説明

車両用空調装置

【課題】従来制御の考え方を踏襲しつつ、効率の低下が懸念されるような運転状態においても、優れた運転効率にて運転制御可能な車両用空調装置を提供する。
【解決手段】冷媒を圧縮する圧縮機と、圧縮された冷媒を凝縮させる凝縮器と、凝縮した冷媒を膨張させる膨張機構と、膨張した冷媒を蒸発させるとともに空気を接触させて該空気の冷却および除湿をする蒸発器と、凝縮器に送風する送風機と、外部から圧縮機に入力される容量制御信号を容量制御信号演算式を用いて決定する容量制御信号演算手段を備えた車両用空調装置。容量制御信号演算手段には蒸発器における目標出口空気温度が入力され、容量制御信号演算値が所定値A以下のとき容量制御信号は蒸発器における出口空気温度と目標出口空気温度との差分を用いて決定され、容量制御信号演算値が所定値Aを超えるとき容量制御信号は容量制御信号演算式から決定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸気圧縮式冷凍サイクルを備える車両用空調装置において、可変容量圧縮機に外部から入力される容量制御信号を、蒸発器における空調温度目標値に応じて演算、及び出力し、可変容量圧縮機の容量を制御する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両用空調装置におけるオートエアコンシステムに適用できる制御装置が記載されている。この制御装置は、制御対象出力がその目標値に到達するための過渡状態における目標応答を算出し指定する制御対象出力目標応答算出手段を有している。また、この制御装置は制御対象出力目標応答値となるようなフィードフォワード制御入力予測手段や、制御対象出力目標応答と、制御対象出力との偏差を演算する制御対象出力フィードバック手段を備え、フィードフォワード制御入力とフィードバック制御入力との和を制御対象への制御入力とし、制御対象を制御するものである。
【0003】
また、特許文献2には、外部制御によって圧縮機の吐出容量を変更することができる空調装置が記載されている。この空調装置は、蒸発器出口空気温度を目標値へ制御するために適用可能である。しかしながら、外部制御可能な可変容量圧縮機においては、外部から入力される容量制御信号がある所定値以下である場合には、圧縮機が小容量運転となるため圧縮機効率が低下するおそれがある。また、空調装置が低流量運転となるため、膨張弁の変動に起因する容量制御状態が不安定になることなどが懸念される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−191741号公報
【特許文献2】特開2001−073941号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
外部制御可能な可変容量圧縮機を有する車両用空調装置において、容量制御信号がある所定値以下である場合には、圧縮機効率が低下し、かつ不安定な状態になりやすいので、従来の制御方法では、車両用空調装置の蒸気圧縮式サイクルの成績係数(COP)が低下することによる燃費への悪影響等が懸念される。したがって、外部可変容量制御圧縮機を有する車両用空調装置では、圧縮機の運転状態を適切に制御することによって、圧縮機の運転効率を向上させることや、その運転を安定化させることが課題である。
【0006】
そこで本発明の課題は、上記のような車両用空調装置における容量制御上の問題点に鑑み、従来制御の考え方を踏襲しつつ、効率の低下が懸念されるような運転状態においても、優れた運転効率にて運転制御可能な車両用空調装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係る車両用空調装置は、冷媒を圧縮する圧縮機と、圧縮された冷媒を凝縮させる凝縮器と、凝縮した冷媒を膨張させる膨張機構と、膨張した冷媒を蒸発させるとともに空気を接触させて該空気の冷却および除湿をする蒸発器と、前記凝縮器に送風する送風機と、前記圧縮機の容量制御のために外部から前記圧縮機に入力される容量制御信号を容量制御信号演算式を用いて決定する容量制御信号演算手段を備えた車両用空調装置であって、前記容量制御信号演算手段には少なくとも前記蒸発器における目標出口空気温度が入力され、前記容量制御信号演算式に基づいて決定された容量制御信号演算値が所定値A以下のとき前記容量制御信号は前記蒸発器における出口空気温度と前記目標出口空気温度との差分を用いて決定され、前記容量制御信号演算値が前記所定値Aを超える値のとき前記容量制御信号は前記容量制御信号演算式から決定されることを特徴とするものからなる。ここで、蒸発器における出口空気温度とは、蒸発器を出た直後の空気温度をいうが、蒸発器通過中の空気温度をいうこともある。
