説明

車両用自動変速機

【課題】横幅が短く、幅の狭いエンジンルームに搭載できる車両用変速装置を提供すること。
【解決手段】デュアルクラッチ式変速機は、車両に横置きに支持される内燃機関に取り付けられ、2組のクラッチ機構に、二重構造の入力軸が連結され、入力軸と平行に、第1の出力軸と第2の出力軸が設けられている。第1の出力軸は、少なくとも1速と5速の被動ギヤと、1速と5速のシンクロナイザユニットを具え、第2の出力軸は、3速の被動ギヤと、3速のシンクロナイザユニットを具えている。入力軸に設けられた3速の駆動ギヤは、1速と5速のシンクロナイザユニットの作動範囲と軸方向に重ねて取り付けてある。また1速の駆動ギヤは、3速のシンクロナイザユニットの作動範囲内に取り付けてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ツインクラッチの車両用自動変速機に関する。
【背景技術】
【0002】
車両(自動車)の自動変速機には、駆動歯車と被動歯車とが常時噛合う常時噛合い式の歯車機構を用い、動力伝達のロスを抑えながら連続的に変速を行わせるデュアルクラッチ(「ツインクラッチ」とも呼ぶ。)変速機と呼ばれる変速機がある。
【0003】
例えば特許文献1には、入力軸を二重構造とし、第1の出力軸に、1速、4速、後進の被動歯車を設け、第2の出力軸に、5速、3速、6速、2速の4つの被動歯車を設けた変速機が記載されている。
【0004】
またFF(フロントエンジン・フロントドライブ)式で、エンジンを横置きにした車両においては、車両前部のタイヤやサイドメンバなどの間に、エンジン、変速機、駆動機構、操舵機構などが組み込まれる。そのことから変速機は、軸方向の長さが短い方が好ましい。変速機の軸方向長さを短くするため、ギヤとシンクロナイザユニットとを一部軸方向に重ねることなどが従来例の中に多く見られる。
【0005】
例えば特許文献1は自動車用デュアルクラッチトランスミッションの発明であり、5速の駆動ギヤと1−3のシンクロナイザユニット、および3速の駆動ギヤと5速のスリーブとをオーバーラップさせている例が見られる。
【0006】
特許文献2は機械式ギヤボックスの内部制御装置の発明であり、1速の駆動ギヤと3速-5速のスリーブとをオーバーラップさせ、また5速の駆動ギヤと1速のスリーブとをオーバーラップさせた例が図1に見える。
【0007】
特許文献3には、6段副軸式変速機のための変速機構造に関する発明が記載されている。
【0008】
特許文献4はダブルクラッチ変速機の発明で、3速の駆動ギヤと5速スリーブとをオーバーラップさせている例が見られる。
【0009】
特許文献5はツインクラッチ式変速機の発明で、1速の駆動ギヤと3速−5速のスリーブがオーバーラップしている例が見られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特表2007−534899号公報
【特許文献2】特表2006−515922号公報
【特許文献3】特表2003−503663号公報
【特許文献4】特開2007−321818号公報
【特許文献5】特開2004−263708号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、変速機の軸方向長さを短くしようとしてギヤとシンクロナイザユニットとを軸方向にオーバーラップさせようとしても、軸間距離の関係から互いに干渉してしまうことがある。すると、ギヤとシンクロナイザユニットとを軸方向に離して配置することとなり、入力軸や出力軸などの各軸の軸方向長さが長くなってしまう。殊にシンクロナイザユニットは、スリーブが軸方向に移動することから、軸方向に離す距離が大きくなり、そのため変速機の軸方向長さを長くさせる一つの要因となっていた。
【0012】
横置きエンジンの車両で、変速機の軸方向長さ(横幅)が長くなると、車両のエンジンルーム内に幅方向に広い取付空間を要し、搭載させることができる車両が少なくなり、内燃機関の車両搭載性が低下してしまうという問題があった。
【0013】
特に上記特許文献1では、5速の駆動ギヤより1速や3速のギヤの方が径は小さく、オーバーラップにおいては有利にできるが、そのように構成されていない。また、特許文献1の図面はスケルトンであり、これからはギヤの配列を明確に把握することはできない。
【0014】
特許文献2では、5速の駆動ギヤと1速のスリーブとをオーバーラップさせているが、特許文献1と同様1速や3速の駆動ギヤの方が径は小さく横幅短縮において有利となる。また特許文献2にも、スケルトン図しかなく、クラッチギヤや被動ギヤの配置を明確に把握できない。
