説明

車両用空調装置

【課題】ヒートポンプサイクルを備える車両用空調装置の実用性を向上する。
【解決手段】車室内へ送風される送風空気を加熱するヒートポンプサイクルを構成する蒸気圧縮式冷凍サイクル10と、内燃機関EGの冷却水を熱源として送風空気を加熱する加熱手段36と、外気温度が所定の閾値よりも低いときには、内燃機関EGに対して作動要求信号を出力する制御手段50とを備える。さらに、電力を供給されることによって送風空気を加熱する電気ヒータ37を備え、制御手段50は、外気温度が所定の閾値よりも低いときには、内燃機関EGに加えて電気ヒータ37に対しても作動要求信号を出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒートポンプサイクルを備える車両用空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1には、ヒートポンプによる暖房を行うヒートポンプ暖房装置と、温水または発熱体の熱を利用して暖房を行うヒータ暖房装置とを備える車両用空調装置が記載されている。
【0003】
この従来技術では、外気温が極低温の環境下においてはヒートポンプ暖房装置の暖房効率が悪くなることに鑑みて、外気温が極低温のときにはヒートポンプ暖房装置を停止し、ヒータ暖房装置による暖房を行うようになっている。
【0004】
なお、従来、温水または発熱体の熱を利用して暖房を行うヒータ暖房装置としては、燃焼式ヒータによって温水を加熱する装置や、発熱体としてPTC素子を用いるPTCヒータが一般的に用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−100652号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記従来技術では実用上、種々の問題がある。例えば、燃焼式ヒータを用いるヒータ暖房装置では、燃焼式ヒータの排気ガスを十分に浄化するのが困難であり、低エミッション化を図ることができないという問題がある。すなわち、燃焼式ヒータの排気ガスを十分に浄化するために燃焼式ヒータ専用の排気ガス浄化装置等を設けることは、コストや搭載スペースの制約から採用が困難である。
【0007】
また、例えば、PTCヒータを用いるヒータ暖房装置では、コストや搭載スペース上の制約から、十分な暖房能力を確保するのが困難であるという問題がある。
【0008】
この点、走行用エンジン(内燃機関)を搭載する車両においては、エンジン冷却水を暖房用の熱源とすることで低エミッション化を図ることができる。すなわち、エンジン排気ガスは既存のエンジン用排気ガス浄化装置で十分に浄化されるので、コストや搭載スペースの増大を招くことなく低エミッション化を図ることができる。
【0009】
しかしながら、例えばハイブリッド車両のように、エンジンを停止することで省燃費を図る車両においては、エンジン冷却水温度が低温であることが多いので、エンジン冷却水を暖房用の熱源として用いても十分な暖房能力を確保できない場合がある。
【0010】
本発明は上記点に鑑みて、ヒートポンプサイクルを備える車両用空調装置の実用性を向上することを第1の目的とする。
【0011】
また、本発明は、低エミッション化を図ることと暖房能力を確保することとの両立を図ることを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、車室内へ送風される送風空気を加熱するヒートポンプサイクルを構成する蒸気圧縮式冷凍サイクル(10)と、
内燃機関(EG)の冷却水を熱源として送風空気を加熱する加熱手段(36)と、
外気温度が所定の閾値よりも低いときには、内燃機関(EG)に対して作動要求信号を出力する制御手段(50)とを備えることを特徴とする。
【0013】
これによると、外気温度が所定の閾値よりも低いときには、内燃機関(EG)に対して作動要求信号を出力することで、内燃機関(EG)の冷却水を熱源とする加熱手段(36)によって暖房を行うことができる。
【0014】
このため、燃焼式ヒータを用いる場合と比較して低エミッション化を図ることができる。すなわち、内燃機関の排気ガスは既存の内燃機関用排気ガス浄化装置によって十分に浄化されるので、コストおよび搭載スペースの増大を招くことなく低エミッション化を図ることができる。
【0015】
また、PTCヒータ等の電気ヒータのみを暖房として用いる場合や、内燃機関(EG)を停止させたままで加熱手段(36)によって暖房を行う場合と比較して、高い暖房能力が得ることができる。
【0016】
以上のことから、低エミッション化を図るとともに暖房能力を確保することができる。
【0017】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の車両用空調装置において、電力を供給されることによって送風空気を加熱する電気ヒータ(37)を備え、
制御手段(50)は、外気温度が所定の閾値よりも低いときには、内燃機関(EG)に加えて電気ヒータ(37)に対しても作動要求信号を出力することを特徴とする。
【0018】
これによると、内燃機関(EG)の冷却水を熱源とする加熱手段(36)と電気ヒータ(37)とを併用するので、冷却水の温度が比較的低い場合でも十分な暖房能力を得ることができる。
【0019】
請求項3に記載の発明では、請求項1または2に記載の車両用空調装置において、制御手段(50)は、窓曇りの可能性が高いときには、窓曇りの可能性が低いときと比較して、内燃機関(EG)に対する要求回転数を高く設定することを特徴とする。
【0020】
これによると、窓曇りの可能性が高いときには、窓曇りの可能性が低いときと比較して冷却水の温度を早期に上昇させることができるので、吹出空気温度を早期に高くすることができ、ひいては高い防曇性を早期に得ることができる。
【0021】
請求項4に記載の発明では、請求項1ないし3のいずれか1つに記載の車両用空調装置において、車室内温度を乗員の操作によって設定する車室内温度設定スイッチ(60c)を備え、
制御手段(50)は、車室内温度設定スイッチ(60c)によって設定された設定温度が所定設定温度よりも高いときには、設定温度が所定設定温度よりも低いときと比較して、前記内燃機関(EG)に対する要求回転数を高く設定することを特徴とする。
【0022】
これによると、車室内温度の設定温度が高いときには、設定温度が低いときと比較して冷却水の温度を早期に上昇させることができるので、吹出空気温度を早期に高くすることができ、ひいては高い暖房感を早期に得ることができる。
【0023】
請求項5に記載の発明では、請求項1ないし4のいずれか1つに記載の車両用空調装置において、蒸気圧縮式冷凍サイクル(10)は、ヒートポンプサイクルと、送風空気を冷却するクーラサイクルとに切り替え可能に構成されており、
制御手段(50)は、外気温度が所定の閾値よりも低いときには、内燃機関(EG)に対して作動要求信号を出力するとともに、蒸気圧縮式冷凍サイクル(10)に対してクーラサイクルに切り替える制御信号を出力することを特徴とする。
【0024】
これによると、低外気温時にクーラサイクルで除湿を行うことができるので、防曇性を向上することができる。
【0025】
請求項6に記載の発明では、冷媒と外気とを熱交換する室外熱交換器(16)を有し、車室内へ送風される送風空気を加熱するヒートポンプサイクルを構成する蒸気圧縮式冷凍サイクル(10)と、
内燃機関(EG)の冷却水を熱源として送風空気を加熱する加熱手段(36)と、
車室内温度を乗員の操作によって設定する車室内温度設定スイッチ(60c)と、
車室内温度設定スイッチ(60c)によって設定された設定温度が所定設定温度よりも高いときには、内燃機関(EG)に対して作動要求信号を出力する制御手段(50)とを備えることを特徴とする。
【0026】
ところで、車室内温度設定スイッチ(60c)によって設定された設定温度が高い場合には、ヒートポンプサイクルの稼働率が高くなって室外熱交換器(16)に着霜しやすくなるので、室外熱交換器(16)の熱交換能力が低下しやすくなって暖房能力も低下しやすくなるという実用上の問題がある。
【0027】
これに対して、請求項6の発明では、車室内温度設定スイッチ(60c)によって設定された設定温度が所定設定温度よりも高いときには、内燃機関(EG)に対して作動要求信号を出力することで、内燃機関(EG)の冷却水を熱源とする加熱手段(36)によって暖房を行うことができるので、設定温度が高くても暖房能力を安定して確保することができ、ひいては実用性を向上できる。
【0028】
請求項7に記載の発明では、請求項1ないし4のいずれか1つに記載の車両用空調装置において、制御手段(50)は、外気温度が所定の閾値よりも低いときには、内燃機関(EG)に対して作動要求信号を出力するとともに、蒸気圧縮式冷凍サイクル(10)に対してヒートポンプサイクルの作動要求信号を出力することを特徴とする。
【0029】
これによると、吹出空気温度の上昇が比較的遅い加熱手段(36)に加えて、吹出空気温度の上昇が比較的早いヒートポンプサイクルを併用するので、暖房の即効性を得ることができる。
【0030】
請求項8に記載の発明では、冷媒と外気とを熱交換する室外熱交換器(16)を有し、車室内へ送風される送風空気を加熱するヒートポンプサイクルを構成する蒸気圧縮式冷凍サイクル(10)と、
内燃機関(EG)の冷却水を熱源として送風空気を加熱する加熱手段(36)と、
蒸気圧縮式冷凍サイクル(10)および内燃機関(EG)に対して作動要求信号を出力するか否かを決定する制御手段(50)とを備え、
前記制御手段(50)は、外気温度が第1の所定温度よりも低いときには、蒸気圧縮式冷凍サイクル(10)に対してヒートポンプサイクルの作動要求信号を出力することなく、内燃機関(EG)に対して作動要求信号を出力し、
外気温度が第1の所定温度よりも高くかつ第2の所定温度よりも低いときには、蒸気圧縮式冷凍サイクル(10)に対してヒートポンプサイクルの作動要求信号を出力するとともに、内燃機関(EG)に対して作動要求信号を出力し、
外気温度が第2の所定温度よりも高いときには、内燃機関(EG)に対して作動要求信号を出力することなく、蒸気圧縮式冷凍サイクル(10)に対してヒートポンプサイクルの作動要求信号を出力することを特徴とする。
【0031】
ところで、ヒートポンプサイクルは、外気温度が非常に低い(例えば−5℃程度)場合には、効率が低下するとともに室外熱交換器(16)に着霜して暖房能力不足になるという問題がある。
【0032】
また、内燃機関(EG)の冷却水を熱源として暖房を行う場合には、内燃機関(EG)から騒音や排出ガスが発生するという問題がある。
【0033】
そこで、ヒートポンプサイクルおよび内燃機関(EG)の冷却水を熱源とする暖房における上記問題点を補うべく、外気温度が所定温度よりも低い場合にはエンジン冷却水による暖房を行い、外気温度が所定温度よりも高い場合にはヒートポンプサイクルによる暖房を行うことが考えられる。
【0034】
しかしながら、このような暖房を行う場合には、ヒートポンプサイクルによる暖房から内燃機関(EG)の冷却水を熱源とする暖房に切り替わると暖房が一時的に途切れることが起こり得るという実用上の問題がある。
【0035】
例えば冬季に車両が車庫から外部に出たときのように、内燃機関(EG)の冷却水の温度が十分に上昇していない状態で外気温が急に低下してヒートポンプサイクルによる暖房から内燃機関(EG)の冷却水を熱源とする暖房に切り替わると、内燃機関(EG)の冷却水の温度が十分に上昇するまでは暖房能力が不足してしまうので、暖房が一時的に途切れてしまうこととなる。
【0036】
これに対し、請求項8の発明では、外気温度が第1の所定温度よりも高くかつ第2の所定温度よりも低いときには蒸気圧縮式冷凍サイクル(10)に対してヒートポンプサイクルの作動要求信号を出力するとともに、内燃機関(EG)に対して作動要求信号を出力するので、外気温度が第1の所定温度よりも低くなってヒートポンプサイクルを停止させる状況になる前に予め内燃機関(EG)を作動させて冷却水を暖めておくことができる。
【0037】
このため、ヒートポンプサイクルによる暖房から内燃機関(EG)の冷却水を熱源とする暖房に切り替えられても暖房を途切れさせることなく継続的に行うことができ、ひいては実用性を向上できる。
【0038】
請求項9に記載の発明では、請求項7または8に記載の車両用空調装置において、制御手段(50)は、ヒートポンプサイクルによる暖房と加熱手段(36)による暖房とを併用している場合において、冷却水の温度が所定温度よりも上昇したときにはヒートポンプサイクルを停止させることを特徴とする。
【0039】
これによると、内燃機関(EG)の冷却水を熱源とする加熱手段(36)によって暖房能力をある程度確保できる場合にヒートポンプサイクルの稼働率を低減させることができるので、室外熱交換器(16)の着霜を抑制できるとともに省燃費を図ることができる。
【0040】
請求項10に記載の発明では、請求項7ないし9のいずれか1つに記載の車両用空調装置において、蒸気圧縮式冷凍サイクル(10)は、ヒートポンプサイクルと、送風空気を冷却除湿するクーラサイクルとに切り替え可能に構成されており、
制御手段(50)は、冷却水の温度が所定温度よりも上昇したときには、蒸気圧縮式冷凍サイクル(10)に対してクーラサイクルの作動要求信号を出力することを特徴とする。
【0041】
これによると、クーラサイクルおよび加熱手段(36)により除湿暖房を行うことができるので、ヒートポンプサイクルによる暖房が困難かつ窓曇りが発生しやすい低外気温環境下においても防曇性を確保することができる。
【0042】
請求項11に記載の発明では、請求項1ないし10のいずれか1つに記載の車両用空調装置において、制御手段(50)は、加熱手段(36)による暖房を行っている場合において、冷却水の温度が所定の基準よりも低いときには、冷却水の温度が所定の基準よりも高いときと比較して、内燃機関(EG)に対する要求回転数を高く設定することを特徴とする。
【0043】
これによると、加熱手段(36)による暖房を行っている場合において、冷却水の温度が所定の基準よりも低いときには内燃機関(EG)に対する要求回転数を高くするので、内燃機関(EG)の負荷が小さい場合であっても冷却水の温度を高めて加熱手段(36)の暖房能力を向上することができる。
【0044】
因みに、内燃機関(EG)の負荷が小さい場合とは、例えばハイブリッド車両の場合であれば、バッテリ残量が多くてバッテリ電力を走行に用いる場合等である。
【0045】
請求項12に記載の発明では、冷媒を圧縮して吐出する圧縮機(11)を有し、車室内へ送風される送風空気を冷却するクーラサイクルと、送風空気を加熱するヒートポンプサイクルとに切り替え可能に構成された蒸気圧縮式冷凍サイクル(10)と、
冷媒の圧力が所定圧力よりも低いときには圧縮機(11)を停止させる制御手段(50)とを備え、
制御手段(50)は、ヒートポンプサイクル時には、クーラサイクル時と比較して前記所定圧力を小さく設定することを特徴とする。
【0046】
ところで、冷媒圧力が所定圧力よりも低いときに冷媒不足と判断して圧縮機(11)を停止させる蒸気圧縮式冷凍サイクルにおいては、ヒートポンプサイクル時とクーラサイクル時とで所定圧力を同じ値に設定すると以下のような実用上の問題が生じる。
【0047】
すなわち、ヒートポンプサイクルは、外気温度が低温になると冷媒圧力が低下する傾向があることから、クーラサイクル時を基準として所定圧力を設定した場合には、ヒートポンプサイクル時に外気温度が低温になると冷媒が不足していないにもかかわらず冷媒圧力が所定圧力を下回ってしまい圧縮機(11)が停止してしまう虞がある。換言すれば、低外気温ではヒートポンプサイクルを作動させることができなくなり、ヒートポンプサイクルの作動可能範囲(ヒートポンプサイクルで暖房可能な外気温の範囲)が狭くなってしまう虞がある。
【0048】
この対策として所定圧力を高めに設定すると、クーラサイクル時における冷媒不足の検出が甘くなってしまう。
【0049】
これに対し、請求項12の発明では、ヒートポンプサイクル時には、クーラサイクル時と比較して所定圧力を小さく設定するので、ヒートポンプサイクルの作動可能範囲(ヒートポンプサイクルで暖房可能な外気温の範囲)を低外気温側に拡げることができるとともに、クーラサイクル時に冷媒不足を精度良く検出することができる。よって、実用性を向上することができる。
【0050】
請求項13に記載の発明では、請求項2に記載の車両用空調装置において、制御手段(50)は、目標吹出温度に基づいて目標冷却水温度を決定し、電気ヒータ(37)が作動しているときには目標冷却水温度を減少補正することを特徴とする。
【0051】
これにより、電気ヒータ(37)が作動しているときに暖房能力が過剰となることを抑制できるので、省燃費を図ることができる。
【0052】
請求項14に記載の発明では、請求項2に記載の車両用空調装置において、制御手段(50)は、
目標吹出温度に基づいて目標冷却水温度を決定するとともに電気ヒータ(37)の消費電力に応じて目標冷却水温度を減少補正し、
電気ヒータ(37)の消費電力が多いときほど目標冷却水温度の減少補正量を大きくすることを特徴とする。
【0053】
これにより、請求項14の発明と同様の効果を得ることができる。
【0054】
請求項15に記載の発明では、請求項1に記載の車両用空調装置において、座席に配置され、電力を供給されることによって発熱するシートヒータ(48)を備え、
制御手段(50)は、外気温度が所定の閾値よりも低いときには、内燃機関(EG)に加えてシートヒータ(48)に対しても作動要求信号を出力することを特徴とする。
【0055】
これによると、内燃機関(EG)の冷却水を熱源とする加熱手段(36)とシートヒータ(48)とを併用するので、冷却水の温度が比較的低い場合でも乗員の温感を十分に得ることができる。
【0056】
請求項16に記載の発明では、請求項15に記載の車両用空調装置において、制御手段(50)は、目標吹出温度に基づいて目標冷却水温度を決定し、シートヒータ(48)が作動しているときには目標冷却水温度を減少補正することを特徴とする。