【0008】
本発明の車両用空調装置によれば、外部から圧縮機に入力される容量制御信号は、所定の演算式から決定された演算値が所定値A以下のとき蒸発器における出口空気温度と目標出口空気温度との差分を用いて決定され、上記容量制御信号が所定値Aを超える値のとき上記演算式から決定されるので、圧縮機の小容量運転時においても運転状態の安定化が図られる。
【0009】
本発明の車両用空調装置において、前記容量制御信号演算値が前記所定値A以下のとき、前記容量制御信号は、前記圧縮機の最小容量に対応する所定値mと所定値Bのいずれかの値に決定されることが好ましい。ここで所定値mは、圧縮機容量を最小にする際に用いられる容量制御信号の値であり、通常は、所定値Aおよび所定値Bのいずれよりも大きい値に設定される。このように、容量制御信号演算値が所定値A以下の場合のような圧縮機小容量運転時において、容量制御信号が、圧縮機の最小容量に対応する所定値mと所定値Bのいずれか2通りに決定されることにより、容量制御方式が簡素化され、運転状態がより安定化される。
【0010】
なお、前記所定値Bは、空調装置の熱負荷に応じて決定されることが好ましい。ここで空調装置の熱負荷を示す物理量の例としては、室外の温度、室内の温度、室内の湿度、蒸発器への送風量、日射量などが挙げられる。このように所定値Bが空調装置の熱負荷に応じて決定されることにより、容量制御方式を簡素化しつつ、圧縮機の容量を最適値に制御することが可能となる。
【0011】
また、前記所定値Bは、常に前記所定値A以上となるように決定されることが好ましい。所定値Bが常にA以上となることにより、所定値A以上であった容量制御信号が所定値A以下の値へと低下する際にも、容量制御信号の急激な減少が抑制可能となる。
【0012】
本発明の車両用空調装置において、前記送風機は、前記容量制御信号演算値が前記所定値A以下で、かつ、前記容量制御信号が前記所定値mに等しいときに停止され、前記容量制御信号演算値が前記所定値A以下で、かつ、前記容量制御信号が前記所定値Bに等しいときに運転されることが好ましい。このように圧縮機の小容量運転時における圧縮機容量の簡素な2値制御方式を、凝縮器の送風機のON−OFF運転にも適用することにより、空調装置全体の制御方式が簡素化され、空調装置の運転の安定化が図られる。
【0013】
本発明の車両用空調装置において、前記送風機の送風量は、車両の移動速度に応じて制御されることが好ましい。例えば、車両の移動速度が速いときには外気を凝縮器に当てるようにすれば送風機を運転しなくて済むので、消費エネルギーの節約が図られる。具体的には、前記送風機は、前記容量制御信号演算値が前記所定値A以下で、かつ、前記移動速度が所定値C以上のときに停止され、前記容量制御信号演算値が前記所定値A以下で、かつ、前記移動速度が前記所定値C未満のときに運転されることが好ましい。
【0014】
本発明の車両用空調装置において、前記送風機の送風量は、前記圧縮機のトルクに応じて制御されることが好ましい。このような制御により、例えば上記送風機をON−OFF運転するような場合にも、圧縮機のトルクに応じて送風量を最適化することが可能となる。
【0015】
本発明の車両用空調装置において、前記容量制御信号演算手段には、日射量、室外温度、室内温度、室内湿度、前記蒸発器への送風量、車両の移動速度、および車両原動機の回転数のうち少なくとも一つの物理量が入力されることが好ましい。これらの物理量のうち少なくとも一つの物理量が容量制御信号演算手段に入力されることにより、本発明の車両用空調装置における重要な制御変数としての容量制御信号が、空調装置のおかれる環境に合わせて適切に決定可能となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る車両用空調装置によれば、圧縮機運転効率の低下が懸念されるような運転条件においても、外部制御可能な可変容量圧縮機を備えた車両用空調装置の効率向上を実現することができ、ひいては車両燃費の向上が図られる。また、外部制御可能な可変容量圧縮機を備えた蒸気圧縮式冷凍サイクルの運転をより安定化することが可能となり、圧縮機の駆動トルクの変動を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施態様に係る車両用空調装置の全体フロー図である。