【0015】
特許文献3では、駆動ギヤとスリーブとをオーバーラップさせている点は見られず、変速機の横幅は、各ギヤやスリーブの横幅の長さを加算した以上の値となり、横幅の短縮はほとんど見られない。
【0016】
特許文献4では、3速の駆動ギヤに5速のスリーブをオーバーラップさせているが、径の小さい駆動ギヤにオーバーラップさせた方が構造的には有利である。また、クラッチギヤの軸方向端面を、オーバーラップさせるギヤの端面より外方に張り出させた方が、スリーブの移動範囲内にギヤを配置させ、ギヤとシンクロ機構とをより確実にオーバーラップさせることができるが、かかる構成は見られない。また、一方向のシンクロナイザユニットとオーバーラップさせている構成が見られ、かかる構成では十分に横幅を短縮させる効果が得られないものとなっている。
【0017】
特許文献5では、特許文献4と同様、クラッチギヤの軸方向端面を、オーバーラップさせるギヤの端面より外方に張り出させた方が、スリーブの移動範囲内にギヤを配置させ、ギヤとシンクロ機構とをより確実にオーバーラップさせることができるが、かかる構成は見られない。一方向のスリーブである1速のシンクロナイザユニットが、ギヤとオーバーラップされておらず、スリーブのストローク量を確保することが難しい構成となっている。また、一方向のスリーブをオーバーラップさせるとすると、5速の駆動ギヤとクラッチギヤとの間に隙間が形成されることとなり、横幅短縮には好ましくない構成となる。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記の課題を解決するために、本発明は、デュアルクラッチ式変速機を次のように構成した。
【0019】
デュアルクラッチ式変速機は、クラッチ機構を2組備え、各クラッチ機構には、第1の入力軸と第2の入力軸とを一方を円筒状とし、他方の外周に同軸に設けた、二重構造の入力軸が連結されている。デュアルクラッチ式変速機は、車両に横置きに支持される内燃機関に、内燃機関の出力軸と平行に入力軸が配置されるように取り付けられる。
【0020】
デュアルクラッチ式変速機には、入力軸と平行に、第1の出力軸と第2の出力軸からなる出力軸が設けられている。第1の出力軸は、少なくとも1速と5速の被動ギヤと、1速と5速のシンクロナイザユニットを具え、第2の出力軸は、3速の被動ギヤと、3速のシンクロナイザユニットを具えている。
【0021】
第1の入力軸と第2の入力軸のいずれかに、3速の駆動ギヤを、1速と5速のシンクロナイザユニットの作動範囲と軸方向に重ねて取り付ける。また3速のシンクロナイザユニットの作動方向を、1速の駆動ギヤが設けられている方向とし、かつ上記第1の入力軸と第2の入力軸のいずれかに、1速の駆動ギヤを、3速のシンクロナイザユニットの作動範囲内に完全に含まれるように取り付けることとしてデュアルクラッチ式変速機を構成した。
【発明の効果】
【0022】
本発明にかかるデュアルクラッチ式変速機は、3速の被動ギヤを出力軸の一方に設け、1速および5速の被動ギヤを他方の出力軸に設けたので、径の小さいギヤをそれぞれの出力軸に対向して配置することとなり、対向したシンクロナイザユニットと干渉を容易に防止できる。
【0023】
1速と5速のシンクロナイザユニットの作動範囲内に、3速の駆動ギヤを軸方向に重ねて配置し、3速のシンクロナイザユニットの作動方向を1速の駆動ギヤが配置された方向に設定し、かつ3速のシンクロナイザユニットの作動範囲内に、1速の駆動ギヤを軸方向完全に重ねて配置したので、各ギヤとシンクロナイザユニットとを軸方向に離すことなく1速、3速、5速の伝達ギヤを設けることができる。したがって、入力軸および出力軸の軸方向長さを短縮させることができる。
【0024】
これにより、変速機の全長(横幅)を短縮させ、車両に搭載させやすくなり、内燃機関の車両搭載性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明にかかる車両用変速機の一実施形態を示す構成図である。
【図2】図1に示す車両用変速機の一部を示す断面図である。
【図3】図1に示す車両用変速機の各軸の配置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明にかかる車両用変速機の一実施形態について、図を参照して説明する。
図1に、車両用変速機10の概略構成を示す。車両用変速機10は、横置きエンジン用のデュアルクラッチ(ツインクラッチ)変速機で、前進段に6速、後進段に1速の計7速の変速段を有している。車両用変速機10の図の右方には、エンジン100が連結されている。
【0027】
