説明

車両用空調装置

【課題】走行用の電力を供給するための蓄電池を備えた車両に搭載される車両用空調装置において、充電時間をできるだけ短くしながら、高い暖房能力を得ることができるようにして乗員の快適性を高める。
【解決手段】空調装置1は、コンプレッサ100及び車両の室内に配設された室内熱交換器10を有し、コンプレッサ10から吐出された高温冷媒を室内熱交換器10に供給して車室内の暖房を行う暖房モードを有するヒートポンプBと、冷媒を加熱する冷媒加熱器105と、バッテリ120が通常充電状態であるか否か、及び、急速充電状態であるか否かを検出する充電状態検出センサ151と、ヒートポンプB及び冷媒加熱器105を制御する制御装置Aとを備えている。制御装置Aは、急速充電状態であると検出されたときには、通常充電状態であると検出されたときに比べて、暖房能力が低くなるように、ヒートポンプBないし冷媒加熱器105を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、自動車等に搭載される車両用空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ヒートポンプを利用して冷房と暖房の切替を行えるように構成された車両用空調装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。ヒートポンプは、冷媒を圧縮するコンプレッサと、車室外に配設される車室外熱交換器と、減圧弁と、車室内に配設される車室内熱交換器とが配管により環状に接続されてなり、さらに、冷媒の循環方向を切り替えるモード切替弁を備えている。このモード切替弁により冷媒の循環方向を切り替えることで、冷房と暖房の切替が行えるようになっている。
【0003】
また、走行用の電力を供給するための蓄電池を搭載した電気自動車や、蓄電池とエンジンとの両方を搭載した、いわゆるハイブリッド車が知られており、これら車両にも空調装置が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3420269号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のようにヒートポンプを用いて暖房する場合、空調装置の運転を開始してコンプレッサが作動を始めても、すぐには冷媒の温度が上昇しない。このため、運転開始後、しばらくの間は空調風の温度が上昇せず、暖房が行えないという問題がある。
【0006】
そこで、冷媒を別の手段で加熱することが考えられるが、十分な加熱性能を安価に得ようとすると、電力を使用するしかない。ところが、電気自動車では充電が必須であり、また、ハイブリッド車でもプラグインタイプの車では充電が可能となっており、これら車両の電力を冷媒の加熱のために使用すると、充電時間が長引いてしまう。充電時間は、従来のガソリン車等では必要無いものであるので、ガソリン車等の代替を狙う上では、電気自動車等の充電時間をいかにして短縮するかが重要である。
【0007】
また、電気自動車等においては、ヒートポンプのコンプレッサは電動化されている場合が多いが、これも、充電時間を長引かせる一因となっている。つまり、電気自動車等では、乗員の快適性と、充電時間の短縮との両立が課題となっている。
【0008】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、走行用の電力を供給するための蓄電池を備えた車両に搭載される車両用空調装置において、充電時間をできるだけ短くしながら、高い暖房能力を得ることができるようにして乗員の快適性を高めることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明では、蓄電池の充電状態を検出し、急速充電が行われているときには、暖房能力が低くなるようにヒートポンプないし冷媒加熱器を制御するようにした。
【0010】
第1の発明は、走行用の電力を供給するための蓄電池を備えた車両に搭載される車両用空調装置において、
上記蓄電池から供給される電力により冷媒を圧縮するように動作するコンプレッサ及び車両の室内に配設された室内熱交換器を有し、上記コンプレッサから吐出された高温冷媒を上記室内熱交換器に供給して車室内の暖房を行う暖房モードを有するヒートポンプと、
上記蓄電池から供給される電力により冷媒を加熱する冷媒加熱器と、
上記蓄電池が第1の充電速度で充電されている第1充電状態であるか否か、及び、第1の充電速度よりも速い第2の充電速度で充電されている第2充電状態であるか否かを検出する充電状態検出手段と、
上記ヒートポンプ及び上記冷媒加熱器を制御する制御装置とを備え、
上記制御装置は、上記充電状態検出手段により第2充電状態であると検出されたときには、第1充電状態であると検出されたときに比べて、暖房能力が低くなるように、上記ヒートポンプないし上記冷媒加熱器を制御することを特徴とするものである。
【0011】
この構成によれば、冷媒加熱器に蓄電池から電力を供給することで、ヒートポンプの冷媒が加熱される。これにより、暖房開始時に暖房の立ち上がりを早くすることが可能になる。
【0012】
そして、蓄電池が第1の充電速度よりも速い第2の充電速度で充電されている場合には、急速充電が行われているということであり、この急速充電時には、暖房能力が低くなるように、ヒートポンプないし冷媒加熱器を制御する。これにより、空調のために消費される電力が低減されるので、充電時間が長引くのが抑制される。
【0013】
第2の発明は、第1の発明において、
充電状態検出手段は、蓄電池が充電中であるか否かを検出するように構成され、
制御装置は、充電状態検出手段により蓄電池が充電中でないと検出されたときには、第2充電状態であると検出されたときに比べて、暖房能力が低くなるように、ヒートポンプないし冷媒加熱器を制御することを特徴とするものである。
【0014】
この構成によれば、充電中でないときには、外部から電力が供給されていない状況であり、このときに暖房能力を低くすることで、蓄電池の消耗が低減される。
【0015】
第3の発明は、第2の発明において、
制御装置は、充電状態検出手段により第1充電状態であると検出されたときには、ヒートポンプと冷媒加熱器との両方を作動させ、第2充電状態であると検出されたときには、ヒートポンプを作動させて冷媒加熱器を作動させず、充電中でないと検出されたときには、ヒートポンプを作動させず冷媒加熱器を作動させるように構成されているを特徴とするものである。
【0016】
この構成によれば、第1充電状態の場合には、充電速度が比較的遅いということであり、このときには、電力量に余裕があるので、ヒートポンプと冷媒加熱器の両方を作動させて空調重視の制御を行い、高い暖房能力が得られる。
【0017】
一方、第2充電状態の場合には、冷媒加熱器を作動させないようにしたので、急速充電時の消費電力が抑制されて充電時間が長引くのが回避される。
【0018】
さらに、充電中でない場合には、冷媒加熱器よりも消費電力の多いヒートポンプを作動させないので、蓄電池の消耗が低減される。このとき、冷媒加熱器を作動させるようにしたことで、その後、例えば充電を行ってヒートポンプを作動させた場合には、冷媒がすでに加熱されていることになり、暖房の立ち上がりが早くなる。
【0019】
第4の発明は、第2の発明において、
制御装置は、充電状態検出手段により第1充電状態であると検出されたときには、ヒートポンプと冷媒加熱器との両方を作動させ、第2充電状態であると検出されたときには、ヒートポンプを作動させず冷媒加熱器を作動させ、充電中でないと検出されたときには、ヒートポンプ及び冷媒加熱器を作動させないように構成されていることを特徴とするものである。
【0020】
この構成によれば、第1の充電速度で充電されている場合には、充電速度が比較的遅いということであり、このときには、電力量に余裕があるので、ヒートポンプと冷媒加熱器の両方を作動させて空調重視の制御を行い、高い暖房能力が得られる。
【0021】
一方、第2充電状態の場合には、ヒートポンプよりも消費電力の少ない冷媒加熱器を作動させ、ヒートポンプを作動させないようにしたので、消費電力が抑制されて充電時間が長引くのが回避される。このように冷媒加熱器を作動させるようにしたことで、その後、例えば充電が完了してヒートポンプを作動させた場合には、暖房の立ち上がりが早くなる。
【0022】
さらに、充電中でない場合には、ヒートポンプ及び冷媒加熱器を作動させないので、蓄電池が空調に使われない。よって、走行可能距離を長くすることが可能になる。
【0023】
第5の発明は、第3または4の発明において、
車室外の温度を検出する外気温検出手段を備え、
制御装置は、外気温検出手段により検出された車室外の温度に基づいて、第1充電状態であるときの冷媒加熱器の加熱量を設定することを特徴とするものである。
【0024】
この構成によれば、車室外の温度が高い場合のように、暖房の立ち上がりをそれほど早める必要がない場合には、冷媒加熱器による冷媒の加熱量を減少させることで、消費電力が抑制される。一方、車室外の温度が低い場合のように、暖房の立ち上がりを早める必要がある場合には、冷媒加熱器による冷媒の加熱量を増加させることで快適性が高まる。
【0025】
第6の発明は、第1から5のいずれか1つの発明において、
蓄電池の残量を検出する残量検出手段を備え、
制御装置は、上記残量検出手段により検出された蓄電池の残量に基づいて、ヒートポンプないし冷媒加熱器を制御するように構成されていることを特徴とするものである。
【0026】
この構成によれば、蓄電池の残量が多いときには、蓄電池の充電時間が短くて済むので、暖房能力が高まるようにヒートポンプないし冷媒加熱器を制御することが可能になる。これにより、蓄電池の充電時間が長引くのを回避しながら、乗員の快適性を高めることが可能になる。一方、蓄電池の残量が少ないときには消費電力を抑制することが可能になるので、充電時間が短縮される。
【0027】
第7の発明は、第2から6の発明において、
制御装置は、蓄電池が充電中であることが検出されたときにのみ、冷媒加熱器を作動させることを特徴とする。
【0028】
この構成によれば、充電中のときにのみ、冷媒を加熱することで、蓄電池の電力の消費を確実に抑制することが可能になる。
【発明の効果】
【0029】
第1の発明によれば、冷媒加熱器を設けて暖房の立ち上がりを早める場合に、蓄電池の充電速度が速い場合に暖房能力が低くなるようにヒートポンプないし冷媒加熱器を制御するようにしたので、充電時間を短くしながら、高い暖房能力を得て乗員の快適性を高めることができる。
【0030】
第2の発明によれば、充電中でないときに、暖房能力が低くなるようにヒートポンプないし冷媒加熱器を制御するようにしたので、蓄電池の消耗を低減でき、走行可能距離が短くなってしまうのを抑制できる。
【0031】
第3の発明によれば、蓄電池の充電速度が遅く電力量に余裕がある場合にヒートポンプ及び冷媒加熱器を作動させて高い暖房能力を得ることができる。そして、充電速度が速い場合には、冷媒加熱器を作動させずにヒートポンプを作動させて、消費電力を抑制しながら、暖房を行い乗員の快適性を高めることができる。さらに、充電中でない場合には、ヒートポンプを作動させないことで電力の消費を抑制でき、このときに冷媒加熱器を作動させることによって、その後にヒートポンプが作動した場合の暖房の立ち上がりを早めることができ、乗員の快適性を高めることができる。
