説明

車両用空調装置

【課題】車室内へ送風される送風空気の悪臭の発生を抑制しつつ、省動力化を図ることが可能な車両用空調装置を提供する。
【解決手段】車室内の空調の停止中におけるケース2内の湿度に基づいて、蒸発器9が乾燥しているか否かを判定する。当該判定の結果、蒸発器9が乾燥していると判定された場合、蒸発器9へ流入する空気の露点温度Tdewに応じた第1目標温度TEOD、車室内の空調熱負荷に応じた第2目標温度TEOT、車室内の湿度に応じた第3目標温度TEOC、TEODのうち、第1目標温度TEOD以外の目標温度を目標冷却温度TEOとして設定する。これにより、蒸発器9にて悪臭が発生し難い状況において、送風空気の悪臭抑制のために圧縮機11が不必要に作動することを抑制することができる。この結果、車室内へ送風される送風空気の悪臭の発生を抑制しつつ、車両用空調装置100の省動力化を図ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に、車室内へ送風される送風空気を冷却する冷却用熱交換器としての冷凍サイクルの蒸発器を備え、この蒸発器にて送風空気に悪臭が発生してしまうことの抑制を狙った車両用空調装置が開示されている。
【0003】
ここで、この種の悪臭の発生原因は、蒸発器にて送風空気を露点温度以下まで冷却して凝縮させてしまうと、悪臭を発生させる原因物質が蒸発器の外表面に付着してしまうことにある。さらに、送風空気の悪臭は、原因物質が付着した蒸発器の外表面が乾燥する際あるいは湿潤する際に強くなることが知られている。
【0004】
そこで、特許文献1の車両用空調装置では、蒸発器における冷媒蒸発温度が蒸発器へ流入する送風空気の露点温度よりも所定温度だけ高くあるいは低くなるように、冷凍サイクルの圧縮機の冷媒吐出能力を制御している。これにより、蒸発器の外表面の乾燥と湿潤が頻繁に繰り返されないようにして送風空気の悪臭の発生を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第00/07836号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1の車両用空調装置において、蒸発器における冷媒蒸発温度を蒸発器へ流入する送風空気の露点温度よりも所定温度だけ低くする場合、蒸発器の外表面の湿潤した状態を維持して、送風空気に悪臭が発生してしまうことを抑制することができる。
【0007】
しかし、特許文献1では、例えば、蒸発器の外表面が乾燥して送風空気の悪臭の発生が抑制されている状態であっても、蒸発器における冷媒蒸発温度が蒸発器へ流入する送風空気の露点温度よりも所定温度だけ低くなるように圧縮機を作動させる。すなわち、送風空気に悪臭が発生し難い状況であっても、送風空気の悪臭の発生を抑制するために圧縮機が作動することがある。このように、圧縮機を不必要に作動させることは、車両用空調装置の省動力化の妨げる要因となる。
【0008】
本発明は上記点に鑑みて、車室内へ送風される送風空気の悪臭の発生を抑制しつつ、省動力化を図ることが可能な車両用空調装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
ここで、冷却用熱交換器(9)の外表面が湿潤した状態であると、車室内の空調が停止された後、冷却用熱交換器(9)の外表面に付着した水分(結露水)が蒸発することによって、ケース(2)内の湿度が上昇する傾向がある。一方、冷却用熱交換器(9)の外表面が乾燥した状態であると、車室内の空調が停止された後もケース(2)内の湿度がほとんど変化しない傾向がある。
【0010】
本発明は、このような特徴的な傾向に着眼して案出されたものであり、ケース(2)内の湿度を監視することによって、冷却用熱交換器(9)の外表面が乾燥しているか否かを判定し、当該判定結果に応じて圧縮機(11)の作動を制御する構成としている。
【0011】
すなわち、本発明の請求項1に記載の発明では、車室内に送風される送風空気の空気通路を形成するケース(2)と、ケース(2)内に配置されて送風空気を冷却する冷却用熱交換器(9)と、冷却用熱交換器(9)にて冷却された送風空気の冷却温度(Te)を調整する圧縮機(11)と、ケース(2)内の露点温度(Tdew)に相関を有する物理量を検出する露点温度検出手段(36)と、冷却用熱交換器(9)の目標値である目標冷却温度(TEO)を決定する目標温度決定手段(S9)と、冷却温度(Te)が目標冷却温度(TEO)に近づくように圧縮機(11)を制御する圧縮機制御手段(30a)と、冷却用熱交換器(9)の外表面が乾燥しているか否かを判定する乾燥判定手段(S94)と、を備え、露点温度検出手段(36)は、ケース(2)内の湿度を検出する湿度検出手段(36a)を含んで構成され、乾燥判定手段(S94)は、車室内の空調の停止中における湿度検出手段(36a)の検出値に基づいて、冷却用熱交換器(9)の外表面が乾燥しているか否かを判定し、目標温度決定手段(S9)は、乾燥判定手段(S94)により冷却用熱交換器(9)の外表面が乾燥していないと判定された場合、ケース(2)内の露点温度(Tdew)よりも所定温度低い第1目標温度(TEOD)を含む複数の目標温度のうち、いずれかを目標冷却温度(TEO)に決定し、乾燥判定手段(S94)により冷却用熱交換器(9)の外表面が乾燥していると判定された場合、複数の目標温度のうち、第1目標温度(TEOD)以外の目標温度を目標冷却温度(TEO)に決定することを特徴とする。
【0012】
これによると、冷却用熱交換器(9)の外表面が乾燥して車室内へ送風される送風空気の悪臭の発生が抑制されている状態では、ケース(2)内の露点温度(Tdew)よりも所定温度低い第1目標温度(TEOD)以外の目標温度に冷却用熱交換器(9)の目標冷却温度(TEO)を決定する。これにより、冷却用熱交換器(9)にて悪臭が発生し難い状況において、送風空気の悪臭抑制のために圧縮機(11)が不必要に作動することを抑制することができる。
【0013】
また、冷却用熱交換器(9)の外表面が乾燥していない状態(湿潤した状態)では、第1目標温度(TEOD)を含む複数の目標温度のうちいずれかに目標冷却温度(TEO)を決定する。この際、目標冷却温度(TEO)が第1目標温度(TEOD)に決定されると、冷却用熱交換器(9)の外表面を湿潤させた状態に維持することができる。
【0014】
従って、車室内へ送風される送風空気の悪臭の発生を抑制しつつ、車両用空調装置の省動力化を図ることが可能となる。