【0057】
これにより、シートヒータ(48)が作動しているときに乗員の温感が過剰となることを抑制できるので、省燃費を図ることができる。
【0058】
請求項17に記載の発明では、請求項15に記載の車両用空調装置において、制御手段(50)は、
目標吹出温度に基づいて目標冷却水温度を決定するとともにシートヒータ(48)の消費電力に応じて目標冷却水温度を減少補正し、
シートヒータ(48)の消費電力が多いときほど目標冷却水温度の減少補正量を大きくすることを特徴とする。
【0059】
これにより、請求項16の発明と同様の効果を得ることができる。
【0060】
請求項18に記載の発明では、車室内へ送風される送風空気を、内燃機関(EG)の冷却水を熱源として加熱する加熱手段(36)と、
電力を供給されることによって送風空気を加熱する電気ヒータ(37)と、
目標吹出温度に基づいて目標冷却水温度を決定する制御手段(50)とを備え、
制御手段(50)は、電気ヒータ(37)が作動しているときには目標冷却水温度を減少補正することを特徴とする。
【0061】
ところで、内燃機関(EG)の冷却水を熱源として送風空気を加熱する加熱手段(36)と、電力を供給されることによって送風空気を加熱する電気ヒータ(37)とを備える車両用空調装置においては、電気ヒータ(37)の作動・停止に関係なく目標冷却水温度を決定すると、電気ヒータ(37)の作動時には暖房能力が過剰となって省燃費に反する結果になるという実用上の問題がある。
【0062】
これに対し、請求項18の発明では、電気ヒータ(37)が作動しているときには目標冷却水温度を減少補正するので、暖房能力が過剰となることを抑制でき、省燃費を図ることができる。
【0063】
請求項19に記載の発明では、車室内へ送風される送風空気を、内燃機関(EG)の冷却水を熱源として加熱する加熱手段(36)と、
電力を供給されることによって送風空気を加熱する電気ヒータ(37)と、
目標吹出温度に基づいて目標冷却水温度を決定するとともに電気ヒータ(37)の消費電力に応じて目標冷却水温度を減少補正する制御手段(50)とを備え、
制御手段(50)は、電気ヒータ(37)の消費電力が多いときほど目標冷却水温度の減少補正量を大きくすることを特徴とする。
【0064】
これによると、電気ヒータ(37)の消費電力が多いときほど目標冷却水温度の減少補正量を大きくするので、電気ヒータ(37)の作動時に暖房能力が過剰となることを抑制でき、省燃費を図ることができる。
【0065】
請求項20に記載の発明では、車室内へ送風される送風空気を、内燃機関(EG)の冷却水を熱源として加熱する加熱手段(36)と、
座席に配置され、電力を供給されることによって発熱するシートヒータ(48)と、
目標吹出温度に基づいて目標冷却水温度を決定する制御手段(50)とを備え、
制御手段(50)は、シートヒータ(48)が作動しているときには目標冷却水温度を減少補正することを特徴とする。
【0066】
ところで、内燃機関(EG)の冷却水を熱源として送風空気を加熱する加熱手段(36)と、座席に配置され、電力を供給されることによって発熱するシートヒータ(48)とを備える車両用空調装置においては、シートヒータ(48)の作動・停止に関係なく目標冷却水温度を決定すると、シートヒータ(48)の作動時には乗員の温感が過剰となって省燃費に反する結果になるという実用上の問題がある。
【0067】
これに対し、請求項20の発明では、シートヒータ(48)が作動しているときには目標冷却水温度を減少補正するので、乗員の温感が過剰となることを抑制でき、省燃費を図ることができる。
【0068】
請求項21に記載の発明では、車室内へ送風される送風空気を、内燃機関(EG)の冷却水を熱源として加熱する加熱手段(36)と、
座席に配置され、電力を供給されることによって発熱するシートヒータ(48)と、
目標吹出温度に基づいて目標冷却水温度を決定するとともにシートヒータ(48)の消費電力に応じて目標冷却水温度を減少補正する制御手段(50)とを備え、
制御手段(50)は、シートヒータ(48)の消費電力が多いときほど目標冷却水温度の減少補正量を大きくすることを特徴とする。
【0069】
これによると、シートヒータ(48)の消費電力が多いときほど目標冷却水温度の減少補正量を大きくするので、シートヒータ(48)の作動時に乗員の温感が過剰となることを抑制でき、省燃費を図ることができる。
【0070】
なお、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の第1実施形態における車両用空調装置の構成図であり、冷房モード時を示している。
【図2】本発明の第1実施形態における車両用空調装置の構成図であり、暖房モード時を示している。
【図3】本発明の第1実施形態における車両用空調装置の構成図であり、第1除湿モード時を示している。
【図4】本発明の第1実施形態における車両用空調装置の構成図であり、第2除湿モード時を示している。
【図5】第1実施形態の車両用空調装置の電気制御部の構成図である。
【図6】第1実施形態の車両用空調装置の制御処理を示すフローチャートである。
【図7】図6のステップS14の詳細を示すフローチャートである。
【図8】第1実施形態の車両用空調装置の各運転モードにおける除湿能力および暖房能力を示す図表である。
【図9】第1実施形態の制御処理の要部を示すフローチャートである。
【図10】第2実施形態の制御処理の要部を示すフローチャートである。
【図11】第3実施形態の制御処理の要部を示すフローチャートである。
【図12】第4実施形態の制御処理の要部を示すフローチャートである。
【図13】第5実施形態の制御処理の要部を示すフローチャートである。
【図14】第6実施形態の制御処理の要部を示すフローチャートである。
【図15】第7実施形態の制御処理の要部を示すフローチャートである。
【図16】第8実施形態の制御処理の要部を示すフローチャートである。
【図17】第9実施形態の制御処理の要部を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0072】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、説明の簡略化を図るべく、図中、同一符号を付してある。
【0073】
(第1実施形態)
図1〜図9により、本発明の第1実施形態を説明する。本実施形態では、本発明の車両用空調装置を、内燃機関(エンジン)EGおよび走行用電動モータから車両走行用の駆動力を得る、いわゆるハイブリッド車両に適用している。図1〜図4は、車両用空調装置1の全体構成図である。
【0074】
この車両用空調装置は、車室内を冷房する冷房モード(COOLサイクル)、車室内を暖房する暖房モード(HOTサイクル)、車室内を除湿する第1除湿モード(DRY_EVAサイクル)および第2除湿モード(DRY_ALLサイクル)の冷媒回路を切替可能に構成された蒸気圧縮式の冷凍サイクル10を備えている。図1〜図4は、それぞれ、冷房モード、暖房モード、第1、第2除湿モード時の冷媒の流れを実線矢印で示している。
【0075】
なお、冷房モードは、冷凍サイクル10をクーラサイクルとして運転するモードであり、冷却能力および除湿能力を有している。従って、冷房モードを冷却除湿モードと表現することもできる。
【0076】
また、暖房モードおよび第1、第2除湿モードは、冷凍サイクル10をヒートポンプサイクルとして運転するモードである。このヒートポンプサイクルによる3つのモードのうち暖房モードは、高い暖房能力を有しているが除湿能力を有していない。従って、暖房モードを除湿無しヒートポンプサイクルと表現することもできる。
【0077】
ヒートポンプサイクルによる3つのモードのうち第1、第2除湿モードは、除湿能力を有しているが暖房能力は暖房モードよりも劣る。従って、第1、第2除湿モードを除湿有りヒートポンプサイクルと表現することもできる。
【0078】
より具体的には、第1除湿モードは、暖房能力に対して除湿能力を優先する除湿モードであり、第2除湿モードは、除湿能力に対して暖房能力を優先する除湿モードである。従って、第1除湿モードを低温除湿モードあるいは単なる除湿モード、第2除湿モードを高温除湿モードあるいは除湿暖房モードと表現することもできる。
【0079】
因みに、図8の図表は、冷房モード、暖房モード、第1、第2除湿モードの除湿能力および暖房能力を比較して示したものである。すなわち、冷房モードは、除湿能力は最も大きいが暖房能力は無い。したがって、暖房時に冷房モードを選択するときは、冷凍サイクル10以外の加熱手段(本例では、後述するヒータコア36やPTCヒータ37)を併用することとなる。
【0080】
暖房モードは、除湿能力は無いが暖房能力は最も大きい。第1除湿モードは、除湿能力は中程度であるが暖房能力は小さい。第2除湿モードは、除湿能力は小さいが暖房能力は中程度である。
【0081】
冷凍サイクル10は、圧縮機11、室内熱交換器としての室内凝縮器12および室内蒸発器26、冷媒を減圧膨張させる減圧手段としての温度式膨張弁27および固定絞り14、並びに、冷媒回路切替手段としての複数(本実施形態では5つ)の電磁弁13、17、20、21、24等を備えている。
【0082】
また、この冷凍サイクル10では、冷媒として通常のフロン系冷媒を採用しており、高圧側冷媒圧力が冷媒の臨界圧力を超えない亜臨界冷凍サイクルを構成している。さらに、この冷媒には圧縮機11を潤滑するための冷凍機油が混入されており、この冷凍機油は冷媒とともにサイクルを循環している。
【0083】
圧縮機11は、エンジンルーム内に配置され、冷凍サイクル10において冷媒を吸入し、圧縮して吐出するもので、吐出容量が固定された固定容量型圧縮機構11aを電動モータ11bにて駆動する電動圧縮機として構成されている。固定容量型圧縮機構11aとしては、具体的に、スクロール型圧縮機構、ベーン型圧縮機構等の各種圧縮機構を採用できる。
【0084】
電動モータ11bは、インバータ61から出力される交流電圧によって、その作動(回転数)が制御される交流モータである。また、インバータ61は、後述する空調制御装置50から出力される制御信号に応じた周波数の交流電圧を出力する。そして、この回転数制御によって、圧縮機11の冷媒吐出能力が変更される。従って、電動モータ11bは、圧縮機11の吐出能力変更手段を構成している。
【0085】
圧縮機11の吐出側には、室内凝縮器12の冷媒入口側が接続されている。室内凝縮器12は、車両用空調装置の室内空調ユニット30において車室内へ送風される送風空気の空気通路を形成するケーシング31内に配置されて、その内部を流通する冷媒と後述する室内蒸発器26通過後の送風空気とを熱交換させることで送風空気を加熱する加熱用熱交換器である。なお、室内空調ユニット30の詳細については後述する。
【0086】
室内凝縮器12の冷媒出口側には、電気式三方弁13が接続されている。この電気式三方弁13は、空調制御装置50から出力される制御電圧によって、その作動が制御される冷媒回路切替手段である。
【0087】
より具体的には、電気式三方弁13は、電力が供給される通電状態では、室内凝縮器12の冷媒出口側と固定絞り14の冷媒入口側との間を接続する冷媒回路に切り替え、電力の供給が停止される非通電状態では、室内凝縮器12の冷媒出口側と第1三方継手15の1つの冷媒流入出口との間を接続する冷媒回路に切り替える。
【0088】
固定絞り14は、暖房モード、第1および第2除湿モード時に、電気式三方弁13から流出した冷媒を減圧膨張させる暖房除湿用の減圧手段である。この固定絞り14としては、キャピラリチューブ、オリフィス等を採用できる。もちろん、暖房除湿用の減圧手段として、空調制御装置50から出力される制御信号によって絞り通路面積が調整される電気式の可変絞り機構を採用してもよい。固定絞り14の冷媒出口側には、後述する第3三方継手23の冷媒流入出口が接続されている。
【0089】
第1三方継手15は、3つの冷媒流入出口を有し、冷媒流路を分岐する分岐部として機能するものである。このような三方継手は、冷媒配管を接合して構成してもよいし、金属ブロックや樹脂ブロックに複数の冷媒通路を設けて構成してもよい。また、第1三方継手15の別の冷媒流入出口には、室外熱交換器16の一方の冷媒流入出口が接続され、さらに別の冷媒流入出口には、低圧電磁弁17の冷媒入口側が接続されている。
【0090】
低圧電磁弁17は、冷媒流路を開閉する弁体部と、弁体部を駆動するソレノイド(コイル)を有し、空調制御装置50から出力される制御電圧によって、その作動が制御される冷媒回路切替手段である。より具体的には、低圧電磁弁17は、通電状態で開弁して非通電状態で閉弁する、いわゆるノーマルクローズ型の開閉弁として構成されている。
【0091】
低圧電磁弁17の冷媒出口側には、第1逆止弁18を介して、後述する第5三方継手28の1つの冷媒流入出口が接続されている。この第1逆止弁18は、低圧電磁弁17側から第5三方継手28側へ冷媒が流れることのみを許容している。
【0092】
室外熱交換器16は、エンジンルーム内に配置されて、内部を流通する冷媒と送風ファン16aから送風された車室外空気(外気)とを熱交換させるものである。送風ファン16aは、空調制御装置50から出力される制御電圧によって回転数(送風空気量)が制御される電動式送風機である。
【0093】
さらに、本実施形態の送風ファン16aは、室外熱交換器16のみならず、エンジンEGの冷却水を放熱させるラジエータ(図示せず)にも室外空気を送風している。具体的には、送風ファン16aから送風された車室外空気は、室外熱交換器16→ラジエータの順に流れる。
【0094】
また、図1〜図4の破線で示す冷却水回路には、冷却水を循環させるための図示しない冷却水ポンプが配置されている。この冷却水ポンプは、空調制御装置50から出力される制御電圧によって回転数(冷却水循環量)が制御される電動式の水ポンプである。
【0095】
室外熱交換器16の他方の冷媒流入出口には、第2三方継手19の1つの冷媒流入出口が接続されている。この第2三方継手19の基本的構成は、第1三方継手15と同様である。また、第2三方継手19の別の冷媒流入出口には、高圧電磁弁20の冷媒入口側が接続され、さらに別の冷媒流入出口には、熱交換器遮断電磁弁21の一方の冷媒流入出口が接続されている。
【0096】
高圧電磁弁20および熱交換器遮断電磁弁21は、空調制御装置50から出力される制御電圧によって、その作動が制御される冷媒回路切替手段であり、その基本的構成は、低圧電磁弁17と同様である。但し、高圧電磁弁20および熱交換器遮断電磁弁21は、通電状態で閉弁して非通電状態で開弁する、いわゆるノーマルオープン型の開閉弁として構成されている。
【0097】
高圧電磁弁20の冷媒出口側には、第2逆止弁22を介して、後述する温度式膨張弁27の絞り機構部入口側が接続されている。この第2逆止弁22は、高圧電磁弁20側から温度式膨張弁27側へ冷媒が流れることのみを許容している。
【0098】
熱交換器遮断電磁弁21の他方の冷媒流入出口には、第3三方継手23の1つの冷媒流入出口が接続されている。この第3三方継手23の基本的構成は、第1三方継手15と同様である。また、第3三方継手23の別の冷媒流入出口には、前述の如く、固定絞り14の冷媒出口側が接続され、さらに別の冷媒流入出口には、除湿電磁弁24の冷媒入口側が接続されている。
【0099】
除湿電磁弁24は、空調制御装置50から出力される制御電圧によって、その作動が制御される冷媒回路切替手段であり、その基本的構成は、低圧電磁弁17と同様である。さらに、除湿電磁弁24もノーマルクローズ型の開閉弁として構成されている。そして、本実施形態の冷媒回路切替手段は、電気式三方弁13、低圧電磁弁17、高圧電磁弁20、熱交換器遮断電磁弁21、除湿電磁弁24の複数(5つ)の電磁弁によって構成される。
【0100】
除湿電磁弁24の冷媒出口側には、第4三方継手25の1つの冷媒流入出口が接続されている。この第4三方継手25の基本的構成は、第1三方継手15と同様である。また、第4三方継手25の別の冷媒流入出口には、温度式膨張弁27の絞り機構部出口側が接続され、さらに別の冷媒流入出口には、室内蒸発器26の冷媒入口側が接続されている。
【0101】
室内蒸発器26は、室内空調ユニット30のケーシング31内のうち、室内凝縮器12の送風空気流れ上流側に配置されて、その内部を流通する冷媒と送風空気とを熱交換させて送風空気を冷却する冷却用熱交換器である。
【0102】
室内蒸発器26の冷媒出口側には、温度式膨張弁27の感温部入口側が接続されている。温度式膨張弁27は、絞り機構部入口から内部へ流入した冷媒を減圧膨張させて絞り機構部出口から外部へ流出させる冷房用の減圧手段である。
【0103】
より具体的には、本実施形態では、温度式膨張弁27として、室内蒸発器26出口側冷媒の温度および圧力に基づいて室内蒸発器26出口側冷媒の過熱度を検出する感温部27aと、感温部27aの変位に応じて室内蒸発器26出口側冷媒の過熱度が予め定めた所定範囲となるように絞り通路面積(冷媒流量)を調整する可変絞り機構部27bとを1つのハウジング内に収容した内部均圧型膨張弁を採用している。
【0104】
温度式膨張弁27の感温部出口側には、第5三方継手28の1つの冷媒流入出口が接続されている。この第5三方継手28の基本的構成は、第1三方継手15と同様である。また、第5三方継手28の別の冷媒流入出口には、前述の如く、第1逆止弁18の冷媒出口側が接続され、さらに別の冷媒流入出口には、アキュムレータ29の冷媒入口側が接続されている。
【0105】
アキュムレータ29は、第5三方継手28から、その内部に流入した冷媒の気液を分離して、余剰冷媒を蓄える低圧側気液分離器である。さらに、アキュムレータ29の気相冷媒出口には、圧縮機11の冷媒吸入口が接続されている。
【0106】
