軸38が右外方へ突出するように形成されており、これら左側及び右側の支持軸38は同軸上に位置付けられている。該左側及び右側支持軸38は、ケーシング3の左側壁及び右側壁に形成された貫通孔(図示せず)にそれぞれ挿通されて該貫通孔に支持されている。一方の支持軸38には、リンク機構を介して吹出方向切替用アクチュエータ35a(図1に示す)が連結され、このアクチュエータ35aによりロータリダンパ35が支持軸38周りに回動するようになっている。
【0055】
そして、図4(b)に示すように、ロータリダンパ35を前側へ回動させて第2通路32の上流端開口を全開にすると、第1通路31の上流端開口はその前端側が僅かに開いた状態となり、この状態で、ロータリダンパ35の後側に位置しているシール材40が、ケーシング側シール部50の下面に当接するようになっている。
【0056】
一方、図2に示すように、ロータリダンパ35を後側へ回動させて第1通路31の上流端開口を全開にすると第2通路32の上流端開口が全閉になる。この状態で、ロータリダンパ35の上側に位置しているシール材40が上記ケーシング側シール部50の上面に当接するとともに、ロータリダンパ35の下側に位置しているシール材40が仕切壁51の前端部に当接する。
【0057】
また、図3(b)及び図4(a)に示すように、ロータリダンパ35を、上記第1通路31と第2通路32とを切り替える途中まで回動させた状態では、このロータリダンパ35の回動位置により両通路31、32への調和空気の分配量が変化する。また、閉止壁部36が平板状に形成されていて回動軌跡に沿った円弧形状でないため、ロータリダンパ35が上記第1通路31と第2通路32とを切り替える途中にあるときには、閉止壁部36とケーシング側シール部50との間に、第2通路32とエアミックス空間29の第1通路31側とを連通させる隙間52が生じることとなる。
【0058】
また、第1通路31の下流側におけるデフロスタ口12の下側及びベント口13の下側には、デフベント切替ダンパ55により開閉されるデフロスタ側開口部56及びベント側開口部57がそれぞれ形成されている。上記デフベント切替ダンパ55は、上記温度調節ダンパ27と同様に板状に形成されて左右方向に延びる支軸55aによりケーシング3に支持されている。このデフベント切替ダンパ55は、上記ロータリダンパ35とリンク機構を介して連動するようになっていて、共通のアクチュエータ35aにより駆動される。図4(a)に示すように、デフベント切替ダンパ55を前側へ回動させてデフロスタ側開口部56を全閉にするとベント側開口部57が全開となる一方、図4(b)に示すように、デフベント切替ダンパ55を後側へ回動させてベント側開口部57を全閉にするとデフロスタ側開口部56が全開となる。
【0059】
つまり、この実施形態の車両用空調装置1では、空気流出通路17、導風通路20、加熱通路21、エアミックス空間29、第1通路31及び第2通路32により空気通路Rが構成されている。空気流路Rは、導入口を構成するファンハウジング7の吸込口19から導出口を構成するデフロスタ口12、ベント口13及びフット口14まで延びている。
【0060】
上記温調用アクチュエータ27a及び吹出方向切替用アクチュエータ35aは、制御装置106に接続され、該制御装置106により制御されるようになっている。制御装置106には、図1に示すように、車室に配設された空調操作スイッチ41が接続されていて、乗員がスイッチ41により選択した吹出モードに応じて吹出方向切替用アクチュエータ35aが作動するようになっている。また、スイッチ41により設定した温度となるように、温調用アクチュエータ27aが作動するようになっている。
【0061】
次に、上記のように構成された車両用空調装置1の動作について説明する。
【0062】
操作スイッチ41がONにされると、制御装置6は冷媒加熱器102に電流を供給して冷媒を加熱し始める。さらに、コンプレッサ100の電動モーター100aを作動させる。これにより、ヒートポンプが機能し始め、上流側熱交換器10及び下流側熱交換器11には、高温の冷媒が流れ出す。また、制御装置106は、ファンモーター5aを回転させる。