【0032】
第4の発明によれば、蓄電池の充電速度が遅く電力量に余裕がある場合にヒートポンプ及び冷媒加熱器を作動させて高い暖房能力を得ることができる。そして、充電速度が速い場合には、ヒートポンプを作動させずに冷媒加熱器を作動させて消費電力を抑制でき、その後にヒートポンプが作動した場合の暖房の立ち上がりを早めることができ、乗員の快適性を高めることができる。さらに、充電中でない場合には、ヒートポンプ及び冷媒加熱器を作動させないことで電力の消費を抑制でき、空調の影響によって走行可能距離が短くなってしまうのを回避できる。
【0033】
第5の発明によれば、車室外の温度に基づいて冷媒加熱器による冷媒の加熱量を変更するようにしたので、無駄な消費電力を抑制して必要なときにのみ効率よく高い暖房能力を得ることができる。
【0034】
第6の発明によれば、蓄電池の残量が多いときに、暖房能力が高くなるようにヒートポンプないし冷媒加熱器を制御することができるので、蓄電池の充電時間が長引くのを回避しながら、高い暖房能力を得て乗員の快適性を高めることができる。
【0035】
第7の発明によれば、蓄電池が充電中にあると検出されたときにのみ、冷媒加熱器を作動させるようにしたので、蓄電池の電力の消費を確実に抑制して走行可能距離を長くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】実施形態1に係る車両用空調装置の概略構成を説明する図である。
【図2】室内ユニットの内部構造を示す断面図である。
【図3】車両用空調装置のブロック図である。
【図4】低外気暖房運転モード時の冷媒の流れを示す図1相当図である。
【図5】通常暖房運転モード時の冷媒の流れを示す図1相当図である。
【図6】除霜運転モード時の冷媒の流れを示す図1相当図である。
【図7】冷房運転モード時の冷媒の流れを示す図1相当図である。
【図8】(a)はデフロスタモードにある場合の図2相当図であり、(b)はデフフットモードにある場合の図2相当図である。
【図9】(a)はバイレベルモードにある場合の図2相当図であり、(b)はヒートモードにある場合の図2相当図である。
【図10】制御装置による制御内容を示すフローチャートである。
【図11】充電判定制御のフローチャートである。
【図12】着霜判定及び除霜制御のフローチャートである。
【図13】実施形態2に係る図1相当図である。
【図14】実施形態2に係る図7相当図である。
【図15】実施形態2の変形例に係るバイパス通路構成部材の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0038】
尚、実施形態の説明では、説明の便宜を図るために、「前」とは車両の前側を、また、「後」とは車両の後側を、さらに、「左」とは車両の左側を、さらにまた、「右」とは車両の右側をそれぞれ表すこととしている。
【0039】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係る車両用空調装置1の概略構造を示している。車両用空調装置1は、電気自動車や、エンジンと電気モータを組み合わせたハイブリッド自動車に搭載されるものである。
【0040】
この実施形態では、車両用空調装置1が電気自動車に搭載される場合について説明する。電気自動車は、周知のように走行用の動力を発生する電気モータ(図示せず)と、電気モータに走行用の電力を供給するためのバッテリ(蓄電池)120とを備えている。バッテリ120は、周知のものである。バッテリ120は、充電器150を介して、例えば、家庭用電源等の外部電源から充電できるように構成されている。充電器150は、車両に着脱可能に構成されており、充電時にのみ車両に装着されるようになっている。
【0041】
車両用空調装置1は、自動車の車室内に搭載される室内ユニットU1と、自動車の車室外に搭載される室外ユニットU2と、室内ユニットU1及び室外ユニットU2を制御する制御装置Aとを備えている。室内ユニットU1は、自動車のインストルメントパネル(図示せず)内の左右方向中央部に配設されている。また、室外ユニットU2は、主にエンジンルーム(図示せず)に配設されている。
【0042】
室内ユニットU1は、内外気切替ダンパ4と、室内ファン5と、上流側車室内熱交換器10及び下流側車室内熱交換器11と、エアミックスダンパ27と、ロータリダンパ35及びデフベント切替ダンパ55と、これらを収容するケーシング3とを備えている。一方、室外ユニットU2は、冷媒を圧縮するコンプレッサ100と、減圧弁101と、電動減圧弁102と、電磁弁103と、冷媒加熱器105と、四方弁(モード切替弁)106と、アキュムレータ107と、車室外熱交換器109とを備えている。
【0043】
上記上流側車室内熱交換器10及び下流側車室内熱交換器11と、コンプレッサ100と、減圧弁101と、冷媒加熱器105と、四方弁106と、アキュムレータ107と、車室外熱交換器109とは、配管104a〜104hにより環状に接続されており、上流側車室内熱交換器10及び下流側車室内熱交換器11と室外ユニットU2とでヒートポンプBが構成されている。
【0044】
コンプレッサ100は、コンプレッサ駆動モータ100aと、コンプレッサ駆動モータ100aで作動する圧縮機構100bとを有しており、吸入した冷媒を圧縮して吐出するように構成された周知のものである。
【0045】
コンプレッサ駆動モータ100aには、バッテリ120から電力が供給されるようになっている。また、図3に示すように、コンプレッサ駆動モータ100aは、制御装置Aにより制御されて作動するようになっている。
【0046】
コンプレッサ100は、単位時間当たりの吐出量を変化させることができる可変容量型のものである。具体的には、コンプレッサ駆動モータ100aの回転数が制御装置Aにより変更されるように構成されている。尚、圧縮機構100bが有する圧縮室(図示せず)の容積を変化させるようにしてもよい。
【0047】
下流側車室内熱交換器11は、冷媒が流れるチューブと伝熱用フィン(共に図示せず)とを交互に積層してなるチューブアンドフィンタイプの熱交換器である。下流側車室内熱交換器11の冷媒給排口の一方(図示せず)が配管104aを介してコンプレッサ100の冷媒吐出口(図示せず)に接続されており、コンプレッサ100から吐出された高温冷媒が下流側車室内熱交換器11に流入するようになっている。
【0048】
上流側車室内熱交換器10も、下流側車室内熱交換器11と同様に構成されたチューブアンドフィンタイプの熱交換器である。上流側車室内熱交換器10は下流側車室内熱交換器11よりも大型である。具体的には、上流側車室内熱交換器10のチューブ長さ及び幅寸法は下流側車室内熱交換器11のチューブ長さ及び幅寸法よりもそれぞれ長く設定されている。上流側車室内熱交換器10の冷媒給排口の一方(図示せず)には配管104cが接続されている。下流側車室内熱交換器11の冷媒給排口の他方(図示せず)には、配管104dが接続されている。配管104bと配管104cとの間に四方弁106が配設されている。
【0049】
上流側車室内熱交換器10の冷媒給排口の他方(図示せず)から延びる配管104dは、2つに分岐しており、一方は、冷媒加熱器105の冷媒給排口の一方(図示せず)まで延び、他方は、車室外熱交換器109の冷媒給排口の一方(図示せず)まで延びている。
【0050】
配管104dの冷媒加熱器105側には、減圧弁101が設けられている。この減圧弁101は、配管104dの上流側車室内熱交換器10側から流れる冷媒を減圧して冷媒加熱器105側へ流すように構成された周知のものである。
【0051】
配管104dの車室外熱交換器109側には、電動減圧弁102が設けられている。電動減圧弁102は、制御装置Aにより制御されるようになっており、配管104dの上流側車室内熱交換器10側から流れる冷媒を減圧して車室外熱交換器109側へ流すこと、及び、配管104dの車室外熱交換器109側から流れる冷媒を減圧して上流側車室内熱交換器10側へ流すことができるようになっている。また、電動減圧弁102は、配管104dを開閉する開閉弁としても機能する。
【0052】
冷媒加熱器105は、電熱線(発熱体)105aを絶縁した状態で金属パイプにより被覆してなる、いわゆるシーズヒーター(電気式ヒーター)で構成されている。冷媒加熱器105は、減圧弁101とコンプレッサ100の吸入口との間に位置している。冷媒加熱器105には、バッテリ120から電力が供給されるようになっている。
【0053】
冷媒加熱器105の消費電力は、ヒートポンプBを作動させる際の消費電力よりも小さく設定されている。
【0054】
制御装置Aにより冷媒加熱器105のON(作動状態)及びOFF(非作動状態)の切替と、電熱線105aへの電力供給量の変更がなされるようになっている。電力供給量を変更することで冷媒の加熱量の調整が可能である。
【0055】
車室外熱交換器109は、チューブアンドフィンタイプの熱交換器であり、例えば、車両のエンジンルームにおける前端部に配設されている。車室外熱交換器109には、該車室外熱交換器109に空気を送るための室外ファン109aと、該室外ファン109aを回転駆動する室外ファンモータ109bとが設けられている。室外ファンモータ109bは、制御装置Aにより制御され、ON及びOFFの切替と、回転数の変更とが可能である。
【0056】
車室外熱交換器109には、内部を流動する冷媒の圧力を検出する冷媒圧力センサ109cと、車室外熱交換器109の表面温度を検出する表面温度検出センサ109dとが設けられている。冷媒圧力センサ109c及び表面温度検出センサ109dは制御装置Aに接続されている。
【0057】
冷媒加熱器105の冷媒給排口の他方(図示せず)には配管104eが接続されている。また、アキュムレータ107の冷媒給排口の一方(図示せず)には配管104gが接続されている。四方弁106の4つのポートには、配管104b、配管104c、配管104e及び配管104gが接続されている。四方弁106は、制御装置Aにより制御され、配管104bと配管104cとを連通させ、かつ、配管104eと配管104gとを連通させる状態(図1、図4〜6に示す)と、配管104bと配管104eとを連通させ、かつ、配管104cと配管104gとを連通させる状態(図7に示す)とに切り替えられるようになっている。
【0058】
また、車室外熱交換器109の冷媒給排口の他方(図示せず)から延びる配管104fは、配管104eの中途部に接続されている。配管104fと配管104eとの接続部には、電磁弁103が設けられている。電磁弁103は、制御装置Aに接続され、配管104f及び配管104eを各々開閉できるようになっている。
【0059】
アキュムレータ107は、冷媒を貯留するように構成された周知のものである。アキュムレータ107の冷媒給排口の他方(図示せず)は、配管104hによりコンプレッサ100の冷媒吸入口(図示せず)に接続されている。配管104hには、コンプレッサ100に吸入される前の冷媒の圧力及び温度をそれぞれ検出する吸入冷媒圧センサ112及び吸入冷媒温度センサ113が設けられている。吸入冷媒圧センサ112及び吸入冷媒温度センサ113は、コンプレッサ100に吸入される前の冷媒がスーパーヒート状態(過熱状態)であるか否かを検出するためのものであり、制御装置Aに接続されている。