次に、室内空調ユニット30について説明する。室内空調ユニット30は、車室内最前部の計器盤(インストルメントパネル)の内側に配置されて、その外殻を形成するケーシング31内に送風機32、前述の室内蒸発器26、室内凝縮器12、ヒータコア36、PTCヒータ37等を収容したものである。
【0107】
ケーシング31は、車室内に送風される送風空気の空気通路を形成しており、ある程度の弾性を有し、強度的にも優れた樹脂(例えば、ポリプロピレン)にて成形されている。ケーシング31内の送風空気流れ最上流側には、内気(車室内空気)と外気(車室外空気)とを切替導入する内外気切替箱40が配置されている。
【0108】
より具体的には、内外気切替箱40には、ケーシング31内に内気を導入させる内気導入口40aおよび外気を導入させる外気導入口40bが形成されている。さらに、内外気切替箱40の内部には、内気導入口40aおよび外気導入口40bの開口面積を連続的に調整して、内気の風量と外気の風量との風量割合を変化させる内外気切替ドア40cが配置されている。
【0109】
従って、内外気切替ドア40cは、ケーシング31内に導入される内気の風量と外気の風量との風量割合を変化させる吸込口モードを切り替える風量割合変更手段を構成する。より具体的には、内外気切替ドア40cは、内外気切替ドア40c用の電動アクチュエータ62によって駆動され、この電動アクチュエータ62は、空調制御装置50から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
【0110】
また、吸込口モードとしては、内気導入口40aを全開とするとともに外気導入口40bを全閉としてケーシング31内へ内気を導入する内気モード、内気導入口40aを全閉とするとともに外気導入口40bを全開としてケーシング31内へ外気を導入する外気モード、さらに、内気モードと外気モードとの間で、内気導入口40aおよび外気導入口40bの開口面積を連続的に調整することにより、内気と外気の導入比率を連続的に変化させる内外気混入モードがある。
【0111】
内外気切替箱40の空気流れ下流側には、内外気切替箱40を介して吸入した空気を車室内へ向けて送風する送風機32が配置されている。この送風機32は、遠心多翼ファン(シロッコファン)を電動モータにて駆動する電動送風機であって、空調制御装置50から出力される制御電圧によって回転数(送風量)が制御される。
【0112】
送風機32の空気流れ下流側には、前述の室内蒸発器26が配置されている。さらに、室内蒸発器26の空気流れ下流側には、室内蒸発器26通過後の空気を流す加熱用冷風通路33、冷風バイパス通路34といった空気通路、並びに、加熱用冷風通路33および冷風バイパス通路34から流出した空気を混合させる混合空間35が形成されている。
【0113】
加熱用冷風通路33には、室内蒸発器26通過後の空気を加熱するための加熱手段としてのヒータコア36、室内凝縮器12、およびPTCヒータ37が、送風空気流れ方向に向かってこの順で配置されている。ヒータコア36およびPTCヒータ37は、冷媒以外を熱源として送風空気を加熱する加熱手段である。
【0114】
ヒータコア36は、車両走行用駆動力を出力するエンジンEGの冷却水と室内蒸発器26通過後の空気とを熱交換させて、室内蒸発器26通過後の空気を加熱する加熱用熱交換器である。
【0115】
また、PTCヒータ37は、PTC素子(正特性サーミスタ)を有し、電力を供給されることによって発熱して、室内凝縮器12通過後の空気を加熱する電気ヒータである。なお、本実施形態のPTCヒータ37は、複数本(具体的には3本)設けられており、空調制御装置50が、通電するPTCヒータ37の本数を変化させることによって、複数のPTCヒータ37全体としての加熱能力が制御される。
【0116】
一方、冷風バイパス通路34は、室内蒸発器26通過後の空気を、ヒータコア36、室内凝縮器12、およびPTCヒータ37を通過させることなく、混合空間35に導くための空気通路である。従って、混合空間35にて混合された送風空気の温度は、加熱用冷風通路33を通過する空気および冷風バイパス通路34を通過する空気の風量割合によって変化する。
【0117】
そこで、本実施形態では、室内蒸発器26の空気流れ下流側であって、加熱用冷風通路33および冷風バイパス通路34の入口側に、加熱用冷風通路33および冷風バイパス通路34へ流入させる冷風の風量割合を連続的に変化させるエアミックスドア38を配置している。
【0118】
従って、エアミックスドア38は、混合空間35内の空気温度(車室内へ送風される送風空気の温度)を調整する温度調整手段を構成する。より具体的には、エアミックスドア38は、エアミックスドア用の電動アクチュエータ63によって駆動され、この電動アクチュエータ63は、空調制御装置50から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
【0119】
さらに、ケーシング31の送風空気流れ最下流部には、混合空間35から冷却対象空間である車室内へ温度調整された送風空気を吹き出す吹出口41〜43が配置されている。この吹出口41〜43としては、具体的に、車室内の乗員の上半身に向けて空調風を吹き出すフェイス吹出口41、乗員の足元に向けて空調風を吹き出すフット吹出口42、および、車両前面窓ガラス内側面に向けて空調風を吹き出すデフロスタ吹出口43が設けられている。
【0120】
また、フェイス吹出口41、フット吹出口42、およびデフロスタ吹出口43の空気流れ上流側には、それぞれ、フェイス吹出口41の開口面積を調整するフェイスドア41a、フット吹出口42の開口面積を調整するフットドア42a、デフロスタ吹出口43の開口面積を調整するデフロスタドア43aが配置されている。
【0121】
これらのフェイスドア41a、フットドア42a、デフロスタドア43aは、吹出口モードを切替える吹出口モード切替手段を構成するものであって、図示しないリンク機構を介して、吹出口モードドア駆動用の電動アクチュエータ64に連結されて連動して回転操作される。なお、この電動アクチュエータ64も、空調制御装置50から出力される制御信号によってその作動が制御される。
【0122】
また、吹出口モードとしては、フェイス吹出口41を全開してフェイス吹出口41から車室内乗員の上半身に向けて空気を吹き出すフェイスモード、フェイス吹出口41とフット吹出口42の両方を開口して車室内乗員の上半身と足元に向けて空気を吹き出すバイレベルモード、フット吹出口42を全開するとともにデフロスタ吹出口43を小開度だけ開口して、フット吹出口42から主に空気を吹き出すフットモード、およびフット吹出口42およびデフロスタ吹出口43を同程度開口して、フット吹出口42およびデフロスタ吹出口43の双方から空気を吹き出すフットデフロスタモードがある。
【0123】
さらに、乗員が後述する操作パネル60の吹出口モードスイッチをマニュアル操作することによって、デフロスタ吹出口43を全開してデフロスタ吹出口43から車両フロント窓ガラス内面に空気を吹き出すデフロスタモードとすることもできる。
【0124】
要するに、吹出口モードとしてフットモードが選択されているときには、空気を少なくともフット吹出口42から吹き出し、フットデフロスタモードまたはデフロスタモードが選択されているときには、デフロスタ吹出口43から吹き出される空気の風量割合がフットモードよりも多くなって窓曇りが防止される。よって、フットデフロスタモードおよびデフロスタモードを防曇モードと表現することもできる。
【0125】
なお、本実施形態の車両用空調装置1が適用されるハイブリッド車両は、車両用空調装置とは別に、電熱デフォッガ47およびシート暖房装置48を備えている。電熱デフォッガ47とは、車室内窓ガラスの内部あるいは表面に配置された電熱線であって、窓ガラスを加熱することで防曇あるいは窓曇り解消を行う窓ガラス加熱手段である。
【0126】
シート暖房装置48とは、座席(シート)の内部あるいは表面に配置された暖房装置であって、乗員の体を直接的に温めて乗員の温感を効果的に高めるものである。本例では、シート暖房装置48として、通電により発熱する電熱線を用いている。
【0127】
この電熱デフォッガ47およびシート暖房装置48についても空調制御装置50から出力される制御信号によって、その作動を制御できるようになっている。
【0128】
次に、図5により、本実施形態の電気制御部について説明する。空調制御装置50は、CPU、ROMおよびRAM等を含む周知のマイクロコンピュータとその周辺回路から構成され、そのROM内に記憶された空調制御プログラムに基づいて各種演算、処理を行い、出力側に接続された圧縮機11の電動モータ11b用のインバータ61、冷媒回路切替手段を構成する各電磁弁13、17、20、21、24、送風ファン16a、送風機32、各種電動アクチュエータ62、63、64等の作動を制御する。
【0129】
なお、空調制御装置50は、上述した各種機器を制御する制御手段が一体に構成されたものである。例えば、空調制御装置50は、上述した冷房モード、暖房モード、および第1、第2除湿モードの切替制御を行う制御手段を構成する。
【0130】
本実施形態では、特に、圧縮機11の吐出能力変更手段である電動モータ11bの作動(冷媒吐出能力)を制御する構成(ハードウェアおよびソフトウェア)を吐出能力制御手段50aとする。もちろん、吐出能力制御手段50aを空調制御装置50に対して別体で構成してもよい。
【0131】
また、空調制御装置50の入力側には、車室内温度Trを検出する内気センサ51、外気温Tamを検出する外気センサ52(外気温検出手段)、車室内の日射量Tsを検出する日射センサ53、圧縮機11吐出冷媒温度Tdを検出する吐出温度センサ54(吐出温度検出手段)、圧縮機11吐出冷媒圧力Pdを検出する吐出圧力センサ55(吐出圧力検出手段)、室内蒸発器26からの吹出空気温度(蒸発器温度)TEを検出する蒸発器温度センサ56(蒸発器温度検出手段)、第1三方継手15と低圧電磁弁17との間を流通する冷媒の温度Tsiを検出する吸入温度センサ57、エンジン冷却水温度Twを検出する冷却水温度センサ、窓ガラス表面の相対湿度RHWを算出するために必要な検出値を検出するRHWセンサ45(窓ガラス表面相対湿度検出手段)等のセンサ群の検出信号が入力される。ここで、窓ガラス表面相対湿度RHWは、窓ガラス室内側表面の相対湿度のことである。
【0132】
なお、本実施形態の蒸発器温度センサ56は、具体的に室内蒸発器26の熱交換フィン温度を検出している。もちろん、蒸発器温度センサ56として、室内蒸発器26のその他の部位の温度を検出する温度検出手段を採用してもよいし、室内蒸発器26を流通する冷媒自体の温度を直接検出する温度検出手段を採用してもよい。
【0133】
また、本実施形態のRHWセンサ45は、具体的には、車室内の窓ガラス近傍の車室内空気の相対湿度を検出する湿度センサ、窓ガラス近傍の車室内空気の温度を検出する窓ガラス近傍温度センサ、および窓ガラス表面温度を検出する窓ガラス表面温度センサの3つのセンサで構成されている。
【0134】
本例では、RHWセンサ45を車両窓ガラスの車室内側の表面(例えば車両フロント窓ガラスの中央上部にあるバックミラーのすぐ横)に配置している。
【0135】
さらに、空調制御装置50の入力側には、車室内前部の計器盤付近に配置された操作パネル60に設けられた各種空調操作スイッチからの操作信号が入力される。操作パネル60に設けられた各種空調操作スイッチとしては、具体的に、車両用空調装置1の作動スイッチ(図示せず)、エアコンのオン・オフ(具体的には圧縮機11のオン・オフ)を切り替えるエアコンスイッチ60a、車両用空調装置1の自動制御を設定・解除するオートスイッチ60b、運転モードの切替スイッチ(図示せず)、吸込口モードを切り替える吸込口モードスイッチ(図示せず)、吹出口モードを切り替える吹出口モードスイッチ(図示せず)、送風機32の風量設定スイッチ(図示せず)、車室内温度を設定する車室内温度設定スイッチ60c、冷凍サイクルの省動力化を優先させる指令を出力するエコノミースイッチ(図示せず)等が設けられている。
【0136】
次に、図6により、上記構成における本実施形態の作動を説明する。図6は、本実施形態の車両用空調装置1の制御処理を示すフローチャートである。この制御処理は、車両システムが停止している場合でも、バッテリから空調制御装置50に電力が供給されることによって実行される。
【0137】
まず、ステップS1では、プレ空調のスタートスイッチ、あるいは操作パネル60の車両用空調装置1の作動スイッチが投入(ON)されたか否かを判定する。そして、プレ空調のスタートスイッチ、あるいは車両用空調装置1の作動スイッチが投入されるとステップS2へ進む。
【0138】
なお、プレ空調とは、乗員が車両に乗り込む前に車室内の空調を開始する空調制御である。プレ空調のスタートスイッチは、乗員が携帯する無線端末(リモコン)に設けられている。従って、乗員は車両から離れた場所から車両用空調装置1を始動させることができる。
【0139】
さらに、本実施形態の車両用空調装置1が適用されるハイブリッド車両では、バッテリに対して商用電源(外部電源)から電力を供給することによって、バッテリの充電を行うことができる。そこで、プレ空調は、車両が外部電源に接続されている場合は所定時間(例えば、30分間)だけ行われ、外部電源に接続されていない場合は、バッテリ残量が所定量以下となるまで行うようになっている。
【0140】
ステップS2では、フラグ、タイマ等の初期化、および上述した電動アクチュエータを構成するステッピングモータの初期位置合わせ等が行われる。次のステップS3では、操作パネル60の操作信号を読み込んでステップS4へ進む。具体的な操作信号としては、車室内温度設定スイッチ60cによって設定される車室内設定温度Tset、吹出口モードの選択信号、吸込口モードの選択信号、送風機32の風量の設定信号等がある。
【0141】
ステップS4では、空調制御に用いられる車両環境状態の信号、すなわち上述のセンサ群51〜57の検出信号を読み込んで、ステップS5へ進む。ステップS5では、車室内吹出空気の目標吹出温度TAOを算出する。さらに、暖房モードでは、暖房用熱交換器目標温度を算出する。目標吹出温度TAOは、下記数式F1により算出される。
TAO=Kset×Tset−Kr×Tr−Kam×Tam−Ks×Ts+C…(F1)
ここで、Tsetは車室内温度設定スイッチ60cによって設定された車室内設定温度、Trは内気センサ51によって検出された車室内温度(内気温)、Tamは外気センサ52によって検出された外気温、Tsは日射センサ53によって検出された日射量である。Kset、Kr、Kam、Ksは制御ゲインであり、Cは補正用の定数である。
【0142】
また、暖房用熱交換器目標温度は、基本的に上述の数式F1にて算出される値となるが、消費電力の抑制のために数式F1にて算出されるTAOよりも低い値とする補正が行われる場合もある。
【0143】
続くステップS6〜S16では、空調制御装置50に接続された各種機器の制御状態が決定される。まず、ステップS6では、空調環境状態に応じて、冷房モード、暖房モード、第1除湿モードおよび第2除湿モードの選択およびPTCヒータ37の通電有無の決定が行われる。本実施形態のステップS6のより詳細な内容については後述する。
【0144】
ステップS7では、送風機32により送風される空気の目標送風量を決定する。具体的には電動モータに印加するブロワモータ電圧をステップS4にて決定されたTAOに基づいて、予め空調制御装置50に記憶された制御マップを参照して決定する。
【0145】
具体的には、本実施形態では、TAOの極低温域(最大冷房域)および極高温域(最大暖房域)でブロワモータ電圧を最大値付近の高電圧にして、送風機32の風量を最大風量付近に制御する。また、TAOが極低温域から中間温度域に向かって上昇すると、TAOの上昇に応じてブロワモータ電圧を減少して、送風機32の風量を減少させる。
【0146】
さらに、TAOが極高温域から中間温度域に向かって低下すると、TAOの低下に応じてブロワモータ電圧を減少して、送風機32の風量を減少させる。また、TAOが所定の中間温度域内に入ると、ブロワモータ電圧を最小値にして送風機32の風量を最小値にするようになっている。
【0147】
ステップS8では、吸込口モード、すなわち内外気切替箱40の切替状態を決定する。この吸込口モードもTAOに基づいて、予め空調制御装置50に記憶された制御マップを参照して決定する。本実施形態では、基本的に外気を導入する外気モードが優先されるが、TAOが極低温域となって高い冷房性能を得たい場合等に内気を導入する内気モードが選択される。さらに、外気の排ガス濃度を検出する排ガス濃度検出手段を設け、排ガス濃度が予め定めた基準濃度以上となったときに、内気モードを選択するようにしてもよい。
【0148】
ステップS9では、吹出口モードを決定する。この吹出口モードも、TAOに基づいて、予め空調制御装置50に記憶された制御マップを参照して決定する。本実施形態では、TAOが低温域から高温域へと上昇するにつれて吹出口モードをフットモード→バイレベルモード→フェイスモードへと順次切り替える。
【0149】
従って、夏季は主にフェイスモード、春秋季は主にバイレベルモード、そして冬季は主にフットモードが選択される。さらに、湿度センサの検出値から窓ガラスに曇りが発生する可能性が高い場合には、フットデフロスタモードあるいはデフロスタモードを選択するようにしてもよい。
【0150】
ステップS10では、エアミックスドア38の目標開度SWを上記TAO、蒸発器温度センサ56によって検出された室内蒸発器26からの吹出空気温度TE、加熱器温度に基づいて算出する。
【0151】
ここで、加熱器温度とは、加熱用冷風通路33に配置された加熱手段(ヒータコア36、室内凝縮器12、およびPTCヒータ37)の加熱能力に応じて決定される値であって、具体的には、エンジン冷却水温度Twを採用できる。従って、目標開度SWは、次の数式F2により算出できる。
SW=[(TAO−TE)/(Tw−TE)]×100(%)…(F2)