【0063】
図4(b)は、ケーシング3内の殆どの空気をフットダクトへ供給し、残りの若干量をインストルメントパネルのデフロスタノズルへ供給するヒートモードが選択された場合を示す。このヒートモードでは、温度調節ダンパ27は第2開口部25を全閉にするまで回動している。送風ファン5により送風された空気は、導風通路20を流れて上流側熱交換器10を通過する。このとき、上流側熱交換器10には高温の冷媒が流れているので、空気が冷媒と熱交換して加熱される。そして、上流側熱交換器10を通過した空気の全量が加熱通路21に流れ、下流側熱交換器11を通過する。下流側熱交換器11にはコンプレッサ100から吐出されたばかりの冷媒が流れているので、該下流側熱交換器11の表面温度は上流側熱交換器10の表面温度よりも高く、よって、空気は再加熱されて一層高温になり、下流側のエアミックス空間29へ流れていく。
【0064】
ヒートモードでは、ロータリダンパ35が、第1通路31上流端開口の大部分を覆うまで回動し、デフベント切替ダンパ55が、ベント側開口部57を全閉にするまで回動している。従って、上記のようにして生成された高温の空気の殆どは、フット口14を介してフットダクトから乗員の足下に吹き出す。また、エアミックス空間29の若干量の空気がデフロスタ口12及びデフロスタダクトを介してデフロスタノズルからフロントウインド内面に吹き出し、これにより、フロントウインド内面の曇りが防止される。尚、デフロスタノズルから吹き出す空気の量は、例えば、全体の約2割に設定するのが好ましいが、全量をフット口14から吹き出すようにしてもよい。
【0065】
図2は、ケーシング3内の空気をインストルメントパネルのベントノズルへのみ供給するベントモードが選択された場合を示す。このベントモードでは、ロータリダンパ35は第2通路32を全閉にするまで回動し、また、デフベント切替ダンパ55はデフロスタ側開口部56を全閉にするまで回動する。さらに、温度調節ダンパ27は第1開口部24を全閉にするまで回動していて、導風通路20を流れた空気は加熱通路21を流れることなく、エアミックス空間29へ直接流入する。よって、エアミックス空間29内の空気の温度は、上記ヒートモード時に比べて低温となっている。
【0066】
そして、エアミックス空間29から第1通路31に流入した調和空気は、ベント口13及びベントダクトを介して各ベントノズルから乗員の顔や胸に吹き出す。
【0067】
図3(a)は、調和空気をインストルメントパネルのデフロスタノズルへのみ供給するデフロスタモードが選択された場合を示す。このデフロスタモードでは、ロータリダンパ35は、上記ベントモードと同様に第2通路32を全閉にするまで回動し、また、デフベント切替ダンパ55は、ベント側開口部57を全閉にするまで回動し、さらに温度調節ダンパ27は第2開口部25を全閉にするまで回動している。そして、エアミックス空間29から第1通路31に流入した調和空気は、デフロスタ口12及びデフロスタダクトを介してデフロスタノズルからフロントウインド内面に吹き出す。
【0068】
上記ベントモード及びデフロスタモードのときには、ロータリダンパ35の閉止壁部36が第2通路32の上流端開口を閉じる位置まで回動しているため、エアミックス空間29の中央部にはロータリダンパ35の閉止壁部36が位置しておらず、導風通路20からエアミックス空間29に流入した空気は第1通路31へスムーズに流れる。また、これらモードのときに、温度調節ダンパ27を第1開口部24と第2開口部25との中間位置まで回動させて、両開口部24、25からエアミックス空間29に空気を流入させる際には、上記の如くエアミックス空間29に閉止壁部36が位置していないので、両開口部24、25から流入した空気を十分に混合させること可能となる。
【0069】
図4(b)は、調和空気をインストルメントパネルのデフロスタノズル及びフットダクトへ供給するデフフットモードが選択された場合を示す。このデフフットモードでは、ロータリダンパ35は、第1通路31と第2通路32とを切り替える途中の回動位置まで回動しており、ロータリダンパ35の閉止壁部36とケーシング側シール部50との間には隙間52が形成されている。また、デフベント切替ダンパ55はベント側開口部57を全閉にするまで回動し、さらに、温度調節ダンパ27は第1開口部24と第2開口部25との中間位置まで回動している。