エンジン100は、駆動力伝達軸110が、車両(図示せず。)の車幅方向に配置されて、いわゆる横置きエンジンとなっている。車両は、FF車両で、フロントエンジン・フロントドライブとなっている。尚、車両はFFをベースとした4輪駆動、あるいは後輪駆動方式(FR)であってもよい。車両用変速機10の図の下方には、差動機構102が連結されている。
【0028】
車両用変速機10は、クラッチユニット12と、入力系機構14と、出力系機構16を備えている。クラッチユニット12は、図の右方に設けられている。クラッチユニット12は、軸方向に2組のクラッチ18とクラッチ20を具えた、デュアルクラッチであり、クラッチユニット12の入力端部には、エンジン100の駆動力伝達軸110が接続されている。
【0029】
クラッチユニット12の出力端部には、入力系機構14が連結されている。入力系機構14は、第1入力軸24、第2入力軸26、各種駆動ギヤなどから形成されている。
【0030】
第1入力軸24は、円柱状で、軸受120により外枠104(図2参照。)に回動自在に支持されている。第1入力軸24の一端は、クラッチ18に連結されている。
【0031】
第2入力軸26は円筒状で、第1入力軸24の外周に、第1入力軸24と同軸に設けられている。第2入力軸26は、軸受122により、回動自在に支持されている。第2入力軸26の一端は、クラッチ20に連結されている。第1入力軸24と第2入力軸26は、軸受120、122、124等により、互いに、かつそれぞれが外枠104に対して回動自在に支持されている。
【0032】
第1入力軸24の他端(エンジン100と逆側。)は、第2入力軸26から突出しており、突出した部分にギヤ40、ギヤ42、ギヤ44が、軸受120側から順次設けられている。ギヤ40は1速の駆動ギヤで、ギヤ42は3速の駆動ギヤで、ギヤ44は5速の駆動ギヤである。ギヤ40、ギヤ42、ギヤ44の各ギヤは、第1入力軸24に固定してあり、第1入力軸24と一体に回転する。
【0033】
第2入力軸26には、ギヤ46とギヤ48が、軸受120側の軸端から設けられている。ギヤ46は4速と6速の駆動ギヤであり、ギヤ48は2速と後進段の駆動ギヤである。
【0034】
ギヤ46、ギヤ48の各ギヤは、それぞれ第2入力軸26に固定してあり、第2入力軸26と一体に回転する。
【0035】
出力系機構16は、第1出力軸30と、第2出力軸32と、第3出力軸34などから形成されている。各出力軸は、互いに平行で、かつ第1入力軸24と平行に設けられている。
【0036】
第1出力軸30は、軸受126、軸受128により外枠104に回動自在に設けられている。第1出力軸30には、軸受126側から順にギヤ50、ギヤ54、ギヤ56、ギヤ58、ギヤ140が設けられている。ギヤ50は、1速の被動ギヤで、ギヤ40と噛み合っている。ギヤ54は、5速の被動ギヤで、ギヤ44と噛み合っている。ギヤ56は、4速の被動ギヤで、ギヤ46と噛み合っている。ギヤ58は、2速の被動ギヤで、ギヤ48と噛み合っている。
【0037】
ギヤ140は、出力ギヤで、リングギヤ146と噛み合っている。(図3参照。)ギヤ50、ギヤ54、ギヤ56、ギヤ58は、第1出力軸30に回動自在に取り付けられている。リングギヤ146は、差動機構102のリングギヤで、リングギヤ146に入力されたエンジン100の駆動力は、左右の駆動軸、例えば前輪駆動軸に配分される。
【0038】
第2出力軸32は、軸受130と軸受132により外枠104(図2参照。)に回動自在に設けられている。第2出力軸32には、ギヤ52、ギヤ66、ギヤ68、ギヤ142が、軸受130側から順に設けられている。ギヤ52は、3速の被動ギヤで、ギヤ42と噛み合っている。ギヤ66は、6速の被動ギヤで、ギヤ46と噛み合っている。ギヤ68は、後進回転伝達用の被動ギヤで、ギヤ48と噛み合っている。更にギヤ68は、ギヤ70を介して後進ギヤ72に噛み合っている。ギヤ142は、リングギヤ146と噛み合っている。(図3参照。)
第3出力軸34は、後進ギヤ72と出力ギヤ144を具え、軸受134と軸受136により外枠104に回動自在に設けられている。後進ギヤ72は、前述したようにギヤ70に噛み合っている。出力ギヤ144は、リングギヤ146と噛み合っている。(図3参照。)
次に、シンクロナイザユニットについて説明する。シンクロナイザユニットは、被動ギヤに隣接して設けられ、出力軸と被動ギヤと連結し、被動ギヤの回転を出力軸に伝達させる機構である。
【0039】
図1に示すように第1出力軸30のギヤ50とギヤ54との間には、1速5速の1・5速シンクロナイザユニット80が設けられている。また同様にギヤ56とギヤ58の間には、2速4速の2・4速シンクロナイザユニット82が設けられている。
