説明

車両用衝撃吸収構造

【課題】樹脂部材によって弾性部材の変形が阻害されることなく、当該弾性部材本来の荷重変位特性が得られる車両用衝撃吸収構造を得る。
【解決手段】荷重の入力方向(矢印A方向)に沿った樹脂ボックス18の断面形状が台形状を成しており、車幅方向外側の辺が短辺部22に設定され、短辺部22と平行に対向する車幅方向内側の辺が長辺部24に設定されている。また、樹脂ボックス18の互いに対向する傾斜部26、28の車幅方向の略中央には断面略V字状のノッチ30が車両高さ方向に沿って形成されている。これにより、樹脂ボックス18の座屈方向を特定すると共に、傾斜部26、28において屈曲させる位置を特定することができる。これによって、樹脂ボックス18のウレタンパッド20側への座屈変形及び破断が防止され、ウレタンパッド20は本来の荷重変位特性を維持することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両側部のサイドドア内等に設けられる車両用衝撃吸収構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用の衝撃吸収部材として、硬質ウレタンフォームのパッド(以下、「ウレタンパッド」という)を用いた場合、荷重が入力されると、途中から一定荷重(反力)が得られるものの、初期荷重は低い。一方、車両用の衝撃吸収部材として、樹脂リブを用いた場合、荷重が入力されると、当該樹脂リブが座屈変形するまでは高荷重が得られるものの、座屈変形後は低荷重となる。
【0003】
このため、特許文献1では、サイドドアの内側にウレタンパッド及び樹脂製の格子リブを配置し、これによって、お互いの弱点を補完するという技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−44896号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、この格子リブにおいて、座屈する課程でウレタンパッド側に変形した場合、当該ウレタンパッドの変形が阻害され、ウレタンパッド本来の荷重変位特性が得られなくなる。
【0006】
上記事実を考慮し、本発明は、弾性部材の近傍に樹脂部材を用いたとしても、樹脂部材によって弾性部材の変形が阻害されることなく、当該弾性部材本来の荷重変位特性が得られる車両用衝撃吸収構造を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の車両用衝撃吸収構造は、車室内側に設けられ、荷重が入力されると荷重入力方向に弾性変形する弾性部材と、車両前後方向及び車両上下方向の少なくとも一方向に沿って前記弾性部材に隣接して配置され、中空部が設けられ所定値以上の荷重が入力されると座屈変形する樹脂部材と、前記樹脂部材及び前記弾性部材の少なくとも一方に設けられ、前記樹脂部材に所定値以上の荷重が入力されると、当該樹脂部材の少なくとも前記弾性部材と対向する壁部を前記中空部内へ座屈変形させる変形誘導部と、を有する。
【0008】
請求項1に記載の車両用衝撃吸収構造では、車室内側に弾性部材が設けられており、荷重が入力されると当該弾性部材が荷重入力方向に弾性変形する。この弾性部材には、車両前後方向及び車両上下方向の少なくとも一方向に沿って樹脂部材が隣接して配置されている。樹脂部材には、中空部が設けられており、当該樹脂部材は、所定値以上の荷重が入力されると座屈変形する。そして、樹脂部材及び弾性部材の少なくとも一方には変形誘導部が設けられており、樹脂部材に所定値以上の荷重が入力されると、当該樹脂部材の少なくとも弾性部材と対向する壁部を中空部内へ座屈変形させる。
【0009】