【0070】
このデフフットモードでは、導風通路20を流れる一部の空気が加熱通路21に流入して再加熱され、この加熱通路21の空気と上記導風通路20の残りの空気とがエアミックス空間29に流入して混合される。このエアミックス空間29の調和空気の約半分は、主にエアミックス空間29の前側から第1通路31に流入し、残りはロータリダンパ35の閉止壁部36の下側から第2通路32へ流入する。この際、第2通路32の上流端は加熱通路21の下流端に近接しているので、第2通路32に流入する空気は、第1通路31へ流入する空気よりも温度が高くなる。
【0071】
また、このモードでは、エアミックス空間29から第2通路32へ流入した空気が上記隙間52を介してエアミックス空間29の第1通路31側へ流れるようになる。このエアミックス空間29へ流れた第2通路32の空気は上記の如く温度が比較的高いため、上記エアミックス空間29の第1通路31側の空気と混合すると、該第1通路31側の空気の温度は上昇し、この空気が第1通路31へ流入する。
【0072】
そして、第1通路31へ流入した調和空気は、デフロスタ口12及びデフロスタダクトを介してデフロスタノズルからフロントウインド内面に向けて吹き出す。さらに、第2通路32へ流入した空気は、フット口14を介してフットダクトから乗員の足下に吹き出す。この際、第2通路32へ流入する空気の温度は、第1通路31へ流入する空気の温度よりも高いので、乗員が足下に冷たさを感じることはない。また、第2通路32の空気をエアミックス空間29の空気と混合させてから第1通路31へ流入させるようにしているので、デフロスタノズルから吹き出す空気の温度と、フットダクトから吹き出す空気の温度の差が適切な範囲に収まる。さらに、上記のように第1通路31へ流入する空気の温度が高まるので、フロントウインド内面の曇りを素早く晴らすことが可能となる。
【0073】
図3(a)は、空気をインストルメントパネルのベントノズル及びフットダクトへ供給するバイレベルモードが選択された場合を示す。このバイレベルモードでは、ロータリダンパ35は、上記デフフットモードと同様に第1通路31と第2通路32とを切り替える途中の回動位置まで回動しており、ロータリダンパ35の閉止壁部36とケーシング側シール部50との間には隙間52が形成されている。また、デフベント切替ダンパ55はデフロスタ側開口部56を全閉にするまで回動し、さらに、温度調節ダンパ27は第1開口部24と第2開口部25との中間位置まで回動している。
【0074】
このバイレベルモードでは、上記デフフットモードと同様に、エアミックス空間29の調和空気の約半分が第1通路31へ流入し、残りが第2通路32へ流入する。この際、第2通路32へは温度が比較的高い空気が流入するようになる。
【0075】
また、このモードでは、エアミックス空間29から第2通路32へ流入した空気が、上記隙間52を介してエアミックス空間29の第1通路31側へ流れて該第1通路31側の空気と混合し、このことで温度が上昇した空気が第1通路31へ流入する。
【0076】
そして、第1通路31へ流入した空気は、ベント口13及びベントダクトを介してベントノズルから乗員の顔や胸に吹き出し、また、第2通路32へ流入した空気は、フット口14を介してフットダクトから乗員の足下に吹き出す。この際、第2通路32へ流入する空気の温度は比較的高いので、乗員が足下に冷たさを感じることはない。また、第2通路32の空気をエアミックス空間29に流すようにしているので、ベントノズルから吹き出す空気の温度と、フットダクトから吹き出す空気の温度の差が適切な範囲に収まる。
【0077】
また、乗員が車両から離れた状態で空調装置1を所定時刻に始動させたい場合には、始動タイマ107をセットする。例えば、午前7時に空調装置1を始動させるように始動タイマ107がセットされていると、空調装置1は、始動開始時刻の10分前の午前6時50分に、冷媒加熱器102に電流の供給を開始し、冷媒を予め加熱する。そして、空調装置1の作動開始時刻になると、コンプレッサ100のモーター100a及びファンモーター5aを回転させる。これにより、暖房の即効性が得られる。