【0060】
室外ユニットU2には、コンプレッサ100の冷媒吐出口と車室外熱交換器109とを接続し、コンプレッサ100から吐出された冷媒を、下流側車室内熱交換器11等をバイパスさせて車室外熱交換器109に供給するための車室内熱交換器バイパス配管110と、車室内熱交換器バイパス配管110の通路を開閉するためのバイパス弁111とが設けられている。
【0061】
車室内熱交換器バイパス配管110の上流端は、配管104aの中途部に接続されている。バイパス弁111は、車室内熱交換器バイパス配管110の上流端に位置付けられている。車室内熱交換器バイパス配管110の下流端は、配管104dの中途部に接続されている。バイパス弁111は制御装置Aにより制御されるようになっている。
【0062】
また、車両には、図3に示すように、車室外の気温(外気温度)を検出する外気温センサ(外気温度検出手段)114、車室外の湿度を検出する車室外湿度センサ115及び車室内の湿度を検出する車室内湿度センサ116が設けられている。外気温センサ114、車室外湿度センサ115及び車室内湿度センサ116は、車両用空調装置1を構成するものであり、制御装置Aに接続されている。
【0063】
また、車両には、バッテリ残量検出センサ(残量検出手段)117が設けられている。バッテリ残量検出センサ117は、制御装置Aに接続され、車両用空調装置1を構成するものである。
【0064】
バッテリ残量検出センサ117は、車両に搭載されているバッテリ120に接続されており、バッテリ120にどれだけ電力が残っているかを検出するためのものである。バッテリ残量検出センサ117は、具体的には、例えば、バッテリ120の電圧値に基づいてバッテリ残量を得るように構成されている。バッテリ残量検出センサ117は、本発明の残量検出手段である。
【0065】
また、車両用空調装置1には、充電状態検出センサ(充電状態検出手段)151が設けられている。この充電状態検出センサ151は、バッテリ120が充電中であるか否かを検出するためのものであり、制御装置Aに接続されている。具体的には、充電器150側の電流値を検出するように構成されており、電流が流れている場合には、バッテリ120が充電中であり、また、流れていない場合には非充電中であると検出するようになっている。また、充電状態検出センサ151は、充電器150側の電流値を検出することで、充電速度を得るためのセンサとしても利用できるようになっている。
【0066】
次に、室内ユニットU1の構造について説明する。室内ユニットU1のケーシング3は、樹脂製の左側ケース構成部材(図示せず)及び右側ケース構成部材2(図2に示す)を組み合わせてなる。このケーシング3の上半部前側には、室内ファン5を収容するファンハウジング7が他の部分と一体に形成されている。室内ファン5からの空気は、ケーシング3内部の前端側を下方へ流れて、該ケーシング3の下半部に収容された上流側車室内熱交換器10と、下流側車室内熱交換器11とを通過した後、ケーシング3の後側に形成されたデフロスタ口12、ベント口13及びフット口14から車室に供給されるようになっている。
【0067】
上記ファンハウジング7は、左右方向に延びる中心線を有する円筒状をなし、このファンハウジング7の中央部分に、室内ファン5を構成するシロッコファンがその回転軸を左右方向に向けた状態で収容されている。ファンハウジング7の室内ファン5周りには、該室内ファン5から吹き出した空気の流れが集合する空気流出通路17が形成され、この空気流出通路17の下流端は、ファンハウジング7の下側で開口している。また、ファンハウジング7の左側壁には、上記室内ファン5を駆動するための室内ファンモータ5a(図1に示す)の取付口18が形成されている。モータ取付口18には、室内ファンモータ5aが気密状に取り付けられている。この室内ファンモータ5aの出力軸に上記室内ファン5が回転一体に取り付けられている。室内ファンモータ5aは制御装置Aに接続されており、制御装置AによりON/OFFの切替、回転数の変更が行われるようになっている。室内ファンモータ5aの回転数の変更は、印加電圧を変更することによって行われる。
【0068】
上記ファンハウジング7の右側壁には吸込口19が形成され、該吸込口19には、インテークボックス3aが接続されている。このインテークボックス3aには、車室外の空気を導入する外気導入口3bと、車室内の空気を導入する内気導入口3cとが形成されている。インテークボックス3aの内部には、外気導入口3b及び内気導入口3cの開度を調節する内外気切替ダンパ4が配設されている。内外気切替ダンパ4は、内外気切替用アクチュエータ4a(図3に示す)により駆動され、外気導入口3bを全閉にし、かつ、内気導入口3cを全開にする位置から、外気導入口3bを全開とし、かつ、内気導入口3cを全閉とする位置まで動く。外気導入口3bが全開とされると、外気のみがケーシング3内に取り入れられ、内気導入口3cが全開とされると、内気のみがケーシング3内に取り入れられる。また、外気導入口3b及び内気導入口3cの開閉度合いにより、外気及び内気の導入割合を任意に変更することができる。内外気切替用アクチュエータ4aは、制御装置Aに接続されている。
【0069】
図2に示すように、ケーシング3内部の下半部前端側には、上記空気流出通路17の下流端に接続されて下側へ向かって斜め後方に延びる導風通路20が形成されている。導風通路20には、上流側車室内熱交換器10が該導風通路20を横切るように配置されて収容されている。上流側車室内熱交換器10は、チューブの延びる方向が上下方向となるように向いている。
【0070】
上記導風通路20には、加熱通路21の上流端が連通している。加熱通路21の上流端と導風通路20との間には、両通路21、20を仕切るようにケーシング3の底壁から上方へ延びる縦壁23が形成されている。この縦壁23の上半部には、加熱通路21の上流端開口をなす下側開口部24が形成されている。また、下側開口部24の直上方には、上記縦壁23上端から上流側車室内熱交換器10の下流側上端近傍に亘るように上側開口部25が形成されており、この上側開口部25が導風通路20の下流端開口をなしている。
【0071】
縦壁23の上端近傍には、下側開口部24及び上側開口部25を選択的に開閉する板状のエアミックスダンパ27が配置されている。エアミックスダンパ27は、左右方向に延びる支軸27aによりケーシング3に支持されている。
【0072】
エアミックスダンパ27は、温調用アクチュエータ27a(図3に示す)により駆動されるようになっており、図2に示すように、エアミックスダンパ27を下方へ回動させて上側開口部25を全開とすると下側開口部24が全閉になる一方、図8(a)に示すように、エアミックスダンパ27を上方へ回動させて下側開口部24を全開とすると上側開口部25が全閉になる。また、図8(b)に示すように、エアミックスダンパ27を上記下側開口部24と上側開口部25との中間位置まで回動させると、下側開口部24と上側開口部25との両方が開いた状態となり、このときのエアミックスダンパ27の回動角度により両開口部24、25を通過する空気の量が変化するようになっている。つまり、下流側車室内熱交換器11を通過した空気量と、上流側車室内熱交換器10を通過した空気量との混合割合が変更される。
【0073】
加熱通路21の縦壁23近傍には、下流側車室内熱交換器11が、その上側へ行くほど後方に位置する傾斜状態でかつ加熱通路21を横切るように配置されている。
【0074】
上記上側開口部25の上方には、導風通路20の下流端と加熱通路21の下流端とが連通するエアミックス空間29が形成されている。このエアミックス空間29では、導風通路20を流れた空気及び加熱通路21を流れた空気を混合して温度調節を行っている。すなわち、エアミックスダンパ27の回動角度による下側開口部24及び上側開口部25の開度によって、下流側車室内熱交換器11を流れる空気量が変化し、これにより、ケーシング3内で生成される空気の温度が変化するようになっている。
【0075】
また、ケーシング3の後側には、大略上下方向に延びるダクト30が他の部分と一体に形成されている。ダクト30の上端部には、前側にデフロスタ口12が形成されその後側に近接してベント口13が形成されている。上記デフロスタ口12は、デフロスタダクト(図示せず)を介してインストルメントパネルのフロントウインド下端近傍に開口するデフロスタノズルに接続されている。
【0076】
また、インストルメントパネルには、乗員の顔や胸に向けて調和空気を吹き出させる複数のベントノズルが開口しており、ケーシング3のベント口13は、ベントダクト(図示せず)を介して各ベントノズルに接続されている。また、ダクト30の下端部にはフット口14が形成され、このフット口14には前席乗員の足下及び後席乗員の足下まで延びるフットダクト(図示せず)が接続されるようになっている。
【0077】
ダクト30内の上半部には、上流端がエアミックス空間29の上部に連通し下流端が上記デフロスタ口12及びベント口13にそれぞれ接続される第1通路31が形成されている。
【0078】
また、ダクト30内の下半部には、上流端がエアミックス空間29の後部に連通し下流端が上記フット口14に接続される第2通路32が形成されている。この第2通路32の上流端は、前方に開口するとともに、加熱通路21の下流端開口及び第1通路31の上流端開口の間で両開口に近接して位置付けられており、加熱通路21の下流端開口、第2通路32の上流端開口及び第1通路31の上流端開口は並んでいる。
【0079】
第2通路32は、上流端開口から後方へ下降傾斜して延びた後、略鉛直下向きに屈曲して延びている。第2通路32と加熱通路21の下流側とは、ケーシング3に一体に形成された仕切壁51により仕切られている。該仕切壁51は、後側へ行くほど下側に位置するように下方へ湾曲形成され、この仕切壁51の前端部は、後述のロータリダンパ35のシール材が当接するように略平坦に形成されている。
【0080】
また、ケーシング3内壁における第1通路31の上流端開口と第2通路32の上流端開口との間には、ロータリダンパ35のシール材が当接するケーシング側シール部50が、前方へ下降傾斜して突出する板状に形成されている。このケーシング側シール部50も上記仕切壁51の前端部と同様に略平坦に形成されている。
【0081】
上記エアミックス空間29には、上記第1通路31の上流端開口及び第2通路32の上流端開口を選択的に開閉することにより、第1通路31及び第2通路32を切り替えるロータリダンパ35が配設されている。
【0082】
ロータリダンパ35は、第1通路31及び第2通路32の上流端開口が並ぶ方向に回動する閉止壁部36と、該閉止壁部36の回動軸方向である左右方向両端にそれぞれ連なる端壁部37とを備えている。閉止壁部36は、回動軸と略平行に延びる矩形の平板状をなし、また、左側及び右側端壁部37、37は閉止壁部36に対し略垂直に延びている。左側端壁部37には、支持軸38が左外方へ突出するように形成され、また、右側端壁部37には同様な支持軸38が右外方へ突出するように形成されており、これら左側及び右側の支持軸38は同軸上に位置付けられている。該左側及び右側支持軸38は、ケーシング3の左側壁及び右側壁に形成された貫通孔(図示せず)にそれぞれ挿通されて該貫通孔に支持されている。一方の支持軸38には、リンク機構を介して吹出方向切替用アクチュエータ35a(図3に示す)が連結され、このアクチュエータ35aによりロータリダンパ35が支持軸38周りに回動するようになっている。