【0015】
ところで、実際には、車室内の空調を停止してから冷却用熱交換器(9)の外表面に付着した水分(結露水)が蒸発するまでに時間がかかるため、車室内の空調を停止してから所定時間経過するまではケース(2)内の湿度変化が小さい場合がある。
【0016】
そこで、請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の車両用空調装置において、目標温度決定手段(S9)は、乾燥判定手段(S94)により冷却用熱交換器(9)の外表面が乾燥していると判定された場合であって、車室内の空調の停止が予め定められた基準時間維持されている場合に、複数の目標温度のうち、第1目標温度(TEOD)以外の目標温度を目標冷却温度(TEO)に決定することを特徴とする。
【0017】
これによれば、車室内の空調の停止が予め定められた基準時間維持されている場合に、冷却用熱交換器(9)の外表面が乾燥していると判定されると、第1目標温度(TEOD)以外の目標温度に冷却用熱交換器(9)の目標冷却温度(TEO)を決定する。このため、冷却用熱交換器(9)にて悪臭が発生し難い状況において、送風空気の悪臭抑制のために圧縮機(11)が不必要に作動することを充分に抑制することができる。
【0018】
具体的には、請求項3に記載の発明のように、請求項1または2に記載の車両用空調装置において、乾燥判定手段(S94)にて、車室内の空調の停止中における湿度検出手段(36a)の検出値が予め定められた乾燥基準値以下の場合に、冷却用熱交換器(9)の外表面が乾燥していると判定するように構成することができる。
【0019】
また、請求項4に記載の発明のように、請求項1または2に記載の車両用空調装置において、乾燥判定手段(S94)にて、車室内の空調の停止中における湿度検出手段(36)の検出値の変化が上昇傾向である場合に、冷却用熱交換器(9)の外表面が乾燥していないと判定するように構成することができる。
【0020】
また、請求項5に記載の発明のように、請求項1ないし4のいずれか1つに記載の車両用空調装置において、複数の目標温度に、車室内の空調熱負荷に応じて設定される第2目標温度(TEOT)を含む構成とすることで、乾燥判定手段(S94)により冷却用熱交換器(9)の外表面が乾燥していると判定された場合であっても、車室内の空調熱負荷に応じて圧縮機(11)の作動を制御することが可能となる。
【0021】
また、請求項6に記載の発明のように、請求項1ないし5のいずれか1つに記載の車両用空調装置において、複数の目標温度に、車室内の湿度に応じて設定される第3目標温度(TEOC、TEOW)を含む構成とすることで、乾燥判定手段(S94)により冷却用熱交換器(9)の外表面が乾燥していると判定された場合であっても、車室内の除湿要否に応じて圧縮機(11)の作動を制御することが可能となる。
【0022】
なお、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】第1実施形態に係る車両用空調装置の全体構成図である。
【図2】第1実施形態に係る車両用空調装置の制御処理を示すフローチャートである。
【図3】第1実施形態に係る車両用空調装置の制御処理の要部を示すフローチャートである。
【図4】第1実施形態に係る乾燥判定処理の流れを示すフローチャートである。
【図5】蒸発器の外表面が湿潤した状態における車室内の空調停止時間と車室内の湿度との関係を説明する説明図である。
【図6】第2実施形態に係る乾燥判定処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付してある。
【0025】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態について図1〜図4に基づいて説明する。図1は、本実施形態の車両用空調装置100の全体構成図である。本実施形態の車両用空調装置100は、エンジン(内燃機関)および走行用電動モータから車両走行用の駆動力を得る、いわゆるハイブリッド車両に搭載されている。
【0026】
このハイブリッド車両は、車両の走行負荷等に応じてエンジンを作動あるいは停止させて、エンジンおよび走行用電動モータの双方から駆動力を得て走行する走行状態や、エンジンを停止させて走行用電動モータのみから駆動力を得て走行する走行状態等を切り替えることができる。これにより、ハイブリッド車両では、車両走行用の駆動力をエンジンのみから得る通常の車両に対して、車両燃費を向上させることができる。
【0027】
本実施形態の車両用空調装置100は、図1に示すように、室内空調ユニット1、冷凍サイクル10、空調制御装置30等を備えている。まず、室内空調ユニット1は、車室内最前部の計器盤(インストルメントパネル)の内側に配置されて、その外殻を形成するケース2内に送風機8、蒸発器9、ヒータコア15等を収容したものである。
【0028】
ケース2は、車室内に送風される送風空気の空気通路を形成しており、ある程度の弾性を有し、強度的にも優れた樹脂(例えば、ポリプロピレン)にて成形されている。このケース2内の送風空気流れ最上流側には、ケース2内の空気通路に車室外空気(外気)を流入させる通風経路、および、ケース2内の空気通路に車室内空気(内気)を流入させる通風経路を切り替える内外気切替箱5が配置されている。
【0029】
より具体的には、内外気切替箱5には、ケース2内の空気通路に内気を導入させる内気導入口3および外気を導入させる外気導入口4が形成されている。そして、内外気切替箱5の内部には、内気導入口3および外気導入口4の開口面積を連続的に調整して、ケース2内へ導入させる内気の風量と外気の風量との風量割合を変化させる内外気切替ドア6が配置されている。
【0030】
従って、内外気切替ドア6は、ケース2内の空気通路に導入される内気の風量と外気の風量との風量割合を変化させて吸込口モードを切り替える機能を果たす。なお、内外気切替ドア6は、内外気切替ドア6用のサーボモータ7によって駆動され、このサーボモータ7は、後述する空調制御装置30から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
【0031】