なお、SW=0(%)は、エアミックスドア38の最大冷房位置であり、冷風バイパス通路34を全開し、加熱用冷風通路33を全閉する。これに対し、SW=100(%)は、エアミックスドア38の最大暖房位置であり、冷風バイパス通路34を全閉し、加熱用冷風通路33を全開する。
【0152】
ステップS11では、圧縮機11の冷媒吐出能力(具体的には、回転数)を決定する。本実施形態の基本的な圧縮機11の回転数の決定手法は以下の通りである。例えば、冷房モードでは、ステップS4で決定したTAO等に基づいて、予め空調制御装置50に記憶されている制御マップを参照して、室内蒸発器26からの吹出空気温度TEの目標吹出温度TEOを決定する。
【0153】
そして、この目標吹出温度TEOと吹出空気温度TEの偏差En(TEO−TE)を算出し、この偏差Enと、今回算出された偏差Enから前回算出された偏差En−1を減算した偏差変化率Edot(En−(En−1))とを用いて、予め空調制御装置50に記憶されたメンバシップ関数とルールとに基づいたファジー推論に基づいて、前回の圧縮機回転数fCn−1に対する回転数変化量ΔfCを求める。
【0154】
また、暖房モードでは、ステップS4で決定した暖房用熱交換器目標温度等に基づいて、予め空調制御装置50に記憶されている制御マップを参照して、吐出冷媒圧力Pdの目標高圧PDOを決定し、この目標高圧PDOと吐出冷媒圧力Pdの偏差Pn(PDO−Pd)を算出する。さらに、この偏差Pnと、前回算出された偏差Pn−1に対する偏差変化率Pdot(Pn−(Pn−1))とを用いて、ファジー推論に基づいて、前回の圧縮機回転数fHn−1に対する回転数変化量ΔfHを求める。
【0155】
ステップS12では、室外熱交換器16に向けて外気を送風する送風ファン16aの稼働率を決定する。本実施形態の基本的な送風ファン16aの稼働率の決定手法は以下の通りである。つまり、圧縮機11吐出冷媒温度Tdの増加に伴って送風ファン16aの稼働率が増加するように第1の仮稼働率を決定し、エンジン冷却水温度Twの上昇に伴って送風ファン16aの稼働率が増加するように第2の仮稼働率を決定する。
【0156】
さらに、第1、第2の仮稼働率のうち大きい方を選択し、選択された稼働率に対して、送風ファン16aの騒音低減や車速を考慮した補正を行った値を送風ファン16aの稼働率に決定する。本実施形態のステップS12のより詳細な内容については後述する。
【0157】
ステップS13では、PTCヒータ37の作動本数の決定および電熱デフォッガ47の作動状態の決定が行われる。PTCヒータ37の作動本数は、例えば、ステップS6にてPTCヒータ37への通電が必要とされたときに、暖房モード時にエアミックスドア38の目標開度SWが100%となっても、暖房用熱交換器目標温度を得られない場合に、内気温Trと暖房用熱交換器目標温度との差に応じて決定すればよい。
【0158】
また、車室内の湿度および温度から窓ガラスに曇りが発生する可能性が高い場合、あるいは窓ガラスに曇りが発生している場合は、電熱デフォッガ47を作動させる。
【0159】
次に、ステップS14にて、上述のステップS6で決定された運転モードに応じて、冷媒回路切替手段である各電磁弁13、17、20、21、24の作動状態を決定する。この際、本実施形態では、サイクルに応じた冷媒回路を実現するため、基本的には冷媒が流通する冷媒流路が開となるように各電磁弁を制御し、冷媒圧力の高低圧関係によって冷媒が流通しない冷媒流路については各電磁弁を非通電状態として、消費電力の抑制を行う。
【0160】
ステップS14の詳細については、図7のフローチャートを用いて説明する。まず、ステップS14aで、ステップS6で決定された運転モードをメモリCYCLE_VALVEに読み込む。次に、ステップS14bにて、車両用空調装置1が停止しているか否か、すなわち車室内の空調を行わないか否かが判定される。
【0161】
ステップS14bにて、車両用空調装置1が停止していると判定された場合は、ステップS14cにて、メモリCYCLE_VALVEを冷房モード(COOLサイクル)に設定してステップS14dへ進む。ステップS14cにて、車両用空調装置1が停止していないと判定された場合は、ステップS14dへ進む。
【0162】
ステップS14dでは、各電磁弁13、17、20、21、24の作動状態が決定される。具体的には、メモリCYCLE_VALVEが冷房モード(COOLサイクル)に設定されている場合は、全ての電磁弁を非通電状態とする。また、メモリCYCLE_VALVEが冷房モード(HOTサイクル)に設定されている場合は、電気式三方弁13、高圧電磁弁20、低圧電磁弁17を通電状態とし、残りの電磁弁21、24を非通電状態とする。また、メモリCYCLE_VALVEが第1除湿モード(DRY_EVAサイクル)に設定されている場合は、電気式三方弁13、低圧電磁弁17、除湿電磁弁24および熱交換器遮断電磁弁21を通電状態とし、高圧電磁弁20を非通電状態とする。また、メモリCYCLE_VALVEが第2除湿モード(DRY_ALLサイクル)に設定されている場合は、電気式三方弁13、低圧電磁弁17、除湿電磁弁24を通電状態とし、残りの電磁弁20、21を非通電状態とする。
【0163】
つまり、本実施形態では、いずれの運転モードの冷媒回路に切り替えた場合であっても、各電磁弁13、17、20、21、24のうち少なくとも1つの電磁弁に対する電力の供給が停止されるように構成されている。
【0164】
ステップS15では、エンジンEGの作動要求有無を決定する。ここで、車両走行用の駆動力をエンジンEGのみから得る通常の車両では、常時エンジンを作動させているのでエンジン冷却水も常時高温となる。従って、通常の車両ではエンジン冷却水をヒータコア36に流通させることで充分な暖房性能を発揮することができる。
【0165】
これに対して、本実施形態のようなハイブリッド車両では、バッテリ残量に余裕があれば、走行用電動モータのみから走行用の駆動力を得て走行することができる。このため、高い暖房性能が必要な場合であっても、エンジンEGが停止しているとエンジン冷却水温度が40℃程度にしか上昇せず、ヒータコア36にて充分な暖房性能が発揮できなくなる。
【0166】
そこで、本実施形態では、暖房をヒートポンプサイクルで行うことによって、エンジン冷却水温度が低いときでも暖房に必要な熱源を確保できるようにしている。しかしながら、車両用空調装置において暖房をヒートポンプサイクルで行うことには実用上の種々の問題がある。
【0167】
例えば、ヒートポンプサイクルは、外気温がかなり低い場合には効率が低下してしまうという問題がある。また、本実施形態のごとくヒートポンプサイクルで除湿ができるように構成された冷凍サイクル10においては、ヒートポンプサイクルの除湿能力はクーラサイクルの除湿能力よりも劣るので、防曇性も劣るという問題がある。
【0168】
このような実用上の問題から、ヒートポンプサイクルを選択すると支障がある場合には、通常の車両と同様に、ヒータコア36による暖房や、クーラサイクルとヒータコア36とを併用した除湿暖房を行う必要がある。
【0169】
そこで、ヒータコア36による暖房に必要な熱源を確保するため、高い暖房性能が必要な場合であってもエンジン冷却水温度Twが予め定めた基準冷却水温度よりも低いときは、空調制御装置50からエンジンEGの制御に用いられるエンジン制御装置(図示せず)に対して、エンジンEGを作動するように要求信号を出力する。
【0170】
これにより、エンジン冷却水温度Twを上昇させて高い暖房性能を得るようにしている。なお、このようなエンジンEGの作動要求信号は、車両走行用の駆動源としてエンジンEGを作動させる必要の無い場合であってもエンジンEGを作動させることになるので、車両燃費を悪化させる要因となる。このため、エンジンEGの作動要求信号を出力する頻度は極力低減させることが望ましい。
【0171】
ステップS16では、室外熱交換器16に着霜が生じている場合に、室外熱交換器16の除霜制御を行う。ここで、暖房モードの冷媒回路のように、室外熱交換器16にて冷媒に吸熱作用を発揮させる際に、室外熱交換器16における冷媒蒸発温度が−12℃程度まで低下すると、室外熱交換器16に着霜が生じることが知られている。
【0172】
このような着霜が生じると、室外熱交換器16に車室外空気が流通できなくなり、室外熱交換器16にて冷媒と車室外空気とが熱交換できなくなってしまう。このため、室外熱交換器16に着霜が生じた際には、強制的に冷房モードとする制御処理を行う。後述するように冷房モードの冷媒回路では、室外熱交換器16にて冷媒が放熱するので、室外熱交換器16に生じた霜を溶かすことができる。
【0173】
ステップS17では、上述のステップS6〜S16で決定された制御状態が得られるように、空調制御装置50より各種機器61、13、17、20、21、24、16a、32、62、63、64に対して制御信号および制御電圧が出力される。例えば、圧縮機11の電動モータ11b用のインバータ61に対しては、圧縮機11の回転数がステップS11で決定された回転数となるように制御信号が出力される。
【0174】
次のステップS18では、制御周期τの間待機し、制御周期τの経過を判定するとステップS3に戻るようになっている。なお、本実施形態は制御周期τを250msとしている。これは、車室内の空調制御は、エンジン制御等と比較して遅い制御周期であってもその制御性に悪影響を与えないからである。さらに、車両内における空調制御のための通信量を抑制して、エンジン制御等のように高速制御を行う必要のある制御系の通信量を充分に確保することができる。
【0175】
次に、上述のステップS6のより詳細な内容を説明する。図9は、ステップS6の要部を示すフローチャートである。図9のフローチャートの制御処理は、エアコンスイッチ60aおよびオートスイッチ60bがオン(ON)されているとき等に実行される。
【0176】
ステップS30で、現在の空調制御がプレ空調か否かを判定する。このステップS30でプレ空調ではないと判定した場合(NO判定の場合)にはステップS31に進む。
【0177】
そして、ステップS31では、外気温が極低温域であるか否かを判定する。例えば、外気センサ52で検出した外気温Tamが−5℃よりも低いか否かを判定する。このステップS31で外気温が−5℃よりも低いと判定した場合(YES判定の場合)には、ステップS32に進み、エンジンEGの作動(エンジンON)を選択する。すなわち、車室内の暖房手段として、エンジン冷却水を熱源として送風空気を加熱するヒータコア36を選択する。
【0178】
この結果、エンジンEGが停止していれば、図6中のステップS15にてエンジン制御装置に対してエンジンEGを始動するように要求信号を出力することとなり、エンジンEGが作動することとなる。
【0179】
続いて、ステップS33では、窓ガラス表面の相対湿度RHWを算出し、算出した窓ガラス表面の相対湿度RHWに基づいて、窓曇りの可能性が高いか否かを判定する。本例では、RHWが110よりも高いか否かを判定する。
【0180】
ステップS33でRHWが110よりも高い場合(YES判定の場合)には、窓曇りの可能性が高いと判断してステップS34に進み、エンジンEGに対する要求回転数である要求エンジン回転数を高めの数値(本例では1500rpm)に設定する。この結果、図6中のステップS15にて、エンジン制御装置に対して高いエンジン回転数でのエンジン作動を要求することとなる。
【0181】
一方、ステップS33で否定判定した場合(NO判定の場合)にはステップS35に進む。ステップS35では、操作パネル60の車室内温度設定スイッチ60cによって設定された車室内設定温度Tsetが所定設定温度よりも高いか否かを判定する。本例では、Tsetが31℃よりも高いか否かを判定する。
【0182】
ステップS35でTsetが31℃よりも高いと判定した場合(YES判定の場合)には、上述したステップS34に進み、要求エンジン回転数を高めの数値に設定する。一方、ステップS35で否定判定した場合(NO判定の場合)にはステップS36に進む。
【0183】
ステップS36では、エンジン冷却水温度Twが所定の基準よりも低いか否かを判定する。本例では、目標吹出温度TAOに対してエンジン冷却水温度Twが低く、かつ、その温度差が10℃よりも大きいか否かを判定する。
【0184】
そして、目標吹出温度TAOに対してエンジン冷却水温度Twが低く、かつ、その温度差が10℃よりも大きいと判定した場合(YES判定の場合)には上述したステップS34に進み、要求エンジン回転数を高めの数値に設定する。
【0185】
一方、ステップS36で否定判定した場合(NO判定の場合)にはステップS37に進む。ステップS37では、要求エンジン回転数を低めの数値(本例では1000rpm)に設定する。ここで、ステップS33、S35、S36のいずれでも否定判定された場合(NO判定の場合)には、エンジン冷却水温度Twを速やかに上昇させる必要が無いので、ステップS37のようにエンジン回転数を低く設定することで燃費の向上を図ることができる。
【0186】
ステップS34、S37で要求エンジン回転数を選択した後、ステップS38でPTCヒータ37の作動(PTC ON)を選択する。この結果、図6中のステップS17においてPTCヒータ37に対して制御信号を出力することで、PTCヒータ37が送風空気を加熱することとなる。
【0187】
続いて、ステップS39では、冷凍サイクルの運転モードとしてクーラサイクル(冷房モード)を選択する。この結果、クーラサイクルにより除湿するとともにヒータコア36およびPTCヒータ37で暖房する除湿暖房が行われることとなる。
【0188】
一方、ステップS31で外気温が−5℃以上である判定した場合(NO判定の場合)には、ステップS40に進む。ステップS40では、TAOに基づいて決定された吹出口モード(オート吹出口)がフェイスモードであるか否かを判定する。これは、暖房の必要性を判断するためである。
【0189】
そして、吹出口モードがフェイスモードである場合(YES判定の場合)には、暖房の必要無しと判断してステップS41に進み、冷凍サイクルの運転モードとしてクーラサイクル(冷房モード)を選択する。一方、吹出口モードがフェイスモードでない場合(NO判定の場合)には、暖房の必要有りと判断してステップS46以降に進み、除湿の必要性に応じてHOTサイクル、DRY_EVAサイクル、DRY_ALLサイクル(暖房モード、第1除湿モード、第2除湿モード)のいずれかを選択する。
【0190】
因みに、上述のように、TAOに基づく吹出口モードの決定は図6のステップS9で行われる。このため、ステップS40の判定が初めて実行される場合には、まだ吹出口モード(オート吹出口)が決定されていないこととなる。そこで、ステップS40の判定が初めて実行される場合には、ステップS40以降(具体的にはステップS40、S41、S46〜S50)を省略するか、仮の吹出口モード(吹出口モードの初期設定)でステップS40の判定を行う等の処理を行う。
【0191】
一方、ステップS30でプレ空調であると判定した場合(YES判定の場合)にはステップS42に進む。ステップS42では、ステップS31と同様に、外気温Tamが−5℃よりも低いか否かを判定する。そして、外気温が−5℃よりも低いと判定した場合(YES判定の場合)には、ステップS43でPTCヒータ37の作動(PTC ON)を選択するとともに、冷凍サイクルの運転停止を選択する。これにより、PTCヒータ37を用いたプレ空調(暖房)を行うようにする。
【0192】
一方、ステップS42で否定判定した場合(NO判定の場合)には、ステップS44に進み、ステップS40と同様に、吹出口モードがフェイスモードであるか否かを判定する。そして、フェイスモードの場合(YES判定の場合)には、暖房の必要無しと判断してステップS45に進み、クーラサイクル(冷房モード)を選択する。また、フェイスモード以外の場合(NO判定の場合)にはステップS46に進む。
【0193】
ステップS46では、窓曇りの可能性があるか否かを、窓ガラス表面の相対湿度RHWに基づいて判定する。本例では、RHWが100よりも高いか否かを判定する。そして、RHWが100よりも高い場合(YES判定の場合)には、窓曇りの可能性があると判断してステップS47に進む。
【0194】
ステップS47では、除湿の必要度合い(必要性)を蒸発器吹出空気温度Teに基づいて判定し、その判定結果に応じて、ステップS48〜S50で暖房モード、第1除湿モード、第2除湿モードのいずれかを選択する。
【0195】
具体的には、蒸発器吹出空気温度Teが高い場合には、除湿の必要有り(必要度合いが大)と判断して、除湿能力の高いDRY_EVAサイクル(第1除湿モード)を選択する(ステップS48)。蒸発器吹出空気温度Teが低い場合には、除湿の必要無しと判断して、除湿能力はないが暖房能力の高いHOTサイクル(暖房モード)を選択する(ステップS50)。蒸発器吹出空気温度Teが中程度である場合には、除湿の必要度合いは小さいと判断して、除湿能力の小さいDRY_ALLサイクル(第1除湿モード)を選択する(ステップS49)。
【0196】
本例では、蒸発器吹出空気温度Teと、図9のステップS47中に示すマップとに基づいて、除湿要否度合いを判定する。当該マップを用いて運転モードを選択することにより、室内蒸発器26の温度はおおよそ2℃に制御されることとなる。
【0197】
一方、ステップS46でRHWが100以下である場合(NO判定の場合)には、窓曇りの可能性がないと判断してステップS50に進み、除湿能力はないが暖房能力の高いHOTサイクル(暖房モード)を選択する。
【0198】
本実施形態の車両用空調装置1は、以上の如く制御されるので、制御ステップS6にて選択された運転モードに応じて以下のように作動する。
【0199】
(a)冷房モード(COOLサイクル:図1参照)
冷房モードでは、空調制御装置50が全ての電磁弁を非通電状態とするので、電気式三方弁13が室内凝縮器12の冷媒出口側と第1三方継手15の1つの冷媒流入出口との間を接続し、低圧電磁弁17が閉弁し、高圧電磁弁20が開弁し、熱交換器遮断電磁弁21が開弁し、除湿電磁弁24が閉弁する。