【図2】図1の車両用空調装置の制御フロー図の一例である。
【図3】図1の車両用空調装置の制御フロー図の他の例である。
【図4】図1の車両用空調装置の制御フロー図のさらに他の例である。
【図5】図1の圧縮機4の体積効率と容量制御信号との関係を示す特性図である。
【図6】図1の圧縮機4のトルクと容量制御信号との関係を示す特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明の望ましい実施の形態を、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施態様に係る車両用空調装置の全体を示すフロー図であり、車両用空調装置としての冷凍サイクル装置の機械的構成部分の全体を示している。空調装置31には、圧縮機4、凝縮器6、受液器8、膨張装置9および蒸発器10等から構成される冷凍回路と、外気導入口13、内気導入口14、内外気切替えダンパ15、ブロワ16、加熱器18、エアミックスダンパ19等から構成される通風回路が設けられている。凝縮器6には、圧縮機4には、プーリ2、3を介して駆動源としてのエンジン1からの回転動力が伝達されるようになっており、当該回転動力の伝達および遮断はクラッチコントローラ25により制御される。エアコンコントローラ20には蒸発器出口空気温度センサ11から蒸発器4の出口空気温度(空調温度)に対応する信号が入力される。エアコンコントローラ20は蒸発器出口空気温度センサ11の出力信号を参照して、圧縮機4に対し圧縮機容量制御信号26を出力する。このように、蒸発器4の出口空気温度を所定の温度に調節すべく、エアコンコントローラ20に内蔵された容量制御信号演算装置によって圧縮機容量制御信号26が演算されて、圧縮機4の容量を圧縮機外部から制御している。また、エアコンコントローラ20には、車室外温度センサ21、日射センサ22、車室内温度センサ23、車室内湿度センサ24等からの環境情報信号が入力される。
【0019】
車両用空調装置31において、冷凍回路に用いられる冷媒としては、二酸化炭素やフロン系の冷媒などが挙げられる。また、膨張装置9としては、電子膨張弁、温度式膨張弁、または差圧式膨張弁等を用いることができる。なお、図1の車両用空調装置31はクラッチを装備しているが、本発明に係る車両用空調装置においてはクラッチレスとしてもよい。また、図1の圧縮機4にはエンジン1により駆動される圧縮機が用いられているが、本発明の車両用空調装置においては、電動モータにより駆動される圧縮機も適用可能である。
【0020】
以下に、図2〜4を参照しながら、図1の車両用空調装置31における制御フロー例(実施例1〜3)を説明する。
【実施例1】
【0021】
図2は、図1の車両用空調装置31の制御フローの一例を示すフロー図である。
1−1. 蒸発器出口空気温度目標値(Tet)、車室内温度(Tin)、車室内湿度(Hin)、外気温度(Tamb)、日射量(Rsun)、エンジン回転数(Ne)、車速(VS)が検知され、読み込まれる。
【0022】
1−2. 蒸発器出口空気温度制御用容量制御信号演算手段により、蒸発器出口空気温度制御用容量制御信号(Ict_te)が演算され、外部可変容量制御信号として仮に採用される。(Ict=Ict_te)
【0023】
ここで、蒸発器出口空気温度制御用容量制御信号演算手段は、以下の各手段(蒸発器出口空気温度応答目標値制御手段、蒸発器出口空気温度フィードフォワード制御入力予測手段、蒸発器出口空気温度フィードバック制御入力演算手段)から構成されている。
【0024】
1−2−1.蒸発器出口空気温度応答目標値制御手段
蒸発器出口空気温度応答目標値(Tef)は、蒸発器出口空気温度目標値(Tet)を参照して、下記演算式により、算出される。
