説明

車両用衝撃吸収材の取付構造

【課題】側突時における固定部材の弱体化を図りつつも、通常時における衝撃吸収材の脱落を防ぐ。
【解決手段】車両用衝撃吸収材の取付構造であって、ドアボディを構成するドアパネル40の車室内側に対向配置されたドアトリム30と、ドアトリム30とドアパネル40との間に配置された固定部材10と、ドアトリム30と固定部材10との間に配置されたEAパッド20とを備え、固定部材10は、EAパッド20の車室外側面22に沿って配置されたベース部11と、ベース部11をドアトリム30に固定する複数の脚部12とを備えて構成され、複数の脚部12は、ベース部11からEAパッド20の側面23に沿ってドアトリム30に延びる形態をなし、かつ、ベース部11の外周縁に沿って間欠的に配置されている構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用衝撃吸収材の取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、衝撃吸収材を内装材に取り付ける取付構造として、衝撃吸収材を内装材に直接固定する方法が知られている。例えば、下記特許文献1に記載のものは、衝撃吸収材に座面を形成し、この座面をビスで車体の鉄板に固定したものである。また、下記特許文献2と3に記載のものは、衝撃吸収材の外周に薄肉のフランジ部を張り出し形成し、このフランジ部を固定部材で固定したものである。また、下記特許文献4に記載のものは、接着剤などを用いて衝撃吸収材を内装材に直接固定したものである。しかし、長期的に振動を受け続けることで、通常時(側突時以外の時)に衝撃吸収材の固定部分が破損し、衝撃吸収材が脱落するおそれがある。
【0003】
この対策として、衝撃吸収材を内装材に直接固定するのではなく、衝撃吸収材とは別に固定部材を用意し、この固定部材と内装材との間に衝撃吸収材を配置した上で固定部材を内装材に直接固定する方法が考えられる。このような固定部材としては、例えば、凹状をなす収容部と、この収容部を内装材に固定する座面とからなる構成が考えられる。このような構成によると、収容部に衝撃吸収材を収容した上で座面を内装材に固定すればよいから、衝撃吸収材の脱落を防ぐことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−6741号公報
【特許文献2】実開平5−22218号公報
【特許文献3】特開2005−8054号公報
【特許文献4】米国特許第5573298号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の構成では、収容部のうち衝撃吸収材の外周側面に沿って形成される枠状部が内装材に対して踏ん張りやすくなるため、側突時に着座者に与える荷重が高くなる可能性がある。すなわち、着座者に与える荷重を低下させるためには、固定部材を弱体化することが必要とされる。このように、側突時における固定部材の弱体化と通常時における衝撃吸収材の脱落防止とは相容れない課題であって、これらの課題を両立させることは困難である。
【0006】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、側突時における固定部材の弱体化を図りつつも、通常時における衝撃吸収材の脱落を防ぐことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、車両用衝撃吸収材の取付構造であって、ボディを構成するボディパネルの車室内側に対向配置された内装材と、内装材とボディパネルとの間に配置された固定部材と、内装材と固定部材との間に配置された衝撃吸収材とを備え、固定部材は、衝撃吸収材の車室外側面に沿って配置されたベース部と、ベース部を内装材に固定する複数の脚部とを備えて構成され、複数の脚部は、ベース部から衝撃吸収材の側面に沿って内装材に延びる形態をなし、かつ、ベース部の外周縁に沿って間欠的に配置されている構成としたところに特徴を有する。
【0008】
このような構成によると、衝撃吸収材を固定部材と内装材との間に配置し、脚部を内装材に固定することにより、衝撃吸収材を内装材とベース部との間に取り付けることができる。ここで、衝撃吸収材の側面に沿って脚部を配置したから、通常時に衝撃吸収材がベース部から脱落することを規制できる。この結果、側突時に、衝撃吸収材を固定部材によって保持したまま確実に座屈させることができる。また、脚部をベース部の外周縁に沿って間欠的に配置したから、側突時における固定部材の弱体化を図ることができる。