【0083】
そして、図9(b)に示すように、ロータリダンパ35を前側へ回動させて第2通路32の上流端開口を全開にすると、第1通路31の上流端開口はその前端側が僅かに開いた状態となり、この状態で、ロータリダンパ35の後側に位置しているシール材40が、ケーシング側シール部50の下面に当接するようになっている。
【0084】
一方、図2に示すように、ロータリダンパ35を後側へ回動させて第1通路31の上流端開口を全開にすると第2通路32の上流端開口が全閉になる。この状態で、ロータリダンパ35の上側に位置しているシール材40が上記ケーシング側シール部50の上面に当接するとともに、ロータリダンパ35の下側に位置しているシール材40が仕切壁51の前端部に当接する。
【0085】
また、図8(b)及び図9(a)に示すように、ロータリダンパ35を、上記第1通路31と第2通路32とを切り替える途中まで回動させた状態では、このロータリダンパ35の回動位置により両通路31、32への調和空気の分配量が変化する。また、閉止壁部36が平板状に形成されていて回動軌跡に沿った円弧形状でないため、ロータリダンパ35が上記第1通路31と第2通路32とを切り替える途中にあるときには、閉止壁部36とケーシング側シール部50との間に、第2通路32とエアミックス空間29の第1通路31側とを連通させる隙間52が生じることとなる。
【0086】
また、第1通路31の下流側におけるデフロスタ口12の下側及びベント口13の下側には、デフベント切替ダンパ55により開閉されるデフロスタ側開口部56及びベント側開口部57がそれぞれ形成されている。上記デフベント切替ダンパ55は、上記エアミックスダンパ27と同様に板状に形成されて左右方向に延びる支軸55aによりケーシング3に支持されている。
【0087】
デフベント切替ダンパ55は、上記ロータリダンパ35とリンク機構を介して連動するようになっていて、共通のアクチュエータ35aにより駆動される。図9(a)に示すように、デフベント切替ダンパ55を前側へ回動させてデフロスタ側開口部56を全閉にするとベント側開口部57が全開となる一方、図9(b)に示すように、デフベント切替ダンパ55を後側へ回動させてベント側開口部57を全閉にするとデフロスタ側開口部56が全開となる。
【0088】
つまり、この実施形態の車両用空調装置1では、空気流出通路17、導風通路20、加熱通路21、エアミックス空間29、第1通路31及び第2通路32により空気通路Rが構成されている。そして、空気流路Rは、導入口を構成するファンハウジング7の吸込口19から導出口を構成するデフロスタ口12、ベント口13及びフット口14まで延びている。
【0089】
図3に示すように、上記温調用アクチュエータ27a及び吹出方向切替用アクチュエータ35aは、制御装置Aに接続され、該制御装置Aにより制御されるようになっている。制御装置Aには、車室に配設された空調操作スイッチ41が接続されている。
【0090】
また、車室内には、車室内の温度を検出する内気温センサ121が設けられている。内気温センサ121は、ケーシング3に吸入される前の空調用空気の温度を検出することがきるようになっている。内気温センサ121は制御装置Aに接続されている。
【0091】
制御装置Aは、各センサ109c、109d、112〜117、121、151の出力信号、空調操作スイッチ41の操作状態、バッテリ120の残量、室内の送風状態及びコンプレッサ100の動作状態を得て、室内ユニットU1及び室外ユニットU2を所定のプログラムに基づいて制御する。
【0092】
制御装置Aには、送風状態検出部125が設けられている。送風状態検出部125は、ケーシング3内への空調用空気の送風量を検出するためのものである。室内ファンモータ5aは、制御装置Aから印加される電圧の大きさにより回転数が変更されるようになっており、送風状態検出部125は、室内ファンモータ5aへの印加電圧に基づいて車室内への送風量を間接的に検出することができる。
【0093】
制御装置Aには、コンプレッサ吐出状態検出部126が設けられている。コンプレッサ吐出状態検出部126は、コンプレッサ100から吐出される冷媒の単位時間当たりの量を検出するためのものである。コンプレッサ100は、制御装置Aから出力された信号により回転数が変更されるようになっているので、この信号に基づいてコンプレッサ100から吐出される冷媒の量が間接的に得られる。
【0094】
制御装置Aは、空調装置1の運転状態を、低外気時暖房運転モード、通常暖房運転モード、除霜運転モード及び冷房運転モードの4つのモードのうち、任意のモードに切り替える。
【0095】
低外気時暖房運転モードとは、極寒季のように低外気時(例えば−5℃よりも低い時)に選択されるモードである。通常暖房運転モードとは、冬季において外気が例えば−5℃以上0℃以下のときに選択されるモードである。除霜運転モードとは、車室外熱交換器109が着霜状態にあると推定された場合に選択されるモードである。冷房運転モードとは、主に冬季以外で選択されるモードである。
【0096】
低外気時暖房運転モードが選択された場合には、制御装置Aは上流側車室内熱交換器10及び下流側車室内熱交換器11が放熱器となるように、次の制御を行う。図4に示すように、まず、四方弁106により配管104bと配管104cとを連通させ、かつ、配管104eと配管104gとを連通させる。また、電動減圧弁102を閉状態とし、電磁弁103により配管104eの通路を開き、配管104fの通路を閉じる。さらに、バイパス弁111を閉状態として車室内熱交換器バイパス配管110の通路を閉じる。これにより、車室外熱交換器109には冷媒が流れない。尚、同図における破線は、冷媒が流れない部分を示している。
【0097】
低外気時暖房運転モード時に車室外熱交換器109に冷媒を流さないのは、外気温が低く大気からの吸熱がそれほど期待できないためである。そして、冷媒加熱器105をONにするとともに、コンプレッサ100を作動させる。
【0098】
低外気時暖房運転モードでは、同図に矢印で示すように、コンプレッサ100から吐出された高温高圧冷媒が、配管104aから下流側車室内熱交換器11に流入した後、配管104b及び配管104cから上流側車室内熱交換器10に流入する。上流側車室内熱交換器10を流れた冷媒は、配管104dから減圧弁101を通って減圧された後、冷媒加熱器105により加熱される。冷媒加熱器105により加熱された冷媒は、配管104eから四方弁106を経て配管104g、アキュムレータ107、配管104hを順に流れてコンプレッサ100に吸入される。
【0099】
低外気時暖房運転モードの場合には、下流側車室内熱交換器11を流動する冷媒の温度の方が、上流側車室内熱交換器10を流動する冷媒の温度よりも高くなるので、上流側車室内熱交換器10を通過して加熱された空気は、下流側車室内熱交換器11を通過する際に再加熱される。これにより、高温の空調風を得ることが可能になる。また、エアミックスダンパ27の回動動作により、空調風の温度調節も可能である。
【0100】
通常暖房運転モードが選択された場合には、制御装置Aは、次の制御を行う。図5に示すように、まず、四方弁106を上記低外気時暖房運転モードと同様にする。また、電動減圧弁102を開く。さらに、電磁弁103により配管104eの冷媒加熱器105側の通路を閉じ、配管104fの通路を開く。そして、コンプレッサ100を作動させる。この通常暖房運転モードでは、冷媒加熱器105をOFFにする。大気吸熱が期待できるからである。
【0101】
通常暖房運転モードでは、図5に示すように、コンプレッサ100から吐出された高温高圧冷媒が、配管104aから下流側車室内熱交換器11に流入した後、配管104b及び配管104cを経て上流側車室内熱交換器10に流入する。上流側車室内熱交換器10を流れた冷媒は、配管104dから電動減圧弁102を通って減圧された後、車室外熱交換器109に流入する。車室外熱交換器109に流入した冷媒は大気と熱交換して吸熱した後、配管104fから四方弁106を経て、配管104g、アキュムレータ107、配管104hを順に流れてコンプレッサ100に吸入される。
【0102】
通常暖房運転モードにおいても、低外気時暖房運転モードと同様に、高温の空調風を得ることができるとともに、エアミックスダンパ27の回動動作により空調風の温度調節も可能である。
【0103】
除霜運転モードが選択された場合には、制御装置Aは、次の制御を行う。図6に示すように、まず、四方弁106を上記低外気時暖房運転モードと同様にする。また、電動減圧弁102を閉状態とし、電磁弁103により配管104eと配管104fの両方の通路を開く。さらに、バイパス弁111を開状態として車室内熱交換器バイパス配管110の通路を開く。そして、冷媒加熱器105をONにするとともに、コンプレッサ100を作動させる。
【0104】
除霜運転モードでは、低外気時暖房運転モードと同様に、コンプレッサ100から吐出された高温高圧冷媒が、下流側車室内熱交換器11及び上流側車室内熱交換器10を経て、減圧弁101を通って減圧された後、冷媒加熱器105により加熱される。冷媒加熱器105により加熱された冷媒は、四方弁106及びアキュムレータ107を経てコンプレッサ100に吸入される。また、コンプレッサ100から吐出された高温高圧冷媒は、車室内熱交換器バイパス配管110を通って車室外熱交換器109に流入する。これにより、車室外熱交換器109の表面温度が上昇して霜が解ける。
【0105】
除霜運転モードでは、コンプレッサ100に吸入される前の冷媒を冷媒加熱器105で加熱するようにしているので、室内熱交換器10、11には高温の冷媒を供給することが可能になり、暖房能力は十分に得られる。
【0106】
冷房運転モードが選択された場合には、制御装置Aは、次の制御を行う。図7に示すように、まず、四方弁106により配管104bと配管104eとを連通させ、かつ、配管104cと配管104gとを連通させる。また、電動減圧弁102を開状態とし、電磁弁103により配管104eの通路を閉じて配管104fの通路を開く。さらに、バイパス弁111を閉状態として車室内熱交換器バイパス配管110の通路を閉じる。
【0107】
冷房運転モードでは、コンプレッサ100から吐出された高温高圧冷媒が、配管104aを通って下流側車室内熱交換器11に流入した後、配管104b及び配管104eを経て、配管104fを流れて車室外熱交換器109に流入する。車室外熱交換器109に流出した冷媒は、電動減圧弁102を経て減圧された後、配管104dを通り、上流側車室内熱交換器10に流入する。上流側車室内熱交換器10から流出した冷媒は、配管104cを通り、四方弁106を経て、配管104g、アキュムレータ107、配管104hを順に流れてコンプレッサ100に吸入される。
【0108】
冷房運転モードでは、上流側車室内熱交換器10が冷却器として機能し、下流側車室内熱交換器11が加熱器として機能する。これにより、導風通路20を通過する空気が上流側車室内熱交換器10により冷却され、加熱通路21を通過する空気が下流側車室内熱交換器11により加熱される。そして、エアミックスダンパ27の回動動作により空調風の温度調節が可能である。尚、冷房運転モードでは、上流側熱交換器10により空気の湿度を低下させ、その後、空気を下流側熱交換器11で加熱して温風を生成することもできる。