Tef=(TL1×Tet+Tc1×Tef(前回値))/(Tc1+TL1)
TL1:制御周期
Tc1:蒸発器出口空気温度応答性指定値
【0025】
1−2−2.蒸発器出口空気温度フィードフォワード制御入力予測手段
蒸発器出口空気温度フィードフォワード目標値(Tetc)と、外気温度(Tamb)と、車速(VS)と、送風機電圧(BLV)と、エンジン回転数(Ne)とを参照して、下記演算式により、蒸発器出口空気温度フィードフォワード制御入力(Icff_te)を予測する。
Icffte=f(Tetc,Tamb,Ne,VS,BLV)
但し、蒸発器出口空気温度フィードフォワード目標値(Tetc)は、蒸発器出口空気温度目標値(Tet)を参照して下記演算式にて算出されるものとする。
Tetc=(TL2×Tet+Tcte×Tetc(前回値))/(Tcte+TL2)
TL2:制御周期
Tcte:蒸発器出口空気温度フィードフォワード指定値
【0026】
1−2−3.蒸発器出口空気温度フィードバック制御入力演算手段
蒸発器出口空気温度フィードバック制御入力値(Icfb_te)は、蒸発器出口空気温度応答目標値(Tef)と、蒸発器出口空気温度(Teva)を参照して、下記のような比例、積分演算を行う。
Icfb_te=Pte(比例演算値)+Ite(積分演算値)
Pte=Kp1×(Teva−Tef)
Ite=Ite_n-1+Kp1/Ti1×(Teva−Tef)
Kp1:比例ゲイン
Ti1:積分時間
Ite_n-1:Iteの前回演算値
【0027】
以上の演算結果を用いて、下記式により蒸発器出口空気温度制御用容量制御信号(Ict_te)を演算する。
Ict_te=Icff_te+Icfb_te
【0028】
1−3. 蒸発器出口空気温度制御用容量制御信号(Ict_te)により以下の条件判定を実施する。
〔条件1−1〕
Ict≦A であれば 次の外部可変容量断続制御へと移行する。
Ict>A であれば Ict=Ict_teのまま外部可変容量制御が実施され、フロー先頭(1−1.)へ戻る。
【0029】
1−4. 外部可変容量断続制御により、以下の条件にて外部可変容量圧縮機が断続運転制御される。
〔条件1−2〕
Teva−Tet≧diff であれば Ict=B≧0.3[A]
Teva−Tet<0 であれば Ict=m(最小容量に対応する容量制御信号)=0
Teva:蒸発器出口空気温度
Tet:蒸発器出口空気温度目標値
diff:予め定めた所定値
【0030】
1−5. 凝縮器冷却送風機7の運転制御により、以下の条件にて凝縮器冷却送風機7の運転が制御される。
〔条件1−3〕
Ict=B かつ VS<C であれば 凝縮器冷却送風機7を運転させる
Ict=B かつ VS≧C であれば 凝縮器冷却送風機7を停止させる
Ict=0 であれば 凝縮器冷却送風機7を停止させる
VS:車両速度
【0031】
1−6. フロー先頭(1−1.)へ戻る
【実施例2】
【0032】
図3は、図1の車両用空調装置31の制御フローの他の例を示すフロー図である。
2−1. 蒸発器出口空気温度目標値(Tet)、車室内温度(Tin)、車室内湿度(Hin)、外気温度(Tamb)、日射量(Rsun)、エンジン回転数(Ne)、車速(VS)が検知され、読み込まれる。
【0033】
2−2. 蒸発器出口空気温度制御用容量制御信号演算手段により、蒸発器出口空気温度制御用容量制御信号(Ict_te)が演算され、外部可変容量制御信号として仮に採用される。(Ict=Ict_te)
【0034】
2−3. 蒸発器出口空気温度制御用容量制御信号(Ict_te)により以下の条件判定を実施する。
〔条件2−1〕
Ict≦A であれば 次の外部可変容量断続制御へと移行する。
Ict>A であれば Ict=Ict_teのまま外部可変容量制御が実施され、フロー先頭(2−1.)へ戻る。
【0035】
2−4. 外部可変容量断続制御信号演算手段により、外部可変容量断続制御信号(B)が以下の式により算出される。
B=f(Tamb、Tin、Hin、BLV、Rsun)
BLV:送風量に相関のある物理量(たとえば送風機へ印加する電圧)
【0036】
2−5. 外部可変容量断続制御により、以下の条件にて外部可変容量圧縮機が断続運転制御される。
〔条件2−2〕
Teva−Tet≧diff であれば Ict=B≧0.3[A]