弾性部材は、荷重が入力されると、途中の段階から一定荷重(反力)が得られるものの、途中の段階までは緩やかに荷重が上昇するため、初期の段階では得られる荷重が低いという特徴を持っている。一方、樹脂部材は、荷重が入力されると、初期の段階から急激に荷重(反力)が上昇して、当該樹脂部材を構成する壁部が座屈変形するまでは高荷重が得られるものの、当該壁部の座屈変形後は低い荷重で一定となるという特徴を持っている。このため、入力荷重に対する反力を得るための反力部材として、弾性部材と樹脂部材とを組み合わせて用いることで、お互いの弱点を補完することができる。
【0010】
その一方で、弾性部材と樹脂部材とを隣接させて配置した場合、樹脂部材が弾性部材側へ座屈変形すると、弾性部材の変形(弾性変形)が阻害されてしまう。しかし、本発明の車両用衝撃吸収構造では、樹脂部材及び弾性部材の少なくとも一方に変形誘導部が設けられ、樹脂部材に所定値以上の荷重が入力されると、当該変形誘導部によって、樹脂部材の少なくとも弾性部材と対向する壁部が中空部内へ座屈変形する。つまり、壁部が中空部内へ座屈変形するためのきっかけを与える。これにより、樹脂部材の弾性部材側への座屈変形が防止され、弾性部材は本来の荷重変位特性を維持することができる。
【0011】
したがって、本発明の車両用衝撃吸収構造では、荷重が入力された初期の段階から樹脂部材により高い反力が得られ、弾性部材による反力の増大により、途中の段階では、高い反力が維持されることとなる。そして、樹脂部材が座屈変形し反力が低くなった状態でも、弾性部材による高い反力の維持によって、本発明の車両用衝撃吸収構造による荷重変位特性(FS特性)では、理想とされる矩形型に近い波形を得ることができる。
【0012】
請求項2に記載の車両用衝撃吸収構造は、請求項1に記載の車両用衝撃吸収構造において、車室外側から車室内側に沿った前記樹脂部材の断面形状が台形状を成し、前記壁部が、車室外側に設けられた短辺部と前記短辺部と平行に対向し前記弾性部材側へ張り出した長辺部とを繋ぐ傾斜部である。
【0013】
請求項2に記載の車両用衝撃吸収構造では、車室外側から車室内側に沿った前記樹脂部材の断面形状が台形状を成しており、車室外側には短辺部が設けられ、当該短辺部と平行に対向する長辺部は弾性部材側へ張り出し、短辺部と長辺部とが傾斜部によって繋がれている。これにより、樹脂部材の短辺部へ荷重が入力されると、弾性部材と対向する傾斜部の一端部(短辺部側)には、荷重の入力方向に沿って長辺部へ向かう荷重が入力され、傾斜部には当該傾斜部の他端部(長辺部側)を支点として弾性部材から離間する方向へ向かうモーメントが発生することとなる。これによって、当該傾斜部を樹脂部材の中空部内へ座屈変形させることができる。
【0014】
請求項3に記載の車両用衝撃吸収構造は、請求項2に記載の車両用衝撃吸収構造において、前記変形誘導部が、前記傾斜部に設けられた脆弱部である。
【0015】
請求項3に記載の車両用衝撃吸収構造では、傾斜部に脆弱部を設けることで当該脆弱部に沿って傾斜部が屈曲し易くなり、また、当該脆弱部が設けられた部位は他の部位よりも破断し易くなる。つまり、傾斜部において屈曲させる位置を特定すると共に、傾斜部が破断する方向を特定することができる。
【0016】
請求項4に記載の車両用衝撃吸収構造は、請求項1に記載の車両用衝撃吸収構造において、前記傾斜部の傾斜方向の中央部に、前記中空部側へ屈曲する屈曲部が形成されている。
【0017】
請求項4に記載の車両用衝撃吸収構造では、樹脂部材の傾斜部が、中空部側へ屈曲する屈曲部を有するため、当該屈曲部を介して傾斜部は折り畳まれるようにして中空部内で変形する。
【0018】
請求項5に記載の車両用衝撃吸収構造は、請求項1〜4の何れか1項に記載の車両用衝撃吸収構造において、前記変形誘導部が、前記傾斜部と対向する前記弾性部材の対向面に設けられ、前記樹脂部材の当該弾性部材側への変形を阻害する高剛性部である。
【0019】
請求項5に記載の車両用衝撃吸収構造では、樹脂部材の傾斜部と対向する弾性部材の対向面に高剛性部が設けられている。これにより、樹脂部材の傾斜部が弾性部材側へ変形しようとしても、当該高剛性部によって、傾斜部の弾性部材側への変形が阻害されることとなる。
【0020】