【0040】
第2出力軸32のギヤ52の軸受130側には、3速の3速シンクロナイザユニット84が設けられている。同様にギヤ66の軸受132側には6速の6速シンクロナイザユニット86が設けられている。第3出力軸34のギヤ72の軸受134側には後進用のシンクロナイザユニット88が設けられている。
【0041】
上記各シンクロナイザユニットは、従来のシンクロナイザユニットと同様の構成で、スリーブ90を軸方向に移動自在に具え、スリーブ90が被動ギヤに噛み合うと、出力軸と被動ギヤとが連結される。またシンクロナイザユニットには、作動が左右両方向と片方向のみのものがあるが、これも従来のものと同様である。
【0042】
更に1・5速シンクロナイザユニット80は、図2に示すようにクラッチギヤ55のギヤ54側の端面が、ギヤ42のギヤ54側(正確にはギヤ44側。)の端面より図において右方、つまりギヤ54側に位置している。これにより1・5速シンクロナイザユニット80は、ギヤ50を結合させるときにはスリーブ90がギヤ50の端面に当接する直近まで移動するとともに、ギヤ54を結合させるときにはスリーブ90がクラッチギヤ55のギヤ54側に位置する歯面周縁まで移動し、スリーブ90の移動範囲内にギヤ42が完全に配置されるように形成されている。また3速の3速シンクロナイザユニット84は、ギヤ52の結合を解除させるときにはスリーブ90が外枠104に当接する直近まで軸受120側に移動するように形成されている。
【0043】
次に、車両用変速機10の作用について説明する。
エンジン100からの駆動力は、駆動力伝達軸110を介してクラッチユニット12に入力される。クラッチユニット12は、ECU(図示せず。)からの指示に従い、クラッチの接続を適宜変更する。
【0044】
1速発進する場合を例に説明する。まずクラッチ18およびクラッチ20の双方が解除されている状態で、1・5速シンクロナイザユニット80のスリーブ90がシフトフォークにより図の左方に移動され、ギヤ50が第1出力軸30と連結される。そして、クラッチ18が接続されると、エンジン100の駆動力が第1入力軸24からギヤ40を通りギヤ50に伝わる。これにより1・5速シンクロナイザユニット80を介して第1出力軸30にエンジン100の駆動力が伝達され、リングギヤ146が回転して駆動軸が駆動される。
【0045】
ギヤを2速に切り替えるときは、2・4速シンクロナイザユニット82のスリーブ90をギヤ58に結合させ、クラッチ18の接合を解除し、クラッチ20を接合させる。クラッチ20の接合により、エンジン100の駆動力が、第2入力軸26に伝達される。そしてギヤ48を通してギヤ58に伝わった駆動力が2・4速シンクロナイザユニット82を介して第1出力軸30に伝わり、リングギヤ146を回転させる。これにより、2速走行が行われる。以下、第2出力軸32での作動を加えて、3速以降の変速操作もなされる。
【0046】
上述したように、1・5速シンクロナイザユニット80とギヤ42は、互いに当接することがないように形成され、配置されている。更にギヤ42は、その軸方向の位置を、1・5速シンクロナイザユニット80のスリーブ90が軸方向に移動する移動範囲内に完全にその歯幅が含まれるように重ねて(オーバーラップ)、第1入力軸24に設けられている。
【0047】
更に、3速シンクロナイザユニット84とギヤ40とは、互いに当接することのないように形成され、配置されている。加えて3速シンクロナイザユニット84は、スリーブ90を軸受120側に退避させたとき、ギヤ40とスリーブ90とが軸方向に重なるように第2出力軸32に設けられている。
【0048】
車両用変速機10は、1速から後進段まで適宜変速が可能で、しかも上述したように各ギヤやシンクロナイザユニットが構成されていることから、第1入力軸24、第1出力軸30、第2出力軸32の軸方向の長さを短縮させ、車両用変速機10自体の軸方向長さ、つまり横幅を短縮させることができる。
【0049】
すなわち、ギヤ42は3速の駆動ギヤであり、3速の変速比の関係から径を小さくでき、1・5速シンクロナイザユニット80と干渉することなく、1・5速シンクロナイザユニット80と軸方向に重ねて配置できる。そのため、ギヤ42と1・5速シンクロナイザユニット80とを、干渉を避けるため互いに軸方向にずらして配置したり、出力軸の軸径や、シンクロナイザユニットの径を縮小させる必要がなくなり、強度上の支障を生じさせることなく、第1出力軸30や第1入力軸24を短縮させ、車両用変速機10の軸方向長さを短縮させることができる。
【0050】