【0009】
さらに、衝撃吸収材の車室外側にベース部を配置したから、例えば、ボディを構成するインパクトビームが側突時にベース部を直撃した場合であっても、衝撃吸収材全体を座屈させることができ、確実に衝撃を吸収することができる。
【0010】
本発明の実施の態様として、以下の構成が好ましい。
脚部は、内装材に固定される座面を有し、この座面とベース部との間に孔が形成された構成としてもよい。
このような構成によると、孔によって脚部を弱体化し、側突時に脚部を壊れやすくすることができる。したがって、側突時における固定部材の弱体化をさらに促進させることができる。
【0011】
ベース部とボディパネルとの間には、ベース部から立ち上がる形態をなす隙詰め部が設けられている構成としてもよい。
このような構成によると、ベース部とボディパネルとの間に形成される隙間を隙詰め部によって埋めることができる。したがって、側突時にボディパネルがベース部に荷重を与え始めるまでの時間を短くできる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、側突時における固定部材の弱体化を図りつつも、通常時における衝撃吸収材の破損を防ぎ、衝撃吸収材の脱落を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】EAパッドが固定された固定部材を一方側から見た斜視図
【図2】固定部材単体を一方側から見た斜視図
【図3】EAパッドが固定された固定部材を他方側から見た斜視図
【図4】固定部材単体を他方側から見た斜視図
【図5】EAパッドが固定された固定部材を車室内側から見た平面図
【図6】図5におけるA−A線断面図
【図7】図5におけるB−B線断面図
【図8】図5におけるC−C線断面図
【図9】図5におけるD−D線断面図
【発明を実施するための形態】
【0014】
<実施形態>
本発明の実施形態を図1ないし図9の図面を参照しながら説明する。本実施形態では、本発明の「ボディ」の一例としてドアボディに適用した場合を例示している。ドアボディは、本発明の「ボディパネル」に対応するドアパネル40、ドアインパクトビーム(図示せず)などから構成されている。本発明の「内装材」に対応するドアトリム30は、図6ないし図9に示すように、ドアパネル40の車室内側に対向配置されている。また、本発明の「衝撃吸収材」に対応するEAパッド20は、ホットメルトなどの接着剤で固定部材10に貼り付けられている。なお、以下の説明において車室内側とは図6の図示左側をいい、車室外側とは図6の図示右側をいう。
【0015】
ドアトリム30は、一体成形品または上下方向に分割された複数からなるボードを結合することによって形成されており、ポリプロピレン等の合成樹脂材料、木質系材料と合成樹脂材料を混合したものなどによって構成されている。また、ドアトリム30の車室内側には、表皮(図示せず)が一部または全部に貼着されている。
【0016】
EAパッド20は、硬質ポリウレタンフォームを板状に形成したものである。本実施形態のEAパッド20は、図5に示すように、車両前後方向に長い略方形のブロック状に形成されている。EAパッド20は、ドアトリム30の車室外側面においてシート(図示せず)に着座した乗員の腰部付近に対応して配置されている。これにより、EAパッド20は、側突時における衝撃を吸収することにより、ドアトリム30の車室内側に着座した乗員に与える衝撃を低減している。
【0017】
EAパッド20の車室内側面21は、図6に示すように、ドアトリム30の車室外側面に沿う曲面形状をなしている。一方、EAパッド20の車室外側面22は、鉛直方向に延びる平面形状をなしている。EAパッド20の側面23(車室内側面21と車室外側面22との間に配された外周側面)は、両面21,22の外周縁同士を連結する面である。また、EAパッド20は、車室外側面22側の面積よりも車室内側面21側の面積がわずかに大きくなるように形成されている。
【0018】
固定部材10は、図1ないし図4に示すように、EAパッド20の車室外側面22に沿って配置されたベース部11と、ベース部11をドアトリム30に固定する4つの脚部12とを備えて構成されている。固定部材10は、ポリプロピレン樹脂などによって構成されている。図1と図2を比較(あるいは図3と図4を比較)すればわかるように、ベース部11は、EAパッド20の外周形状に沿う形態とされている。すなわち、ベース部11は、EAパッド20の車室外側面22を覆う配置とされている。このため、車室外側からの衝撃は、ベース部11を介してEAパッド20に間接的に伝達される。