また、吸込口モードとしては、内気導入口3を全開とするとともに外気導入口4を全閉としてケース2内へ内気を導入する内気モード、内気導入口3を全閉とするとともに外気導入口4を全開としてケース2内へ外気を導入する外気モード、さらに、内気導入口3および外気導入口4を同時に開く内外気混入モードがある。なお、内外気切替箱5は、ケース2内の空気通路に車室外空気(外気)を流入させる外気モード、およびケース2内の空気通路に車室内空気(内気)を流入させる内気モードを切り替える内外気モード切替手段を構成している。
【0032】
内外気切替箱5の空気流れ下流側には、内外気切替箱5を介して吸入した空気を車室内へ向けて送風する送風手段である送風機8が配置されている。この送風機8は、遠心多翼ファン(シロッコファン)8aを電動モータ8bにて駆動する電動送風機であって、空調制御装置30から出力される制御電圧によって回転数(送風量)が制御される。従って、この電動モータ8bは、送風機8の送風能力変更手段を構成している。
【0033】
送風機8の空気流れ下流側には、蒸発器9が配置されている。蒸発器9は、その内部を流通する冷媒と送風機8から車室内へ向けて送風される送風空気とを熱交換させて、送風空気を冷却する冷却用熱交換器である。具体的には、蒸発器9は、圧縮機11、凝縮器12、受液器13および膨張弁14等とともに、蒸気圧縮式の冷凍サイクル10を構成している。
【0034】
ここで、冷凍サイクル10について説明する。圧縮機11は、エンジンルーム内に配置され、冷凍サイクル10において冷媒を吸入し、圧縮して吐出するものであり、吐出容量が固定された固定容量型圧縮機構11aを電動モータ11bにて駆動する電動圧縮機として構成されている。電動モータ11bは、インバータ40から出力される交流電流によって、その作動(回転数)が制御される交流モータである。
【0035】
また、インバータ40は、空調制御装置30から出力される制御信号に応じた周波数の交流電流を出力する。そして、この周波数制御によって圧縮機11の回転数が制御され、圧縮機11の冷媒吐出能力が変更される。従って、電動モータ11bは、圧縮機11の吐出能力変更手段を構成している。
【0036】
凝縮器12は、エンジンルーム内に配置されて、内部を流通する冷媒と、室外送風機としての冷却ファン12aから送風された車室外空気(外気)とを熱交換させることにより、圧縮機11吐出冷媒を凝縮させるものである。
【0037】
冷却ファン12aは、軸流ファン12bを電動モータ12cにて駆動する電動送風機であって、空調制御装置30から出力される制御電圧によって稼働率、すなわち、回転数(送風量)が制御される。従って、この電動モータ12cは、冷却ファン12aの送風能力変更手段を構成している。
【0038】
受液器13は、凝縮器12にて凝縮された冷媒を気液分離して余剰冷媒を蓄えるとともに、液相冷媒のみを下流側に流す気液分離器である。膨張弁14は、受液器13から流出した液相冷媒を減圧膨張させる減圧手段である。この膨張弁14は、温度式膨張弁で構成されており、蒸発器9出口側冷媒の過熱度が予め定めた範囲となるように下流側に流出させる冷媒流量を調整する。
【0039】
このような温度式膨張弁としては、蒸発器9出口側の冷媒通路に配置された感温部を有し、蒸発器9出口側冷媒の温度と圧力とに基づいて蒸発器9出口側冷媒の過熱度を検知し、蒸発器9出口側冷媒の過熱度が予め設定された所定値となるように機械的機構により弁開度(冷媒流量)を調整するものを採用できる。
【0040】
蒸発器9は、膨張弁14にて減圧膨張された冷媒を蒸発させて、冷媒に吸熱作用を発揮させるものである。これにより、蒸発器9は、送風空気を冷却する冷却用熱交換器として機能する。ここで、蒸発器9における送風空気の冷却温度Teは、蒸発器9における冷媒蒸発温度(冷媒蒸発圧力)によって決定される。
【0041】
さらに、本実施形態の如く、減圧手段として機械的機構により弁開度を調整する温度式膨張弁を採用する構成では、蒸発器9における冷媒蒸発圧力は、圧縮機11の回転数(冷媒吐出能力)によって決定することができる。従って、本実施形態の圧縮機11は、蒸発器9における送風空気の冷却温度を調整する機能を有している。
【0042】
また、ケース2内において、蒸発器9の空気流れ下流側にはケース2内を流れる空気を加熱するヒータコア15が配置されている。このヒータコア15はエンジンを冷却するためのエンジン冷却水を熱源として、蒸発器9通過後の空気(冷風)を加熱する加熱用熱交換器である。
【0043】
さらに、ヒータコア15の側方には、蒸発器9通過後の冷風を、ヒータコア15を通過させることなく下流側に流すバイパス通路16が形成されている。従って、ヒータコア15およびバイパス通路16の空気流れ下流側で混合される送風空気の温度は、ヒータコア15およびバイパス通路16を通過する送風空気の風量割合によって変化する。
【0044】
そこで、本実施形態では、蒸発器9の空気流れ下流側であって、ヒータコア15およびバイパス通路16の上流側に、ヒータコア15およびバイパス通路16へ流入させる送風空気の風量割合を連続的に変化させるエアミックスドア17を配置している。従って、エアミックスドア17は、ヒータコア15およびバイパス通路16の空気流れ下流側で混合される送風空気の温度を調整する温度調整手段を構成している。
【0045】
なお、エアミックスドア17は、エアミックスドア17用のサーボモータ18によって駆動され、このサーボモータ18は、空調制御装置30から出力される制御信号によってその作動が制御される。
【0046】
ケース2の送風空気流れ最下流部には、空調対象空間である車室内へ温度調整された送風空気を吹き出す吹出口19〜21が設けられている。この吹出口19〜21としては、具体的に、車両前面窓ガラスW内側面に向けて空調風を吹き出すデフロスタ吹出口19、車室内の乗員の上半身に向けて空調風を吹き出すフェイス吹出口20、および乗員の足元に向けて空調風を吹き出すフット吹出口21が設けられている。
【0047】
また、デフロスタ吹出口19、フェイス吹出口20、およびフット吹出口21の空気流れ上流側には、それぞれ、デフロスタ吹出口19の開口面積を調整するデフロスタドア22、フェイス吹出口20の開口面積を調整するフェイスドア23、およびフット吹出口21の開口面積を調整するフットドア24が配置されている。
【0048】
これらのデフロスタドア22、フェイスドア23、フットドア24、は、吹出口モードを切り替える吹出口モード切替手段を構成するものであって、図示しないリンク機構を介して、吹出口モードドア駆動用のサーボモータ25に連結されて連動して回転操作される。なお、このサーボモータ25も、空調制御装置30から出力される制御信号によってその作動が制御される。