【0078】
また、制御装置106は、外気温センサ108で得られた車室外の気温が例えば5℃よりも低い場合には、冷媒加熱器102に供給する電流値を高めて冷媒の温度をより一層上昇させる。一方、車室外の気温が5℃以上の場合には、それほど強い暖房が必要ないので、冷媒加熱器102に供給する電流値を低める。
【0079】
また、車両のエンジンが停止した状態において、制御装置106は、バッテリ残量検出センサ109で得られたバッテリ残量が上記した所定値よりも少ない場合には、冷媒加熱器102に供給する電流値を低くしてバッテリ110の消耗を抑制する。バッテリ110が減りすぎる前に冷媒加熱器102への電流を停止するようにしている。
【0080】
次に、図示しないが、上記のように構成された寒冷地仕様の車両用空調装置1を寒冷地以外の他地域仕様にする場合について説明する。この場合、上流側熱交換器10及び下流側熱交換器11を冷却用熱交換器及び加熱用熱交換器にそれぞれ置き換える。すなわち、上流側熱交換器10と同じ形状のエバポレータをケーシング3の導風通路20における上流側熱交換器10の配設部位に配設し、また、下流側熱交換器11と同じ形状のヒータコアをケーシング3の加熱通路21における下流側熱交換器11の配設部位に配設する。従って、ケーシング3には、大きな構造変更は不要である。
【0081】
以上説明したように、この実施形態に係る車両用空調装置1によれば、コンプレッサ100の冷媒吐出側に接続される下流側熱交換器11と、下流側熱交換器11の冷媒出口側に接続される上流側熱交換器10とをケーシング3の空気流路Rに空気流れ方向に並べて配設したので、ケーシング3内で高温の空気を効果的に生成でき、十分な暖房能力を得ることができる。また、ケーシング3には、上流側及び下流側熱交換器10、11の代わりにエバポレータやヒータコアを配設することも可能になるので、仕向地に応じてケーシング3を大きく構造変更せずに済み、コストを低減できる。
【0082】
また、上流側熱交換器10を流れる空気量と下流側熱交換器11を流れる空気量とを変更する温度調節ダンパ27をケーシング3に配設したことで、より快適な暖房を実現できる。
【0083】
また、空調装置1の運転が開始される所定時間前に冷媒加熱器102を作動させるようにしたので、暖房の即効性を得ることができ、乗員の快適性をより一層高めることができる。
【0084】
また、外気温度に基づいて冷媒加熱器102による加熱量を変更できるので、必要時には高い暖房能力を確保して快適性を高めながら、高い暖房能力が必要でない場合に無駄なエネルギの消費を抑制できる。
【0085】
また、バッテリ残量を考慮して冷媒加熱器102を制御するようにしたので、冷媒加熱器102を電気式ヒーターとしてシンプルな構成としながら、バッテリ上がりを回避でき、車両の走行に支障をきたす虞れをなくすことができる。
【0086】
尚、上記実施形態では、送風ファン5を上流側及び下流側熱交換器10、11と同じケーシング3に収容するようにしているが、ケーシング3には上流側及び下流側熱交換器10、11を収容する一方、送風ファンを別のケーシング(図示せず)に収容するように構成してもよい。
【0087】
また、上記実施形態では、ヒートポンプの冷媒加熱器102を電気式ヒーターで構成したが、これに限らず、温水による加熱器、車両エンジンの排気ガスによる加熱器、大気から吸熱する吸熱器であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0088】
以上説明したように、本発明に係る車両用空調装置は、例えば、自動車に搭載するのに適している。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】実施形態に係る車両用空調装置の概略構造を示すブロック図である。
【図2】車両用空調装置の内部構造を示す断面図である。