またギヤ40は1速の駆動ギヤで、変速比の関係から径を小さくでき、3速シンクロナイザユニット84と干渉することなく、3速シンクロナイザユニット84と軸方向に重ねて配置できる。そのため、3速シンクロナイザユニット84とギヤ40とを、干渉を避けるため互いに軸方向にずらして配置する必要がなくなり、これによっても第2出力軸32や第1入力軸24を短縮させ、車両用変速機10の軸方向長さを短縮させることができる。また、各出力軸の軸径や、シンクロナイザユニットの径を必要量確保し、十分な強度を保持することができる。
【0051】
したがって、車両用変速機10によれば、入力系機構14および出力系機構16の軸方向長さが短縮できるので、車両用変速機10の横幅を短くでき、エンジン100に取り付けたときの車両用駆動装置の全幅を短縮させることができる。したがって車両用変速機10の車両への搭載性を良好にし、またタイヤの切れ角を大きくし、更に組み付け時の作業性や車両の整備性を向上させることができる。
【0052】
なお、本発明は上述した一実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施できる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、デュアルクラッチ式変速機など、多軸の車両用自動変速機に利用できる。
【符号の説明】
【0054】
10…車両用変速機
12…クラッチユニット
14…入力系機構
16…出力系機構
18….クラッチ
20…クラッチ
24…第1入力軸
26…第2入力軸
30…第1出力軸
32…第2出力軸
34…第3出力軸
40…ギヤ
80…1・5速シンクロナイザユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動力を出力する駆動力伝達軸を車幅方向に延在させて車両に横置き状態に支持される内燃機関の左右いずれかの側に連結される車両用変速機であって、
前記駆動力伝達軸に連結される2組のクラッチ機構と、
軸方向を車幅方向に延在させて設けられ、前記2組のクラッチ機構の一方に連結した第1の入力軸および他方に連結した第2の入力軸と、
前記第1の入力軸と第2の入力軸のいずれか一方の入力軸で、かかる入力軸の前記クラッチ機構が連結された端部と逆側の軸端から1速、3速、5速の順に設けられた各速の駆動ギヤと、
軸方向を車幅方向に延在させて設けられ、前記1速の駆動ギヤに噛み合う1速の被動ギヤ、および前記5速の駆動ギヤに噛み合う5速の被動ギヤを有する第1の出力軸と、
前記第1の出力軸の前記1速の被動ギヤと前記5速の被動ギヤの間に軸方向に移動可能に設けられ、いずれかの方向に移動して前記1速の被動ギヤあるいは前記5速の被動ギヤを該第1の出力軸に連結させる1・5速シンクロナイザユニットと、
軸方向を車幅方向に延在させて設けられ、前記3速の駆動ギヤに噛み合う3速の被動ギヤを有する第2の出力軸と、
前記第2の出力軸に、軸方向に移動可能に設けられ、前記3速の被動ギヤに接合、あるいは離間して、該3速の被動ギヤを前記第1の出力軸に適宜連結させる3速シンクロナイザユニットと、を備え、
更に前記1・5速シンクロナイザユニットの軸方向移動範囲内に、前記3速の駆動ギヤを、該3速の駆動ギヤが有する幅方向厚みを軸方向に完全に含むように位置を重ねて設け、
かつ前記3速シンクロナイザユニットの軸方向移動範囲と前記1速の駆動ギヤとを軸方向に重ねて設けたことを特徴とする車両用自動変速機。
【請求項2】
前記1速と前記5速の被動ギヤは、前記1・5速シンクロナイザユニットの軸方向作動幅にほぼ等しい間隔で軸方向に配置され、かつ前記3速の駆動ギヤは、前記1速と前記5速の被動ギヤの前記間隔内に配置したことを特徴とする請求項1に記載の車両用自動変速機。
【請求項3】
前記1・5速シンクロナイザユニットの前記5速の被動ギヤを連結させるクラッチギヤは、該クラッチギヤの前記5速の被動ギヤ側の端面が、前記3速の駆動ギヤの前記5速の被動ギヤ側の端面より、前記5速の被動ギヤ側に位置していることを特徴とする請求項1または2に記載の車両用自動変速機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−33045(P2011−33045A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−176745(P2009−176745)
【出願日】平成21年7月29日(2009.7.29)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【Fターム(参考)】