【0049】
また、吹出口モードとしては、フェイス吹出口20を全開してフェイス吹出口20から車室内乗員の上半身に向けて空気を吹き出すフェイスモード、フェイス吹出口20とフット吹出口21の両方を開口して車室内乗員の上半身と足元に向けて空気を吹き出すバイレベルモード、フット吹出口21を全開するとともにデフロスタ吹出口19を小開度だけ開口して、フット吹出口21から主に空気を吹き出すフットモード、およびフット吹出口21およびデフロスタ吹出口19を同程度開口して、フット吹出口21およびデフロスタ吹出口19の双方から空気を吹き出すフットデフロスタモードがある。
【0050】
さらに、乗員が後述する操作パネル50のスイッチをマニュアル操作することによって、デフロスタ吹出口19を全開にしてデフロスタ吹出口19から車両フロント窓ガラス内面に空気を吹き出すデフロスタモードとすることもできる。
【0051】
次に、本実施形態の電気制御部について説明する。空調制御装置30は、CPU、ROMおよびRAM等を含む周知のマイクロコンピュータとその周辺回路から構成され、そのROM内に記憶された空調制御プログラムに基づいて各種演算、処理を行い、出力側に接続された各種機器の作動を制御する。
【0052】
空調制御装置30の出力側には、各種サーボモータ7、18、25、送風機8の電動モータ8b、圧縮機11の電動モータ11b用のインバータ40、冷却ファン12aの電動モータ12c等が接続されている。
【0053】
一方、空調制御装置30の入力側には、外気温Tamを検出する外気センサ31、車室内温度Trを検出する内気センサ32、車室内の日射量Tsを検出する日射センサ33、蒸発器9からの吹出空気温度(送風空気の冷却温度)Teを検出する蒸発器温度センサ34(冷却温度検出手段)、エンジンから流出した冷却水の冷却水温度Twを検出する冷却水温度センサ35、蒸発器9へ流入する送風空気の露点温度Tdewを検出する露点温度検出手段としての露点計36等の種々の空調制御用のセンサ群が接続されている。
【0054】
なお、本実施形態の蒸発器温度センサ34は、具体的に蒸発器9の熱交換フィン温度を検出している。もちろん、蒸発器温度センサ34として、蒸発器9のその他の部位の温度を検出する温度検出手段を採用してもよいし、蒸発器9を流通する冷媒自体の温度を直接検出する温度検出手段を採用してもよい。さらに、蒸発器9から流出した直後の送風空気の温度を検出する温度検出手段を採用してもよい。
【0055】
また、本実施形態の露点計36は、蒸発器9へ流入する流入空気の相対湿度Reinを検出する湿度検出手段としての湿度センサ36a、および、蒸発器9へ流入する流入空気の温度Teinを検出する温度検出手段としての温度センサ36bを有し、これらのセンサ36a、36bが一体的に構成されて、蒸発器9へ流入する流入空気の相対湿度Rein、温度Teinおよび露点温度Tdewを出力するものである。
【0056】
つまり、蒸発器9へ流入する流入空気の相対湿度Reinおよび温度Teinは、蒸発器9へ流入する流入空気の露点温度Tdewに相関を有する物理量である。また、露点計36を廃止して、それぞれ別体で構成された湿度センサおよび温度センサを採用し、これらの湿度センサおよび温度センサの検出値に基づいて、空調制御装置30が露点温度Tdewを算出するようにしてもよい。
【0057】
さらに、空調制御装置30の入力側には、車室内前部の計器盤付近に配置された操作パネル50が接続されており、この操作パネル50に設けられた各種空調操作スイッチからの操作信号が入力される。
【0058】
操作パネル50に設けられた各種空調操作スイッチとしては、具体的に、圧縮機11の作動指令信号を出すエアコンスイッチ51、車室内温度Tsetを設定する温度設定手段をなす温度設定スイッチ52、吹出口モードドア22〜24により切り替わる吹出モードをマニュアル設定する吹出口モードスイッチ53、内外気切替ドア6による内気モードと外気モードをマニュアル設定する内外気切替スイッチ54、送風機8の風量切替をマニュアル設定する送風機作動スイッチ55、車両用空調装置100の自動制御を設定あるいは解除するオートスイッチ56等が設けられている。
【0059】
また、空調制御装置30は、上述した各種空調制御機器を制御する制御手段が一体に構成されたものであるが、本実施形態では、特に、圧縮機11の電動モータ11b(具体的には、インバータ40)の作動を制御する構成(ハードウェアおよびソフトウェア)を圧縮機制御手段30aとし、内外気モード切替手段を構成する内外気切替ドア6用のサーボモータ7の制御する構成(ハードウェアおよびソフトウェア)を内外気切替制御手段30bとする。
【0060】
次に、図2〜図4のフローチャートを用いて、車両用空調装置100の作動を説明する。図2は、本実施形態の空調制御装置30が実行する制御処理を示すフローチャートであり、図3は、図2の制御処理の要部を示すフローチャートである。また、図4は、本実施形態に係る乾燥判定処理の流れを示すフローチャートである。なお、図2〜図4中の各制御ステップは、空調制御装置30が有する各種の機能実現手段を構成するものである。また、この制御処理は、操作パネル50のエアコンスイッチ51が投入(ON)された状態でオートスイッチ56が投入(ON)されると開始する。
【0061】
まず、ステップS1ではフラグ、タイマ等の初期化(イニシャライズ)がなされる。このイニシャライズでは、フラグや各種演算値のうち、前回の車両用空調装置100の作動終了時に記憶された値が維持されるものもある。なお、本実施形態では、ステップS1にて起動時であることを示す起動フラグがオンに設定される。
【0062】
次のステップS2では、操作パネル50の操作信号を読み込み、続くステップS3では、車両環境状態の信号、すなわち、センサ群31〜36等により検出された検出信号を読み込む。
【0063】
次のステップS4では、車室内吹出空気の目標吹出温度TAOを算出する。目標吹出温度TAOは、下記数式F1により算出される。
TAO=Kset×Tset−Kr×Tr−Kam×Tam−Ks×Ts+C…(F1)
ここで、Tsetは温度設定スイッチ52によって設定された車室内設定温度、Trは内気センサ32によって検出された車室内温度(内気温)、Tamは外気センサ31によって検出された外気温(車室外気温)、Tsは日射センサ33によって検出された日射量である。Kset、Kr、Kam、Ksは制御ゲインであり、Cは補正用の定数である。なお、目標吹出温度TAOは、車室内の空調熱負荷に相当している。