【0200】
これにより、図1の矢印に示すように、圧縮機11→室内凝縮器12→電気式三方弁13→第1三方継手15→室外熱交換器16→第2三方継手19→高圧電磁弁20→第2逆止弁22→温度式膨張弁27の可変絞り機構部27b→第4三方継手25→室内蒸発器26→温度式膨張弁27の感温部27a→第5三方継手28→アキュムレータ29→圧縮機11の順に冷媒が循環する蒸気圧縮式冷凍サイクルが構成される。
【0201】
この冷房モードの冷媒回路では、電気式三方弁13から第1三方継手15へ流入した冷媒は、低圧電磁弁17が閉弁しているので低圧電磁弁17側へ流出することはない。また、室外熱交換器16から第2三方継手19へ流入した冷媒は、除湿電磁弁24が閉弁しているので熱交換器遮断電磁弁21側へ流出することはない。また、温度式膨張弁27の可変絞り機構部27bから流出した冷媒は、除湿電磁弁24が閉弁しているので除湿電磁弁24側へ流出することはない。さらに、温度式膨張弁27の感温部27aから第5三方継手28へ流入した冷媒は、第2逆止弁22の作用によって第2逆止弁22側に流出することはない。
【0202】
従って、圧縮機11にて圧縮された冷媒は、室内凝縮器12にて室内蒸発器26通過後の送風空気(冷風)と熱交換して冷却され、さらに、室外熱交換器16にて外気と熱交換して冷却され、温度式膨張弁27にて減圧膨張される。温度式膨張弁27にて減圧された低圧冷媒は室内蒸発器26へ流入し、送風機32から送風された送風空気から吸熱して蒸発する。これにより、室内蒸発器26を通過する送風空気が冷却される。
【0203】
この際、前述の如くエアミックスドア38の開度が調整されるので、室内蒸発器26にて冷却された送風空気の一部(または全部)が冷風バイパス通路34から混合空間35へ流入し、室内蒸発器26にて冷却された送風空気の一部(または全部)が加熱用冷風通路33へ流入してヒータコア36、室内凝縮器12、PTCヒータ37を通過する際に再加熱されて混合空間35へ流入する。
【0204】
これにより、混合空間35にて混合されて車室内へ吹き出す送風空気の温度が所望の温度に調整されて、車室内の冷房を行うことができる。なお、冷房モードでは、送風空気の除湿能力も高いが、暖房能力は殆ど発揮されない。
【0205】
また、室内蒸発器26から流出した冷媒は、温度式膨張弁27の感温部27aを介して、アキュムレータ29へ流入する。アキュムレータ29にて気液分離された気相冷媒は、圧縮機11に吸入されて再び圧縮される。
【0206】
(b)暖房モード(HOTサイクル:図2参照)
暖房モードでは、空調制御装置50が電気式三方弁13、高圧電磁弁20、低圧電磁弁17を通電状態とし、残りの電磁弁21、24を非通電状態とするので、電気式三方弁13が室内凝縮器12の冷媒出口側と固定絞り14の冷媒入口側との間を接続し、低圧電磁弁17が開弁し、高圧電磁弁20が閉弁し、熱交換器遮断電磁弁21が開弁し、除湿電磁弁24が閉弁する。
【0207】
これにより、図2の矢印に示すように、圧縮機11→室内凝縮器12→電気式三方弁13→固定絞り14→第3三方継手23→熱交換器遮断電磁弁21→第2三方継手19→室外熱交換器16→第1三方継手15→低圧電磁弁17→第1逆止弁18→第5三方継手28→アキュムレータ29→圧縮機11の順に冷媒が循環する蒸気圧縮式冷凍サイクルが構成される。
【0208】
この暖房モードの冷媒回路では、固定絞り14から第3三方継手23へ流入した冷媒は、除湿電磁弁24が閉弁しているので除湿電磁弁24側へ流出することはない。また、熱交換器遮断電磁弁21から第2三方継手19へ流入した冷媒は、高圧電磁弁20が閉弁しているので高圧電磁弁20側へ流出することはない。また、室外熱交換器16から第1三方継手15へ流入した冷媒は、電気式三方弁13が室内凝縮器12の冷媒出口側と固定絞り14の冷媒入口側との間を接続しているので電気式三方弁13側へ流出することはない。第1逆止弁18から第5三方継手28へ流入した冷媒は、除湿電磁弁24が閉じているので温度式膨張弁27側へ流出することはない。
【0209】
従って、圧縮機11にて圧縮された冷媒は、室内凝縮器12にて送風機32から送風された送風空気と熱交換して冷却される。これにより、室内凝縮器12を通過する送風空気が加熱される。この際、エアミックスドア38の開度が調整されるので、冷房モードと同様に、混合空間35にて混合されて車室内へ吹き出す送風空気の温度が所望の温度に調整されて、車室内の暖房を行うことができる。なお、暖房モードでは、送風空気の除湿能力は発揮されない。
【0210】
また、室内凝縮器12から流出した冷媒は、固定絞り14にて減圧されて室外熱交換器16へ流入する。室外熱交換器16へ流入した冷媒は、送風ファン16aから送風された車室外空気から吸熱して蒸発する。室外熱交換器16から流出した冷媒は、低圧電磁弁17、第1逆止弁18等を介して、アキュムレータ29へ流入する。アキュムレータ29にて気液分離された気相冷媒は、圧縮機11に吸入されて再び圧縮される。
【0211】
(c)第1除湿モード(DRY_EVAサイクル:図3参照)
第1除湿モードでは、空調制御装置50が電気式三方弁13、低圧電磁弁17、熱交換器遮断電磁弁21および除湿電磁弁24を通電状態とし、高圧電磁弁20を非通電状態とするので、電気式三方弁13が室内凝縮器12の冷媒出口側と固定絞り14の冷媒入口側との間を接続し、低圧電磁弁17が開弁し、高圧電磁弁20が開弁し、熱交換器遮断電磁弁21が閉弁し、除湿電磁弁24が開弁する。
【0212】
これにより、図3の矢印に示すように、圧縮機11→室内凝縮器12→電気式三方弁13→固定絞り14→第3三方継手23→除湿電磁弁24→第4三方継手25→室内蒸発器26→温度式膨張弁27の感温部27a→第5三方継手28→アキュムレータ29→圧縮機11の順に冷媒が循環する蒸気圧縮式冷凍サイクルが構成される。
【0213】
この第1除湿モードの冷媒回路では、固定絞り14から第3三方継手23へ流入した冷媒は、熱交換器遮断電磁弁21が閉弁しているので熱交換器遮断電磁弁21側へ流出することはない。また、除湿電磁弁24から第4三方継手25へ流入した冷媒は、第2逆止弁22の作用によって温度式膨張弁27の可変絞り機構部27b側へ流出することはない。また、温度式膨張弁27の感温部27aから第5三方継手28へ流入した冷媒は、第1逆止弁18の作用によって第1逆止弁18側へ流出することはない。
【0214】
従って、圧縮機11にて圧縮された冷媒は、室内凝縮器12にて室内蒸発器26通過後の送風空気(冷風)と熱交換して冷却される。これにより、室内凝縮器12を通過する送風空気が加熱される。室内凝縮器12から流出した冷媒は、固定絞り14にて減圧されて室内蒸発器26へ流入する。
【0215】
室内蒸発器26へ流入した低圧冷媒は、送風機32から送風された送風空気から吸熱して蒸発する。これにより、室内蒸発器26を通過する送風空気が冷却されて除湿される。従って、室内蒸発器26にて冷却されて除湿された送風空気は、ヒータコア36、室内凝縮器12、PTCヒータ37を通過する際に再加熱されて、混合空間35から車室内へ吹き出される。すなわち、車室内の除湿を行うことができる。なお、第1除湿モードでは、送風空気の除湿能力を発揮できるが、暖房能力は小さい。
【0216】
また、室内蒸発器26から流出した冷媒は、温度式膨張弁27の感温部27aを介して、アキュムレータ29へ流入する。アキュムレータ29にて気液分離された気相冷媒は、圧縮機11に吸入されて再び圧縮される。
【0217】
(d)第2除湿モード(DRY_ALLサイクル:図4参照)
第2除湿モードでは、空調制御装置50が電気式三方弁13、低圧電磁弁17、除湿電磁弁24を通電状態とし、残りの電磁弁20、21を非通電状態とするので、電気式三方弁13が室内凝縮器12の冷媒出口側と固定絞り14の冷媒入口側との間を接続し、低圧電磁弁17が開弁し、高圧電磁弁20が開弁し、熱交換器遮断電磁弁21が開弁し、除湿電磁弁24が開弁する。
【0218】
これにより、図4の矢印に示すように、圧縮機11→室内凝縮器12→電気式三方弁13→固定絞り14→第3三方継手23→熱交換器遮断電磁弁21→第2三方継手19→室外熱交換器16→第1三方継手15→低圧電磁弁17→第1逆止弁18→第5三方継手28→アキュムレータ29→圧縮機11の順に冷媒が循環するとともに、圧縮機11→室内凝縮器12→電気式三方弁13→固定絞り14→第3三方継手23→除湿電磁弁24→第4三方継手25→室内蒸発器26→温度式膨張弁27の感温部27a→第5三方継手28→アキュムレータ29→圧縮機11の順に冷媒が循環する蒸気圧縮式冷凍サイクルが構成される。
【0219】
つまり、第2除湿モードでは、固定絞り14から第3三方継手23へ流入した冷媒が熱交換器遮断電磁弁21側および除湿電磁弁24側の双方に流出して、第1逆止弁18から第5三方継手28へ流入した冷媒および温度式膨張弁27の感温部27aから第5三方継手28へ流入した冷媒の双方が第5三方継手28にて合流してアキュムレータ29側へ流出する。
【0220】
なお、この第2除湿モードの冷媒回路では、室外熱交換器16から第1三方継手15へ流入した冷媒は、電気式三方弁13が室内凝縮器12の冷媒出口側と固定絞り14の冷媒入口側との間を接続しているので電気式三方弁13側へ流出することはない。また、除湿電磁弁24から第4三方継手25へ流入した冷媒は、第2逆止弁22の作用によって温度式膨張弁27の可変絞り機構部27b側へ流出することはない。
【0221】
従って、圧縮機11にて圧縮された冷媒は、室内凝縮器12にて室内蒸発器26通過後の送風空気(冷風)と熱交換して冷却される。これにより、室内凝縮器12を通過する送風空気が加熱される。室内凝縮器12から流出した冷媒は、固定絞り14にて減圧された後、第3三方継手23にて分岐されて室外熱交換器16および室内蒸発器26へ流入する。
【0222】
室外熱交換器16へ流入した冷媒は、送風ファン16aから送風された車室外空気から吸熱して蒸発する。室外熱交換器16から流出した冷媒は、低圧電磁弁17、第1逆止弁18等を介して、第5三方継手28へ流入する。室内蒸発器26へ流入した低圧冷媒は、送風機32から送風された送風空気から吸熱して蒸発する。これにより、室内蒸発器26を通過する送風空気が冷却されて除湿される。
【0223】
従って、室内蒸発器26にて冷却されて除湿された送風空気は、ヒータコア36、室内凝縮器12、PTCヒータ37を通過する際に再加熱されて、混合空間35から車室内へ吹き出される。この際、第2除湿モードでは、第1除湿モードに対して、室外熱交換器16にて吸熱した熱量を室内凝縮器12にて放熱することができるので、送風空気を第1除湿モードよりも高温に加熱できる。すなわち、第2除湿モードでは、高い暖房能力を発揮させながら除湿能力も発揮させる除湿暖房を行うことができる。
【0224】
また、室内蒸発器26から流出した冷媒は、第5三方継手28へ流入して室外熱交換器16から流出した冷媒と合流し、アキュムレータ29へ流入する。アキュムレータ29にて気液分離された気相冷媒は、圧縮機11に吸入されて再び圧縮される。
【0225】
次に、本実施形態の車両用空調装置が奏する主な効果について説明する。
【0226】
(1)外気温が−5℃よりも低いような極低温の場合には、車室内の暖房のために、冷凍サイクル10をHOTサイクル(暖房モード)で運転しても、暖房効率が悪い上、運転開始後の早期に室外熱交換器16に着霜が生じてしまう。
【0227】
そこで、空調制御装置50は、ステップS31、S32のごとく、外気温が極低温の場合には、車室内の暖房手段として、HOTサイクル(暖房モード)を選択せず、エンジン冷却水を熱源として暖房するヒータコア36を選択し、エンジンEGが停止していればエンジンEGを作動させる(ステップS15参照)。
【0228】
これにより、外気温が極低温の場合でも、十分な暖房能力を確保することができる。また、本実施形態では、エンジン冷却水を熱源として暖房するので、燃焼式ヒータを用いる場合と比較して、既存のエンジン排気ガス浄化装置を用いてエンジン排気ガスを十分に浄化できるとともに、PTCヒータ等の電気ヒータのみを暖房として用いる場合と比較して、高い暖房能力が得られる。
【0229】
また、この場合には、エンジン作動によって発電することもできるので、電気ヒータの消費電力を賄うことができる。
【0230】
(2)空調制御装置50は、ステップS31〜S34のごとく、外気温が極低温の場合には、エンジンEGを作動させるとともに、窓曇りの可能性が高ければ窓曇りの可能性が低い場合よりもエンジン回転数を高く設定する。
【0231】
これにより、エンジンEGを高回転数で作動させることができるので、エンジン冷却水温度Twを速やかに上昇させることができ、吹出空気温度を速やかに高めることができる。このため、窓ガラス温度を速やかに高めることができるので、防曇性を向上させることができる。
【0232】
(3)空調制御装置50は、ステップS31、S32、S35、S34のごとく、外気温が極低温の場合には、エンジンEGを作動させるとともに、車室内設定温度Tsetが所定設定温度(例えば、31℃)よりも高ければ当該所定設定温度よりも低い場合と比較してエンジン回転数を高く設定する。
【0233】
このため、乗員が早く強い暖房を希望して車室内設定温度Tsetを非常に高い温度に設定した場合に、要求エンジン回転数を高めの数値に設定して吹出空気温度を速やかに高めることができるので、乗員の希望に沿って乗員の暖房感を速やかに向上させることができる。
【0234】
(4)空調制御装置50は、ステップS31、S32、S36、S34のごとく、外気温が極低温の場合に、エンジンEGを作動させるとともに、目標吹出温度TAOに対してエンジン冷却水温度Twが低く、かつ、その温度差が所定温度よりも大きい場合には、それ以外の場合と比較してエンジン回転数を高く設定する。
【0235】
このため、エンジン冷却水温度Twが目標温度に対して低すぎて吹出空気温度が低くなってしまう場合に、要求エンジン回転数を高めの数値に設定して吹出空気温度を速やかに高めることができるので、乗員の暖房感を速やかに向上させることができる。
【0236】
(5)空調制御装置50は、ステップS32、S38のごとく、外気温が極低温の場合には、エンジンEGを作動させるとともにPTCヒータ37を作動させて、エンジン冷却水による暖房とPTCヒータ37による暖房とを併用するので、エンジン冷却水温度Twが低い場合であってもPTCヒータ37により吹出空気温度を十分に高めることができる。これにより、暖房能力を確実に確保することができる。
【0237】
(6)空調制御装置50は、ステップS32、S39のごとく、外気温が極低温の場合には、エンジンEGを作動させるとともに冷凍サイクル10をクーラサイクル(冷房モード)にするので、外気温が極低温になっていて窓曇りが発生しやすい場合に、クーラサイクルで強い除湿を行うことができ、ひいては防曇性を向上できる。
【0238】
(第2実施形態)
上記第1実施形態では、外気温が−5℃よりも低いような極低温の場合にヒータコア36による暖房(エンジン冷却水を熱源とする暖房)を選択するが、本第2実施形態では、図10に示すように、車室内設定温度Tsetが31℃よりも高いような非常に高い温度に設定されている場合にヒータコア36による暖房(エンジン冷却水を熱源とする暖房)を選択する。
【0239】
すなわち、車室内設定温度Tsetが非常に高い温度に設定されている場合にヒートポンプサイクルが選択されると、ヒートポンプサイクルの稼働率が高くなって室外熱交換器16に早く着霜してしまう。そして、室外熱交換器16の着霜により室外熱交換器16の熱交換効率が低下して暖房能力が低下してしまう。
【0240】
そこで、本実施形態では、車室内設定温度Tsetが非常に高い温度に設定されている場合にエンジンONしてヒータコア36で暖房することにより、十分な暖房能力を確保する。
【0241】
本実施形態におけるステップS6のより詳細な内容を説明する。図10は、ステップS6の要部を示すフローチャートである。図10のフローチャートの制御処理は、エアコンスイッチ60aおよびオートスイッチ60bがオン(ON)されているとき等に実行される。
【0242】
ステップS60では、現在の運転モードがヒートポンプサイクル(暖房モードまたは第1、第2除湿モード)か否かを判定する。ヒートポンプサイクルであると判定した場合(YES判定の場合)には、ステップS61に進む。
【0243】
ステップS61では、操作パネル60の車室内温度設定スイッチ60cによって設定された車室内設定温度Tsetが所定設定温度よりも高いか否かを判定する。例えば、Tsetが31℃よりも高いか否かを判定する。
【0244】
そして、ステップS61でTsetが31℃よりも高いと判定した場合(YES判定の場合)には、ステップS62に進み、エンジンEGの作動(エンジンON)を選択する。すなわち、車室内設定温度Tsetが非常に高い場合には、乗員が強い暖房を望んでいると判断して、ヒータコア36による暖房(エンジン冷却水を熱源とする暖房)を選択する。
【0245】
続いて、ステップS63では、目標吹出温度TAOの吹き出し空気をエンジン冷却水で作ることができるか否かを判定する。本例では、エンジン冷却水温度Twが室内コンデンサ目標温度(室内凝縮器目標温度)以上である場合には、目標吹出温度TAOの吹き出し空気をエンジン冷却水で作ることができると判定(YES判定)して、ステップS64に進み、クーラサイクル(冷房モード)を選択する。この結果、クーラサイクル(冷房モード)により除湿するとともにヒータコア36で暖房する除湿暖房が行われる。
【0246】
因みに、室内コンデンサ目標温度は、基本的には上述した暖房用熱交換器目標温度と同じであるが、暖房用熱交換器目標温度を若干補正した値にする場合もある。
【0247】
一方、ステップS63またはステップS61で否定判定した場合(NO判定の場合)にはステップS65〜S69に進み、ヒートポンプサイクルを選択する。ステップS65〜S69は、上記第1実施形態のステップS46〜S50と同じである。