【0109】
次に、室内ユニットU1の動作について説明する。
【0110】
図9(b)は、ケーシング3内の殆どの空気をフットダクトへ供給し、残りの若干量をインストルメントパネルのデフロスタノズルへ供給するヒートモードが選択された場合を示す。このヒートモードでは、エアミックスダンパ27は上側開口部25を全閉にするまで回動している。室内ファン5により送風された空気は、導風通路20を流れて上流側車室内熱交換器10を通過する。そして、上流側車室内熱交換器10を通過した空気の全量が加熱通路21に流れ、下流側車室内熱交換器11を通過してエアミックス空間29へ流れていく。
【0111】
ヒートモードでは、ロータリダンパ35が、第1通路31上流端開口の大部分を覆うまで回動し、デフベント切替ダンパ55が、ベント側開口部57を全閉にするまで回動している。従って、上記のようにして生成された高温の空気の殆どは、フット口14を介してフットダクトから乗員の足下に吹き出す。また、エアミックス空間29の若干量の空気がデフロスタ口12及びデフロスタダクトを介してデフロスタノズルからフロントウインド内面に吹き出す。
【0112】
図2は、ケーシング3内の空気をインストルメントパネルのベントノズルへのみ供給するベントモードが選択された場合を示す。このベントモードでは、ロータリダンパ35は第2通路32を全閉にするまで回動し、また、デフベント切替ダンパ55はデフロスタ側開口部56を全閉にするまで回動する。さらに、エアミックスダンパ27は下側開口部24を全閉にするまで回動していて、導風通路20を流れた空気は加熱通路21を流れることなく、エアミックス空間29へ直接流入する。
【0113】
そして、エアミックス空間29から第1通路31に流入した調和空気は、ベント口13及びベントダクトを介して各ベントノズルから乗員の顔や胸に吹き出す。
【0114】
図8(a)は、調和空気をインストルメントパネルのデフロスタノズルへのみ供給するデフロスタモードが選択された場合を示す。このデフロスタモードでは、ロータリダンパ35は、上記ベントモードと同様に第2通路32を全閉にするまで回動し、また、デフベント切替ダンパ55は、ベント側開口部57を全閉にするまで回動し、さらにエアミックスダンパ27は上側開口部25を全閉にするまで回動している。そして、エアミックス空間29から第1通路31に流入した調和空気は、デフロスタ口12及びデフロスタダクトを介してデフロスタノズルからフロントウインド内面に吹き出す。
【0115】
図8(b)は、調和空気をインストルメントパネルのデフロスタノズル及びフットダクトへ供給するデフフットモードが選択された場合を示す。このデフフットモードでは、ロータリダンパ35は、第1通路31と第2通路32とを切り替える途中の回動位置まで回動しており、ロータリダンパ35の閉止壁部36とケーシング側シール部50との間には隙間52が形成されている。また、デフベント切替ダンパ55はベント側開口部57を全閉にするまで回動し、さらに、エアミックスダンパ27は下側開口部24と上側開口部25との中間位置まで回動している。
【0116】
このデフフットモードでは、導風通路20を流れる一部の空気が加熱通路21に流入して加熱され、この加熱通路21の空気と上記導風通路20の残りの空気とがエアミックス空間29に流入して混合される。このエアミックス空間29の調和空気の約半分は、主にエアミックス空間29の前側から第1通路31に流入し、残りはロータリダンパ35の閉止壁部36の下側から第2通路32へ流入する。この際、第2通路32の上流端は加熱通路21の下流端に近接しているので、第2通路32に流入する空気は、第1通路31へ流入する空気よりも温度が高くなる。
【0117】
また、このモードでは、エアミックス空間29から第2通路32へ流入した空気が上記隙間52を介してエアミックス空間29の第1通路31側へ流れるようになる。このエアミックス空間29へ流れた第2通路32の空気は上記の如く温度が比較的高いため、上記エアミックス空間29の第1通路31側の空気と混合すると、該第1通路31側の空気の温度は上昇し、この空気が第1通路31へ流入する。
【0118】
そして、第1通路31へ流入した調和空気は、デフロスタ口12及びデフロスタダクトを介してデフロスタノズルからフロントウインド内面に向けて吹き出す。さらに、第2通路32へ流入した空気は、フット口14を介してフットダクトから乗員の足下に吹き出す。この際、第2通路32へ流入する空気の温度は、第1通路31へ流入する空気の温度よりも高いので、乗員が足下に冷たさを感じることはない。また、第2通路32の空気をエアミックス空間29の空気と混合させてから第1通路31へ流入させるようにしているので、デフロスタノズルから吹き出す空気の温度と、フットダクトから吹き出す空気の温度の差が適切な範囲に収まる。さらに、上記のように第1通路31へ流入する空気の温度が高まるので、フロントウインド内面の曇りを素早く晴らすことが可能となる。
【0119】
図9(a)は、空気をインストルメントパネルのベントノズル及びフットダクトへ供給するバイレベルモードが選択された場合を示す。このバイレベルモードでは、ロータリダンパ35は、上記デフフットモードと同様に第1通路31と第2通路32とを切り替える途中の回動位置まで回動しており、ロータリダンパ35の閉止壁部36とケーシング側シール部50との間には隙間52が形成されている。また、デフベント切替ダンパ55はデフロスタ側開口部56を全閉にするまで回動し、さらに、エアミックスダンパ27は下側開口部24と上側開口部25との中間位置まで回動している。
【0120】
このバイレベルモードでは、上記デフフットモードと同様に、エアミックス空間29の調和空気の約半分が第1通路31へ流入し、残りが第2通路32へ流入する。この際、第2通路32へは温度が比較的高い空気が流入するようになる。
【0121】
また、このモードでは、エアミックス空間29から第2通路32へ流入した空気が、上記隙間52を介してエアミックス空間29の第1通路31側へ流れて該第1通路31側の空気と混合し、このことで温度が上昇した空気が第1通路31へ流入する。
【0122】
そして、第1通路31へ流入した空気は、ベント口13及びベントダクトを介してベントノズルから乗員の顔や胸に吹き出し、また、第2通路32へ流入した空気は、フット口14を介してフットダクトから乗員の足下に吹き出す。この際、第2通路32へ流入する空気の温度は比較的高いので、乗員が足下に冷たさを感じることはない。また、第2通路32の空気をエアミックス空間29に流すようにしているので、ベントノズルから吹き出す空気の温度と、フットダクトから吹き出す空気の温度の差が適切な範囲に収まる。
【0123】
次に、制御装置Aにより行われる具体的な制御の内容について図10〜図12のフローチャートに基づいて説明する。尚、本制御は、バッテリ120が充電中であるとき、充電中でないときの両方で行われる。
【0124】
図10のフローチャートのスタート後のステップSA1では、外気温センサ114により外気温TGを検出する。ステップSA1に続くステップSA2では、外気温判定として、外気温が−5℃よりも低いか、0℃よりも高いか、−5℃以上0℃以下であるか判定する。外気温が−5℃よりも低い場合(外気からの吸熱がそれほど期待できない状況)には、ステップSA3に進み、−5℃以上0℃以下の場合(大気からの吸熱が期待できる状況)には、ステップSA4に進み、0℃よりも高い場合(暖房が不要な状況)には、ステップSA5に進む。
【0125】
ステップSA2における外気温判定の基準となる温度は上記に限られるものではなく、大気からの吸熱がそれほど期待できない状況であるか、大気からの吸熱が期待できる状況であるか、暖房が不要な状況であるかを判定できる温度を基準とすればよい。大気からの吸熱がそれほど期待できない状況とは、例えば極寒季である。
【0126】
ステップSA3では、充電判定制御を行う。充電判定制御について、図11に示すフローチャートに基づいて説明する。
【0127】
このフローチャートにおけるスタート後のステップSB1では、バッテリ120が充電中であるか否かを判定する。これは、充電状態検出センサ151の出力信号に基づいて行われる。ステップSB1でNOと判定されてバッテリ120が充電中でない場合には、ステップSB2に進み、一方、YESと判定されてバッテリ120が充電中である場合には、ステップSB3に進む。
【0128】
ステップSB3では、急速充電中であるか否かを判定する。これは、充電状態検出センサ151によって充電器150側の電流値を検出することによって行われる。電流値が所定値よりも小さく、充電速度が第1の充電速度で充電されている場合には、通常充電状態であるとして、ステップSB3でNOと判定する。一方、電流値が所定値以上であれば、バッテリ120の充電速度が第1の充電速度よりも速い第2の充電速度で充電されている(急速充電が行われている)として、ステップSB3でYESと判定する。
【0129】
ステップSB3でYESと判定されて進んだステップSB4では、冷媒加熱器105を作動させる。これにより、冷媒が加熱される。
【0130】
ステップSB4に続くステップSB5では、バッテリ120の残量が所定値よりも多いか否かを判定する。バッテリ120の残量はバッテリ残量検出センサ117の出力信号から得られる。所定値とは、バッテリ120の残量が満充電を基準として例えば半分以上(好ましくは60%以上)であるが、これに限られるものではない。
【0131】
ステップSB5でYESと判定されてバッテリ120の残量が所定値よりも多い場合には、ステップSB6に進み、ヒートポンプBを作動させる。このとき、ステップSB4で冷媒が冷媒加熱器105で加熱されているので、暖房の立ち上がりが速く、しかも、暖房能力が高まる。その後、図10に示すフローチャートのステップSA6に進む。
【0132】
尚、ステップSB3とステップSB4との間で、冷媒加熱器105による冷媒の加熱量を設定するようにしてもよい。冷媒の加熱量は、外気温及びバッテリ120の残量に基づいて設定するのが好ましい。外気温が低いほど加熱量を多くし、バッテリ120の残量が多いほど加熱量を多くする。具体的には、外気温が例えば−10℃以下である場合には、−10℃よりも高い場合に比べて加熱量を多くし、−15℃以下であれば、さらに加熱量を多くする。また、バッテリ120の残量が満充電を基準として90%以上であれば、90%よりも少ない場合に比べて加熱量を多くし、95%以上であれば、さらに加熱量を多くする。
【0133】
また、ステップSB3とステップSB6との間で、ヒートポンプBの暖房能力を設定するようにしてもよい。ヒートポンプBの暖房能力は、外気温及びバッテリ120の残量に基づいて設定するのが好ましい。外気温が低いほど暖房能力を高くし、バッテリ120の残量が多いほど暖房能力を高くする。具体的には、外気温が例えば−10℃以下である場合には、−10℃よりも高い場合に比べて暖房能力を高くし、−15℃以下であれば、さらに暖房能力を高くする。また、バッテリ120の残量が満充電を基準として90%以上であれば、90%よりも少ない場合に比べて暖房能力を高くし、95%以上であれば、さらに暖房能力を高くする。