【0064】
続くステップS5〜S10では、空調制御装置30に接続された各種機器の制御状態が決定される。まず、ステップS5では、エアミックスドア17の目標開度SW(具体的には、エアミックスドア17用のサーボモータ18に出力する制御信号)を、目標吹出温度TAO、蒸発器温度センサ34によって検出された吹出空気温度Te、および冷却水温度センサ35によって検出された冷却水温度Twに基づいて、以下数式F2により算出する。
SW=〔(TAO−Te)/(Tw−Te)〕×100(%)…(F2)
なお、SW=0(%)は、エアミックスドア17の最大冷房位置であり、バイパス通路16を全開し、ヒータコア15側の通風路を全閉する。これに対し、SW=100(%)は、エアミックスドア17の最大暖房位置であり、バイパス通路16を全閉し、ヒータコア15側の通風路を全開する。
【0065】
次に、ステップS6にて、送風機8により送風される送風空気量(具体的には、電動モータ8bに出力する制御電圧)を決定する。この制御電圧については、目標吹出温度TAOに基づいて予め空調制御装置30に記憶された制御マップを参照して、目標吹出温度TAOが高温時および低温時に中間温度時よりも高くなるように決定される。
【0066】
次に、ステップS7にて、吹出口モードを決定する。この吹出モードも、目標吹出温度TAOに基づいて、予め空調制御装置30に記憶された制御マップを参照して決定する。本実施形態では、TAOが低温域から高温域へと上昇するにつれて吹出モードをフットモード→バイレベル(B/L)モード→フェイスモードへと順次切り替える。
【0067】
次に、ステップS8では、吸込口モード、すなわち内外気切替箱5の切替状態を決定する。この吸込口モードもTAOに基づいて、予め空調制御装置30に記憶された制御マップを参照して決定する。本実施形態では、基本的に外気を導入する外気モードが優先されるが、TAOが極低温域となって高い冷房性能を得たい場合等に内気を導入する内気モードが選択される。
【0068】
次に、ステップS9にて、蒸発器9から吹き出される送風空気の目標冷却温度TEOを決定する。本実施形態の制御ステップS9は、送風空気の冷却温度Teの目標値である目標冷却温度TEOを決定する目標温度決定手段を構成している。
【0069】
ステップS9の詳細については、図3のフローチャートを用いて説明する。
【0070】
まず、ステップS91にて、車室内に送風する送風空気に悪臭が発生することを抑制可能な第1目標温度TEODを算出する。具体的には、ステップS3にて読み込まれた露点計36の検出値(露点温度Tdew)から予め定めた基準温度αを減算することで、第1目標温度TEOD(=Tdew−α)を算出する。なお、基準温度αは、露点計36の誤差の余裕代であり、例えば2℃に設定される。
【0071】
ステップS92にて、車室内の空調熱負荷(冷房要求)に応じた第2目標温度TEOTを算出する。具体的には、車室内の空調熱負荷に相当する目標吹出温度TAO(ステップS4で算出)に基づいて、予め空調制御装置30に記憶された制御マップを参照して第2目標温度TEOTを算出する。
【0072】
ステップS93にて、車室内の湿度に応じた第3目標温度TEOC、TEOWを算出する。具体的には、ステップS93では、車室内の湿度上昇等による乗員の不快感を抑制するための快適目標温度TEOC、および車両前面の窓ガラスWの防曇を図るための防曇目標温度TEOWを算出する。
【0073】
例えば、快適目標温度TEOCは、車室内の湿度に基づいて、予め空調制御装置30に記憶された制御マップを参照して算出することができる。また、防曇目標温度TEOWは、窓ガラスW付近の湿度(車室内および車室外)に基づいて、予め空調制御装置30に記憶された制御マップを参照して算出することができる。なお、車室内の湿度および車室外の湿度は、湿度センサ(図示略)等により検出することができる。
【0074】
次に、ステップS94にて、ケース2内の絶対湿度に応じて蒸発器9の外表面が乾燥しているか否かを判定する乾燥判定処理を行う。ステップS94にて実行する乾燥判定処理については、図4に示すフローチャートに基づいて説明する。なお、本実施形態のステップS94に示す乾燥判定処理は、冷却用熱交換器である蒸発器9の外表面が乾燥しているか否かを判定する乾燥判定手段を構成している。
【0075】
ステップS94では、まず、ステップS941にて、車両用空調装置100の起動時であるか否かを判定する。この起動時であるか否かの判定は、ステップS1にて設定される起動フラグを参照して行う。この結果、起動時であると判定された場合(S941:YES)には、起動フラグをオフに設定して、ステップS942に移行する。
【0076】
ここで、車室内の空調が停止された後に、蒸発器9の外表面が湿潤した状態であると、蒸発器9の外表面に付着した水分(結露水)が蒸発することで、空調停止中にケース2内の湿度が上昇する傾向がある。その一方で、車室内の空調が停止された後に、蒸発器9の外表面が乾燥した状態であると、空調停止中にケース2内の湿度がほとんど変化しない傾向がある。
【0077】
本実施形態では、蒸発器9の外表面の乾燥状態と空調停止中におけるケース2内の湿度との関係を利用することで、蒸発器9の外表面が乾燥しているか否かを判定する。具体的には、本実施形態では、ステップS942にて、空調停止中における露点計36の検出値から蒸発器9に流入する流入空気の絶対湿度(入口側絶対湿度)を算出し、算出した絶対湿度が予め設定された乾燥判定湿度より大きいか否かを判定する。
【0078】
この乾燥判定湿度は、ケース2内の湿度のこもり易さ、蒸発器9の外表面における結露水の蒸発のし易さ等を考慮して予め設定する乾燥基準値であり、蒸発器9の外表面の水分が蒸発した際のケース2内の湿度上昇と、ケース2内から車室内への湿度拡散がつりあう湿度よりも低い値に設定される。
【0079】
なお、ケース2内の絶対湿度が乾燥判定湿度より大きい場合には、蒸発器9の外表面が乾燥しておらず、湿潤した状態であると判断することができ、ケース2内の絶対湿度が乾燥判定湿度以下の場合には、蒸発器9の外表面が乾燥していると判断することができる。
【0080】