【0019】
このようにベース部11を設けているのは以下の理由による。側突時にEAパッド20に接触する部材としては、ドアパネル40やドアインパクトビームなどが考えられる。ドアパネル40は、ドアインパクトビームに比較して柔らかいため、側突時に変形しやすく、ドアパネル40がいかなる形状に変形するかを予測することは困難である。したがって、側突によってドアパネル40に角部が形成され、この角部がEAパッド20に接触した場合には、EAパッド20の一部のみが凹んでしまう。同様に、ドアインパクトビームがEAパッド20に接触した場合にも、EAパッド20の一部のみが凹んでしまう。いずれの場合にも、EAパッド20の全体を座屈させることはできず、衝撃吸収性能が低下してしまう。そこで、ベース部11を設置することにより、ベース部11を介してEAパッド20の全体を座屈させることができ、確実に衝撃を吸収することができることになる。
【0020】
また、ベース部11は、ベース部11とドアパネル40との間に形成される隙間を詰める隙詰め部11Cを備えている。この隙詰め部11Cは、図6に示すように、ベース部11の車室外側面(EAパッド20とは反対側の面)11Bから車室外側に突出して設けられている。隙詰め部11Cにより、側突時にベース部11がEAパッド20に荷重を与え始めるまでの時間を短くできる。すなわち、ドアパネル40からベース部11までの距離(空走距離)を短くできる。なお、隙詰め部11Cは、図1に示すように、格子状をなしており、その格子を構成する隔壁が円筒状もしくは円柱状をなす部材で互いに連結された構成である。
【0021】
各脚部12の先端には、座面13が張り出し形成されており、その座面13には、取付孔14が貫通して形成されている。一方、ドアトリム30の取付座31にはボス32が突出して形成されており、このボス32を取付孔14に通して超音波溶着などでかしめることにより、座面13がドアトリム30の取付座31に固定されている。これにより、固定部材10はドアトリム30に固定され、EAパッド20はドアトリム30とベース部11との間に挟まれた状態で固定される。ここで、固定部材10は、長期的に振動を受け続けても破損することがないことから、通常時(側突時以外の時)に固定部材10により支持されるEAパッド20が破損することなく、それに伴い、脱落もない。
【0022】
さて、脚部12は全部で4つ設けられ、図5に示すように、ベース部11の外周縁に沿って間欠的に配置されている。各脚部12は、図8または図9に示すように、ベース部11の外周縁からEAパッド20の側面23に沿ってドアトリム30に延びる形態をなしている。4つの脚部12は、図5に示すように、ベース部11のほぼ四隅に分散して配置されており、全体としてEAパッド20を囲むように配置されている。このようにすると、ベース部11の外周縁に沿って全周に亘って脚部を形成した場合よりも弱体化を図ることができ、側突時に脚部12が踏ん張ることを規制できる。さらに、各脚部12には、図5に示すように、孔15が設けられることで、さらなる弱体化が図られている。各孔15は、各脚部12における座面13とベース部11の外周縁との間に配置されている。このため、側突時に、脚部12の踏ん張りをさらに低下させることができる。よって、EAパッド20の座屈を阻害することはない。
【0023】
また、EAパッド20は、ベース部11による固定に加えて、4つの脚部12によっても脱落することが規制されている。具体的には、図5の左側に位置する上下一対の脚部12(図8参照)と、図5の右側に位置する上下一対の脚部12(図9参照)とによって、EAパッド20の上下方向の移動が規制されている。また、車両前後方向については図7(図5のB−B線断面図)に示すように、EAパッド20の車両前後方向の両端部においてベース部11とドアトリム30との間を徐々に狭くすることで、EAパッド20の車両前後方向の移動が規制されている。このように、EAパッド20は、4つの脚部12によって囲まれているため、ドアトリム30とベース部11との間から脱落する事態は生じ得ない。
【0024】