請求項6に記載の車両用衝撃吸収構造は、請求項1〜5の何れか1項に記載の車両用衝撃吸収構造において、車両側部のサイドドア内に設けられ、前記樹脂部材が車両側方から見てシートに着座した乗員の腰部に相当する位置に配置され、前記弾性部材が前記樹脂部材の車両前方側に配置されている。
【0021】
請求項6に記載の車両用衝撃吸収構造では、乗員の腰部において、荷重が入力された初期の段階で、樹脂部材によって高い反力が得られるようにすることができると共に、腰部から大腿部に亘って、荷重が入力された初期の段階から連続して反力を得ることができる。
【発明の効果】
【0022】
以上説明したように、請求項1に記載の車両用衝撃吸収構造によれば、弾性部材の近傍に樹脂部材を用いたとしても、当該弾性部材本来の荷重変位特性を得ることができる、という優れた効果を有する。
【0023】
請求項2に記載の車両用衝撃吸収構造によれば、樹脂部材の構成によって、樹脂部材の傾斜部の座屈方向を特定することができる、という優れた効果を有する。
【0024】
請求項3に記載の車両用衝撃吸収構造によれば、樹脂部材の傾斜部の破断位置及び破断の方向を特定することができる、という優れた効果を有する。
【0025】
請求項4に記載の車両用衝撃吸収構造によれば、樹脂部材の構成によって、樹脂部材の傾斜部の座屈方向を特定することができる、という優れた効果を有する。
【0026】
請求項5に記載の車両用衝撃吸収構造によれば、弾性部材の構成によって、樹脂部材の壁部の座屈方向を特定することができる、という優れた効果を有する。
【0027】
請求項6に記載の車両用衝撃吸収構造によれば、乗員の腰部の位置などに合わせて、反力部材の特性を変えて効果的に衝撃を吸収することができる、という優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本実施形態に係る車両用衝撃吸収構造を模式的に示す、図4のA−A線断面図であり、荷重が入力される前の状態が示されている。
【図2】本実施形態に係る車両用衝撃吸収構造を模式的に示す、図4のA−A線断面図であり、荷重が入力された状態が示されている。
【図3】(A)はウレタンパッドの荷重変位特性を示すグラフ、(B)は樹脂ボックスの荷重変位特性を示すグラフであり、(C)はウレタンパッドと樹脂ボックスを組み合わせた場合の荷重変位特性を示すグラフである。
【図4】本実施形態に係る車両用衝撃吸収構造が適用されたドアトリムの車室内側から見た正面図である。
【図5】本実施形態に係る車両用衝撃吸収構造のその他の実施形態(1)を模式的に示す、図1に対応する断面図である。
【図6】本実施形態に係る車両用衝撃吸収構造のその他の実施形態(2)を模式的に示す、(A)は図1に対応する断面図であり、(B)は図2に対応する断面図である。
【図7】本実施形態に係る車両用衝撃吸収構造のその他の実施形態(3)を模式的に示す、(A)は図1に対応する断面図であり、(B)は図2に対応する断面図である。
【図8】本実施形態に係る車両用衝撃吸収構造のその他の実施形態(4)を模式的に示す、(A)は図1に対応する断面図であり、(B)は図2に対応する断面図である。
【図9】本実施形態に係る車両用衝撃吸収構造のその他の実施形態(5)を模式的に示す、図1に対応する断面図である。
【図10】本実施形態に係る車両用衝撃吸収構造が適用されたニーボルスターを示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図1〜図4を用いて、本発明の車両用衝撃吸収構造11が適用されたサイドドア10について説明する。なお、各図において、矢印UPは車両上方向を示し、矢印INは車幅方向内側を示し、矢印FRは車両前方向を示している。
【0030】
(車両用衝撃吸収構造の構成)
図4には、車室内側から見たドアトリム12の正面図が示されている。サイドドア10は、図示はしないが、ドア外板を構成するドアアウタパネルと、このドアアウタパネルの車幅方向内側に配置されドア内板を構成するドアインナパネルと、を備え、ドアインナパネルの車幅方向内側には、サイドドア10の車室側面(内装)を構成するドアトリム12が配置されている。