このため、ステップS942の判定の結果、蒸発器9に流入する流入空気の絶対湿度が乾燥判定湿度より大きい場合(S942:YES)には、蒸発器9の外表面が湿潤した状態であると考えられるので、ステップS943にて蒸発器9の乾燥状態を示す乾燥判定フラグをオフ(乾燥判定=湿潤)に設定する。そして、乾燥判定処理を終えて、ステップS95へ移行する。
【0081】
ここで、乾燥判定フラグは、オフに設定されている場合、蒸発器9の外表面が湿潤した状態であることを示し、オンに設定されている場合、蒸発器9の外表面が乾燥した状態であることを示す。なお、乾燥判定フラグは、空調制御装置30のRAM等の記憶部に記憶される。
【0082】
一方、ステップS942の判定の結果、蒸発器9に流入する流入空気の絶対湿度が乾燥判定湿度以下の場合(S942:NO)には、蒸発器9の外表面が乾燥した状態と予想されるので、ステップS944へ移行する。
【0083】
ステップS944では、車室内の空調の停止時間が、予め定められた判定基準時間維持されているか否かを判定する。この判定基準時間は、ケース2内の湿度のこもり易さ、蒸発器9の外表面における結露水の蒸発のし易さ等を考慮して予め設定する基準時間であり、車室内の空調を停止してから蒸発器9の外表面の水分が蒸発するのに充分な時間が設定される。
【0084】
ステップS944の判定の結果、車室内の空調の停止時間が、判定基準時間維持されていないと判定された場合(S944:NO)には、蒸発器9の外表面における結露水の蒸発量が少なく、ケース2内の湿度がほとんど上昇していない可能性があるので、ステップS943へ移行して、蒸発器9の乾燥状態を示す乾燥判定フラグをオフ(乾燥判定=湿潤)に設定する。
【0085】
一方、車室内の空調の停止時間が、判定基準時間維持されていると判定された場合(S944:YES)には、蒸発器9が乾燥した状態であると考えられるので、ステップS945にて乾燥判定フラグをオン(乾燥判定=乾燥)に設定する。そして、乾燥判定処理を終えて、ステップS95へ移行する。
【0086】
また、ステップS941の判定処理の結果、起動時でないと判定された場合(S941:NO)には、ステップS946へ移行する。ステップS946では、前回の乾燥判定で乾燥と判定されたか否かを判定する。具体的には、空調制御装置30の記憶部に記憶された乾燥判定フラグがオン(乾燥判定=乾燥)に設定されているか否かを判定する。
【0087】
この結果、前回の乾燥判定で乾燥と判定されていない場合(S946:NO)には、蒸発器9の外表面が湿潤した状態であると考えられるので、ステップS947にて乾燥判定フラグをオフ(乾燥判定=湿潤)に設定する。そして、乾燥判定処理を終えて、ステップS95へ移行する。
【0088】
一方、前回の乾燥判定で乾燥と判定されている場合(S946:YES)には、ステップS948にて蒸発器9の温度に相当する吹出空気温度Teが露点温度Tdewよりも低いか否かを判定する。この結果、吹出空気温度Teが露点温度Tdewよりも低いと判定された場合(S948:YES)には、蒸発器9の外表面に結露水が付着し、湿潤した状態となっていると考えられるので、ステップS947に移行して、乾燥判定フラグをオフ(乾燥判定=湿潤)に設定する。
【0089】
また、ステップS948の判定処理の結果、吹出空気温度Teが露点温度Tdew以上と判定された場合(S948:NO)には、蒸発器9の外表面が乾燥した状態に維持されていると考えられるので、ステップS949にて乾燥判定フラグをオン(乾燥判定=乾燥)に設定する。そして、乾燥判定処理を終えて、ステップS95へ移行する。
【0090】
図3に戻り、ステップS95では、ステップS94における乾燥判定処理で設定された乾燥判定フラグに基づいて、蒸発器9の外表面が乾燥した状態であるか否かを判定する。なお、ステップS95では、乾燥判定フラグがオンである場合に、蒸発器9の外表面が乾燥した状態であると判定し、乾燥フラグがオフである場合に、蒸発器9の外表面が湿潤した状態であると判定する。
【0091】
ステップS95の判定処理の結果、蒸発器9の外表面が湿潤した状態であると判定された場合(S95:NO)には、ステップS96にて、ステップS91〜S93で算出した各目標温度TEOD、TEOT、TEOC、TEOWのうち、最も低い目標温度を蒸発器9から吹き出される送風空気の目標冷却温度TEOに決定する。そして、ステップ10へと移行する。
【0092】
また、ステップS95の判定処理の結果、蒸発器9の外表面が乾燥した状態であると判定された場合(S95:YES)には、ステップS97にて、ステップS91〜S93で算出した各目標温度TEOD、TEOT、TEOC、TEOWのうち、第1目標温度TEOD以外の目標温度を目標冷却温度TEOに決定する。そして、ステップ10へと移行する。
【0093】
これにより、蒸発器9が乾燥し送風空気の悪臭の発生が抑制された状態では、目標冷却温度TEOが送風空気の悪臭抑制のための第1目標温度TEODに決定されず、空調熱負荷や除湿要求に応じた目標温度に決定される。
【0094】
次に、ステップS10にて、圧縮機11の回転数、すなわち冷媒吐出能力(具体的には、インバータ40から圧縮機11の電動モータ11bに出力される制御電流)を決定する。このステップS10では、吹出空気温度TeとステップS9で決定された目標冷却温度TEOとの偏差En(Te−TEO)を算出し、この偏差Enに基づいて、吹出空気温度Teが目標冷却温度TEOに近づくように比例積分制御(PI制御)によるフィードバック制御手法によって、インバータ40から出力される制御電流を決定する。
【0095】
つまり、本実施形態の車両用空調装置100では、空調制御装置30の圧縮機制御手段30aが、吹出空気温度Te(送風空気の冷却温度)を目標冷却温度TEOに近づけるように、圧縮機11の作動を制御する。
【0096】
ここで、本実施形態では、目標冷却温度TEOの最低値を0℃以上(具体的には1℃)に設定して、蒸発器9の着霜を防止している。なお、目標冷却温度TEOが予め設定された上限値を超える場合には、圧縮機11に作動を停止する構成としてもよい。これにより、圧縮機11の消費動力を低減して、車両用空調装置100の省動力化を図ることができる。
【0097】
次に、ステップS11は、上述のステップS5〜S10で決定された制御状態が得られるように、空調制御装置30より各種空調制御機器7、8b、12a、18、25、40に対して制御信号等が出力される。続くステップS12では、操作パネル50から車両用空調装置100のシステム停止信号が出力されているか否かを判定する。