本実施形態は以上のような構成であって、続いてその作用および効果を説明する。まず、EAパッド20の取り付けは、EAパッド20をベース部11の車室内側面11Aに接着剤で固定し、この固定部材10をドアトリム30に取り付け固定することで行われる。この状態では、図6ないし図9に示すように、複数の脚部12によって少なくとも上下方向に挟まれているため、通常時に固定部材10およびEAパッド20が長期的に振動を受け続けても、EAパッド20が破損することはなく、EAパッド20の脱落を防ぐことができる。
【0025】
また、EAパッド20がドアトリム30とベース部11との間に挟まれて固定されているため、側突時にドアパネル40が隙詰め部11Cに接触し、ベース部11がEAパッド20を押し込んで座屈させるため、衝撃を吸収することができる。さらに、ドアインパクトビームが隙詰め部11Cに接触した場合でも、ベース部11がEAパッド20を押し込んで座屈させるため、確実に衝撃を吸収することができる。
【0026】
また、脚部12をベース部11の外周縁に沿って間欠的に配置したから、固定部材10の弱体化を図ることができる。これに加えて、脚部12に孔15を設けたから、固定部材10のさらなる弱体化を図ることができる。また、ベース部11に隙詰め部11Cを設けたから、側突時にドアパネル40がEAパッド20に荷重を与え始めるまでの時間を短くすることができる。
【0027】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態ではボディとしてドアボディに適用した例を説明しているものの、本発明によると、例えば2ドアで4シーターのクーペモデルの場合には、リアシートに着座した乗員の腰部付近に対応するサイドボディに適用してもよい。
【0028】
(2)上記実施形態では衝撃吸収材としてEAパッド20を例示しているものの、本発明によると、固定部材10と同じ材質からなる側突用樹脂衝撃吸収体を用いてもよい。
【0029】
(3)上記実施形態では4つの脚部12が設けられているものの、本発明によると、3つの脚部12としてもよいし、5つ以上の脚部12としてもよい。
【0030】
(4)上記実施形態では脚部12に孔15を貫通して形成しているものの、本発明によると、脚部12に溝部を設けてもよい。
【0031】
(5)上記実施形態では格子状をなす隙詰め部11Cを設けているものの、本発明によると、十字状のリブからなる隙詰め部としてもよい。さらに、隙詰め部を座屈させることにより、衝撃吸収材として機能させてもよい。
【符号の説明】
【0032】
10…固定部材
11…ベース部
12…脚部
13…座面
15…孔
20…EAパッド(衝撃吸収材)
22…車室外側面
23…側面
30…ドアトリム(内装材)
40…ドアパネル(ボディパネル)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用衝撃吸収材の取付構造であって、
ボディを構成するボディパネルの車室内側に対向配置された内装材と、
前記内装材と前記ボディパネルとの間に配置された固定部材と、
前記内装材と前記固定部材との間に配置された衝撃吸収材とを備え、
前記固定部材は、前記衝撃吸収材の車室外側面に沿って配置されたベース部と、前記ベース部を前記内装材に固定する複数の脚部とを備えて構成され、
前記複数の脚部は、前記ベース部から前記衝撃吸収材の側面に沿って前記内装材に延びる形態をなし、かつ、前記ベース部の外周縁に沿って間欠的に配置されていることを特徴とする車両用衝撃吸収材の取付構造。
【請求項2】
前記脚部は、前記内装材に固定される座面を有し、この座面と前記ベース部との間に孔が形成された構成であることを特徴とする請求項1に記載の車両用衝撃吸収材の取付構造。
【請求項3】
前記ベース部と前記ボディパネルとの間には、前記ベース部から立ち上がる形態をなす隙詰め部が設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両用衝撃吸収材の取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−280319(P2010−280319A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−136106(P2009−136106)
【出願日】平成21年6月5日(2009.6.5)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【出願人】(000251060)林テレンプ株式会社 (134)
【Fターム(参考)】