【0031】
このドアトリム12は、パネル状に形成されており、図示しない樹脂製のクリップ等によってドアインナパネルに固定されている。ドアトリム12の中央部は車室内側に突出しており、突出した段差部分の上面に位置する略水平面がドアアームレスト14となっている。なお、このドアアームレスト14上に、サイドドア10に設けられたサイドガラス(図示省略)を昇降させるためのパワーウィンドスイッチ16などが設けられている。
【0032】
また、図1には、図4のA−A線断面図が模式的に示されている。図1及び図4に示されるように、ドアトリム12の裏面の、図示はしないがシートに着座した乗員の腰部に相当する位置には、樹脂部材として中空部17を有する樹脂ボックス18がドアトリム12と一体に成形されている。ここで、シートは車両前後方向に沿ってスライド可能となっているため、当該樹脂ボックス18は、シートがスライド可能な範囲において、当該シートに着座した乗員の腰部に相当する位置に設けられることが望ましい。
【0033】
そして、樹脂ボックス18と隣接して当該樹脂ボックス18の車両前方には、シートに着座した乗員の大腿部に相当する位置に、弾性部材としての例えば硬質ウレタンフォーム製のウレタンパッド20がドアトリム12の裏面に取り付けられている。
【0034】
樹脂ボックス18は、図1に示されるように、圧縮子21による荷重の入力方向(矢印A方向)に沿った断面形状が等脚台形状を成しており、車幅方向外側(車室外側)の辺が短辺部22となるように設定されている。この短辺部22と略平行に対向する車幅方向内側(車室内側)の辺が、ウレタンパッド20側へ張り出す長辺部24(ドアトリム12の一部)となるように設定されている。
【0035】
そして、ウレタンパッド20側に位置する、短辺部22の一端部と長辺部24の一端部は傾斜部26によって架け渡され、短辺部22の他端部と長辺部24の他端部は、傾斜部28によって架け渡されている。また、傾斜部26、28の車幅方向の略中央には、傾斜部26、28の外面(中空部17とは反対側の面)に、変形誘導部として、断面形状が略V字状を成すノッチ30が車両高さ方向に沿って形成されている。
【0036】
一方、図1及び図4に示されるように、ウレタンパッド20は略直方体状を成しており、樹脂ボックス18の傾斜部26と対向する、ウレタンパッド20の対向面32には、樹脂ボックス18の傾斜部26と略平行に形成された傾斜面が設けられている。なお、ここでは、ウレタンパッド20の対向面32と樹脂ボックス18の傾斜部26との間には隙間が設けられているが、この隙間はなくても良い。他の実施形態においても同様である。
【0037】
(車両用衝撃吸収構造の作用・効果)
図1及び図4に示されるように、ドアトリム12の裏面の、シート(図示省略)に着座した乗員の腰部に相当する位置には樹脂ボックス18が設けられ、樹脂ボックス18の車両前方には、当該樹脂ボックス18に隣接してウレタンパッド20が設けられている。
【0038】
ここで、図3(A)にはウレタンパッド20(図1参照)の荷重変位特性(FS特性)が示されている。これによると、ウレタンパッド20は、荷重が入力されると、途中の段階(b)から一定荷重(反力)が得られるものの、途中の段階までは緩やかに荷重が上昇するため、初期の段階(a)では得られる荷重が低いという特徴を持っている。
【0039】
また、図3(B)には樹脂ボックス18(図1参照)の荷重変位特性が示されている。これによると、樹脂ボックス18は、荷重が入力されると、初期の段階から急激に荷重(反力)が上昇して、当該樹脂ボックス18を構成する傾斜部26、28が座屈変形する(a)までは高荷重が得られるものの、当該傾斜部26、28の座屈変形後(b)は低い荷重で一定となるという特徴を持っている。
【0040】