【0098】
そして、ステップS12にて、システム停止信号が出力されていると判定された場合(S12:YES)には、システムを停止させ、システム停止信号が出力されていないと判定された場合(S12:NO)には、制御周期τ(具体的には、250ms程度)の間待機し、制御周期τの経過を判定するとステップS2に戻るようになっている。
【0099】
本実施形態の車両用空調装置100は、以上の如く作動するので、送風機8から送風された送風空気が、蒸発器9にて冷媒が蒸発する際に吸熱されて冷却される。そして、蒸発器9にて冷却された冷風は、エアミックスドア17の開度に応じて、ヒータコア15側およびバイパス通路16側へ流入する。
【0100】
ヒータコア15側へ流入した冷風はヒータコア15にて再加熱され、バイパス通路16を通過した冷風と混合されて温度調整される。そして、温度調整された空調風が各吹出口19〜21を介して車室内に吹き出される。これにより、車室内の内気温Trが外気温Tamより低く冷やされる場合には、車室内の冷房が実現され、一方、内気温Trが外気温Tamより高く加熱される場合には、車室内の暖房が実現されることになる。
【0101】
この際、本実施形態の車両用空調装置100では、目標温度決定手段を構成する制御ステップS9にて、蒸発器9の外表面が乾燥して車室内へ送風される送風空気の悪臭の発生が抑制された状態では、目標冷却温度TEOを、送風空気の悪臭抑制のための第1目標温度TEOD以外の目標温度に決定する。これにより、蒸発器9にて悪臭が発生し難い状況において、送風空気の悪臭抑制のために圧縮機11が不必要に作動することを抑制することができる。
【0102】
また、蒸発器9の外表面が湿潤した状態では、ステップS9にて、目標冷却温度TEOが各目標温度TEOD、TEOT、TEOC、TEOWのうち、最も小さい目標温度に決定される。この際、目標冷却温度TEOが第1目標温度TEODに決定されると、蒸発器9の外表面を湿潤させた状態に維持することができる。
【0103】
従って、車室内へ送風される送風空気の悪臭の発生を抑制しつつ、車両用空調装置100の省動力化を図ることが可能となる。
【0104】
また、本実施形態では、蒸発器9の外表面が乾燥していると判定された場合であって、車室内の空調の停止から判定基準時間経過した場合に、目標冷却温度TEOを送風空気の悪臭抑制のための第1目標温度TEOD以外の目標温度に決定するようにしている。このため、蒸発器9にて悪臭が発生し難い状況において、送風空気の悪臭抑制のために圧縮機11が不必要に作動することを充分に抑制することができる。
【0105】
また、本実施形態では、蒸発器9の外表面が乾燥していると判定された場合であって、車室内の空調の停止から判定基準時間経過した場合には、目標冷却温度TEOが車室内の空調熱負荷に応じて設定される第2目標温度TEOT、または車室内の湿度に応じて設定される第2目標温度TEOC、TEOWのいずれかに決定される。このため、蒸発器9の外表面が乾燥していると判定された場合には、車室内の空調熱負荷や車室内の除湿要求に応じて圧縮機11の作動を制御することが可能となっている。特に、車室内の冷房要求や除湿要求がない場合には、圧縮機11の作動を停止することによって、充分に車両用空調装置100の省動力化を図ることが可能となる。
【0106】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態では、第1実施形態と同様または均等な部分についての説明を省略、または簡略化して説明する。
【0107】
図5は、蒸発器9の外表面が湿潤した状態における車室内の空調停止時間と車室内の湿度との関係を説明する説明図である。図5に示すように、蒸発器9の外表面が湿潤した状態では、車室内の空調が停止されると、時間経過と共にケース2内の絶対湿度が上昇する傾向がある。このため、本実施形態では、車室内の空調停止中におけるケース2内の絶対湿度の変化に応じて、蒸発器9の外表面が乾燥しているか否かを判定する構成としている。
【0108】
図6は、本実施形態に係る乾燥判定処理(ステップS94の処理)の流れを示すフローチャートである。図6に示すように、ステップS941にて起動時であると判定された場合(S941:YES)には、空調停止中におけるケース2内の絶対湿度(湿度センサ36aの検出値により算出)が上昇傾向であるか否かを判定する(S950)。
【0109】
ここで、ケース2内の絶対湿度は、外気の湿度や車室内の湿度等の外的要因によっても変動することがある(図5参照)。このため、ステップS950における絶対湿度の上昇傾向であるか否かの判定では、短い時間では絶対湿度が減少傾向を示す場合であっても、空調を停止してから長い時間で上昇傾向を示す場合に、ケース2内の絶対湿度が上昇傾向であると判定する。例えば、ケース2内の絶対湿度を所定周期で複数回検出し、時間経過とともに絶対湿度が上昇している場合に上昇傾向であると判定するようにすればよい。
【0110】
ステップS950の判定の結果、ケース2内の絶対湿度が上昇傾向であると判定された場合(S950:YES)には、蒸発器9の外表面が湿潤した状態であると考えられるので、ステップS943へ移行して、蒸発器9の乾燥状態を示す乾燥判定フラグをオフ(乾燥判定=湿潤)に設定する(S943)。一方、ケース2内の絶対湿度が上昇傾向でないと判定された場合(S950:NO)には、蒸発器9の外表面が乾燥した状態と予想されるので、ステップS944へ移行する。
【0111】
以上説明した本実施形態の構成によっても、第1実施形態と同様に、蒸発器9にて悪臭が発生し難い状況において、送風空気の悪臭抑制のために圧縮機11が不必要に作動することを抑制することができる。従って、車室内へ送風される送風空気の悪臭の発生を抑制しつつ、車両用空調装置100の省動力化を図ることが可能となる。
【0112】
(他の実施形態)
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各請求項に記載した範囲を逸脱しない限り、各請求項の記載文言に限定されず、当業者がそれらから容易に置き換えられる範囲にも及び、かつ、当業者が通常有する知識に基づく改良を適宜付加することができる。例えば、以下のように種々変形可能である。
【0113】