【図3】(a)はデフロスタモードにある場合の図2相当図であり、(b)はデフフットモードにある場合の図2相当図である。
【図4】(a)はバイレベルモードにある場合の図2相当図であり、(b)はヒートモードにある場合の図2相当図である。
【符号の説明】
【0090】
1 車両用空調装置
10 上流側熱交換器(第2熱交換器)
11 下流側熱交換器(第1熱交換器)
12 デフロスタ口(導出口)
13 ベント口(導出口)
14 フット口(導出口)
19 吸込口(導入口)
27 温度調節ダンパ
100 コンプレッサ
101 減圧弁装置
102 冷媒加熱器
106 制御装置
107 始動タイマ(運転開始予告情報送出装置)
108 外気温センサ(外気温度検出部)
109 バッテリ残量検出センサ(バッテリ残量検出部)
R 空気流路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒を圧縮するコンプレッサと、
上記コンプレッサの冷媒吐出側に接続され、冷媒と外部空気とを熱交換させる第1熱交換器と、
上記第1熱交換器の冷媒出口側に接続され、冷媒と外部空気とを熱交換させる第2熱交換器と、
上記第2熱交換器の冷媒出口側に接続され、冷媒を減圧する減圧弁装置と、
上記減圧弁装置の冷媒出口側及び上記コンプレッサの冷媒吸入側に接続され、上記減圧弁装置から流出した冷媒を加熱する冷媒加熱器と、
上記第1及び第2熱交換器を収容するケーシングとを備え、
上記ケーシングには、該ケーシング内に空気を導入するための導入口、該ケーシング内の空気を導出させるための導出口及び該導入口から該導出口まで延びる空気流路が形成され、
上記第1及び第2熱交換器は上記空気流路内に配設され、
上記第1熱交換器は上記第2熱交換器よりも空気流れ下流側に位置付けられていることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用空調装置において、
ケーシングの空気流路には、第1熱交換器を流れる空気量と第2熱交換器を流れる空気量との少なくとも一方を変更する温度調節ダンパが配設されていることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の車両用空調装置において、
冷媒加熱器を制御する制御装置と、
空調装置の運転開始予告情報を送出する運転開始予告情報送出装置とを備え、
上記制御装置は、上記運転開始予告情報送出装置から送出される運転開始予告情報に基づいて、空調装置の運転が開始される所定時間前に上記冷媒加熱器を作動させることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項4】
請求項1または2に記載の車両用空調装置において、
冷媒加熱器を制御する制御装置と、
車室外の気温を検出する外気温度検出部とを備え、
上記制御装置は、上記外気温度検出部から出力される外気温度に基づいて、外気温度が所定値よりも低い場合に所定値以上の場合に比べて上記冷媒加熱器の加熱量を増大させることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項5】
請求項3または4に記載の車両用空調装置において、
車両に搭載されたバッテリの残量を検出するバッテリ残量検出部を備え、
冷媒加熱器は、上記バッテリに接続された電気式ヒーターで構成され、
制御装置は、上記バッテリ残量検出部から出力されるバッテリ残量に基づいて、バッテリ残量が所定値よりも少ない場合に所定値以上の場合に比べて上記冷媒加熱器の加熱量を減少させることを特徴とする車両用空調装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−234845(P2010−234845A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−82485(P2009−82485)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(000152826)株式会社日本クライメイトシステムズ (154)
【Fターム(参考)】