【0248】
ステップS65〜S69の処理により、窓曇りの可能性および除湿の必要性に応じて、HOTサイクル、DRY_EVAサイクル、DRY_ALLサイクル(暖房モード、第1除湿モード、第2除湿モード)のいずれかが適切に選択されることとなる。
【0249】
本実施形態によると、空調制御装置50は、ステップS61、S62のごとく、ヒートポンプサイクルが設定されている場合において、車室内設定温度Tsetが所定設定温度(例えば、31℃)よりも高ければ、エンジンONを選択して、ヒータコア36による暖房(エンジン冷却水を熱源とする暖房)を選択する。
【0250】
このため、車室内設定温度Tsetが非常に高い温度に設定されている場合であっても十分な暖房能力を確保することができる。
【0251】
(第3実施形態)
上記第1実施形態では、外気温が−5℃よりも低いような極低温の場合にはヒータコア36による暖房(エンジン冷却水を熱源とする暖房)とクーラサイクルとを併用するが、本第3実施形態では、図11に示すように、外気温が−2℃よりも低いような低温の場合にはヒータコア36による暖房(エンジン冷却水を熱源とする暖房)とヒートポンプサイクルとを併用する。
【0252】
本実施形態におけるステップS6のより詳細な内容を説明する。図11は、ステップS6の要部を示すフローチャートである。図11のフローチャートの制御処理は、エアコンスイッチ60aおよびオートスイッチ60bがオン(ON)されているとき等に実行される。
【0253】
ステップS70では、現在の空調制御がプレ空調か否かを判定する。このステップS70でプレ空調ではないと判定した場合(NO判定の場合)にはステップS71に進む。ステップS71では、外気温が低温域であるか否かを判定する。例えば、外気センサ52で検出した外気温Tamが−2℃よりも低いか否かを判定する。
【0254】
このステップS71で外気温が−2℃よりも低いと判定した場合(YES判定の場合)には、ステップS72に進み、エンジン冷却水温度Twが所定温度(本例では目標吹出温度TAO)よりも高いか否かを判定する。そして、エンジン冷却水温度Twが目標吹出温度TAOよりも高いと判定した場合(YES判定の場合)には、ステップS73に進み、クーラサイクル(冷房モード)を選択する。これにより、それまでヒートポンプサイクルが作動していた場合にはヒートポンプサイクルが停止することとなる。
【0255】
ステップS72でエンジン冷却水温度Twが目標吹出温度TAO以下であると判定した場合(NO判定の場合)には、ステップS74に進み、エンジンEGの作動(エンジンON)を選択する。すなわち、車室内の暖房手段として、エンジン冷却水を熱源として送風空気を加熱するヒータコア36を選択する。
【0256】
この結果、エンジンEGが停止していれば、図6中のステップS15においてエンジン制御装置に対してエンジンEGを始動するように要求信号を出力して、エンジンEGが作動することとなる。
【0257】
ステップS75では、操作パネル60の車室内温度設定スイッチ60cによって設定された車室内設定温度Tsetが所定設定温度よりも高いか否かを判定する。例えば、Tsetが31℃よりも高いか否かを判定する。
【0258】
そして、ステップS75でTsetが31℃よりも高いと判定した場合(YES判定の場合)には、ステップS76に進み、要求エンジン回転数を高めの数値(本例では1500rpm)に設定する。この結果、図6中のステップS15においてエンジン制御装置に対して高いエンジン回転数でのエンジン作動を要求する。一方、ステップS75で否定判定した場合(NO判定の場合)には、ステップS77に進む。
【0259】
ステップS77では、エンジン冷却水温度Twが所定の基準よりも低いか否かを判定する。本例では、目標吹出温度TAOに対してエンジン冷却水温度Twが低く、かつ、その温度差が10℃よりも大きいか否かを判定する。
【0260】
そして、目標吹出温度TAOに対してエンジン冷却水温度Twが低く、かつ、その温度差が10℃よりも大きいと判定した場合(YES判定の場合)には、上述したステップS76に進み、要求エンジン回転数を高い数値に設定する。
【0261】
一方、ステップS77で否定判定した場合(NO判定の場合)には、ステップS78に進む。ステップS78では、要求エンジン回転数を低めの数値(本例では1000rpm)に設定する。ここで、ステップS75、S77のいずれでも否定判定された場合は、エンジン冷却水温度Twを速やかに上昇させる必要が無いので、このステップS78のようにエンジン回転数を低く設定することで、燃費の向上を図ることができる。
【0262】
ステップS76、S78で要求エンジン回転数を選択した後、ステップS79では、TAOに基づいて決定された吹出口モードがフェイスモードであるか否かを判定する。これは、暖房の必要性を判断するためである。
【0263】
そして、吹出口モードがフェイスモードである場合(YES判定の場合)には、暖房の必要無しと判断して、ステップS80に進み、クーラサイクル(冷房モード)を選択する。一方、吹出口モードがフェイスモードでない場合(NO判定の場合)には、暖房の必要有りと判断してステップS85〜S89に進み、窓曇りの可能性および除湿の必要性に応じてHOTサイクル、DRY_EVAサイクル、DRY_ALLサイクル(暖房モード、第1除湿モード、第2除湿モード)のいずれかを選択する。ステップS85〜S89は、上記第1実施形態のステップS46〜S50と同じである。
【0264】
また、ステップS71で外気温が−2℃よりも高いため否定判定した場合(NO判定の場合)には、上述したステップS79以降に進む。
【0265】
また、ステップS70でプレ空調であると判定した場合(YES判定の場合)には、ステップS81に進む。ステップS81では、外気温が極低温域であるか否かを判定する。例えば、外気センサ52で検出した外気温Tamが−5℃よりも低いか否かを判定する。そして、外気温が−5℃よりも低いと判定した場合(YES判定の場合)には、ステップS82に進み、PTCヒータ37の作動(PTC ON)を選択するとともに、冷凍サイクルの運転停止を選択する。
【0266】
この結果、図6中のステップS17においてPTCヒータ37に対して制御信号を出力することで、PTCヒータ37が送風空気を加熱する。これにより、PTCヒータ37を用いたプレ空調(暖房)が行われることとなる。
【0267】
一方、ステップS81で否定判定した場合(NO判定の場合)には、ステップS83に進み、ステップS79と同様に、吹出口モードがフェイスモードであるか否かを判定する。そして、フェイスモードの場合(YES判定の場合)には、暖房の必要無しと判断してステップS84に進み、クーラサイクル(冷房モード)を選択する。また、フェイスモード以外の場合(NO判定の場合)には、ステップS85に進む。
【0268】
ステップS85では、窓曇りの可能性があるか否かを窓ガラス表面の相対湿度RHWに基づいて判定する。本例では、RHWが100よりも高いか否かを判定する。そして、RHWが100よりも高い場合(YES判定の場合)には、窓曇りの可能性があると判断してステップS86に進む。
【0269】
ステップS86では、蒸発器吹出空気温度Teに基づいて除湿の必要要度合いを判定し、その判定結果に応じて、ステップS87〜S89でHOTサイクル、DRY_EVAサイクル、DRY_ALLサイクル(暖房モード、第1除湿モード、第2除湿モード)のいずれかを選択する。
【0270】
本実施形態によると、ステップS71、S74、S87〜S89のごとく、空調制御装置50は、外気温が−2℃よりも低いような低温の場合には、エンジンONを選択してヒータコア36による暖房(エンジン冷却水を熱源する暖房)を選択するとともに、ヒートポンプサイクルを選択する。
【0271】
これにより、エンジン冷却水により十分な暖房能力を確保することができるとともに、吹出空気温度の上昇が早いヒートポンプサイクルにより暖房の即効性を得ることができる。
【0272】
また、ステップS72、S73のごとく、空調制御装置50は、外気温が−2℃よりも低いような低温の場合において、エンジン冷却水温度Twが所定温度よりも高くなったらクーラサイクル(冷房モード)を選択するので、窓曇りの起こりやすい低外気温環境下での除湿能力を向上でき、ひいては防曇性を向上できる。
【0273】
(第4実施形態)
上記第1実施形態では、ヒートポンプサイクルからクーラサイクルに切り替えるのと同時にエンジンONを選択するが、本第4実施形態では、図12に示すように、ヒートポンプサイクルからクーラサイクルに切り替える前に予めエンジンONを選択してエンジン冷却水を暖める。
【0274】
本実施形態におけるステップS6のより詳細な内容を説明する。図12は、ステップS6の要部を示すフローチャートである。図12のフローチャートの制御処理は、エアコンスイッチ60aおよびオートスイッチ60bがオン(ON)されているとき等に実行される。
【0275】
ステップS90では、外気温が極低温域であるか否かを判定する。本例では、外気センサ52で検出した外気温Tamが−5℃(第1の所定温度)よりも低いか否かを判定する。このステップS90で外気温が−5℃(第1の所定温度)以上であると判定した場合(NO判定の場合)には、ステップS91〜S105へ進む。ステップS91〜ステップS105は、上記第3実施形態のステップS71〜S80、S85〜S89と同じである。
【0276】
一方、ステップS90で、外気温が−5℃(第1の所定温度)よりも低いと判定した場合(YES判定の場合)には、ステップS106に進み、エンジンEGの作動(エンジンON)を選択する。すなわち、車室内の暖房手段として、エンジン冷却水を熱源として送風空気を加熱するヒータコア36を選択する。
【0277】
この結果、エンジンEGが停止していれば、図6中のステップS15においてエンジン制御装置に対してエンジンEGを始動するように要求信号を出力することで、エンジンEGが作動することとなる。
【0278】
続いて、ステップS107では、操作パネル60の車室内温度設定スイッチ60cによって設定された車室内設定温度Tsetが所定設定温度よりも高いか否かを判定する。本例では、Tsetが31℃よりも高いか否かを判定する。
【0279】
そして、ステップS107でTsetが31℃よりも高いと判定した場合(YES判定の場合)には、ステップS110に進み、要求エンジン回転数を高めの数値(本例では1500rpm)に設定する。この結果、図6中のステップS15においてエンジン制御装置に対して高いエンジン回転数でのエンジン作動を要求することとなる。
【0280】
一方、ステップS107で否定判定した場合(NO判定の場合)には、ステップS108に進む。ステップS108では、エンジン冷却水温度Twが所定の基準よりも低いか否かを判定する。本例では、目標吹出温度TAOに対してエンジン冷却水温度Twが低く、かつ、その温度差が10℃よりも大きいか否かを判定する。
【0281】
そして、目標吹出温度TAOに対してエンジン冷却水温度Twが低く、かつ、その温度差が10℃よりも大きいと判定した場合(YES判定の場合)には、上述したステップS110に進み、要求エンジン回転数を高い数値に設定する。
【0282】
一方、ステップS108で否定判定した場合(NO判定の場合)には、ステップS109に進む。ステップS109では要求エンジン回転数を低めの数値(本例では1000rpm)に設定する。
【0283】
ここで、ステップS107、S108のいずれでも否定判定された場合(NO判定の場合)には、エンジン冷却水温度Twを速やかに上昇させる必要が無いので、このステップS109のようにエンジン回転数を低く設定することで、燃費の向上を図ることができる。
【0284】
ステップS109、S110で要求エンジン回転数を選択した後、ステップS111ではクーラサイクル(冷房モード)を選択する。
【0285】
本実施形態によると、空調制御装置50は、ステップS91、S103〜S105のごとく、外気温が−2℃(第2の所定温度)よりも高いような場合、換言すればヒートポンプサイクルの効率が良く、着霜もしにくい場合には、エンジンONを選択することなくヒートポンプサイクルを選択する。これにより、エンジンONを選択する場合と比較して低騒音・無排出ガスで暖房を行うことができる。
【0286】
また、空調制御装置50は、ステップS90、S91、S94、S103〜S105のごとく、外気温が−5℃(第1の所定温度)よりも高く、かつ−2℃(第2の所定温度)よりも低いような低温の場合、換言すればヒートポンプサイクルの効率は良くないが短時間であれば着霜しにくい場合には、ヒートポンプサイクルを選択するとともにエンジンONを選択する。
【0287】
これにより、吹出空気温度の上昇が早いヒートポンプサイクルにより暖房の即効性を得ることができるとともに、外気温が−5℃(第1の所定温度)よりも低下してクーラサイクルが選択される場合に備えて予めエンジン冷却水を暖めて暖房用熱源を確保しておくことができる。このため、ヒートポンプサイクルからクーラサイクルに切り替えられても暖房を途切れさせることなく継続的に行うことができるので、実用性を向上できる。
【0288】
因みに、この場合には、エンジン作動によって発電することもできるので、ヒートポンプサイクルの消費電力を賄うことができる。
【0289】
そして、エンジン作動によってエンジン冷却水が十分に暖められた後にはヒートポンプサイクルの稼働率を低減しても暖房能力を確保できる。このため、暖房能力を確保しつつ、ヒートポンプサイクルの稼働率を低減して着霜を抑制することが可能になる。
【0290】
また、空調制御装置50は、ステップS90、S106のごとく、外気温が−5℃(第1の所定温度)よりも低いような極低温の場合、換言すればヒートポンプサイクルでは効率低下や着霜の問題がある場合には、エンジンONを選択してヒータコア36による暖房(エンジン冷却水を熱源とする暖房)を選択する。
【0291】
これにより、エンジン冷却水により十分な暖房能力を確保することができるとともに、既存のエンジン排気ガス浄化装置を用いてエンジン排気ガスを十分に浄化できる。
【0292】
(第5実施形態)
本第5実施形態は、ステップS11すなわち圧縮機11の回転数の決定手法の詳細な内容に関するものである。
【0293】
冷媒圧力が所定圧力(下限圧力)よりも低くなったときに冷媒不足と判断して圧縮機11を停止させる蒸気圧縮式冷凍サイクルにおいては、ヒートポンプサイクル時とクーラサイクル時とで所定圧力(下限圧力)を同じ値に設定すると以下のような実用上の問題が生じる。
【0294】
すなわち、ヒートポンプサイクルは、外気温度が低温になると冷媒圧力が低下する傾向があることから、クーラサイクル時を基準として所定圧力(下限圧力)を設定すると、ヒートポンプサイクル時に外気温度が低温になると、冷媒が不足していないにもかかわらず冷媒圧力が所定圧力(下限圧力)を下回ってしまい圧縮機11が停止してしまうこととなる。換言すれば、低外気温ではヒートポンプサイクルを作動させることができなくなり、ヒートポンプサイクルの作動可能範囲(ヒートポンプサイクルで暖房可能な外気温の範囲)が狭くなってしまう。
【0295】
この対策として所定圧力(下限圧力)を高めに設定すると、クーラサイクル時における冷媒不足の検出が甘くなってしまう。
【0296】
そこで、本実施形態では、ヒートポンプサイクル時には、クーラサイクル時と比較して所定圧力(下限圧力)を小さく設定することにより、ヒートポンプサイクルの作動可能範囲(ヒートポンプサイクルで暖房可能な外気温の範囲)を低外気温側に拡げるとともに、クーラサイクル時に冷媒不足を精度良く検出する。
【0297】
図13(a)は、ステップS11の要部を示すフローチャートである。図13(a)のフローチャートの制御処理は、オートスイッチ60bがオン(ON)されているとき等に実行される。
【0298】
ステップS120では、上述したクーラサイクル(冷房モード)における基本的な決定手法を用いて前回のコンプレッサ回転数fCn−1に対する回転数変化量ΔfCを求める。図13(b)は、回転数変化量ΔfCを求めるためのファジー推論のルールの一例を示すものである。
【0299】
ステップS121では、上述したヒートポンプサイクル(暖房モード)における基本的な決定手法を用いて前回のコンプレッサ回転数fHn−1に対する回転数変化量ΔfHを求める。図13(c)は、回転数変化量ΔfHを求めるためのファジー推論のルールの一例を示すものである。
【0300】
次いで、ステップS122では、クーラサイクルが選択されているか否かを判定し、クーラサイクルが選択されていると判定した場合(YES判定の場合)には、ステップS123に進み、回転数変化量Δfに、冷房モード時の回転数変化量ΔfCを代入する。
【0301】
ステップS122でクーラサイクルが選択されていないと判定した場合、すなわちヒートポンプサイクルが選択されていると判定した場合(NO判定の場合)には、ステップS124に進み、回転数変化量Δfに、暖房モード時の回転数変化量ΔfHを代入する。
【0302】
次いで、ステップS125では、前回のコンプレッサ回転数と回転数変化量Δfとを用いて、仮の今回のコンプレッサ回転数を求める(仮の今回のコンプレッサ回転数=前回のコンプレッサ回転数+回転数変化量Δf)。
【0303】
次いで、ステップS126では、クーラサイクルが選択されているか否かを判定する。クーラサイクルが選択されていると判定された場合(YES判定の場合)には、ステップS127に進み、冷媒圧力に応じて圧縮機11のオン・オフ(ON・OFF)を決定する。 本例では、吐出圧力センサ55で検出された圧縮機11吐出冷媒圧力Pdと、図13(a)のステップS127中に示すマップとに基づいて圧縮機11のオン・オフ(ON・OFF)を決定する。具体的には、吐出冷媒圧力Pdが所定圧力(本例では0.2MPa)以下の場合には、冷媒不足と判断して、圧縮機11のオフ(OFF)を決定する。また、吐出冷媒圧力Pdが2.8MPa以上の場合には、冷媒過多あるいは冷凍サイクル10の異常と判断して、圧縮機11のオフ(OFF)を決定する。それ以外の場合は、圧縮機11のオン(ON)を決定する。なお、図13(a)のステップS127中に示すマップでは、制御ハンチングを防止するためにヒステリシスが設定されている。
