説明

車両用表示装置

【課題】アイドルストップ機能からの復帰時において初期表示処理を行わないことで、車両利用者にあたえる違和感を抑止できる車両用表示装置を提供する。
【解決手段】演算部3は、前記アイドルストップ機能によるエンジン停止状態である第1の状態と、少なくとも前記アイドルストップ機能以外の条件によるエンジン停止状態である第2の状態とを判別するためのフラグ(情報)を格納する記憶部2を設け、エンジンの起動時に記憶部2に格納された前記フラグに基づいて、エンジンの起動が前記第1の状態からの復帰動作であるか否かを判定処理し、前記第1の状態からの前記復帰動作であると判定した場合に、前記表示部1による初期表示処理を禁止し、前記第1の状態からの前記復帰動作でないと判定した場合に、前記エンジンの起動後に表示部1による初期表示処理を行うように制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
車両の走行状態に応じて自動的にエンジンを停止/起動するアイドルストップ機能を行う車両に搭載され、前記車両に搭載されるバッテリからの電源供給を受けて表示手段を表示制御する制御手段を備えた車両用表示装置に関し、例えば、演出として初期表示処理を行う車両用表示装置に好適である。
【背景技術】
【0002】
従来、省エネルギーあるいは地球環境保護を目的として、アイドルストップ機能を搭載した車両がある。例えば、信号待ち等の比較的短い停止時間や、人の乗降、荷物の積み下ろしなど、比較的長い時間、イグニッションスイッチをオンにしたまま、エンジンを停止させるものである。
【0003】
この種のアイドルストップを行う車両に搭載される計器などの車両用表示装置は、バッテリからの電力供給によって駆動することができ、例えば、特許文献1に記載されているように、アイドルストップ状態であるときに、バッテリへの負担を軽減するために、照明輝度を減光させることが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−256397号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前述した車両用表示装置は、例えば、劣化などバッテリ容量が低い状態において、アイドルストップ状態から復帰する際に生じるバッテリ電圧の変動によって、一次的にマイクロコンピュータからなる制御手段への電源電圧が低下し、制御手段がリセットしてしまう事象が考えられる。
【0006】
また、例えば、計器やナビゲーションシステム、車載オーディオのように確認用の表示や演出的に初期表示処理を行う場合があるが、上述のような制御手段のリセットをともなう復帰時においては、アイドルストップ機能からの復帰毎に初期表示処理を行ってしまい車両利用者にとっての煩わしさや違和感をあたえるだけでなく、車両情報など通常表示が遅れてしまうという課題があった。
【0007】
そこで本発明の目的とするところは、上述した課題に着目してなされたものであり、アイドルストップ機能からの復帰時において初期表示処理を行わないことで、車両利用者にあたえる違和感を抑止できる車両用表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の車両用表示装置は、車両の走行状態に応じて自動的にエンジンを停止/起動するアイドルストップ機能を行う車両に搭載され、前記車両に搭載されるバッテリからの電源供給を受けて表示手段を表示制御する制御手段を備えた車両用表示装置であって、前記制御手段は、前記アイドルストップ機能によるエンジン停止状態である第1の状態と、少なくとも前記アイドルストップ機能以外の条件によるエンジン停止状態である第2の状態とを判別するための情報を格納する記憶部を設け、エンジンの起動時に前記記憶部に格納された前記情報に基づいて、前記エンジンの起動が前記第1の状態からの復帰動作であるか否かを判定処理し、前記第1の状態からの前記復帰動作であると判定した場合に、前記表示手段による初期表示処理を禁止し、前記第1の状態からの前記復帰動作でないと判定した場合に、前記エンジンの起動後に前記表示手段による初期表示処理を行うように制御することを特徴とする。
【0009】