以上のことから、入力荷重に対する反力を得るための反力部材として、図1に示されるように、ウレタンパッド20と樹脂ボックス18とを組み合わせて使うことで、お互いの弱点を補完することができる。
【0041】
図3(C)には、衝撃吸収構造として、ウレタンパッド20と樹脂ボックス18を組み合わせた場合の荷重変位特性が示されている。これによると、本実施形態では、荷重が入力された初期の段階(a)から樹脂ボックス18により高い反力が得られ、ウレタンパッド20による反力の増大により、途中の段階(b)では、高い反力が維持されることとなる。そして、樹脂ボックス18が座屈変形し反力が低くなった状態でも、ウレタンパッド20による高い反力の維持によって、荷重変位特性では理想とされる矩形型に近い波形が得られることが分かる。
【0042】
ところで、ウレタンパッド20と樹脂ボックス18とを隣接させて配置した場合、樹脂ボックス18がウレタンパッド20側へ座屈変形すると、ウレタンパッド20の弾性変形が阻害され、ウレタンパッド本来の荷重変位特性が得られなくなってしまう。このため、本実施形態では、圧縮子21による荷重の入力方向(矢印A方向)に沿った樹脂ボックス18の断面形状が台形状を成し、車幅方向外側の辺が短辺部22に設定され、短辺部22と平行に対向する車幅方向内側の辺がウレタンパッド20側へ張り出す長辺部24となるように設定されている。
【0043】
これによると、短辺部22へ荷重が入力されると、傾斜部26、28には、長辺部24との接合部P、Qを支点として樹脂ボックス18の中空部17内へ向かうモーメント(矢印M方向)がそれぞれ発生する。これにより、図2に示されるように、当該傾斜部26、28を樹脂ボックス18の中空部17内へ座屈変形させることができる。
【0044】
また、ここでは、図1に示されるように、樹脂ボックス18の互いに対向する傾斜部26、28の車幅方向の略中央には、傾斜部26、28の外面に、さらに、断面略V字状のノッチ30が車両高さ方向に沿って形成されている。このように、ノッチ30を設けることで、傾斜部26、28が屈曲し易くなる。また、当該ノッチ30が設けられた部位は脆弱部となるため、他の部位よりも破断し易くなる。つまり、傾斜部26、28において屈曲させる位置を特定すると共に、傾斜部26、28が破断する方向を特定することができる。
【0045】
このように、樹脂ボックス18の形状によって、樹脂ボックス18の座屈方向を特定すると共に、傾斜部26、28において屈曲させる位置を特定することで、樹脂ボックス18のウレタンパッド20側への座屈変形及び破断が防止され、ウレタンパッド20は本来の荷重変位特性を維持することができる。
【0046】
したがって、図示しないシートに着座した乗員の腰部において、圧縮子21により荷重が入力された初期の段階で、樹脂ボックス18によって高い反力が得られると共に、腰部から大腿部に亘って、荷重が入力された初期の段階から連続して反力を得ることができ、効果的に衝撃を吸収することができる。
【0047】
なお、以上の構成では、図1に示されるように、樹脂ボックス18の断面を等脚台形状としたが、少なくとも樹脂ボックス18の傾斜部26がウレタンパッド20側へ座屈変形しないようにすることができれば良いため、傾斜部26側のみに傾斜面を設けても良い。また、傾斜部26、28には、断面形状が略V字状を成すノッチ30が形成されているが、変形誘導部としての脆弱部を設けることができれば良いため、ノッチ30の断面形状については、略V字状に限るものではない。例えば、断面形状が略U字状であっても良い。また、ノッチ30は、傾斜部26側のみに設けても良いが、当該ノッチ30は必ずしも必要ではない。さらに、本実施形態では、樹脂ボックス18はドアトリム12と一体に成形されているが、この樹脂ボックス18はドアトリム12と別体に設けられ、当該ドアトリム12に取り付けられるようにしても良い。
【0048】
(その他の実施形態)