【0304】
圧縮機11のオン(ON)を決定した場合は、ステップS128に進み、コンプレッサ最高回転数を10000[rpm]に設定する。圧縮機11のオフ(OFF)を決定した場合は、ステップS129に進み、コンプレッサ最高回転数を0[rpm]に設定する。
【0305】
続いて、ステップS212では、今回のコンプレッサ回転数を最終決定する。本例では、ステップS125の仮の今回のコンプレッサ回転数およびステップS128、S129のコンプレッサ最高回転数のうち小さい方を今回のコンプレッサ回転数にする(今回のコンプレッサ回転数=MIN(仮の今回のコンプレッサ回転数,コンプレッサ最高回転数))。
【0306】
ステップS126にてクーラサイクル以外が選択されていると判定された場合(NO判定の場合)、すなわちヒートポンプサイクルが選択されている場合には、ステップS130に進み、冷媒圧力に応じて圧縮機11のオン・オフ(ON・OFF)を決定する。
【0307】
本例では、吐出圧力センサ55で検出された圧縮機11吐出冷媒圧力Pdと、図13(a)のステップS130中に示すマップとに基づいて圧縮機11のオン・オフ(ON・OFF)を決定する。
【0308】
そして、圧縮機11のオン(ON)を決定した場合には、ステップS132に進み、コンプレッサ最高回転数を10000[rpm]に設定する。圧縮機11のオフ(OFF)を決定した場合は、ステップS131に進み、コンプレッサ最高回転数を0[rpm]に設定する。続いて、ステップS133に進み、今回のコンプレッサ回転数を最終決定する。
【0309】
ステップS130のマップとステップS127のマップとを比較すればわかるように、ヒートポンプサイクルが選択されている場合は、クーラサイクルが選択されている場合よりも低い吐出冷媒圧力Pdで圧縮機11のオン(ON)が許可されることとなる。これにより、ヒートポンプサイクルの作動可能な外気温をクーラサイクルよりも低くすることができる。
【0310】
なお、圧縮機11のオン(ON)を許可する吐出冷媒圧力Pdの下限圧力(所定圧力)は、冷媒量がほぼ零の時に圧縮機11がオフ(OFF)になる程度の数値(本例では0.1MPa)を用いるのがサイクル機器の保護上、望ましい。
【0311】
本実施形態によると、ステップS130、S127のごとく、空調制御装置50は、ヒートポンプサイクル時には、圧縮機11のオン(ON)を許可する吐出冷媒圧力Pdの下限圧力(所定圧力)をクーラサイクル時よりも低くするので、ヒートポンプサイクルの作動可能な外気温の範囲をクーラサイクルよりも低外気温側に拡げることができる。このため、ヒートポンプサイクルの暖房可能な外気温の範囲を拡げることができる。
【0312】
しかも、ステップS130のごとく、圧縮機11のオン(ON)を許可する吐出冷媒圧力Pdの下限圧力(所定圧力)を、冷媒量がほぼ零の時に圧縮機11がオフ(OFF)になる程度の数値(本例では0.1MPa)にしているので、冷媒がほぼなくなってしまった場合はヒートポンプサイクルおよびクーラサイクルの両方で異常検知できる。
【0313】
因みに、クーラサイクルでは、圧縮機11のオン(ON)を許可する吐出冷媒圧力Pdの下限圧力(所定圧力)をヒートポンプサイクルよりも若干高い数値(本例では0.2MPa)に設定しているので、クーラサイクル時における冷媒不足を精度良く検出できる。
【0314】
(第6実施形態)
上記第1実施形態では、ヒータコア36による暖房(エンジン冷却水を熱源とする暖房)を行う場合には、エンジン冷却水温度TwをTAOに近づけるようにエンジン回転数を調整するが、本第6実施形態では、図14に示すように、ヒータコア36による暖房(エンジン冷却水を熱源とする暖房)とPTCヒータ37による暖房とを併用する場合には、エンジン冷却水温度TwをTAOよりも低くする。
【0315】
すなわち、PTCヒータ37の作動・停止に関係なくエンジン冷却水温度TwをTAOに近づけると、PTCヒータ37の作動時には暖房能力が過剰となって省燃費に反する結果になるという実用上の問題がある。
【0316】
そこで、本実施形態では、PTCヒータ37が作動しているときには、PTCヒータ37が停止しているときと比較して、エンジン冷却水温度Twを低下させることにより、暖房能力が過剰となることを抑制して、省燃費を図る。
【0317】
本実施形態におけるステップS6のより詳細な内容を説明する。図14は、ステップS6の要部を示すフローチャートである。図14のフローチャートの制御処理は、エアコンスイッチ60aおよびオートスイッチ60bがオン(ON)されているとき等に実行される。
【0318】
ステップS140で、TAOに基づいて決定された吹出口モードがフェイスモードであるか否かを判定する。これは、暖房の必要性を判断するためである。
【0319】
そして、吹出口モードがフェイスモードである場合(YES判定の場合)には、暖房の必要無しと判断して、ステップS156に進み、クーラサイクル(冷房モード)を選択する。一方、吹出口モードがフェイスモードでない場合(NO判定の場合)には、暖房の必要有りと判断してステップS141に進む。
【0320】
ステップS141では、外気温が極低温域であるか否かを判定する。本例では、外気センサ52で検出した外気温Tamが−5℃よりも低いか否かを判定する。そして、外気温が−5℃よりも低いと判定した場合(YES判定の場合)には、ステップS142に進み、バッテリ残量に十分余裕があるか否かを判定する。
【0321】
本例では、バッテリ残量が、空調支障レベルに安全率1.2を乗じた値(空調支障レベル×1.2)よりも多い場合(YES判定の場合)には、バッテリ残量に十分余裕があると判断してステップS143へ進む。
【0322】
ここで、空調支障レベルとは、空調に支障が出るほどバッテリ残量が少ないレベルのことを意味しており、本例では車両の仕様等に基づいて予め設定されている。バッテリ残量が空調支障レベルに達した場合には、車両走行用電力が多く必要とされる車両加速時等に空調用電力が削減されて空調に支障が出ることとなる。
【0323】
続いて、ステップS143では、PTCヒータ37の作動(PTC ON)を選択する。この結果、図6中のステップS17においてPTCヒータ37に対して制御信号を出力することで、PTCヒータ37が送風空気を加熱することとなる。これにより、PTCヒータ37を用いた暖房を行う。
【0324】
続いて、ステップS144では、後述するステップS145で用いる目標冷却水温度補正量fBLWを求める。本例では、目標冷却水温度補正量fBLWを、送風機32のブロワモータ電圧(換言すれば送風機32の風量)と、図14のステップS144中に示すマップとに基づいて目標冷却水温度補正量fBLWを求める。これにより、送風機32の風量が少ないときほど目標冷却水温度補正量fBLWが負の方向(マイナス方向)に大きくなることとなる。
【0325】
続いて、ステップS145では、エンジン冷却水温度Twの目標温度である目標冷却水温度を、TAOとステップS144の目標冷却水温度補正量fBLWとに基づいて求める。本例では、目標冷却水温度を、TAOに対して目標冷却水温度補正量fBLWだけ補正する(目標冷却水温度=TAO+fBLW)。本例では、送風機32の風量が少ないときほど目標冷却水温度をTAOよりも低くする。この結果、エンジンEGの稼働率が低減して省燃費が図られる。
【0326】
一方、ステップS142で、バッテリ残量に十分余裕がないと判定された場合(NO判定の場合)には、PTCヒータ37を作動させることができないので、ステップS146に進み、目標冷却水温度を高めに設定する。本例では、目標冷却水温度をTAOに対して1℃だけ高くする(目標冷却水温度=TAO+1℃)。
【0327】
ステップS145、S146で目標冷却水温度を求めた後、ステップS147に進み、現在の空調制御がプレ空調か否かを判定する。このステップS147でプレ空調ではないと判定した場合(NO判定の場合)には、ステップS148に進む。
【0328】
ステップS148では、エンジン冷却水温度Twが目標冷却水温度より高いか否かを判定する。ステップS148でエンジン冷却水温度Twが目標冷却水温度より低いと判定された場合(NO判定の場合)には、エンジン冷却水温度Twを目標冷却水温度まで高めるべくステップS149に進み、エンジンEGの作動(エンジンON)を選択する。なお、ステップS149で、既にエンジンEGが作動(エンジンON)している場合には、エンジンEGの回転数を高くする要求(エンジン回転数UP要求)を選択するようにしてもよい。
【0329】
続いて、ステップS150に進み、圧縮機11(コンプレッサ)の停止を決定する。これにより、冷凍サイクル10が停止して、ヒータコア36およびPTCヒータ37で暖房が行われることとなる。
【0330】
一方、ステップS148でエンジン冷却水温度Twが目標冷却水温度より高いと判定された場合(YES判定の場合)、またはステップS147でプレ空調であると判定した場合(YES判定の場合)には、エンジンEGの作動(エンジンON)を選択することなくステップS148に進む。
【0331】
一方、ステップS141で外気温が−5℃よりも高いと判定した場合(NO判定の場合)には、ヒートポンプサイクルを選択すべくステップS151〜S155へ進む。ステップS151〜S155は、上記第1実施形態のステップS46〜S50と同じである。
【0332】
ステップS151〜S155の処理により、窓曇りの可能性および除湿の必要性に応じて、HOTサイクル、DRY_EVAサイクル、DRY_ALLサイクル(暖房モード、第1除湿モード、第2除湿モード)のいずれかが適切に選択されることとなる。
【0333】
本実施形態によると、空調制御装置50は、ステップS142〜S145のごとく、バッテリ残量に余裕がある場合には、PTCヒータ37をONするとともに目標冷却水温度を減少補正するので、TAOに近い吹出空気温度を得つつ、エンジンEGの稼働率を低減して省燃費を図ることができる。
【0334】
また、ステップS144、S145のごとく、送風機32の風量が少ないときほど目標冷却水温度の減少補正量を大きくするので、TAOにより近い吹出空気温度を得ることができる。
【0335】
(第7実施形態)
上記第6実施形態では、PTCヒータ37の作動(PTC ON)を選択したときには、PTCヒータ37の作動電力に関係なくブロワモータ電圧のみに応じて目標冷却水温度補正量fBLWを求めるが、本第7実施形態では、図15に示すように、PTCヒータ37の作動(PTC ON)を選択したときには、ブロワモータ電圧およびPTCヒータ37の作動電力に応じて目標冷却水温度補正量fBLWを求める。
【0336】
本実施形態におけるステップS6のより詳細な内容を説明する。図15のフローチャートは、図14のフローチャートのステップS142〜S144をステップS162〜S166に変更したものであり、それ以外は図14と同じである。
【0337】
ステップS161(図14のステップS141に相当)で外気温が−5℃よりも低いと判定した場合(YES判定の場合)には、ステップS162で、バッテリ残量の余裕度合いを判定する。本例では、バッテリ残量の余裕度合いの指標として、バッテリ残量と空調支障レベルとの比(バッテリ残量/空調支障レベル)の値を用いる。
【0338】
ステップS162でバッテリ残量と空調支障レベルとの比の値が中程度(本例では1.2〜1.0)である場合には、バッテリ残量に余裕があると判断してステップS163に進み、PTCヒータ37を所定本数分(本例では500W分)、作動(ON)させる。
【0339】
続いて、ステップS164で、ブロワ電圧(風量)に応じた目標冷却水温度補正量fBLWを求め、ステップS167(図14のステップS145に相当)で、目標冷却水温度を、TAOに対して目標冷却水温度補正量fBLWだけ補正する(目標冷却水温度=TAO+fBLW)。
【0340】
本例では、送風機32の風量が少ないときほど目標冷却水温度補正量fBLWを負の方向(マイナス方向)に大きくして、目標冷却水温度をTAOよりも低くする。この結果、エンジンEGの稼働率が低減して省燃費が図られる。
【0341】
一方、ステップS162でバッテリ残量と空調支障レベルとの比の値が大きい(本例では1.2以上)場合には、バッテリ残量に十分余裕があると判断してステップS165に進み、PTCヒータ37をステップS163よりも多い本数分(本例では1000W分)、作動(ON)させる。
【0342】
続いて、ステップS166で、ブロワ電圧(風量)に応じた目標冷却水温度補正量fBLWを求め、ステップS167(図14のステップS145に相当)で、目標冷却水温度を、TAOに対して目標冷却水温度補正量fBLWだけ補正する(目標冷却水温度=TAO+fBLW)。
【0343】
この場合には、ステップS163の場合よりもPTCヒータ37の作動電力が多くなっており、PTCヒータ37による吹出空気温度の上昇量も大きくなるので、目標冷却水温度補正量fBLWも負の方向(マイナス方向)に一層大きくして目標冷却水温度をTAOよりも一層低くする。これにより、省燃費効果も大きくなる。
【0344】
一方、ステップS162でバッテリ残量と空調支障レベルとの比の値が小さい(本例では1未満)場合には、PTCヒータ37を作動させることができないので、ステップS168(図14のステップS146に相当)に進み、目標冷却水温度を高めに設定する。本例では、目標冷却水温度を、TAOに対して1℃だけ高くする(目標冷却水温度=TAO+1℃)。
【0345】
本実施形態によると、ステップS162〜S167のごとく、空調制御装置50は、バッテリ残量の余裕度合いが大きいときほど、PTCヒータ37の能力を増加させて、その分、目標冷却水温度の減少補正量を大きくするので、TAOに近い吹出空気温度を得つつ、エンジンEGの稼働率をより低減してより省燃費を図ることができる。
【0346】
(第8実施形態)
上記第7実施形態では、バッテリ残量の余裕度合いが大きいほどPTCヒータ37の能力を増加させるが、本第8実施形態では、図16に示すように、バッテリ残量の余裕度合いが大きいほどシート暖房装置48(シートヒータ)の能力を増加させる。
【0347】
すなわち、シートヒータ48の作動・停止に関係なく目標冷却水温度を決定すると、シートヒータ48の作動時には乗員の温感が過剰となって省燃費に反する結果になるという実用上の問題がある。
【0348】
そこで、本実施形態では、シートヒータ48が作動しているときには目標冷却水温度を低下させることにより、乗員の温感が過剰となることを抑制して、省燃費を図る。
【0349】
本実施形態におけるステップS6のより詳細な内容を説明する。図16のフローチャートは、図15のフローチャートのステップS163〜S166をステップS183〜S186に変更したものであり、それ以外は図15と同じである。
【0350】
ステップS181(図15のステップS161に相当)で外気温が−5℃よりも低いと判定した場合(YES判定の場合)には、ステップS182(図15のステップS162に相当)で、バッテリ残量の余裕度合いを判定する。
【0351】
ステップS182でバッテリ残量と空調支障レベルとの比の値が大きい(本例では1.2〜1.0)場合には、バッテリ残量に余裕があると判断してステップS183に進み、シート暖房装置48を弱い能力(ワット数が小)で作動させることを選択する(シートヒータ弱ON要求)させる。
【0352】
続いて、ステップS184で、シート暖房装置48の能力(ワット数)に応じた目標冷却水温度補正量fSEATを求める。本例では、目標冷却水温度補正量fSEATを−3℃に設定する(fSEAT=−3)。
【0353】
続いて、ステップS187(図15のステップS167に相当)で、目標冷却水温度を、TAOに対して目標冷却水温度補正量fSEATだけ補正する(目標冷却水温度=TAO+fSEAT)。この結果、エンジンEGの稼働率が低減して省燃費が図られる。
【0354】
一方、ステップS182でバッテリ残量と空調支障レベルとの比の値が大(本例では1.2以上)である場合には、バッテリ残量に十分余裕があると判断してステップS185に進み、シート暖房装置48を強い能力(ワット数が大)で作動させる(シートヒータ強ON要求)。
【0355】
続いて、ステップS186で、シート暖房装置48の能力(ワット数)に応じた目標冷却水温度補正量fSEATを求める。本例では、目標冷却水温度補正量fSEATを−6℃に設定する(fSEAT=−6)。
【0356】
続いて、ステップS187(図15のステップS167に相当)で、目標冷却水温度を、TAOに対して目標冷却水温度補正量fSEATだけ補正する(目標冷却水温度=TAO+fSEAT)。
【0357】
この場合には、ステップS183の場合よりもシート暖房装置48の能力(ワット数)が強くなっており、シート暖房装置48による乗員温感向上効果も大きくなるので、目標冷却水温度補正量fBLWも負の方向(マイナス方向)に一層大きくして目標冷却水温度を一層低くする。これにより、省燃費効果も大きくなる。
【0358】
本実施形態によると、空調制御装置50は、ステップS182〜S187のごとく、バッテリ残量に余裕がある場合には、シート暖房装置48をONするとともに目標冷却水温度を減少補正するので、乗員の温感を確保しつつ、エンジンEGの稼働率を低減して省燃費を図ることができる。
【0359】
さらに、空調制御装置50は、バッテリ残量の余裕度合いが大きいときほど、シート暖房装置48の能力を増加させて、その分、目標冷却水温度の減少補正量を大きくするので、乗員の温感を確保しつつ、エンジンEGの稼働率をより低減して省燃費をより図ることができる。
【0360】
(第9実施形態)
本第9実施形態は、ステップS7すなわち送風機32のブロワモータ電圧の決定手法の詳細な内容に関するものである。
【0361】