【0134】
ステップSB5でNOと判定されてバッテリ120の残量が所定値以下である場合には、ステップSB7に進む。ステップSB7では、ヒートポンプBを作動させず、図10に示すフローチャートのステップSA6に進む。
【0135】
また、上記充電判定制御では、バッテリ120の充電中でないときにステップSB15で冷媒加熱器105を作動させるようにしているが、これに限らず、充電中にのみ、冷媒加熱器105を作動させるようにしてもよい。
【0136】
また、上記充電判定制御では、急速充電中にステップSB4で冷媒加熱器105を作動させるようにしているが、これに限らず、冷媒加熱器105を作動させないようにしてもよい。また、急速充電中に、ヒートポンプBのみを作動させるようにしてもよい。また、急速充電中は、冷媒加熱器105のみを作動させるようにしてもよい。また、充電していないときに、ヒートポンプB及び冷媒加熱器105を作動させないようにしてもよい。
【0137】
ステップSB3でNOと判定されて通常充電である場合には、ステップSB8に進み、バッテリ120の残量が所定値よりも多いか否かを判定する。この所定値は、ステップSB5における所定値と同じであるが、異ならせてもよい。
【0138】
ステップSB8でYESと判定されてバッテリ120の残量が所定値よりも多い場合には、ステップSB9に進み、冷媒加熱器105を作動させる。
【0139】
この冷媒加熱器105による冷媒の加熱量は、急速充電時に冷媒を加熱する場合(ステップSB4)に比べて多く設定する。こうすることで消費電力が多くなるが、通常充電時には急速充電時に比べて電力に余裕があるので対応可能である。
【0140】
その後、ステップSB10に進み、ヒートポンプBを作動させる。ヒートポンプBの暖房能力は、急速充電時にヒートポンプBを作動させる場合(ステップSB6)に比べて高く設定する。こうすることで消費電力が多くなるが、通常充電時には急速充電時に比べて電力に余裕があるので対応可能である。
【0141】
その後、図10に示すフローチャートのステップSA6に進む。
【0142】
ステップSB8でNOと判定されてバッテリ120の残量が所定値以下である場合には、ステップSB11に進む。ステップSB11では、冷媒加熱器105を作動させない。ステップSB11に続くステップSB12では、ヒートポンプBを作動させる。その後、図10に示すフローチャートのステップSA6に進む。
【0143】
一方、ステップSB1でNOと判定されて充電中でない場合には、ステップSB2に進み、ヒートポンプBを作動させない。そして、ステップSB13に進み、バッテリ120の残量が所定値よりも多いか否かを判定する。ステップSB13でNOと判定されてバッテリ120の残量が所定値よりも少ない場合には、ステップSB14に進み、冷媒加熱器105を作動させない。その後、図10に示すフローチャートのステップSA6に進む。
【0144】
ステップSB13でYESと判定されてバッテリ120の残量が所定値よりも多い場合には、ステップSB15に進み、冷媒加熱器105を作動させる。その後、図10に示すフローチャートのステップSA6に進む。
【0145】
上記充電判定制御を経た後、図10に示すフローチャートのステップSA6では上記した低外気時暖房運転モードで空調装置1を運転する。このとき、ステップSA3において冷媒加熱器105を作動させた場合には、冷媒が予め暖められていることにより、暖房の立ち上がりを早めることができる。また、低外気時暖房運転モードでは、上述の如く高温の空調風を生成して車室に供給できるので快適性を向上できる。
【0146】
ステップSA6に続くステップSA7では、コンプレッサ100の吐出量を演算する。これは、制御装置Aのコンプレッサ吐出状態検出部126において行われる。
【0147】
ステップSA7に続くステップSA8では、再び外気温TGを検出する。ステップSA8に続くステップSA9では、空調装置1がOFFとされたか否かを判定する。これは空調操作スイッチ41が乗員によりOFF操作されたか否かで判定することができる。ステップSA9でYESと判定されて空調装置1がOFFとされた場合には、ステップSA10に進んで運転を停止し、終了する。
【0148】
ステップSA9でNOと判定されて空調装置1の運転を継続する場合には、ステップSA11に進んでステップSA2と同様な外気温判定を行う。外気温が−5℃よりも低い場合には、ステップSA6に戻って低外気時暖房運転モードでの運転を継続し、−5℃以上0℃以下の場合には、ステップSA12に進み、0℃よりも高い場合には、後述するステップSA5に進む。
【0149】
ステップSA12では、ステップSA7と同様にコンプレッサ100の吐出量を演算する。ステップSA12に続くステップSA13では、外気温が−5℃以上0℃以下であるため、上記した通常暖房運転モードで空調装置1を運転する。そして、図12に示す着霜判定及び除霜制御フローに進む。この着霜判定及び除霜制御フローについては後述する。
【0150】
一方、図10に示すフローチャートのステップSA2において外気温が−5℃以上0℃以下と判定されて進んだステップSA4では、上記した通常暖房運転モードで空調装置1を運転する。その後、上記ステップSA8、SA9へと進み、ステップSA9でYESと判定された場合にはステップSA10に進み空調装置1の運転を停止する。一方、ステップSA9でONと判定されれば、ステップSA11に進んで外気温判定を行い、外気温が−5℃よりも低い場合には、ステップSA6に戻って低外気時暖房運転モードで運転を継続し、−5℃以上0℃以下の場合には、ステップSA12、SA13に進んで通常暖房運転モードで運転を継続し、0℃よりも高い場合には、後述するステップSA5に進む。
【0151】
また、ステップSA2において外気温が0℃よりも高いと判定されて進んだステップSA5では、上記した冷房運転モードで空調装置1を運転する。その後、ステップSA14に進んで上記ステップSA7と同様にコンプレッサ100の吐出量を演算する。その後、ステップSA8、SA9へと進み、ステップSA9でYESと判定された場合にはステップSA10に進み空調装置1の運転を停止する。一方、ステップSA9でONと判定されれば、ステップSA11に進んで外気温判定を行い、外気温が−5℃よりも低い場合には、ステップSA6に戻って低外気時暖房運転モードによる運転を継続し、−5℃以上0℃以下の場合には、ステップSA12、SA13に進んで通常暖房運転モードによる運転を継続し、0℃よりも高い場合には、ステップSA5に進んで冷房運転モードで運転する。
【0152】
次に、着霜判定及び除霜制御について図12に示すフローチャートに基づいて説明する。着霜判定及び除霜制御は、上記したステップSA13を経て行われるものである。
【0153】
スタート後のステップSC1では、各センサ109c、109d、112〜117、121の出力信号を取り込む。その後のステップSC2では車室外熱交換器109が着霜状態であるか否かを推定する。
【0154】
ステップSC2における推定手順について具体的に説明する。まず、車室外熱交換器109の表面温度検出センサ109dの出力信号に基づいて車室外熱交換器109の表面温度を得る。車室外熱交換器109の表面温度が氷点下近傍で着霜しやすい温度にあるときに、車室外熱交換器109が着霜状態であると推定する。着霜しやすい温度とは、例えば、−3℃以下である。また、車室外熱交換器109の表面温度が着霜しやすい温度となっってから所定時間経過した時点で、車室外熱交換器109が着霜状態であると推定するのが好ましい。また、車室外熱交換器109が着霜状態を推定する際、外気温や空調装置1の運転状態を考慮するようにしてもよい。
【0155】
尚、表面温度検出センサ109dは、車室外熱交換器109の表面の温度を直接検出するように配設してもよいし、車室外熱交換器109の近傍に配設して表面温度を間接的に検出するようにしてもよい。
【0156】
また、ステップSC2においては、車室外熱交換器109の表面温度の変化度合いを検出し、その検出結果に基づいて着霜状態であると推定するようにしてもよい。すなわち、車室外熱交換器109の表面温度の低下度合いが所定以上(例えば、毎分5℃以上の低下速度)の場合には、車室外熱交換器109の表面に霜が形成されやすい状況であるため、このことが検出された場合に車室外熱交換器109が着霜状態であると推定する。
【0157】
また、ステップSC2においては、車室外熱交換器109を流動する冷媒の圧力を冷媒圧力センサ109cにより得て、この圧力が所定値以下であるときに、車室外熱交換器109が着霜状態であると推定するようにしてもよい。すなわち、車室外熱交換器109に着霜が始まると伝熱面積が減少して吸熱量が低下し、その結果、冷媒温度(蒸発圧力)が低下し、この冷媒温度の低下により着霜が進行していく。従って、着霜が進行するほど、車室外熱交換器109を流動する冷媒の圧力が低下していくことになり、この圧力値に基づいて着霜状態であるか否かを的確に推定することが可能になる。所定値の設定方法としては、車室外熱交換器109に着霜がないときの圧力値を測定しておき、この圧力値の例えば20%程度低い値を所定値とすればよい。
【0158】
また、ステップSC2においては、車室外熱交換器109を流動する冷媒の圧力の変化度合いを検出し、その検出結果に基づいて着霜状態であると推定するようにしてもよい。車室外熱交換器109を流動する冷媒の圧力の低下度合いが大きいということは、着霜が進行しているということであり、この圧力の変化速度に基づいて着霜状態であるか否かを的確に推定することが可能になる。
【0159】
尚、ステップSC2においては、車室外熱交換器109の表面温度及び車室外熱交換器109を流動する冷媒の圧力の両方に基づいて車室外熱交換器109が着霜状態であるか否か推定するようにしてもよい。
【0160】
ステップSC2でYESと判定されて車室外熱交換器109が着霜状態であると推定された場合には、ステップSC3に進み、一方、ステップSC2でNOと判定されて車室外熱交換器109が着霜状態でないと推定された場合には、図10に示すフローチャートのステップSA8に戻り、通常暖房運転モードによる運転が継続される。
【0161】
ステップSC2でYESと判定されて進んだステップSC3では、コンプレッサ100の吐出量を演算する。吐出量は、基本的には、図10に示すフローチャートのステップSA12で演算した量よりも多くする。また、吐出量は、外気温度が低いほど多くし、室内ファン5による送風量が多いほど多くし、内気温度が低いほど多くする。例えば、外気温度が−10℃よりも低いと、−10℃以上の場合に比べて吐出量を多くし、また、送風量が最大風量と最小風量との中央の量よりも多いと、それ以下の場合に比べて吐出量を多くする。また、ステップSA15で演算したコンプレッサ100の吐出量が最大吐出量と最小吐出量との中央の量よりも多いと、それ以下の場合に比べて吐出量を多くする。
【0162】
その後、ステップSC4では、冷媒加熱器105の加熱量を演算する。ステップSC4の加熱量は、外気温度が低いほど多くし、ステップSC3で演算したコンプレッサ100の吐出量が多いほど多くし、室内ファン5による送風量が多いほど多くする。また、加熱量は、内気温度が低いほど多くする。例えば、外気温度が−10℃よりも低いと、−10℃以上の場合に比べて加熱量を多くし、また、送風量が最大風量と最小風量との中央の量よりも多いと、それ以下の場合に比べて加熱量を多くする。また、ステップSA12で演算したコンプレッサ100の吐出量が最大吐出量と最小吐出量との中央の量よりも多いと、それ以下の場合に比べて加熱量を多くする。