(1)本実施形態では、図1に示されるように、樹脂ボックス18の断面を等脚台形状としたが、樹脂ボックスの形状はこれに限るものではない。例えば、図5に示されるように、樹脂ボックス34の傾斜部36、38に、変形誘導部として、中空部42内へ屈曲する屈曲部40を設け、当該傾斜部36、38を予め屈曲させても良い。
【0049】
これにより、圧縮子21により樹脂ボックス34に所定値以上の荷重が矢印A方向に沿って入力されると、傾斜部36、38は当該屈曲部40を介して折り畳まれるようにして変形する。つまり、樹脂ボックス34の傾斜部36、38は中空部42内へ座屈変形することとなる。
【0050】
(2)また、上記以外にも、変形誘導部がウレタンパッド20側に設けられても良い。例えば、図6(A)に示されるように、樹脂ボックス18と対向するウレタンパッド20の対向面32の車幅方向の略中央に、ウレタンパッド20の他の部位よりも剛性が高くなるように高剛性部44(例えば、ボルト等の金属を取り付けても良い)を設けても良い。
【0051】
これにより、樹脂ボックス18の傾斜部26がウレタンパッド20の対向面32側へ変形しようとしても、当該高剛性部44によって、ウレタンパッド20側への座屈変形が阻害されることとなる。このため、図6(B)に示されるように、樹脂ボックス18の傾斜部26は、中空部17内へ座屈変形することとなる。なお、この場合、傾斜部26を屈曲し易くするため、当該傾斜部26の内面側(中空部17側)にノッチを設けても良い。
【0052】
(3)さらに、図7(A)に示されるように、ウレタンパッド20の対向面32の車幅方向の略中央に段差部46を設け、樹脂ボックス18の長辺部24側で、ウレタンパッド20の対向面32を樹脂ボックス18の傾斜面26から離間させるようにする。これにより、ウレタンパッド20の対向面32において、圧縮子21による荷重の入力方向(矢印A方向)に沿って、樹脂ボックス18の傾斜部26に対する硬度(反力)を変えることができる。
【0053】
これによると、樹脂ボックス18の傾斜部26がウレタンパッド20の対向面32側へ座屈変形しようとしたとき、当該樹脂ボックス18の長辺部24側よりも短辺部22側で反力が大きくなり、図7(B)に示されるように、傾斜部26の車幅方向の略中央部で当該傾斜部26を中空部17内へ屈曲させるきっかけを与えることができる。なお、傾斜部26の内面側(中空部17側)にノッチを設けても良いのは勿論のことである。
【0054】
(4)さらにまた、図8(A)に示されるように、樹脂ボックス18の傾斜部26の長辺部24との接合部Pにおいて、ウレタンパッド20側に支持部48を設けても良い。圧縮子21により樹脂ボックス18の短辺部22へ荷重が入力(矢印A方向)されると、傾斜部26では当該支持部48によって、傾斜部26のウレタンパッド20側への座屈変形が抑制され、図8(B)に示されるように、当該傾斜部26を樹脂ボックス18の中空部17内へ座屈変形させることができる。
【0055】
(5)以上の実施形態では、樹脂ボックス18の車両前方に、当該樹脂ボックス18に隣接してウレタンパッド20を取り付けたが、図9に示されるように、中空部50が設けられた樹脂ボックス52の中空部50内にウレタンパッド54を充填させるようにしても良い。なお、ここでは、樹脂ボックス52の水平断面を略六角形状に形成しているが、この形状に限るものではない。
【0056】
ところで、以上の実施形態において、ウレタンパッド20の構成については特に限定するものではない。このため、荷重の入力方向に沿って硬度が異なるようにしても良い。この場合、複数のパッドで構成されたものであって良いし、単一のパッド構成されたものであっても良い。
【0057】
また、樹脂ボックス18は、図1に示されるように、荷重の入力方向(矢印A方向)に沿って断面形状が台形状を成す形状としたが、矢印A方向に沿って中空部17内にリブを複数形成させても良い。これにより、当該樹脂ボックス18の強度及び剛性を調整することができる。
【0058】