また、車両の走行状態に応じて自動的にエンジンを停止/起動するアイドルストップ機能を行う車両に搭載され、前記車両に搭載されるバッテリからの電源供給を受けて表示手段を表示制御する制御手段を備えた車両用表示装置であって、前記制御手段は、前記アイドルストップ機能によるエンジン停止状態である第1の状態と、少なくとも前記アイドルストップ機能以外の条件によるエンジン停止状態である第2の状態とを判別するための情報を格納する記憶部を設け、前記制御手段の初期演算処理時に前記記憶部に格納された前記情報に基づいて、前記初期演算処理前の状態が前記第1の状態であるか否かを判定処理し、前記第1の状態であると判定した場合に、前記表示手段による初期表示処理を行わずに通常表示処理を行うように制御し、前記第2の状態であると判定した場合に、前記初期演算処理後に前記表示手段による初期表示処理を行ってから通常表示処理を行うように制御することを特徴とする。
【0010】
また、前記制御手段は、前記アイドルストップ機能によるエンジン停止中であっても、前記条件の一つとして、イグニッションスイッチがオンからオフに操作された場合、前記第2の状態として前記情報を更新してなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、車両の走行状態に応じて自動的にエンジンを停止/起動するアイドルストップ機能を行う車両に搭載され、前記車両に搭載されるバッテリからの電源供給を受けて表示手段を表示制御する制御手段を備えた車両用表示装置に関し、アイドルストップ機能からの復帰時において初期表示処理を行わないことで、車両利用者にあたえる違和感を抑止できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態における構成を示すブロック図。
【図2】同上実施の形態のフラグに関する演算部による処理手順を示すフロー図。
【図3】同上実施の形態のエンジン起動時またはマイクロコンピュータ初期演算処理時の演算部による処理手順を示すフロー図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態として、本発明の車両用表示装置が速度計を含む車両用計器に適用されたものを例にあげて、添付図面を用いて説明する。なお、この場合、車両のアイドルストップ機能は、車両停止後、所定時間経過したらエンジンを自動的に停止し、車両利用者によるペダル操作状態に応じて、エンジンの再起動を自動的に行って復帰動作するものである。
【0014】
図1は、車両用計器の構成を示す図であり、表示部(表示手段)1と、記憶部(制御手段)2と、演算部(制御手段)3とを備えている。
【0015】
表示部1は、詳細に図示しないが、計測値に基づいて作動するモータによって回動する指針と、この指針の指示対象となる目盛や文字を含む指標部と、を有してなる所謂指針計器や、液晶パネルや有機ELパネルを用いて文字、マーク、バーグラフなどによって、計測値等の車両情報を表現する表示パネルや、インジケータや警報を示す表示灯などを設けている。表示部1は、これらの構成によって、演算部3からの制御信号に基づいて、車両の走行速度やエンジン回転数、車両外気温度、残燃料量、シフトポジションインジケータなどの車両情報を複合して表示する。
【0016】
また、表示部1は、車両利用者が搭乗してイグニッションスイッチをオフからオンに操作した際に、通常の車両情報の表示処理(以下、通常表示処理と記す)とは異なる初期表示処理を行った後、通常表示処理を行う。初期表示処理として、指針の回動往復操作、表示パネルによる「HELLO」などの表示、表示灯の点灯確認などを行う。この場合、車両用計器外に、オーディオや空気調和器、ナビゲーションシステムなどの外部機器用の表示パネルを表示手段として用いており、初期表示処理を同期して行うようにしている。
【0017】
記憶部2は、演算部3と接続され、演算部3が演算処理する制御プログラムや各種データを格納するためのRAMやROMなどからなる記憶媒体にて構成される。また、記憶部2は、演算部3の処理によって更新されるフラグ(情報)を格納している。
【0018】
演算部3は、制御手段となるマイクロコンピュータのCPUを適用でき、車両に搭載される各種センサからの各種信号や、イグニッションスイッチの状態信号などを入力するとともに、これら信号に基づいて演算処理することによって、記憶部2の各種データの更新処理や、表示部1や外部機器を制御するための制御信号を生成し出力する。
【0019】
また、演算部3は、記憶部2のフラグにおいて、アイドルストップ機能によってエンジン停止し、ペダル操作などによって自動復帰(エンジンの自動起動)可能な第1の状態として更新し、それ以外の状態、例えば、エンジン稼働状態や、イグニッションスイッチのオフ状態には、第2の状態として更新する。この場合、演算部3は、図2に示すような処理手順によって、フラグを更新する。