図17は、ステップS7の要部を示すフローチャートである。図17のフローチャートの制御処理は、オートスイッチ60bがオン(ON)されているとき等に実行される。
【0362】
ステップS200では、送風機32(ブロワモータ電圧)の制御モードがオートモード(自動制御)であるか否かを判定する。オートモードでない(マニュアルモードである)と判定された場合(NO判定の場合)には、ステップS201に進み、送風機32の風量設定スイッチの操作によって設定された送風レベル(マニュアル送風レベル)に応じてブロワモータ電圧を決定する。本例では、Hi、M3、M2、M1、LOの5レベルに応じて決定される。
【0363】
ステップS200でオートであると判定された場合(YES判定の場合)には、ステップS202に進み、ベースのオート風量をTAOに応じて決定する。ここで、ベースのオート風量とは、オートモード時のブロワモータ電圧の仮の決定値のことである。これに対して、オートモード時のブロワモータ電圧の最終決定は、後述するステップS208で行われる。本例では、ベースのオート風量は、図17のステップS202中に示すマップに基づいて求められる。
【0364】
続いて、ステップS203では、バッテリ残量に十分余裕があるか否かを判定する。本例では、バッテリ残量が、空調支障レベルに安全率1.2を乗じた値(空調支障レベル×1.2)よりも多い場合(YES判定の場合)には、バッテリ残量に十分余裕があると判断してステップS204へ進む。
【0365】
ステップS204では、エンジンEGが作動中(エンジンON)か否かを判定する。エンジンONと判定した場合(YES判定の場合)には、ステップS205に進み、PTCヒータ37が作動中(PTCヒータON)か否かを選択する。PTCヒータONと判定した場合(YES判定の場合)には、ステップS206に進み、ベースのオート風量を減少補正すべく、ブロワ電圧補正量を−1Vに設定する(ブロワ電圧補正量=−1V)。
【0366】
一方、ステップS203、S204またはS205で否定判定された場合(NO判定の場合)には、ステップS207へ進み、ベースのオート風量をそのままオートモード時のブロワモータ電圧の最終決定値とすべく、ブロワ電圧補正量を0Vに設定する(ブロワ電圧補正量=0V)。
【0367】
そして、ステップS206、S207でブロワ電圧補正量を設定した後、ステップS208では、オートモード時のブロワモータ電圧の最終決定を行う。本例では、ベースのオート風量にブロワ電圧補正量を足し合わせた値を、オートモード時のブロワモータ電圧の最終決定値とする(オート風量=ベースのオート風量+ブロワ電圧補正量)。
【0368】
本実施形態によると、ステップS203〜S206、S208のごとく、空調制御装置50は、PTCヒータ37およびエンジンEGが作動(ON)している場合には、ブロワモータ電圧を低下させて送風機32の風量を低下させるので、PTCヒータ37による吹出空気温度の上昇効果を向上させることができる。
【0369】
このため、エンジンEGの稼働率を低減させてエンジン冷却水温度Twを低下させてもTAOに近い吹出空気温度を得ることができるので、暖房能力を確保しつつ省燃費を図ることができる。
【0370】
(他の実施形態)
なお、上述の第1〜第9実施形態は、本発明における車両用空調装置の制御処理の一具体例を説明したものに過ぎず、これに限定されることなく、種々変形が可能である。
【0371】
例えば、上述の各実施形態では、窓ガラス表面の相対湿度RHWに基づいて窓曇りの可能性を判定しているが、これに限定されるものではなく、例えば、外気温、TAO、車速および乗員数等に基づいて窓曇りの可能性を判定してもよい。
【0372】
例えば、上述の各実施形態における窓曇りの可能性の判定基準や、除湿の必要度合いの判定基準を適宜変更可能である。
【0373】
例えば、上述の第1実施形態のステップS31、S42等における外気温の所定の閾値を適宜変更可能である。
【0374】
例えば、上述の第1実施形態のステップS36等におけるエンジン冷却水温度Twが低いか否かの判定基準を適宜変更可能である。
【0375】
例えば、上述の第3実施形態のステップS72等においてエンジン冷却水温度Twと比較する所定温度を適宜変更可能である。
【0376】
例えば、上述の第1実施形態におけるステップS33〜S39を省略してもよい。すなわち、ステップS31で外気温が極低温であると判定した場合(YES判定の場合)にはステップS32でエンジンON要求するだけにしてもよい。
【0377】
例えば、上述の第3実施形態におけるステップS72、S73、S75〜S78等を省略してもよい。すなわち、ステップS71で外気温が低温であると判定した場合(YES判定の場合)にはステップS74でエンジンON要求するとともにステップS85〜S89でヒートポンプサイクルを選択するようにしてもよい。
【0378】
例えば、上述の第4実施形態におけるステップS92、S93、S95〜S98等を省略してもよい。すなわち、ステップS90、S91で外気温が第1の所定温度よりも高く第2の所定温度よりも低いと判定した場合(ステップS91のYES判定の場合)にはステップS94でエンジンON要求するとともにステップS101〜S105でヒートポンプサイクルを選択するようにしてもよい。
【0379】
例えば、上述の第5実施形態では、圧縮機11吐出冷媒圧力Pdに基づいて圧縮機11のオン・オフ(ON・OFF)を決定するが、圧縮機11吸入冷媒圧力に基づいて圧縮機11のオン・オフ(ON・OFF)を決定するようにしてもよい。
【0380】
また、上述の各実施形態を実施可能な範囲で組み合わせても良い。
【0381】
例えば、上述の第1、第6実施形態を組み合わせてもよい。具体的には、空調制御装置50は、外気温度が所定の閾値よりも低いときには内燃機関EGおよびPTCヒータ37に対して作動要求信号を出力し、PTCヒータ37が作動しているときには目標冷却水温度を減少補正するようにしてもよい。
【0382】
例えば、上述の第1、第7実施形態を組み合わせてもよい。具体的には、空調制御装置50は、外気温度が所定の閾値よりも低いときには内燃機関EGおよびPTCヒータ37に対して作動要求信号を出力し、PTCヒータ37の消費電力が多いときほど目標冷却水温度の減少補正量を大きくするようにしてもよい。
【0383】
例えば、上述の第1、第8実施形態を組み合わせてもよい。具体的には、空調制御装置50は、外気温度が所定の閾値よりも低いときには内燃機関EGおよびシートヒータ48に対して作動要求信号を出力するようにしてもよい。さらに、空調制御装置50は、シートヒータ48が作動しているときには目標冷却水温度を減少補正するようにしてもよい。さらに、空調制御装置50は、シートヒータ48の消費電力が多いときほど目標冷却水温度の減少補正量を大きくするようにしてもよい。
【0384】
また、上述の各実施形態では、本発明の車両用空調装置をハイブリッド車両に適用した例について説明したが、本発明の適用対象はハイブリッド車両に限定されるものではなく、例えばエンジンを停止することで省燃費を図る車両等、種々の車両に本発明を適用可能である。
【符号の説明】
【0385】
10 蒸気圧縮式冷凍サイクル
11 圧縮機
16 室外熱交換器
36 ヒータコア(加熱手段)
37 PTCヒータ(電気ヒータ)
48 シート暖房装置(シートヒータ)
50 空調制御装置(制御手段)
60c 車室内温度設定スイッチ
EG エンジン(内燃機関)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室内へ送風される送風空気を加熱するヒートポンプサイクルを構成する蒸気圧縮式冷凍サイクル(10)と、
内燃機関(EG)の冷却水を熱源として前記送風空気を加熱する加熱手段(36)と、
外気温度が所定の閾値よりも低いときには、前記内燃機関(EG)に対して作動要求信号を出力する制御手段(50)とを備えることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】
電力を供給されることによって前記送風空気を加熱する電気ヒータ(37)を備え、
前記制御手段(50)は、前記外気温度が前記所定の閾値よりも低いときには、前記内燃機関(EG)に加えて前記電気ヒータ(37)に対しても作動要求信号を出力することを特徴とする請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項3】
前記制御手段(50)は、窓曇りの可能性が高いときには、窓曇りの可能性が低いときと比較して、前記内燃機関(EG)に対する要求回転数を高く設定することを特徴とする請求項1または2に記載の車両用空調装置。
【請求項4】
車室内温度を乗員の操作によって設定する車室内温度設定スイッチ(60c)を備え、
前記制御手段(50)は、前記車室内温度設定スイッチ(60c)によって設定された設定温度が所定設定温度よりも高いときには、前記設定温度が前記所定設定温度よりも低いときと比較して、前記内燃機関(EG)に対する要求回転数を高く設定することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の車両用空調装置。
【請求項5】
前記蒸気圧縮式冷凍サイクル(10)は、前記ヒートポンプサイクルと、前記送風空気を冷却するクーラサイクルとに切り替え可能に構成されており、
前記制御手段(50)は、前記外気温度が前記所定の閾値よりも低いときには、前記内燃機関(EG)に対して作動要求信号を出力するとともに、前記蒸気圧縮式冷凍サイクル(10)に対して前記クーラサイクルに切り替える制御信号を出力することを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載の車両用空調装置。
【請求項6】
冷媒と外気とを熱交換する室外熱交換器(16)を有し、車室内へ送風される送風空気を加熱するヒートポンプサイクルを構成する蒸気圧縮式冷凍サイクル(10)と、
内燃機関(EG)の冷却水を熱源として前記送風空気を加熱する加熱手段(36)と、
車室内温度を乗員の操作によって設定する車室内温度設定スイッチ(60c)と、
前記車室内温度設定スイッチ(60c)によって設定された設定温度が所定設定温度よりも高いときには、前記内燃機関(EG)に対して作動要求信号を出力する制御手段(50)とを備えることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項7】
前記制御手段(50)は、前記外気温度が前記所定の閾値よりも低いときには、前記内燃機関(EG)に対して作動要求信号を出力するとともに、前記蒸気圧縮式冷凍サイクル(10)に対してヒートポンプサイクルの作動要求信号を出力することを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載の車両用空調装置。
【請求項8】
冷媒と外気とを熱交換する室外熱交換器(16)を有し、車室内へ送風される送風空気を加熱するヒートポンプサイクルを構成する蒸気圧縮式冷凍サイクル(10)と、
内燃機関(EG)の冷却水を熱源として前記送風空気を加熱する加熱手段(36)と、
前記蒸気圧縮式冷凍サイクル(10)および前記内燃機関(EG)に対して作動要求信号を出力するか否かを決定する制御手段(50)とを備え、
前記制御手段(50)は、
外気温度が第1の所定温度よりも低いときには、前記蒸気圧縮式冷凍サイクル(10)に対して前記ヒートポンプサイクルの作動要求信号を出力することなく、前記内燃機関(EG)に対して作動要求信号を出力し、
前記外気温度が前記第1の所定温度よりも高くかつ第2の所定温度よりも低いときには、前記蒸気圧縮式冷凍サイクル(10)に対して前記ヒートポンプサイクルの作動要求信号を出力するとともに、前記内燃機関(EG)に対して作動要求信号を出力し、
前記外気温度が前記第2の所定温度よりも高いときには、前記内燃機関(EG)に対して作動要求信号を出力することなく、前記蒸気圧縮式冷凍サイクル(10)に対して前記ヒートポンプサイクルの作動要求信号を出力する制御手段(50)とを備えることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項9】
前記制御手段(50)は、前記ヒートポンプサイクルによる暖房と前記加熱手段(36)による暖房とを併用している場合において、前記冷却水の温度が所定温度よりも上昇したときには前記ヒートポンプサイクルを停止させることを特徴とする請求項7または8に記載の車両用空調装置。
【請求項10】
前記蒸気圧縮式冷凍サイクル(10)は、前記ヒートポンプサイクルと、前記送風空気を冷却除湿するクーラサイクルとに切り替え可能に構成されており、
前記制御手段(50)は、前記冷却水の温度が所定温度よりも上昇したときには、前記蒸気圧縮式冷凍サイクル(10)に対して前記クーラサイクルの作動要求信号を出力することを特徴とする請求項7ないし9のいずれか1つに記載の車両用空調装置。
【請求項11】
前記制御手段(50)は、前記加熱手段(36)による暖房を行っている場合において、前記冷却水の温度が所定の基準よりも低いときには、前記冷却水の温度が前記所定の基準よりも高いときと比較して、前記内燃機関(EG)に対する要求回転数を高く設定することを特徴とする請求項1ないし10のいずれか1つに記載の車両用空調装置。
【請求項12】
冷媒を圧縮して吐出する圧縮機(11)を有し、車室内へ送風される送風空気を冷却するクーラサイクルと、前記送風空気を加熱するヒートポンプサイクルとに切り替え可能に構成された蒸気圧縮式冷凍サイクル(10)と、
前記冷媒の圧力が所定圧力よりも低いときには前記圧縮機(11)を停止させる制御手段(50)とを備え、
前記制御手段(50)は、前記ヒートポンプサイクル時には、前記クーラサイクル時と比較して前記所定圧力を小さく設定することを特徴とする車両用空調装置。
【請求項13】
前記制御手段(50)は、目標吹出温度に基づいて目標冷却水温度を決定し、前記電気ヒータ(37)が作動しているときには前記目標冷却水温度を減少補正することを特徴とする請求項2に記載の車両用空調装置。
【請求項14】
前記制御手段(50)は、
目標吹出温度に基づいて目標冷却水温度を決定するとともに前記電気ヒータ(37)の消費電力に応じて前記目標冷却水温度を減少補正し、
前記電気ヒータ(37)の消費電力が多いときほど前記目標冷却水温度の減少補正量を大きくすることを特徴とする請求項2に記載の車両用空調装置。
【請求項15】
座席に配置され、電力を供給されることによって発熱するシートヒータ(48)を備え、
前記制御手段(50)は、前記外気温度が前記所定の閾値よりも低いときには、前記内燃機関(EG)に加えて前記シートヒータ(48)に対しても作動要求信号を出力することを特徴とする請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項16】
前記制御手段(50)は、目標吹出温度に基づいて目標冷却水温度を決定し、前記シートヒータ(48)が作動しているときには前記目標冷却水温度を減少補正することを特徴とする請求項15に記載の車両用空調装置。
【請求項17】
前記制御手段(50)は、
目標吹出温度に基づいて目標冷却水温度を決定するとともに前記シートヒータ(48)の消費電力に応じて前記目標冷却水温度を減少補正し、
前記シートヒータ(48)の消費電力が多いときほど前記目標冷却水温度の減少補正量を大きくすることを特徴とする請求項15に記載の車両用空調装置。
【請求項18】
車室内へ送風される送風空気を、内燃機関(EG)の冷却水を熱源として加熱する加熱手段(36)と、
電力を供給されることによって前記送風空気を加熱する電気ヒータ(37)と、
目標吹出温度に基づいて目標冷却水温度を決定する制御手段(50)とを備え、
前記制御手段(50)は、前記電気ヒータ(37)が作動しているときには前記目標冷却水温度を減少補正することを特徴とする車両用空調装置。
【請求項19】
車室内へ送風される送風空気を、内燃機関(EG)の冷却水を熱源として加熱する加熱手段(36)と、
電力を供給されることによって前記送風空気を加熱する電気ヒータ(37)と、
目標吹出温度に基づいて目標冷却水温度を決定するとともに前記電気ヒータ(37)の消費電力に応じて前記目標冷却水温度を減少補正する制御手段(50)とを備え、
前記制御手段(50)は、前記電気ヒータ(37)の消費電力が多いときほど前記目標冷却水温度の減少補正量を大きくすることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項20】
車室内へ送風される送風空気を、内燃機関(EG)の冷却水を熱源として加熱する加熱手段(36)と、
座席に配置され、電力を供給されることによって発熱するシートヒータ(48)と、
目標吹出温度に基づいて目標冷却水温度を決定する制御手段(50)とを備え、
前記制御手段(50)は、前記シートヒータ(48)が作動しているときには前記目標冷却水温度を減少補正することを特徴とする車両用空調装置。
【請求項21】
車室内へ送風される送風空気を、内燃機関(EG)の冷却水を熱源として加熱する加熱手段(36)と、
座席に配置され、電力を供給されることによって発熱するシートヒータ(48)と、
目標吹出温度に基づいて目標冷却水温度を決定するとともに前記シートヒータ(48)の消費電力に応じて前記目標冷却水温度を減少補正する制御手段(50)とを備え、
前記制御手段(50)は、前記シートヒータ(48)の消費電力が多いときほど前記目標冷却水温度の減少補正量を大きくすることを特徴とする車両用空調装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2011−5982(P2011−5982A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−152095(P2009−152095)
【出願日】平成21年6月26日(2009.6.26)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】