(1)上述の各実施形態では、ケース2内の相対湿度Reinを検出する湿度検出手段としての湿度センサ36aを、ケース2内における吸入口(内気導入口3および外気導入口4)と蒸発器9との間に配置する構成としているが、これに限定されず、例えば、蒸発器9の空気流れ下流側に配置する構成としてもよい。
【0114】
(2)また、露点計36を構成する湿度検出手段をケース2内の湿度を検出する湿度センサ36aで構成する例を説明したが、これに限定されず、例えば、ケース2内の湿度を演算により検出する湿度検出手段を採用してもよい。
【0115】
(3)上述の各実施形態のように、目標温度決定手段である制御ステップS9にて、蒸発器9の外表面が乾燥していると判定された場合であって、車室内の空調を停止してから判定基準時間経過した場合に、第1目標温度TEOD以外の目標温度を目標冷却温度TEOに決定することが好ましいが、これに限定されない。例えば、蒸発器9の外表面が乾燥し易い構成であれば、車室内の空調を停止してから経過時間に関わらず、蒸発器9の外表面が乾燥していると判定された場合に、第1目標温度TEOD以外の目標温度を目標冷却温度TEOに決定するようにしてもよい。
【0116】
(4)上述の各実施形態では、第1〜第3目標温度TEOD、TEOT、TEOC、TEOWといった4つの目標温度のいずれかを目標冷却温度TEOに決定する構成としているが、これに限定されない。例えば、第1、第2目標温度TEOD、TEOTのいずれかを目標冷却温度TEOに決定したり、第1、第3目標温度TEOD、TEOC、TEOWのいずれかを目標冷却温度TEOに決定したりする構成としてもよい。また、上述した各目標温度TEOD、TEOT、TEOC、TEOW以外の目標温度を加えた複数の目標温度のいずれかを目標冷却温度TEOに決定する構成としてもよい。
【0117】
(5)上述の各実施形態では、冷凍サイクル10の蒸発器9を冷却用熱交換器として採用しているが、これに限定されず、例えば、吸着式冷凍機等の冷媒を蒸発させる蒸発器を採用してもよい。
【0118】
(6)上述の各実施形態では、本発明の車両用空調装置100をハイブリッド車両に適用する例について説明したが、これに限定されず、例えば、エンジンのみから駆動力を得て走行する走行する自動車や、走行用電動モータのみから駆動力を得て走行する電気自動車に適用することができる。
【符号の説明】
【0119】
2 ケース
9 蒸発器(冷却用熱交換器)
11 圧縮機
30a 圧縮機制御手段
36 露点計(露点温度検出手段)
36a 湿度センサ(湿度検出手段)
S9 目標冷却温度決定手段
S94 乾燥判定手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室内に送風される送風空気の空気通路を形成するケース(2)と、
前記ケース(2)内に配置されて送風空気を冷却する冷却用熱交換器(9)と、
前記冷却用熱交換器(9)にて冷却された送風空気の冷却温度(Te)を調整する圧縮機(11)と、
前記ケース(2)内の露点温度(Tdew)に相関を有する物理量を検出する露点温度検出手段(36)と、
前記冷却用熱交換器(9)の目標値である前記目標冷却温度(TEO)を決定する目標温度決定手段(S9)と、
前記冷却温度(Te)が前記目標冷却温度(TEO)に近づくように前記圧縮機(11)を制御する圧縮機制御手段(30a)と、
前記冷却用熱交換器(9)の外表面が乾燥しているか否かを判定する乾燥判定手段(S94)と、を備え、
前記露点温度検出手段(36)は、前記ケース(2)内の湿度を検出する湿度検出手段(36a)を含んで構成され、
前記乾燥判定手段(S94)は、前記車室内の空調の停止中における前記湿度検出手段(36a)の検出値に基づいて、前記冷却用熱交換器(9)の外表面が乾燥しているか否かを判定し、
前記目標温度決定手段(S9)は、
前記乾燥判定手段(S94)により前記冷却用熱交換器(9)の外表面が乾燥していないと判定された場合、前記ケース(2)内の露点温度(Tdew)よりも所定温度低い第1目標温度(TEOD)を含む複数の目標温度のうち、いずれかを前記目標冷却温度(TEO)に決定し、
前記乾燥判定手段(S94)により前記冷却用熱交換器(9)の外表面が乾燥していると判定された場合、前記複数の目標温度のうち、前記第1目標温度(TEOD)以外の目標温度を前記目標冷却温度(TEO)に決定することを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】
前記目標温度決定手段(S9)は、前記乾燥判定手段(S94)により前記冷却用熱交換器(9)の外表面が乾燥していると判定された場合であって、前記車室内の空調の停止が予め定められた基準時間維持されている場合に、前記複数の目標温度のうち、前記第1目標温度(TEOD)以外の目標温度を前記目標冷却温度(TEO)に決定することを特徴とする請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項3】
前記乾燥判定手段(S94)は、前記車室内の空調の停止中において、前記湿度検出手段(36a)の検出値が予め定められた乾燥基準値以下の場合に、前記冷却用熱交換器(9)の外表面が乾燥していると判定することを特徴とする請求項1または2に記載の車両用空調装置。
【請求項4】
前記乾燥判定手段(S94)は、前記車室内の空調の停止中において、前記湿度検出手段(36)の検出値の変化が上昇傾向である場合に、前記冷却用熱交換器(9)の外表面が乾燥していないと判定することを特徴とする請求項1または2に記載の車両用空調装置。
【請求項5】
前記複数の目標温度には、前記車室内の空調熱負荷に応じて設定される第2目標温度(TEOT)が含まれていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載の車両用空調装置。
【請求項6】
前記複数の目標温度には、前記車室内の湿度に応じて設定される第3目標温度(TEOC、TEOW)が含まれていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1つに記載の車両用空調装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−201216(P2012−201216A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−67561(P2011−67561)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】