【0020】
演算部3は、信号の入力に基づいてイグニッションスイッチがオン状態であるか否かを判定(ステップS1)し、イグニッションスイッチがオン状態である場合には、アイドルストップ機能によってエンジン停止状態であるか否かを判定(ステップS2)する。なお、アイドルストップ機能によるエンジン停止状態の場合は、これを示す信号が各種信号の一つとしてECUから転送されてくるため、この信号に基づいて判断できる。次に、演算部3は、ステップS2に処理で、アイドルストップ機能によるエンジン停止状態であると判定した場合、第1の状態としてフラグを更新して格納する(ステップS3)。
【0021】
また、演算部3は、ステップS1にてイグニションスイッチがオフ状態であると判定した場合、または、ステップS2に処理で、アイドルストップ機能によるエンジン停止状態以外の状態であると判定した場合に、第2の状態としてフラグを更新して格納する(ステップS4)。なお、演算部3は、アイドルストップ機能によるエンジン停止後、イグニッションスイッチがオンからオフに操作された場合など、エンジン停止の条件として、アイドルストップ機能以外の条件がある場合(ペダル操作による自動的なエンジン起動ができない状態の場合)には、フラグを第2の状態に更新して格納する。
【0022】
また、演算部3は、上述のステップS1乃至ステップS4の処理を繰り返すことによって更新されたフラグに基づいて、エンジン起動時、またはマイクロコンピュータの初期演算処理時の処理手順について図3を用いて説明する。
【0023】
演算部3は、イグニッションスイッチがオン状態であるか否かを判定(ステップS11)し、イグニッションスイッチがオン状態である場合には、前記フラグが第2の状態であるか第2の状態であるかを判定処理する(ステップS12)。
【0024】
演算部3は、ステップS12の判定処理によって前記フラグが第2の状態である場合には、初期表示処理として、車両情報とは別の表示を含む演出的な表示や動作確認用の表示、指針指示位置調整用の表示などを行うように表示器1や外部機器を制御するための制御信号を出力する(ステップS13)。次に、演算部3は、この初期表示処理が終了してから、車両走行時と同様の通常表示、例えば、車両の瞬間燃費情報等の計測値など車両情報の表示を含む通常表示処理を行うように表示部1へ制御信号を出力する(ステップS14)。
【0025】
また、演算部3は、ステップS12の判定処理によって前記フラグが第1の状態である場合には、ステップS13の初期表示処理を行わずに、ステップS14の通常表示処理を行う。
【0026】
斯かる車両用表示装置は、車両の走行状態に応じて自動的にエンジンを停止/起動するアイドルストップ機能を行う車両に搭載され、前記車両に搭載されるバッテリからの電源供給を受けて表示部1を表示制御する演算部3を備えた車両用表示装置であって、演算部3は、前記アイドルストップ機能によるエンジン停止状態である第1の状態と、少なくとも前記アイドルストップ機能以外の条件によるエンジン停止状態である第2の状態とを判別するためのフラグ(情報)を格納する記憶部2を設け、エンジンの起動時に記憶部2に格納された前記フラグに基づいて前記エンジンの起動が前記第1の状態からの復帰動作であるか否かを判定処理し、前記第1の状態からの前記復帰動作であると判定した場合に、前記表示部1による初期表示処理を禁止し、前記第1の状態からの前記復帰動作でないと判定した場合に、前記エンジンの起動後に表示部1による初期表示処理を行うように制御する。
【0027】
また、車両の走行状態に応じて自動的にエンジンを停止/起動するアイドルストップ機能を行う車両に搭載され、前記車両に搭載されるバッテリからの電源供給を受けて表示部1を表示制御する演算部3を備えた車両用表示装置であって、演算部3は、前記アイドルストップ機能によるエンジン停止状態である第1の状態と、少なくとも前記アイドルストップ機能以外の条件によるエンジン停止状態である第2の状態とを判別するためのフラグを格納する記憶部2を設け、演算部3の初期演算処理時に記憶部2に格納された前記フラグに基づいて、前記初期演算処理前の状態が前記第1の状態であるか否かを判定処理し、前記第1の状態であると判定した場合に、表示部1による初期表示処理を行わずに通常表示処理を行うように制御し、前記第2の状態であると判定した場合に、前記初期演算処理後に表示部1による初期表示処理を行ってから通常表示処理を行うように制御する。