【0163】
ステップSC4に続くステップSC5では、冷媒加熱器105をONにする。このとき冷媒加熱器105に供給する電力は、ステップSC4で演算した加熱量となるように設定する。ステップSC5に続くステップSC6では、コンプレッサ100の吐出量を、ステップSC3で演算した吐出量となるように増加させる。
【0164】
ステップSC6に続くステップSC7では、コンプレッサ100の吸入側の冷媒がスーパーヒート状態となるように冷媒加熱器105の加熱量を制御するスーパーヒート制御を行う。ステップSC7では、まず、コンプレッサ100の吸入側の冷媒の圧力及び温度を吸入冷媒圧センサ112及び吸入冷媒温度センサ113により得て、これら検出結果により吸入側の冷媒がスーパーヒート状態にあるか否かを得る。そして、コンプレッサ100の吸入側の冷媒がスーパーヒート状態となるように、冷媒加熱器105の加熱量を補正し、それに見合うように供給電力量を制御する。これにより、コンプレッサ100の液圧縮が防止される。
【0165】
ステップSC7に続くステップSC8では、車室内の空気と車室外の空気との導入割合を演算する。ステップSC8では、基本的には、車室内の空気の導入割合を増加させる。また、ステップSC8では、車室外湿度センサ115及び車室内湿度センサ116の出力信号に基づいて車室外の湿度及び車室内の湿度を得る。そして、湿度の差が大きい場合には、湿度が低い方の空気の導入割合が多くなるように導入割合を補正する。尚、ステップSC8では、外気温センサ114及び内気温センサ121の出力信号に基づいて車室外の温度及び車室内の温度を得て、温度の高い方の空気の導入割合を多くするように補正してもよい。
【0166】
ステップSC8に続くステップSC9では、ステップSC8で演算された導入割合となるように内外気切替用アクチュエータ4aを制御して内外気切替ダンパ4を動かす。
【0167】
ステップSC9に続くステップSC10では、上記した除霜運転モードで空調装置1を運転する。除霜運転モードでは、コンプレッサ100から吐出された冷媒が車室外熱交換器109に流入することにより霜が解ける。さらに、冷媒加熱器105により冷媒が加熱されていることにより、コンプレッサ100から吐出される冷媒の温度及び圧力を十分に高めることが可能になるので、上流側車室内熱交換器10及び下流側車室内熱交換器11に高温冷媒が供給されて十分な暖房能力が得られる。
【0168】
ステップSC10に続くステップSC11では、室外ファンモータ109bをOFFにする。これにより、車室外の冷気が車室外熱交換器109に積極的に送風されなくなるので、霜を早く解かすことが可能になる。
【0169】
ステップSC11に続くステップSC12では、除霜終了の所定時間前であるか否かを判定する。すなわち、除霜終了予定時間が予め設定されており、この時間と除霜運転を開始した時刻とに基づいて除霜終了の所定時間前であるか否かを判定できる。除霜終了予定時間は、運転状態に関わらず一定時間としてもよいし、例えば外気温度に応じて変更するようにしてよい。この場合の所定時間とは例えば数分程度が好ましい。
【0170】
ステップSC12でNOと判定されれば、除霜終了の所定時間前となるまで待つ。一方、ステップSC12でYESと判定されて進んだステップSC13では、冷媒加熱器105をOFFにする。冷媒加熱器105をOFFにしてもしばらくの間は予熱を利用して冷媒を加熱することが可能である。
【0171】
ステップSC13に続くステップSC14では、除霜が終了したか否かを判定する。除霜が終了したタイミングとしては、車室外熱交換器109の表面温度が0℃以上に上昇して所定時間経過した時点としてもよいし、除霜運転を開始して一定時間が経過した時点としてもよい。
【0172】
ステップSC14でYESと判定されて進んだステップSC15では、室外ファンモータ109bをONにする。これにより、車外熱交換器109に付着している水が風により吹き飛ばされるので、再着霜が抑制される。
【0173】
一方、ステップSC14でNOと判定されて進んだステップSC16では、空調装置1から吹き出す空調風の温度が目標温度に達しているか否かを判定する。空調風の温度は、ケーシング3内に温度センサ(図示せず)を設けておくことで得ることができる。また、目標温度は、乗員による空調操作スイッチ41による温度設定と、内気温センサ121及び外気温センサ114等により設定される。
【0174】
ステップSC16でYESと判定されて空調風の温度が目標温度に達していない場合には、ステップSC17に進む。ステップSC17では、上記低外気時暖房運転モードで空調装置1を運転するので、冷媒加熱器105がONにされる。これにより、空調風の温度が高まって目標温度に近づいていき、乗員が不快感を感じ難くなる。
【0175】
ステップSC17に続くステップSC18では、空調風の温度が目標温度に達したか否かを判定する。ステップSC18でYESと判定されて空調風の温度が目標温度に達した場合には、ステップSC14に戻る。ステップSC18でNOと判定されれば、ステップSC17に戻り、低外気時暖房運転モードによる運転を継続する。
【0176】
以上説明したように、この実施形態1に係る車両用空調装置1によれば、外気温が低く、大気からの吸熱が期待できない場合に、冷媒加熱器105にバッテリ120から電力を供給することで冷媒が加熱される。これにより、暖房開始時に暖房の立ち上がりが早くなる。
【0177】
そして、バッテリ120が急速充電されている場合には、通常充電時に比べて暖房能力が低くなるように、ヒートポンプBないし冷媒加熱器105を制御するようにしたので、空調のために消費される電力を低減でき、充電時間が長引くのを抑制できる。これにより、充電時間を短くしながら、高い暖房能力を得て乗員の快適性を高めることができる。
【0178】
また、充電中でないときに、暖房能力が低くなるようにヒートポンプBないし冷媒加熱器105を制御するようにしたので、バッテリ120の消耗を低減でき、走行可能距離が短くなってしまうのを抑制できる。
【0179】
また、バッテリ120の充電速度が遅い通常充電時には、電力量に余裕がある。このときに、図11のフローチャートにおけるステップSB9、SB10で冷媒加熱器105及びヒートポンプBを作動させて高い暖房能力を得ることができる。
【0180】
そして、バッテリ120の充電速度が速い急速充電時には、冷媒加熱器105を作動させずにヒートポンプBを作動させるのが好ましく、このようにすることで、消費電力を抑制しながら、暖房を行い乗員の快適性を高めることができる。
【0181】
さらに、充電中でない場合には、図11のフローチャートのステップSB2に示すように、ヒートポンプBを作動させないことで電力の消費を抑制できる。このときにステップSB15において冷媒加熱器105を作動させることによって、その後にヒートポンプBが作動した場合の暖房の立ち上がりを早めることができ、乗員の快適性を高めることができる。
【0182】
また、バッテリ120の充電速度が速い急速充電時には、ステップSB7でヒートポンプBを作動させないようにしたことで消費電力を抑制できる。この場合、ステップSB4で冷媒加熱器105を作動させていることで、その後にヒートポンプBが作動した場合の暖房の立ち上がりを早めることができ、乗員の快適性を高めることができる。さらに、充電中でない場合には、ヒートポンプB及び冷媒加熱器105を作動させないようにすることが好ましく、これにより、電力の消費を抑制でき、空調の影響によって走行可能距離が短くなってしまうのを回避できる。
【0183】
また、車室外の温度に基づいて冷媒加熱器105による冷媒の加熱量を変更するようにしたので、無駄な消費電力を抑制して必要なときにのみ効率よく高い暖房能力を得ることができる。
【0184】
また、バッテリ120の残量が多いときに、暖房能力が高くなるようにヒートポンプBないし冷媒加熱器105を制御することができるので、バッテリ120の充電時間が長引くのを回避しながら、高い暖房能力を得て乗員の快適性を高めることができる。
【0185】
また、バッテリ120が充電中にあると検出されたときにのみ、冷媒加熱器105を作動させるようにするのが好ましく、これにより、バッテリ120の電力の消費を確実に抑制して走行可能距離を長くすることができる。
【0186】
(実施形態2)
図13は、本発明の実施形態2に係る車両用空調装置1の概略構造を示している。この実施形態2では、コンプレッサ100から吐出した冷媒を、必要に応じて、下流側車室内熱交換器11をバイパスさせて車室外熱交換器109に流すことができるようになっている点で実施形態1のものと異なっている。以下、実施形態1のものと異なる部分について詳細に説明する。
【0187】
すなわち、実施形態2のヒートポンプBには、コンプレッサ100から吐出した冷媒を、下流側車室内熱交換器11をバイパスさせて車室外熱交換器109に流すためのバイパス通路を構成する下流側車室内熱交換器バイパス配管130と、下流側車室内熱交換器バイパス配管130のバイパス通路を開閉する弁装置131と、弁装置131を制御する弁制御部132とが設けられている。また、下流側車室内熱交換器11の冷媒吐出側の配管104bには、下流側車室内熱交換器11の冷媒出口部における冷媒温度を検出する温度センサ(冷媒温度検出部)133が設けられている。
【0188】
下流側車室内熱交換器バイパス配管130は、配管104aと、配管104bとを接続するように延びている。弁装置131は周知の電磁弁等で構成されている。また、弁制御部132には、弁装置131及び温度センサ133が接続されている。弁制御部132は、温度センサ133で検出された冷媒温度に応じて弁装置131を開閉させるように構成されている。
【0189】
具体的には、弁制御部132は、冷媒出口部における冷媒温度が所定温度よりも低い状態となっていない場合には、弁装置131を開状態とするように該弁装置131に制御信号を送り、一方、冷媒温度が所定温度以下であり、低い状態となっている場合には、弁装置131を閉状態とするように該弁装置131に制御信号を送る。
【0190】
ここで、下流側車室内熱交換器11にはコンプレッサ100から吐出された高温の冷媒が流れるので、空気との熱交換量が多ければ多いほど冷媒出口部における冷媒温度が低下する。つまり、冷媒出口部における冷媒温度が所定以下である場合には、弱い冷房ないし暖房が要求されていると判定でき、一方、冷媒温度が所定温度よりも低い状態となっていない場合には、比較的強めの冷房(急速冷房)が要求されていると判定できる。この判定を弁制御部132が行い、強めの冷房が要求されていると判定した場合にのみ、弁装置131を開状態とするので、冷媒が殆ど下流側車室内熱交換器11を流れなくなる。それ以外の場合には、全ての冷媒が下流側車室内熱交換器11を流れる。上記所定温度は、本空調装置1の実験から求められた値を用いることが可能であり、コンプレッサ100から吐出された冷媒温度よりも若干低めの温度となる。
【0191】