Teva−Tet<0 であれば Ict=m(最小容量に対応する容量制御信号)=0
Teva:蒸発器出口空気温度
Tet:蒸発器出口空気温度目標値
diff:予め定めた所定値
【0037】
2−6. 凝縮器冷却送風機7の運転制御により、以下の条件にて凝縮器冷却送風機7の運転が制御される。
〔条件2−3〕
Ict=B かつ VS<C であれば 凝縮器冷却送風機7を運転させる
Ict=B かつ VS≧C であれば 凝縮器冷却送風機7を停止させる
Ict=0 であれば 凝縮器冷却送風機7を停止させる
VS:車両速度
【0038】
2−7. フロー先頭(2−1.)へ戻る
【実施例3】
【0039】
図4は、図1の車両用空調装置31の制御フローのさらに他の例を示すフロー図である。
3−1. 蒸発器出口空気温度目標値(Tet)、車室内温度(Tin)、車室内湿度(Hin)、外気温度(Tamb)、日射量(Rsun)、エンジン回転数(Ne)、車速(VS)が検知され、読み込まれる。
【0040】
3−2. 蒸発器出口空気温度制御用容量制御信号演算手段により、蒸発器出口空気温度制御用容量制御信号(Ict_te)が演算され、外部可変容量制御信号として仮に採用される。(Ict=Ict_te)
【0041】
3−3. 蒸発器出口空気温度制御用容量制御信号(Ict_te)により以下の条件判定を実施する。
〔条件3−1〕
Ict≦A であれば 次の外部可変容量断続制御へと移行する。
Ict>A であれば Ict=Ict_teのまま外部可変容量制御が実施され、フロー先頭(3−1.)へ戻る。
【0042】
3−4. 外部可変容量断続制御信号演算手段により、外部可変容量断続制御信号(B)が以下の式により算出される。
B=f(Tamb、Tin、Hin、BLV、Rsun)
BLV:送風量に相関のある物理量(たとえば送風機へ印加する電圧)
【0043】
3−5. 外部可変容量断続制御により、以下の条件にて外部可変容量圧縮機が断続運転制御される。
〔条件3−2〕
Teva−Tet≧diff であれば Ict=B≧0.3[A]
Teva−Tet<0 であれば Ict=m(最小容量に対応する容量制御信号)=0
Teva:蒸発器出口空気温度
Tet:蒸発器出口空気温度目標値
diff:予め定めた所定値
【0044】
3−6. 圧縮機トルク推定手段により、圧縮機の駆動トルクが推定される。なお、下記のトルク推定式はあくまでも一例であり、右辺の信号変数すべてを使うとは限らない。
Trq=f(Pd、Ict、Ne、VS、Tamb)
Pd:冷凍サイクルの高圧側圧力
Trq:圧縮機の推定トルク
【0045】
図5は、圧縮機の体積効率と容量制御信号(電流値 Ict)との関係を示しており、条件a〜cは、それぞれ異なる所定のエンジン回転数(Ne:a〜c)における実験データである。一般に、圧縮機は体積効率が高い条件の下で運転されるのが好ましいので、図5のような特性を有する圧縮機においては、容量制御信号(Ict)の電流値として、例えば0.3[A]以上の値が用いられることで、効率的な運転が実現できる。
【0046】
図6は、圧縮機のトルクと容量制御信号(電流値 Ict)との関係を示しており、それぞれ異なる所定の車速(VS:0km/h[IDLE]〜100km/h)における実験データである。図6は、3−6.に示されるトルク推定式において、NeおよびTambを定数とし、Ictを変数とした関数を、VSをパラメータとしてグラフに示したものに相当する。
【0047】
3−7. 圧縮機推定トルク(Trq)と車両速度(VS)により算出された凝縮器冷却送風機7の運転目標値により、凝縮器冷却送風機7の運転を制御する。なお、ここでは凝縮器冷却送風機7の回転数に相関のある物理量である凝縮器冷却送風機7を回転させるモータ電圧の目標値とした。
D=f(Trq、VS)
CFV=D
CFV:凝縮器冷却送風機電圧目標値
【0048】
3−8. フロー先頭(3−1.)へ戻る
【0049】
実施例1〜3では、圧縮機として外部制御可能な可変容量圧縮機を用いたが、電動圧縮機を用いた場合においても同様の制御方式が適用可能である。電動圧縮機を用いた場合には、上述の容量制御信号を電動圧縮機の回転数制御に用いればよい。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明に係る車両用空調装置は、外部から容量制御される圧縮機を備え、蒸気圧縮式冷凍サイクルを採用した車両用空調装置として適用可能である。