【0028】
従って、上述の車両用表示装置は、駆動電圧の低電圧状態によって、マイクロコンピュータのリセット処理をともなうエンジン稼働復帰時において、アイドルストップ機能からの復帰毎に初期表示処理を行うことがないため、車両利用者にとっての煩わしさや違和感をあたえることなく、迅速に車両情報を表示することが可能となる。
【0029】
また、演算部3は、前記アイドルストップ機能によるエンジン停止中であっても、前記条件の一つとして、イグニッションスイッチがオンからオフに操作された場合、前記第2の状態として前記フラグを更新してなることによって、アイドルストップ機能によるエンジン停止からの復帰以外にあっては、初期表示処理を行うように構成できる。
【0030】
なお、本発明の車両用表示装置を上述した実施の形態の構成にて例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、他の構成においても、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の改良、並びに設計の変更が可能なことは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明は、例えば、自動車やオートバイ、あるいは農業機械や建設機械を備えた移動体に搭載される車両用表示装置として適用できる。
【符号の説明】
【0032】
1 表示部(表示手段)
2 記憶部(制御手段)
3 演算部(制御手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の走行状態に応じて自動的にエンジンを停止/起動するアイドルストップ機能を行う車両に搭載され、前記車両に搭載されるバッテリからの電源供給を受けて表示手段を表示制御する制御手段を備えた車両用表示装置であって、
前記制御手段は、前記アイドルストップ機能によるエンジン停止状態である第1の状態と、少なくとも前記アイドルストップ機能以外の条件によるエンジン停止状態である第2の状態とを判別するための情報を格納する記憶部を設け、
エンジンの起動時に前記記憶部に格納された前記情報に基づいて、前記エンジンの起動が前記第1の状態からの復帰動作であるか否かを判定処理し、
前記第1の状態からの前記復帰動作であると判定した場合に、前記表示手段による初期表示処理を禁止し、
前記第1の状態からの前記復帰動作でないと判定した場合に、前記エンジンの起動後に前記表示手段による初期表示処理を行うように制御することを特徴とする車両用表示装置。
【請求項2】
車両の走行状態に応じて自動的にエンジンを停止/起動するアイドルストップ機能を行う車両に搭載され、前記車両に搭載されるバッテリからの電源供給を受けて表示手段を表示制御する制御手段を備えた車両用表示装置であって、
前記制御手段は、前記アイドルストップ機能によるエンジン停止状態である第1の状態と、少なくとも前記アイドルストップ機能以外の条件によるエンジン停止状態である第2の状態とを判別するための情報を格納する記憶部を設け、
前記制御手段の初期演算処理時に前記記憶部に格納された前記情報に基づいて、前記初期演算処理前の状態が前記第1の状態であるか否かを判定処理し、
前記第1の状態であると判定した場合に、前記表示手段による初期表示処理を行わずに通常表示処理を行うように制御し、
前記第2の状態であると判定した場合に、前記初期演算処理後に前記表示手段による初期表示処理を行ってから通常表示処理を行うように制御することを特徴とする車両用表示装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記アイドルストップ機能によるエンジン停止中であっても、前記条件の一つとして、イグニッションスイッチがオンからオフに操作された場合、前記第2の状態として前記情報を更新してなることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両用表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−179415(P2011−179415A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−44815(P2010−44815)
【出願日】平成22年3月2日(2010.3.2)
【出願人】(000231512)日本精機株式会社 (1,561)
【Fターム(参考)】