さらに、上記の実施形態では、樹脂ボックス18はドアトリム12と一体に成形されているが、この樹脂ボックス18はドアトリム12と別体に設けられ、当該ドアトリム12に取り付けられるようにしても良い。また、以上の実施形態では、車両用衝撃吸収構造がサイドドアに適用された例について説明したが、この車両用衝撃吸収構造の他の部材において適用されても良い。
【0059】
例えば、図10に示されるように、インストルメントパネル55に設けられたニーボルスター56への適用が挙げられる。この場合、図示しないインパネリインホースメントに固定されたブラケット58の車両上部側であって、シートに着座している乗員の膝に相当する位置に樹脂ボックス18が配置され、当該ブラケット58の下部側にウレタンパッド20が配置されている。このように、乗員の膝の位置に合わせて、反力部材の硬度を変えることで、効果的に衝撃を吸収することができる。
【0060】
さらに、上記の実施形態では、車両前後方向又は車両上下方向に沿って、ウレタンパッド20及び樹脂ボックス18を配置したが、車両前後方向及び車両上下方向に沿って、ウレタンパッド20及び樹脂ボックス18を配置しても良い。
【符号の説明】
【0061】
10 サイドドア
11 車両用衝撃吸収構造
12 ドアトリム
17 中空部
18 樹脂ボックス(樹脂部材)
20 ウレタンパッド(弾性部材)
22 短辺部
24 長辺部
26 傾斜部(壁部)
28 傾斜部(壁部)
30 ノッチ(脆弱部、変形誘導部)
32 対向面
34 樹脂ボックス
36 傾斜部(壁部)
40 屈曲部(変形誘導部)
42 中空部
44 高剛性部(変形誘導部)
46 段差部(変形誘導部)
48 支持部(変形誘導部)
50 中空部
52 樹脂ボックス(樹脂部材)
54 ウレタンパッド(弾性部材)
56 ニーボルスター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室内側に設けられ、荷重が入力されると荷重入力方向に弾性変形する弾性部材と、
車両前後方向及び車両上下方向の少なくとも一方向に沿って前記弾性部材に隣接して配置され、中空部が設けられ所定値以上の荷重が入力されると座屈変形する樹脂部材と、
前記樹脂部材及び前記弾性部材の少なくとも一方に設けられ、前記樹脂部材に所定値以上の荷重が入力されると、当該樹脂部材の少なくとも前記弾性部材と対向する壁部を前記中空部内へ座屈変形させる変形誘導部と、
を有する車両用衝撃吸収構造。
【請求項2】
車室外側から車室内側に沿った前記樹脂部材の断面形状が台形状を成し、
前記壁部が、車室外側に設けられた短辺部と前記短辺部と平行に対向し前記弾性部材側へ張り出した長辺部とを繋ぐ傾斜部である請求項1に記載の車両用衝撃吸収構造。
【請求項3】
前記変形誘導部が、前記傾斜部に設けられた脆弱部である請求項2に記載の車両用衝撃吸収構造。
【請求項4】
前記傾斜部の傾斜方向の中央部に、前記中空部側へ屈曲する屈曲部が形成された請求項2に記載の車両用衝撃吸収構造。
【請求項5】
前記変形誘導部が、前記傾斜部と対向する前記弾性部材の対向面に設けられ、前記樹脂部材の当該弾性部材側への変形を阻害する高剛性部である請求項2又は3に記載の車両用衝撃吸収構造。
【請求項6】
車両側部のサイドドア内に設けられ、前記樹脂部材が車両側方から見てシートに着座した乗員の腰部に相当する位置に配置され、前記弾性部材が前記樹脂部材の車両前方側に配置された請求項1〜5の何れか1項に記載の車両用衝撃吸収構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−144124(P2012−144124A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−3236(P2011−3236)
【出願日】平成23年1月11日(2011.1.11)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】