次に、実施形態2の空調装置1が冷房運転モードにある場合で、かつ、比較的強めの冷房が要求されている場合について、図14に基づいて説明する。冷房運転モードでは、コンプレッサ100から吐出された冷媒が、下流側車室内熱交換器(第1車室内熱交換器)11、車室外熱交換器109、電動減圧弁102、上流側車室内熱交換器(第2車室内熱交換器)10の順に流れる。すなわち、冷房運転モードは本発明の第1モードである。
【0192】
冷房運転モードで、比較的強めの冷房が要求されている場合には、弁制御部132が弁装置131を開状態とするので、コンプレッサ100から吐出された冷媒の殆どは、下流側車室内熱交換器11をバイパスして車室外熱交換器109に流れる。これにより、コンプレッサ100から吐出された高温の冷媒が下流側車室内熱交換器11に流れないので、冷房効率が向上する。また、冷媒を、下流側車室内熱交換器11をバイパスさせて流すことで、圧力損失が低減されるとともに、特に急速冷房時における高圧側の圧力上昇が抑制されてコンプレッサ100の要求動力が低減される。尚、配管104aを閉じていないので、コンプレッサ100から吐出された冷媒は、僅かに下流側車室内熱交換器11に流れることがあるが、その量は少ないため、問題とならない。
【0193】
また、この実施形態2の空調装置1では、実施形態1と同様に、各運転モードに切り替えられるようになっており、そのうちの通常暖房運転モードでは、コンプレッサ100から吐出した冷媒が下流側車室内熱交換器11、上流側車室内熱交換器10、電動減圧弁102、車室外熱交換器109の順に流れる。このモードが本発明の第2モードである。
【0194】
また、強めの冷房が要求されているか否かを下流側車室内熱交換器11の冷媒出口部の冷媒温度を検出することによって的確に得ることができ、これに応じて弁装置131を制御することで、該弁装置131の制御が正確に行える。
【0195】
したがって、この実施形態2においても、実施形態1と同様な作用効果が得られる。
【0196】
また、冷房運転モードにあるときに、強めの冷房が要求されている場合に、冷媒を、下流側車室内熱交換器11をバイパスさせて流すようにしたので、強い冷房を効率良く行うことができる。
【0197】
また、下流側車室内熱交換器11の冷媒出口部における冷媒温度を温度センサ133で検出し、検出された冷媒温度に応じて弁装置131を制御するようにしたので、弁装置131の制御を正確に行うことができ、乗員の快適性が損なわれるのを回避できる。
【0198】
尚、この実施形態2では、下流側車室内熱交換器11の冷媒出口部における冷媒温度に応じて弁装置131を制御するようにしているが、これに限らず、エアミックスダンパ27の動作に応じて弁装置131を制御するようにしてもよい。この場合、弁制御部132を制御装置Aに接続する。制御装置Aでは、車室内の設定温度等の条件に基づいてエアミックスダンパ27の開度が演算されるようになっている。このエアミックスダンパ27の開度信号は、制御装置Aから弁制御部132に出力される。
【0199】
弁制御部132は、エアミックスダンパ27の開度が、下流側車室内熱交換器11を通過する空気量が所定量よりも少なくなる開度又はその空気量が略0となる開度である場合には、弁装置131を開状態とするように該弁装置131に制御信号を送り、一方、エアミックスダンパ27の開度が、下流側車室内熱交換器11を通過する空気量が所定量以上となる開度である場合には、弁装置131を閉状態とするように該弁装置131に制御信号を送る。
【0200】
弁制御部132は、エアミックスダンパ27の開度が、下流側車室内熱交換器11を通過する空気量が所定量よりも少なくなる開度又はその空気量が略0となる開度である場合には、暖房が必要でなく、強めの冷房が必要であると判定する。一方、エアミックスダンパ27の開度が、下流側車室内熱交換器11を通過する空気量が所定量以上となる開度である場合には、弱い冷房、又は、暖房が必要であると判定する。これにより、冷房運転モードで、比較的強めの冷房が要求されている場合には、弁制御部132が弁装置131を開状態とするので、コンプレッサ100から吐出された冷媒は、下流側車室内熱交換器11をバイパスして車室外熱交換器109に流れる。その結果、コンプレッサ100から吐出された高温の冷媒が下流側車室内熱交換器11に流れないので、冷房効率が向上するとともに、圧力損失が低減され、しかも、高圧側の圧力上昇が抑制されてコンプレッサ100の要求動力が低減される。
【0201】
また、弁制御部132は、冷媒温度やエアミックスダンパ27の動作以外の条件に基づいて冷房が要求されているか否かを判定するように構成してもよい。
【0202】
また、下流側車室内熱交換器バイパス配管130の代わりに、図15に示す変形例のように、バイパス通路構成部材140を設けてもよい。バイパス通路構成部材140は、金属製ブロックを成形してなり、内部には、室外ユニットU2の配管104aの中途部に接続される第1通路141と、配管104bの中途部に接続される第2通路142と、第1通路141及び第2通路142を接続するバイパス通路143とが形成されている。バイパス通路143内には、該バイパス通路143を開閉するための弁装置144が配設されている。第2通路142の内部には、下流側車室内熱交換器11の冷媒出口部における冷媒温度を検出して弁装置144を制御する弁制御部145が設けられている。弁制御部145は、温度変化によって膨張収縮する材料で構成されており、その膨張収縮により、弁装置144の弁体144aが矢印X方向に移動するようになっている。冷媒温度が所定温度以下の場合には、弁体144aを図15における左方向へ移動させて弁装置144を閉状態とし、所定温度よりも低い状態となっていない場合には、弁体144aを同図における右方向へ移動させて弁装置144を開状態とする。この所定温度は上記した強めの冷房が要求されているか否かを判定する温度に設定しておけばよい。この変形例では、弁装置144と、弁制御部145とをバイパス通路構成部材140に内蔵してコンパクトにまとめることができるので、レイアウト性が向上する。また、バイパス通路143の流量を制御することもできる。
【0203】
尚、上記実施形態では、室内ファン5を上流側及び下流側熱交換器10、11と同じケーシング3に収容するようにしているが、ケーシング3には上流側及び下流側熱交換器10、11を収容する一方、室内ファンを別のケーシング(図示せず)に収容するように構成してもよい。
【0204】
また、冷媒加熱器105の構造は上記したものに限られるものではなく、各種電気式ヒーター等を用いることができる。
【0205】
また、ハイブリッド自動車としては、充電用の外部電源(例えば家庭用電源等)から充電が行える、いわゆるプラグインタイプのハイブリッド自動車が好適である。
【産業上の利用可能性】
【0206】
以上説明したように、本発明にかかる車両用空調装置は、例えば、電気自動車に搭載するのに適している。
【符号の説明】
【0207】
1 車両用空調装置
10 上流側車室内熱交換器
11 下流側車室内熱交換器
100 コンプレッサ
105 冷媒加熱器
114 外気温センサ(外気温検出手段)
117 バッテリ残量検出センサ(残量検出手段)
120 バッテリ(蓄電池)
151 充電状態検出センサ(充電状態検出手段)
A 制御装置
B ヒートポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行用の電力を供給するための蓄電池を備えた車両に搭載される車両用空調装置において、
上記蓄電池から供給される電力により冷媒を圧縮するように動作するコンプレッサ及び車両の室内に配設された室内熱交換器を有し、上記コンプレッサから吐出された高温冷媒を上記室内熱交換器に供給して車室内の暖房を行う暖房モードを有するヒートポンプと、
上記蓄電池から供給される電力により冷媒を加熱する冷媒加熱器と、
上記蓄電池が第1の充電速度で充電されている第1充電状態であるか否か、及び、第1の充電速度よりも速い第2の充電速度で充電されている第2充電状態であるか否かを検出する充電状態検出手段と、
上記ヒートポンプ及び上記冷媒加熱器を制御する制御装置とを備え、
上記制御装置は、上記充電状態検出手段により第2充電状態であると検出されたときには、第1充電状態であると検出されたときに比べて、暖房能力が低くなるように、上記ヒートポンプないし上記冷媒加熱器を制御することを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用空調装置において、
充電状態検出手段は、蓄電池が充電中であるか否かを検出するように構成され、
制御装置は、充電状態検出手段により蓄電池が充電中でないと検出されたときには、第2充電状態であると検出されたときに比べて、暖房能力が低くなるように、ヒートポンプないし冷媒加熱器を制御することを特徴とする車両用空調装置。
【請求項3】
請求項2に記載の車両用空調装置において、
制御装置は、充電状態検出手段により第1充電状態であると検出されたときには、ヒートポンプと冷媒加熱器との両方を作動させ、第2充電状態であると検出されたときには、ヒートポンプを作動させて冷媒加熱器を作動させず、充電中でないと検出されたときには、ヒートポンプを作動させず冷媒加熱器を作動させるように構成されていることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項4】
請求項2に記載の車両用空調装置において、
制御装置は、充電状態検出手段により第1充電状態であると検出されたときには、ヒートポンプと冷媒加熱器との両方を作動させ、第2充電状態であると検出されたときには、ヒートポンプを作動させず冷媒加熱器を作動させ、充電中でないと検出されたときには、ヒートポンプ及び冷媒加熱器を作動させないように構成されていることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項5】
請求項3または4に記載の車両用空調装置において、
車室外の温度を検出する外気温検出手段を備え、
制御装置は、外気温検出手段により検出された車室外の温度に基づいて、第1充電状態であるときの冷媒加熱器の加熱量を設定することを特徴とする車両用空調装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1つに記載の車両用空調装置において、
蓄電池の残量を検出する残量検出手段を備え、
制御装置は、上記残量検出手段により検出された蓄電池の残量に基づいて、ヒートポンプないし冷媒加熱器を制御するように構成されていることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項7】
請求項2から6に記載の車両用空調装置において、
制御装置は、蓄電池が充電中であることが検出されたときにのみ、冷媒加熱器を作動させることを特徴とする車両用空調装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−255735(P2011−255735A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−130210(P2010−130210)
【出願日】平成22年6月7日(2010.6.7)
【出願人】(000152826)株式会社日本クライメイトシステムズ (154)
【Fターム(参考)】