【符号の説明】
【0051】
1 エンジン
2、3 プーリ
4 圧縮機
5 高圧側圧力検出手段
6 凝縮器
7 凝縮器冷却送風機
8 受液器
9 膨張装置
10 蒸発器
11 蒸発器出口空気温度センサ
12 内外気切替ダンパアクチュエータ
13 外気導入口
14 内気導入口
15 内外気切替ダンパ
16 ブロワ
17 エアミックスダンパアクチュエータ
18 加熱器
19 エアミックスダンパ
20 エアコンコントローラ
21 車室外温度センサ
22 日射センサ
23 車室内温度センサ
24 車室内湿度センサ
25 クラッチコントローラ
26 圧縮機容量制御信号
27 高圧側冷媒圧力
28 クラッチ制御信号
29 エアミックスダンパ制御信号
30 内外気切替ダンパ制御信号
31 空調装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒を圧縮する圧縮機と、圧縮された冷媒を凝縮させる凝縮器と、凝縮した冷媒を膨張させる膨張機構と、膨張した冷媒を蒸発させるとともに空気を接触させて該空気の冷却および除湿をする蒸発器と、前記凝縮器に送風する送風機と、前記圧縮機の容量制御のために外部から前記圧縮機に入力される容量制御信号を容量制御信号演算式を用いて決定する容量制御信号演算手段を備えた車両用空調装置であって、前記容量制御信号演算手段には少なくとも前記蒸発器における目標出口空気温度が入力され、前記容量制御信号演算式に基づいて決定された容量制御信号演算値が所定値A以下のとき前記容量制御信号は前記蒸発器における出口空気温度と前記目標出口空気温度との差分を用いて決定され、前記容量制御信号演算値が前記所定値Aを超える値のとき前記容量制御信号は前記容量制御信号演算式から決定されることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】
前記容量制御信号演算値が前記所定値A以下のとき、前記容量制御信号は、前記圧縮機の最小容量に対応する所定値mと所定値Bのいずれかの値に決定される、請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項3】
前記所定値Bは、空調装置の熱負荷に応じて決定される、請求項2に記載の車両用空調装置。
【請求項4】
前記所定値Bは、常に前記所定値A以上となるように決定される、請求項2または3に記載の車両用空調装置。
【請求項5】
前記送風機は、前記容量制御信号演算値が前記所定値A以下で、かつ、前記容量制御信号が前記所定値mに等しいときに停止され、前記容量制御信号演算値が前記所定値A以下で、かつ、前記容量制御信号が前記所定値Bに等しいときに運転される、請求項2〜4のいずれかに記載の車両用空調装置。
【請求項6】
前記送風機の送風量は、車両の移動速度に応じて制御される、請求項1〜5のいずれかに記載の車両用空調装置。
【請求項7】
前記送風機は、前記容量制御信号演算値が前記所定値A以下で、かつ、前記移動速度が所定値C以上のときに停止され、前記容量制御信号演算値が前記所定値A以下で、かつ、前記移動速度が前記所定値C未満のときに運転される、請求項6に記載の車両用空調装置。
【請求項8】
前記送風機の送風量は、前記圧縮機のトルクに応じて制御される、請求項1〜7のいずれかに記載の車両用空調装置。
【請求項9】
前記容量制御信号演算手段には、日射量、室外温度、室内温度、室内湿度、前記蒸発器への送風量、車両の移動速度、および車両原動機の回転数のうち少なくとも一つの物理量が入力される、請求項1〜8のいずれかに記載の車両用空調装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−173491(P2011−173491A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−38515(P2010−38515)
【出願日】平成22年2月24日(2010.2.24)
【出願人】(000001845)サンデン株式会社 (1,791)
【Fターム(参考)】